説明

連続鋳造用取鍋。

【課題】金属溶湯中の汚染物質を経済的に低減することができる連続鋳造用取鍋を提供すること。
【解決手段】上ノズル3内の上下方向溶湯流路に配置する略円柱状の耐火ボード12と、耐火ボード12の外周下端部と下部プレート3bの内壁面との間に嵌挿する突っ張りリング13と、突っ張りリング13上に形成される耐火ボード12外周面と上部プレート3aおよび下部プレート3bの内壁面との間のリング状空間11に充填する耐火物粒子14を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は連続鋳造用取鍋に関し、詳しくは、溶鋼を主とする金属溶湯の連続鋳造において、取鍋内の金属溶湯をタンディッシュに注入するときの溶湯の汚染を抑制することができる連続鋳造用取鍋に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、いわゆる連続鋳造設備の一部を構成するものであるので、最初に連続鋳造設備の概要について簡単に説明する。
【0003】
図5に示すように、連続鋳造設備は、転炉(図示せず)の金属溶湯を受ける取鍋21と、取鍋21内の金属溶湯を注入管22を経て受け入れるタンディッシュ23と、タンディッシュ23内の金属溶湯を浸漬ノズル24を経て受け入れる鋳型25と、鋳片全幅にわたって冷却水をスプレーするスプレーノズル26と、鋳片内の金属溶湯を電磁誘導撹拌し、等軸樹脂状晶を増し、最終凝固位置の溶質元素の偏析を多数の等軸晶間に分散する電磁誘導撹拌装置27と、多数のサポートロール群28と、鋳片引き抜き用ダミーバー29と、ガス切断機30とから主に構成される。
【0004】
取鍋21からタンディッシュ23ならびにタンディッシュ23から鋳型25への金属溶湯の移送に際しては、耐火物製の注入管22や浸漬ノズル24により、金属溶湯と空気との接触による酸化を遮断し、タンディッシュ23はスラグの金属溶湯への巻き込みを避けるために、堰やバッフルを設けて非金属介在物の浮上分離が図られている。また、湯面変動を抑制し凝固殻の表面性状を良好にする目的で、鋳型25に磁場をかけ、タンディッシュ23から流入する金属溶湯流を制御する装置も使われ、さらに、鋳型25には鋳片の焼き付きを防ぐための振動装置が設置され、サポートロール群28は剛性を大きくし、かつロール間隔を小さくして溶湯静圧による鋳片のふくれと、その結果として起こる割れや偏析を防ぐなど、鋳片の品質向上を図るための様々な工夫が施されている。
【0005】
しかし、それにも関わらず、取鍋21からタンディッシュ23への金属溶湯の注湯時には、いくつかの要因によりタンディッシュ内において金属溶湯の再酸化が起こり、金属溶湯の清浄度が低下する。清浄度低下の要因は大別して2つあり、その第1は大気を含む雰囲気からの酸化であり、その第2は酸化物を含むスラグによる酸化である。そのうち、雰囲気からの酸化については、各種対策によりほぼ完全に防止することが可能である。
【0006】
他方、スラグによる金属溶湯の酸化を防止する方法としては、例えば、特許文献1には、筒状の側壁部とその上部の円錐状の屋根部と平板状の底部よりなるスラグ浸入防止用容器を取鍋からタンディッシュへの金属溶湯の注入口の中心部と容器中心が一致するように取鍋より吊り下げてスラグ浸入を防止する方法が開示されているが、特許文献1に記載されたスラグ浸入防止用容器を用いる方法は、容器の取り扱いが煩雑であるなど操作性に問題があるとともに、そのスラグ浸入防止効果が十分とは言えない。
【0007】
さらに、この特許文献1に記載された発明も、以下に説明する取鍋の上ノズルに充填する耐火物粒子に起因する金属溶湯の汚染に言及していない。すなわち、連続鋳造方法における金属溶湯の汚染に関して今まで着目されていない事項として、次に説明する取鍋の上ノズルに充填する耐火物粒子に伴う問題を挙げることができる。
【0008】
