遊技機
【課題】遊技機において、球供給装置や発射装置の構造を複雑にすることなく、糸の付いた遊技球による不正行為を有効に防止できるようにする。
【解決手段】遊技機は、貯留皿8から導かれる球供給路の終端部と発射装置との間に設けられ、一方の側面に形成された受入口31から前記球供給路に整列した状態の遊技球を1球ずつ受け入れ、その一方の側面と略平行な他方の側面に形成された供給口32から遊技球を発射位置Pへと供給する球供給装置30を備えている。この球供給装置30は、供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する構成であり、供給口32の周囲において少なくとも遊技球の発射方向H側に、糸Sの付着した遊技球Bの発射に伴い、その糸Sと接触して糸Sとの間に摩擦を生じさせる摩擦部39を設けた構成である。
【解決手段】遊技機は、貯留皿8から導かれる球供給路の終端部と発射装置との間に設けられ、一方の側面に形成された受入口31から前記球供給路に整列した状態の遊技球を1球ずつ受け入れ、その一方の側面と略平行な他方の側面に形成された供給口32から遊技球を発射位置Pへと供給する球供給装置30を備えている。この球供給装置30は、供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する構成であり、供給口32の周囲において少なくとも遊技球の発射方向H側に、糸Sの付着した遊技球Bの発射に伴い、その糸Sと接触して糸Sとの間に摩擦を生じさせる摩擦部39を設けた構成である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤面に対して遊技球を1球ずつ打ち出すように構成されたパチンコ遊技機などの遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技機などの遊技機には、遊技球を遊技盤に向けて発射する発射装置が設けられており、更に、この発射装置による遊技球の発射位置に対して遊技球を1球ずつ供給する球供給装置が設けられている。例えば、特許文献1には、球供給装置の上面に遊技球を受け入れる受入口が設けられ、側面に遊技球を1球ずつ排出して発射装置に供給する供給口が設けられた球供給装置が開示されている。この従来の球供給装置は、1列に整列した状態の遊技球を上面の受入口から受け入れ、上下方向に設けられた球通路の下部に位置する回転体を回転させることにより、球通路内を上下に並んだ遊技球の中から先頭の1球を回転体に形成された凹部ですくい取って側面に形成された供給口から供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の遊技機では、遊技者によって様々な不正行為が行われる可能性があるため、そのような不正行為を未然に防止できる構成とすることが必要である。遊技者によって行われる不正行為のひとつに、糸の一端を付着させた遊技球を発射装置によって発射させる行為がある。この場合、糸の一端が付着した遊技球が遊技盤に打ち出されてしまうと、遊技者によって糸の他端が操作されることにより、遊技盤面に設けられた1つの入賞口に遊技球が不正に入賞する動作を繰り返し、それによって多くの賞球が払い出されてしまうという問題がある。
【0005】
このような糸を用いた不正行為は、特に第2種遊技機(いわゆる「羽根モノ」)において行われる可能性が高い。すなわち、遊技者は糸の一端を遊技球に付着させた状態で打ち出し、その糸の他端を操作することで、その遊技球を始動口に不正に入球させる。そして、これに伴って開放される特定の役物内に、その後に打ち出す糸の付着していない通常の遊技球を多く入賞させるのである。このような不正行為が行われてしまうと、ホール(店舗)側に多大な損害が発生する。
【0006】
しかしながら、従来の遊技機では、糸の一端が付着された状態で遊技球が発射されるという不正行為を有効に防止することができないという問題がある。例えば、上述した特許文献1の球供給装置は、球供給装置の上面に設けられた受入口から遊技球を受け入れ、回転体の凹部が遊技球をすくい取って供給口から発射装置に供給する。このような構成の場合、糸の一端を付着した遊技球が球供給装置の受入口から投入されると共に、その遊技球が遊技盤面に達するのに十分な長さの糸が受入口から更に投入されると、回転体の凹部には糸の付着した遊技球と十分な長さの糸とが保持された状態となってしまう。この状態で回転体が回転すると、遊技球は発射位置へと供給され、十分な長さの糸も発射位置の近傍に供給されてしまう。そして発射装置によって遊技球が発射されると、その遊技球に付着した糸は、ほとんど抵抗を受けることなく、発射位置の近傍から順次送り出されてしまい、その結果、糸の付着した遊技球が遊技盤面に打ち出されてしまうことになる。
【0007】
このような糸の一端が付着された遊技球による不正行為を防止するためには、まず第1に、遊技球が発射される前に、その発射位置の近傍に十分な長さの糸がまとまった状態で供給されてしまうことを有効に防止することが必要である。そして、第2に、糸の一端が付着された遊技球が発射装置によって発射されたとしても、遊技者が送り出そうとする糸がスムーズに送り出せないような構造とすることが必要である。そして第3に、付加的な対策として、仮に糸の一端が付着された遊技球が遊技盤面に打ち出されたとしても、遊技者による不正行為が行えないような構成とすることが好ましい。
【0008】
その一方、糸の一端が付着された遊技球による不正行為は、それ程頻繁に行われるものではなく、遊技機によってはそのような不正行為が全く行われないこともある。そのため、糸の付着した遊技球による不正行為を防止することのみを目的として、球供給装置の内部構造や発射装置の構造を複雑化してしまったり、或いは、部品点数を増加させたりすることはコスト上、好ましくない。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決すべく、球供給装置や発射装置の構造を複雑にすることなく、糸の一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止できるようにした遊技機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、遊技盤に打ち出された遊技球が各種入賞口に入球することによって賞球を払い出す遊技機であって、遊技盤の下方に取り付けられ、所定の発射位置に保持された遊技球を斜め上向きの発射方向に向かって発射することにより遊技盤に打ち出す発射装置と、遊技球を貯留する貯留皿と、前記貯留皿に貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で前記発射位置に向けて案内する球供給路と、前記球供給路の終端部と前記発射装置との間に設けられ、一方の側面に形成された受入口から前記球供給路に整列した状態の遊技球を1球ずつ受け入れ、前記一方の側面と略平行な他方の側面に形成された供給口から遊技球を前記発射位置へと供給する球供給装置と、を備え、前記球供給装置は、前記供給口から遊技球を供給する際に、前記発射装置による遊技球の発射方向に対して直角以下となる方向から前記発射位置に遊技球を供給する構成であり、前記供給口の周囲において少なくとも遊技球の発射方向側に、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸と接触して糸との間に摩擦を生じさせる摩擦部を設けたことを特徴とする構成である。
【0011】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の遊技機において、前記摩擦部は、前記供給口の上部壁をアーチ状に形成することによって構成され、糸の付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸とアーチ状の上部壁の端部とがほぼ直角に接触して糸との間に摩擦を生じさせることを特徴とする構成である。
【0012】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の遊技機において、前記摩擦部には、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸を咬み合わせるための切欠部を更に設けたことを特徴とする構成である。
【0013】
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の遊技機において、前記球供給装置は、前記受入口よりも前記供給口が下方に位置し、前記受入口と前記供給口との間を昇降する昇降部材を備え、該昇降部材が上昇した位置で前記受入口から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で前記供給口から遊技球を転動させて前記発射位置に供給することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の遊技機において、前記球供給装置は、糸の付着した遊技球が発射された状態において糸に張力が作用したとき、前記昇降部材の少なくとも一部が、前記供給口と前記受入口との間を横断する糸と接触して昇降動作を停止させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる発明によれば、球供給装置が供給口から遊技球を供給する際に、発射装置による遊技球の発射方向に対して直角以下となる方向から発射位置に遊技球を供給するように構成され、しかも、供給口の周囲において少なくとも遊技球の発射方向側に、糸の付着した遊技球の発射に伴ってその糸と接触して糸との間に摩擦を生じさせる摩擦部が設けられる。これにより、糸の付いた遊技球が不正に発射されると、供給口の上流側から送り出されてくる糸を摩擦部に対して接触させることができるようになり、しかもその接触部分では糸を大きく折れ曲がった状態にして摩擦部に接触させることができる。そのため、糸が送り出されるときには、糸と摩擦部との間に大きな摩擦力を生じさせることができ、糸の付いた遊技球を減速させて遊技盤に打ち出されてしまう可能性を低減することができる。その結果、本発明では、球供給装置や発射装置の構造を複雑にすることなく、糸の一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【0016】
また請求項2にかかる発明では、供給口の上部壁をアーチ状に形成することによって摩擦部を構成し、糸の付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸とアーチ状の上部壁の端部とがほぼ直角に接触するようにして糸との間に摩擦を生じさせることにより、摩擦部と糸との間に生じる摩擦力を更に大きくすることができるので、糸の付いた遊技球をより一層効果的に減速させることが可能である。それ故、このような構成の場合には、より一層効果的に糸の付いた遊技球による不正行為を防止できるようになる。
【0017】
また請求項3にかかる発明では、摩擦部に、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸を咬み合わせるための切欠部を更に設けた構成とすることにより、糸の付いた遊技球が不正に発射された場合でも、その切欠部が糸を咬むことによって糸の送り出しを禁止することができるようになる。それ故、このような構成の場合にも、より一層効果的に糸の付いた遊技球による不正行為を防止できるようになる。
【0018】
また請求項4にかかる発明では、球供給装置における受入口よりも供給口を下方に位置させ、球供給装置に設けられる昇降部材が上昇した位置で受入口から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で遊技球を転動させて供給口から発射位置に供給する構成とすることにより、不正行為に用いられる糸の束が予め発射位置の近傍に供給されてしまうことを防止することができる。それ故、糸の付いた遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【0019】
