説明

遊技機監視装置

【課題】 原因となる玉詰まりのみを抽出し、遊技場の関係者等に正確な遊技異常を認識させるとともに、玉詰まりにより溢れた遊技球数を推定して、適切な遊技データに補正する。
【解決手段】 遊技機から出力される所定の遊技信号を収集して遊技異常の発生を監視するホールコンピュータ1であって、遊技信号に基づいて所定の遊技異常を判定する遊技異常判定手段を備え、遊技異常判定手段は、パチンコ機からの遊技球の排出を示すアウト信号と、パチンコ機の稼動を示すアウト信号以外の所定の遊技信号とに基づき、遊技球の玉詰まりを示すアウト異常を判定するとともに、少なくともアウト異常の間は、アウト信号が係わる遊技異常の判定を行わない構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技機から出力される遊技信号を収集して遊技機で発生する遊技異常を監視する遊技機監視装置に関し、特に、発生した遊技異常を正確に特定する遊技機監視装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊技場には、パチンコ機やスロットマシンなどの遊技機から出力される遊技信号を収集して、遊技データを集計・管理するホールコンピュータが設置されている。
遊技機から出力される遊技信号は、遊技機に投入された、又は遊技機から排出された遊技媒体の数量となるアウト数を示すアウト信号、遊技機から払出される遊技媒体の数量となるセーフ数を示すセーフ信号、ゲーム回数を示すスタート信号、遊技機の大当り状態を示す大当り信号、遊技機の大当り確率がアップされた状態を示す確変信号、貸出された遊技媒体の貸出数(売上数)を示す貸出信号などがある。
ホールコンピュータは、これらの遊技信号を遊技機毎に収集して、セーフ数からアウト数を減じた差玉(例えば、大当り状態であれば、大当り出玉)、アウト数に対するセーフ数が占める割合を示すベース、スタート信号を累計したスタート数、一定量のアウト数毎のスタート数を示すスタート率、貸出数(売上数)に対する差玉と貸出数(売上数)との和が占める割合を示す営業割数などの遊技データを算出するとともに、これらの遊技データを遊技場の店員、係員、管理者などの遊技場の関係者が確認可能なように所定の表示手段等に出力させる。
【0003】
また、このようなホールコンピュータは、これらの遊技信号や、遊技信号を集計した遊技データに基づいて個々の遊技機で発生する遊技異常を監視する遊技機監視装置として機能している。
遊技異常には、様々な種類があるが、そのほとんどが、遊技媒体の投入(セーフ)と払出(アウト)が関与している。
例えば、アウト信号が検出されているにも拘わらず、セーフ信号が検出されないセーフ異常、セーフ信号又はスタート信号が検出されているにも拘わらず、アウト信号が検出されないアウト異常、前述のベースが基準範囲から外れるベース異常、前述のスタート率が基準範囲から外れる入賞異常、大当り状態以外にもかかわらず、前述の差数が基準値を超える手持ち異常、単位時間あたりのアウト数が基準値を超えるアウト出過ぎ異常などがある。
【0004】
これらの遊技異常により、遊技機で発生する不具合を特定できる。
例えば、セーフ異常は、払出されるべき遊技媒体が払出されない遊技異常であるため、払出装置の故障や遊技機に遊技媒体を補給する補給装置の故障を想定することができる。
また、ベース異常や入賞異常は、アウト数に対してセーフ数又はスタート数が基準範囲から外れる遊技異常であるため、基準値を超える場合には、セーフ数やスタート数を不正に増加させる不正行為を想定できるとともに、基準値を下回る場合には、スタート信号を検出する配線の接続ミスや、パチンコ機であれば、釘調整不良等を想定できる。
また、手持ち異常は、大当り状態以外において、セーフ数からアウト数を減じた差玉が基準値を超える遊技異常であるため、セーフ数を不正に増加させる不正行為や、大当り信号を検出する配線の未接続など結線ミス等を想定できる。
【0005】
また、アウト異常は、パチンコ機とスロットマシンとでは、想定される不具合が異なる。
スロットマシンでは、アウト信号は、ゲーム開始(スタートレバーの操作)に伴い、予め計数された投入メダル数に従って出力される信号であるたため、信号出力装置の故障や、アウト信号を検出する配線の接続ミス等が想定される。
一方、パチンコ機では、アウト信号は、パチンコ機からの遊技球の排出過程において遊技球の通過を実際に検出して出力する信号であるため、排出経路における玉詰まりを想定することができる。
特に、パチンコ機は、排出に係る遊技球を裏面に設置された回収タンクに一旦投入し、この回収タンクに備えるセンサ等の検出手段で検出してから遊技機島に流出させる構成であり、排出されてから検出されるまでの経路が長いため、玉詰まりが発生しやすい。
ここで、回収タンクの構成について、図8、9を用いて説明する。
【0006】
これらの図に示すように、回収タンク30は、パチンコ機10の裏面側に設置され、パチンコ機10から排出された遊技球を受入れる玉受け部31と、受入れた遊技球を遊技機島に流出させる玉送出樋32と、遊技機島に流出する遊技球を検出するアウト玉検出部33とを備えている。
アウト玉検出部33には所定の検出センサが設けられ、この検出センサからの出力がアウト信号として遊技機監視装置に入力されている。
図9に示すように、玉受け部31は、上方が開口した漏斗状の形状を有しているため、遊技球以外の異物(例えば、遊技機と遊技機監視装置とを接続するケーブルなど)の混入等に起因する玉詰まりが発生しやすい構造となっている。
また、このように玉受け部31は、上方が開口していることから、パチンコ機10から排出された遊技球ではなく、図示しない補給装置から落下した遊技球が混入する場合もある。パチンコ機10は、1分間当りほぼ100個の遊技球を遊技盤に発射する性能を有しているため、パチンコ機10以外から遊技球が混入すると、単位時間あたりのアウト数が基準値を超え、アウト出過ぎ異常が検出されることになる。
また、回収タンク30は、パチンコ機2の裏面側に設置されていることから、玉詰まりを発見することは容易ではない。
【0007】
そこで、このような回収タンクにおける玉詰まりを検出する発明が特許文献1に提案されている。