すなわち、転炉から供給された金属溶湯を貯留する二つ又はそれ以上の取鍋から交互にタンディッシュに金属溶湯を注入することにより連続鋳造が行われている以上、タンディッシュへ金属溶湯を注入しない取鍋底部の溶湯排出口は封鎖する必要があり、図6に示すように、金属溶湯を排出しない取鍋(図5の符号21参照)の底部に設けられた溶湯排出口である上ノズル31は、取鍋底面に沿ってスライドするスライディングノズル32のフランジ部33で封鎖されるとともに上ノズル31内の溶湯流路には金属溶湯の浸入と凝固を防止するための耐火物粒子34(100メッシュ程度の大きさのシリカまたはクロムを主成分とする耐火物粒子、約40ないし60kg/チャージ)が充填されている。ところが、この耐火物粒子は注湯時に取鍋内の金属溶湯とともにタンディッシュに流入し、最終的に凝固するときに非金属介在物として製品欠陥となる。これを防ぐ対策として、取鍋からタンディッシュに流入する初期の金属溶湯を捨てるか、上記耐火物粒子を含有すると思われる範囲の鋳片を級外品として処理するというようなことが行われている。しかし、このような方法では大幅な歩留まりの低下を招いてしまう。また、一部の耐火物粒子はタンディッシュに設けられた堰と比重の関係で溶湯表面に浮上するが、相当量の耐火物粒子は金属溶湯中に混入して、凝固時に非金属介在物となって鋳造製品の品質を低下させる要因となっている。
【特許文献1】特開平7−185753号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は従来の技術の有するこのような問題点に鑑みてなされたものであって、その目的は、取鍋の上ノズルに充填される耐火物粒子ならびに転炉から取鍋に流入するスラグにに起因する金属溶湯中の汚染物質を経済的に低減することができる連続鋳造用取鍋を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために本発明は、取鍋底部に設けた上ノズルからスライディングノズルを経て取鍋内の金属溶湯を排出する連続鋳造用取鍋において、上ノズルは、その上下方向溶湯流路に配置する略円柱状の耐火ボードと、この耐火ボードの外周下端部と上ノズル内壁面との間に嵌挿する突っ張りリングと、この突っ張りリング上に形成される耐火ボード外周面と上ノズル内壁面との間のリング状空間に充填する耐火物粒子とを有することを特徴としている。
【0011】
かかる構成によれば、溶湯流路に配置される一定の大きさを有する耐火ボードは金属溶湯に混入せず溶湯表面に浮上するので、金属溶湯に含まれる汚染物質(耐火物粒子)を低減することができる。
【0012】
上記構成において、上ノズル内の溶湯流路下部に耐火ボードを下方から支えるための鋼製支持部材を配し、この支持部材の一端をスライディングノズルのフランジで支持し、上記支持部材の他端を耐火ボード内に圧入してなることが好ましい。
【0013】
そうすれば、耐火物粒子の充填量そのものを少なくすることができ、金属溶湯に含まれる汚染物質を一層低減することができる。
【0014】
さらに、耐火ボードを取鍋底部側から取鍋内部に向かって外径が小さくなるテーパ形状にすれば、取鍋からタンディッシュへの金属溶湯注入時、溶湯静圧による下方への強大な押圧力によって突っ張りリングによる拘束が解除された耐火ボードは溶湯流と一体となって流下し、上ノズルからスライディングノズルを経てタンディッシュ内へのスムーズな湯流れを確保することができる。
【0015】
また、取鍋内の金属溶湯の上層部には転炉から出鋼時に流出したスラグが浮上しているが、取鍋内の金属溶湯量が減少してタンディッシュへの注入末期になると、上ノズル近傍には渦流が発生し、上記スラグが金属溶湯に混入しやすくなり、これが非金属介在物となって鋳造製品の品質を低下させる要因となっている。
【0016】
