説明

連続ホットプレス装置

【課題】金属ベルトを短時間に効率よく加熱して、スタート時間を短縮しながら、熱エネルギを極めて有効に利用する。
【解決手段】連続ホットプレス装置は、加圧流体11が供給される加圧チャンバ10を備える第1の加圧ヘッド1A及び第2の加圧ヘッド1Bからなる加圧ヘッド1と、加圧ヘッド1に対向して配設してなる一対のエンドレスの金属ベルト2と、金属ベルト2を移動させる移送機構4と、金属ベルト2を加熱する加熱機構3とを備える。加熱機構3は、加圧チャンバの内部に配置してなる励磁コイル31と高周波電源32とを備えている。金属ベルト2は、励磁コイル31の高周波磁界で発熱する誘導加熱金属からなるベルトである。連続ホットプレス装置は、高周波電源32から供給される高周波電力で励磁コイル31が金属ベルト2を誘導加熱し、加圧流体で加圧された金属ベルト2が被プレス物20を加熱、加圧状態で移送する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンドレスの金属ベルトで被プレス物を上下から挟み、金属ベルトで被プレス物を加熱、加圧状態で移送する連続ホットプレス装置に関し、とくに金属ベルトの裏面側に加圧ヘッドを配設し、この金属ベルトに設けた加圧チャンバの開口部を閉塞するように金属ベルトを配設して、加圧チャンバに加圧流体を供給することで、金属ベルトで被プレス物を加熱、加圧状態で挟んで移送する連続ホットプレス装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一対のエンドレスの金属ベルトで被プレス物を上下から挟み、金属ベルトで被プレス物を加熱しながら移送する連続ホットプレス装置は開発されている。(特許文献1参照)
この連続ホットプレス装置は、図1と図2に示すように、互いに対向して配設している一対の加圧ヘッド101を設けて、加圧ヘッド101のプレス面101aに、加圧流体111を供給する加圧チャンバ110を設けている。この加圧チャンバ110は、対向する加圧ヘッド101との対向面を開口して、この開口部を閉塞するように金属ベルト102を配設している。このプレス装置は、金属ベルト102が加圧チャンバ110を閉塞する状態で、加圧チャンバ110に、加圧流体111として加熱されたオイルを加圧状態で供給し、金属ベルト102でもって被プレス物120を加熱、加圧しながら移送する。
【0003】
図1と図2に示す特許文献1のプレス装置は、加圧流体111であるオイルを加熱して金属ベルト102を加熱し、加熱された金属ベルト102で被プレス物120を加熱しながらプレスする。この構造の連続ホットプレス装置は、オイルを介して金属ベルト102を加熱するので、装置を停止した後、再起動するのに極めて長い時間がかかる欠点がある。それは、装置を停止して温度の低下したオイルを数100度と高温に加熱するのに時間がかかるからである。また、オイルを設定温度に加熱するまでに極めて大きな熱エネルギを必要とする欠点もある。たとえば、800リットルのオイルを使用する連続ホットプレス装置において、オイルの温度を約400℃に加熱するには約3時間もの長い時間を必要とする。
【0004】
スタート時間の短縮は、たとえば特許文献2に開示されるように、ベルトの近傍に金属板を設けてこれを誘導加熱し、加熱された金属板で被プレス物を加熱することで解消できる。この装置は、図3に示すように、電磁誘導で加熱される加熱板201をベルト202の外側に配設し、加熱板201でベルト202を介して被プレス物を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2007−105783号公報
【特許文献2】特開平8−209426号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図3に示すように、加熱板でベルトを加熱し、加熱されたベルトで被プレス物を加熱する構造は、加熱板の熱エネルギを有効に利用して被プレス物を加熱できない欠点がある。また、ベルトの外側に加圧ヘッドを配設し、この加圧ヘッドに設けた加圧チャンバに加圧流体を供給して加圧流体の圧力でベルトを加圧する装置は、加熱板を加圧チャンバ内に配設する必要があるが、ここに配設される加熱板は加圧流体のオイルに熱伝導するので、加圧流体を設定温度に加熱しないかぎり、ベルトを正確な設定温度に加熱できない欠点がある。
【0007】
本発明は、さらに以上の欠点を解決することを目的に開発されたものである。本発明の重要な目的は、金属ベルトを短時間に効率よく加熱して、スタート時間を短縮しながら、熱エネルギを極めて有効に利用してランニングコストを低減できる連続ホットプレス装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の連続ホットプレス装置は、互いに対向して配設されると共に、互いに対向する面に開口部を有する、加圧流体11が供給される加圧チャンバ10を備える第1の加圧ヘッド1A及び第2の加圧ヘッド1Bからなる一対の加圧ヘッド1と、加圧ヘッド1に設けている加圧チャンバ10の開口部を閉塞する状態で加圧ヘッド1に対して相対的に移動できるように対向して配設してなる一対のエンドレスの金属ベルト2と、この金属ベルト2を移動させる移送機構4と、金属ベルト2を加熱する加熱機構3とを備えている。連続ホットプレス装置は、金属ベルト2が加圧チャンバ10の開口部を閉塞する状態で加圧チャンバ10に加圧流体11を供給すると共に、加熱機構3で金属ベルト2で加熱し、加熱される一対の金属ベルト2が、加圧チャンバ10に供給される加圧流体の圧力で被プレス物20を対向する表面で挟み、加熱機構3に加熱されて加熱状態でプレスしながら移送する。加熱機構3は、加圧チャンバの内部であって金属ベルト2の裏面に対向するように配置してなる励磁コイル31と、この励磁コイル31に高周波電力を供給する高周波電源32とを備えている。金属ベルト2は、励磁コイル31の高周波磁界で発熱する誘導加熱金属からなるベルトであって、励磁コイル31に対して相対移動できるように加圧チャンバの開口部を閉塞している。連続ホットプレス装置は、高周波電源32から供給される高周波電力で励磁コイル31が金属ベルト2を誘導加熱し、加圧流体で加圧された金属ベルト2が被プレス物20を加熱、加圧状態で移送する。
【0009】