さらに、請求項5にかかる発明では、糸の付着した遊技球が発射された状態でその糸に張力が作用したとき、球供給装置における昇降部材の少なくとも一部が、供給口と受入口との間を横断する糸と接触して昇降動作を停止する構成とすることにより、その状態で遊技球が発射されてしまうことを良好に防止することができる。それ故、このような構成でも、糸の付いた遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】遊技機の外観構成の一例を示す斜視図である。
【図2】遊技機の前枠部材を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】発射装置を拡大して示す図である。
【図4】発射装置と球供給装置との組み付け位置の関係を示す図である。
【図5】前枠部材が本体枠に対して閉じられた状態の球供給装置と発射装置との関係を遊技機の背面側からみた図である。
【図6】貯留皿から発射位置まで遊技球が移動する経路を示す平面図である。
【図7】貯留皿から発射位置まで遊技球が移動する経路を示す斜視図である。
【図8】球供給装置の詳細な構成を説明するための分解斜視図である。
【図9】遊技機の背面側からみた球供給装置の動作を示す図である。
【図10】球供給装置における昇降部材の昇降動作を側方からみた概略断面図である。
【図11】球供給装置の背面側を示す図である。
【図12】糸の付着した遊技球が発射された場合の糸の状態の一例を示す図である。
【図13】糸の付着した遊技球が打ち出された場合の供給口の周辺を拡大して示す図である。
【図14】糸の一端が付着された遊技球が打ち出された場合における球供給装置の概略断面図である。
【図15】第2の実施の形態において前枠部材の背面側に取り付けられる球供給装置と補助部材とを示す図である。
【図16】第2の実施の形態において球供給装置における摩擦部の一部に設けられる切欠部を遊技機の背面側からみた図である。
【図17】第2の実施の形態において糸の付着した遊技球が発射された場合の糸の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについて重複する説明は省略する。
【0022】
(第1の実施の形態)
まず、本発明に関する第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態における遊技機1の外観構成の一例を示す斜視図である。この遊技機1は、遊技者の指示操作により遊技盤の盤面に打ち出された遊技球が各種入賞口に入球すると賞球を払い出すように構成される弾球式の遊技機である。図1に示すように、遊技機1は、ホール(店舗)に構築される島設備に対して取り付けられる本体枠2と、その本体枠2の左側に設けられた支持部2aによって回動可能に軸支され、本体枠2の前面側を開閉可能な前枠部材3とを有している。
【0023】
前枠部材3は、その中央に透明ガラス板4が嵌め込まれた窓部5を有している。遊技者は、この窓部5に嵌め込まれた透明ガラス板4を介して本体枠2に取り付けられる遊技盤の盤面を視認しながら、遊技を行うようになっている。
【0024】
また前枠部材3は、窓部5の下方が前方側に張り出した棚状の張出部6となっており、この張出部6の上面側には、遊技機1から払い出される遊技球を貯留するための貯留皿8が設けられる。また張出部6には、遊技者が遊技機1で行われる演出などを楽しむための各種の演出ボタン9も設けられている。
【0025】
このような張出部6に右側下方位置には、遊技者が遊技を行うために操作するハンドルレバー7が設けられている。遊技者がこのハンドルレバー7を右回り方向(時計周り方向)に回転操作すると、後述する発射装置20が作動し、ハンドルレバー7の操作角度に応じた打球力で遊技球が1球ずつ所定の時間間隔で遊技盤の盤面に打ち出される。
【0026】
図2は、遊技機1の前枠部材3を開放した状態を示す斜視図である。図2に示すように、本体枠2には、前枠部材3の透明ガラス板4の背面側に対応する位置に、遊技盤10が取り付けられている。この遊技盤10には、外レール11と内レール12とで囲まれた略円形の遊技領域13が設けられており、打ち出された遊技球はこの遊技領域13を下方に向かって転動していくようになっている。この遊技領域13には、図示を省略しているが、多数の釘、風車、各種入賞口などの公知の部材が配置され、打ち出された遊技球が入賞口に入賞すると、所定球数の賞球が払い出される。
【0027】
また本体枠2には、遊技盤10の下方位置に、遊技球を遊技盤10の遊技領域13に向かって発射させる発射装置20が設けられている。この発射装置20は、前枠部材3の貯留皿8から導かれ、所定の発射位置に供給された遊技球を外レール11と内レール12の間に向かって斜め上向きの角度で発射することにより、遊技盤10の遊技領域13に対して打ち出すように構成される。
【0028】
一方、前枠部材3の背面側には、発射装置20と対向する位置に、球供給装置30が設けられている。この球供給装置30は、貯留皿8から導かれる遊技球を1球ずつ取り出して発射装置20における所定の発射位置に供給するものである。本実施形態における球供給装置30は、発射装置20の前面側に隣接して設けられており、発射装置20による遊技球の発射方向に対して横方向(すなわち遊技機1の前面側)から遊技球を供給するように構成される。
【0029】
図3は、発射装置20を拡大して示す図である。図3に示すように、発射装置20は、本体枠2において遊技盤10の下方所定位置に取り付けられるベース板21を有し、このベース板21の背面側に、ロータリソレノイドなどで構成される発射駆動部22が設けられている。この発射駆動部22は、ベース板21の前面側に延伸する回動軸22aを所定角度範囲で回動させるように構成される。ベース板21の前面側には、発射槌23と、発射レール25と、遊技球を発射位置Pで保持するための保持部材26とが設けられる。発射槌23は、その基端部が回動軸22aに軸支されており、発射駆動部22が駆動されることにより、この回動軸22a周りに回動する。発射槌23の先端部には、遊技球を発射する際に、遊技球を弾性力によって弾き出すためのコイルバネ24が設けられている。発射レール25は、断面M字状の溝が発射方向Hに向かって形成されたレールである。保持部材26は、発射レール25に対向する所定位置に設けられており、発射レール25に供給される遊技球を所定の発射位置Pで保持するように構成される。このように構成される発射装置20は、遊技球が発射位置Pに保持されている状態で発射駆動部22を作動させ、発射槌23を図中R1で示す方向に高速回転移動させることにより、遊技球を斜め上方に設定された発射方向Hに向かって打ち出すようになっている。また発射槌23は、R1方向に移動して遊技球を打ち出した後、R1方向とは逆方向に回転移動して元の位置に復帰する。このような動作を繰り返し行うことにより、発射装置20は、球供給装置30から供給される遊技球を1球ずつ所定間隔で打ち出すようになっている。
【0030】
図4は、発射装置20と球供給装置30との組み付け位置の関係を示す図である。図4に示すように球供給装置30は、前枠部材3の背面側に取り付けられる補助部材14の下部に接合した状態で前枠部材3に固定される。ここで補助部材14は、発射装置20によって発射される遊技球を発射方向Hに案内するためのガイドを有し、発射された遊技球が遊技領域13に到達することなく外レール11と内レール12との間を逆戻りしてきた場合にその遊技球(ファール球)を回収して貯留皿8に排出するように構成される部材である。
【0031】
球供給装置30は、その補助部材14に対して組み付けられた状態で前枠部材3の背面側に取り付けられる。この球供給装置30は、その正面側の側面(すなわち、貯留皿8が位置する遊技機1の前面側に対応する側面)に、貯留皿8から導かれる遊技球を1球ずつ受け入れるための受入口31が設けられている。これに対し、背面側の側面(すなわち、発射装置20と対向する側面)には、受入口31から受け入れた遊技球を発射装置20の発射位置Pに向けて供給する供給口32が設けられている。尚、この球供給装置30において、受入口31が形成される一方の側面と、供給口32が形成される他方の側面とは、ほぼ平行な状態に設けられる。
【0032】
図5は、前枠部材3が本体枠2に対して閉じられた状態の球供給装置30と発射装置20との関係を遊技機1の背面側からみた図である。図5に示すように、球供給装置30に設けられる供給口32は、発射レール25と保持部材26とによって規定される発射位置Pの近傍上側に開口しており、この開口位置から遊技球を発射レール25上に落下させることで発射位置Pに供給する。
【0033】
図6および図7は、貯留皿8から発射位置Pまで遊技球が移動する経路を示す図であり、図6は遊技機1を正面側(前面側)からみた平面図を、図7は遊技機1を斜め背面側からみた斜視図を示している。図6に示すように、貯留皿8の底部には、貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で発射装置20の発射位置Pへ向けて案内する球供給路8aが設けられている。この球供給路8aは、球供給装置30に向かって緩やかに下降しており、貯留皿8に貯留された遊技球がその下降傾斜に従って順次転動していくことにより、貯留皿8の背面側へと移動していく。球供給装置30は、貯留皿8の背面側でこの球供給路8aの終端部と対向する側面に受入口31が設けられ、発射装置20に隣接する他方の側面に形成された供給口32から遊技球を発射位置Pへと供給する。この球供給装置30は、遊技機1の前後方向に1球の遊技球を収容できる程度の厚みを有しており、その内部に、遊技球を受入口31から供給口32に導くための球案内路33が形成される。
【0034】
そして図7に示すように、球供給装置30は、供給口32から遊技球を発射レール25に対して落下供給することにより、遊技球を発射位置Pにセットする。そして本実施形態では、図7に示すように、球供給装置30が供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する構成となっている。以下、このような球供給装置30について詳しく説明する。
【0035】
図8は、球供給装置30の詳細な構成を説明するための分解斜視図である。この球供給装置30は、略矩形の箱形であるケース本体34と、ケース本体34の開放された一方側面を閉鎖するためのケース蓋35とによって筐体が構成され、その筐体内部に、遊技球を1球ずつ受入口31から供給口32へ導くための揺動部材40と、揺動部材40を上下方向に揺動させるための駆動機構50とが収められた構成である。
【0036】
ケース本体34の内側には、揺動部材40の揺動軸37aと、駆動機構50を取り付けるための係着部36aと、揺動部材40の揺動角度を規定するために所定間隔を隔てて上下一対に設けられた係止片38a,38bとが設けられる。また、ケース本体34の側面には、供給口32が開口形成されている。そして、この供給口32の上部には、アーチ状の摩擦部39が形成されている。尚、この摩擦部39の詳細については後述する。
【0037】
一方、ケース蓋35は、ケース本体34に対して嵌着されるようになっている。このケース蓋35には、揺動軸37aに対応する軸受け部37bと、駆動機構50を取り付けるための係着部36aとが設けられている。またケース蓋35の側面には、遊技球の受入口31が形成されている。
【0038】
駆動機構50は、コイル51とU字状のヨーク52とを備えた電磁石によって構成される。また、揺動部材40は、所定長さを有するアーム41の基端部に軸孔42が設けられ、先端部に昇降部材43が設けられた構成である。アーム41の基端部に設けられた軸孔42は、ケース本体34に設けられた揺動軸37aに遊挿される。また揺動部材40のアーム41の上面には、駆動機構50が励磁された場合にその磁力によって上方付勢される金属板44が取り付けられている。アーム41の先端部に設けられた昇降部材43は、揺動部材40の揺動動作によって球供給装置30の内部を所定範囲内で昇降するように構成される。
【0039】
昇降部材43は、図8に示すように、受入口31から受け入れた遊技球を支持する支持部45と、支持部45が遊技球を支持している状態で下降するときに受入口31を閉鎖して次の遊技球が受入口31から流入することを防止する閉鎖部46とを有している。支持部45は、遊技球を支持する床面45aが若干ケース本体34側(すなわち、供給口32側)に向かって下降傾斜した傾斜面となっている。
