説明

連続的なポリアミド化方法

【課題】ジカルボン酸モノマーおよびジアミンモノマーから直接ポリアミドを製造する方法を提供する。
【解決手段】ジカルボン酸モノマーおよびジアミンモノマーからポリアミドを生産するための方法であって、(a)融解したジカルボン酸モノマーおよび融解したジアミンモノマーを等モル量混合し、それにより融解した反応混合物を生成させるステップと、(b)少なくとも1つの通気しない反応容器を通って反応混合物を流し、少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の滞留時間が約0.01分および約30分の間であり、それによりポリアミドおよび重合水を含む第1の生成物流を形成するステップと、(c)少なくとも1つの通気された反応容器を通って第1の生成物流を流し、そこで重合水が除去され、それによりポリアミドを含む第2の生成物流を形成するステップを含み、反応混合物に水を添加する必要がなく連続的操作が可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の背景
本発明は一般にジカルボン酸モノマーおよびジアミンモノマーからポリアミドを生産する方法に関する。より詳細には、本発明は反応物に水を添加する必要がないポリアミドを生産する方法に関する。
【0002】
ポリアミドは、ジカルボン酸とジアミンとを水中で反応させて塩を生成させ、次いでその塩を加熱して重合を起こさせる二段階プロセスで生産することができる。たとえば、アジピン酸とヘキサメチレンジアミンとを用いてナイロン6,6を生成することができる。最終的には、重合により放出される水ならびに反応物と一緒に添加される水を、生成物から、たとえば蒸発によって除去しなければならない。このため、大量のエネルギーならびに追加のプロセス設備を要する。したがって、生成物から水分を除去する費用を低減するため、また中間(塩)生成物をなくし、それによってプロセス全体を単純化するため、反応物に水を添加せずにポリアミドを生産することが有用であろう。
【0003】
しかし、水を添加することなくモノマーから直接ポリアミドを生成させる試みはいくつかの問題に遭遇している。一方または他方のモノマーを過剰にすると生成物の分子量に、したがって物理的性質に悪影響を及ぼすため、反応物へのモノマー供給量を制御することが重要である。必要とされる反応物量を正確に調節することが非常に困難であることが判っている。このような直接重合方法における他の問題には、(1)非常に長い時間(例えば、数時間)の間、高温に保持され、(2)融解したモノマーが酸素に接触し、また(3)プロセス設備を作成した材料中の痕跡量の金属不純物に曝露される結果として、モノマーおよび/またはポリマー製品が分解することが含まれる。
【0004】
モノマーから直接ポリアミドを製造するための改良された方法を求める長年にわたるニーズが存在する。
【発明の概要】
【0005】
本発明の一態様は、ジカルボン酸モノマーおよびジアミンモノマーからポリアミドを生産するための方法である。この方法の一実施形態は、
(a)融解したジカルボン酸モノマーおよび融解したジアミンモノマーを等モル量混合し、それにより融解した反応混合物を生成させるステップと、
(b)少なくとも1つの通気しない反応容器を通って反応混合物を流し、少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の滞留時間が約0.01分および約30分の間であり、それによりポリアミドおよび重合水を含む第1の生成物流を形成するステップと、
(c)少なくとも1つの通気された反応容器を通って第1の生成物流を流し、それにより重合水が除去され、その結果ポリアミドを含む第2の生成物流を形成するステップを含む。
【0006】
他の実施形態において、この方法は、
(a)融解したジカルボン酸モノマーおよび融解したジアミンモノマーを等モル量混合し、それにより融解した反応混合物を生成させるステップと、
(b)0〜500psig(約0〜35kg/cm)の圧力において少なくとも1つの通気しない反応容器を通って反応混合物を流し、少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の滞留時間が約0.01分および約30分の間であり、それによりポリアミドを含む第1の生成物流を形成するステップを含む。
【0007】
本プロセスのこの実施形態では、少なくとも1つの通気しない反応容器の下流に位置する第2の容器は必要ではないが、重合水を除去するため、さらに反応させるため、または両方の目的のため任意選択的に使用できる。
【0008】
本発明のこの方法は、連続的に操作でき、ジカルボン酸に、ジアミンに、または反応混合物に水を添加する必要がない。混合後追加のジカルボン酸モノマーまたはジアミンモノマーを添加する必要がない。
