説明

連続煮釜

【課題】均一な品質の煮呉を得ることが可能な連続煮釜を提供する。
【解決手段】上部呉出口15より上方に配されたセンサ窓33を介して、センサ窓33の高さ位置における気体成分101の有無を光センサ34で検知し、該光センサ34により気体成分101の存在が検知されると、エアー排出弁35を開操作し、開放されたエアー排出路32から単位釜7内の気体成分101(加熱用の蒸気、及び呉100から発泡した気体)を脱気するようにした。これによれば、単位釜7内に余分な気体成分101が溜まることを解消して、加熱用の蒸気の熱を呉100に効率的に伝えることができる。従って、生煮えの煮呉が生じることを防いで、均一な煮上がり状態の煮呉を得ることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐、油揚げ、豆乳の製造過程において、原料大豆を粉砕後、加水してなる生呉に対して、先入れ先出し方式で蒸気煮沸加工を施して、煮呉を得るための連続煮釜に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の先入れ先出し方式により生呉に対して蒸気煮沸加工を施して、煮呉を得るための連続煮釜、すなわち蒸気による連続加熱方式による煮沸釜は、例えば特許文献1に開示がある。特許文献1の連続煮沸釜は、屈曲形成された煮沸用配管と、該煮沸用配管に蒸気を供給する蒸気供給手段とで構成される加熱工程を複数個備える。各工程の間には、流体の圧力を一定に保つための背圧弁が設けられている。特許文献1の「発明の効果」の欄には、背圧弁を設けたことで得られる作用効果として「蒸気供給手段から供給される蒸気圧を低く抑えて、大豆タンパク質を穏やかに加熱することができること」、「豆乳の焦げ付きを防ぐことができること」が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−259820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の連続煮釜は、煮沸用配管内が所定圧に至った時のみに、背圧弁が間欠的に開放される形態である。このため、背圧弁の開放時に蒸気等の気体成分(蒸気及び呉からの発泡気体)のみが通過する場合があり、呉(生呉、及び加熱途中の生呉)の煮沸用配管内での滞在時間(加熱時間)を正確に制御することが困難である。すなわち、背圧弁の開放時に、気体のみが通過し、呉が殆ど背圧弁を通過しない場合があり、この場合には結果として生呉が長時間煮沸用配管内に留まり、呉に対する加熱が過剰になるという問題が生じる。一方、蒸気等の気体に乗って、一部の呉が煮沸用配管内に所定時間留まることなく連続煮釜から送出される場合もあり(所謂「呉が走る」という問題)、この場合には呉に対する加熱が不足して、生煮えの煮呉ができるという問題が生じる。
【0005】
以上のように、従来の連続煮釜では、煮沸用配管内における呉の滞在時間(加熱時間)を正確に制御することが難しく、均一な品質の煮呉を得ることが困難であった。換言すれば、先入れ先出し方式による正確な加熱処理を行うことが困難であり、十分に均質な加熱処理が行えず、得られた煮呉中に煮過ぎた煮呉や、生煮えの煮呉が混在することがあった。また、蒸気及び呉からの発泡気体といった気体成分が煮沸用配管内に溜まると、気体成分に多くの熱が奪われて、呉に対する加熱処理を効率的に行うことができず、得られた煮呉が生煮えとなりやすく、その点にも不利もあった。
【0006】
また、従来の連続煮釜では、蒸気及び呉からの発泡気体といった気体成分が煮沸用配管内に溜まり易く、煮沸用配管内における呉のスムーズな移動が阻害されることが避けられず、生呉の供給用ポンプに求められる送給能力が大きくなる不利もある。実際、従来のこの種の連続煮釜では、釜の最下流に位置する排出口(煮沸用配管の最下流の排出口)から煮呉がスムーズに吐出されず、多くの気体を含んだ状態で吐出されることが多く、「ゴボ、ゴボ」と間欠的に煮呉が排出されることも広く知られる事実である。
【0007】
なお、煮沸用配管内にジャマ板を設けることで、呉が走ることを防止することも公知であるが(文献不詳)、ジャマ板を設けたぶんだけ煮沸用配管の洗浄が困難となることが避けられず、衛生上の問題が残る。また、ジャマ板により長時間に亘って移動が規制された呉が生じるおそれがあり、送入された生呉の全体に対して均一に加熱処理を施すことが困難であり、均一な品質の煮呉を得ることができない。
