説明

連続臨界電流測定装置およびこれを用いた連続臨界電流測定方法

【課題】リールツーリール装置によって超伝導線材を連続的に供給しながら、ホイールタイプの電流端子および電圧端子によって超伝導線材の損傷なしで臨界電流を連続的に測定することが可能な連続臨界電流測定装置、およびこれを用いた連続臨界電流測定方法を提供する。
【解決手段】 本発明の連続臨界電流測定装置は、超伝導線材を液体窒素容器内で移送しながら超伝導線材の臨界電流を測定する装置において、リールツーリール装置によって超伝導線材の継続的な供給と移送が行われ、ホイールタイプの電流端子および電圧端子を適用することにより、超伝導線材が前記電流端子および電圧端子に接触して等線速度で移送されながらリアルタイムで臨界電流の測定が行われることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、超伝導線材の臨界電流を測定するための装置に係り、特に、リールツーリール装置によって超伝導線材を連続的に供給しながら、ホイールタイプの電流端子および電圧端子によって超伝導線材の損傷なしで臨界電流を連続的に測定することが可能な連続臨界電流測定装置に関する。
【0002】
また、本発明は、超伝導線材の臨界電流を連続的に測定するための方法に係り、連続臨界電流測定装置を用いて、超伝導線材を一定の時間間隔で動かして超伝導線材1m当たり0.1mVに電圧を制御する電流を臨界電流として測定することにより、臨界電流測定時間を短縮させ且つ正確な臨界電流を測定することができる、超伝導線材の臨界電流連続測定方法に関する。
【背景技術】
【0003】
超伝導線材の産業化に伴って、速い製造速度が要求されているとともに、超伝導線材の品質を決定する速くて正確な測定方法、および超伝導線材に傷付けなく速くて正確に品質を測定することが可能な方法が求められている。
【0004】
既存の超伝導線材の臨界電流測定方法として4端子法があり、該方法は、超伝導線材に2つの電流端子を配置し、これらの電流端子の間に2つの電流端子を配置し、電流端子に電流を通電して臨界電流を測定する。
【0005】
このような方法は、直接線材に通電するので、比較的正確な臨界電流を得ることができるが、臨界電流測定時の過電流や、電流端子および電圧端子による線材への印加荷重、測定のための端子形成時の半田付け作業などによって超伝導線材に傷付け易いという欠点があり、長尺線材の臨界電流を測定するのには適しない。よって、長尺テープの臨界電流を測定するためには、半田付けをせず、各端子の物理的な接触によって電流を流しながら電圧を測定する接触式臨界電流測定法が導入されなければならない。
従来の長尺線材の臨界電流を測定する方法は、2つの方法に大別される。
【0006】
第一の方法は、超伝導線材の臨界電流をバッチ式で測定する方法であって、超伝導線材が、液体窒素容器内に位置している2つの超伝導線材ガイドローラーの間を通過するようにする。そして、超伝導線材の下方には、線材が垂れるのを防止するために、支持台が設けられている。4端子法による臨界電流測定のために、4つの端子、すなわち、(+)電流端子、(+)電圧端子、(−)電圧端子、(−)電流端子を高温超伝導テープ上に順次配置させ、各端子が上方から下方に下がって超伝導線材に接触すると、電流端子で電流を流しながら電圧端子で超伝導線材の電圧を測定する方法である。
【0007】
第二の方法は、ガイドローラーに沿ってテープを連続的に送りながら臨界電流を測定する方法であって、超伝導線材が液体窒素容器内のガイドローラーの間を通過するようにする。ここで、前記一つのガイドローラーは(+)電流端子を兼ねており、もう一つのガイドローラーは(−)電流端子を兼ねている。このようにガイドローラーが超伝導線材を移送させる上、超伝導線材に電流を流す役割を兼ねている。したがって、超伝導線材が動く状態で電圧を測定するためには別途の端子が必要であるが、(+)電圧端子用ローラーと(−)電圧端子用ローラーが電圧端子の役割を果たす。連続型臨界電流測定装置を使用するためには、超伝導線材ガイドローラーの間の超伝導線材を強く引っ張って超伝導線材ガイドローラーと超伝導線材との密着力を高めなければならず、これにより接触抵抗を減らすことができる。よって、このような方法は強度が高い超伝導線材の臨界電流の測定に適する。
【0008】
ところが、現在までの高温超伝導テープは、通常、外皮の素材として銀(Ag)または銀合金を使用しているため、強度が弱い。よって、強度が弱い超伝導線材の特性上、連続型臨界電流測定装置は使用がほぼ不可能なので、バッチ型臨界電流測定装置を使用しなければならない。
【0009】