【0040】
このような揺動部材40は、軸孔42に対して揺動軸37aが挿入されると共に、アーム41の先端部寄りの部分が上下一対の係止片38a,38bの間に挿入された状態となるようにケース本体34に取り付けられる。また、駆動機構50は、上記のようしてケース本体34に取り付けられる揺動部材40の金属板44から所定間隔離れた上方位置で金属板44に対向するように取り付けられる。
【0041】
図9は、上記のように構成される球供給装置30の動作を示す図である。尚、図9は、遊技機1の背面側から見た球供給装置30を示している。本実施形態における球供給装置30は、受入口31と供給口32とが異なる高さ位置に設けられており、供給口32が受入口31よりも下方に位置している。昇降部材43は、これら受入口31と供給口32との間を昇降することにより、受入口31から遊技球を受け入れて供給口32から排出するように構成される。
【0042】
図9(a)は、駆動機構50が励磁された場合を示している。駆動機構50が励磁されると、金属板44が駆動機構50に引き寄せられるため、揺動部材40が揺動軸37aを中心に回動し、昇降部材43を所定角度上方に持ち上げる。昇降部材43は、上方に移動すると、球供給路8aに整列した遊技球の先頭位置する1球だけを受け入れ、支持部45がその遊技球Bを支持した状態となる。このような揺動部材40は、その重心がアーム41の先端部側にある。そのため、駆動機構50が励磁されなくなると、アーム41はその自重によって揺動軸37a周りに回動し、昇降部材43を下降させる。
【0043】
図9(b)は、駆動機構50が励磁されなくなった場合を示している。アーム41が昇降部材43を下降させると、支持部45によって支持された遊技球が供給口32から発射レール25上に供給される。
【0044】
図10は、このような昇降部材43の昇降動作を側方からみた概略断面図である。図10(a)に示すように、昇降部材43が上昇すると、閉鎖部46が受入口31の内側上方に退避し、支持部45が球供給路8aとほぼ同一平面となり、球供給路8aに整列している遊技球のうちの先頭の遊技球Bが受入口31から流入し、昇降部材43の内側に向かって転動する。これにより、図10(b)に示すように、昇降部材43の支持部45が1球の遊技球を支持した状態となる。このとき、支持部45の床面45aによって支持された遊技球は、供給口32の上方に位置する球供給装置30の内壁に当たることとなり、1球の遊技球が受入口31から昇降部材43の内側に流入すると、それに後続する遊技球は受入口31に流入することなく、球供給路8aに整列した状態で静止する。この状態で、昇降部材43が下降すると、図10(c)に示すように、閉鎖部46が受入口31を閉鎖するので、球供給路8aに整列した遊技球は受入口31から流入することがない。そして支持部45が供給口32の下端部とほぼ同じ高さ位置まで下降すると、支持部45の床面45aが供給口32に向かって下降傾斜しているので、支持部45に支持された遊技球Bはその床面45aに沿って転動し、供給口32から発射レール25上に落下供給され、上述した発射位置Pで保持される。その後、昇降部材43が再び上昇すると、図10(a)の状態に戻り、上述した動作を繰り返す。
【0045】
このように球供給装置30は、球供給路8aに整列した状態の遊技球の中から、先頭の遊技球だけを、上部に設けられた受入口31から流入させ、下部に設けられた供給口32から発射位置Pに向けて供給する。そのため、球供給装置30から供給される遊技球は、発射位置Pに対し、概ね受入口31と供給口32とを結ぶ斜め下方に向かって供給されることになる。また、発射装置20によって発射される遊技球は、上述したように斜め上方となる発射方向Hに向かって打ち出される。したがって、本実施形態の球供給装置30は、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対し、ほぼ直角乃至直角未満となる方向から遊技球を発射位置Pに向けて供給するようになっている。
【0046】
また、球供給装置30は、受入口31から遊技球を受け入れるときには、球供給路8aから転動してくる遊技球を受け入れるようになっている。更に、床面45aの傾斜に沿って遊技球を転動させることにより、その遊技球を供給口32から排出するようになっている。このような構成によれば、仮に、糸の一端が付着された遊技球が球供給路8aに供給され、且つ、球供給路8aにおける受入口31の手前位置に、その糸を遊技領域13まで導くのに十分な長さ分だけ束ねた状態で集積させていたとしても、その糸束は纏まった状態で受入口31から球供給装置30の内側に入り込むことはない。そのため、糸が付着された遊技球が受入口31から球供給装置30の内部に転動し、そして供給口32から発射位置Pに向かって転動して行ったとしても、十分な長さの糸束は、球供給路8aにおける受入口31の手前位置に留まったままの状態となる。つまり、このような球供給装置30は、糸の一端の付着された遊技球が発射される前に、その発射位置Pの近傍に十分な長さの糸がまとまった状態で供給されてしまうことを有効に防止することが可能な構成となっている。
【0047】
また、仮に、糸を付着させた遊技球で不正行為を行おうとしている遊技者が針金などの棒状体を用いて十分な長さの糸束を更に押し込んだ場合、その糸束は球供給装置30の受入口31から内側に入り込んでしまうが、その糸束は支持部45の床面45aに載った状態に留まり、供給口32から発射位置Pには排出されない構造となっている。すなわち、本実施形態の球供給装置30では、受入口31と供給口32とが異なる高さ位置にあるため、遊技者が棒状体を用いて糸束を受入口31から球供給装置30の内側に押し込むことはできても、その糸束を更に供給口32から押し出すことは困難な構造となっている。そのため、このような点においても、本実施形態の球供給装置30は、糸の一端の付着された遊技球が発射される前に、その発射位置Pの近傍に十分な長さの糸がまとまった状態で供給されてしまうことを有効に防止することが可能な構成となっているのである。
【0048】
図11は、球供給装置30の背面側(発射装置20に対向する側面)を示す図である。図11に示すように、球供給装置30に設けられる供給口32の上部壁は、アーチ状に形成された摩擦部39となっている。この摩擦部39は、糸の付着した状態の遊技球が発射装置20によって発射位置Pから発射されたとき、供給口32の上流側から送り出される糸と接触してその糸との間に摩擦を生じさせるためのものである。上述したように、本実施形態では、糸の付着した遊技球が球供給路8aに供給され、その遊技球が発射位置Pに供給された場合であっても、その遊技球に繋がっている糸束は供給口32よりも上流側に位置している。そのため、糸の付着した遊技球が発射装置20によって打ち出された場合、その遊技球に繋がる糸は、供給口32よりも上流側から送り出されることになる。このとき、摩擦部39は、供給口32の上流側から順次送り出される糸と接触して摩擦を生じさせ、糸の送り出しをスムーズに行わせないように作用する。
【0049】
図12は、糸Sの付着した遊技球Bが発射される場合の糸Sの状態の一例を示す図である。図12に示すように、糸Sの一端が付着された遊技球Bが発射方向Hに向かって打ち出されると、それに伴い、供給口32の内側から糸Sが発射方向Hに向かって順次送り出されていく。このとき、糸Sは、供給口32の周囲に設けられた摩擦部39と接触し、摩擦部39との間に摩擦を生じるので、その摩擦力により遊技球Bを減速させる。特に本実施形態では、球供給装置30が供給口32から発射位置Pに対して遊技球Bを供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から遊技球Bを供給する構成であるため、遊技球Bが発射されることに伴って送り出される糸Sは、図12に示すように、摩擦部39が設けられた部分でほぼ90度若しくはそれ以下の角度で折れ曲がって送り出されることになる。この折れ曲がり角度が、例えば鈍角である場合には、送り出される糸Sと摩擦部39との間にそれ程大きな摩擦力は生じないため、糸Sの送り出しは比較的スムーズに行われ、遊技球Bは糸Sを付着させた状態のまま簡単に遊技領域13に打ち出されてしまう。これに対し、本実施形態では、糸Sの折れ曲がり角度が、ほぼ90度若しくはそれ以下の角度になるので、糸Sと摩擦部39との間に比較的大きな摩擦力を生じさせることができ、遊技球Bを効果的に減速させることが可能である。そのため、本実施形態では、糸Sの付着した遊技球Bが、遊技領域13に打ち出されてしまう可能性を良好に低減できるようになっている。
【0050】
図13は、糸Sの付着した遊技球が打ち出された場合の供給口32の周辺を拡大して示す図である。本実施形態では供給口32の上部に設けられる摩擦部39はアーチ状に構成されている。そのため、図13におけるA部分に示すように、遊技球Bに付着した糸Sが送り出される際、その糸Sは、アーチ形状の法線方向に沿って送り出されるようになる。つまり、供給口32の上流側から送り出される糸Sは、アーチ状の摩擦部39の端部(縁部)に対してほぼ直角に接触するようになっている。そのため、送り出される糸Sは、摩擦部39の表面から送り出し方向とは逆向きに大きな摩擦力を受けることになる。それ故、本実施形態では、摩擦部39が糸Sとほぼ直角に接触するという点においても、糸Sと摩擦部39との間に比較的大きな摩擦力を生じさせることができるので、糸Sの付着した遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまう可能性を低減できるようになっている。
【0051】
このように本実施形態の遊技機1は、糸Sの一端が付着された遊技球Bが発射装置20によって発射されたとしても、遊技者が送り出そうとする糸Sがスムーズに送り出せないような構造となっており、遊技者による不正行為を未然に防止することが可能である。また、仮に、糸Sの一端が付着された遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまった場合でも、上述した摩擦部39が糸Sと常時接触して摩擦を生じさせるため、遊技者が糸Sの他端を操作して不正行為を行おうとしてもその糸Sに比較的大きな抵抗が作用し、不正行為を行うことが困難である。
【0052】
また、本実施形態では、上述したように、球供給装置30に設けられる供給口32が受入口31よりも下方に位置しており、球供給装置30の内部には受入口31と供給口32との間を昇降する昇降部材43が設けられている。そのため、仮に、糸Sの一端が付着された遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまった場合には、球供給装置30が遊技球を発射位置Pに供給する機能を停止させることができるようになっている。図14は、糸Sの一端が付着された遊技球Bが打ち出された場合における球供給装置30の概略断面図である。糸Sの一端が付着された遊技球Bが打ち出された場合において、その糸Sに対して張力が作用すると、図14に示すように、その糸Sは供給口32と受入口31との間を直線状に横断する状態となる。供給口32は受入口31よりも下方に位置するため、このとき糸Sは、供給口32の摩擦部39と接触し、供給口32から受入口31に向かって斜め上向きに引っ張られた状態で供給口32と受入口31との間を横断する。したがって、糸Sに張力が作用すると、その糸Sは、昇降部材43の閉鎖部46と接触するようになり、昇降部材43は、供給口32から遊技球を発射位置Pに対して供給可能な位置にまで下降しなくなる。これにより、昇降部材43は、昇降動作を停止し、発射装置20の発射位置Pに対して遊技球を供給しなくなる。このように本実施形態の遊技機1は、糸Sの一端が付着された遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまった場合でも、遊技者が糸Sの他端を不正に操作しようとして糸Sに張力を作用させると、それ以後は遊技球が発射されなくなる。
【0053】
このように、糸Sに張力が作用するとその後は遊技球の発射が行われなくなる構成とすることにより、例えば第2種遊技機などで行われるような不正行為、すなわち、糸の付いた遊技球を不正に始動口に入球させ、それに伴って開放される特定の役物内に、糸の付着していない通常の遊技球を数多く入賞させるような不正行為を有効に防止できるようになる。