【0008】
本発明は、以上のような従来の連続煮釜の抱える問題を解決するためになされたものであり、その目的は釜における呉の滞在時間(加熱時間)のより正確な制御が可能であり、均一な品質の煮呉を得ることができる連続煮釜を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、豆腐、油揚げ、或いは豆乳の製造過程において、原料大豆を粉砕後、加水してなる生呉に対して、先入れ先出し方式で蒸気煮沸処理を施して煮呉を得るための連続煮釜1を対象とする。この連続煮釜1は、下部呉入口13より送入され、上部呉出口15より送出される呉100に対して蒸気煮沸処理を施す単位釜7と、単位釜7に設けられた脱気装置30とを備える。脱気装置30は、単位釜7の上部に設けられたエアー排出口31と、該エアー排出口31に連通するエアー排出路32と、透明材で構成されて上部呉出口15より上方に配されたセンサ窓33と、該センサ窓33を介して気体成分101の有無を検知することを目的として該センサ窓33の外部に設置された光センサ34と、該センサ窓33よりも下流側に配され該光センサ34による検知結果に基づいてエアー排出路32を開閉操作するエアー排出弁35とを含む。そして、エアー排出弁35を閉じた状態で光センサ34によりセンサ窓33を介して、該センサ窓33の高さ位置における気体成分101の有無を検知し、該光センサ34により気体成分101の存在が検知されると、エアー排出弁35を開操作するようにしたことを特徴とする。
【0010】
複数個の単位釜7と、上流側の単位釜7の上部呉出口15と、下流側の単位釜7の下部呉入口13とを接続する送給流路9と、送給流路9に分岐して、一又は二以上の単位釜7をバイパスして下流側の単位釜7の下部呉入口13に至る送給流路9に連通するバイパス流路10と、送給流路9とバイパス流路10との分岐部分に設けられて、呉100の流れを制御する制御装置25とを備える。複数個の単位釜7のうちの一部の単位釜7に脱気装置30が設けられている。この制御装置25によりバイパス流路10、或いは送給流路9に呉100を流すことで、連続煮釜1の全体容量を変更することができるように構成することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明においては、上部呉出口15より上方に配されたセンサ窓33を介して、該センサ窓33の高さ位置における気体成分101の有無を光センサ34で検知し、該光センサ34により気体成分101の存在が検知されると、エアー排出弁35を開操作するようにした。すなわち、エアー排出弁35は、常態においてはエアー排出路32を閉じており、光センサ34によりセンサ窓33の位置までエアー排出路32に気体成分101が溜まったことが検知されると、エアー排出弁35を開操作してエアー排出路32を開くようにした。
【0012】
以上のように、本発明においては、上部呉出口15より上方にセンサ窓33を配して、このセンサ窓33の位置までエアー排出路32に気体成分101が溜まったことが検知されると、エアー排出弁35を開操作してエアー排出路32を開くようにしたので、開放されたエアー排出路32から単位釜7内の気体成分101(加熱用の蒸気、及び呉100から発泡した気体)を脱気することができる。これにより、単位釜7内に余分な気体成分101が溜まることを解消して、加熱用の蒸気の熱を呉100に効率的に伝えることができるので、生煮えの煮呉が生じることを防いで、均一な煮上がり状態の煮呉を得ることができる。また、単位釜7の上部に至った蒸気の大部分はエアー排出路32から脱気され、上部呉出口15に向かう蒸気を抑えることができるため、蒸気に乗って一部の呉100が異常なスピードで移動する、所謂「呉が走る」問題を解消できる。これにて、連続煮釜1内における呉100の滞在時間を正確に制御することができるので、均質な呉100に対する加熱処理が可能となり、品質に優れた煮呉を得ることができる。また、「呉が走る」ことが無く、連続煮釜1内に送入された生呉に対して先入れ先出し方式による均質な加熱処理を行うことが可能となるため、この点でも品質に優れた煮呉を得ることができる。