また、従来のバッチ型臨界電流測定装置は、接触式のみで臨界電流(Ic)を測定することができ、電流および電圧端子に印加される圧力が重要な変数となる。すなわち、電流通電のための電流端子における十分な接触面積を確保するために圧力を印加する過程で、過度な圧力によって超伝導線材に損傷が発生するおそれがあり、圧力があまり低ければ、電流通電の際に接触抵抗による測定エラーが生ずる。また、電圧端子においても、印加圧力があまり低ければ、電圧測定の際にノイズが発生するおそれがあり、印加電圧があまり高ければ、超伝導線材に損傷が発生するおそれがある。よって、臨界電流(Ic)測定の正確性と信頼性を確保することが可能な測定装置を構築しなければならない。
このようなバッチ型臨界電流測定装置と連続型臨界電流測定装置を用いた従来の技術として、特許文献1、特許文献2および特許文献3に開示された技術がある。
【0010】
これらの従来の技術は、厳密な意味で連続的な臨界電流測定ではない。すなわち、連続的に線材が移送されながら測定が行われるのではなく、測定の際には、線材の移送を止め、電流を印加しうる平板端子および電圧を測定する平板端子が線材を押さえた状態で測定が行われる。もし長尺の超伝導線材の場合には、このようなgo−and−stop形式で電流または電圧端子を上げたり下げたりする動作を繰り返し行わなければならない。よって、特に長尺の超伝導線材の場合には、臨界電流測定時間が多くかかるという欠点があり、平均的な臨界電流を測定するので、局部的な欠陥は捉えることができないため、超伝導線材の特性評価がまともに行われておらず、測定分解能にも限界があるという問題点がある。また、特許文献3に開示された技術は、電流端子をホイールタイプにして連続的に電流を印加することができるようにしたが、電圧端子の形状がホイールタイプではないため、まともな連続工程を行うことができないという欠点がある。
【0011】
また、従来の超伝導線材の移送および電圧端子または電流端子に使われるガイドローラーまたはホイールタイプの端子は、電流の供給が主に線接触によって行われるため、通電電流が高くないうえ、回転摩擦が増加して接触抵抗が高いという欠点がある。
【0012】
また、超伝導線材と電流端子または電圧端子との密着力が低下して接触抵抗が増加するという欠点があり、電流端子と電圧端子間の電圧の測定が不可能であって、超伝導線材の全ての領域に対して臨界電流の測定が行われるのではないという欠点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】韓国登録特許第0513208号公報
【特許文献2】米国登録特許第5936394号公報
【特許文献3】米国登録特許第7554317B2号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、リールツーリール装置によって超伝導線材を連続的に供給しながらホイールタイプの電流端子および電圧端子によって超伝導線材の損傷なしで臨界電流を連続的に測定することが可能な連続臨界電流測定装置を提供することにある。
【0015】
本発明の他の目的は、 電流端子の外側にも電圧端子を備えることにより、前記電流端子の間の電圧端子による臨界電流特性だけでなく、電流が通電される全区間にわたっての電圧も測定することが可能な連続臨界電流測定装置を提供することにある。
【0016】
本発明の別の目的は、前記連続臨界電流測定装置を用いて、超伝導線材を一定の時間間隔で動かして超伝導線材1m当たり0.1mVに電圧を制御する電流を臨界電流として測定することにより、臨界電流測定時間を短縮させ且つ正確な臨界電流を測定することが可能な連続臨界電流測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記目的を達成するために、本発明は、超伝導線材を液体窒素容器内で移送しながら超伝導線材の臨界電流を測定する装置において、リールツーリール装置によって超伝導線材の継続的な供給と移送が行われ、ホイールタイプの電流端子および電圧端子を適用することにより、超伝導線材が前記電流端子および電圧端子に接触して等線速度で移送されながらリアルタイムで臨界電流の測定が行われることを特徴とする、連続臨界電流測定装置を技術的要旨とする。
【0018】
また、前記電圧端子は、超伝導線材の移送経路を基準として、前記電流端子の内側に位置する内部電圧端子、および前記電流端子の外側に位置する外部電圧端子を含んでなることが好ましい。
また、前記内部電圧端子の間には、移送される超伝導線材を支持する支持棒または支持ローラーがさらに設けられることが好ましい。
【0019】