以上の連続ホットプレス装置は、加圧ヘッドの加圧チャンバ内に誘導コイルを配置して、金属ベルトを誘導加熱される金属とする。この連続ホットプレス装置は、被プレス物をプレスする金属ベルトを誘導加熱で直接に加熱する。このため、従来の加圧流体で金属ベルトを加熱する装置や、加熱板を金属ベルトの外側に配置して加熱する装置とは比較にならないほど短時間に効率よく金属ベルトを加熱できる。また、多量の加圧流体や加熱板を加熱して、これ等を介して金属ベルトを加熱する必要がなく、金属ベルトを直接に誘導加熱するので、熱エネルギを極めて有効に利用してランニングコストを低減できる特徴を実現する。とくに、直接に金属ベルトを誘導加熱する本発明の装置は、励磁コイルを金属ベルトに接近することで金属ベルトを誘導加熱できる。それは、励磁コイルが発生する高周波磁界中に金属ベルトを配置して、金属ベルトを誘導加熱できるからである。このため、金属ベルトを励磁コイルに対して相対移動できる構造としながら、金属ベルトを効率よく誘導加熱できる。このため、励磁コイルを加圧ヘッドの加圧チャンバ内に配置し、励磁コイルに対して相対移動するように金属ベルトを配置しながら、金属ベルトを効率よく誘導加熱できる。
【0010】
本発明の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2を、マルテンサイト系とフィライト系と冷間加工されたオーステナイト系のステンレスのいずれかとすることができる。
また、本発明の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2をクラッド材として、クラッド材の少なくともひとつの層を、マルテンサイト系とフィライト系と冷間加工されたオーステナイト系のステンレスのクラッド材のいずれかとすることができる。
以上の連続ホットプレス装置は、金属ベルトをステンレス製として耐腐食性を実現しながら、誘導加熱によって効率よく発熱できる。
【0011】
本発明の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2の表面層をステンレスとし、内部層を鉄又は鉄合金のクラッド材とすることができる。
以上の連続ホットプレス装置は、金属ベルトの耐腐食性を実現しながら励磁コイルで効率よく誘導加熱できる特徴がある。
【0012】
本発明の連続ホットプレス装置は、高周波電源32が金属ベルト2の温度を検出する温度センサ33を備えて、高周波電源32が温度センサ33の検出温度で励磁コイル31に供給する高周波電力を制御して金属ベルト2の温度を設定温度にコントロールすることができる。
この連続ホットプレス装置は、金属ベルトの温度を正確に設定温度に制御して、被プレス物を正確な温度で加熱しながらプレスできる特徴がある。
【0013】
本発明の連続ホットプレス装置は、加圧チャンバ10の開口部に移送される金属ベルト2を予備加熱する予備加熱機6を備えて、この予備加熱機6で予備加熱された金属ベルト2を加圧チャンバ10の開口部に移送して加熱機構3で加熱することができる。
この連続ホットプレス装置は、金属ベルトの歪みを防止して、安定して移送できる特徴がある。それは、金属ベルトを予備加熱した後に誘導加熱するので、金属ベルトを急激に加熱することなく、次第に高い温度に加熱できるからである。
【0014】
本発明の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2の移送方向に配設してなる複数の予備加熱機6を備えて、加圧チャンバ10に接近する側に配設している予備加熱機6の金属ベルト2の加熱温度を加圧チャンバ10から離れた側に配設している予備加熱機6の金属ベルト2の加熱温度よりも高くすることができる。
この連続ホットプレス装置は、さらに複数の予備加熱機で次第に加熱するので、金属ベルトの歪みをより少なくして、安定して移送できる特徴がある。
【0015】
本発明の連続ホットプレス装置は、予備加熱機6が、金属ベルト2の裏面に対向して配設してなる予備加熱励磁コイル61と、この予備加熱励磁コイル61に高周波電力を供給する予備加熱電源62とを備えることができる。
この連続ホットプレス装置は、金属ベルトを誘導加熱して予備加熱するので、金属ベルトの予備加熱においても金属ベルトを効率よく加熱できる。
【0016】
本発明の連続ホットプレス装置は、一対の加圧ヘッド1の一方又は両方を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構8と、第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bとをプレス状態におけるプレス面1aの間隔を調整できるように連結してなる厚さ調整機構7を備えることができる。
【0017】
本発明の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2でプレスされる被プレス物20をゴムシートとし、加圧チャンバ10に供給される加圧流体11を加圧された流体として、加圧チャンバ10に供給される加圧流体11が金属ベルト2を介して被プレス物20のゴムシートを加圧して加硫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】従来のプレス装置の概略縦断面図である。
【図2】図1に示すプレス装置の拡大横断面図である。
【図3】従来の他のプレス装置の概略縦断面図である。
【図4】本発明の一実施例にかかる連続ホットプレス装置の概略構成図である。
【図5】図4に示す連続ホットプレス装置の加圧ヘッド部分を示す側面図である。
【図6】図4に示す連続ホットプレス装置の加圧ヘッド部分を示す平面図である。
【図7】図6に示す連続ホットプレス装置の加圧ヘッド部分を示すVII−VII線断面図である。
【図8】図7に示す連続ホットプレス装置の加圧ヘッド部分を示す拡大断面図である。
【図9】図4に示す連続ホットプレス装置の加圧ヘッド部分を示す拡大断面図であって、図6のIX−IX線断面に相当する図である。
【図10】図4に示す連続ホットプレス装置の予備加熱機を示す概略断面図である。
【図11】図4に示す連続ホットプレス装置の冷却用の加圧ヘッドを示す拡大断面図である。
【図12】図7に示すプレス装置の厚さ調整機構を示す拡大断面図である。