【0013】
なお、単に減圧弁を設けて、単位釜7の内圧が所定圧に至ると減圧弁を介して気体成分101が排出される形態では、単位釜7の内圧が低い状態では、気体成分101が排出されず、「呉が走る」問題を全く解消することはできないことを補足する。
【0014】
また、本発明によれば、単位釜7の内壁面にジャマ板を設けて「呉が走る」ことを防ぐ形態では不可避となる、洗浄不良の問題が生じる余地はなく、より衛生的に優れた煮呉を得ることができる点でも優れている。また、余分な気体成分101が単位釜7内に溜まることがないので、より効率的に呉100を移動させることが可能となり、連続煮釜1内で呉100を強制移動させるための送給用ポンプ18の送給能力を小さくすることができる。このことはランニングコストの低減化に資する。
【0015】
エアー排出口31が上部呉出口15よりも上方に設けられていると、上部誤出口15に向かう気体成分101を少なくして、より効率的に上部呉出口15より呉100を送り出すとともに、より効率的にエアー排出口31より気体成分101を排出することができる。
【0016】
複数個の単位釜7と、上流側の単位釜7の上部呉出口15と、下流側の単位釜7の下部呉入口13とを接続する送給流路9とを備え、複数個の単位釜7のうちの一部の単位釜7に脱気装置30が設けられている形態を採ることができる。これによれば、全ての単位釜7に脱気装置30を設ける形態に比べて、連続煮釜1の製造コストを抑えることができる。
【0017】
送給流路9に分岐して、一又は二以上の単位釜7をバイパスして下流側の単位釜7の下部呉入口13に至る送給流路9に連通するバイパス流路10と、送給流路9とバイパス流路10との分岐部分に設けられて、呉100の流れを制御する制御装置25とを備え、この制御装置25によりバイパス流路10、或いは送給流路9に呉100を流すことで、連続煮釜1の全体容量を変更することができるように構成することができる。このように連続煮釜1の全体容量を変更することができるようにしていると、連続煮釜1の処理能力の増減、すなわち、単位時間当たりに処理できる生呉量の増減を変更することができる。従って、一つの連続煮釜1に複数の処理能力に対応可能な汎用性を与えることができるので、連続煮釜1の使い勝手が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明に係る連続煮釜の要部の縦断側面図である。
【図2】本発明に係る連続煮釜の全体構成図である。
【図3】本発明に係る連続煮釜を構成する脱気装置の縦断側面図である。
【図4】本発明に係る連続煮釜の配管構成図である。
【図5】本発明に係る連続煮釜の使用方法を説明するための図である。
【図6】本発明に係る連続煮釜の別実施例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(実施例) 図1から図5に本発明に係る連続煮釜の実施例を示す。図2において連続煮釜1は、豆腐、油揚げ、豆乳の製造過程において、原料大豆を粉砕後、加水してなる生呉に対して、先入れ先出し方式で蒸気煮沸加工を施して煮呉を得るためのものである。連続煮釜1の上流側には、大豆を粉砕する粉砕機2と、粉砕機2により粉砕された大豆に対して水を加えて、これら大豆と水とを混練してスラリー状の生呉を得る加水機3とを含む生呉生成装置4が配され、連続煮釜1の下流側には、得られた煮呉に対して脱水処理を施して、煮呉を豆乳とおからとに分離する脱水装置5が配されている。
【0020】
連続煮釜1は、複数個の単位釜7と、これら単位釜7に対して加熱処理用の水蒸気を供給する蒸気供給装置8と、単位釜7どうしを接続する送給流路9と、一又は二以上の単位釜7をバイパスするバイパス流路10と、洗浄用流路11とを備える。これら流路9・10・11は金属管で構成されている。
【0021】
図1および図2に示すように、各単位釜7は、縦長中空容器状に形成された金属製のハウジング12を基体とするものであり、その下端には呉100を単位釜7内に送入するための下部呉入口13が設けられている。送給流路9は、各単位釜7の上端に設けられた開口14を介してハウジング12内に差し込まれており、その下端開口が、単位釜7から呉100を送り出すための上部呉出口15とされている。なお、ハウジング12の内壁面には、呉100の移動を妨げるためのジャマ板等は一切設けられていない。
