説明

遊技機

【課題】 メダルセレクタ部の構造を複雑にしたり、メダルの流れを阻害することなく、特殊器具によるクレジット不正を確実に判定し、これを効果的に防止する。
【解決手段】 メダル投入口11から投入されたメダルを装置内部へ導くメダル投入経路と、メダル投入口から投入されたメダルを光学的に検出するメダル通過センサ27とを備えるスロットマシン1であって、メダル通過センサ27が、メダル投入経路に向けて発光する発光素子27aと、メダル投入経路を挟んで発光素子と対向するように配置される第一及び第二受光素子27b、17cと、発光素子27aとメダル投入経路との間に配置され、所定方向の光成分だけを通過させる発光側偏光素子27dと、第二受光素子27cとメダル投入経路との間に配置され、発光側偏光素子27dと異なる方向の光成分だけを通過させる第二受光側偏光素子27fとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、メダル検出手段を備えるスロットマシンなどの遊技機に関し、特に、メダル投入口に特殊器具を挿入して、クレジット枚数を不正に上げる行為を効果的に防止できる遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
メダルが賭けられた後にゲームを開始し、当該ゲームの入賞内容に応じて、所定枚数のメダルを払い出すスロットマシンなどの遊技機が普及している。この種の遊技機では、通常、メダルを賭ける方法として、ゲーム毎にメダル投入口からメダルを投入する方法と、クレジット機能により貯溜されたメダルを賭ける方法とがあり、いずれかの方法を遊技者が選択できるようにしてある(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
上記のクレジット機能は、メダル投入口から投入されたメダルや、入賞内容に応じて払い出すべきメダルを、クレジットとして機械内部に貯溜(記憶)する機能であり、貯溜されたメダルの枚数はクレジット表示部に表示される。クレジットとして貯溜されたメダルは、BETスイッチやMAXBETスイッチの操作により、ゲームに賭けることができ、また、クレジット精算スイッチの操作により、払い出すことができる。このクレジット精算は、通常、その台を離れるときに一回だけ実行される。
【0004】
近年、スロットマシンのクレジット機能を悪用した不正行為が増えている。例えば、先端部に発光素子が設けられた特殊器具をメダル投入口から挿入し、その先端部をメダルセレクタ部のメダル通過センサ(通常、二つの透過型フォトインタラプタで構成)まで到達させた後、発光素子の点滅によってメダル通過センサを誤作動させ、クレジット枚数を瞬時に最大値(例えば50枚)まで上げる不正行為が知られている。
【0005】
また、先端部に透過型液晶パネルが設けられた特殊器具をメダル投入口から挿入し、その先端部をメダルセレクタ部のメダル通過センサまで到達させた後、液晶パネルで透過/遮光を繰り返すことにより、メダル通過センサを誤作動させる不正行為も知られている。
【0006】
この種の不正行為は、短時間のうちに実行されているので、発見がきわめて困難であり、しかも、クレジット枚数を最大値まで上げ、これをクレジット精算で払い出すという行為が繰り返されるため、大量のメダルが抜かれ、大きな被害を生じる可能性がある。
【0007】
そこで、メダルセレクタ部に、第二のメダル通過センサを追加し、その検出信号を加味して、適正なメダル投入を判定することが提案されている(例えば、特許文献2参照。)。特許文献2に示されるものは、メダル通過力を受けて退避する出没自在なメダル当接部材と、メダル当接部材の出没を検出するメダル通過検出器とを用いて、第二のメダル通過センサを構成しており、例えば、メダル当接部材の退避継続時間が異常に長いとき、特殊器具が挿入されたと判定することができる。
【特許文献1】特開2002−360778号公報
【特許文献2】特開2002−065951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献2に示されるものでは、第二のメダル通過センサを機械的なスイッチによって構成しているため、既存のスロットマシンに適用するには、メダルセレクタ部の大幅な改造が必要になるだけでなく、メダルセレクタ部の構造が複雑化するという問題がある。
【0009】
また、メダルの通過力でメダル当接部材を出没させるという機械的な構成は、その動作性に疑問がある。例えば、メダル当接部材の支点部分における汚れや摩耗によって、メダル当接部材の出没が円滑に行われなくなると、メダル当接部材がメダルの流れを阻害し、メダル詰りなどのトラブルを誘発する可能性がある。
【0010】