そこで、上ノズル上端部に取鍋内金属溶湯に向けて不活性ガスを噴出するガス噴出孔を設ければ、そのガス噴出孔から取鍋内の金属溶湯に向けて不活性ガスを噴出することにより、低比重のスラグを不活性ガスに随伴させて溶湯表面に浮上させ、鋳造製品に混入する非金属介在物を低減することができる。
【0017】
また、ガス噴出孔を上ノズル上端部の円周方向に均等間隔で設ければ、そのガス噴出孔から取鍋内の金属溶湯に向けて不活性ガスを噴出することにより、金属溶湯中に均一に存在する不活性ガス流によるスラグ浮上作用により、金属溶湯へのスラグの巻き込み抑制効果は一層大きくなることが期待できる。
【発明の効果】
【0018】
取鍋の上ノズル内の溶湯流路に略円柱状の耐火ボードを配置するという簡単な手段により、金属溶湯に含まれる汚染物質を経済的に低減し、鋳造製品の品質を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下に本発明の実施形態を図面を参照しながら説明するが、本発明は下記実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲を逸脱しない範囲において適宜変更や修正が可能である。
(連続鋳造設備)
図1は、本発明の取鍋を適用した連続鋳造設備の一例の概略断面図である。図1において、取鍋1は金属溶湯2を収容し、取鍋1の底部には上ノズル3が形成され、この上ノズル3の下側には取鍋1の底面に沿ってスライドするスライディングノズル4が設置され、さらに、スライディングノズル4に固着して注入管5が取り付けられている。そこで、図示しない駆動装置により、スライディングノズル4と注入管5は一体となって両矢示方向にスライドすることが可能である。また、注入管5は、取鍋1の下方に設けたタンディッシュ6内の金属溶湯2に浸漬されている。上記スライディングノズル4は取鍋1から排出される金属溶湯2の流量調整手段であり、注入管5と一体となったスライディングノズル4が取鍋1の底面に沿って両矢示方向にスライドすることにより、上ノズル3が全閉状態となって金属溶湯2の供給が絶たれたり、上ノズル3の開口部とスライディングノズル4の開口部が一致すれば、すなわち、全開状態になれば、所定量の金属溶湯2がタンディッシュ6に向けて排出されるようになっている。タンディッシュ6内には複数の堰7が設置されており、タンディッシュ6に対する注入管5の設置位置に対して長手方向反対側の底部には鋳型9への金属溶湯の供給流路となる浸漬ノズル8が設置され、鋳型9を経て鋳片10が製造されるようになっている。
【0020】
かくして、上ノズル3の開口部とスライディングノズル4の開口部を一致させて、注入管5の先端をタンディッシュ6内の金属溶湯2に浸漬させながら、取鍋1内の金属溶湯2をタンディッシュ6に注入する。タンディッシュ6内の金属溶湯2は、適宜の位置に設けられた堰7に当接することにより行く手を阻まれ、金属溶湯2に含まれる耐火物粒子等の軽量不純物の一部は堰7に沿って金属溶湯2の表面に浮上するが、金属溶湯2に混入したままの耐火物粒子も相当量存在する。このようにして、耐火物粒子を伴う金属溶湯2は浸漬ノズル8を経て鋳型9内で冷却されて凝固し、介在物を含む鋳片10が製造される。
【0021】
上記は、簡単のために単ストランド鋳造について説明したが、一般的には、複数個の取鍋から交互にタンディッシュに金属溶湯が注入される多ストランド鋳造が行われている。この場合、金属溶湯が排出されない取鍋の金属溶湯排出口は閉塞する必要があり、そのために、図1に示す取鍋1の上ノズル3内には耐火物粒子が充填されるのである。しかし、その耐火物粒子は注入初期の金属溶湯2とともにタンディッシュ6内に流入し、金属溶湯を汚染する原因となる。
(上ノズル)
そこで、この金属溶湯の汚染を防止し、または金属溶湯の汚染を抑制するために、本発明者は、図2、図3に示すような構成の上ノズルを採用したのである。図2は、本発明の取鍋の上ノズルの一実施形態の拡大断面図であり、図3は本発明の取鍋の上ノズルの別の実施形態の拡大断面図である。