【0022】
図4、図5に示すように、本実施例に示す連続煮釜は、7A〜7Lで示される12本の単位釜を備える。これらのうち、7A、7B、7C、7D、7G、及び7Hで示される単位釜7は、蒸気供給装置8に連結された加熱処理用の釜であり、残りの7E、7F、7I、7J、7K、及び7Lは加熱処理能力を具備しない熟成用の釜である。すなわち、本実施例に示す連続煮釜1は、加熱処理機能を具備する6個の単位釜7と、加熱処理機能を具備しない6個の熟成用の単位釜7とを備える。尤も、前者の加熱処理機能を具備する単位釜7は、蒸気供給装置8からの蒸気の供給を停止することで、熟成用の単位釜として使用することができる。
【0023】
図2に示すように、生呉生成装置4のホッパー6と、最上流側の単位釜7Aの下部呉入口13(図1参照)とを繋ぐ生呉供給流路17には、生呉を単位釜7に送入するためのポンプ18、圧力計19、逆止弁20、および蒸気供給装置8から送られてきた水蒸気と生呉とを混合させるための混合機21が配されている。最上流側に位置する単位釜7Aに設けられた混合機21は、生呉生成装置4から送られてきた生呉と、蒸気供給装置8から送られてきた水蒸気とを混合して、これを下部呉入口13からハウジング12内に送り込む。一方、下流側に位置する単位釜7B・7C・7D・7G・7Hに設けられた混合機21は、加熱処理途中の生呉、或いは加熱処理が略完了して煮呉となりつつある生呉と水蒸気とを混合して、これを下部呉入口13からハウジング12内に送り込む。
なお、本実施例においては、説明の便宜上、加熱処理前の生呉、加熱処理中の生呉、及び加熱処理が略完了して熟成中の生呉を「呉」と記す。すなわち、本実施例における「呉」とは、加熱や熟成の処理状態を問わず、全ての状態の生呉を含む概念である。
【0024】
図2、および図4に示すように、送給流路9は、上流側に位置する単位釜7の上部呉出口15と、下流側に位置する単位釜7の下部呉入口13とを接続している。具体的には、最上流側の単位釜7Aのハウジング12内に、水蒸気とともに下部呉入口13より送り込まれた呉100は、ポンプ18の送給力を受けてハウジング12の上方に至り、上部呉出口15より送出される。上部呉出口15より送出された呉100は、送給流路9(9AB)を通って下流側の単位釜7Bの下方に位置する混合機21に送られ、水蒸気とともに下部呉入口13から単位釜7Bのハウジング12内に送り込まれ、単位釜7B内で蒸気煮沸処理を受けたのち、上部呉出口15から送給流路9(9BC)を通って、次段の単位釜7Cに送られる。同様の手順で、各単位釜7の上部呉出口15より送出された呉100は、これよりも下流側の単位釜7に送り込まれる。以上のように、送給流路9のみを使って呉100を送る場合には、7A〜7Lの順に計12個の単位釜7を通って呉100は送られ、最下流側に位置する単位釜7Lより、煮呉送出流路22と、該煮呉送出流路22に設けられた背圧弁23を介して脱水装置5に吐出される。
【0025】
隣り合う単位釜7どうしを連結する送給流路9の途中には、一又は二以上の単位釜7をバイパスして、上部呉出口15より送出された呉100を、下流側の単位釜7に送り込むためのバイパス流路10が形成されている。本実施例においては、図4に示すように、単位釜7D、7Eを繋ぐ送給流路9DEと単位釜7F、7Gを繋ぐ送給流路9FGとの間に、第1のパイパス流路10Aが設けられ、単位釜7D、7Eを繋ぐ送給流路9DEと単位釜7J、7Kを繋ぐ送給流路9JKとの間に、第2のバイパス流路10Bが設けられ、単位釜7H、7Iを繋ぐ送給流路9HIと単位釜7I、7Jを繋ぐ送給流路9IJの間に、第3のバイパス流路10Cが設けられている。各バイパス流路10と送給流路9との分岐部には、三方コック(制御装置)25が設けられており、該三方コック25を操作することで、送給流路9或いはバイパス流路10のいずれか一方に呉100を流すことができ、第1のバイパス流路10Aに呉100を流すことにより単位釜7E、7Fをバイパスすることができ、第2のバイパス流路10Bに呉100を流すことにより単位釜7E〜7Jをバイパスすることができ、第3のバイパス流路10Cに呉100を流すことにより単位釜7Iをバイパスすることができる。かかるバイパス流路10および三方コック25を使った呉100の送給方法については後述する。