本発明は、上記の事情にかんがみなされたものであり、メダルセレクタ部の構造を複雑にしたり、メダルの流れを阻害することなく、特殊器具によるクレジット不正を確実に判定し、これを効果的に防止することができる遊技機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するため本発明の遊技機は、メダル投入口から投入されたメダルを装置内部へ導くメダル投入経路と、前記メダル投入口から投入されたメダルを光学的に検出するメダル検出手段とを備える遊技機であって、前記メダル検出手段が、前記メダル投入経路に向けて発光する発光素子と、前記メダル投入経路を挟んで前記発光素子と対向するように配置される第一及び第二受光素子と、前記発光素子と前記メダル投入経路との間に配置され、所定方向の光成分だけを通過させる発光側偏光素子と、前記第二受光素子と前記メダル投入経路との間に配置され、前記発光側偏光素子と異なる方向の光成分だけを通過させる第二受光側偏光素子とを備える構成としてある。
【0012】
このように構成すれば、第一受光素子の検出信号にもとづいて、メダルの通過を判定しつつ、第二受光素子の検出信号にもとづいて、メダル検出手段に対する不正行為を判定できる。すなわち、発光素子と第二受光素子との間には、偏光方向が異なる二つの偏光素子が配置されるので、通常、第二受光素子は、発光素子からの光を殆ど検出しないが、先端部に発光素子が設けられた特殊器具をメダル投入口から挿入し、メダル検出位置で点滅させるという不正行為が行われた場合には、この光を第二受光素子が検出することになる。これにより、特殊器具によるクレジット不正を、機械的に動作する構成や部材を用いることなく、光学的な構成で確実に検出することが可能になり、その結果、メダルセレクタ部を大幅に改造しなくても、既存の遊技機に簡単に適用でき、しかも、機械的な動作不良によってメダルの流れを阻害するような不都合もない。
【0013】
また、本発明の遊技機は、前記発光側偏光素子の偏光方向と、前記第二受光側偏光素子の偏光方向とのなす角が直角としてある。
このように構成すれば、通常時における第二受光素子の受光量が最小となるので、クレジット不正時における第二受光素子の受光量との差を大きくし、クレジット不正の判定精度を高めることができる。
【0014】
また、本発明の遊技機は、前記第一受光素子と前記メダル投入経路との間に配置され、前記発光側偏光素子と同じ方向の光成分だけを通過させる第一受光側偏光素子を備える構成としてある。
このように構成すれば、先端部に透過型液晶パネルが設けられた特殊器具によるクレジット不正も防止できる。すなわち、液晶パネルは、その構造上、透過する光を90゜偏光させるので、第一受光側偏光素子により第一受光素子の受光が規制される。また、第二受光側偏光素子の偏光方向が発光側偏光素子に対して直角の場合は、液晶パネルの透過光を第二受光素子が受光するので、クレジット不正と判定できる。
【0015】
また、本発明の遊技機は、前記発光側偏光素子、前記第一受光側偏光素子及び/又は前記第二受光側偏光素子の偏光方向が、所定の条件に応じて変更される構成としてある。
このように構成すれば、各偏光素子の偏光方向を推定することが困難になるので、クレジット不正の防止対策を強化できる。
なお、偏光素子の偏光方向を変更する方法としては、偏光素子を透過型液晶パネルで構成し、印加電圧を変化させる方法や、偏光素子の取付角度を手動又は自動で変更する方法が挙げられる。
【0016】
また、本発明の遊技機は、前記発光側偏光素子、前記第一受光側偏光素子及び/又は前記第二受光側偏光素子の偏光方向が、時間の経過に応じて変更される構成としてある。
このように構成すれば、偏光素子の偏光方向が時間の経過に応じて変化するので、偏光方向の推定を困難にし、クレジット不正の防止対策を強化できる。
【0017】
また、本発明の遊技機は、前記発光側偏光素子、前記第一受光側偏光素子及び/又は前記第二受光側偏光素子の偏光方向が、遊技機毎に変更される構成としてある。
このように構成すれば、偏光素子の偏光方向が遊技機毎に変更されるので、偏光方向の推定を困難にし、クレジット不正の防止対策を強化できる。
【発明の効果】
【0018】
以上のように、本発明によれば、第一受光素子の検出信号にもとづいて、メダルの通過を判定しつつ、第二受光素子の検出信号にもとづいて、メダル検出手段に対する不正行為を判定できる。しかも、メダル検出手段は、機械的に動作する構成や部材を用いることなく構成できるので、メダルセレクタ部を大幅に改造しなくても、既存の遊技機に簡単に適用でき、しかも、機械的な動作不良によってメダルの流れを阻害するような不都合もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明に係る遊技機の好ましい実施形態について、図面を参照して説明する。