【0022】
図2において、上ノズル3は上部プレート3aと下部プレート3bから構成されている。上ノズル3内の中央部上下方向溶湯流路には、取鍋底部側(図2の下方)から取鍋内部(図2の上方)に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ形状の略円柱状の耐火ボード12が配置され、耐火ボード12の外周下端部と下部プレート3bの内壁面との間には伸縮可能な耐火物製の突っ張りリング13が嵌挿され、突っ張りリング13上に形成される耐火ボード12外周面と、上部プレート3aおよび下部プレート3bの内壁面との間のリング状空間11には耐火物粒子14(約590〜1190μmの範囲の粒径で、Cr23とSiO2とFe23の3成分の合計を70重量%以上含有する耐火物粒子)が充填されている。突っ張りリング13の外径は下部プレート3bの内径より僅かに大きく、突っ張りリング13の内径は耐火ボード12の外径より僅かに小さいので、突っ張りリング13による径方向への突っ張り効果により、耐火ボード12を押圧して保持することが可能である。18はスライディングノズルのフランジである。耐火ボード12は、約90重量%のMgOと粘土とフェノール樹脂(バインダー)を混練して成形したものを約200℃で乾燥したものである。耐火ボードの素材としては耐火性を有するものであれば、上記以外の素材、例えば、レンガ、セラミックを使用することも可能である。また、本発明において、耐火ボードとは、焼成した耐火物、耐火物キャスタブルの成形品、耐火繊維の成形品なども含んでいる。
【0023】
上部プレート3aの上端部には取鍋1内の金属溶湯に向けて斜め上方に不活性ガスを噴出するガス噴出孔15が、180゜対向する位置に3個づつ設けられている。このガス噴出孔15は図示しないArガス供給源と接続されている。図2においては、180゜対向する位置に3個づつのガス噴出孔15しか示されていないが、必要に応じて、上部プレート3aの上端部の円周方向において略均等間隔にある3箇所以上の場所に、それぞれ複数個の不活性ガス噴出孔を設けることができる。
【0024】
図2とは別の実施形態である図3において、上ノズル3内の溶湯流路上部には、略円柱状の耐火ボード16が設置されている。上ノズル3内の溶湯流路下部には上方にある略円柱状の耐火ボード16(耐火ボード12と同じ素材で混練・成形・乾燥したもの)を下方から支えるために軟鋼製のパイプ状支持部材17を配し、パイプ状支持部材17の一端をスライディングノズルのフランジ18で支持し、パイプ状支持部材17の他端は縮径して耐火ボード16内に圧入されている。この場合も、図2と同じように、略円柱状の耐火ボード16は取鍋底部側(図3の下方)から取鍋内部(図3の上方)に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ形状とされ、耐火ボード16の外周下端部と上部プレート3aの内壁面との間に嵌挿された伸縮可能な耐火物製の突っ張りリング19は、径方向に突っ張り効果を発揮しうるように、上部プレート3aの内径より僅かに大きい外径と耐火ボード16の外径より僅かに小さい内径を有している。また、突っ張りリング19上に形成される耐火ボード16外周面と上部プレート3aの内壁面との間のリング状空間11には耐火物粒子14が充填されている。
【0025】
