説明

遊技機

【課題】遊技球を払い出し中の遊技機が電断になった後に数個の遊技球を余計に払い出すことに基く不正行為を抑制し得る遊技機を提供する。
【解決手段】払出制御装置34は、払出動作中に電断になる場合に、電断により回転が停止する回転体38の払出動作開始時からの回転角度を示すステッピングモータ39のホームポジションからのステップ数を求める。このステップ数が遊技球Bが回転体38に保持された状態から解放されて落下する回転角度に対応するステップ数より小さい場合かステップ数以上の場合かを求める。また、予定払出数から遊技球払出検知センサ23の検知信号をカウントした払出数を減算した値である残数を求める。上述のホームポジションからのステップ数が遊技球が落下する回転角度に対応するステップ数より多い場合に、残数から1減算し、復帰時にこの残数分の遊技球を払い出す。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、パチンコ店などの遊技場に設置して使用される遊技機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
弾球遊技機として、例えば、パチンコ遊技機では、各入賞口への遊技球の入賞に基いて賞球としての遊技球が払い出されるとともに、プリペイドカード等の記録媒体のデータに基いて貸球としての遊技球が払い出されるようになっている。
【0003】
パチンコ遊技機の背面側の上部には、パチンコ遊技機が設置される島設備側から供給さされる遊技球を貯留する貯留タンクが設けられている。
この貯留タンクからパチンコ遊技機前面の下部の上皿側に遊技球が流下する流路が設けられるとともに、この流路に遊技球払出装置が設けられている。この遊技球払出装置が、貯留タンクに貯留された遊技球を流路を介して上述の賞球や貸球として上皿側に払い出すようになっている。
【0004】
また、遊技球払出装置は、払出制御装置により制御されており、払出制御装置には、パチンコ遊技機において遊技球の入賞に基く賞球の払い出しのための制御を含むパチンコ遊技機の遊技に係わる制御を行う主制御装置が接続されている。また、払出制御装置には、パチンコ遊技機に隣接して設けられたサンド装置の球貸信号制御装置が接続されている。
主制御装置は、各入賞口のいずれかに遊技球が入賞する毎に、当該入賞口に対応する数の遊技球を払い出すように払出制御装置にコマンドを出力する。
【0005】
また、球貸信号制御装置は、例えば、サンド装置に設けられてプリペイドカードをリード・ライトするCRユニットにより、投入金額に対応するポイントがデータとして記憶されているプリペイドカードの当該データが読み取られ、パチンコ遊技機の上皿の右端部側に設けられた球貸ボタン等を用いて球貸操作がなされた際に、プリペイドカードのポイントのデータと、上述の球貸操作に対応して払出制御装置に球貸信号を出力する。
【0006】
払出制御措置に制御される遊技球払出装置は、一個ずつの遊技球を比較的高速で、連続的に払い出すようになっているが、賞球の場合には、対応する入賞口にそれぞれ設定された賞球数として例えば1〜15個程度の遊技球を連続して払い出すようになっている。この賞球数が主制御装置から払出制御装置に出力されるコマンドに含まれており、このコマンドに含まれる賞球数が遊技球払出装置からから払い出すべき予定の予定払出数になる。また、大当たり状態におけるアタッカへの遊技球の入賞のように短期間に多数の遊技球が入賞する場合には、例えば、アタッカの大入賞口に対応する賞球数の遊技球が連続的に払い出されることが繰り返される。
【0007】
貸球の場合は、例えば、一回の球貸操作により、所定ポイントに対応する貸球が払い出されるが、この際に所定単位数になる数の遊技球が連続的に払い出される。なお。所定ポイントに対応する貸球数が所定単位数より多い場合(所定単位数の倍数の場合)に、所定単位数の遊技球が連続的に払い出されることが繰り返される。基本的に一回の球貸信号の払出制御装置への入力が、連続的に払い出すべき遊技球数として所定単位数を入力したことになり、この所定単位数が、払出制御装置が制御する遊技球払出装置が払い出すべき予定の払出数である予定払出数になる。
【0008】
ここで、停電や電源故障等により電断が生じた場合に、払出制御装置に主制御装置または球貸信号制御装置から入力された連続的に払い出されるべき遊技球数(予定払出数)は、当該予定払出数に対応する遊技球の払出が開始されていない場合に、電断状態でも記憶された情報が消えないように電池等で電力が供給される例えばバッテリバックアップメモリ(BBメモリ)に前記予定払出数に対応する情報が記憶される。
【0009】