【0026】
そのうえで、本実施例に係る連続煮釜1においては、加熱処理用の単位釜7に脱気装置30を設けたことが着目される。図1および図3に示すように、かかる脱気装置30は、単位釜7のハウジング12の上部において、上部呉出口15よりも上方に開設されたエアー排出口31と、エアー排出口31に連通するエアー排出路32と、エアー排出路32の中途部に設けられたセンサ窓33と、センサ窓33を介して気体成分101の有無を検知するための光センサ34と、光センサ34による検知結果に基づいてエアー排出路32を開閉操作することを目的として、センサ窓33よりもエアー排出路32の下流側に配されたエアー排出弁35と、エアー排出弁35を制御するための制御装置36と、を含む。なお、符号37は、エアー排出路32を手動で開閉するための手動弁を示す。常態においては、手動弁37は開操作とされており、単位釜7が不使用のときには閉操作される。図2に示すように、エアー排出路32の終端は、生呉生成装置4(具体的には混練機3のホッパー6の上部)に至っており、気体成分101とともにエアー排出路32に不用意に呉100が流れた場合であっても、呉100を生呉生成装置4に戻すことができるようになっている。尤も、エアー排出路32の終端部は外気に連通しており、エアー排出路32に流れた気体成分101は外気に放出される。
【0027】
センサ窓33は所謂サイトグラスと称される覗き窓であり、ハウジング33a内に、エアー排出路32を構成する下部配管32aと上部配管32bとの間に接続されて流体の通過を許す通路部33bを備える。ハウジング33aには、通路部33bを挟むように一対のガラス窓33c・33dが設けられている。光センサ34は、一方のガラス窓33cの外面側に配置された投光素子34aと、他方のガラス窓33dの外面側に配置されて、通路部33bおよび一対のガラス窓33c・33dを通った投光素子34aからの照射光を受ける受光素子34bとで構成される。
【0028】
制御装置36は、受光素子34bによる受光量が所定量を超えると、エアー排出弁35を開操作する。すなわち、常態においてエアー排出弁35は閉状態にあり、受光素子34bによって検出された受光量が予め設定されている閾値を越えると、制御装置36はエアー排出弁35を開操作する。より詳しくは、常態においては、図1に示すように、エアー排出路32における呉100の液位はセンサ窓33を超えており、この状態では受光素子34bによる受光量は閾値を下回っているため、制御装置36は、エアー排出弁35を閉じている。そして、下部呉入口13から呉100と共に単位釜7に送り込まれた蒸気、或いは呉100の発泡により生成された発泡気体などの気体成分101がエアー排出路32に溜まり、これがセンサ窓33の高さ位置に至って、受光素子34bによる受光量が閾値を超えると、エアー排出弁35を開操作して、エアー排出路32に溜まった気体成分101を単位釜7の外部に排気する。より詳しくは、下部呉入口13から呉100と共に単位釜7に送り込まれた蒸気、或いは呉100の発泡により生成された発泡気体などの気体成分101が、単位釜7の上端内部に溜まり、当該気体成分101の高さ位置(換言すれば、呉100の液位)が、エアー排出口31の高さ位置に至ると、気体成分101はエアー排出路32に流れ込み、該エアー排出路32に溜まった気体成分101の高さ位置がセンサ窓33の高さ位置に至ると、気体成分101が単位釜7の外部に排気される仕様である(尤も、直接的にエアー排出口31からエアー排出路32に流れ込む気体成分101も存在する)。次に、呉100の液位が上昇し、これがセンサ窓33の高さ位置に至ると、呉100によって投光素子34aからの照射光が遮られ、受光素子34bによる受光量が低下する。制御装置36は、受光素子34bによる受光量が先の閾値よりも低くなると、呉100の液位がセンサ窓33の高さ位置まで上昇したと判断して、エアー排出弁35を閉操作してエアー排出路32を閉じる。再び、気体成分101がエアー排出路32に溜まり、呉100の液位がセンサ窓33の高さ位置よりも下がり、受光素子34bによる受光量が閾値を超えると、制御装置36は、エアー排出弁35に開信号を送って、エアー排出路32を開く。
【0029】