【0020】
[第一実施形態]
まず、本発明の第一実施形態について、図1〜図11を参照して説明する。
図1は、スロットマシンの正面図、図2は、スロットマシンの内部構成を示す斜視図である。
【0021】
これらの図に示すように、スロットマシン1は、前扉10の前面側に、メダル投入口11と、クレジット表示部12と、クレジット精算スイッチ13と、BETスイッチ14と、MAXBETスイッチ15と、スタートレバー16と、複数のストップボタン17(17a〜17c)と、メダル払出口18と、メダル返却ボタン19と、ランプLとを備え、また、前扉10の後面側に、スピーカSPと、メダルセレクタ部20とを備え、更に、マシン本体の内部に、ドラムユニット30と、ホッパー装置40と、制御部50とを備えている。
【0022】
メダル投入口11は、ゲームに賭けるメダルを受け入れる。スロットマシン1には、ゲームに賭けるメダルを、ゲーム毎にメダル投入口11から投入するメダル投入モードと、クレジットとして内部に貯溜されたメダルをゲームに賭けるクレジットモードとがあり、いずれかのモードを遊技者が選択できる。
クレジットモードでは、メダル投入口11から投入されたメダルや、ゲームの入賞内容に応じて払い出すべきメダルが、最大クレジット枚数(例えば50枚)を限度として内部に貯溜され、その枚数がクレジット表示部12に表示される。
【0023】
クレジット精算スイッチ13は、クレジットとして貯溜されたメダルを払い出すためのスイッチであり、本実施形態では、クレジットモードのON/OFF操作にも兼用されている。例えば、クレジットモードがOFFの状態でクレジット精算スイッチ13を押すと、クレジットモードがONになり、クレジットモードがONの状態でクレジット精算スイッチ13を押すと、貯溜メダルが払い出された後、クレジットモードがOFFとなる。
なお、このようなクレジットモードの切換を行わず、最大クレジット枚数(例えば50枚)までは常にメダルが貯溜されるように構成することもできる。
【0024】
BETスイッチ14及びMAXBETスイッチ15は、クレジットとして貯留されたメダルをゲームに賭けるためのスイッチである。BETスイッチ14は、クレジットとして貯留されたメダルを、一回の操作につき一枚ずつ賭けることができ、MAXBETスイッチ15は、一回のゲームに賭けられる最大枚数(例えば三枚)を、一回の操作で賭けることができる。
【0025】
スタートレバー16は、メダルが賭けられた後に操作される。スタートレバー16を操作すると、ドラムユニット30に設けられる回胴31a〜31cの回転が開始される。
ストップボタン17a〜17cは、回胴31a〜31cと同数(通常は三つ)設けられている。これらのストップボタン17a〜17cが押されると、対応する回胴31a〜31cの回転が停止し、ゲームの入賞又は外れが決まる。
【0026】
メダル払出口18は、ゲームの入賞内容に応じて、所定枚数のメダルが払い出される部分である。また、精算された貯溜メダルも、ここから払い出される。
メダル返却ボタン19は、メダルセレクタ部20にメダルが滞留した場合に操作される。メダル返却ボタン19を操作すると、メダルセレクタ部20に滞留したメダルがメダル払出口18から返却される。
ランプLは、その点灯や点滅により、遊技の演出を行う。
スピーカSPは、効果音、払出音、音声メッセージなどの出音により、遊技の演出を行う。
【0027】
図3はメダルセレクタ部の正面図、図4はセレクタカバーやブロッカを外したメダルセレクタ部の正面図、図5はメダルセレクタ部の断面側面図、図6は大径メダルの排除作用を示すメダルセレクタ部の断面側面図である。
これらの図に示すように、メダルセレクタ部20は、メダル投入口11からホッパー装置40に至る傾斜したメダル投入経路を形成しており、具体的には、セレクタベース21と、下部メダルガイド22と、上部メダルガイド23と、セレクタカバー24と、リターンプレート25と、ブロッカ26と、メダル通過センサ(メダル検出手段)27とを備えて構成されている。
【0028】
セレクタベース21は、メダル投入経路の一側面を構成する板材であり、中間部には、長方形の開口部21aが形成されている。
下部メダルガイド22は、セレクタベース21の下端部に沿って固定されている。メダル投入口11から投入されたメダルMは、一側面がセレクタベース21にガイドされつつ、下部メダルガイド22上を転がり、ホッパー装置40側へ導かれる。なお、下部メダルガイド22は、正規メダルの脱落を防止するために、開口部21aと対応する部位が幅広に形成されている。
【0029】