【0054】
また、糸Sを付着した遊技球を使用して不正行為を行う遊技者は、糸Sの付いた遊技球を発射装置20から打ち出した後、その遊技球を回収することなく、そのままの状態で放置して遊技機1から去ってしまうのが一般的である。この場合、ホールの店員は、前枠部材3を開放して、不正に打ち出された糸Sの付いた遊技球を取り除く作業を行う必要がある。このとき、球供給装置の内部に複雑な動作機構が設けられていたり、或いは、遊技球の通過する経路が複雑に折れ曲がった経路であったりすると、球供給装置から糸Sを取り除く際に糸Sが絡まってしまうおそれがあり、取り除き作業に手間を要することがある。
【0055】
これに対し、上述した本実施形態の球供給装置30は、その内部において揺動部材40を揺動させるだけであり、しかも受入口31から受け入れた遊技球を供給口32から供給する際に遊技球が通過する経路も単純な経路となっている。そのため、不正に発射された糸Sの付いた遊技球を店員が取り除くときには、糸Sが球供給装置30の内部で絡まってしまう可能性は極めて低く、糸Sの取り除き作業に手間を要しない。また、本実施形態の球供給装置30は、その内部において揺動部材40が揺動するだけの構成であるため、部品点数も少なく、コスト上昇を招くこともない。
【0056】
以上のように、本実施形態の遊技機1は、貯留皿8に貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で案内する球供給路8aの終端部に設けられた球供給装置30が発射装置20の発射位置Pに対して遊技球を1球ずつ供給するように構成されている。そして、この球供給装置30は、供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する構成であり、供給口32の上部には、糸Sの付着した遊技球が発射されることに伴い、その糸Sと接触して糸Sとの間に摩擦を生じさせる摩擦部39が設けられている。したがって、糸Sの付いた遊技球が不正に発射されると、それに伴って供給口32の上流側から送り出されてくる糸Sは摩擦部39と必ず接触し、しかもその接触部分で糸Sが大きく折れ曲がった状態で送り出されることになる。これにより、糸Sと摩擦部39との間に大きな摩擦力を生じさせて、糸Sの付いた遊技球を減速させ、遊技領域13には到達させないようにすることができる。
【0057】
また、本実施形態における摩擦部39は、供給口32の上部壁をアーチ状に形成することによって構成されており、糸Sの付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸Sとアーチ状の摩擦部39の端部とがほぼ直角(すなわち、アーチ形状の法線方向と同じ方向)に接触するようになっている。これにより、摩擦部39と糸Sとの間に生じる摩擦力が更に大きくなるので、糸Sの付いた遊技球をより一層効果的に減速させることが可能である。
【0058】
また、本実施形態の球供給装置30は、受入口31よりも供給口32が下方に位置しており、その内側には、受入口31と供給口32との間を昇降する昇降部材43が設けられている。そして、この昇降部材43は、上昇した位置で受入口31から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で供給口32から遊技球を転動させて発射位置Pに供給するように構成されている。このような構成により、球供給装置30は、供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する。そして、このような構成によれば、糸Sの付いた遊技球は発射位置Pに供給されてしまう可能性はあるが、不正行為に用いられる糸Sの束については少なくとも昇降部材43から発射位置Pに排出されることはない。そのため、発射位置Pの近傍に十分な長さの糸Sが予め供給されてしまうことを良好に防止できるようになっている。
【0059】
さらに、本実施形態の球供給装置30は、万一、糸Sの付いた遊技球が遊技領域13に打ち出されたとしても、上述したように、その糸Sに張力が作用したときには、昇降部材43の少なくとも一部が、供給口32と受入口31との間を横断する糸Sと接触して昇降動作を停止させるので、その状態で後続の遊技球が発射されてしまうことを良好に防止することができるようになっている。
【0060】
したがって、本実施形態の遊技機1によれば、球供給装置30や発射装置20の構造を複雑にすることなく、糸Sの一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【0061】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態では、糸の付いた遊技球が打ち出された場合に、第1の実施の形態よりも更に効果的にその糸の送り出しを防止できるようにした形態について説明する。尚、本実施形態でも、遊技機1の全体的な構成や発射装置20の構成などは第1の実施の形態で説明したものと同様であり、以下においては、第1の実施の形態と異なる点について説明する。
【0062】
図15は、この第2の実施の形態において前枠部材3の背面側に取り付けられる球供給装置30と補助部材14とを示す図である。尚、図15は、遊技機1の背面側の斜め方向からみた状態を示している。本実施形態の球供給装置30は、供給口32の上部に設けられる摩擦部39の一部に、糸の付着した遊技球の発射に伴い、その糸を咬み合わせるための切欠部39aを設けた構成である。この切欠部39aは、図15に示すように球供給装置30の側面を遊技機1の前面側に向かってスリット状に切り欠いて形成されている。尚、この切欠部39aは、発射装置20による遊技球の発射方向Hに傾斜した状態に形成される。
【0063】
また本実施形態では、補助部材14の背面側であって、球供給装置30に設けられた切欠部39aと接合する部分15にも、切欠部15aが設けられる。この切欠部15aは、球供給装置30の摩擦部39に形成された切欠部39aと連通するように設けられ、発射装置20による遊技球の発射方向Hに傾斜した状態に形成される。このような補助部材14に対して球供給装置30が取り付けられると、切欠部39a,15aは、図16に示すような状態となる。
【0064】
図16は、球供給装置30における摩擦部39の一部に設けられる切欠部39a,15aを遊技機1の背面側からみた図である。球供給装置30と補助部材14とが前枠部材3の背面側に取り付けられると、図16に示すように、球供給装置30に設けられた切欠部39aと、補助部材14に設けられた切欠部15aとが連通し、遊技球の発射方向Hに沿って延びる一体的なスリット状の切欠部16を構成する。この切欠部16は、糸の付いた遊技球が発射された場合に、その糸をスリット内に取り込んで挟み込み、その糸に対して大きな摩擦力を生じさせるためのものである。この切欠部16の先端部16aは、図16に示すように鉤状に下方に折れ曲がった形状となっており、この先端部16aが送り出される糸を咬むことによって糸のスムーズな送り出しを防止する。尚、本実施形態では、先端部16aを鉤状に折れ曲げた形状する場合を例示しているが、これに限らず、例えば、先端部16aを先細りしたV字状に形成し、そのV字状部分で糸を咬むように構成しても良い。
【0065】
図17は、この第2の実施の形態において糸Sの付着した遊技球Bが発射される場合の糸Sの状態の一例を示す図である。図17に示すように、糸Sの一端が付着された遊技球Bが発射方向Hに向かって打ち出されると、それに伴い、供給口32の内側から糸Sが発射方向Hに向かって順次送り出されていく。このとき、糸Sは、はじめに供給口32の右側の側壁に接触しながら順次送り出されていくことになるが、その接触部分は遊技球が上方に移動することに伴って次第に側壁の高い位置へと移動する。ただし、このような接触部分の移動は瞬間的に行われることになる。そして、糸Sが、摩擦部39に設けられた切欠部16の位置まで移動すると、供給口32から送り出されていく糸Sは切欠部16の内側に進入する。そして糸Sが切欠部16の先端部16aで咬まれた状態になると、大きな摩擦力が作用するため、供給口32からの糸Sの送り出しが停止する。
【0066】
このように本実施形態では、供給口32の上部に設けられる摩擦部39の一部に、糸Sを咬み合わせるための切欠部16を設け、糸の付いた遊技球が不正に発射される場合には、この切欠部16が糸を咬むことによって糸の送り出しを禁止するようになっている。そのため、本実施形態では、上述した第1の実施の形態よりも更に効果的にその糸の送り出しを防止することができ、糸の一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止できるようになる。
【0067】
尚、本実施形態では、上述した点以外の構成については、第1の実施の形態と同様である。それ故、第1の実施の形態と共通した構成を有する点においては、本実施形態においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0068】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0069】
例えば上記実施形態では、供給口32の上部にアーチ状の摩擦部39を設けた場合を例示したが、このような摩擦部39は供給口32の上部全体に設ける必要はない。すなわち、摩擦部39は、供給口32の周囲において少なくとも遊技球の発射方向H側に設けられていれば良い。例えば、供給口32を遊技機1の背面側からみた場合、供給口32の右上部分のみを円弧状に形成し、その円弧状部分によって摩擦部39を構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 遊技機
2 本体枠
3 前枠部材
8 貯留皿
8a 球供給路
10 遊技盤
13 遊技領域
20 発射装置
30 球供給装置
31 受入口
32 供給口
39 摩擦部
40 揺動部材
43 昇降部材
B 遊技球
S 糸
P 発射位置
H 発射方向
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊技盤面に対して遊技球を1球ずつ打ち出すように構成されたパチンコ遊技機などの遊技機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、パチンコ遊技機などの遊技機には、遊技球を遊技盤に向けて発射する発射装置が設けられており、更に、この発射装置による遊技球の発射位置に対して遊技球を1球ずつ供給する球供給装置が設けられている。例えば、特許文献1には、球供給装置の上面に遊技球を受け入れる受入口が設けられ、側面に遊技球を1球ずつ排出して発射装置に供給する供給口が設けられた球供給装置が開示されている。この従来の球供給装置は、1列に整列した状態の遊技球を上面の受入口から受け入れ、上下方向に設けられた球通路の下部に位置する回転体を回転させることにより、球通路内を上下に並んだ遊技球の中から先頭の1球を回転体に形成された凹部ですくい取って側面に形成された供給口から供給するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−80829号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、この種の遊技機では、遊技者によって様々な不正行為が行われる可能性があるため、そのような不正行為を未然に防止できる構成とすることが必要である。遊技者によって行われる不正行為のひとつに、糸の一端を付着させた遊技球を発射装置によって発射させる行為がある。この場合、糸の一端が付着した遊技球が遊技盤に打ち出されてしまうと、遊技者によって糸の他端が操作されることにより、遊技盤面に設けられた1つの入賞口に遊技球が不正に入賞する動作を繰り返し、それによって多くの賞球が払い出されてしまうという問題がある。
【0005】
このような糸を用いた不正行為は、特に第2種遊技機(いわゆる「羽根モノ」)において行われる可能性が高い。すなわち、遊技者は糸の一端を遊技球に付着させた状態で打ち出し、その糸の他端を操作することで、その遊技球を始動口に不正に入球させる。そして、これに伴って開放される特定の役物内に、その後に打ち出す糸の付着していない通常の遊技球を多く入賞させるのである。このような不正行為が行われてしまうと、ホール(店舗)側に多大な損害が発生する。