特許文献1に記載された発明よれば、回収タンクに滞留する遊技球が所定数以上になると玉詰まり信号をホールコンピュータに出力する検出センサが設けられているため、回収タンクにおける玉詰まりを容易に発見することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−168838号公報
【特許文献2】特開2005−319094号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、アウト信号は、アウト異常のみならず、前述した各遊技異常にも係わる遊技信号であることから、アウト異常が発生すると、少なくとも、ベース異常、入賞異常、手持ち異常が発生することになる。
すなわち、ベース異常、入賞異常、手持ち異常は、アウト信号から求めるアウト数を含んで判定される遊技異常であることから、玉詰まりの発生によりアウト異常が検出されると、アウト数はゼロに近づくため、アウト数に対してセーフ数とスタート数が基準範囲を大きく超え、ベース異常と入賞異常が検出されるとともに、セーフ数からアウト数を減じた差玉が基準値を大きく超え、手持ち異常が検出されることになる。
【0010】
ホールコンピュータでは、遊技異常を遊技場の店員や係員などの遊技場の関係者に広く認識させるため、検出した全ての遊技異常を液晶モニタなどの表示画面に表示させる。
そのため、これらの遊技異常の原因が、アウト異常、すなわち玉詰まりであるにも拘らず、遊技場の関係者は、結線ミスの確認や、不正行為の有無など各遊技異常で想定される不具合を全て確認しなければならず、作業効率の悪いものとなっていた。
【0011】
また、このような玉詰まりに基づくアウト異常は、前述した遊技データにも影響を及ぼすことになる。
例えば、アウト異常が検出されると、アウト数はゼロに近づき、ベース、スタート率、差玉が大きく基準値を超えることから、累計又は平均されたベース、入賞率、差玉は、遊技場が設定した値に収束せず、遊技機の評価を困難にさせていた。
そこで、このような異常な遊技データを除外して収集する発明が特許文献2に提案されている。この特許文献2に記載された発明によれば、ベースとスタート率が予め設定した正常範囲内を超えた場合には、ホールコンピュータは、これらの遊技データを正常の遊技データから除外し、異常データとして収集するようになっている。
これにより、ベースとスタート率は遊技場が設定した値に収束することになり、遊技機の評価を適切に行うことができる。
【0012】
ところが、回収タンクで玉詰まりが発生した場合、回収タンクは前述したように上方が開口していることから、遊技球の滞留により、遊技球が回収タンクから溢れてしまうことがある。
この溢れた遊技球は、検出センサで検出されないため、アウト数として計上されないものとなっていた。
このような計上されないアウト数を単純に除外してしまうと、例えば、貸出数(売上数)に対する差玉(セーフ数−アウト数)と貸出数(売上数)との和が占める割合を示す営業割数に誤差が生じ、営業利益を正確に把握できないことになる。
【0013】
本発明は、以上のような問題を解決するために提案されたものであり、遊技媒体の排出詰まりを示すアウト異常を検出したときには、アウト信号が係わる遊技異常の判定を行わないことで、原因となる排出詰まりのみを抽出し、遊技場の関係者に正確な遊技異常を認識させるとともに、排出詰まりにより回収タンクから遊技媒体が溢れたときには、その溢れた遊技媒体数を推定して、遊技データを補正する画期的な遊技機監視装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明の遊技機監視装置は、遊技機から出力される所定の遊技信号を収集して遊技異常の発生を監視する遊技機監視装置であって、前記遊技信号に基づいて所定の遊技異常を判定する遊技異常判定手段を備え、前記遊技異常判定手段は、遊技機からの遊技媒体の排出を示すアウト信号と、遊技機の稼動を示す前記アウト信号以外の所定の遊技信号とに基づき、遊技媒体の排出詰まりを示すアウト異常を判定するとともに、少なくとも前記アウト異常の間は、前記アウト信号が係わる遊技異常の判定を行わない構成としてある。
【発明の効果】
【0015】
本発明の遊技機監視装置によれば、原因となる排出詰まりのみを抽出し、遊技場の管理者等に正確な遊技異常を認識させるとともに、排出詰まりにより溢れた遊技媒体数を推定して、適切な遊技データに補正することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータとパチンコ機等との接続構成を模式的に示す説明図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータに入力される遊技信号を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータが判定する各遊技異常の判定基準を示す説明図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータによりアウト異常が判定・解除されるプロセスを示すタイムチャートである。
【図5】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータの表示モニタに表示された遊技異常に関する情報を示す説明図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータの表示モニタに表示された補正前後の遊技データを示す説明図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るホールコンピュータで実行されるアウト異常を監視する処理を示すフローチャートである。
【図8】本発明の一実施形態に係る回収タンクの設置状態を示すパチンコ機裏面側の概略斜視図である。
【図9】本発明の一実施形態に係る回収タンクの概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る遊技機監視装置の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態に係る遊技機監視装置であるホールコンピュータとパチンコ機等との接続構成を模式的に示す説明図であり、図2は、ホールコンピュータに入力される遊技信号を示すブロック図である。また、図3は、ホールコンピュータが判定する各遊技異常の判定基準を示す説明図であり、図4は、ホールコンピュータによりアウト異常が判定・解除されるプロセスを示すタイムチャートである。