上部メダルガイド23は、セレクタベース21の上端部に沿って固定される。このとき、下部メダルガイド22と上部メダルガイド23の間隔を、正規メダルの径よりも僅かに大きく設定することにより、大径メダルの通過が規制される。ここで通過が規制された大径メダルは、メダルセレクタ部20の中間部から落下し、メダル払出口18から返却される。
一方、小径メダルは、上部メダルガイド23の通過規制を受けないが、セレクタベース21の開口部21a内に倒れ込むため、大径メダルと同様にメダルセレクタ部20の中間部から落下し、メダル払出口18から返却される。
【0030】
セレクタカバー24は、セレクタベース21の上端に支軸24aを介して開閉自在に設けられ、かつ、バネ24bによって閉方向に付勢されている。このように構成されたセレクタカバー24は、通常、所定の隙間を介してセレクタベース21と対向し、正規メダルの落下を防止しているが、大径メダルが投入された場合や、正規メダルが詰まった場合には、メダルの自重又はメダル返却ボタン19の操作力で開方向へ退避し、メダルの落下を許容する。また、セレクタカバー24は、セレクタベース21の開口部21aと対応する部位に切り欠き24cを有し、この切り欠き24cによって小径メダルを積極的に落下させる。
【0031】
リターンプレート25は、メダル返却ボタン19の操作に伴い、支軸24aを支点として回動するように、セレクタベース21の裏側に配置されている。
リターンプレート25を回動させると、その先端部が開口部21aを介してメダル投入経路内に突出し、メダル投入経路に滞留するメダルが押し出される(図6参照)。このとき、セレクタカバー24も連動して開き、滞留メダルの落下が促進される。
【0032】
ブロッカ26は、開閉自在なL字形状のブロッカプレート26aと、これを電磁的に開閉させる電磁石26bとを備えて構成されている。ブロッカプレート26aが閉じた状態では、投入メダルがブロッカプレート26aの先端部上を転がり、ホッパー装置40側へ導かれる。一方、ブロッカプレート26aが開いた状態では、投入メダルがメダルセレクタ部20の中間部から落下し、メダル払出口18から返却される。
【0033】
メダル通過センサ27は、投入されたメダルを光学的に検出するものであり、通常は、メダル通過方向に並ぶ二つの透過型フォトインタラプタ(透過型フォトセンサ)を用いて構成され、下記(1)〜(5)の状態変化パターンにもとづいて、メダルの通過を判定している。なお、OFFは透過状態、ONは遮光状態を示す。
(1)上流側フォトインタラプタOFF,下流側フォトインタラプタOFF
(2)上流側フォトインタラプタON,下流側フォトインタラプタOFF
(3)上流側フォトインタラプタON,下流側フォトインタラプタON
(4)上流側フォトインタラプタOFF,下流側フォトインタラプタON
(5)上流側フォトインタラプタOFF,下流側フォトインタラプタOFF
近年、先端部に発光素子や透過型液晶パネルが設けられた特殊器具をメダル投入口11から挿入し、メダル通過センサ27において上記の状態変化パターンを擬似的に再現する不正行為が増えている。
【0034】
つぎに、本発明の第一実施形態に係るメダル通過センサ27について、図7〜図9を参照して説明する。ただし、メダル通過センサ27が備える二つのフォトインタラプタは、同じ構成であるため、一方のフォトインタラプタについて説明し、他方の説明を省略する。
図7は、メダル通過センサの第一実施形態を示す説明図、図8は、発光素子挿入時におけるメダル通過センサの作用説明図、図9は、液晶パネル挿入時におけるメダル通過センサの作用説明図である。
【0035】
図7に示すように、メダル通過センサ27は、発光素子27a、第一受光素子27b、第二受光素子27c、発光側偏光素子27d、第一受光側偏光素子27e及び第二受光側偏光素子27fを備えて構成されている。
発光素子27aは、メダル投入経路の一側に配置され、メダル投入経路に向けてメダル検出用の光を発光する。
第一受光素子27b及び第二受光素子27cは、メダル投入経路を挟んで発光素子27aと対向するように配置される。
なお、本実施形態では、第一及び第二の受光素子27b,27cに対して共通の一つの発光素子27aを備えているが、発光素子27aとしては、二つの受光素子27b,27cに一対一に対応する二つの発光素子を備えることも可能であり、更に3つ以上の複数の発光素子を備えてもよい。複数の発光素子を備えることで、受光素子との間でより確実な受発光動作が行えるようになる。なお、その場合には、後述する発光側偏光素子27dも、発光素子27aに対応して複数備えることになる。
【0036】
発光側偏光素子27dは、発光素子27aとメダル投入経路との間に配置され、所定方向(例えば垂直方向)の光成分だけを通過させる。偏光素子27d〜27fとしては、偏光板や偏光フィルムを用いることができる。