また、遊技機では、前述の予定払出数に対応する遊技球の払い出しが開始されてから上皿側に払い出される遊技球の数が、遊技球検知センサ(遊技球払出検知センサ)から出力される検知信号をカウントすることでカウントされている。遊技球払出検知センサは、遊技球払出装置より下流側で、上皿より上流側に設けられ、遊技球払出装置から払い出された遊技球をひとずつ検知可能にされ、遊技球を検知した際に検知信号を出力する。
この遊技球払出検知センサを用いることによって予定払出数のうちの実際に払い出された遊技球の数と、この遊技球数を予定払出数から減算した未払いの遊技球数としての残数を払出制御装置で求めることが可能になり、電断時に、この残数のデータが上述のBBメモリに記憶される。
なお、電断時に払出制御装置は、一時的に電池等により電力が供給されるようになっており、電断直後に上述のデータをBBメモリに記憶する処理が可能になっている。
【0010】
電断からの復帰時には、まず、上述のようにメモリに記憶された残数分の遊技球が払い出され、次に記憶されている予定払出数がある場合に、通常の払出操作により遊技球が払い出される。
すなわち、遊技球の払出中に電断になり、遊技球の払い出しが中断した場合には、払い出される遊技球を検知する遊技球検知センサで検知された遊技球の数に基いて、未払いになっている遊技球の残数を記憶しておき、電断復帰時に、まず、この残数分の遊技球を払い出すことになる(例えば、特許文献1参照)。
【0011】
また、遊技球払出装置には、外周に遊技球を保持する凹部が並べて設けられたスプロケット状の回転体を備え、流路に一列に並んだ遊技球のうちの一番下の遊技球を回転体の回転に対応して上を向く凹部に保持した後に、回転体の回転に対応して凹部が傾くことにより凹部から遊技球を落下させることによって遊技球を一つずつ連続的に払い出すことができるようになっている。
この回転体の下側に上述の遊技球払出検知センサが設けられる。
【0012】
上述の回転体と遊技球払出検知センサとの間には、例えば、遊技球の直径の2,3倍程度以上の間隔が空けられている。また、遊技球払出装置の回転体は、遊技球の払出中に比較的高速で回転し、払い出された遊技球が互いに近接した状態で回転体より下側の流路を通過し、これら遊技球が通過する際に、前記遊技球払出検知センサに検知される。
【0013】
したがって、連続的に遊技球が払い出されている間に電断があると、電断により遊技球検知センサが機能しなくなるとともに回転体の回転が停止した際に、回転体と遊技球検知センサとの間にある遊技球が、遊技球検知センサに検知されることなく、上皿側に流下することになる。
【0014】
以上のことから電断からの復帰後に、上述の遊技球検知センサに検知された遊技球数に基いて求められた残数分の遊技球を払い出すと、実際には、上述の遊技球検知センサに検知されずに流下した数個の遊技球分だけ上述の予定払出数より多く遊技球が払い出されてしまう。
【0015】
また、回転体は、外周に例えばn個の球受け部が設けられている場合に、遊技球を一個払い出すのに回転体は1/n回転することになり、1/n回転するたびに遊技球が払い出されることになる。ここで、回転体が1/n回転する際の回転角度をm(=360度/n)とすると、回転体がm度回転した際にちょうど遊技球が球受け部から下に落下する状態とした場合に、回転角度の少しのずれで、回転体がm度だけ回転しても遊技球が落下しない虞がある。
【0016】
したがって、実際には、回転角度mよりも少し小さい回転角度pまで回転した際に、遊技球が落下し、遊技球が落下した後も、回転角度がmになるまで回転体が回転することになる。この場合に、電断した際に、遊技球を1個払いだすための回転角度mまで回転体が回転していなくとも、回転体の回転角度がpになった段階で、遊技球が落下する。
【0017】
回転体の回転角度がmに至る前に電断で回転体が停止した場合に、回転体の回転角度がpを超えている場合に、遊技球が落下した後に直ぐに電断が発生したことになる。この場合に、電断の直前に落下した遊技球は、遊技球払出検知センサが回転体のすぐ近傍にあったとしても、遊技球払出検知センサに検知される前に、電断になり、遊技球検知センサに検知されない可能性が高い。
【0018】
また、遊技球払出検知センサが電断になる直前に遊技球が検知されたとしても、払出制御装置での処理が間に合わず、最後に検知された遊技球に対応する残数が更新記憶されない可能性もある。
なお、後述するように電断が払出制御装置の基板だけで生じ、例えば、遊技球検知センサが作動し続けているような場合でも、払出制御装置が電断になることによって払出制御装置に遊技球の検知信号が入力しても残数が更新記憶されず、遊技球検知センサが電断した場合とほぼ同様の結果になる。
【0019】