【0009】
融解したジカルボン酸は、
乾燥したジカルボン酸を酸素除去圧力容器内で、交互に、真空にし、また不活性ガス加圧することによって乾燥したジカルボン酸から酸素を除去し、それにより分子状酸素含量が減少した固体のジカルボン酸を生成させるステップと、
分子状酸素含量が減少した固体のジカルボン酸を、一定量の融解したジカルボン酸が入っている融解装置容器に供給し、それにより固体のジカルボン酸が融解し、融解したジカルボン酸の連続流を生成するステップによって作成することができる。
【0010】
固体のジカルボン酸は、酸素除去圧力容器から融解装置容器へ重力で移送できる。酸素除去圧力容器から融解装置容器へ、重力および酸素除去圧力容器内の不活性ガス圧を組み合わせて移送するのが好ましい。この配置によって、融解装置容器内のジカルボン酸モノマー滞留時間を3時間未満とすることができる。
【0011】
この方法の好ましい実施形態において、少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の温度は、約220および約300℃の間にある。少なくとも1つの通気しない反応容器内の圧力は約0〜500psig(約0〜35kg/cm)の間が好ましく、約50〜250psig(約3.5〜17.5kg/cm)の間がより好ましく、約120〜180psig(約8.4〜12.6kg/cm)の間が最も好ましい。少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の滞留時間は、約0.01分および約30分の間が好ましく、約0.5〜30分の間がより好ましく、約1〜5分の間が最も好ましい。少なくとも1つの通気しない反応容器から出る第1の生成物流は、典型的には40重量%未満の重合されていないモノマーを、好ましくは10重量%未満の重合されていないモノマーを含有する。少なくとも1つの通気された反応容器内の反応混合物の滞留時間は約1分から約60分の間が好ましい。
【0012】
本発明の一実施形態において、反応性ジアミン回収システムを使用することができる。少なくとも1つの通気された反応容器は水蒸気および蒸発したジアミンモノマーを含む排出ガス流を発生し、排出ガスは回収カラム内の融解したジカルボン酸モノマーと接触し、それにより蒸発したジアミンモノマーの少なくとも一部がジカルボン酸モノマーと反応してポリアミドを生成する。回収カラムからポリアミドと未反応の融解したジカルボン酸モノマーとを含む廃液流が発生し、廃液流は、その後融解したジアミンモノマーと混合される。
【0013】
本発明の特定の一実施形態は、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミン(HMD)からナイロン6,6を製造する連続的方法であって、
乾燥したアジピン酸を酸素除去圧力容器内で、交互に、真空にし、また不活性ガス加圧することによって乾燥したジカルボン酸から酸素を除去し、それにより分子状酸素含量が減少した固体のアジピン酸を生成させること、
分子状酸素含量が減少した固体のアジピン酸を、一定量の融解したアジピン酸が入っている融解装置容器に供給し、それにより固体のアジピン酸が融解し、融解したアジピン酸の連続流が生成すること、
HMDを融解させること、
融解したアジピン酸および融解したHMDを等モル量混合し、それにより反応混合物を作成すること、
少なくとも1つの通気しない反応容器を通って反応混合物を流し、少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の滞留時間が約0.01分から約5分の間であり、それにより部分的に重合されたナイロン6,6反応混合物を形成すること、
少なくとも1つの通気された反応容器を通って部分的に重合された反応混合物を流し、それにより部分的に重合された反応混合物はさらに重合され、ナイロン6,6を生産し、またその際重合水が除去されることを含む。
【0014】
この特定の実施形態において、通気しない反応容器を出る部分的に重合されたナイロン6,6反応混合物の相対粘度(RV)は約0および約3の間にあり、また通気された容器を出るナイロン6,6の相対粘度は約3および約15の間にある。本明細書で用いる相対粘度は、25℃における90%ギ酸(ギ酸90重量%および水10重量%)単独の粘度(センチポアズ)に対する、25℃における90%ギ酸中のポリアミド8.4重量%溶液の粘度(センチポアズ)の比率である。
【0015】