【図13】図12に示す厚さ調整機構の要部を拡大して分解した一部断面斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。ただし、以下に示す実施例は、本発明の技術思想を具体化するための連続ホットプレス装置を例示するものであって、本発明は連続ホットプレス装置を以下のものに特定しない。
【0020】
さらに、この明細書は、特許請求の範囲を理解しやすいように、実施例に示される部材に対応する番号を、「特許請求の範囲」および「課題を解決するための手段の欄」に示される部材に付記している。ただ、特許請求の範囲に示される部材を、実施例の部材に特定するものでは決してない。
【0021】
図4ないし図9は、ゴムシートのようにシート状の被プレス物20をプレスする連続ホットプレス装置を示す。これらの図の連続ホットプレス装置は、互いに上下に対向して配設している第1の加圧ヘッド1A及び第2の加圧ヘッド1Bからなる一対の加圧ヘッド1と、加圧ヘッド1に設けている加圧チャンバ10の開口部を閉塞する状態で加圧ヘッド1に対して相対的に移動できるように対向して配設している一対のエンドレスの金属ベルト2と、この金属ベルト2を移動させる移送機構4と、金属ベルト2を加熱する加熱機構3と、一対の加圧ヘッド1を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構8と、第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bとを、プレス状態におけるプレス面1aの間隔を調整できるように連結している厚さ調整機構7を備える。
【0022】
一対の加圧ヘッド1は、対向するプレス面1aで被プレス物20をプレスする。図の連続ホットプレス装置は、上下に加圧ヘッド1を配設している。図において上の加圧ヘッド1を第1の加圧ヘッド1Aとし、下の加圧ヘッド1を第2の加圧ヘッド1Bとする。ただし、上の加圧ヘッドを第2の加圧ヘッドとして、下の加圧ヘッドを第1の加圧ヘッドとすることもできる。また、本発明の連続ホットプレス装置は、必ずしも一対の加圧ヘッドを上下に配設する必要はない。
【0023】
加圧ヘッド1は、図8と図9の拡大断面図に示すように、プレス面1aに、加圧流体11を供給する加圧チャンバ10を設けている。加圧チャンバ10は、対向する加圧ヘッド1との対向面を開口して、この開口部を閉塞するように金属ベルト2を配設している。
【0024】
金属ベルト2は、励磁コイルの高周波磁界で発熱する誘導加熱金属からなるベルトである。誘導加熱される金属ベルト2は、Cr系のステンレスであるマルテンサイト系のステンレスやフィライト系のステンレスが使用でき、また、冷間加工されたCr−Ni系のオーステナイト系のステンレスベルトが使用される。金属ベルト2には、好ましくは高応力と耐熱性に優れたSUS403のステンレスが使用される。
【0025】
ただし、金属ベルトは、マルテンサイト系のステンレスとして、SUS403以外に、たとえばSUS410、SUS410S、SUS410J1、SUS416、SUS420J1、SUS420J2、SUS420F、SUS429J1、SUS431、SUS440A、SUS440B、SUS440C、SUS440F等のステンレスも使用できる。また、フィライト系のステンレスとして、SUS405、SUS410L、SUS429、SUS430、SUS430F、SUS430LX、SUS434、SUS436L、SUS444、SUS447J1等のSUS4xx系のステンレス、さらにSUSXM27等のステンレスも使用できる。さらに、冷間加工されたオーステナイト系のステンレスとしては、最も一般的に使用されるSUS304、冷間加工で高強度にできるSUS301、SUS304にCuを添加して冷間加工性を向上してなるステンレスであるSUSXM7、さらにSUS3xxやSUS2xx等のステンレスが使用できる。
【0026】
さらに、金属ベルト2は、誘導加熱される金属を含むクラッド材も使用できる。クラッド材の金属ベルトは、少なくともひとつの層を、マルテンサイト系のステンレス、フィライト系のステンレス、又は冷間加工されたオーステナイト系のステンレスとする。さらに、クラッド材からなる金属ベルトは、表面層をステンレスとし、内部層を鉄又は鉄合金のクラッド材とすることができる。この金属ベルトは、内部層で誘導加熱されるので、表面のステンレス層には誘導加熱されない、すなわち非磁性のステンレス、たとえばCr−Ni系のステンレスであるオーステナイト系のステンレス、すなわち18−8系のステンレスも使用できる。
【0027】
加圧ヘッド1は、図8と図9に示すように、プレス面1aに金属ベルト2を配設して、上下の金属ベルト2の間で被プレス物20を挟んでプレスする。加圧ヘッド1は、周囲に周壁13を設けて、周壁13の内側を加圧チャンバ10としている。周壁13は、パッキン14を入れる凹部溝15を金属ベルト2との接触面に設けている。凹部溝15に入れたパッキン14は、プレス状態で金属ベルト2の表面に密着して、加圧チャンバ10を密閉する。
【0028】
加圧ヘッド1の間にあって被プレス物20の上下に配設される一対のエンドレス金属ベルト2は、移送機構4で移動される。移送機構4は、図4に示すように、連続ホットプレス装置の両端に配置されて金属ベルト2が掛けられている一対のロール41と、これらのロール41を回転させる回転機構(図示せず)とを備えている。移送機構4は、上下のロール41を回転させて、上下に配設される一対のエンドレス金属ベルト2を、一緒に同じ方向に移動させる。上下に配設される一対のエンドレス金属ベルト2は、被プレス物20であるゴムシート等のワークを挟着する状態で同じ方向に移動される。ロール41に掛けているエンドレス金属ベルト2は、加圧ヘッド1のプレス面1aと反対面に配置される。エンドレス金属ベルト2は、被プレス物20のワークをプレスする状態で停止され、プレス面1aに被プレス物20のゴムシート等のワークを搬入し、あるいは加硫されたゴムシートを排出するときに、一緒に移動される。
【0029】
図4の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2の移送方向に並べて、加熱用の加圧ヘッド1と、この加圧ヘッドを通過して加熱された被プレス物20を冷却する冷却用の加圧ヘッド5とを備えている。加熱用の加圧ヘッド1が一対の金属ベルト2を挟み、金属ベルト2で被プレス物20を挟んで加熱するために加熱機構3が設けられる。