第一受光側偏光素子27eは、第一受光素子27bとメダル投入経路との間に配置され、発光側偏光素子27dと同じ方向の光成分だけを通過させる。
第二受光側偏光素子27fは、第二受光素子27cとメダル投入経路との間に配置され、発光側偏光素子27dと異なる方向(例えば水平方向)の光成分だけを通過させる。第二受光側偏光素子27fの偏光方向と、発光側偏光素子27dの偏光方向とのなす角は、所定以上の角度が必要であり、好ましくは直角である。
【0037】
上記のように構成されたメダル通過センサ27において、発光素子27aを駆動させると、発光素子27aから偏光されていない光が発光される。この光は、発光側偏光素子27dにより偏光され、所定方向の光成分としてメダル投入経路に投光される。メダル投入経路に投光された発光素子27aからの光は、第一受光側偏光素子27e及び第二受光側偏光素子27fに到達する。ここで、第一受光側偏光素子27eは、偏光方向が発光側偏光素子27dと同じであるため、発光素子27aからの光を通過させる。これにより、発光素子27aと第一受光素子27bとの間に検出光路が形成され、検出光路を横切るメダルの検出が可能になる。一方、第二受光側偏光素子27fは、偏光方向が発光側偏光素子27dと異なるため、発光素子27aからの光を殆ど通過させない。これにより、第二受光素子27cは、正常動作時において非受光状態を維持する。
【0038】
図8に示すように、先端部に発光素子が設けられた特殊器具をメダル投入口11から挿入し、メダル検出位置で点滅させるという不正行為が行われた場合、この光は、第一受光側偏光素子27eを通過し、第一受光素子27bに到達する。しかしながら、特殊器具の発光素子から発光される光は、偏光されていないため、第二受光側偏光素子27fも通過し、第二受光素子27cに到達する。これにより、第二受光素子27cが特殊器具の発光を検出し、不正行為の判定が可能になる。
【0039】
また、図9に示すように、先端部に透過型液晶パネルが設けられた特殊器具をメダル投入口11から挿入し、メダル検出位置で透過/遮光を繰り返すという不正行為が行われた場合について考えてみる。透過型液晶パネルは、偏光方向が互い直交する表裏一対の偏光板を有し、その間に挟まれる液晶分子の配列制御により、透過/遮光を行うように構成される。したがって、液晶パネルが発光素子27aの発光を透過させる最低条件としては、液晶パネルの発光素子対向面を形成する偏光板の向きを、発光側偏光素子27dの偏光方向に合わせる必要があり、困難性が高い。また、発光側偏光素子27dの偏光方向に合わせられたとしても、液晶パネルは、その構造上、透過する光を90゜偏光させるので、第一受光側偏光素子27eにより第一受光素子27bの受光が規制され、クレジット不正が防止される。また、第二受光側偏光素子27fの偏光方向が発光側偏光素子27dに対して直角の場合は、液晶パネルの透過光が第二受光側偏光素子27fを通過して第二受光素子27cに到達するので、第二受光素子27cの光検出にもとづいて、クレジット不正を判定することが可能になる。
【0040】
図10は、スロットマシンの制御構成を示すブロック図である。
この図に示すように、ドラムユニット30は、複数の回胴31a〜31cと、モータ駆動回路32と、複数のステッピングモータ33a〜33cと、回胴位置検出部34とを有している。
回胴31a〜31cの外周面には、複数の図柄が描かれている。これらの図柄は、前扉10の表示窓10aを介して、遊技者に目視される。
【0041】
モータ駆動回路32は、制御部50からのパルス信号にもとづき、ステッピングモータ33a〜33cを駆動制御して、回胴31a〜31cの回転を始動・停止させる。
回胴位置検出部34は、回胴31a〜31cの回転が停止すると、この回胴31a〜31cに記されたマーカにもとづいて、回胴31a〜31cの回転停止位置を検出し、これを制御部50へ送る。
【0042】
ホッパー装置40は、ホッパー41と、ホッパー駆動回路42と、メダル検出部43とを有している。
ホッパー41は、メダル投入口11から投入されたメダルや、外部から補給されたメダルをメダルを蓄える部分である。
ホッパー駆動回路42は、制御部50から払い出し信号を受信すると、ホッパー41の底部に設けられるメダル排出部(図示せず)を駆動し、所定枚数のメダルを払い出させる。
メダル検出部43は、メダル排出部から払い出されるメダルの枚数をカウントし、これを制御部50へ送る。
【0043】
制御部50は、表示駆動回路51と、サウンド回路52と、ランプ駆動回路53と、CPU54と、クロック発生回路55と、乱数発生回路56と、ROM57と、RAM58とを有している。