【0018】
本実施形態に係る遊技機監視装置は、遊技場に設置された遊技機から出力される所定の遊技信号を収集して遊技異常の発生を監視する遊技機監視装置として動作するとともに、この遊技信号から各遊技機の遊技データを集計して管理する遊技データ管理装置としても動作するホールコンピュータ1である。
遊技場には、スロットマシンやパチンコ機などの遊技機、これらの遊技機に併設される、遊技媒体を貸出す遊技媒体貸出機や遊技データを表示する台間表示器などの台間装置、遊技機が設置される遊技機島端に配置され、遊技媒体を計数する計数装置や島金庫などの各種遊技装置が配置され、本実施形態に係るホールコンピュータ1とこれらの遊技装置は、ネットワーク回線2を介して接続されて、ローカル・エリア・ネットワーク(LAN)を構成している。
【0019】
図1は、その接続構成の一部を示すもので、ホールコンピュータ1は、遊技球を遊技媒体とする複数のパチンコ機10と、これに併設される遊技球を貸出す玉貸出機20とに接続されている。
本実施形態パチンコ機10は、遊技球が所定の入賞口(始動口)に入賞することにより、図柄が変動する所定の可変表示器を備え、この可変表示器において大当りとなる図柄の組合せが停止表示されることで、大入賞口が開放する、いわゆるセブン機である。
パチンコ機10の裏面側には、遊技信号を出力する図示しない情報端子板(不図示)と、パチンコ機10から排出された遊技球を回収するとともに、回収した遊技球を遊技機島内に流出する回収タンク30が設置されている(図8、図9参照)。
パチンコ機10からの遊技信号のうち、遊技球の排出を示すアウト信号は、この回収タンク30のアウト玉検出部33から出力され、ホールコンピュータ1に入力されている。
そして、ホールコンピュータ1は、この回収タンク30から入力されるアウト信号と、パチンコ機10の稼動を示すアウト信号以外の他の遊技信号とに基づき、回収タンク30における遊技球の玉詰まりを示すアウト異常を判定するとともに、少なくともアウト異常の間は、アウト信号が係わるその他の遊技異常の判定を行わない本発明の遊技機監視装置として動作するようになっている。
以下、ホールコンピュータ1について詳細に説明する。
【0020】
ホールコンピュータ1は、パーソナルコンピュータ、ワークステーション、サーバ装置など情報処理装置で構成されている。
ホールコンピュータ1は、キーボード、マウスなどの入力手段と、液晶表示器などの表示モニタ1a、ハードディスクなどの記憶手段を備え、記憶手段に記憶されたアプリケーションプログラムが起動されることで、入力された遊技信号に基づいて遊技異常を判定する遊技異常判定手段、遊技信号から遊技データを集計・管理する遊技データ管理手段として動作する。
また、この記憶手段には、パチンコ機10毎の遊技データが時系列的に蓄積・記憶される。
この記憶手段に記憶された遊技データと各パチンコ機10で発生した遊技異常は、表示モニタ1aに表示される。
【0021】
このように構成されたホールコンピュータ1には、図2に示すように、パチンコ機10と玉貸機20から、種々の遊技信号が入力されている。
例えば、パチンコ機10からは、遊技球の払出しに伴い出力されるセーフ信号と、遊技球の排出に伴い出力されるアウト信号と、所定の可変表示器に表示される大当り図柄が変動を停止する毎に出力されるスタート信号と、大当り状態中に出力される大当り信号と、大当り確率がアップした高確率状態や手持ちの遊技球の減少が抑制される高ベース状態中に出力される確変信号とが入力され、玉貸機20からは、遊技球の貸出しに伴い出力される貸玉信号が入力されている。
これらの遊技信号は、遊技機毎又は複数の遊技機毎に設置される台コンピュータと、遊技機島毎に設置され、台コンピュータと接続される島コンピュータなどの図示しない中継装置を介して、ホールコンピュータ1に入力されるようになっている。
【0022】
ホールコンピュータ1は、これらの遊技信号から、以下のような遊技データを集計する。
セーフ信号からは、その信号数(パルス数)を計数することで、パチンコ機10から払出される遊技球の数量を示すセーフ数を集計する。
アウト信号からは、その信号数(パルス数)を計数することで、パチンコ機10から排出される遊技球の数量を示すアウト数を集計する。
スタート信号からは、その信号数(パルス数)を計数することで、可変表示装置の変動数(ゲーム数)、すなわち、スタート数を集計する。
貸玉信号からは、その信号数(パルス数)を計数することで、貸出した遊技球数、すなわち、貸玉数を集計する。
また、大当り信号と確変信号からは、その信号数(パルス数)を計数することで、大当り回数と確変回数をそれぞれ集計する。
【0023】
これらの遊技データは、遊技信号の入力がある毎に加算され、ハードディクス等の記憶手段に、遊技機毎の累計値として記憶される一方で、単位時間(例えば、1ミリ秒)や異なる他の遊技データが一定の数量となる毎など、一定のサンプリング周期(単位)間の変化量(入力量)として順次蓄積して記憶される。
例えば、セーフ数は、一定のアウト数(例えば、100)毎、アウト数は、一定時間(例えば、10秒)毎と、一定のセーフ数(例えば、100)毎又は一定のスタート数(例えば、100)毎、スタート数は、一定のアウト数(例えば、100)毎、というように一定のサンプリング周期(単位)間の変化量(入力量)として蓄積して記憶される。
このように、各遊技データを一定のサンプリング周期(単位)間の変化量(入力量)として順次蓄積して記憶することで、各遊技データの推移を容易に判定できる。
また、ホールコンピュータ1は、一定のサンプリング周期(単位)間の遊技データの変化量(入力量)から、パチンコ機10の稼動の有無を判定する。
【0024】
特に、アウト数、セーフ数、スタート数は、パチンコ機10が稼動状態にあるときには、遊技状態毎にほぼ一定の割合で増加する遊技データなので、ホールコンピュータ1は、一定のサンプリング周期(単位)間において、アウト数、セーフ数、スタート数のいずれかに変化量(入力量)があるときには、そのパチンコ機10は、遊技者が遊技を行っている稼動状態にあると判定する。
さらに、パチンコ機10の場合、1分間当りほぼ100個の遊技球を遊技盤に発射する性能を有しているため、稼動状態にある場合には、アウト信号は絶間なく連続して入力され、その結果、アウト数は1分間当りほぼ100となる。