【0030】
加熱機構3は、図9に示すように、加圧チャンバ10の内部であって金属ベルト2の裏面に対向するように配置している励磁コイル31と、この励磁コイル31に高周波電力を供給する高周波電源32とを備えている。励磁コイル31は加圧ヘッド1に固定され、金属ベルト2は加圧ヘッド1に対して相対的に移動される。したがって、金属ベルト2と励磁コイル31は、互いに相対移動できるように、すなわち金属ベルト2が励磁コイル31に対して相対的に移動しながら、加圧チャンバ10の開口部を閉塞するように励磁コイル31を加圧ヘッド1に固定している。励磁コイル31は、金属ベルト2に接近して効率よく金属ベルト2を誘導加熱する。したがって、励磁コイル31は、できる限り金属ベルト2の裏面に接近して配設される。ただ、励磁コイル31は金属ベルト2から絶縁する必要があるので、耐熱性があって摩擦抵抗が小さく、さらに磁気シールドしない絶縁材、たとえばカーボン繊維で補強したプラスチックなどを介して金属ベルト2の裏面に接触し、あるいは金属ベルト2の裏面に接近するが接触しない位置に固定される。
【0031】
高周波電源32は、励磁コイル31に高周波電力を供給して誘導加熱する。高周波電源32が金属ベルト2を設定温度に加熱するために、高周波電源32は金属ベルト2の温度センサ33を備えている。高周波電源32は、温度センサ33の検出温度で金属ベルト2に供給する高周波電力を制御して、金属ベルト2を設定温度に保持する。加圧チャンバ10の励磁コイル31に接続している高周波電源32の出力は、金属ベルト2の大きさや厚さを考慮して最適値に設定されるが、たとえば1kW〜数十kWに設定される。高周波電源32の出力を大きくして、金属ベルト2の加熱時間を短縮できる。このため、高周波電源32の出力は、金属ベルト2の加熱時間、金属ベルト2の熱容量、被プレス物20の熱容量を考慮して最適値に設定される。また、高周波電源32の周波数は、20kHz〜100MHzに設定される。高周波電源の周波数が高くなると、高周波電源に使用する素子に高速用の素子を使用する必要があるので、FETやMOSFETなどのパワートランジスタのコストが高くなり、反対に周波数が低くなると効率よく金属ベルトを誘導加熱するのが難しくなり、また低周波ノイズが大きくなるなどの弊害がある。したがって、高周波電源の周波数は、好ましくは100kHz〜10MHzとする。
【0032】
高周波電源32は、温度センサ33の検出温度を設定温度に比較し、励磁コイル31に出力する高周波電力をオンオフに制御し、あるいは検出温度と設定温度との温度差で励磁コイル31に供給する高周波電力の大きさをコントロールして、金属ベルト2を設定温度に加熱する。金属ベルト2の設定温度は、加圧状態で加熱される被プレス物20によって一定ではなく、たとえば150℃ないし500℃に設定される。たとえば、ゴムシートの加硫に使用される連続ホットプレス装置は、金属ベルト2の設定温度を約200℃とする。
【0033】
図4と図10に示す連続ホットプレス装置は、加圧チャンバ10の開口部に移送される金属ベルト2を予備加熱する予備加熱機6を備えている。この装置は、予備加熱機6で予備加熱された金属ベルト2を加圧チャンバ10の開口部に移送して、さらに加圧チャンバ10に設けている励磁コイル31で設定温度に誘導加熱する。さらに、本発明の連続ホットプレス装置は、金属ベルト2の移送方向に複数の予備加熱機6を設けて、金属ベルト2の温度を次第に高くすることで、金属ベルト2の熱歪みを防止しながら設定温度に加熱できる。この連続ホットプレス装置は、加圧チャンバ10に接近する側に配設している予備加熱機6の金属ベルト2の加熱温度を加圧チャンバ10から離れた側に配設している予備加熱機6の金属ベルト2の加熱温度よりも高くすることで、金属ベルト2の温度を次第に高くする。
【0034】
図4と図10の連続ホットプレス装置は、3段の予備加熱機6を設けて、金属ベルト2の温度を次第に高くして400℃まで加熱している。この装置の第1段の予備加熱機6Aは、冷却用の加圧ヘッド5を通過して冷却された金属ベルト2を150℃に加熱している。第2段の予備加熱機6Bは、第1段の予備加熱機6Aで加熱された金属ベルト2を250℃に加熱している。第3段の予備加熱機6Cは、第2段の予備加熱機6Bで加熱された金属ベルト2を350℃に加熱している。最後に、加圧ヘッド1に設けた加熱機構3は、金属ベルト2の温度を400℃に加熱している。
【0035】
予備加熱機6は、金属ベルト2を加圧チャンバ10で加熱する加熱機構3と同じように、金属ベルト2に対向して配設している予備加熱励磁コイル61と、この予備加熱励磁コイル61に高周波電力を供給する予備加熱電源62とを備える。図10に示す第1段の予備加熱機6Aと第2段の予備加熱機6Bは、予備加熱励磁コイル61を、移送機構4のロール41の外周に沿って、金属ベルト2の表面に対向して配置している。第3段の予備加熱機6Cは、第1段の予備加熱機6Aと第2段の予備加熱機6Bを配置してなるロール41と、加圧ヘッド1との間に位置して、金属ベルト2の裏面に対向して予備加熱励磁コイル61を配設している。この予備加熱機6は、前述した加熱機構3と同じように、加熱する金属ベルト2の温度を温度センサ63で検出して、金属ベルト2の温度が設定温度となるように、予備加熱電源62から予備加熱励磁コイル61に供給する電力を制御して、金属ベルト2を設定温度にコントロールする。図10の連続ホットプレス装置は、予備加熱機6に励磁コイルと高周波電源を使用するが、予備加熱機には、赤外線ヒーター等も使用できる。
【0036】