ここで、前記内部電圧端子の間に多数の移送リールが設けられて超伝導線材がマルチターンされるようにして、これに相当する長さ分だけの臨界電流の測定を可能にすることが好ましい。
また、前記電流端子に接触する超伝導線材は、前記電流端子に少なくとも半周以上接触して移送されることが好ましい。
【0020】
また、前記電圧端子に接触する超伝導線材は、前記電流端子に接触する超伝導線材の接触端部地点における接線の傾きより小さい方向に移送されることが好ましい。
【0021】
また、前記電流端子および電圧端子は、ホイールタイプをしており、側面に沿って線材収容溝が設けられ、中心部から後方側に突出して電流印加および電圧測定のためのブラシ接触部が設けられることが好ましく、前記電流端子および電圧端子は、それぞれブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造によって電流引き込みおよび電圧測定が行われることが好ましい。
【0022】
ここで、前記ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造は、前記ブラシ接触部の曲率に対応して接触形成される少なくとも一つのブラシ部と、前記ブラシ部に対する電流引き込みおよび電圧測定のために外部端子に連結された導線部とを含んでなることが好ましく、前記ブラシ部は、1対がバネで連結されてブラシ部の接触圧力を調節することが好ましい。
【0023】
また、前記ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造は、前記ブラシ接触部の曲率に対応して接触形成され、少なくとも一つの対を成すブラシ部と、前記対を成すブラシ部にそれぞれ連結されて所定の角度を成し、バネによって連結されて前記ブラシ部の接触圧力を調節させ且つ均衡を維持する調節アームと、前記調節アームの一側に引き込まれ、前記ブラシ部と電気的に連結されて電流を供給する導線部とを含んでなることが好ましい。
また、前記超伝導線材は、速度調節部によって等速度で移送されることが好ましい。
【0024】
また、前記超伝導線材に基準電圧を印加し、これにより発生する電流を臨界電流として設定し、異常電流が発生するときは分流器へ電流が流れるように構成されることが好ましい。
【0025】
また、本発明は、前記連続臨界電流測定装置を用いて、前記電圧端子から測定された超伝導線材の両端電圧を増幅器とADCを介してDSPに入力して超伝導線材の両端電圧を測定する第1段階と、前記測定された電圧を1m当たり0.1mVに維持するために、DACを介して電流ソースを制御しながら前記電流端子に電流を印加する第2段階と、前記電流端子に印加された電流を測定し、1m当たり0.1mVが維持されるように印加された電流を追跡して臨界電流を測定する第3段階とを含んでなるが、前記電圧端子から測定された電圧は、電流のn乗に比例するので、前記測定された電圧に1/n乗(n=10〜40)をして臨界電流を線形化して前記DACに供給することを特徴とする、連続臨界電流測定方法を技術的要旨とする。
【発明の効果】
【0026】
本発明は、リールツーリール装置によって超伝導線材を連続的に供給しながらホイールタイプの電流端子によって電流を印加し、ホイールタイプの電圧端子で電圧を測定して超伝導線材の損傷なしで臨界電流を連続的に測定することができ、 外部電圧端子を備えることにより、電流端子の間の内部電圧電子による臨界電流特性だけでなく、電流が通電される全区間にわたっての電圧も測定することができるので、超伝導線材の損傷を防止することができるという効果がある。
【0027】
また、ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造によって電流端子および電圧端子との接触抵抗を最小化し、通電電流を高めることができるため、安定的な電流供給および電圧測定が可能であるという効果がある。
【0028】
また、超伝導線材を一定の時間間隔で動かしながら特定区間内の臨界電流の測定が可能であるうえ、連続的に動かしながら長尺超伝導線材の臨界電流の測定も可能なので、臨界電流測定時間を減らして生産性を高めると同時に製造コストの低減が実現でき、局部的な超伝導線材の臨界電流の測定が可能なので、超伝導線材を保護すると同時に正確な測定を行うことができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る連続臨界電流測定装置の主要部を示す構成図である。
【図2】本発明に係る連続臨界電流測定装置の電流端子または電圧端子を示す断面図である。
【図3】本発明に係る連続臨界電流測定装置のブラシ型電流引き込み構造または電圧測定構造に対する一実施例を示す構成図である。