このようにアウト数は、遊技状態に左右されず、ほぼ一定値となることから、サンプリング周期(単位)の目安として用いられている。
【0025】
また、ホールコンピュータ1は、大当り信号と確変信号とから、以下のように遊技機毎の遊技状態を判定する。
大当り信号が出力されている間は、大当り状態と判定し、確変信号が出力されている間は、高確率遊技状態又は高ベース遊技状態と判定し(以下、高確率遊技状態)、それ以外は、通常遊技状態と判定する。
【0026】
また、ホールコンピュータ1は、その他の遊技データとして、セーフ数、アウト数、スタート数から、ベース、手持ち数、営業割数を以下のように算出する。
ベースは、一定のアウト数(例えば、100)に対するセーフ数(変化量)が占める割合であり、次の数式1を用いて算出する。
ベース=(セーフ数/アウト数)×100・・・(数式1)
手持ち数は、一定のアウト数(例えば、100)毎のセーフ数(変化量)から遊技者が所有する手持ちの遊技球数を求めるもので、次の数式2を用いて算出する。
手持ち数=セーフ数−アウト数・・・(数式2)
営業割数は、遊技場の営業開始から、ある営業時間までの営業利益の有無を示すもので、次の数式3を用いて算出する。
営業割数=10×[貸玉数−(アウト数−セーフ数)]/貸玉数・・・(数式3)
【0027】
そして、ホールコンピュータ1は、遊技信号を集計したこれらの遊技データに基づいてパチンコ機10で発生する遊技異常を判定する。
パチンコ機10で発生する遊技異常は、図3に示すように、回収タンク30内における遊技球の玉詰まりが原因で発生するアウト異常、払出装置等の故障等が原因で発生するセーフ異常、不正行為や遊技釘調整不良が原因で発生するベース異常と入賞異常、不正行為や結線ミス等が原因で発生する手持ち異常、パチンコ機10以外からの回収タンク30への遊技球の混入が原因で発生するアウト出過ぎ異常などがある。
これらの遊技異常は、図3に示した判定基準に基づいて判定される。
【0028】
例えば、アウト異常は、一定のセーフ数(例えば、500)又は一定のスタート数(例えば、100)毎におけるアウト数(変化量)がゼロ(0)のときに判定される。
セーフ異常は、一定のアウト数(例えば、500)毎におけるセーフ数(変化量)がゼロ(0)のときに判定される。
ベース異常は、前述した数式1で算出されるベースが、所定の上限値・下限値を超えたときに判定される。
入賞異常は、一定のアウト数(例えば、500)毎におけるスタート数(変化量)が所定の上限値・下限値を超えたときに判定される。
手持ち異常は、通常遊技状態において、前述した数式2で算出される手持ち数が、所定の上限値を超えたときに判定される。
また、アウト出過ぎ異常は、単位時間(例えば、10秒)当りのアウト数(変化量)が、基準値を超えたときに判定される。
【0029】
これらの判定基準である上限値や基準値などのしきい値は、正常の遊技状態では起こり得ない値として設定されており、判定基準を満たしたときに、遊技機で発生した遊技異常の原因を特定できるようになっている。
ところが、上記の遊技異常を判定する判定要素は、セーフ数、アウト数、スタート数であるため、これらのいずれかが正常状態から外れた値を示すことにより、遊技異常が判定される。
特に、アウト数は、アウト異常はもちろんのこと、全ての遊技異常に関与する判定要素となっている。これは、前述したように、パチンコ機10の場合、アウト数は、遊技状態に左右されず、単位時間毎にほぼ一定値となることから、サンプリング周期(単位)の目安として適しているためである。その結果、回収タンク30で玉詰まりが発生し、アウト玉計数機33からアウト信号の出力が停止すると、アウト異常はもとより、次々と他の遊技異常が判定されてしまうことになる。
【0030】
例えば、数式1及び数式2から明らかなように、ベースと手持ち数は、アウト数の変化を受け易く、玉詰まりによりアウト数がゼロ(0)となると、ベースと手持ち数は上限値を超えるため、ベース異常と手持ち異常が確実に判定されてしまう。
また、セーフ異常、入賞異常、アウト出過ぎ異常は、アウト数がゼロ(0)となることで直ちに判定されるものではないが、回収タンク30における玉詰まりが解消した後は、サンプリング周期(単位)に達するアウト数が時間的に偏ることから、これらの遊技異常が判定されることもある。
【0031】
従来のホールコンピュータでは、発生する遊技異常はすべて、表示モニタ、店内放送、遊技場の店員が所持するインカム等の出力手段を介して、確認作業を行う店員等に報知されていた。回収タンク30における玉詰まりから派生する一連の遊技異常もその例外ではなく、すべて報知されていた。その結果、店員等は、回収タンク30における玉詰まりであるにもかかわらず、配線接続の確認や、不正行為の有無など各遊技異常で想定される不具合を全て確認しなければならず、作業効率の悪いものとなっていた。
そこで、本実施形態のホールコンピュータ1は、アウト異常を判定したときには、アウト異常が解除されるまで、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常である、セーフ異常、ベース異常、入賞異常、手持ち異常、アウト出過ぎ異常の判定を行わないようにしてある。
以下に、その詳細について説明する。
【0032】
図4は、ホールコンピュータ1によりアウト異常が判定・解除されるプロセスを示すタイムチャートであり、上段は、回収タンク30における動作を示し、下段は、ホールコンピュータ1における動作を示している。
まず、回収タンク30において玉詰まりが発生すると、アウト玉計数機33からのアウト信号の出力が停止する。
ホールコンピュータ1は、セーフ信号とスタート信号の入力と、回収タンク30からのアウト信号の入力を常時監視し、各入力がある毎に、所定のサンプリング周期(例えば、1秒)間のセーフ数、アウト数、スタート数として記憶している。
回収タンク30において玉詰まりが発生したときには、遊技者はその発生に気づくすべがないため、遊技は継続される。
その結果、セーフ信号とスタート信号は継続して入力され、セーフ数、スタート数がサンプリング周期毎の変化量として記憶される。一方、アウト信号は入力がないことから、アウト数ゼロ(0)が継続して記憶される。
【0033】
このような状態が継続すると、ホールコンピュータ1は、前述した判定基準に基づき、アウト異常と判定する。