冷却用の加圧ヘッド5は、図4と図11に示すように、プレス面5aに金属ベルト2を配設して、上下の金属ベルト2の間で被プレス物20を挟んでプレスしながら、金属ベルト2を冷却する。この冷却用の加圧ヘッド5は、前述の加熱用の加圧ヘッド1と同様に、上下に第1の加圧ヘッド5Aと第2の加圧ヘッド5Bを配設しており、図11の拡大断面図に示すように、プレス面5aに、加圧流体51を供給する加圧チャンバ50を設けている。加圧チャンバ50は、対向する冷却用の加圧ヘッド5との対向面を開口して、この開口部を閉塞するように金属ベルト2を配設している。冷却用の加圧ヘッド5は、周囲に周壁53を設けて、周壁53の内側を加圧チャンバ50としている。周壁53は、パッキン54を入れる凹部溝55を金属ベルト2との接触面に設けている。凹部溝55に入れたパッキン54は、プレス状態で金属ベルト2の表面に密着して、加圧チャンバ50を密閉する。この冷却用の加圧ヘッド5は、油圧シリンダー59で、第1の加圧ヘッド5Aを上下に移動させて一対の加圧ヘッドを指定の隙間に保持する。さらに、上下に配設された第1の加圧ヘッド5Aと第2の加圧ヘッド5Bのプレス面5aに金属ベルト2を配設して、上下の金属ベルト2の間で被プレス物20を挟んでプレスする状態で、加圧チャンバ50に加圧流体51を供給して金属ベルト2で被プレス物20のゴムシートを加圧しながら、金属ベルト2を冷却する。したがって、冷却用の加圧ヘッド5の加圧チャンバ50には、加圧流体51として、冷却されたオイルを供給している。冷却用の加圧ヘッド5の加圧チャンバ50に供給される加圧流体51は、たとえば、金属ベルト2を100℃に冷却する。
【0037】
さらに、連続ホットプレス装置は、厚さ調整機構7で一対の加圧ヘッド1を所定の位置に固定して、金属ベルト2を周壁13に密着させて金属ベルト2で加圧チャンバ10を閉塞し、加圧ヘッド1で被プレス物20をプレスする状態として、加圧チャンバ10に加圧流体11が供給される。加圧チャンバ10に供給される加圧流体11は、金属ベルト2を介して被プレス物20のゴムシートをプレスする。さらに、加圧チャンバ10に供給される加圧流体11は、加熱、加圧された流体として、加圧流体11で金属ベルト2を加熱することもできる。この連続ホットプレス装置は、加圧チャンバに供給される加熱された加圧流体と、加熱機構の両方で効率よく金属ベルトを加熱できる。ただ、金属ベルトは、加熱機構のみで加熱する構造として、加圧チャンバに供給される加圧流体を、加熱されない流体とすることもできる。
【0038】
ゴムシート等のシート状の被プレス物20をプレスする加圧ヘッド1は、高い圧力のプレスで、一対の加圧ヘッド1の位置を正確にコントロールして、加圧ヘッド1の隙間を正確に一定に保持することが大切である。隙間のわずかなずれが製品の品質や生産効率に影響を与えるからである。とくに、加圧ヘッド1と金属ベルト2の間に加圧チャンバ10を設けてここに加圧流体11を圧入して、金属ベルト2でゴムシート等の被プレス物20をプレスする装置は、加圧ヘッド1のずれが金属ベルト2を蛇行させる原因となるので、生産能率を低下させないために、加圧ヘッド1の隙間を極めて高精度にコントロールすることが要求される。たとえば、ゴムシートの加硫装置にあっては、ゴムシートをプレスする金属ベルト2の水平方向の横ずれを2〜3mm以下に制御することが要求される。
【0039】
図に示す連続ホットプレス装置は、以下に詳述する構造の厚さ調整機構7で、一対の加圧ヘッド1の隙間を極めて正確にコントロールする。連続ホットプレス装置は、加圧ヘッド1の両側に複数の厚さ調整機構7を設けて、加圧ヘッド1の隙間を一定に保持する。図5ないし図7に示す装置は、加圧ヘッド1の両側にふたつ、全体で4組の厚さ調整機構7を設けている。厚さ調整機構7は、図7、図12及び図13に示すように、第1の加圧ヘッド1Aに垂直姿勢に固定しているガイドロッド74と、このガイドロッド74を挿入できるように第2の加圧ヘッド1Bに固定しているガイド壁76と、ガイドロッド74をガイド壁76に挿入する状態で、ガイド壁76とガイドロッド74の貫通孔77、75に挿入して、ガイドロッド74とガイド壁76とを一定の位置に固定するクサビ78と、このクサビ78をガイドロッド74とガイド壁76の貫通孔75、77に挿入する挿入機構79とを備える。
【0040】
ガイドロッド74は、往復運動機構8による加圧ヘッド1の往復運動方向に延長する姿勢で第1の加圧ヘッド1Aに固定している。図の連続ホットプレス装置は、第1の加圧ヘッド1Aを上下に往復運動させて、被プレス物20のゴムシートをプレスする。したがって、ガイドロッド74は上下方向に延長されて、下の第2の加圧ヘッド1Bに固定しているガイド壁76に挿入されるように下向きに突出して設けている。図のガイドロッド74は、下端に交換プレート87を交換できるように固定している。交換プレート87は硬い摩耗の少ない金属板で、止ネジ88を介してガイドロッド74の下端に交換できるように固定している。このガイドロッド74は、交換プレート87が摩耗すると新しいものに交換できる。
【0041】
ガイドロッド74は四角柱状で、横向きに、図において水平方向にクサビ78を挿入する貫通孔75を開口している。ガイドロッドは、必ずしも四角柱状とする必要はない。ガイドロッドは、多角柱状、円柱状、楕円筒状とすることもできる。
【0042】
図に示すガイドロッド74の貫通孔75は四角形として、下面をクサビ78の下面に沿う摺動面75Aとしている。この貫通孔75は、摺動面75Aを傾斜する面としている。傾斜する摺動面75Aは、クサビ78の下面の傾斜面78Aに面接触状態で摺動するようにしている。この構造は、貫通孔75に挿入されるクサビ78の下面に面接触状態で摺動して、すなわち広い面積で接触しながら摺動して、摩耗を少なくできる。ただ、貫通孔の下面は、必ずしもクサビの下面に沿う傾斜面とする必要はない。ガイドロッド74の貫通孔75の上面は、好ましくは、図12に示すように、貫通孔75にクサビ78を挿入する状態で、クサビ78の上面との間にクリアランスを設ける。この貫通孔75は、上面をクサビ78の上面から離して、クサビ78の上面をガイド壁76に設けた貫通孔77の上面に当接するまで挿入できる。ただ、ガイドロッドに設ける貫通孔は、ガイド壁の貫通孔にクサビを挿入して、クサビの上面をガイド壁の貫通孔の上面に接触させる状態で、ガイドロッドの貫通孔の上面もクサビの上面に接触させることもできる。
【0043】