本発明のポリアミド化方法は、反応物に水を添加する必要がなく、また塩を生成する中間ステップがなく最終製品を生産することができる。さらに、本発明の方法は連続的に動作することができ、かつプロセスの高温度部分における融解した反応物および融解したポリマーが非常に短い滞留時間をとる。これにより、プロセスにおける水の使用、廃水の生成、およびエネルギー消費が有意義に低減される。これによりまた、従来技術のプロセスに見出される、添加された工程水を除去するのに使用されている蒸発装置などいくつかのプロセス設備の必要がなくなり、または必要な設備規模が縮小される。さらに、反応物および生成物の過剰な熱曝露が回避される。
【0016】
ヘキサメチレンジアミンまたは他のジアミンモノマーの回収および再使用のための反応性回収カラムに関する本発明の態様は、廃棄物流中へのジアミン排出を低減し、ポリアミド製品へのジアミン供給物の全体的変換率を増加させる。
【0017】
アジピン酸などのジカルボン酸の連続的な融解に関する本発明の態様は、ポリアミド化プロセスにおいて使用するため、または他の用途向けに、融解したジカルボン酸を連続的に供給する実際的かつ経済的な方法を提供する。このプロセスは、変色または他の熱分解のない高品質の酸融解物を提供する。透明な酸融解物を生産することにより、高品質のポリアミドの生産を促進する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のポリアミド化方法のためのプロセス流れ図である。
【図2】本発明のポリアミド化方法に使用することができる反応性ジアミン回収システムのためのプロセス流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
例示的実施形態の説明
本発明の方法は、種々の二塩基酸およびジアミンモノマーからのポリアミドの生産に使用することができる。このプロセスは、アジピン酸およびヘキサメチレンジアミンからのナイロン6,6の生産に特に有用である。
【0020】
図1は、本プロセスの一実施形態についてのプロセス流れ図を示す。融解したヘキサメチレンジアミン(HMD)が、融解したHMD貯蔵タンク20から供給される。融解したHMDを供給する、いくつかの適切な方法がある。1つの方法は、HMDが生産されるプラントに隣接してポリアミド化プロセス装置を設置することであり、したがって融解したHMDの流れを直接タンク20にパイプ輸送することができる。他の方法は、HMD水溶液を供給し、水を蒸発させ、そしてHMDを融解することであろう。
【0021】
たとえばタンク20の周りの熱伝導ジャケットによって、任意選択的に、このタンク20内に熱を加えることができる。このタンク内の温度は約70℃が好ましい。次いで、融解したHMDは、下流の装置へのHMD供給量を正確に制御するHMD計量システム22を通ってポンプ送りされる。
【0022】
アジピン酸は、典型的には乾燥結晶の形態であり、アジピン酸貯蔵サイロ24から供給される。サイロからのアジピン酸は、バルク酸素除去装置タンク26に流れる。このタンク26内で空気が除去される。タンク26内での空気の除去は、バッチ方式で真空を窒素で置換するサイクルを行うことによって達成するのが好ましい。真空ポンプ28によって真空に引くことができる。真空および窒素加圧の間のサイクル頻度を調節して、所望レベルの酸素除去を達成することができる。
【0023】
バルク酸素除去装置タンク26は、ホッパを形成する底部を有し、そのホッパがその底部に向って直径が減少する、圧力容器を備えることが好ましい。バルク酸素除去装置タンクのホッパ部分の両側面は、タンク底部からの流出を促進するため、水平面との少なくとも70°の角度を形成することが好ましい。
【0024】
分子状酸素が大部分なくなったアジピン酸結晶は、次いで、バルク酸素除去装置タンク26からアジピン酸融解装置容器30へと流れる(バルク酸素除去装置タンク内の窒素圧による圧力の助けをかり、重力によることが好ましい)。融解装置容器30は、アジピン酸の融点をやや超える(すなわち、153℃を超える)温度で、窒素によりやや加圧されて動作する連続攪拌ジャケット付き容器が好ましい。この容器の頂部を通って入るアジピン酸結晶は、容器内部の融解したアジピン酸の表面で速やかに融解する。したがって、このプロセスではアジピン酸を連続的に融解することができる。融解装置容器30は、逆円錐形の入口ノズルを有して流動抵抗を軽減することが好ましい。融解装置容器30が、融解したモノマーに悪影響を及ぼす恐れがある不純物を、ほとんどまたは全く含有しない金属合金製であることもまた好ましい。ハストロイCおよび316型ステンレス鋼が適切な材料である。
【0025】
この融解装置容器からさらに酸素を除去する追加の対策を含めることは、熱分解の可能性を最小とするために、有用であろう。これを実施する1つの方法は、融解装置容器30内の融解したアジピン酸に、たとえば超音波装置によって、振動エネルギーを供給することである。振動エネルギーは酸融解物表面に向って上昇する気泡を発生させ、酸融解物からの連行空気の脱出を促進することができる。
【0026】
