説明

連続鋳造機の制御装置

【課題】鋳片の最終凝固位置を常に連続鋳造機内に位置させつつ、鋳造速度を最大化すること。
【解決手段】本発明の連続鋳造機の制御装置10は、現在または過去の鋳造速度を維持した場合の将来における鋳片の最終凝固位置、および現在または過去の鋳造速度を変更した場合の将来における鋳片の最終凝固位置を推定する最終凝固位置推定手段12aと、最終凝固位置推定手段12aが推定した鋳片の最終凝固位置を少なくとも一つ以上表示する表示装置13とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続鋳造機の制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在の製鉄プロセスにおいては、精錬した溶鋼を鋳造して鋳片を製造する方法として、連続鋳造機を用いた連続鋳造法と呼ばれる手法が一般に用いられている。この連続鋳造機の操業においては、鋳造される鋳片内の溶鋼の凝固が完了する位置(これを最終凝固位置という)が連続鋳造機の最終サポートロールの位置(これを連続鋳造機の機端という)よりも鋳型内湯面位置側にあることが必要である。これは、最終凝固位置が機端の外に出た条件で鋳造を行うと、未凝固の溶鋼に作用する鋳型内湯面位置からの高さ分に相当する溶鋼静圧により、鋳片がバルジングを起こし著しい形状変形が発生したり、トーチカッターで鋳片を切断した際に、鋳片内から未凝固部の溶鋼が噴出し、周辺へ飛散・流出して機器破損を引き起こしたりするからである。
【0003】
そこで、従来より、鋳片の最終凝固位置が連続鋳造機の機端から機外に出ないようにするための方法が提案されている。例えば、特許文献1には、鋳造中の鋳片に超音波を入射し、その透過信号より鋳片の最終凝固位置を推定する方法が記載されている。また、特許文献2には、冷却履歴情報を用いた伝熱凝固計算によって最終凝固位置を推定する技術が記載されている。これらの特許文献1および特許文献2に記載の方法は、いずれも最終凝固位置を検知して、速やかに鋳造速度を低下または鋳造の停止をすることにより、最終凝固位置が連続鋳造機内となるように操業する技術である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−197502号公報
【特許文献2】特開2006−175468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記のように最終凝固位置を検知してから速やかに鋳造速度を低下または鋳造の停止をしても、最終凝固位置の変化は、鋳造速度の変化に対して遅れて変化するので、最終凝固位置が連続鋳造機の機端より外に出てしまうことがあった。また、最終凝固位置が機端より十分に鋳型内湯面位置側にあると判断して鋳造速度を上げた際に、鋳造速度の上昇量が過剰となり、同様に最終凝固位置が機端より先になることもあった。このため、従来技術では、鋳造速度の調整は余裕を持って行わざるを得ないものとなり、鋳造速度を大きくできないことによる生産性の低下が発生していた。
【0006】
本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであって、その目的は、鋳片の最終凝固位置を常に連続鋳造機内に位置させつつ、鋳造速度を最大化する操業が可能となる連続鋳造機の制御装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る連続鋳造機の制御装置は、現在または過去の鋳造速度を維持した場合の将来における鋳片の最終凝固位置、および現在または過去の鋳造速度を変更した場合の将来における前記鋳片の最終凝固位置を推定する最終凝固位置推定手段と、前記最終凝固位置推定手段が推定した前記鋳片の最終凝固位置を少なくとも一つ以上表示する表示手段とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明に係る連続鋳造機の制御装置によれば、鋳片の最終凝固位置を常に連続鋳造機内に位置させつつ、鋳造速度を最大化する操業が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、本発明の実施形態に係る連続鋳造機の制御装置を適用する連続鋳造機の概略構成を示す模式図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態に係る連続鋳造機の制御装置の概略構成を示すブロック図である。
【図3】図3は、複数の減速パターンについての最終凝固位置の推定値の推移を表すグラフである。