図13の厚さ調整機構7は、ガイドロッド74を挿入するガイド壁76を筒状のガイド筒89としている。ガイド筒89のガイド壁76は、対向する壁面を一対のガイド壁76としている。この図のガイド壁76は、四角形のガイド筒89の対向する壁面をガイド壁76としている。このガイド筒89のガイド壁76は、ここにガイドロッド74を挿入して、ガイドロッド74の水平方向のずれを阻止できる。また、一対のガイド壁76の間にガイドロッド74を挿入して、ガイドロッド74とその両側のガイド壁76の貫通孔75、77にクサビ78を挿入するので、加圧ヘッド1に強いプレス力が作用する状態で、クサビ78を特定の位置に特定の姿勢で保持できる。クサビ78の位置がずれないのは、一対の加圧ヘッド1に作用するプレス力が、クサビ78の上下面である対向面にバランスして作用して打ち消されるからである。また、クサビ78の姿勢がずれないのは、ガイドロッド74の両側にガイド壁76があり、ガイドロッド74とガイド壁76でもって、ガイドロッド74の接触面の両側に、ガイド壁76でもってバランスよく逆方向の力が作用するからである。また、クサビ78は加圧ヘッド1にプレス力が作用しない状態で、ガイドロッド74とガイド壁76の貫通孔75、77に出し入れされるので、クサビ78の挿入機構79を小さいシリンダ等の簡単な機構にできる。ただ、厚さ調整機構のガイド壁は、ガイド筒に特定しない。ガイド壁は、ガイドロッドの片面に配設される壁面とし、あるいはガイドロッドの両側に設けた一対のガイド壁を連結しない構造とすることもできる。
【0044】
ガイド壁76は、ガイドロッド74を挿入する状態で、クサビ78を挿入する貫通孔77を設けている。図13の厚さ調整機構7は、ガイド壁76の貫通孔77を四角形とするが、この貫通孔も、ガイドロッドの貫通孔と同じように、必ずしも四角形に特定する必要はなく、クサビを挿入できる種々の形状にできる。
【0045】
ガイド壁76の貫通孔77は、図12の断面図に示すように、ガイドロッド74の貫通孔75とは反対に、上面を摺動面77Aとしてクサビ78の上面に摺動状態で接触させて、下面をクサビ78の下面から離してクリアランスを設けている。この構造は、クサビ78をスムーズに挿入できる。ただ、ガイド壁の貫通孔も、クサビを貫通孔に挿入して、ガイドロッドとガイド壁を特定の位置に停止する状態で、下面をクサビの下面に接触させることもできる。
【0046】
ガイド壁76の貫通孔77の上面は、クサビ78の上面の摺動面77Aとなる。この貫通孔77は、摺動面77Aである上面を傾斜する面としている。傾斜する貫通孔77の上面の摺動面77Aは、クサビ78の上面の傾斜面78Bに面接触状態で摺動するようにしている。この構造は、貫通孔77に挿入されるクサビ78の上面に面接触状態で摺動して、すなわち広い面積で接触しながら摺動して、摩耗を少なくできる。ただ、貫通孔の上面は、必ずしもクサビの上面に沿う傾斜面とする必要はない。
【0047】
図12と図13に示すクサビ78は、貫通孔75に挿入する先端に向かって、上面を下り勾配に、下面を上り勾配に傾斜させている。このクサビ78は、図12に示すように、ガイドロッド74とガイド壁76の貫通孔75、77に挿入されて、上面をガイド壁76の貫通孔77の上面に摺動させて、ガイド壁76を押し上げ、下面をガイドロッド74の貫通孔75の下面に摺動させてガイドロッド74を押し下げて、ガイドロッド74とガイド壁76を一定の位置に固定する。図のクサビ78は、上面と下面の両方を挿入方向に対して傾斜面78A、78Bとしているが、クサビは下面のみを傾斜面として、上面を挿入方向と平行な面とすることもできる。
【0048】
クサビ78は、挿入機構79で往復運動されて、貫通孔75、77に挿入され、また貫通孔75、77から引き抜かれる。挿入機構79は、ガイドロッド74をガイド壁76に挿入する状態で、両者の貫通孔75、77にクサビ78を挿入して、ガイドロッド74とガイド壁76を一定の位置に連結する。この状態で、一対の加圧ヘッド1は所定の隙間に保持されて、ゴムシート等の被プレス物20をプレスする状態に保持する。また、挿入機構79は、クサビ78を貫通孔75、77から引き抜いて、ガイドロッド74をガイド壁76に対して上昇できる状態とする。この状態でゴムシート等の被プレス物20をプレスしない状態として、金属ベルト2を移動させる。複数の厚さ調整機構7の挿入機構79は、クサビ78を一緒に往復運動させる。図の連続ホットプレス装置は、挿入機構79をシリンダーとする。ただ、挿入機構は、クサビを往復運動できる全ての機構とすることができる。
【0049】
図12と図13の厚さ調整機構7は、ガイドロッド74の先端を当接させるストッパ80を設けている。ストッパ80は、ガイドロッド74が降下する位置を特定する。したがって、ストッパ80を備える厚さ調整機構7は、ストッパ80でガイドロッド74の降下位置を特定して、クサビ78を貫通孔75、77に挿入する。この厚さ調整機構7は、ストッパ80でガイドロッド74の降下位置を正確に制御し、この状態で貫通孔75、77にクサビ78を挿入して、加圧ヘッド1の隙間をストッパ80で調整された状態に保持する。このため、一対の加圧ヘッド1の隙間をより正確にできる。ただ、連続ホットプレス装置は、必ずしもストッパを設ける必要はない。それは、クサビを貫通孔に挿入する位置で、ガイドロッドとガイド壁との連結位置を調整することもできるからである。
【0050】
図12と図13の厚さ調整機構7は、ガイドロッド74のガイド壁76に対する降下位置を特定するストッパ80を設けている。これらの図の厚さ調整機構7は、ストッパ80をガイド壁76の下端に設けている。ただ、ストッパは、図示しないが、第2の加圧ヘッドに連結することもできる。ガイド壁76は第2の加圧ヘッド1Bに連結しているので、第2の加圧ヘッドに連結されるストッパは、第2の加圧ヘッドを介してガイド壁に連結される。
【0051】
ストッパ80は、ガイドロッド74の挿入方向、図において上下方向に移動して、ガイドロッド74をガイド壁76に挿入する上下位置、図においてガイドロッド74の降下位置を調整する。ストッパ80は、ガイドロッド74の先端(図において下端)に当たって、ガイドロッド74がガイド壁76に挿入される位置を特定する。したがって、ストッパ80は、ガイドロッド74の停止位置を上下に調整できるように、上下に移動でき、かつ所定の移動位置に停止できるようにガイド壁76に設けている。
【0052】
図12と図13のストッパ80は、ネジ棒81と、このネジ棒81にねじ込んでいる調整ネジ82を備える。ネジ棒81は、ガイド筒89の端部、図においてガイド筒89の下端にねじ込んでいる。ガイド筒89は、ネジ棒81をねじ込む雌ねじ89Aを下端に設けている。ネジ棒81は、これを回転するために、下端に角頭81Aを突出して設けている。ネジ棒81が回転されると、ガイド筒89の雌ねじ89Aに沿って上下に移動して、位置が変更される。上下に移動されたネジ棒81は、移動された位置で停止されて、ガイドロッド74の下端位置を特定する。