融解装置容器30内の融解したアジピン酸の滞留時間を最小とし、その反応物の熱曝露を低減することが好ましい。滞留時間は3時間未満が好ましく、約1〜2時間の間がより好ましい。融解したアジピン酸は融解装置容器30の底部から出て、下流の装置へのアジピン酸供給量を正確に制御する融解したアジピン酸計量システム32へポンプ送りされる。
【0027】
バルク酸素除去装置タンク26とアジピン酸融解装置容器30との組み合わせによって、熱分解または変色がなくアジピン酸結晶を連続的に融解することが可能である。
【0028】
HMD計量システム22からの融解したHMD流34およびアジピン酸計量システム32からの融解したアジピン酸流36は、Y−合流点38で連続的に接触し、化学量論的な量で結合する。2つのモノマーは、Y−合流点から配管の次の区画40を通り、通気しない混合機42中に入るとき、互いに接触する。この混合機はインライン式静的混合機が好ましい。
【0029】
本プロセスの好ましい実施形態において、融解したアジピン酸流36は約170℃の温度であり、また融解したHMD流34は約70℃であり、またY−合流点38における圧力は約150psig(約10.5kg/cm)である。インライン式静的混合機は、要素24個を有するKenicsの静的混合機が好ましい。Y−合流点およびインライン式混合機42の壁を約268℃に保つことが好ましい。混合機42内でのモノマーの滞留時間は約1〜30秒の間が好ましく、約3秒がより好ましい。混合機42を出る反応集合物は、通気しないパイプに入り、260℃および150psig(約10.5kg/cm)で、たとえばさらに10〜60秒の時間、反応させることが可能である。
【0030】
本発明のプロセスは、反応物中に水を内蔵することなく動作することができるが、反応物が全く無水であることは要求されない。たとえば、HMD供給物流は重量で約5%ほどの水分を含有でき、またアジピン酸流は重量で約2%ほどの水分を含有でき、プロセスはそれでも適正に機能するはずである。このような低濃度の水分を有する反応物流を、本明細書では“本質的に乾燥した”と呼ぶ。
【0031】
HMDとアジピン酸の反応は、Y−合流点38で互いに接触した時点で幾分か起こり、それらが熱交換器44に入る時間の間、継続する。プロセスのこの部分に使用される温度および滞留時間によって、この個所までで重合を完結させるか、またはこの個所までの間に重合の完結が起こるのを妨げるかを選択することができる。後者の状況において、モノマーの接触作用により生成する部分的反応生成物を、本明細書では“プレポリマー”と呼ぶ。混合機42から下流のパイプ内のプレポリマー集合物は、典型的にはナイロン6,6に60〜90%変換されるであろう。使用する条件では低融点中間体の晶出を妨げるため、閉塞が起こるようなことはないであろう。プロセスを最適に動作させるため、配管40および混合機42は通気がないこと、かつその中の圧力が比較的低く、例えば約0〜500psig(約0〜35kg/cm)の間、最も好ましくは約150psig(約10.5kg/cm)であることが重要である。
【0032】
図1に示すプロセスの実施形態において、プレポリマーは次ぎに熱交換器44を通り、通気されたプレポリマー反応器46に入る。ここで熱交換器を使用することは重要でない。その代わり、任意の必要な熱を反応器46内部の内部加熱コイルによって、または反応器の周りのジャケットによって供給できる。熱交換器44を出る加熱されたプレポリマーは、反応器内の液体材料表面の下の個所で反応器46に入るのが好ましい。この反応器46内でさらに重合を起こすことができ、反応器46は連続的に攪拌されるタンク形反応器が好ましい。反応器の底部流48は、任意選択的に再循環流50と、さらに処理するための経路である第2の流れ52とに分割できる。再循環を行う場合、再循環流50の流量速度は、反応器46への新鮮なプレポリマー供給物の流量速度の少なくとも15倍大きいことが好ましい。反応器46は、蒸気/液体の分離表面を大きくするため、液体材料を満量の約50%として動作するのが好ましい。
【0033】
このプロセスでは、ポリマー末端基の逆混合、融解した材料からの揮発分除去を促進する高表面積の界面生成、および融解した材料の速やかな温度上昇を可能とする高い熱伝導速度を提供することが、きわめて望ましい。これらの利点は、たとえば、連続的に攪拌されるタンク形反応器を使用するか、または生成物流を再循環するとともにプラグ流式反応器を使用するかのいずれかにより達成することができる。
【0034】
反応器46から頭上への流れ54は、水蒸気(すなわち、重縮合反応により生成する蒸発水)および典型的にはいくらかのHMDを含む蒸気である。頭上流54は、HMD回収カラム56中に進み、水58もカラム56に供給される。いくらかのHMDおよび水を含有する凝縮物流60は反応器46に再循環されるが、残りの蒸気は熱交換器62で冷却され、排出ガス流64の一部として除去される。