【0006】
しかしながら、従来の遊技機では、糸の一端が付着された状態で遊技球が発射されるという不正行為を有効に防止することができないという問題がある。例えば、上述した特許文献1の球供給装置は、球供給装置の上面に設けられた受入口から遊技球を受け入れ、回転体の凹部が遊技球をすくい取って供給口から発射装置に供給する。このような構成の場合、糸の一端を付着した遊技球が球供給装置の受入口から投入されると共に、その遊技球が遊技盤面に達するのに十分な長さの糸が受入口から更に投入されると、回転体の凹部には糸の付着した遊技球と十分な長さの糸とが保持された状態となってしまう。この状態で回転体が回転すると、遊技球は発射位置へと供給され、十分な長さの糸も発射位置の近傍に供給されてしまう。そして発射装置によって遊技球が発射されると、その遊技球に付着した糸は、ほとんど抵抗を受けることなく、発射位置の近傍から順次送り出されてしまい、その結果、糸の付着した遊技球が遊技盤面に打ち出されてしまうことになる。
【0007】
このような糸の一端が付着された遊技球による不正行為を防止するためには、まず第1に、遊技球が発射される前に、その発射位置の近傍に十分な長さの糸がまとまった状態で供給されてしまうことを有効に防止することが必要である。そして、第2に、糸の一端が付着された遊技球が発射装置によって発射されたとしても、遊技者が送り出そうとする糸がスムーズに送り出せないような構造とすることが必要である。そして第3に、付加的な対策として、仮に糸の一端が付着された遊技球が遊技盤面に打ち出されたとしても、遊技者による不正行為が行えないような構成とすることが好ましい。
【0008】
その一方、糸の一端が付着された遊技球による不正行為は、それ程頻繁に行われるものではなく、遊技機によってはそのような不正行為が全く行われないこともある。そのため、糸の付着した遊技球による不正行為を防止することのみを目的として、球供給装置の内部構造や発射装置の構造を複雑化してしまったり、或いは、部品点数を増加させたりすることはコスト上、好ましくない。
【0009】
そこで、本発明は、上記従来の問題点を解決すべく、球供給装置や発射装置の構造を複雑にすることなく、糸の一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止できるようにした遊技機を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、請求項1にかかる発明は、遊技盤に打ち出された遊技球が各種入賞口に入球することによって賞球を払い出す遊技機であって、遊技盤の下方に取り付けられ、所定の発射位置に保持された遊技球を斜め上向きの発射方向に向かって発射することにより遊技盤に打ち出す発射装置と、遊技球を貯留する貯留皿と、前記貯留皿に貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で前記発射位置に向けて案内する球供給路と、前記球供給路の終端部と前記発射装置との間に設けられ、一方の側面に形成された受入口から前記球供給路に整列した状態の遊技球を1球ずつ受け入れ、前記一方の側面と略平行な他方の側面に形成された供給口から遊技球を前記発射位置へと供給する球供給装置と、を備え、前記球供給装置は、前記供給口から遊技球を供給する際に、前記発射装置による遊技球の発射方向に対して直角以下となる方向から前記発射位置に遊技球を供給する構成であり、前記供給口の周囲において少なくとも遊技球の発射方向側に、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸と接触して糸との間に摩擦を生じさせる摩擦部を設けたことを特徴とする構成である。
【0011】
請求項2にかかる発明は、請求項1に記載の遊技機において、前記摩擦部は、前記供給口の上部壁をアーチ状に形成することによって構成され、糸の付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸とアーチ状の上部壁の端部とがほぼ直角に接触して糸との間に摩擦を生じさせることを特徴とする構成である。
【0012】
請求項3にかかる発明は、請求項1又は2に記載の遊技機において、前記摩擦部には、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸を咬み合わせるための切欠部を更に設けたことを特徴とする構成である。
【0013】
請求項4にかかる発明は、請求項1乃至3のいずれかに記載の遊技機において、前記球供給装置は、前記受入口よりも前記供給口が下方に位置し、前記受入口と前記供給口との間を昇降する昇降部材を備え、該昇降部材が上昇した位置で前記受入口から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で前記供給口から遊技球を転動させて前記発射位置に供給することを特徴とする構成である。
【0014】
請求項5にかかる発明は、請求項4に記載の遊技機において、前記球供給装置は、糸の付着した遊技球が発射された状態において糸に張力が作用したとき、前記昇降部材の少なくとも一部が、前記供給口と前記受入口との間を横断する糸と接触して昇降動作を停止させることを特徴とする構成である。
【発明の効果】
【0015】
請求項1にかかる発明によれば、球供給装置が供給口から遊技球を供給する際に、発射装置による遊技球の発射方向に対して直角以下となる方向から発射位置に遊技球を供給するように構成され、しかも、供給口の周囲において少なくとも遊技球の発射方向側に、糸の付着した遊技球の発射に伴ってその糸と接触して糸との間に摩擦を生じさせる摩擦部が設けられる。これにより、糸の付いた遊技球が不正に発射されると、供給口の上流側から送り出されてくる糸を摩擦部に対して接触させることができるようになり、しかもその接触部分では糸を大きく折れ曲がった状態にして摩擦部に接触させることができる。そのため、糸が送り出されるときには、糸と摩擦部との間に大きな摩擦力を生じさせることができ、糸の付いた遊技球を減速させて遊技盤に打ち出されてしまう可能性を低減することができる。その結果、本発明では、球供給装置や発射装置の構造を複雑にすることなく、糸の一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【0016】
また請求項2にかかる発明では、供給口の上部壁をアーチ状に形成することによって摩擦部を構成し、糸の付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸とアーチ状の上部壁の端部とがほぼ直角に接触するようにして糸との間に摩擦を生じさせることにより、摩擦部と糸との間に生じる摩擦力を更に大きくすることができるので、糸の付いた遊技球をより一層効果的に減速させることが可能である。それ故、このような構成の場合には、より一層効果的に糸の付いた遊技球による不正行為を防止できるようになる。
【0017】
また請求項3にかかる発明では、摩擦部に、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸を咬み合わせるための切欠部を更に設けた構成とすることにより、糸の付いた遊技球が不正に発射された場合でも、その切欠部が糸を咬むことによって糸の送り出しを禁止することができるようになる。それ故、このような構成の場合にも、より一層効果的に糸の付いた遊技球による不正行為を防止できるようになる。
【0018】
また請求項4にかかる発明では、球供給装置における受入口よりも供給口を下方に位置させ、球供給装置に設けられる昇降部材が上昇した位置で受入口から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で遊技球を転動させて供給口から発射位置に供給する構成とすることにより、不正行為に用いられる糸の束が予め発射位置の近傍に供給されてしまうことを防止することができる。それ故、糸の付いた遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【0019】
さらに、請求項5にかかる発明では、糸の付着した遊技球が発射された状態でその糸に張力が作用したとき、球供給装置における昇降部材の少なくとも一部が、供給口と受入口との間を横断する糸と接触して昇降動作を停止する構成とすることにより、その状態で遊技球が発射されてしまうことを良好に防止することができる。それ故、このような構成でも、糸の付いた遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】遊技機の外観構成の一例を示す斜視図である。
【図2】遊技機の前枠部材を開放した状態を示す斜視図である。
【図3】発射装置を拡大して示す図である。
【図4】発射装置と球供給装置との組み付け位置の関係を示す図である。
【図5】前枠部材が本体枠に対して閉じられた状態の球供給装置と発射装置との関係を遊技機の背面側からみた図である。
【図6】貯留皿から発射位置まで遊技球が移動する経路を示す平面図である。
【図7】貯留皿から発射位置まで遊技球が移動する経路を示す斜視図である。
【図8】球供給装置の詳細な構成を説明するための分解斜視図である。
【図9】遊技機の背面側からみた球供給装置の動作を示す図である。
【図10】球供給装置における昇降部材の昇降動作を側方からみた概略断面図である。
【図11】球供給装置の背面側を示す図である。
【図12】糸の付着した遊技球が発射された場合の糸の状態の一例を示す図である。
【図13】糸の付着した遊技球が打ち出された場合の供給口の周辺を拡大して示す図である。
【図14】糸の一端が付着された遊技球が打ち出された場合における球供給装置の概略断面図である。
【図15】第2の実施の形態において前枠部材の背面側に取り付けられる球供給装置と補助部材とを示す図である。
【図16】第2の実施の形態において球供給装置における摩擦部の一部に設けられる切欠部を遊技機の背面側からみた図である。
【図17】第2の実施の形態において糸の付着した遊技球が発射された場合の糸の状態の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の好ましい実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。尚、以下に説明する実施形態において互いに共通する部材には同一符号を付しており、それらについて重複する説明は省略する。
【0022】
(第1の実施の形態)
まず、本発明に関する第1の実施の形態について説明する。図1は、本実施形態における遊技機1の外観構成の一例を示す斜視図である。この遊技機1は、遊技者の指示操作により遊技盤の盤面に打ち出された遊技球が各種入賞口に入球すると賞球を払い出すように構成される弾球式の遊技機である。図1に示すように、遊技機1は、ホール(店舗)に構築される島設備に対して取り付けられる本体枠2と、その本体枠2の左側に設けられた支持部2aによって回動可能に軸支され、本体枠2の前面側を開閉可能な前枠部材3とを有している。
【0023】
前枠部材3は、その中央に透明ガラス板4が嵌め込まれた窓部5を有している。遊技者は、この窓部5に嵌め込まれた透明ガラス板4を介して本体枠2に取り付けられる遊技盤の盤面を視認しながら、遊技を行うようになっている。
【0024】
また前枠部材3は、窓部5の下方が前方側に張り出した棚状の張出部6となっており、この張出部6の上面側には、遊技機1から払い出される遊技球を貯留するための貯留皿8が設けられる。また張出部6には、遊技者が遊技機1で行われる演出などを楽しむための各種の演出ボタン9も設けられている。
【0025】
このような張出部6に右側下方位置には、遊技者が遊技を行うために操作するハンドルレバー7が設けられている。遊技者がこのハンドルレバー7を右回り方向(時計周り方向)に回転操作すると、後述する発射装置20が作動し、ハンドルレバー7の操作角度に応じた打球力で遊技球が1球ずつ所定の時間間隔で遊技盤の盤面に打ち出される。
【0026】