以上のように、本実施例に示す連続煮釜1においては、上部呉出口15より上方にセンサ窓33を配して、このセンサ窓33の位置まで、エアー排出路32に気体成分101が溜まったことが検知されると、エアー排出弁35が開操作してエアー排出路32を開くようにした。これによれば、開放されたエアー排出路32から単位釜7内の気体成分101を脱気することができるので、単位釜7内に余分な気体成分101が溜まることを解消して、加熱用の蒸気の熱を呉100に効率的に伝えることができる。従って、生煮えの煮呉が生じることを防いで、均一な煮上がり状態の煮呉を得ることができる。また、単位釜7の上部に至った蒸気の大部分はエアー排出路32から脱気され、上部呉出口15に向かう蒸気を抑えることができるので、蒸気に乗って一部の呉100が異常なスピードで移動する、所謂「呉が走る」問題を解消できる。これにて、連続煮釜1内における呉100の滞在時間を正確に制御することが可能となり、呉100に対して均質な加熱処理を行うことができるので、品質に優れた煮呉を得ることができる。また、「呉が走る」ことが無く、単位釜7内に送入された呉100に対して、先入れ先出し方式による均質な加熱処理を行うことが可能となるため、この点でも品質に優れた煮呉を得ることができる。
【0030】
因みに、本実施例に係る連続煮釜1の脱気装置30によれば、数秒間に一度、瞬間的かつ間欠的にエアー排出弁35が開いて脱気が行われる。当該脱気動作は、減圧弁のような、釜の内圧上昇に連動する脱気装置の脱気動作とは全く異なるものである。すなわち、減圧弁では、釜の内圧が所定値よりも低い状態では、弁は開放されないため、呉100に多くの気体成分101が含まれるおそれがある。これに対して、本実施例に係る脱気装置30によれば、釜の内圧上昇とは無関係に脱気を行うことができ、確実に「呉が走る」問題を解消できる点で優れている。
【0031】
また、ジャマ板を設けて「呉が走る」ことを防ぐ形態では不可避となる、洗浄不良の問題が生じる余地はなく、より衛生的に優れた煮呉を得ることができる。余分な気体成分101が単位釜7内に溜まることがないので、より効率的に呉100を移動させることが可能となり、単位釜7内で呉100を強制移動させるための送給用のポンプ18の送給能力を小さくすることができる。このことはランニングコストの低減化に資する。
【0032】
エアー排出口31が上部呉出口15よりも上方に設けられていると、上部呉出口15に向かう気体成分101を少なくして、より効率的に上部呉出口15より呉100を送り出すとともに、より効率的にエアー排出口31より気体成分101を排出することができる。
【0033】
次に、バイパス流路10および三方コック25を使った、連続煮釜1の単位時間当たりの処理能力の変更方法について、図4及び図5を使って説明する。本実施例に示す連続煮釜1では、以下に示す手順で、3.5俵/h、4.5俵/h、及び5.5俵/hの三段階に処理能力を変更することができる。
【0034】
5.5俵/hの処理能力を必要とするときには、図5に示すように、7A〜7Lの全ての単位釜7を使って処理を行う。すなわち、一切のバイパス流路10に呉100を通さず、送給流路9のみに呉100を通して処理を行う。具体的には、7A〜7Dの単位釜では蒸気煮沸(蒸気加熱)処理を行い、7E、7Fの単位釜では蒸気煮沸を伴わない熟成処理を行い、7G、7Hの単位釜では蒸気煮沸を行い、7I〜7Lの単位釜では熟成処理を行う。
【0035】
4.5表/hの処理能力を必要とするときには、三方コック25a、25b、25c、及び25dを操作して、バイパス流路10A、10Cに呉100を通す。これにて、7E、7F、及び7Iの計3本の単位釜をバイパスさせて、7A〜7D、7G、7H、7J〜7Lの計9本の単位釜を使って処理を行うことができる。具体的には、7A〜7Cの単位釜では蒸気煮沸(蒸気加熱)処理を行い、7Dの単位釜では蒸気煮沸を伴わない熟成処理を行い、7G、7Hの単位釜では蒸気煮沸を行い、7J〜7Lの単位釜では熟成処理を行う。
【0036】
3.5表/hの処理能力を必要とするときには、三方コック25e及び25fを操作して、バイパス流路10Bに呉100を通す。これにて、7E〜7Jの計6本の単位釜をバイパスさせて、7A〜7D、7K〜7Lの計6本の単位釜を使って処理を行うことができる。具体的には、7A、7Bの単位釜では蒸気煮沸(蒸気加熱)処理を行い、7Cの単位釜では蒸気煮沸を伴わない熟成処理を行い、7Dの単位釜では蒸気煮沸を行い、7K、7Lの単位釜では熟成処理を行う。