【図4】本発明に係る連続臨界電流測定装置のブラシ型電流引き込み構造または電圧測定構造に対する他の実施例を示す構成図である。
【図5】本発明に係る連続臨界電流測定装置の移送リールを示す斜視図である。
【図6】本発明に係る連続臨界電流測定装置に対する模式図、および連続臨界電流測定方法のためのブロック図である。
【図7】非線形的な臨界電流を線形化させる式を示すグラフである。
【図8】DSPを用いた長伝導線材の連続臨界電流を測定するための制御アルゴリズムを示す図である。
【図9】BSCCO線材の連続臨界電流測定結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下に添付図面を参照しながら、本発明に係る超伝導線材の連続臨界電流測定装置について詳細に説明する。図1は本発明に係る連続臨界電流測定装置の主要部を示す構成図、図2は本発明に係る連続臨界電流測定装置の電流端子または電圧端子を示す断面図、図3は本発明に係る連続臨界電流測定装置のブラシ型電流引き込み構造または電圧測定構造に対する一実施例を示す構成図、図4は本発明に係る連続臨界電流測定装置のブラシ型電流引き込み構造または電圧測定構造に対する他の実施例を示す構成図、図5は本発明に係る連続臨界電流測定装置の移送リールを示す斜視図である。
【0031】
本発明は、超伝導線材10、特にリールツーリール(reel-to-reel)装置により供給される長尺超伝導線材10の臨界電流の連続的な測定が可能な装置であって、超伝度線材10を液体窒素容器内で移送しながら超伝導線材10の臨界電流を連続的に測定する。
【0032】
ここで、リールツーリール装置とは、超伝導線材10を供給する供給リール20と、特性測定済みの超伝導線材10を巻き取る巻取リール30とを含んでなり、 一定の速度で回転するモータを巻取リール30側に連結して超伝導線材10の等線速度移送が行われるようにするものである。
【0033】
前記供給リール20と巻取リール30は、液体窒素容器内に収容されなくてもよく、前記モータに印加された任意の張力値に対応して超伝導線材10の張力が調節されながら回転する。超伝導線材10の移送距離および速度をリアルタイムで測定して一定の速度で移送させるために、供給リール20または巻取リール30に隣接してエンコードなどの速度調節部530が設けられるようにする。
【0034】
このようにリールツーリール装置によって超伝導線材10の継続的な供給と移送が行われる間、前記供給リール20と巻取リール30との間の超伝導線材10が移動する経路上にホイールタイプの電流端子100および電圧端子200を備えることにより、超伝導線材10が前記電流端子100および電圧端子200に接触して等線速度で移送されながらリアルタイムで臨界電流の測定が行われるようにする。これは超伝導線材10を押さえずに巻いて臨界電流を測定するので、超伝導線材10に損傷が生じなくなる。
【0035】
このような臨界電流測定のためのリールツーリール装置の全構成要素は、液体窒素内に投入されても化学的に安定な絶縁素材のFRP板などに固着され、臨界電流測定の際には内部を外部から密閉し、前記全構成要素が結合したFRP板を液体窒素容器の内部にエンコードの下部まで浸かるようにして、臨界電流の測定が行われるようにする。
【0036】
基本的に、本発明に係る臨界電流は、4端子法によって測定され、超伝導線材10の任意区間の両端にそれぞれ(+)、(−)電流端子100が設けられ、それらの間に(+)、(−)電圧端子200が設けられることにより、印加された電流による電圧を測定して臨界電流を測定する。
【0037】
また、前記電流端子100は、超伝導線材10の通電特性および臨界電流の測定のために超伝導線材10へ電流を送るホイールであって、金(Au)でコートされた銅(Cu)を用いて製作し、前記電圧端子200は、超伝導線材10から発生する電圧を測定するためのホイールであって、耐食性金属としてのステンレススチールなどを用いて製作する。
【0038】
また、前記電圧端子200は、前記超伝導線材10の移送経路を基準として、前記電流端子100の内側に位置する内部電圧端子210と、前記電流端子100の外側に位置する外部電圧端子220とから構成される。前記内部電圧端子210は、それらの間に移送される超伝導線材10の臨界電流を測定しようとするものであり、前記外部電圧端子220は、内部電圧端子210と電流端子100との間の領域で臨界電流を測定するためのものである。一般に、電流端子100および内部電圧端子210によって行われる4端子法は、内部電圧端子210の間の臨界電流のみを測定することが可能なもので、もし内部電圧端子と電流端子100との間の超伝導線材10に欠陥が存在する場合には、この地点の特性を捉えることができず、超伝導線材10の損傷(バーンアウト)が発生する。よって、前記外部電圧端子220は、電流端子100の外側にも電圧端子を設置し、電流が通電される全区間に対して電圧を測定するようにして、超伝導線材10の損傷を防ぐことができるようにした。