図2は、遊技機1の前枠部材3を開放した状態を示す斜視図である。図2に示すように、本体枠2には、前枠部材3の透明ガラス板4の背面側に対応する位置に、遊技盤10が取り付けられている。この遊技盤10には、外レール11と内レール12とで囲まれた略円形の遊技領域13が設けられており、打ち出された遊技球はこの遊技領域13を下方に向かって転動していくようになっている。この遊技領域13には、図示を省略しているが、多数の釘、風車、各種入賞口などの公知の部材が配置され、打ち出された遊技球が入賞口に入賞すると、所定球数の賞球が払い出される。
【0027】
また本体枠2には、遊技盤10の下方位置に、遊技球を遊技盤10の遊技領域13に向かって発射させる発射装置20が設けられている。この発射装置20は、前枠部材3の貯留皿8から導かれ、所定の発射位置に供給された遊技球を外レール11と内レール12の間に向かって斜め上向きの角度で発射することにより、遊技盤10の遊技領域13に対して打ち出すように構成される。
【0028】
一方、前枠部材3の背面側には、発射装置20と対向する位置に、球供給装置30が設けられている。この球供給装置30は、貯留皿8から導かれる遊技球を1球ずつ取り出して発射装置20における所定の発射位置に供給するものである。本実施形態における球供給装置30は、発射装置20の前面側に隣接して設けられており、発射装置20による遊技球の発射方向に対して横方向(すなわち遊技機1の前面側)から遊技球を供給するように構成される。
【0029】
図3は、発射装置20を拡大して示す図である。図3に示すように、発射装置20は、本体枠2において遊技盤10の下方所定位置に取り付けられるベース板21を有し、このベース板21の背面側に、ロータリソレノイドなどで構成される発射駆動部22が設けられている。この発射駆動部22は、ベース板21の前面側に延伸する回動軸22aを所定角度範囲で回動させるように構成される。ベース板21の前面側には、発射槌23と、発射レール25と、遊技球を発射位置Pで保持するための保持部材26とが設けられる。発射槌23は、その基端部が回動軸22aに軸支されており、発射駆動部22が駆動されることにより、この回動軸22a周りに回動する。発射槌23の先端部には、遊技球を発射する際に、遊技球を弾性力によって弾き出すためのコイルバネ24が設けられている。発射レール25は、断面M字状の溝が発射方向Hに向かって形成されたレールである。保持部材26は、発射レール25に対向する所定位置に設けられており、発射レール25に供給される遊技球を所定の発射位置Pで保持するように構成される。このように構成される発射装置20は、遊技球が発射位置Pに保持されている状態で発射駆動部22を作動させ、発射槌23を図中R1で示す方向に高速回転移動させることにより、遊技球を斜め上方に設定された発射方向Hに向かって打ち出すようになっている。また発射槌23は、R1方向に移動して遊技球を打ち出した後、R1方向とは逆方向に回転移動して元の位置に復帰する。このような動作を繰り返し行うことにより、発射装置20は、球供給装置30から供給される遊技球を1球ずつ所定間隔で打ち出すようになっている。
【0030】
図4は、発射装置20と球供給装置30との組み付け位置の関係を示す図である。図4に示すように球供給装置30は、前枠部材3の背面側に取り付けられる補助部材14の下部に接合した状態で前枠部材3に固定される。ここで補助部材14は、発射装置20によって発射される遊技球を発射方向Hに案内するためのガイドを有し、発射された遊技球が遊技領域13に到達することなく外レール11と内レール12との間を逆戻りしてきた場合にその遊技球(ファール球)を回収して貯留皿8に排出するように構成される部材である。
【0031】
球供給装置30は、その補助部材14に対して組み付けられた状態で前枠部材3の背面側に取り付けられる。この球供給装置30は、その正面側の側面(すなわち、貯留皿8が位置する遊技機1の前面側に対応する側面)に、貯留皿8から導かれる遊技球を1球ずつ受け入れるための受入口31が設けられている。これに対し、背面側の側面(すなわち、発射装置20と対向する側面)には、受入口31から受け入れた遊技球を発射装置20の発射位置Pに向けて供給する供給口32が設けられている。尚、この球供給装置30において、受入口31が形成される一方の側面と、供給口32が形成される他方の側面とは、ほぼ平行な状態に設けられる。
【0032】
図5は、前枠部材3が本体枠2に対して閉じられた状態の球供給装置30と発射装置20との関係を遊技機1の背面側からみた図である。図5に示すように、球供給装置30に設けられる供給口32は、発射レール25と保持部材26とによって規定される発射位置Pの近傍上側に開口しており、この開口位置から遊技球を発射レール25上に落下させることで発射位置Pに供給する。
【0033】
図6および図7は、貯留皿8から発射位置Pまで遊技球が移動する経路を示す図であり、図6は遊技機1を正面側(前面側)からみた平面図を、図7は遊技機1を斜め背面側からみた斜視図を示している。図6に示すように、貯留皿8の底部には、貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で発射装置20の発射位置Pへ向けて案内する球供給路8aが設けられている。この球供給路8aは、球供給装置30に向かって緩やかに下降しており、貯留皿8に貯留された遊技球がその下降傾斜に従って順次転動していくことにより、貯留皿8の背面側へと移動していく。球供給装置30は、貯留皿8の背面側でこの球供給路8aの終端部と対向する側面に受入口31が設けられ、発射装置20に隣接する他方の側面に形成された供給口32から遊技球を発射位置Pへと供給する。この球供給装置30は、遊技機1の前後方向に1球の遊技球を収容できる程度の厚みを有しており、その内部に、遊技球を受入口31から供給口32に導くための球案内路33が形成される。
【0034】
そして図7に示すように、球供給装置30は、供給口32から遊技球を発射レール25に対して落下供給することにより、遊技球を発射位置Pにセットする。そして本実施形態では、図7に示すように、球供給装置30が供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する構成となっている。以下、このような球供給装置30について詳しく説明する。
【0035】
図8は、球供給装置30の詳細な構成を説明するための分解斜視図である。この球供給装置30は、略矩形の箱形であるケース本体34と、ケース本体34の開放された一方側面を閉鎖するためのケース蓋35とによって筐体が構成され、その筐体内部に、遊技球を1球ずつ受入口31から供給口32へ導くための揺動部材40と、揺動部材40を上下方向に揺動させるための駆動機構50とが収められた構成である。
【0036】
ケース本体34の内側には、揺動部材40の揺動軸37aと、駆動機構50を取り付けるための係着部36aと、揺動部材40の揺動角度を規定するために所定間隔を隔てて上下一対に設けられた係止片38a,38bとが設けられる。また、ケース本体34の側面には、供給口32が開口形成されている。そして、この供給口32の上部には、アーチ状の摩擦部39が形成されている。尚、この摩擦部39の詳細については後述する。
【0037】
一方、ケース蓋35は、ケース本体34に対して嵌着されるようになっている。このケース蓋35には、揺動軸37aに対応する軸受け部37bと、駆動機構50を取り付けるための係着部36aとが設けられている。またケース蓋35の側面には、遊技球の受入口31が形成されている。
【0038】
駆動機構50は、コイル51とU字状のヨーク52とを備えた電磁石によって構成される。また、揺動部材40は、所定長さを有するアーム41の基端部に軸孔42が設けられ、先端部に昇降部材43が設けられた構成である。アーム41の基端部に設けられた軸孔42は、ケース本体34に設けられた揺動軸37aに遊挿される。また揺動部材40のアーム41の上面には、駆動機構50が励磁された場合にその磁力によって上方付勢される金属板44が取り付けられている。アーム41の先端部に設けられた昇降部材43は、揺動部材40の揺動動作によって球供給装置30の内部を所定範囲内で昇降するように構成される。
【0039】
昇降部材43は、図8に示すように、受入口31から受け入れた遊技球を支持する支持部45と、支持部45が遊技球を支持している状態で下降するときに受入口31を閉鎖して次の遊技球が受入口31から流入することを防止する閉鎖部46とを有している。支持部45は、遊技球を支持する床面45aが若干ケース本体34側(すなわち、供給口32側)に向かって下降傾斜した傾斜面となっている。
【0040】
このような揺動部材40は、軸孔42に対して揺動軸37aが挿入されると共に、アーム41の先端部寄りの部分が上下一対の係止片38a,38bの間に挿入された状態となるようにケース本体34に取り付けられる。また、駆動機構50は、上記のようしてケース本体34に取り付けられる揺動部材40の金属板44から所定間隔離れた上方位置で金属板44に対向するように取り付けられる。
【0041】
図9は、上記のように構成される球供給装置30の動作を示す図である。尚、図9は、遊技機1の背面側から見た球供給装置30を示している。本実施形態における球供給装置30は、受入口31と供給口32とが異なる高さ位置に設けられており、供給口32が受入口31よりも下方に位置している。昇降部材43は、これら受入口31と供給口32との間を昇降することにより、受入口31から遊技球を受け入れて供給口32から排出するように構成される。
【0042】
図9(a)は、駆動機構50が励磁された場合を示している。駆動機構50が励磁されると、金属板44が駆動機構50に引き寄せられるため、揺動部材40が揺動軸37aを中心に回動し、昇降部材43を所定角度上方に持ち上げる。昇降部材43は、上方に移動すると、球供給路8aに整列した遊技球の先頭位置する1球だけを受け入れ、支持部45がその遊技球Bを支持した状態となる。このような揺動部材40は、その重心がアーム41の先端部側にある。そのため、駆動機構50が励磁されなくなると、アーム41はその自重によって揺動軸37a周りに回動し、昇降部材43を下降させる。
【0043】
図9(b)は、駆動機構50が励磁されなくなった場合を示している。アーム41が昇降部材43を下降させると、支持部45によって支持された遊技球が供給口32から発射レール25上に供給される。
【0044】
図10は、このような昇降部材43の昇降動作を側方からみた概略断面図である。図10(a)に示すように、昇降部材43が上昇すると、閉鎖部46が受入口31の内側上方に退避し、支持部45が球供給路8aとほぼ同一平面となり、球供給路8aに整列している遊技球のうちの先頭の遊技球Bが受入口31から流入し、昇降部材43の内側に向かって転動する。これにより、図10(b)に示すように、昇降部材43の支持部45が1球の遊技球を支持した状態となる。このとき、支持部45の床面45aによって支持された遊技球は、供給口32の上方に位置する球供給装置30の内壁に当たることとなり、1球の遊技球が受入口31から昇降部材43の内側に流入すると、それに後続する遊技球は受入口31に流入することなく、球供給路8aに整列した状態で静止する。この状態で、昇降部材43が下降すると、図10(c)に示すように、閉鎖部46が受入口31を閉鎖するので、球供給路8aに整列した遊技球は受入口31から流入することがない。そして支持部45が供給口32の下端部とほぼ同じ高さ位置まで下降すると、支持部45の床面45aが供給口32に向かって下降傾斜しているので、支持部45に支持された遊技球Bはその床面45aに沿って転動し、供給口32から発射レール25上に落下供給され、上述した発射位置Pで保持される。その後、昇降部材43が再び上昇すると、図10(a)の状態に戻り、上述した動作を繰り返す。
【0045】
このように球供給装置30は、球供給路8aに整列した状態の遊技球の中から、先頭の遊技球だけを、上部に設けられた受入口31から流入させ、下部に設けられた供給口32から発射位置Pに向けて供給する。そのため、球供給装置30から供給される遊技球は、発射位置Pに対し、概ね受入口31と供給口32とを結ぶ斜め下方に向かって供給されることになる。また、発射装置20によって発射される遊技球は、上述したように斜め上方となる発射方向Hに向かって打ち出される。したがって、本実施形態の球供給装置30は、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対し、ほぼ直角乃至直角未満となる方向から遊技球を発射位置Pに向けて供給するようになっている。