表示駆動回路51は、CPU54からの信号に応じて、クレジット表示部12にクレジット枚数を表示させる。
サウンド回路52は、CPU54からの信号(コマンド)に応じて、スピーカSPに効果音、払出音、音声メッセージなどを出力させる。
ランプ駆動回路53は、CPU54からの信号(コマンド)に応じて、ランプLを点灯・点滅させる。
【0044】
CPU54は、クレジット精算スイッチ13、BETスイッチ14、MAXBETスイッチ15、スタートレバー(スタートスイッチ)16、ストップボタン(ストップスイッチ)17a〜17c、メダル通過センサ27などから信号を入力し、これらの入力信号にもとづいて、ドラムユニット30、ホッパー装置40、表示駆動回路51、サウンド回路52、ランプ駆動回路53などの制御を行う。
ROM57は、所定のプログラムを記憶しており、このプログラムにしたがってCPU54が動作される。
RAM58は、遊技に係る各種のデータを記憶する。ここには、クレジットとして貯留されるメダルの枚数データも含まれる。
【0045】
つぎに、制御部50の制御手順について、図11〜図13を参照して説明する。
図11は、メインルーチンを示すフローチャート、図12は、メダル投入処理を示すフローチャート、図13は、不正判定処理を示すフローチャートである。
【0046】
図11に示すように、メインルーチンは、起動時に初期設定(S101)を実行した後、クレジット精算処理(S102)、メダル投入処理(S103)、BET処理(S104)、スタート処理(S105)、回胴停止処理(S106)、入賞処理(S107)、賞メダル払出処理(S108)などを繰り返し実行する。
【0047】
初期設定は、各種設定値の初期化、メモリクリアなどを行う。
クレジット精算処理は、クレジット精算スイッチ13の操作に応じて、貯溜メダルの払い出しや、クレジットモードのON/OFF切り換えを行う。
メダル投入処理は、投入されたメダルや不正行為の判定処理、クレジット枚数をインクリメントする処理(クレジットモードON時)などを行う。
【0048】
BET処理は、BETスイッチ14やMAXBETスイッチ15の操作に応じて、貯溜メダルをゲームに賭ける処理(クレジットモードON時)を行う。
スタート処理は、スタートレバー16の操作に応じて、抽選用の乱数を取得するとともに、回胴31a〜回胴31cの回転を開始させる。
回胴停止処理は、ストップボタン17a〜17cの操作に応じて、回胴31a〜回胴31cの回転を停止させる。このとき、抽選用の乱数にもとづいて、回転停止時のすべり量が制御される。
【0049】
入賞処理は、回胴31a〜回胴31cの停止位置(停止図柄)にもとづいて、ビッグボーナス、レギュラーボーナス、小役などの入賞を判定するとともに、入賞内容に応じて、払い出すメダルの枚数を決定する。
賞メダル払出処理は、ホッパー装置40を制御し、メダルの払い出しを行う。このとき、クレジットモードがONであれば、払い出すべきメダルがクレジット枚数に加算される。
【0050】
つぎに、本発明の要部であるメダル投入処理について、図12を参照して詳細に説明する。
この図に示すように、メダル投入処理では、まず、ゲーム中であるか否かを判断するとともに(S201)、クレジット枚数が最大枚数よりも少ないか否かを判断する(S202)。ここで、ゲーム中である場合や、クレジット枚数が最大枚数である場合は、ブロッカ26をOFFとし(S203)、メダルの投入を規制する。
つぎに、投入信号ONカウンタのアドレスをセットした後(S204)、ブロッカ26のON/OFFを判断し(S205)、ここでブロッカ26がONである場合は、後述の不正判定処理(S206)を実行する。
【0051】
不正判定処理から復帰したら、メダル投入信号のON/OFFを判断し(S207)、この判断結果がONのときは、エラー確認を行った後(S208)、投入信号ONカウンタをインクリメントする(S209)。また、投入信号ONカウンタをインクリメントした後は、メダルの詰りを判断し(S210)、この判断結果がYESの場合は、エラーフラグをセットするとともに(S211)、投入信号ONカウンタをクリアする(S212)。
また、クレジットモードがONの場合は(S213)、投入信号ONカウンタに応じて、クレジット枚数をインクリメントするクレジット処理(S214)も実行される。
【0052】
つぎに、メダル投入処理のサブルーチンである不正判定処理について、図13を参照して説明する。