【0039】
また、前記電流端子100に接触する超伝導線材10は、前記電流端子100に少なくとも半周以上接触して移送されるようにして、超伝導線材10に安定な電流が供給されるようにする。ここで、前記電圧端子200は、電流端子100より内側に位置するようにし、前記電圧端子200に接触する超伝導線材10は、前記電流端子100に接触する超伝導線材10の接触端部地点における接線の傾きより小さい角度(方向)にして移送されるようにする。すなわち、電流端子100に供給される超伝導線材10は、外部伝達端子220で所定の角度に曲げて供給され、さらに内部電圧端子210で所定の角度に曲げて移送される。これは、超伝導線材10の電圧端子200および電流端子100への安定な接触力を誘導して安定な電流印加および電圧の測定を可能にするためである。
【0040】
一方、前記電流端子100および電圧端子200は、図2に示すように、ホイールタイプをしており、側面に沿って線材収容溝310が設けられ、中心部から後方側に突出して電流印加および電圧測定のためのブラシ接触部320が設けられる。すなわち、前記電流端子100および電圧端子200は、全体的に軸を中心に回転する円板状をしており、側面には線材収容溝310が設けられて超伝導線材10が収容接触され、後方側には円筒状のブラシ接触部320が突設されて後述のブラシ部410が接触されることにより、電流端子100および電圧端子200の回転と関係なく安定且つ均一な電流の印加を可能にして接触抵抗を最小化する。
【0041】
また、前記電流端子100の間、具体的には内部電圧端子210の間には、移送される超伝導線材10を支持する支持棒または支持ローラー510がさらに設けられるようにする。これは、長尺領域の臨界電流を測定する場合に内部電圧端子210の間があまり遠ければ超伝導線材10が垂れるので、これを防止するためである。
【0042】
また、前記電流端子100への電流印加および電圧端子200を用いた電圧測定は、それぞれブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造によって行われることが好ましい。前記ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造とは、前記電流端子100および電圧端子200のブラシ接触部320に通電のためのブラシ部410が面接触するようにし、各端子の回転有無を問わず、一定の電流の印加および正確な電圧の測定を可能にした。また、ブラシ型電流引き込み構造は、電流端子100の中心軸に電流を印加するのではなく、超伝導線材10に隣接した電流端子100のエッジに電流が印加されるようにして電流損失を最小化し、より正確な電流値の引き込みが行われる。
【0043】
前記ブラシ型電流引き込み構造の一実施例として、図3に示すように、前記ブラシ接触部320の曲率に対応して接触形成される少なくとも一つのブラシ部410と、前記ブラシ部410への電流引き込みのために外部端子に連結された導線部430とを含んでなり、前記ブラシ部410によって電流端子100に電流を印加する。また、前記電流端子100のブラシ部410は、必要に応じて対を成して2つずつがバネで連結され、ブラシ部410の電流端子100のブラシ接触部320への接触圧力が調節されるようにする。すなわち、前記ブラシ部410は、電流容量に応じて多数設けることができる。前記ブラシ部410は、FRP板に固定されたままで2つずつが対をなして互いにバネによって連結されるようにして、前記電流端子100の回転の際にブラシ接触部320への接触圧力が平衡をなして調節されるようにする。勿論、この形態はブラシ型電圧測定構造にも適用できる。
【0044】
また、前記ブラシ型電圧測定構造の一実施例として、図4に示すように、前記ブラシ接触部320の曲率に応じて接触形成され、少なくとも一つの対を成すブラシ部410と、前記FRP板に固定され、対を成すブラシ部410にそれぞれ連結されて所定の角度をなし、バネによって連結されて前記ブラシ部410の接触圧力を調節させ且つ互いに均衡を維持させる調節アーム420と、前記調節アーム420の一側に引き込まれ、前記ブラシ部410に電気的に連結されて電流を供給する導線部430とを含んでなり、前記ブラシ部410によって電圧端子200から電圧を測定する。すなわち、2つの調節アーム420の端部にブラシ部410が設けられ、前記調節アーム420は、まるで弾性鋏のようにバネで連結され、ブラシ部410のブラシ接触部320への均一な接触圧力を誘導する。勿論、この形態はブラシ型電流引き込み構造にも適用できる。