なお、突っ張りリング13または19の素材として、軟鋼製のものを採用することもできる。この場合、伸縮可能な耐火物製のものに比べて耐火ボードへの装着はやや手間がかかるが、図2または図3において、耐火ボード12または16は取鍋底部側から取鍋内部に向かって徐々に外径が小さくなるテーパ形状であるから、スライディングノズルのフランジ18をスライドさせて上ノズル3の溶湯流路下端を開口し、軟鋼製の突っ張りリング13または19を耐火ボード12または16の径小部に装着して上ノズル3の溶湯流路に挿入し、軟鋼製の突っ張りリング13または19に係止した係止部材を溶湯流路下端の開口部から引っ張って軟鋼製の突っ張りリング13または19を耐火ボード12または16のテーパ面に沿って引き下げることにより、図2に示すように、軟鋼製の突っ張りリング13を耐火ボード12の外周下端部と下部プレート3bの内壁面との間に装着するか、図3に示すように、軟鋼製の突っ張りリング19を耐火ボード16の外周下端部と上部プレート3aの内壁面との間に装着することができる。
【0026】
また、上部プレート3aに設けるガス噴出孔としては、図4に示すように、上部プレート3aの上端部に凸部20aと凹部20bを交互に形成し、凸部20aにガス噴出孔15を設ける構成を採用することができる。このようにすれば、凹部20bが金属溶湯の湯道となるので、取鍋1から金属溶湯を排出するときの流路断面が増加することにより湯流れが円滑になることが期待できる。
【0027】
以上のように構成される本発明の連続鋳造用取鍋によれば、図1において、取鍋1から上ノズル3、スライディングノズル4および注入管5を経てタンディッシュ6に金属溶湯2を注入する場合、上ノズル3の構造として図2のものを採用した場合、金属溶湯に随伴して略円柱状の耐火ボード12、耐火物粒子14および突っ張りリング13がタンディッシュ6内に流入するとき、耐火物粒子14は金属溶湯2に混入するが、伸縮可能な耐火物製の突っ張りリング13と略円柱状の耐火ボード12は金属溶湯に混入せず、タンディッシュ6内の金属溶湯2の表面に浮上する。従って、非金属介在物による金属溶湯の汚染を減少することができる。なお、突っ張りリング13として軟鋼製のものを採用した場合は、その軟鋼製突っ張りリングは速やかに金属溶湯に溶解する。
【0028】
上ノズル3の構造として図3のものを採用した場合、耐火物粒子14の充填量は図2のものより相当量少なくなるので、図1において、取鍋1から上ノズル3、スライディングノズル4および注入管5を経てタンディッシュ6に金属溶湯2を注入する場合、金属溶湯2に混入する非金属介在物の量を大幅に低減することができ、非金属介在物による金属溶湯の汚染減少効果は図2のものに比べて飛躍的に向上することが期待できる。
【0029】
また、図1において、取鍋1からタンディッシュ6への金属溶湯注入時、図2または図3に示す上ノズル3の上部プレート3aのガス噴出孔15から取鍋1内の金属溶湯2に向けて斜め上方に不活性ガスを噴出することにより、低比重のスラグを不活性ガスに随伴させて溶湯表面に浮上させることにより、鋳造製品に混入する非金属介在物を低減することができる。この不活性ガス量は、取鍋1から金属溶湯2を排出する最初から最後まで一定量でもよいが、溶湯注入末期になると上ノズル3の近傍に渦流が発生し、スラグが金属溶湯に混入しやすくなるという事情を考慮すると、取鍋内の金属溶湯量が約1/5程度に減少した時点から末期にかけて徐々に噴出量を増やす方法が経済的であり、金属溶湯へのスラグの巻き込みを抑制する点においても効果が大きい。例えば、当初のガス噴出量に対して末期には5倍ないし10倍程度のガス量とすることが好ましい。また、上部プレート3aの上端部に設けるガス噴出孔15として図4に示す構成のものを採用した場合、凹部20aは金属溶湯の湯道となるので、取鍋1から金属溶湯を排出するときの流路断面が増加することにより湯流れが円滑になることが期待できる。
【0030】
また、図2と図3において、耐火ボード12または16の容積を大きくするほど、耐火物粒子14の充填量を少なくすることができるので、鋳造製品の品質を大幅に向上することが可能である。
【0031】