【図4】図4は、図3に示された最終凝固位置の推定値の推移を表すグラフにおける、減速を開始した付近の拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る連続鋳造機の制御装置について説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る連続鋳造機の制御装置を適用する連続鋳造機の概略構成を示す模式図である。図1に示すように、本発明の実施形態に係る連続鋳造機1は、溶鋼2が注入されるタンディッシュ3と、浸漬ノズル4を介してタンディッシュ3から注がれた溶鋼2を表面の凝固シェル5が樹枝状晶に成長するまで整形しつつ半凝固させる鋳型6と、鋳型6から半凝固状態の鋳片7を引き抜きつつ冷却搬送するサポートロール8と、サポートロール8によって搬送された鋳片7を所定の長さに切断するトーチカッター9とを備える。
【0012】
上記構成の連続鋳造機1において、サポートロール8により冷却搬送される鋳片7は、最終凝固位置CEにおいて内部の溶鋼2の凝固が完了し、この最終凝固位置CEが最終のサポートロール8の位置(すなわち連続鋳造機1の機端E)よりも手前に位置するように操業される。なお、最終凝固位置CEなど鋳片7の連続鋳造機1における位置は、鋳型内湯面位置Mを基点とした距離(m)によって数値化されるのが一般的であり、以下では、断りなく連続鋳造機1における鋳片7の位置を鋳型内湯面位置Mを基点とした距離(m)によって記載する。
【0013】
図2は、本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置の概略構成を示すブロック図である。図2に示されるように、本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置10は、記憶部11と、演算部12と、表示装置13と、入力装置14とを備える。
【0014】
制御装置10は、連続鋳造機1における鋳片7の最終凝固位置CEの情報を取得し、連続鋳造機1の鋳造速度を変更する。制御装置10が連続鋳造機1における鋳片7の最終凝固位置CEの情報を取得する方法は、連続鋳造機1に設けられた超音波センサーにより最終凝固位置CEを検出する方法、サポートロール8に作用する荷重変動を測定して最終凝固位置CEを検出する方法、または、操業条件による伝熱凝固計算から最終凝固位置CEを算出する方法などを用いることができる。もちろん、これ以外を用いても本発明を適切に実施することができる。
【0015】
記憶部11は、連続鋳造機1の鋳造速度および最終凝固位置CEを記憶する記憶手段である。また、記憶部11は、演算部12が処理するプログラムなど、制御装置10が必要とするその他の電子情報も記憶できる構成とすることが好ましい。
【0016】
演算部12は、記憶部11に記憶された連続鋳造機1の鋳造速度および最終凝固位置CEを参照して、将来の最終凝固位置CEを推定する最終凝固位置推定手段12aを有する。この最終凝固位置推定手段12aが行う最終凝固位置CEの推定については、後に詳述する。
【0017】
表示装置13は、最終凝固位置推定手段12aが推定した複数の最終凝固位置CEを表示する表示モニターであり、入力装置14は、オペレータが表示装置13に表示された複数の最終凝固位置CEの中から最適なものを選択し、その最終凝固位置CEに対応した鋳造速度を入力するための入力手段である。なお、上記のような表示装置13の表示に基づいて入力装置14に鋳造速度を入力する作業をオペレータが行わずに、演算部12が実行するプログラムによって自動化する構成も可能である。
【0018】
〔最終凝固位置の推定〕
ここで、最終凝固位置推定手段12aが行う最終凝固位置CEの推定方法について説明する。なお、以下に説明する最終凝固位置推定手段12aが行う最終凝固位置CEの推定方法は、最終凝固位置CEの推定方法の一例であり、この方法以外であっても、それが最終凝固位置CEを推定する合理的な方法であるのならば、本発明を適切に実施することができる。
【0019】
鋳片7の凝固シェル5の厚みd(mm)は、経過時間t(min)の1/2乗に比例することが知られている(式1)。この比例係数k(mm・min(−1/2))は凝固定数と呼ばれ、溶鋼の成分組成、鋳型内湯面位置Mにおける溶鋼2の温度、および冷却水の水量・温度・配分・噴霧圧などの二次冷却条件により定まる定数である。
d=k・t(1/2) ・・・(式1)
【0020】
鋳片7内の溶鋼2が完全に凝固する状態とは、凝固シェル5の厚みd(mm)が鋳片7の中心に達したときであるので、鋳片7の厚さをD(mm)とすると、D=2dの関係が成り立つときである。したがって、鋳造速度Vc(m/min)で鋳造した場合の鋳型内湯面位置Mから最終凝固位置CEまでの長さL(m)は、(式1)を(式2)のように変形することにより算出できる。