具体的には、回収タンク30において玉詰まりが発生した後、セーフ信号とスタート信号が継続して入力され、一定のセーフ数(例えば、500)又は一定のスタート数(例えば、100)に達したときが、図4におけるA点であるとすると、このときアウト数(変化量)は依然としてゼロ(0)であるため、この時点でアウト異常と判定する。
この判定と同時に、ホールコンピュータ1は、アウト異常が解除するまで、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常である、セーフ異常、ベース異常、入賞異常、手持ち異常、アウト出過ぎ異常の判定を行わないようにする(異常判定OFF)。
具体的には、図3に示したような各遊技異常が判定される判定基準を満たした場合でも、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常と判定しないのみならず、後述の報知も行わない。
これにより、回収タンク30の玉詰まりから派生する一連の遊技異常の発生を抑制することができる。
【0034】
また、ホールコンピュータ1は、アウト異常の判定と同時に、表示モニタ1a、店内放送、遊技場の店員が所持するインカム等の出力手段を介して、店員、係員などの遊技場の関係者にアウト異常の報知を行う。この報知は、アウト異常に限らず、他の遊技異常も同様に行われる。
ここで、表示モニタ1aに表示された遊技異常に関する情報の表示例を図5に示す。
表示モニタ1aには、例えば、遊技場における遊技機の設置状態を示す遊技場レイアウト図と遊技機毎に発生した遊技異常履歴を表示することができる。
【0035】
この図に示すように、遊技異常の発生により、遊技機レイアウト図において、該当する遊技機(例えば、遊技台123)に「異常」をマークするとともに、遊技異常履歴において、遊技異常の発生(例えば、13:22におけるアウト異常1発生)を表示し、遊技場の関係者に報知する。
また、ホールコンピュータ1は、この表示と同時に、インカムなどの無線通信端末に、判定した遊技異常を音声合成データとして送信し、この無線端末装置を所持する各店員に遊技異常の発生を報知する。
このような報知により、アウト異常が店員等に認識され、該当するパチンコ機10で発生した玉詰まりが解消される。
また、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常は、アウト異常が解除されるまで、判定されず、報知もされないことから、店員等は、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常が発生する原因まで確認する必要がなくなり、玉詰まりを解消する作業だけを行えばよく、確認作業の効率化を図ることができる。
【0036】
また、ホールコンピュータ1は、アウト異常の判定と同時に、溢れ時間を算出するための計時を開始する。
回収タンク30の玉受け部31は、図9に示すように、上方に開口した漏斗状に形成され、収容可能な遊技球が、例えば、500個と制限されている。玉詰まりが発生して、そのまま遊技が継続されると、パチンコ機10から排出される遊技球(アウト玉)は、収容可能な遊技数(収容能力数)を超え、この玉受け部31から溢れてしまうことになる。
そうなると、この溢れた遊技球は、アウト玉検出機33に設けられた図示しない検出センサで検出不能な未検出遊技球となり、アウト数を用いて算出される前述した営業割数などの遊技データに誤差が生じ、パチンコ機の特性や営業利益を正確に把握できないことになる。
そこで、この溢れた遊技球数を推定するために、ホールコンピュータ1は、アウト異常の判定と同時に、溢れ時間を算出するための計時を開始するようになっている。
【0037】
この溢れ時間を算出するための計時は、上記の報知により、アウト異常を認識した店員等が回収タンク30の玉詰まりを解消する作業を行い、玉詰まりが解消したものと判定可能なタイミングまで計時される。
具体的には、ホールコンピュータ1は、アウト異常を判定した、図4におけるA点から溢れ時間を算出するための計時を開始し、玉詰まりが解消され、玉受け部31に滞留していた遊技球が流れ始めて、出力が停止していたアウト信号が最初に入力された、図4におけるB点で、玉詰まりが解消したものと判定し、溢れ時間を算出するための計時を終了するとともに、計時した時間(t1+Tf)を記憶する。
なお、アウト信号が最初に入力されるタイミングは、玉詰まりが解消されたタイミングと必ずしも合致しないことから、アウト信号が所定数(例えば、5パルス)入力されたときを、アウト信号が最初に入力されたタイミングとみなすとともに、玉詰まりが解消したときと判定することもできる。
【0038】
次に、ホールコンピュータ1は、判定したアウト異常を解除するタイミングを監視する。
具体的には、ホールコンピュータ1は、回収タンク30から出力されるアウト信号が入力される時間の間隔Toを監視し、入力間隔Toが玉詰まりのない、ほぼ正常時の間隔となった、図4におけるC時点で、アウト異常を解除する。
詳細には、ホールコンピュータ1は、玉詰まりが解消されたタイミング(B点)を判定した後、入力されるアウト信号の間隔Toを監視する。
玉詰まりが解消された直後は、遊技球が玉送出樋32に数珠繋ぎで連なっている状態であるため、アウト玉計数機33において検出される遊技球の間隔は、玉詰まりのない正常時の間隔より狭いものとなっている。
パチンコ機10の場合、1分間(60秒)に100個の遊技球を絶間なく発射することから、玉詰まりのない正常時においては、0.6秒間隔で1個の遊技球がアウト玉計数機33において検出されることになり、出力されるアウト信号も、これに準じることになる。
【0039】
一般的な回収タンク30の場合、遊技球10個の検出で一のアウト信号をアウト玉計数機33から出力する仕様となっているため、正常時において出力されるアウト信号は、6秒間隔で、一のアウト信号が出力される。
そこで、ホールコンピュータ1は、アウト信号の入力間隔Toを監視し、入力間隔Toが5秒以上となった図4におけるC時点を、玉詰まりが解消され、かつ、アウト信号の入力間隔Toがパチンコ機10からの遊技球の排出間隔と合致し、回収タンク30が正常な状態に復帰したものとして、アウト異常を解除するとともに、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常である、セーフ異常、ベース異常、入賞異常、手持ち異常、アウト出過ぎ異常の判定を開始する(異常判定ON)。