【0035】
本プロセスの一実施形態において、熱交換器44内でプレポリマーは約260℃に加熱され、また反応器46は約260℃および150psig(10.5kg/cm)で動作する。適切な相対流量速度の一例として、新鮮プレポリマーが1時間当たり100ポンド(約45kg)の速度で反応器46に供給される場合、反応器底部の再循環流量速度は1時間当たり約2,000ポンド(約907kg)が好ましい。これらの条件下で動作する反応器46は、反応器46内の滞留時間20分後に、水分濃度3重量%を有するナイロン6,6への95%を超えるモノマー変換率を得ることができる。
【0036】
反応器46を出る流れ52中の部分的に重合された材料は、たとえば近赤外(NIR)装置66によって、分析される。装置は、例えば近赤外分光法によって、アミンおよび酸の末端基の相対的な量を測定することができる。NIR装置66による測定は、HMD計量システム22および/またはアジピン酸計量システム32を制御するため使用することができる。
【0037】
本プロセスにおけるこの個所で材料は重合されているが、プロセスのいくつかの実施形態では重合の程度は、したがってポリマーの分子量および相対粘度(RV)は、最終製品に要求されるほど高くないであろう。したがって、部分的に重合した材料はさらに熱を供給するためフラッシャ68を通り、次いで第2の反応器70に入ることができる。第2の反応器70の目的は、さらに重合させ、したがって生成物の分子量およびRVを増加させることである。第2の反応器からの底部流72中のポリマー生成物は、最終製品に要求される分子量を有するはずである。
【0038】
第2の反応器70内の温度は約260℃および約280℃の間、圧力は大気圧であることが好ましい。
【0039】
第2の反応器70内で発生するHMDの蒸気および水蒸気は、頭上流74中に除去され、頭上流74はガス洗浄器76に入る。このガス洗浄器に水流78も供給され、したがって水蒸気は凝縮し廃水流80として除去できる。残りの蒸気はガス洗浄器76を出て頭上流82に入り、排出ガス流64の一部となる。
【0040】
ポリマー生成物は造粒機84を通って送られるか、またはバイパスライン86を通る経路をとることができる。ポリマー生成物が造粒機を通る場合、ポリマーペレットは次いで乾燥機88に入る。窒素ガス供給物90、窒素送風機92および窒素加熱器94を使用して、窒素ガスを容器88に供給し、窒素ガスがポリマーペレットを乾燥する。乾燥されたペレットは乾燥機88の底部から出て、散水冷却器96、ふるい機98を通り、送風機100により製品貯蔵場所102に移送される。
【0041】
再び図1を参照すると、反応器46からの排出ガス54中のHMDは、従来の分離法によって網目板カラム56で除去される。別法として、HMDは、図2に示すように反応性カラムを使用して回収することができる。この代替の実施形態において、反応器46からの排出ガス54は、熱交換器200を介して通気され、熱交換器200内で260℃および10psig(0.7kg/cm)に過熱される。過熱された排出ガス202は、反応性HMD回収カラム204の下部領域に注入される。融解したアジピン酸流206(好ましくは約170℃)がカラム204の上部領域に供給され、カラム204は約182℃および約8psig(0.6kg/cm)に維持されるのが好ましい。融解したアジピン酸は排出ガス中のHMDと反応して少量のナイロン塩を生成し、その間182℃に加熱される。カラム204からの排液流208はインライン式静的混合機42にポンプ送りされ、その際ポンプ210は排液の圧力を約200psig(14kg/cm)に上昇させるのが好ましい。もちろん、融解したHMD流34も混合機42に供給される。
【0042】
反応性HMD回収カラム204の頂部からの排出ガスは、次いでガス洗浄器210に供給され、そこで水流212で洗浄され、結果として最終排出ガス流214および廃水流216に入る。第2の反応器70からの排出ガス流218もまたガス洗浄器210に供給できる。
【0043】
図2に示すような反応性HMD回収カラム204を使用することは、反応器への外部的な水還流をなくすことにより、プロセスにおける合計の水使用量を減少させることができる。
【0044】
本プロセスにより生産される、ナイロン6,6などのポリアミドは、じゅうたん用の繊維に成形されるなどいくつものよく知られた用途を有する。
【0045】