L=Vc・(D/2k) ・・・(式2)
また、(式2)を変形することにより、鋳型内湯面位置Mから最終凝固位置CEまでの長さL(m)に対する鋳造速度Vcを求めることが出来る(式3)。
Vc=L(D/2k)−2 ・・・(式3)
【0021】
一方、非定常な状態での最終凝固位置CEは、鋳造速度Vc1から鋳造速度Vc2へ変化させた場合の差ΔVcに比例して変化し、現在(t=0)の最終凝固位置をCE(0)(m)とすると、t(min)後の最終凝固位置CE(t)(m)は(式4)で簡易推定できる。
CE(t)=CE(0)+ΔVc×t ・・・(式4)
【0022】
さらに、ΔVcを加速度α(m/min)で変化させた場合、最終凝固位置CEは等加速度運動の関係より、以下のように簡易推定できる(式5)。
CE(t)=CE(0)+ΔVc×t+1/2×α×t ・・・(式5)
【0023】
上記(式4)および(式5)は、時刻tが大きくなった場合において実際の最終凝固位置CEから乖離してしまうが、時刻t=0(すなわち鋳造速度Vcの変更時)の近傍では、移動過程における最終凝固位置CEの推定として用いることが可能である。
【0024】
なお、上記最終凝固位置CEの推定方法は、本発明に適用できる推定方法の一例であり、その他の合理的な最終凝固位置CEの推定方法であれば、本発明を適切に実施することができる。例えば、上述のように、操業条件による伝熱凝固計算から最終凝固位置CEを算出する方法を用いることができる。操業情報による伝熱凝固計算を用いた最終凝固位置の推定方法は、センサーの設置位置に制約されず最終凝固位置を推定することができ、かつ、最終凝固位置の推定に要する時間も他の物理センサーに比べて同等以下とすることが容易であるという特徴がある。加えて、時間に対して連続的な推定をすることも出来るので、本発明の最終凝固位置CEの推定方法として好ましい。
【0025】
ところで、伝熱凝固計算では、予め連続鋳造機1の情報などを入力して計算するので、経時による連続鋳造機1の状態変動を考慮しきれず、実際と異なる結果を示す場合がある。そこで、伝熱凝固計算に加えて、さらに別の方法を使って最終凝固位置CEを把握することがより好ましい。具体的には、先述の超音波センサを用いる方法、またはサポートロール8に作用する荷重変動を測定する方法を、伝熱凝固計算と組合わせて用いることが考えられる。
【0026】
〔推定例〕
以下、図3および図4を参照して、最終凝固位置CEの推定の例について説明する。図3は、最終凝固位置CEがSmを越えた時点で、鋳造速度Vcの減速を開始する場合における、複数の減速パターンについての最終凝固位置CEの推定値の推移を表すグラフである。図4は、図3に示された最終凝固位置CEの推定値の推移を表すグラフにおける、減速を開始した付近の拡大図である。
【0027】
図3に示された最終凝固位置CEの推定値の推移は、鋳造速度Vc1から鋳造速度Vc2へ変更した場合を想定した推定値の推移である。図3に示されるように、鋳造速度Vc1での定常の最終凝固位置CEは、鋳型内湯面位置MからCEmであり、鋳造速度Vc2での定常の最終凝固位置CEは、鋳型内湯面位置MからCEmである。そして、連続鋳造機1の機端EはEmであり、鋳造速度Vc2の状態を維持し続けた場合、最終凝固位置CEが連続鋳造機1の機端Eを越えてしまうという状況である。
【0028】
そこで、図3に示された最終凝固位置CEの推定例では、最終凝固位置CEがSmを越えた時点で鋳造速度Vcの減速を開始した場合の複数の減速パターンについての最終凝固位置CEを推定している。なお、鋳造速度Vcの減速を開始(すなわち推定の開始)のトリガーとしては、連続鋳造機1の鋳型内湯面位置MからSmの位置に超音波センサーなどの最終凝固点を検出する手段を備える方法が考えられる。このように、連続鋳造機1の操業中のある時点からその後の最終凝固位置CEの推定することにより、本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置10は、連続鋳造機1のオンラインでの制御を行う。なお、図3に示された最終凝固位置CEの推定例では、鋳造速度Vcの減速を開始(すなわち推定の開始)時を、時刻0分と定義してグラフの表示をしている。
【0029】