しかし、通常は、例えば、落雷等による停電などにより、まれにしか電断が生じることがなく、電断時に多くの遊技機でそれぞれ数個だけ余計に遊技球が払い出されても、大きな問題とはならない。また、遊技店全体で電断が生じた場合であっても、電断時に遊技球の払出中になっている遊技機は、遊技店の一部の遊技機にすぎない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】特開2002−925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0021】
ところで、遊技機からコインや遊技球といった遊技媒体を不正に奪い取ろうとする試みが必要になされており、遊技機の弱点を突いたいくつもの不正な方法が知られている。遊技店側に知られてしまった不正な方法に対しては、遊技店側で何らかの対策が施されて対処されるが、新たな方法に対しては、それが知られるまで、対処することができない。
【0022】
上述の遊技球の払い出し時に電断があると数個の遊技球が余計に払い出されてしまう構造が、遊技機の弱点として、悪用される可能性がある。
例えば、パチンコ遊技機を不正に開放して、前記払出制御装置の基板に不正行為用の配線基板を接続し、払出制御装置を強制的に電断とすることが考えられる。この不正行為用の配線基板では、例えば、電断を短い期間で繰り替えし発生するようにし、例えば、所定数の遊技球を払い出している途中で、電断を発生させるとともに電断を復帰させることを繰り返し、上述のように遊技球検知センサで検知されない未検知遊技球を余分に払い出させるようにすることができる虞がある。
【0023】
この場合に、電源を復帰させて回転体を回転させるとともに遊技球検知センサが復帰した状態で、数個の遊技球が回転体から払い出されたタイミングで電断とすると、再び、遊技球検知センサがダウンし、残数が増えることなく、数個の遊技球を再び払い出させることができる。このようにして電断と復帰とを短い間隔で繰り返すと、残数が減ることなく、上皿に流下する遊技球が増加していくことになる。すなわち、電断からの復帰時に数個だけ余計に遊技球を払い出す虞がある構成が弱点になり、遊技球を不正に払い出させることが可能になる虞がある。
【0024】
なお、この不正な方法は、電断を発生させるものであるが、遊技の進行を制御する主制御装置や、音や映像により演出を行うためのサブ制御装置を電断させる必要はなく、払出制御装置(の基板)でだけ電断を発生するようにすればよい。
したがって、不正行為中に遊技機全体が電断状態になって、LEDの照明が消えたり、演出用の音楽を含む音声が消えたり、液晶表示装置による映像の表示が消えたりすることなく、不正に遊技球を払い出させることができる。これにより、比較的目立たずに不正に遊技球を払い出させることが可能になる。
【0025】
本発明は、上記事情に鑑みて為されたもので、遊技球を払い出し中の遊技機が電断になった後に数個の遊技球を余計に払い出すことに基く不正行為を抑制し得る遊技機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0026】
請求項1に記載の遊技機は、遊技球を払い出す遊技球払出手段と、
一回の払出動作で連続的に払い出すべき遊技球の数としての予定払出数が入力されることに基き、前記予定払出数分の遊技球を払い出すように前記遊技球払出手段を制御する払出制御手段と、
前記遊技球払出手段から払い出される遊技球を順次カウントするために、前記遊技球払出手段から払い出される遊技球を検知する遊技球払出検知手段と、
前記予定払出数に対応して前記遊技球払出手段による遊技球の払出動作が開始されてから前記遊技球払出検知手段で遊技球が検知される毎に前記予定払出数の値から順次1ずつ減算するとともに、減算される値を残数として更新記憶する残数算出記憶手段とを備え、
前記遊技球払出手段は、払い出される遊技球を貯留する貯留タンクから遊技球を一列に連続的に流下させる流路と、
当該流路の前記遊技球払出検知手段より上流に設けられ、回転停止時に当該流路における遊技球の流下を止めるとともに、一回転の所定数分の一になる所定回転角度だけ回転する度に、前記流路の遊技球を一つずつ下方に流下させる回転体と、
前記払出動作中の前記回転体の回転角度を特定可能で、前記回転体を、前記所定回転角度に前記予定払出数を乗算した乗算回転角度だけ回転させるとともに前記払出動作開始時からの前記回転体の回転角度が前記乗算回転角度になる際に前記回転体の回転を停止する回転駆動手段とを備え、
前記払出制御手段は、電断状態でも記憶を保持可能な記憶保持手段を備え、