【0045】
特に、電流端子100に接触するブラシ型電流引き込み構造において、ブラシ部410が少なくとも2つ(2つ、4つ、6つ)設けられるようにし、ブラシ部410およびブラシ接触部320への接触面積を増やして接触抵抗を低める一方で、通電電流を高める。対を成す2つのブラシ部410は、バネによって接触圧力の調節が可能であってホイールタイプの電流端子100とブラシ部410との回転摩擦を減らす。そして、電流端子100に接触するブラシ型電圧測定構造において、ブラシ部410は、正確且つ安定な電圧測定のために2つが設けられることが好ましく、それぞれのブラシ部410に導線部430が連結されるが、合せられて電圧測定のための外端子とは1本の導線部430として連結される。
【0046】
ここで、前記ブラシ部410は、回転する電流端子100に電流を供給し、回転する電圧端子200から電圧を測定するためのもので、回転摩擦が少なくて接触抵抗が低い金属材、例えば炭素と銅の合金で製作する。
【0047】
また、図5に示すように、前記内部電圧端子210の間に多数(図5では2つ)の移送リール520が設けられて超伝導線材10がマルチターンされるようにし、これに相当する長さ分だけの臨界電流の測定が可能であって、長尺超伝導線材10の臨界電流の測定も可能である。すなわち、前記内部電圧端子210の間に多数の移送リール520が例えば上部に2つ、下部に2つの合計4つが設けられ、超伝導線材10がマルチターンされて移送される場合には、内部電圧端子210の間にそれに相当する長さ分だけの長尺超伝導線材10が存在し、両端の内部電圧端子210から臨界電流の測定が行われる。これに関する詳細な説明は、本出願人によって出願(韓国特許出願番号10−2007−0110228)された「超伝導テープ移送装置」に開示されているので省略する。
【0048】
一方、前記超伝導線材10に基準電圧を印加し、これにより発生する電流を臨界電流として設定し、異常電流が発生するとき、すなわち急激な臨界電流の低下、断線発生、および基準電圧から発生する抵抗より高い抵抗を有する電流の発生があるときは、分流器540へ電流が迂回するようにして超伝導線材10の損傷を防ぐようにする。
【0049】
このようにリールツーリール装置によって超伝導線材10を連続的に供給しながらホイールタイプの電流端子100によって電流を印加し、ホイールタイプの電圧端子200で電圧を測定して連続的に超伝導線材10の臨界電流を超伝導線材10の損傷なしで測定することができ、外部電圧端子220を備えることにより、電流端子100の間の内部電圧端子210による臨界電流特性だけでなく、 電流が通電される全区間にわたっての電圧も測定することができるので、超伝導線材10の損傷を防止することができる。
【0050】
また、ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造によって電流端子100および電圧端子200との接触抵抗を最小化し、通電電流を高めることができるため、安定な電流供給および電圧測定が可能である。
次に、添付図面を参照して、前記連続臨界電流測定装置を用いた連続臨界電流測定方法について詳細に説明する。
【0051】
本発明は、前記連続臨界電流測定装置を用いて、超伝導線材を一定の時間間隔で動かして、DSP(digital signal processing)が1m当り1μVに電圧を制御して臨界電流を自動測定することができるようにする。これにより、臨界電流測定時間を減らして生産性を高めると同時に生産費を節減させ、正確な臨界電流の測定を可能にした。
【0052】
図6は、本発明に係る連続臨界電流測定方法を説明するために前記連続臨界電流測定装置に対する概略的な模式図を示し、前記連続臨界電流測定装置を用いた連続臨界電流測定方法のためのブロック図を示す。図7は非線形的な臨界電流を線形化させる式を示すグラフであり、図8はDSPを用いた超伝導線材の連続臨界電流を測定するための制御アルゴリズムを示し、図9はBSCCO線材の連続臨界電流測定結果を示す。
【0053】
図示のように、本発明は、超伝導線材の連続的な臨界電流測定を行うための装置であって、液体窒素内にある超伝導線材の一定の間隔、ここでは1m間隔でホイールタイプの電圧端 子が設けられ、その外側にホイールタイプの電流端子がそれぞれ設けられることにより、印加された電流による電圧を測定して臨界電流を測定する方式である。