図3に示された最終凝固位置CEの推定例では、鋳造速度Vcの減速のパターンとして、パターン1からパターン5までを推定し、その推定結果を表示している。図3のグラフによれば、この最終凝固位置CEの推定例では、パターン3,4,5で減速すれば、最終凝固位置CEが連続鋳造機1の機端Eを越えないことが解る。したがって、本推定例では、オペレーターが、減速のパターン3,4,5のうち一つを選択し、連続鋳造機1の鋳造速度Vcを変更する制御を行うこで、最終凝固位置CEが連続鋳造機1の機端Eを越えないようにすることができる。さらに好ましくは、オペレーターが、減速のパターン3を選択し、連続鋳造機1の鋳造速度Vcを変更する制御を行うことで、終凝固位置CEが連続鋳造機1の機端Eを越えないようにすることができるとともに、鋳造速度Vcを最大化することが可能である。
【0030】
〔好適なパラメータ〕
以下に、最終凝固位置CEの推定および表示についての好適なパラメータについて説明する。
【0031】
本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置10による最終凝固位置CEの推定方法では、推定が行われる時点またはそのtp(分)前の操業条件に基づいて、ta(分)経過した後の最終凝固位置CEの値を推定する。以下、推定が行われる時点のtp(分)前を、参照時間tp(分)と記載し、推定を行うta(分)経過後の時刻を推定時間ta(分)と記載する。
【0032】
本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置10による最終凝固位置CEの推定方法では、参照時間tp(分)が極端に大きい場合、推定しようとする最終凝固位置CEに対応する鋳片7が、連続鋳造機1の鋳片7のどの状態とも対応しないので、有意な最終凝固位置CEの推定をすることが困難となる。よって、参照時間tp(分)と鋳造速度Vcとの関係は、参照時間tp(分)と鋳造速度Vcとの積が5未満が好ましく、また2未満であることがより好ましい。ただし、参照時間tp(分)の値は連続鋳造機1の仕様や鋳造する鋼種によって適宜決められるべきものであり、本発明の実施はこの値に制約されるものでない。
【0033】
本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置10による最終凝固位置CEの推定値の表示は、参照時間tp(分)における操業条件とは異なる操業条件で鋳造した場合の推定時間ta(分)における最終凝固位置CEの推定値を1つ以上表示することが好ましい。現在の操業条件を維持した場合の最終凝固位置CEの推定値と操業条件を変更した場合の最終凝固位置CEの推定値とが併せて表示されることにより、オペレーターが操業条件を変えた場合の最終凝固位置CEがどのように変化をするかを理解し得る。すなわち、操業条件の変化に対して遅れて最終凝固位置CEが変化する事に起因する、最終凝固位置CEが機端Eより機外に出てしまう現象をより確実に防止できる。
【0034】
最終凝固位置CEを推定する推定時間ta(分)の適正な値は、連続鋳造機1によって適切に設定することが好ましい。しかしながら、推定時間taと鋳造速度Vcとの積が少なくとも2以上になることが好ましい。また、推定時間taが大きすぎると有意な最終凝固位置CEの推定が困難となるので、推定時間taと鋳造速度Vcとの積が50未満となるように推定時間taを選定することが好ましい。
【0035】
また,鋳造速度Vcが大きい場合、鋳造速度Vcの変更に対する最終凝固位置CEの変化の遅れが増加する傾向がある。その場合は複数の推定時間taについて最終凝固位置CEを算出することが好ましい。複数の推定時間taについて最終凝固位置CEの推定位置を表示するようにすることで、最終凝固位置CEが機端Eより機外に出てしまう現象の抑制がより確実に行えるようになる。
【0036】
例えば、鋳造速度Vcと鋳造機の最大鋳造速度Vcmaxとの関係において、推定時間taを下記のように設定することが考えられる。
(1) Vc/Vcmax<0.2の場合、ta=2
(2) 0.2≦Vc/Vcmax<0.6の場合、ta=2,5
(3) 0.6≦Vc/Vcmax<0.8の場合、ta=2,5,10
(4) 0.8≦Vc/Vcmax≦1.0の場合、ta=2,5,10,15
勿論、推定時間taの値は装置の仕様や鋳造する鋼種によっても適宜調整されるべきものであり、本発明の実施は上記値に制約されるものでない。
【0037】
参照時間tpの鋳造速度をVcp(m/分)としたときの推定時間taの鋳造速度Vca(m/分)の適正な値は、連続鋳造機1の仕様により適切に選択することができる。しかしながら、連続鋳造機1の最大鋳造速度をVcmax(m/分)とした場合、0.1Vcmax≦Vca≦Vcmaxかつ0.1≦Vca/Vcp≦5という条件を満たす範囲から選定することが好ましい。また、Vcp/Vcmaxとして算出される値の小数点第2位を切り捨てた値をαと定義し、Vca/Vcmaxをβ(ただし0<β<1)と定義するとき、β=α±0.1たる条件をみたすVcaを選定することが好ましい。さらに好ましくは、βはαに対して、−0.3,−0.2,−0.1,0,0.1,0.2,0.3の中から選ばれる5つの数字としている。好ましい組み合わせは、0を中心として、正負の符号を対称に2つずつ選ぶことである。なお、このいずれの場合もβの定義範囲を超えた場合は、その値は含まないものとする。その場合は、βの定義範囲を超えなかった値の符号の中から選ばれていない任意の値を選択してもよい。