本発明の特定の実施形態に関する上記の記述は、発明のあらゆる可能な実施形態を完全に列挙しようと意図するものではない。当分野の技術者は、ここに記載された特定の実施形態に修正を加えることができ、その修正が本発明の範囲内にあることを認めるであろう。たとえば、本明細書に記載された詳細な実施形態ではアジピン酸およびヘキサメチレンジアミンを反応させナイロン6,6を生産するが、当分野の技術者に知られている他のモノマーを用いて他のポリアミドを生産することも可能であろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジカルボン酸モノマーおよびジアミンモノマーからポリアミドを生産するための方法であって、
融解したジカルボン酸モノマーおよび融解したジアミンモノマーを等モル量混合し、それにより融解した反応混合物を生成させること、ならびに
0〜500psig(0〜35kg/cm)の圧力において少なくとも1つの通気しない反応容器を通って反応混合物を流し、少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の滞留時間が0.01分および30分の間であり、それによりポリアミドを含む第1の生成物流を形成することを含む方法。
【請求項2】
融解したジカルボン酸および融解したジアミンが本質的に乾燥している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
融解したジカルボン酸および融解したジアミンを混合した後、追加のジカルボン酸モノマーまたはジアミンモノマーが添加されない請求項1に記載の方法。
【請求項4】
少なくとも1つの通気しない反応容器内の反応混合物の温度が220および300℃の間にある請求項1に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つの通気しない反応容器内の圧力が50〜250psig(3.5〜17.5kg/cm)の間にある請求項1に記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの通気しない反応容器内の圧力が120〜180psig(8.4〜12.6kg/cm)の間にある請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ジカルボン酸モノマーがアジピン酸であり、ジアミンモノマーがヘキサメチレンジアミンであり、またポリアミドがナイロン6,6である請求項1に記載の方法。
【請求項8】
融解したジカルボン酸モノマーが、
本質的に乾燥したジカルボン酸を酸素除去圧力容器内で、交互に、真空にし、また不活性ガス加圧することによって乾燥したジカルボン酸から酸素を除去し、それにより分子状酸素含量が減少した固体のジカルボン酸を生成させること、ならびに
分子状酸素含量が減少した固体のジカルボン酸を、一定量の融解したジカルボン酸が入っている融解装置容器に供給し、それにより固体のジカルボン酸が融解し、融解したジカルボン酸の連続流を生成することによって作成される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
固体のジカルボン酸が、酸素除去圧力容器から融解装置容器へ重力で移送される請求項8に記載の方法。
【請求項10】
固体のジカルボン酸が、酸素除去圧力容器から融解装置容器へ重力および酸素除去圧力容器内の不活性ガス圧を組み合わせることにより移送される請求項8に記載の方法。
【請求項11】
融解装置容器内のジカルボン酸モノマー滞留時間が3時間未満である請求項8に記載の方法。
【請求項12】
少なくとも1つの通気しない反応容器が静的インライン式混合機を備える請求項1に記載の方法。
【請求項13】
静的インライン式混合機内の反応混合物の滞留時間が1〜30秒の間にある請求項12に記載の方法。
【請求項14】
ジカルボン酸を連続的に融解する方法であって、
乾燥したジカルボン酸を酸素除去圧力容器内で、交互に、真空にし、また不活性ガス加圧することによって乾燥したジカルボン酸から酸素を除去し、それにより分子状酸素含量が減少した固体のジカルボン酸を生成させること、ならびに
分子状酸素含量が減少した固体のジカルボン酸を、一定量の融解したジカルボン酸が入っている融解装置容器に供給し、それにより固体のジカルボン酸が融解し、融解したジカルボン酸の連続流を生成することを含む方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2010−77439(P2010−77439A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254646(P2009−254646)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【分割の表示】特願2000−550908(P2000−550908)の分割
【原出願日】平成11年5月26日(1999.5.26)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】