不正判定処理では、まず、第二受光素子27cのON/OFF判定や(S301)、第一受光素子27bの受光レベル判定を行い(S302)、これらが正常である場合は、メダル通過判定処理を実行する(S303)。この処理は、段落[0033]に示す状態変化パターンを判定するものであり、判定処理実行後は、メダル通過の有無が判断される(S304)。そして、メダル通過判断がYESの場合は、メダル投入信号をONとして上位ルーチンに復帰し(S305)、NOの場合は、メダル投入信号をOFFとして上位ルーチンに復帰する(S307)。
【0053】
一方、第二受光素子27cがON(受光状態)である場合や、第一受光素子27bの受光レベルが通常範囲から外れている場合は、メダル通過判定処理を行うことなく、所定の警報処理を実行する(S306)。すなわち、第二受光素子27cが受光状態となった場合や、第一受光素子27bの受光量が多すぎる場合(又は少なすぎる場合)には、前述した特殊器具の挿入による不正行為であると判定して警報を行う。
なお、不正行為を報知する警報処理としては、スピーカSPから警報音を出音する方法、ランプLを通常とは異なるパターンで点灯させる方法、外部出力端子から警報信号を出力し、ホールコンピュータに通知する方法などを用いることができる。
【0054】
以上のように構成された本実施形態のスロットマシン1によれば、メダル通過センサ27が、メダル投入経路に向けて発光する発光素子27aと、メダル投入経路を挟んで発光素子27aと対向するように配置される第一及び第二受光素子27b、27cと、発光素子27aとメダル投入経路との間に配置され、所定方向の光成分だけを通過させる発光側偏光素子27dと、第二受光素子27cとメダル投入経路との間に配置され、発光側偏光素子27dと異なる方向の光成分だけを通過させる第二受光側偏光素子27fとを備えるので、第一受光素子27bの検出信号にもとづいて、メダルの通過を判定しつつ、第二受光素子27cの検出信号にもとづいて、メダル通過センサ27に対する不正行為を判定できる。これにより、特殊器具によるクレジット不正を、機械的に動作する構成や部材を用いることなく、光学的な構成で検出することが可能になり、その結果、メダルセレクタ部20を大幅に改造しなくても、既存の遊技機に簡単に適用でき、しかも、機械的な動作不良によってメダルの流れを阻害するような不都合もない。
【0055】
また、発光側偏光素子27dの偏光方向と、第二受光側偏光素子27fの偏光方向とのなす角を直角としたので、通常時における第二受光素子27cの受光量が最小となる。これにより、クレジット不正時における第二受光素子27cの受光量との差を大きくし、クレジット不正の判定精度を高めることができる。
【0056】
また、第一受光素子27bとメダル投入経路との間に配置され、発光側偏光素子27dと同じ方向の光成分だけを通過させる第一受光側偏光素子27eを備えるので、先端部に透過型液晶パネルが設けられた特殊器具によるクレジット不正も防止できる。
【0057】
[第二実施形態]
つぎに、本発明の第二実施形態について、図14を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の構成については、第一実施形態と同じ符号を付し、第一実施形態の説明を援用する。
【0058】
図14は、メダル通過センサの第二実施形態を示す説明図である。
この図に示すように、第二実施形態のメダル通過センサ27は、偏光素子27d〜27fの偏光方向を、時間の経過に応じて変更できるようにした点が第一実施形態と相違している。具体的には、偏光素子27d〜27fを透過型液晶パネルで構成し、その印加電圧を時間的に変化させることにより、偏光素子27d〜27fの偏光方向を変更するが、偏光素子27d〜27fの偏光方向を変更する方法は、これに限定されない。例えば、偏光素子27d〜27fを回転自在に支持し、これをギヤ機構などで回転させる機械的なものであってもよい。ただし、発光側偏光素子27dと第一受光側偏光素子27eの偏光方向を常に一致させ、発光側偏光素子27dと第二受光側偏光素子27fの偏光方向を常に相違させることが必要である。
以上のように構成された第二実施形態によれば、偏光素子27d〜27fの偏光方向を、時間の経過に応じて変更することにより、偏光方向の推定を困難にし、クレジット不正の防止対策を強化できる。
【0059】
[第三実施形態]
つぎに、本発明の第三実施形態について、図15を参照して説明する。ただし、第一実施形態と共通の構成については、第一実施形態と同じ符号を付し、第一実施形態の説明を援用する。
【0060】
図15は、第三実施形態に係る偏光素子の配置パターンを示す説明図である。
この図に示すように、第三実施形態は、偏光素子27d〜27fの偏光方向を遊技機毎に変更できるようにした点が第一実施形態と相違している。具体的には、例えば、偏光素子27d〜27fを多角形とし、その設置角度を遊技機毎に変更する。ただし、発光側偏光素子27dと第一受光側偏光素子27eの偏光方向を一致させ、発光側偏光素子27dと第二受光側偏光素子27fの偏光方向を相違させる必要がある。