【0040】
このように、ホールコンピュータ1は、玉詰まりが解消されたタイミングを判定するだけでなく、回収タンク30における遊技球の数珠繋ぎ状態が解消され、パチンコ機10から排出される遊技球を正確に検出できるようになった時点で、アウト異常を解除するとともに、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常の判定を開始している。
これにより、この時点から集計されるアウト数は正常値となることから、アウト数が、その他の遊技異常の判定基準に影響を及ぼすこともなく、玉詰まりから派生する一連の遊技異常の発生を回避できる。
なお、アウト異常を解除するタイミングを、5秒以上となった入力間隔Toが複数回に亘って連続して検出された場合としてもよい。これにより、回収タンク30が正常な状態に復帰したことの信頼度を高めることができる。
【0041】
また、ホールコンピュータ1は、アウト異常を解除したタイミングにおいて、アウト異常の判定前に判定したアウト数(アウト信号)が係わる遊技異常を解除する。
アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常である、セーフ異常、ベース異常、入賞異常、手持ち異常、アウト出過ぎ異常は、必ずしもアウト異常を判定した後に発生するものではなく、例えば、玉詰まりによりアウト数がゼロ(0)に近づくと、ベースと手持ち数は上限値を超えるため、アウト異常よりも先に、ベース異常と手持ち異常が判定されてしまう。
そこで、アウト異常と判定されるより先に判定されたアウト数(アウト信号)が係わる遊技異常があるときには、アウト異常を解除したタイミングにおいて、これらの遊技異常を解除する。
【0042】
具体的には、図5に示す遊技異常履歴のように、アウト異常1(13:22に発生)が判定されるより先(2分前)に判定されたベース異常2(13:20に発生)を、アウト異常1を解除したタイミング(13:27)において解除している。
このようなアウト異常と判定される直前で判定されたアウト数(アウト信号)が係わる遊技異常は、玉詰まりが原因と断定でき、アウト異常解除のタイミングでは玉詰まりはすべて解消されていることから、これを解除しても差し障りが生じることもない。また、一度に解除することで、新たな遊技異常の判定を一斉に開始することができる。
なお、アウト数(アウト信号)が係わる遊技異常を解除するタイミングは、アウト異常を判定したタイミング(A点)とすることもできる。これにより、玉詰まりから派生する一連の遊技異常の発生を抑制できるため、店員等が行う余分な確認作業を排除できる。
【0043】
さらに、ホールコンピュータ1は、回収タンク30における玉詰まりにより、玉受け部31の収容能力数(例えば、500個)を超え、玉受け部31から溢れた未計数遊技球(未計数アウト玉)の有無を判定するとともに、この未計数遊技球数を推定する。
具体的には、ホールコンピュータ1は、玉詰まりが解消されたタイミングであるB点から、アウト異常を解除したC点までのアウト信号の入力数をカウントし、このカウント数が、玉受け部31の収容能力数以上(例えば、アウト玉計数機33から遊技球10個で一のアウト信号が出力される場合は、50)のときに、溢れた未計数遊技球があったものと判定する。これにより、溢れの有無を確実に判断できる。
【0044】
溢れた未計数遊技球数は、前述した計時した時間(t1+Tf)に基づいて推定する。
具体的には、ホールコンピュータ1は、計時した時間(t1+Tf)から、遊技球が玉受け部31から溢れていた溢れ時間Tfを推定し、この溢れ時間Tfにおいて継続して遊技が行われたときに排出された遊技球数(アウト数)を未計数遊技球数と推定する。
【0045】
溢れ時間Tfは、計時した時間(t1+Tf)から、時間t1を減じて算出する。
時間t1は、アウト異常が判定されたA点から玉受け部31が遊技球で満たされて収容能力数(例えば、500個)になるまでの時間であり、ほぼ一定時間とすることができる、
そこで、本実施形態では、A点における玉受け部31は、ほぼ収容能力相当のスペース(例えば、500個)を有しているものして、この時間t1を、以下のように算出する。
【0046】
パチンコ機10の場合、1分間にほぼ100個の遊技球を発射し、排出数もほぼ100個となることから、時間t1において、遊技が継続されていたものと仮定すると、時間t1(分)は次の数式4で算出される。
時間t1(分)=収容能力(500)/単位時間当りの排出数(100)・・・(数式4)
その結果、溢れ時間Tfは、計時した時間(t1+Tf)から算出された時間t1を減じて算出することができる。
【0047】
そして、ホールコンピュータ1は、溢れ時間Tfから、未計数遊技球数を推定する。
溢れ時間Tfにおいて、遊技が継続されていたものと仮定すると、この間にパチンコ機10から排出された遊技球がすべて未計数遊技球数となる。
すなわち、パチンコ機10の場合、1分間にほぼ100個の遊技球を発射し、排出数もほぼ100個となることから、未計数遊技球数は、次の数式5で算出される。
未計数遊技球数=Tf(分)×単位時間当りの排出数(100)・・・(数式5)
例えば、計時した時間(t1+Tf)として15分が計時された場合、数式4から時間t1は5分となり、溢れ時間Tfは、15分からこの5分を減じて10分となる。さらに、未計数遊技球数は、溢れ時間Tfに10分を代入した数式5から1000個と推定できる。
なお、上記の推定は、計時した時間(t1+Tf)において、パチンコ機10から常に1分間にほぼ100個の遊技球(アウト玉)が排出されている、フル稼働状態を前提としているが、いかなる遊技異常も発生していない正常時の平均的な稼動状態から未計数遊技球数を、以下のように推定することもできる。
【0048】
例えば、遊技異常が発生していない正常時の平均的な一営業日におけるアウト数の総累計値を、営業時間(分)で除した値を、数式4と数式5における単位時間当りの排出数(アウト数)としてもよい。
また、この場合において、正常時の平均的な一営業日におけるアウト数の総累計値を遊技状態別に求めるとともに、各遊技状態となる合計時間(分)で除した値を、数式4と数式5における単位時間当りの排出数(アウト数)としてもよい。