【0046】
また、球供給装置30は、受入口31から遊技球を受け入れるときには、球供給路8aから転動してくる遊技球を受け入れるようになっている。更に、床面45aの傾斜に沿って遊技球を転動させることにより、その遊技球を供給口32から排出するようになっている。このような構成によれば、仮に、糸の一端が付着された遊技球が球供給路8aに供給され、且つ、球供給路8aにおける受入口31の手前位置に、その糸を遊技領域13まで導くのに十分な長さ分だけ束ねた状態で集積させていたとしても、その糸束は纏まった状態で受入口31から球供給装置30の内側に入り込むことはない。そのため、糸が付着された遊技球が受入口31から球供給装置30の内部に転動し、そして供給口32から発射位置Pに向かって転動して行ったとしても、十分な長さの糸束は、球供給路8aにおける受入口31の手前位置に留まったままの状態となる。つまり、このような球供給装置30は、糸の一端の付着された遊技球が発射される前に、その発射位置Pの近傍に十分な長さの糸がまとまった状態で供給されてしまうことを有効に防止することが可能な構成となっている。
【0047】
また、仮に、糸を付着させた遊技球で不正行為を行おうとしている遊技者が針金などの棒状体を用いて十分な長さの糸束を更に押し込んだ場合、その糸束は球供給装置30の受入口31から内側に入り込んでしまうが、その糸束は支持部45の床面45aに載った状態に留まり、供給口32から発射位置Pには排出されない構造となっている。すなわち、本実施形態の球供給装置30では、受入口31と供給口32とが異なる高さ位置にあるため、遊技者が棒状体を用いて糸束を受入口31から球供給装置30の内側に押し込むことはできても、その糸束を更に供給口32から押し出すことは困難な構造となっている。そのため、このような点においても、本実施形態の球供給装置30は、糸の一端の付着された遊技球が発射される前に、その発射位置Pの近傍に十分な長さの糸がまとまった状態で供給されてしまうことを有効に防止することが可能な構成となっているのである。
【0048】
図11は、球供給装置30の背面側(発射装置20に対向する側面)を示す図である。図11に示すように、球供給装置30に設けられる供給口32の上部壁は、アーチ状に形成された摩擦部39となっている。この摩擦部39は、糸の付着した状態の遊技球が発射装置20によって発射位置Pから発射されたとき、供給口32の上流側から送り出される糸と接触してその糸との間に摩擦を生じさせるためのものである。上述したように、本実施形態では、糸の付着した遊技球が球供給路8aに供給され、その遊技球が発射位置Pに供給された場合であっても、その遊技球に繋がっている糸束は供給口32よりも上流側に位置している。そのため、糸の付着した遊技球が発射装置20によって打ち出された場合、その遊技球に繋がる糸は、供給口32よりも上流側から送り出されることになる。このとき、摩擦部39は、供給口32の上流側から順次送り出される糸と接触して摩擦を生じさせ、糸の送り出しをスムーズに行わせないように作用する。
【0049】
図12は、糸Sの付着した遊技球Bが発射される場合の糸Sの状態の一例を示す図である。図12に示すように、糸Sの一端が付着された遊技球Bが発射方向Hに向かって打ち出されると、それに伴い、供給口32の内側から糸Sが発射方向Hに向かって順次送り出されていく。このとき、糸Sは、供給口32の周囲に設けられた摩擦部39と接触し、摩擦部39との間に摩擦を生じるので、その摩擦力により遊技球Bを減速させる。特に本実施形態では、球供給装置30が供給口32から発射位置Pに対して遊技球Bを供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から遊技球Bを供給する構成であるため、遊技球Bが発射されることに伴って送り出される糸Sは、図12に示すように、摩擦部39が設けられた部分でほぼ90度若しくはそれ以下の角度で折れ曲がって送り出されることになる。この折れ曲がり角度が、例えば鈍角である場合には、送り出される糸Sと摩擦部39との間にそれ程大きな摩擦力は生じないため、糸Sの送り出しは比較的スムーズに行われ、遊技球Bは糸Sを付着させた状態のまま簡単に遊技領域13に打ち出されてしまう。これに対し、本実施形態では、糸Sの折れ曲がり角度が、ほぼ90度若しくはそれ以下の角度になるので、糸Sと摩擦部39との間に比較的大きな摩擦力を生じさせることができ、遊技球Bを効果的に減速させることが可能である。そのため、本実施形態では、糸Sの付着した遊技球Bが、遊技領域13に打ち出されてしまう可能性を良好に低減できるようになっている。
【0050】
図13は、糸Sの付着した遊技球が打ち出された場合の供給口32の周辺を拡大して示す図である。本実施形態では供給口32の上部に設けられる摩擦部39はアーチ状に構成されている。そのため、図13におけるA部分に示すように、遊技球Bに付着した糸Sが送り出される際、その糸Sは、アーチ形状の法線方向に沿って送り出されるようになる。つまり、供給口32の上流側から送り出される糸Sは、アーチ状の摩擦部39の端部(縁部)に対してほぼ直角に接触するようになっている。そのため、送り出される糸Sは、摩擦部39の表面から送り出し方向とは逆向きに大きな摩擦力を受けることになる。それ故、本実施形態では、摩擦部39が糸Sとほぼ直角に接触するという点においても、糸Sと摩擦部39との間に比較的大きな摩擦力を生じさせることができるので、糸Sの付着した遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまう可能性を低減できるようになっている。
【0051】
このように本実施形態の遊技機1は、糸Sの一端が付着された遊技球Bが発射装置20によって発射されたとしても、遊技者が送り出そうとする糸Sがスムーズに送り出せないような構造となっており、遊技者による不正行為を未然に防止することが可能である。また、仮に、糸Sの一端が付着された遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまった場合でも、上述した摩擦部39が糸Sと常時接触して摩擦を生じさせるため、遊技者が糸Sの他端を操作して不正行為を行おうとしてもその糸Sに比較的大きな抵抗が作用し、不正行為を行うことが困難である。
【0052】
また、本実施形態では、上述したように、球供給装置30に設けられる供給口32が受入口31よりも下方に位置しており、球供給装置30の内部には受入口31と供給口32との間を昇降する昇降部材43が設けられている。そのため、仮に、糸Sの一端が付着された遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまった場合には、球供給装置30が遊技球を発射位置Pに供給する機能を停止させることができるようになっている。図14は、糸Sの一端が付着された遊技球Bが打ち出された場合における球供給装置30の概略断面図である。糸Sの一端が付着された遊技球Bが打ち出された場合において、その糸Sに対して張力が作用すると、図14に示すように、その糸Sは供給口32と受入口31との間を直線状に横断する状態となる。供給口32は受入口31よりも下方に位置するため、このとき糸Sは、供給口32の摩擦部39と接触し、供給口32から受入口31に向かって斜め上向きに引っ張られた状態で供給口32と受入口31との間を横断する。したがって、糸Sに張力が作用すると、その糸Sは、昇降部材43の閉鎖部46と接触するようになり、昇降部材43は、供給口32から遊技球を発射位置Pに対して供給可能な位置にまで下降しなくなる。これにより、昇降部材43は、昇降動作を停止し、発射装置20の発射位置Pに対して遊技球を供給しなくなる。このように本実施形態の遊技機1は、糸Sの一端が付着された遊技球Bが遊技領域13に打ち出されてしまった場合でも、遊技者が糸Sの他端を不正に操作しようとして糸Sに張力を作用させると、それ以後は遊技球が発射されなくなる。
【0053】
このように、糸Sに張力が作用するとその後は遊技球の発射が行われなくなる構成とすることにより、例えば第2種遊技機などで行われるような不正行為、すなわち、糸の付いた遊技球を不正に始動口に入球させ、それに伴って開放される特定の役物内に、糸の付着していない通常の遊技球を数多く入賞させるような不正行為を有効に防止できるようになる。
【0054】
また、糸Sを付着した遊技球を使用して不正行為を行う遊技者は、糸Sの付いた遊技球を発射装置20から打ち出した後、その遊技球を回収することなく、そのままの状態で放置して遊技機1から去ってしまうのが一般的である。この場合、ホールの店員は、前枠部材3を開放して、不正に打ち出された糸Sの付いた遊技球を取り除く作業を行う必要がある。このとき、球供給装置の内部に複雑な動作機構が設けられていたり、或いは、遊技球の通過する経路が複雑に折れ曲がった経路であったりすると、球供給装置から糸Sを取り除く際に糸Sが絡まってしまうおそれがあり、取り除き作業に手間を要することがある。
【0055】
これに対し、上述した本実施形態の球供給装置30は、その内部において揺動部材40を揺動させるだけであり、しかも受入口31から受け入れた遊技球を供給口32から供給する際に遊技球が通過する経路も単純な経路となっている。そのため、不正に発射された糸Sの付いた遊技球を店員が取り除くときには、糸Sが球供給装置30の内部で絡まってしまう可能性は極めて低く、糸Sの取り除き作業に手間を要しない。また、本実施形態の球供給装置30は、その内部において揺動部材40が揺動するだけの構成であるため、部品点数も少なく、コスト上昇を招くこともない。
【0056】
以上のように、本実施形態の遊技機1は、貯留皿8に貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で案内する球供給路8aの終端部に設けられた球供給装置30が発射装置20の発射位置Pに対して遊技球を1球ずつ供給するように構成されている。そして、この球供給装置30は、供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する構成であり、供給口32の上部には、糸Sの付着した遊技球が発射されることに伴い、その糸Sと接触して糸Sとの間に摩擦を生じさせる摩擦部39が設けられている。したがって、糸Sの付いた遊技球が不正に発射されると、それに伴って供給口32の上流側から送り出されてくる糸Sは摩擦部39と必ず接触し、しかもその接触部分で糸Sが大きく折れ曲がった状態で送り出されることになる。これにより、糸Sと摩擦部39との間に大きな摩擦力を生じさせて、糸Sの付いた遊技球を減速させ、遊技領域13には到達させないようにすることができる。
【0057】
また、本実施形態における摩擦部39は、供給口32の上部壁をアーチ状に形成することによって構成されており、糸Sの付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸Sとアーチ状の摩擦部39の端部とがほぼ直角(すなわち、アーチ形状の法線方向と同じ方向)に接触するようになっている。これにより、摩擦部39と糸Sとの間に生じる摩擦力が更に大きくなるので、糸Sの付いた遊技球をより一層効果的に減速させることが可能である。
【0058】
また、本実施形態の球供給装置30は、受入口31よりも供給口32が下方に位置しており、その内側には、受入口31と供給口32との間を昇降する昇降部材43が設けられている。そして、この昇降部材43は、上昇した位置で受入口31から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で供給口32から遊技球を転動させて発射位置Pに供給するように構成されている。このような構成により、球供給装置30は、供給口32から遊技球を供給する際に、発射装置20による遊技球の発射方向Hに対して直角以下となる方向から発射位置Pに遊技球を供給する。そして、このような構成によれば、糸Sの付いた遊技球は発射位置Pに供給されてしまう可能性はあるが、不正行為に用いられる糸Sの束については少なくとも昇降部材43から発射位置Pに排出されることはない。そのため、発射位置Pの近傍に十分な長さの糸Sが予め供給されてしまうことを良好に防止できるようになっている。