【0054】
前記電圧端子から測定された超伝導線材の両端電圧を増幅器とADC(analog digital converter)を介してDSPに入力して超伝導線材の両端電圧を測定し、前記測定された電圧を1m当り0.1mVに維持するために、DAC(digital analog converter)を介して電流ソースを制御しながら前記電流端子に電流を印加する。このように印加された電流値を測定し、1m当り0.1mVが維持されるように印加された電流を追跡して臨界電流を測定することができる。これは少なくとも1m区間内では連続的な臨界電流の瞬時測定が行われるのである。このような過程を超伝導線材を継続的に移送させながら行うと、長尺超伝導線材の連続的な臨界電流の測定が短時間に行われる。また、測定の長さを0.5mにすると、0.05mVが維持されるように制御する。この場合、1mのときと同じ測定速度で2倍さらに稠密な臨界電流の測定が可能である。
【0055】
一方、前記電圧端子から測定された電圧は電流のn乗に比例するので、前記測定された電圧に1/n乗(n=10〜40)をして臨界電流を線形化して前記DACに供給するようにすることにより、急激な電圧変化による電流が線形変化されるようにして臨界電流を測定することができるようにした。
これを詳しく考察すると、超伝導線材の臨界電流は下記数式1によって計算される。
(数1)
V=V(I/I
【0056】
Vは測定電圧、Iは臨界電圧、Vはこのときの電圧、nは高温超伝導線材の場合、一般に10〜40の値を有する。前記数式1によれば、超伝導線材の両端電圧は電流のn乗に比例するので、これを一般なPI制御器で制御するのは難しい問題がある。よって、測定電圧に1/n乗をして1m当り0.1mVのときに電圧が同一になるためのk値を求めると、図7の青線のように電流の線形化が可能であってPI制御器による制御が可能となる。ここで、Vの値は0.0001V(0.1mV)とし、nは30にすると、k値(k=0.0001/0.00011/30)は図7に示した値を持つ。図8はDSPを用いた超伝導線材の連続臨界電流を測定するための制御アルゴリズムを示すもので、臨界電流の線形化された値がPI制御器に入力され、この値がDACに入力されて電流ソースに伝達され、この電流ソースから、1m当り0.1mVが維持されるように超伝導線材に臨界電流が供給される。
【0057】
図9は高温超伝導線材BSCCOに対する連続臨界電流の測定結果を示すもので、測定速度は200m/hとした。図9に示すように、超伝導線材の臨界電流は、特定の区間内における平均値で測定されるのではなく、超伝導線材の特定の区間または全区間にわたっての連続的な臨界電流の実時間測定が可能であって、迅速且つ正確な臨界電流の測定が行われる。
【符号の説明】
【0058】
10:超伝導線材
20:供給リール
30:巻取リール
100:電流端子
200:電圧端子
210:内部電圧端子
220:外部電圧端子
310:線材収容溝
320:ブラシ接触部
410:ブラシ部
420:調節アーム
430:導線部
510:支持ローラー
520:移送リール
530:速度調節部
540:分流器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超伝導線材を液体窒素容器内で移送しながら超伝導線材の臨界電流を測定する装置において、
ホイールタイプの電流端子およびホイールタイプの電圧端子を含んでなり、
リールツーリール装置によって超伝導線材の継続的な供給と移送が行われ、前記ホイールタイプの電流端子および電圧端子を適用することにより、前記超伝導線材が前記電流端子および前記電圧端子に接触して等線速度で移送されながらリアルタイムで臨界電流の測定が行われることを特徴とする、連続臨界電流測定装置。
【請求項2】
前記電圧端子は、前記超伝導線材の移送経路を基準として、前記電流端子の内側に位置する内部電圧端子、および前記電流端子の外側に位置する外部電圧端子を含んでなることを特徴とする、請求項1に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項3】
前記内部電圧端子の間には、移送される超伝導線材を支持する支持棒または支持ローラーがさらに設けられることを特徴とする、請求項2に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項4】
前記内部電圧端子の間に多数の移送リールが設けられて超伝導線材がマルチターンされるようにして、これに相当する長さ分だけの臨界電流の測定が可能であることを特徴とする、請求項2に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項5】