そして、計時した時間(t1+Tf)における遊技状態を大当り信号と確変信号から特定するとともに、特定した遊技状態に対応する予め求めた遊技状態別の単位時間当りの排出数(アウト数)を、数式4と数式5における単位時間当りの排出数(アウト数)とし、未計数遊技球数を算出することもできる。
【0049】
パチンコ機10では、通常遊技状態(大当り状態を含む)と高確率遊技状態では、単位時間当りのアウト数が異なる場合がある。一般的に高確率遊技状態は、高ベース状態であるため、この間は遊技者が連続して遊技球を遊技盤に発射しない、いわゆる単発打ちを行う場合がある。その結果、高確率遊技状態は、通常遊技状態(大当り状態を含む)よりも単位時間当りの排出数(アウト数)が少なくなる。
そこで、計時した時間(t1+Tf)における遊技状態を大当り信号と確変信号から特定するとともに、予め求めた遊技状態別の平均的な排出数(アウト数)を、数式4と数式5における単位時間当りの排出数(アウト数)とし、未計数遊技球数を算出することもできる。
このように遊技状態別の排出数(アウト数)に基づいて未計数遊技球数を算出することで、推定される未計数遊技球数の信頼度を高めることができる。
【0050】
また、上述では、溢れ時間を計時して、未計数遊技球数を推定したが、アウト異常の判定から玉詰まり解消までにおけるスタート数から未計数遊技球数を推定することもできる。
具体的には、ホールコンピュータ1は、アウト異常の判定(A点)から玉詰まり解消の判定(B点)までのスタート数を計数するとともに、このスタート数と、予め求めた正常時の平均的な単位時間当りの排出数(アウト数)に対するスタート数の占める割合(スタート率)とから未計数遊技球数を推定することもできる。
この場合、スタート数は、遊技状態別に異なることから、通常遊技状態における平均的なスタート率と、高確率遊技状態における平均的なスタート率とを予め求めるとともに、アウト異常の判定(A点)から玉詰まり解消の判定(B点)までの遊技状態を大当り信号と確変信号から特定する。
【0051】
通常遊技状態における平均的なスタート率と、高確率遊技状態における平均的なスタート率は、次の数式6でそれぞれ求めることができる。
スタート率=一営業日における遊技状態別の総スタート数/一営業日における遊技状態別の総アウト数・・・(数式6)
また、そして、アウト異常の判定(A点)から玉詰まり解消の判定(B点)までの遊技状態を特定するとともに、この間のスタート数と上式のスタート率から、次の数式7のように未計数遊技球数を算出できる。
未計数遊技球数=[(スタート率)−1×スタート数]−収容能力数・・・(数式7)
このように、溢れ時間を計数することなく、常時集計しているスタート数に基づいて未計数遊技球数を推定できるので、ホールコンピュータ1の負担が軽減できる。
また、正常時の平均的な単位時間当りの排出数(アウト数)に対するスタート数の占める割合から未計数遊技球数を算出するので、遊技機の実遊技状態に即した平均値として推定できる。
【0052】
そして、ホールコンピュータ1は、アウト異常により誤差が生じた遊技データを補正する。
アウト異常により誤差が生じる遊技データは、例えば、ベース、営業割数など様々である。
この場合の補正する方法の一つとして、このアウト異常の発生から解除まで集計した遊技データをなかったものとし、遊技データから除外してもよい。
特に、ホールコンピュータ1が、回収タンク30における玉詰まりにより、玉受け部31の収容能力数(例えば、500個)を超え、玉受け部31から遊技球が溢れたと判定し、この溢れた遊技球数が推定不能なときには効果的である。
ところが、本実施形態では、玉受け部31から溢れた遊技球数を推定できることから、この推定した未計数遊技球(未計数アウト玉)を用いて、遊技データを的確に補正するこができるようになっている。
【0053】
ここで、補正される遊技データとして営業割数を用いた例について説明する。
図6は、表示モニタ1aに表示された営業割数が補正される表示例を示す図である。
この図に示すように、ホールコンピュータ1は、補正前のアウト数(20000)に、推定した未計数遊技球(1000)を加え、補正後のアウト数(21000)を求めるとともに、このアウト数から補正後の営業割数(13.6)を算出して補正する(補正手段)。
これにより、溢れた遊技球により発生する誤差を修復することができ、補正された営業割数から正確な営業利益を把握することができる。また、アウト異常が発生したときでも、遊技場の関係者が、パチンコ機10に対して行った釘調整から期待される予定割数と、補正された営業割数とが合致したか否かを判断することができる。
さらに、補正の有無を示すマーク(例えば、図中の「○」)を施してある。
これにより、マークが施された遊技データは、未計数遊技球(未計数アウト玉)を用いて補正された値であることを遊技場の関係者が容易に確認できる。また、補正値の信頼度を確認者の判断に委ねることができる。
なお、補正の有無を示す表示態様は、「○」に限られず、例えば、該当する遊技データの点滅表示、文字色の変更など、補正された遊技データであることを視覚的に特定できれば足りる。
【0054】
次に、上述したアウト異常を監視するアウト異常監視処理について、図7を参照して説明する。
図7は、ホールコンピュータ1で定期的に実行されるアウト異常監視処理を示すフローチャートである。ホールコンピュータ1に設けられたハードディスク等の記憶手段には、このフローチャートに基づいて作成されたプログラムが記憶され、このプログラムが起動することで、ホールコンピュータ1が遊技異常判定手段として機能するようになっている。
【0055】
図7に示すように、まず、ホールコンピュータ1は、既にアウト異常が判定されているか否か、すなわちアウト異常中か否かを判定し(S1)、アウト異常中でなければ(S1−No)、前述した判定基準に基づいてアウト異常の監視を行う(S2〜S7)。
具体的には、累計したアウト数がゼロかを判定し(S2)、ゼロでなければ(S2−No)、処理を終了する。一方、アウト数がゼロならば(S2−Yes)、さらに、そのときのセーフ数又はスタート数が基準値を超えているか否かを判定する(S3)。そして、基準値を超えていないときには(S3−No)、処理を終了し、基準値を超えているときには(S3−Yes)、アウト異常と判定するとともに(S4)、表示モニタ1aやインカムを介して異常を報知する(S5)。また、アウト異常の判定と同時に、溢れ時間を算出するための計時を開始するとともに(S6)、アウト信号が係わる遊技異常の判定を行わないように、判定を禁止する(S7)。