【0059】
さらに、本実施形態の球供給装置30は、万一、糸Sの付いた遊技球が遊技領域13に打ち出されたとしても、上述したように、その糸Sに張力が作用したときには、昇降部材43の少なくとも一部が、供給口32と受入口31との間を横断する糸Sと接触して昇降動作を停止させるので、その状態で後続の遊技球が発射されてしまうことを良好に防止することができるようになっている。
【0060】
したがって、本実施形態の遊技機1によれば、球供給装置30や発射装置20の構造を複雑にすることなく、糸Sの一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止することができるようになる。
【0061】
(第2の実施の形態)
次に第2の実施の形態について説明する。この第2の実施の形態では、糸の付いた遊技球が打ち出された場合に、第1の実施の形態よりも更に効果的にその糸の送り出しを防止できるようにした形態について説明する。尚、本実施形態でも、遊技機1の全体的な構成や発射装置20の構成などは第1の実施の形態で説明したものと同様であり、以下においては、第1の実施の形態と異なる点について説明する。
【0062】
図15は、この第2の実施の形態において前枠部材3の背面側に取り付けられる球供給装置30と補助部材14とを示す図である。尚、図15は、遊技機1の背面側の斜め方向からみた状態を示している。本実施形態の球供給装置30は、供給口32の上部に設けられる摩擦部39の一部に、糸の付着した遊技球の発射に伴い、その糸を咬み合わせるための切欠部39aを設けた構成である。この切欠部39aは、図15に示すように球供給装置30の側面を遊技機1の前面側に向かってスリット状に切り欠いて形成されている。尚、この切欠部39aは、発射装置20による遊技球の発射方向Hに傾斜した状態に形成される。
【0063】
また本実施形態では、補助部材14の背面側であって、球供給装置30に設けられた切欠部39aと接合する部分15にも、切欠部15aが設けられる。この切欠部15aは、球供給装置30の摩擦部39に形成された切欠部39aと連通するように設けられ、発射装置20による遊技球の発射方向Hに傾斜した状態に形成される。このような補助部材14に対して球供給装置30が取り付けられると、切欠部39a,15aは、図16に示すような状態となる。
【0064】
図16は、球供給装置30における摩擦部39の一部に設けられる切欠部39a,15aを遊技機1の背面側からみた図である。球供給装置30と補助部材14とが前枠部材3の背面側に取り付けられると、図16に示すように、球供給装置30に設けられた切欠部39aと、補助部材14に設けられた切欠部15aとが連通し、遊技球の発射方向Hに沿って延びる一体的なスリット状の切欠部16を構成する。この切欠部16は、糸の付いた遊技球が発射された場合に、その糸をスリット内に取り込んで挟み込み、その糸に対して大きな摩擦力を生じさせるためのものである。この切欠部16の先端部16aは、図16に示すように鉤状に下方に折れ曲がった形状となっており、この先端部16aが送り出される糸を咬むことによって糸のスムーズな送り出しを防止する。尚、本実施形態では、先端部16aを鉤状に折れ曲げた形状する場合を例示しているが、これに限らず、例えば、先端部16aを先細りしたV字状に形成し、そのV字状部分で糸を咬むように構成しても良い。
【0065】
図17は、この第2の実施の形態において糸Sの付着した遊技球Bが発射される場合の糸Sの状態の一例を示す図である。図17に示すように、糸Sの一端が付着された遊技球Bが発射方向Hに向かって打ち出されると、それに伴い、供給口32の内側から糸Sが発射方向Hに向かって順次送り出されていく。このとき、糸Sは、はじめに供給口32の右側の側壁に接触しながら順次送り出されていくことになるが、その接触部分は遊技球が上方に移動することに伴って次第に側壁の高い位置へと移動する。ただし、このような接触部分の移動は瞬間的に行われることになる。そして、糸Sが、摩擦部39に設けられた切欠部16の位置まで移動すると、供給口32から送り出されていく糸Sは切欠部16の内側に進入する。そして糸Sが切欠部16の先端部16aで咬まれた状態になると、大きな摩擦力が作用するため、供給口32からの糸Sの送り出しが停止する。
【0066】
このように本実施形態では、供給口32の上部に設けられる摩擦部39の一部に、糸Sを咬み合わせるための切欠部16を設け、糸の付いた遊技球が不正に発射される場合には、この切欠部16が糸を咬むことによって糸の送り出しを禁止するようになっている。そのため、本実施形態では、上述した第1の実施の形態よりも更に効果的にその糸の送り出しを防止することができ、糸の一端が付着された遊技球による不正行為を有効に防止できるようになる。
【0067】
尚、本実施形態では、上述した点以外の構成については、第1の実施の形態と同様である。それ故、第1の実施の形態と共通した構成を有する点においては、本実施形態においても第1の実施の形態と同様の作用効果を奏することは言うまでもない。
【0068】
(変形例)
以上、本発明に関する一実施形態について説明したが、本発明は上述した内容に限られるものではなく、種々の変形例が適用可能である。
【0069】
例えば上記実施形態では、供給口32の上部にアーチ状の摩擦部39を設けた場合を例示したが、このような摩擦部39は供給口32の上部全体に設ける必要はない。すなわち、摩擦部39は、供給口32の周囲において少なくとも遊技球の発射方向H側に設けられていれば良い。例えば、供給口32を遊技機1の背面側からみた場合、供給口32の右上部分のみを円弧状に形成し、その円弧状部分によって摩擦部39を構成するようにしても良い。
【符号の説明】
【0070】
1 遊技機
2 本体枠
3 前枠部材
8 貯留皿
8a 球供給路
10 遊技盤
13 遊技領域
20 発射装置
30 球供給装置
31 受入口
32 供給口
39 摩擦部
40 揺動部材
43 昇降部材
B 遊技球
S 糸
P 発射位置
H 発射方向
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技盤に打ち出された遊技球が各種入賞口に入球することによって賞球を払い出す遊技機であって、
遊技盤の下方に取り付けられ、所定の発射位置に保持された遊技球を斜め上向きの発射方向に向かって発射することにより遊技盤に打ち出す発射装置と、
遊技球を貯留する貯留皿と、
前記貯留皿に貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で前記発射位置に向けて案内する球供給路と、
前記球供給路の終端部と前記発射装置との間に設けられ、一方の側面に形成された受入口から前記球供給路に整列した状態の遊技球を1球ずつ受け入れ、前記一方の側面と略平行な他方の側面に形成された供給口から遊技球を前記発射位置へと供給する球供給装置と、
を備え、
前記球供給装置は、前記供給口から遊技球を供給する際に、前記発射装置による遊技球の発射方向に対して直角以下となる方向から前記発射位置に遊技球を供給する構成であり、前記供給口の周囲において少なくとも遊技球の発射方向側に、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸と接触して糸との間に摩擦を生じさせる摩擦部を設けたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記摩擦部は、前記供給口の上部壁をアーチ状に形成することによって構成され、
糸の付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸とアーチ状の上部壁の端部とがほぼ直角に接触して糸との間に摩擦を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記摩擦部には、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸を咬み合わせるための切欠部を更に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記球供給装置は、前記受入口よりも前記供給口が下方に位置し、前記受入口と前記供給口との間を昇降する昇降部材を備え、該昇降部材が上昇した位置で前記受入口から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で前記供給口から遊技球を転動させて前記発射位置に供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の遊技機。
【請求項5】
前記球供給装置は、糸の付着した遊技球が発射された状態において糸に張力が作用したとき、前記昇降部材の少なくとも一部が、前記供給口と前記受入口との間を横断する糸と接触して昇降動作を停止させることを特徴とする請求項4に記載の遊技機。
【請求項1】
遊技盤に打ち出された遊技球が各種入賞口に入球することによって賞球を払い出す遊技機であって、
遊技盤の下方に取り付けられ、所定の発射位置に保持された遊技球を斜め上向きの発射方向に向かって発射することにより遊技盤に打ち出す発射装置と、
遊技球を貯留する貯留皿と、
前記貯留皿に貯留された遊技球を1球ずつ整列させた状態で前記発射位置に向けて案内する球供給路と、
前記球供給路の終端部と前記発射装置との間に設けられ、一方の側面に形成された受入口から前記球供給路に整列した状態の遊技球を1球ずつ受け入れ、前記一方の側面と略平行な他方の側面に形成された供給口から遊技球を前記発射位置へと供給する球供給装置と、
を備え、
前記球供給装置は、前記供給口から遊技球を供給する際に、前記発射装置による遊技球の発射方向に対して直角以下となる方向から前記発射位置に遊技球を供給する構成であり、前記供給口の周囲において少なくとも遊技球の発射方向側に、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸と接触して糸との間に摩擦を生じさせる摩擦部を設けたことを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記摩擦部は、前記供給口の上部壁をアーチ状に形成することによって構成され、
糸の付着した遊技球が発射されることに伴って送り出される糸とアーチ状の上部壁の端部とがほぼ直角に接触して糸との間に摩擦を生じさせることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記摩擦部には、糸の付着した遊技球の発射に伴って糸を咬み合わせるための切欠部を更に設けたことを特徴とする請求項1又は2に記載の遊技機。
【請求項4】
前記球供給装置は、前記受入口よりも前記供給口が下方に位置し、前記受入口と前記供給口との間を昇降する昇降部材を備え、該昇降部材が上昇した位置で前記受入口から転動してくる遊技球を受け入れて保持し、下降した位置で前記供給口から遊技球を転動させて前記発射位置に供給することを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の遊技機。
【請求項5】
前記球供給装置は、糸の付着した遊技球が発射された状態において糸に張力が作用したとき、前記昇降部材の少なくとも一部が、前記供給口と前記受入口との間を横断する糸と接触して昇降動作を停止させることを特徴とする請求項4に記載の遊技機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−90833(P2012−90833A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−241653(P2010−241653)
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(000161806)京楽産業.株式会社 (4,820)
【Fターム(参考)】
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