なお、非金属介在物の製品への混入を極端に嫌う製品(例えば、ステンレス鋼)を製造する連続鋳造設備では、図1に示す取鍋1の上ノズル3内に充填される耐火物粒子として、ネール屑(釘を加工した際に発生する粒状屑)が使用されている。しかし、この場合には、取鍋1内の金属溶湯とネール屑が融着して、いわゆる棚吊り現象が生じ、スライディングノズル4をスライドさせて全開状態にするだけでは、金属溶湯は排出されない。そこで、酸素ガスをネール屑に向けて吹き付けてネール屑を赤熱溶解させることにより湯道を確保するという煩雑な操作が行われている。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、溶鋼を主とする金属溶湯を連続鋳造する際に使用される連続鋳造用取鍋に適用にすることができ、特に、取鍋内の金属溶湯をタンディッシュに注入するときの溶湯の汚染を抑制することができる連続鋳造用取鍋として適している。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の取鍋を適用した連続鋳造設備の一例の概略断面図である。
【図2】本発明の取鍋の上ノズルの一実施形態の拡大断面図である。
【図3】本発明の取鍋の上ノズルの別の実施形態の拡大断面図である。
【図4】本発明の取鍋の上ノズルのさらに別の実施形態の上端部を拡大して示す斜視図である。
【図5】一般的な連続鋳造設備の概略図である。
【図6】従来の取鍋の上ノズル付近の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 取鍋
2 金属溶湯
3 上ノズル
3a 上部プレート
3b 下部プレート
4 スライディングノズル
5 注入管
6 タンディッシュ
7 堰
8 浸漬ノズル
9 鋳型
10 鋳片
11 リング状空間
12 耐火ボード
13 突っ張りリング
14 耐火物粒子
15 ガス噴出孔
16 耐火ボード
17 パイプ状支持部材
18 スライディングノズルのフランジ
19 突っ張りリング
21 取鍋
22 注入管
23 タンディッシュ
24 浸漬ノズル
25 鋳型
26 スプレーノズル
27 電磁誘導撹拌装置
28 サポートロール群
29 ダミーバー
30 ガス切断機

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取鍋底部に設けた上ノズルからスライディングノズルを経て取鍋内の金属溶湯を排出する連続鋳造用取鍋において、上ノズルは、その上下方向溶湯流路に配置する略円柱状の耐火ボードと、この耐火ボードの外周下端部と上ノズル内壁面との間に嵌挿する突っ張りリングと、この突っ張りリング上に形成される耐火ボード外周面と上ノズル内壁面との間のリング状空間に充填する耐火物粒子とを有することを特徴とする連続鋳造用取鍋。
【請求項2】
上ノズル内の溶湯流路下部に耐火ボードを下方から支えるための鋼製支持部材を配し、この支持部材の一端をスライディングノズルのフランジで支持し、上記支持部材の他端を耐火ボード内に圧入してなることを特徴とする請求項1記載の連続鋳造用取鍋。
【請求項3】
耐火ボードが取鍋底部側から取鍋内部に向かって外径が小さくなるテーパ形状であることを特徴とする請求項1または2記載の連続鋳造用取鍋。
【請求項4】
上ノズル上端部に取鍋内金属溶湯に向けて不活性ガスを噴出するガス噴出孔を設けたことを特徴とする請求項1、2または3記載の連続鋳造用取鍋。
【請求項5】
ガス噴出孔を上ノズル上端部の円周方向に均等間隔で設けたことを特徴とする請求項4記載の連続鋳造用取鍋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−301588(P2007−301588A)
【公開日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−131077(P2006−131077)
【出願日】平成18年5月10日(2006.5.10)
【出願人】(000220767)東京窯業株式会社 (211)
【Fターム(参考)】