【0053】
図のストッパ80は、ネジ棒81の上端にガイドロッド74の先端に当接る調整ネジ82をねじ込んでおり、この調整ネジ82をガイドロッド74の下端に当たるようにしている。調整ネジ82は、ガイドロッド74の往復運動方向に移動できるが回転しないようにネジ棒81にねじ込んでいる。ネジ棒81は、調整ネジ82をねじ込む雌ねじ孔81Bを上端部に設けている。この雌ねじ孔81Bは、中心軸をガイドロッド74の往復運動方向としている。図の調整ネジ82は、角頭82Aをガイド筒89の内面に摺動させて、回転しないようにガイド筒89に保持される。調整ネジ82の角頭82Aは、その外形をガイド筒89の内形よりもわずかに小さい形状として、回転しないが軸方向には移動できるようにしている。回転しない調整ネジ82は、ネジ棒81が回転されると、相対的にはネジ棒81の回転方向の逆方向に回転される。ネジ棒81と調整ネジ82のねじ山は同じ方向にある。たとえばネジ棒81のねじ山を右ねじとする場合、調整ネジ82のねじ山も右ねじである。したがって、ネジ棒81が上昇方向に回転されると、調整ネジ82は降下する。調整ネジ82がネジ棒81に対して逆方向に回転されるからである。ネジ棒81と調整ネジ82は、1回転で移動するねじ山のピッチが異なる。互いにピッチが異なるネジ棒81と調整ネジ82は、互いに逆方向に移動する距離が異なり、移動距離の差が調整ネジ82の先端の移動距離となる。この構造は、ネジ棒81を1回転させて、調整ネジ82の移動距離をねじ山の1ピッチよりも小さくできる。このため、ネジ棒81を回転してより高精度でガイドロッド74の位置を調整できる。ただ、ストッパは、ネジ棒の先端を直接にガイドロッドの先端に当てて、ガイドロッドの位置を調整することもできる。
【0054】
以上の連続ホットプレス装置は、以下のようにして被プレス物20のゴムシートをプレスして加硫する。
往復運動機構8でもって、上の加圧ヘッド1である第1の加圧ヘッド1Aを上昇位置とする。往復運動機構8は、油圧シリンダー19で第1の加圧ヘッド1Aを上昇させる。この連続ホットプレス装置は、往復運動機構8の油圧シリンダー19で、第1の加圧ヘッド1Aをプレスして、被プレス物20をプレスするのではない。往復運動機構8は、第1の加圧ヘッド1Aを上下に移動すれば足りる。それは、厚さ調整機構7で一対の加圧ヘッド1を指定の隙間に保持して、加圧ヘッド1の加圧チャンバ10に供給する加圧流体11で被プレス物20のゴムシートをプレスするからである。したがって、往復運動機構8には、被プレス物20をプレスする強いプレス力は要求されない。
【0055】
第1の加圧ヘッド1Aを上昇位置として、第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bの間に被プレス物20のゴムシートを搬入する。被プレス物20のゴムシートは、上下から金属ベルト2で挟んで加圧ヘッド1の間に搬入される。
【0056】
第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bの間に被プレス物20のゴムシートを搬入した後、往復運動機構8が第1の加圧ヘッド1Aを降下させる。このとき、第1の加圧ヘッド1Aに連結しているガイドロッド74は、第2の加圧ヘッド1Bに連結しているガイド壁76の間に挿入される。第1の加圧ヘッド1Aは、ガイドロッド74の下端がストッパ80に当たるまで降下される。
【0057】
ガイドロッド74の下端がストッパ80に当たる状態で、挿入機構79は、ガイド壁76とガイドロッド74の貫通孔77、75にクサビ78を挿入して厚さ調整機構7をロック状態として、一対の加圧ヘッド1の隙間を一定に保持する。クサビ78は、図8に示すように、上面でガイド壁76の貫通孔77の上面を押圧し、下面でガイドロッド74の貫通孔75の下面を押圧して、ガイドロッド74とガイド壁76とを所定の位置に固定する。この状態で、ガイドロッド74とガイド壁76との相対位置が特定され、ガイドロッド74とガイド壁76を介して第1の加圧ヘッド1Aと第2の加圧ヘッド1Bの隙間が一定に保持される。
【0058】
その後、加圧チャンバ10に加圧流体11を供給する。加圧流体11が供給される加圧チャンバ10は、開口部を金属ベルト2で閉塞する状態となっている。加圧チャンバ10に供給される加圧流体11は、圧力を5MPaとする油である。加圧チャンバ10に供給される加圧流体11は、金属ベルト2を介して被プレス物20のゴムシートを加熱状態で加圧する。このとき、加圧流体11が被プレス物20をプレスする総圧力は加圧流体11の圧力と加圧チャンバ10の開口面積の積になるが、この総圧力は500トン〜数千トンとなる。
【0059】
さらに、連続ホットプレス装置は、加圧ヘッド1に移送される金属ベルト2を予備加熱機6で予備加熱すると共に、加圧チャンバ10の開口部を移送する金属ベルト2を加熱器光3で加熱する。予備加熱機6は、金属ベルト2の裏面に対向して配設している予備加熱励磁コイル61に予備加熱電源62から高周波電力を供給して、金属ベルト2を設定温度に誘導加熱する。加熱機構3は、加圧チャンバ10の内部において、金属ベルト2の裏面に対向して配置している励磁コイル31に高周波電源32から高周波電力を供給して、金属ベルト2を設定温度に誘導加熱する。図4の連続ホットプレス装置は、第1段の予備加熱機6Aで金属ベルト2を150℃に加熱し、第1段の予備加熱機6Aで加熱された金属ベルト2を第2段の予備加熱機6Bで250℃に加熱し、第2段の予備加熱機6Bで加熱された金属ベルト2を第3段の予備加熱機6で350℃に加熱する。さらに、最後に加圧ヘッド1に設けた加熱機構3で金属ベルト2の温度を400℃に加熱する。
【0060】
以上のように、連続ホットプレス装置は、厚さ調整機構7で、一対の加圧ヘッド1の隙間を一定に保持する状態で、金属ベルト2を移動させて、金属ベルト2間の被プレス物20であるゴムシートを連続的に加熱、加圧して加硫する。
【符号の説明】
【0061】
1…加圧ヘッド 1A…第1の加圧ヘッド
1B…第2の加圧ヘッド
1a…プレス面
2…金属ベルト
3…加熱機構
4…移送機構
5…冷却用の加圧ヘッド 5A…第1の加圧ヘッド
5B…第2の加圧ヘッド