以上のように構成された第三実施形態によれば、偏光素子27d〜27fの偏光方向を遊技機毎に変更することにより、偏光方向の推定を困難にし、クレジット不正の防止対策を強化できる。
【0061】
以上、本発明のスロットマシンについて、好ましい実施形態を示して説明したが、本発明に係るスロットマシンは、上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、本発明の範囲で種々の変更実施が可能であることは言うまでもない。
例えば、上述した実施形態では、メダルのクレジットモードをON/OFF切換できるスロットマシンを例にとって説明したが、スロットマシンの機種によっては、クレジットモードの切換を行わず、最大クレジット枚数(例えば50枚)までは常にメダルが貯留されるスロットマシンもある。そして、本発明は、そのようなクレジットモードの切換機能のないスロットマシンについても適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明は、メダルを投入して遊技されるスロットマシンなどの遊技機に適用することができる。特に、クレジット機能を悪用した不正行為が行われる可能性のある遊技機において有用である。
【図面の簡単な説明】
【0063】
【図1】スロットマシンの正面図である。
【図2】スロットマシンの内部構成を示す斜視図である。
【図3】スロットマシンのメダルセレクタ部を示す正面図である。
【図4】セレクタカバーやブロッカを外したメダルセレクタ部の正面図である。
【図5】メダルセレクタ部の断面側面図である。
【図6】大径メダルの排除作用を示すメダルセレクタ部の断面側面図である。
【図7】メダル通過センサの第一実施形態を示す説明図である。
【図8】発光素子挿入時におけるメダル通過センサの作用説明図である。
【図9】液晶パネル挿入時におけるメダル通過センサの作用説明図である。
【図10】スロットマシンの制御構成を示すブロック図である。
【図11】メインルーチンを示すフローチャートである。
【図12】メダル投入処理を示すフローチャートである。
【図13】不正判定処理を示すフローチャートである。
【図14】メダル通過センサの第二実施形態を示す説明図である。
【図15】第三実施形態に係る偏光素子の配置パターンを示す説明図である。
【符号の説明】
【0064】
1 スロットマシン
11 メダル投入口
20 メダルセレクタ部
27 メダル通過センサ
27a 発光素子
27b 第一受光素子
27c 第二受光素子
27d 発光側偏光素子
27e 第一受光側偏光素子
27f 第二受光側偏光素子
50 制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メダル投入口から投入されたメダルを装置内部へ導くメダル投入経路と、前記メダル投入口から投入されたメダルを光学的に検出するメダル検出手段とを備える遊技機であって、
前記メダル検出手段が、
前記メダル投入経路に向けて発光する発光素子と、
前記メダル投入経路を挟んで前記発光素子と対向するように配置される第一及び第二受光素子と、
前記発光素子と前記メダル投入経路との間に配置され、所定方向の光成分だけを通過させる発光側偏光素子と、
前記第二受光素子と前記メダル投入経路との間に配置され、前記発光側偏光素子と異なる方向の光成分だけを通過させる第二受光側偏光素子と
を備えることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記発光側偏光素子の偏光方向と、前記第二受光側偏光素子の偏光方向とのなす角が直角である請求項1記載の遊技機。
【請求項3】
前記第一受光素子と前記メダル投入経路との間に配置され、前記発光側偏光素子と同じ方向の光成分だけを通過させる第一受光側偏光素子を備える請求項1又は2記載の遊技機。
【請求項4】
前記発光側偏光素子、前記第一受光側偏光素子及び/又は前記第二受光側偏光素子の偏光方向が、所定の条件に応じて変更される請求項1〜3のいずれかに記載の遊技機。
【請求項5】
前記発光側偏光素子、前記第一受光側偏光素子及び/又は前記第二受光側偏光素子の偏光方向が、時間の経過に応じて変更される請求項4記載の遊技機。
【請求項6】
前記発光側偏光素子、前記第一受光側偏光素子及び/又は前記第二受光側偏光素子の偏光方向が、遊技機毎に変更される請求項4又は5記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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