前記電流端子に接触する超伝導線材は、前記電流端子に少なくとも半周以上接触して移送されることを特徴とする、請求項1に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項6】
前記電圧端子に接触する超伝導線材は、前記電流端子に接触する超伝導線材の接触端部地点における接線の傾きより小さい方向に移送されることを特徴とする、請求項5に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項7】
前記電流端子および前記電圧端子は、ホイールタイプをしており、側面に沿って線材収容溝が設けられ、中心部から後方側に突出して電流印加および電圧測定のためのブラシ接触部が設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項8】
前記電流端子および前記電圧端子は、それぞれブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造によって電流引き込みおよび電圧測定が行われることを特徴とする、請求項7に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項9】
前記ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造は、
前記ブラシ接触部の曲率に対応して接触形成される少なくとも一つのブラシ部と、
前記ブラシ部に対する電流引き込みおよび電圧測定のために外部端子に連結された導線部とを含んでなることを特徴とする、請求項8に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項10】
前記ブラシ部は、一対がバネで連結されてブラシ部の接触圧力を調節することを特徴とする、請求項9に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項11】
前記ブラシ型電流引き込み構造および電圧測定構造は、
前記ブラシ接触部の曲率に対応して接触形成され、少なくとも一つの対を成すブラシ部と、
前記対を成すブラシ部にそれぞれ連結されて所定の角度を成し、バネで連結されて前記ブラシ部の接触圧力を調節させ且つ均衡を維持する調節アームと、
前記調節アームの一側に引き込まれ、前記ブラシ部に電気的に連結されて電流を供給する導線部とを含んでなることを特徴とする、請求項8に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項12】
前記超伝導線材は、速度調節部によって等速度で移送されることを特徴とする、請求項1に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項13】
前記超伝導線材に基準電圧を印加し、これにより発生する電流を臨界電流として設定し、異常電流が発生するときは分流器へ電流が流れるように構成されることを特徴とする、請求項1に記載の連続臨界電流測定装置。
【請求項14】
請求項1〜請求項13のいずれか1項に記載の連続臨界電流測定装置を用いて、前記電圧端子から測定された超伝導線材の両端電圧を増幅器とADCを介してDSPに入力して超伝導線材の両端電圧を測定する第1段階と、
前記測定された電圧を1m当たり0.1mVに維持するために、DACを介して電流ソースを制御しながら前記電流端子に電流を印加する第2段階と、
前記電流端子に印加された電流を測定し、1m当たり0.1mVが維持されるように印加された電流を追跡して臨界電流を測定する第3段階とを含んでなり、
前記電圧端子から測定された電圧は、電流のn乗に比例するので、前記測定された電圧に1/n乗(n=10〜40)をして臨界電流を線形化して前記DACに供給することを特徴とする、連続臨界電流測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−123046(P2011−123046A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109026(P2010−109026)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(501339126)韓国電気研究院 (5)
【住所又は居所原語表記】28‐1,Seongju‐dong,Changwon‐city,Gyeonsangnam‐do,Republicofkorea
【Fターム(参考)】