【0056】
一方、アウト異常と判定したときには(S1−Yes)、アウト異常を解除するタイミングを監視するとともに、玉受け部31における遊技球の溢れの有無を判定し、溢れていたときには、遊技データを補正する処理を行う(S8〜S20)。
具体的には、まず、アウト信号の入力を監視し(S8)、アウト信号の入力がなければ(S8−No)、処理を終了する。アウト信号の入力があるときには(S8−Yes)、溢れ時間を算出するための計時を終了するとともに(S9)、アウト数のカウントを開始する(S10)。
そして、アウト数をカウントしつつ、アウト信号の入力間隔Toを監視する(S11)。
アウト信号の入力間隔Toの監視は、入力間隔Toがほぼ正常値以上となるまで継続される(S12−No)。アウト信号の入力間隔Toがほぼ正常値以上となると(S12−Yes)、アウト数のカウントを終了するとともに(S13)、アウト異常を解除する(S14)。このとき、アウト異常判定前にアウト信号が係わる関連遊技異常が判定されていたときには(S15−Yes)、これらの関連遊技異常を解除する(S16)。
さらに、アウト異常の解除と同時に、禁止していたアウト信号が係わる関連遊技異常の判定を開始する(S17)。
そして、カウントしたアウト数が玉受け部31の収容能力数を超えているか否かを判定する(S18)。アウト数が収容能力数を超えていなければ処理を終了し(S18−No)、一方、アウト数が収容能力数を超えていれば(S18−Yes)、未検出遊技球数(アウト数)を算出するとともに(S19)、この未検出遊技球(アウト数)に基づき遊技データを補正する(S20)。
【0057】
以上説明したように、本実施形態に係る遊技機監視装置(ホールコンピュータ1)によれば、原因となる排出詰まりのみを抽出し、遊技場の管理者等に正確な遊技異常を認識させるとともに、排出詰まりにより溢れた遊技媒体数を推定して、適切な遊技データに補正することができる。
【0058】
以上、本発明の遊技機監視装置について、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係る遊技機監視装置は、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることはいうまでもない。
【0059】
例えば、本実施形態では、ホールコンピュータを本発明の遊技機監視装置として構成したが、本実施形態で中継装置として構成された、遊技機に対応して設置されている台コンピュータや、遊技機島単位で設置されている島コンピュータを、遊技機監視装置としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明は、遊技機から出力される遊技信号に基づいて遊技機で発生する遊技異常を監視する遊技機監視装置として広く利用することができる。
【符号の説明】
【0061】
1 ホールコンピュータ(遊技機監視装置)
1a 表示モニタ
2 ネットワーク回線
10 パチンコ機
20 玉貸機
30 回収タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技機から出力される所定の遊技信号を収集して遊技異常の発生を監視する遊技機監視装置であって、
前記遊技信号に基づいて所定の遊技異常を判定する遊技異常判定手段を備え、
前記遊技異常判定手段は、遊技機からの遊技媒体の排出を示すアウト信号と、遊技機の稼動を示す前記アウト信号以外の所定の遊技信号とに基づき、遊技媒体の排出詰まりを示すアウト異常を判定するとともに、少なくとも前記アウト異常の間は、前記アウト信号が係わる遊技異常の判定を行わないことを特徴とする遊技機監視装置。
【請求項2】
前記アウト信号の出力間隔を監視する出力間隔監視手段を備え、
前記アウト異常を、前記遊技異常判定手段が前記アウト異常と判定したときから、前記アウト信号の出力間隔がほぼ正常時の出力間隔となるまでとする請求項1記載の遊技機監視装置。
【請求項3】
前記アウト異常の発生前に判定された、前記アウト信号が係わる遊技異常を解除する異常解除手段を備える請求項1又は2記載の遊技機監視装置。
【請求項4】
前記アウト信号が、収容可能な遊技媒体数が制限される回収タンクに備える、遊技媒体の検出手段から出力される場合において、
前記アウト異常において前記回収タンクから溢れて、前記検出手段が検出不能な遊技媒体の有無を判定する未検出アウト判定手段を備え、
前記未検出アウト判定手段は、前記アウト異常が判定されたときから前記アウト異常が解除されるまでの前記アウト信号の出力数が、所定の基準数を超えたときに、検出不能な遊技媒体有と判定する請求項1〜3のいずれか一項に記載の遊技機監視装置。
【請求項5】
前記アウト異常が判定されたときから最初にアウト信号が出力されるまでの時間に基づいて、遊技媒体が前記回収タンクから溢れた溢れ時間を推定するとともに、この溢れ時間より前記検出不能な遊技媒体数を推定する未検出アウト数推定手段を備える請求項4記載の遊技機監視装置。
【請求項6】
前記未検出アウト数推定手段は、前記溢れ時間と、予め求めた正常状態における単位時間当りのアウト信号の入力数との積算値より前記検出不能な遊技媒体数を推定する請求項5記載の遊技機監視装置。
【請求項7】
前記未検出アウト数推定手段が推定した検出不能な遊技媒体数を、アウト信号の入力数を示すアウト数に加算して、所定の遊技データを補正する補正手段を備える請求項5又は6記載の遊技機監視装置。
【請求項8】
前記所定の遊技データを表示する表示手段を備え、
前記表示手段は、前記補正手段により補正された遊技データを特定可能な態様で表示する請求項7記載の遊技機監視装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−299(P2011−299A)
【公開日】平成23年1月6日(2011.1.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−146257(P2009−146257)
【出願日】平成21年6月19日(2009.6.19)
【出願人】(591142507)株式会社北電子 (348)
【Fターム(参考)】