5a…プレス面
6…予備加熱機 6A…第1段の予備加熱機
6B…第2段の予備加熱機
6C…第3段の予備加熱機
7…厚さ調整機構
8…往復運動機構
10…加圧チャンバ
11…加圧流体
13…周壁
14…パッキン
15…凹部溝
19…油圧シリンダー
20…被プレス物
31…励磁コイル
32…高周波電源
33…温度センサ
41…ロール
50…加圧チャンバ
51…加圧流体
53…周壁
54…パッキン
55…凹部溝
59…油圧シリンダー
61…予備加熱励磁コイル
62…予備加熱電源
63…温度センサ
74…ガイドロッド
75…貫通孔 75A…摺動面
76…ガイド壁
77…貫通孔 77A…摺動面
78…クサビ 78A…傾斜面
78B…傾斜面
79…挿入機構
80…ストッパ
81…ネジ棒 81A…角頭
81B…雌ねじ孔
82…調整ネジ 82A…角頭
87…交換プレート
88…ネジ
89…ガイド筒 89A…雌ねじ
101…加圧ヘッド 101a…プレス面
102…金属ベルト
110…加圧チャンバ
111…加圧流体
120…被プレス物
201…加熱板
202…ベルト

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向して配設されると共に、互いに対向する面に開口部を有する加圧流体(11)が供給される加圧チャンバ(10)を備える第1の加圧ヘッド(1A)及び第2の加圧ヘッド(1B)からなる一対の加圧ヘッド(1)と、加圧ヘッド(1)に設けている加圧チャンバ(10)の開口部を閉塞する状態で加圧ヘッド(1)に対して相対的に移動できるように対向して配設してなる一対のエンドレスの金属ベルト(2)と、この金属ベルト(2)を移動させる移送機構(4)と、前記金属ベルト(2)を加熱する加熱機構(3)とを備え、
前記金属ベルト(2)が加圧チャンバ(10)の開口部を閉塞する状態で加圧チャンバ(10)に加圧流体(11)が供給され、かつ前記加熱機構(3)で金属ベルト(2)が加熱され、
加熱される一対の金属ベルト(2)が、前記加圧チャンバ(10)に供給される加圧流体(11)の圧力で被プレス物(20)を対向する表面で挟み、加熱機構(3)に加熱されて加熱状態でプレスしながら移送するようにしてなる連続ホットプレス装置であって、
前記加熱機構(3)が、前記加圧チャンバ(10)の内部であって金属ベルト(2)の裏面に対向するように配置してなる励磁コイル(31)と、この励磁コイル(31)に高周波電力を供給する高周波電源(32)とを備えており、
前記金属ベルト(2)は、励磁コイル(31)の高周波磁界で発熱する誘導加熱金属からなるベルトであって、前記励磁コイル(31)に対して相対移動できるように加圧チャンバ(10)の開口部を閉塞しており、
前記高周波電源(32)から供給される高周波電力で励磁コイル(31)が前記金属ベルト(2)を誘導加熱し、加圧流体(11)で加圧された金属ベルト(2)が被プレス物(20)を加熱、加圧状態で移送するようにしてなる連続ホットプレス装置。
【請求項2】
前記エンドレスの金属ベルト(2)が、マルテンサイト系とフィライト系と冷間加工されたオーステナイト系のステンレスである請求項1に記載される連続ホットプレス装置。
【請求項3】
前記エンドレスの金属ベルト(2)がクラッド材で、クラッド材の少なくともひとつの層がマルテンサイト系とフィライト系と冷間加工されたオーステナイト系のステンレスのクラッド材のいずれかである請求項1に記載されるに記載される連続ホットプレス装置。
【請求項4】
前記エンドレスの金属ベルト(2)が、表面層をステンレスとし、内部層を鉄又は鉄合金のクラッド材としてなる請求項1に記載されるに記載される連続ホットプレス装置。
【請求項5】
前記高周波電源(32)が、金属ベルト(2)の温度を検出する温度センサ(33)を備えており、高周波電源(32)が温度センサ(33)の検出温度で励磁コイル(31)に供給する高周波電力を制御して金属ベルト(2)の温度を設定温度にコントロールしてなる請求項1に記載される連続ホットプレス装置。
【請求項6】
前記加圧チャンバ(10)の開口部に移送される金属ベルト(2)を予備加熱する予備加熱機(6)を備えており、この予備加熱機(6)で予備加熱された金属ベルト(2)が前記加圧チャンバ(10)の開口部に移送されて加熱機構(3)で加熱される請求項1に記載される連続ホットプレス装置。
【請求項7】
前記金属ベルト(2)の移送方向に配設してなる複数の予備加熱機(6)を備え、加圧チャンバ(10)に接近する側に配設している予備加熱機(6)の金属ベルト(2)の加熱温度を加圧チャンバ(10)から離れた側に配設している予備加熱機(6)の金属ベルト(2)の加熱温度よりも高くしている請求項6に記載される連続ホットプレス装置。
【請求項8】
前記予備加熱機(6)が、金属ベルト(2)の裏面に対向して配設してなる予備加熱励磁コイル(61)と、この予備加熱励磁コイル(61)に高周波電力を供給する予備加熱電源(62)とを備える請求項6に記載される連続ホットプレス装置。
【請求項9】
前記一対の加圧ヘッド(1)の一方又は両方を、互いに接近し又離れる方向に往復運動させる往復運動機構(2)と、前記第1の加圧ヘッド(1A)と第2の加圧ヘッド(1B)とをプレス状態におけるプレス面(1a)の間隔を調整できるように連結してなる厚さ調整機構(7)を備える請求項1に記載される連続ホットプレス装置。
【請求項10】
前記金属ベルト(2)でプレスされる被プレス物(20)がゴムシートで、加圧チャンバ(10)に供給される加圧流体(11)が加圧された流体で、加圧チャンバ(10)に供給される加圧流体(11)が金属ベルト(2)を介して被プレス物(20)のゴムシートを加圧して加硫する請求項1に記載される連続ホットプレス装置連続ホットプレス装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2010−274295(P2010−274295A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128305(P2009−128305)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(509149312)
【出願人】(595056675)サンドビック株式会社 (5)
【Fターム(参考)】