【0037】
このように、本実施例の連続煮釜1では、バイパス流路10を使って三段階に処理能力を変更することができるので、一つの連続煮釜1に三段階の処理能力に対応可能な汎用性を与えて、使い勝手に優れた連続煮釜1を得ることができる。
【0038】
図6に本発明の連続煮釜1の別実施形態を示す。この連続煮釜1では、単位釜7の上端部にガラス材等の透明部材からなるセンサ窓33を設け、このセンサ窓33を介して光センサ34により呉100の液位を確認し、呉100の液位が上昇したときに、エアー排出弁35を閉操作するようにした点が、先の図1等に示す形態と相違する。それ以外の点は先の図1等の形態と同様であるので同一部材には同一符号を付してその説明を省略する。
【0039】
本発明の連続煮釜1が備える単位釜7の本数は、上記実施例に示したものに限られない。また、単位釜7をバイパスするバイパス流路10の本数、および接続位置は、要求される処理能力に応じて適宜変更することができる。
【符号の説明】
【0040】
1 連続煮釜
7(7A〜7L) 単位釜
9 送給流路
10 バイパス流路
13 下部呉入口
15 上部呉出口
25 制御装置(三方コック)
30 脱気装置
31 エアー排出口
32 エアー排出路
33 センサ窓
34 光センサ
35 エアー排出弁
100 呉(生呉)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐、油揚げ、或いは豆乳の製造過程において、原料大豆を粉砕後、加水してなる生呉に対して、先入れ先出し方式で蒸気煮沸処理を施して煮呉を得るための連続煮釜において、
下部呉入口(13)より送入され、上部呉出口(15)より送出される呉(100)に対して蒸気煮沸処理を施す単位釜(7)と、該単位釜(7)に設けられた脱気装置(30)とを備え、
前記脱気装置(30)は、前記単位釜(7)の上部に設けられたエアー排出口(31)と、該エアー排出口(31)に連通するエアー排出路(32)と、透明材で構成されて前記上部誤出口(15)より上方に配されたセンサ窓(33)と、該センサ窓(33)を介して気体成分(101)の有無を検知することを目的として該センサ窓(33)の外部に設置された光センサ(34)と、該センサ窓(33)よりも下流側に配され該光センサ(34)による検知結果に基づいて前記エアー排出路(32)を開閉操作するエアー排出弁(35)とを含み、
前記エアー排出弁(35)を閉じた状態で、前記光センサ(34)により前記センサ窓(33)を介して該センサ窓(33)の高さ位置における気体成分(101)の有無を検知し、該光センサ(34)により気体成分(101)の存在が検知されると、前記エアー排出弁(35)を開操作するようにしたことを特徴とする連続煮釜。
【請求項2】
複数個の単位釜(7)と、
上流側の単位釜(7)の上部呉出口(15)と、下流側の単位釜(7)の下部呉入口(13)とを接続する送給流路(9)と、
前記送給流路(9)に分岐して、一又は二以上の単位釜(7)をバイパスして下流側の単位釜(7)の下部呉入口(13)に至る送給流路(9)に連通するバイパス流路(10)と、
前記送給流路(9)と前記バイパス流路(10)との分岐部分に設けられて、呉(100)の流れを制御する制御装置(25)とを備え、
複数個の単位釜(7)のうちの一部の単位釜(7)に前記脱気装置(30)が設けられており、
前記制御装置(25)により前記バイパス流路(10)、或いは前記送給流路(9)に呉(100)を流すことで、連続煮釜の全体容量を変更することができるようになっている、請求項1記載の連続煮釜。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−135228(P2012−135228A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−288186(P2010−288186)
【出願日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【出願人】(591060566)丸井工業株式会社 (2)
【Fターム(参考)】