【0038】
なお、上述したVcaの選び方はあくまでも一例であり、その選び方は装置の仕様や鋳造する鋼種によって適宜決められるべきものである。本発明は、上記の値に制約されるものではない。また、推定時間taの最終凝固位置CEを表示した場合について記述したが、それ以外の時間、たとえば、0分後、1/2ta分後、1.5ta分後、2ta分後といった時間について表示しても構わない。とりわけ0分後の結果を出力すると、上述したta後の値と比較出来るようになるので、変化の傾向が分かるようになる。変化の傾向が把握できると、より的確な変位の推測ができるようになるので最終凝固位置CEが機端Eを超えるのを防ぐことがより容易となる。
【0039】
以上、本発明の実施形態に係る連続鋳造機1の制御装置10は、現在または過去の鋳造速度を維持した場合の将来における鋳片7の最終凝固位置CEおよび現在または過去の鋳造速度を変更した場合の将来における鋳片7の最終凝固位置CEを推定する最終凝固位置推定手段12aと、最終凝固位置推定手段12aが推定した鋳片7の最終凝固位置CEを少なくとも一つ以上表示する表示装置13と、オペレーターが鋳造速度を入力するための入力装置14とを備え、最終凝固位置推定手段12aは、変更後の鋳造速度および鋳造速度の変更に伴う加速度に基づいて鋳片7の最終凝固位置CEを推定し、オペレーターが、表示装置13に表示される少なくとも一つ以上の鋳片7の最終凝固位置CEを選択し、選択した鋳片の最終凝固位置に対応した鋳造速度を入力装置14に入力するので、鋳片7の最終凝固位置CEを常に連続鋳造機1内に位置させつつ、鋳造速度を最大化する操業が可能となる。
【0040】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明の実施における操業条件とは鋳造速度Vcに限らず、それ以外の操業条件並びに鋳造速度Vcとそれ以外の操業条件、あるいはVc以外の2以上の条件を組み合わせるなど、いずれの組み合わせの場合においても、勿論有効である。
【符号の説明】
【0041】
1 連続鋳造機
2 溶鋼
3 タンディッシュ
4 浸漬ノズル
5 凝固シェル
6 鋳型
7 鋳片
8 サポートロール
9 トーチカッター
10 制御装置
11 記憶部
12 演算部
12a 最終凝固位置推定手段
13 表示装置
14 入力装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在または過去の鋳造速度を維持した場合の将来における鋳片の最終凝固位置、および現在または過去の鋳造速度を変更した場合の将来における前記鋳片の最終凝固位置を推定する最終凝固位置推定手段と、
前記最終凝固位置推定手段が推定した前記鋳片の最終凝固位置を少なくとも一つ以上表示する表示手段と、
を備えることを特徴とする連続鋳造機の制御装置。
【請求項2】
前記最終凝固位置推定手段は、変更後の鋳造速度に基づいて前記鋳片の最終凝固位置を推定することを特徴とする請求項1に記載の連続鋳造機の制御装置。
【請求項3】
前記最終凝固位置推定手段は、鋳造速度の変更に伴う加速度に基づいて前記鋳片の最終凝固位置を推定することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の連続鋳造機の制御装置。
【請求項4】
オペレーターが鋳造速度を入力するための入力手段をさらに備え、
オペレーターは、前記表示手段に表示される少なくとも一つ以上の前記鋳片の最終凝固位置を選択し、前記選択した鋳片の最終凝固位置に対応した鋳造速度を入力手段に入力することを特徴とする請求項1から請求項3の何れか1項に記載の連続鋳造機の制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−103244(P2013−103244A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−247984(P2011−247984)
【出願日】平成23年11月11日(2011.11.11)
【出願人】(000001258)JFEスチール株式会社 (8,589)
【Fターム(参考)】