かつ、前記払出動作中に電断になる場合に、この電断時に前記残数算出記憶手段に記憶されている前記残数を前記記憶保持手段に記憶するとともに、電断からの復帰時に前記記憶保持手段に記憶されている残数分の遊技球を払い出すように前記遊技球払出手段を制御する遊技機において、
前記払出制御手段は、前記払出動作中に電断になる場合に、電断により前記回転駆動手段による回転が停止する前記回転体の前記払出動作開始時からの回転角度を前記所定回転角度で除算した場合の余りに対応する途中回転角度を求め、この途中回転角度が、前記所定回転角度内の前記回転体の回転角度で、かつ、遊技球が前記回転体に保持された状態から解放されて落下する回転角度としての遊技球落下回転角度以下の場合に、前記残数を変更することなく維持し、前記途中回転角度が前記遊技球落下回転角度以上の場合に、前記残数を当該残数から1減算した値に変更する残数決定手段を備えることを特徴とする。
【0027】
請求項1に記載の発明においては、回転体が所定角度回転するたびに流路の回転体の上流側の遊技球が流下して遊技球が一つ払い出される。この際に、遊技球は、回転体が所定角度回転した時点で払い出されるのではなく、所定角度より小さな遊技球落下回転角度になった時点で遊技球が回転体に保持された状態から落下するように保持が解除された状態になる。
なお、回転体は、遊技球を一個だけ払い出す際に、遊技球落下回転角度を通過して所定角度まで回転する。ここで、回転体の回転中に電断になると、その時に払いだされる予定の遊技球は、電断になった際の途中回転角度が遊技球落下回転角度以下ならば回転体に保持された状態で電断により回転体の回転が中止し、払い出されるべき遊技球は回転体に保持された状態になる。
【0028】
一方、途中回転角度が遊技球落下回転角度以上(所定角度未満)の場合には、電断直前に遊技球が回転体に保持されない状態になり流下を開始した状態になる。この場合に、回転体の直下近傍に遊技球払出検知手段があっても、電断により回転体から離れた遊技球が検知されないことになる。この場合に、実際の遊技球の残数が一つ減っているが、遊技球払出検知手段による遊技球の検知に基く残数は変化していない。
【0029】
この場合、電源復帰時に残数分だけ遊技球を払い出すと、遊技球1個分だけ余計に遊技球を払いだしてしまうことになり、例えば、払出制御手段に対して電断と復帰とを繰り返す装置が取り付けられてしまうと、遊技球の連続的な一回の払出の際に、不正に多くの遊技球を払い出せてしまうことが可能になる虞がある。
それに対して、上述のように途中回転角度が、遊技球落下回転角度より大きくなった場合に、残数から1減算することにより、電源復帰時に1減少した残数分の遊技球が払い出されることになる。この場合に、電断により、一個余計に遊技球が払い出されることがないので、不正行為による遊技球の払出の増加を抑制することができる。
【0030】
請求項2に記載の遊技機は、請求項1に記載の発明において、前記遊技球払出検知手段の遊技球を検知する位置と、前記遊技球払出手段の前記回転体が遊技球を落下させる位置との間に、前記回転体により連続的に払い出されて流下するとともに、未だに払出遊技球検知手段で検知されていない遊技球である未検知遊技球が1以上の未検知遊技球数だけ並ぶことが可能な間隔が設けられ、
前記払出動作中に電断になる場合に、前記払出制御手段は、前記残数が前記未検知遊技球数以上であれば、前記残数決定手段により決定されている前記残数を当該残数から前記未検知遊技球数を減算した値に変更し、
前記残数が前記未検知遊技球数より少なければ、前記残数決定手段により決定されている前記残数を0に変更する残数変更手段を備えることを特徴とする。
【0031】
請求項2に記載の発明においては、遊技球を払い出す回転体と、払い出された遊技球を検知する遊技球払出検知手段との間に、払い出される遊技球が複数一列に同時に流下する間隔がある場合に、電断時に回転体と遊技球払出検知手段との間にある未検知遊技球が遊技球払出検知手段に検知されず、未検知遊技球がカウントされない。
【0032】
この場合に、遊技球払出検知手段に検知されないことにより、電断からの復帰時に残数分の遊技球を払い出すと、未検知遊技球数分だけ余計に払い出すことになるが、遊技球払出検知手段の遊技球の検知により求められる残数から未検知遊技球数を減算することによって余分な遊技球の払い出しが防止される。
また、残数が未検知遊技球数より少ない状態では、残数になる遊技球が回転体と遊技球払出検知手段との間にある状態であり、実際の残数は0になる。
また、請求項1において、途中回転角度が遊技球落下回転角度以上になって落下開始直後に電断になってしまった遊技球は、未検知遊技球数に含めていない。したがって、途中回転角度が遊技球落下回転角度以上で、かつ、残数が未検知遊技球数より多い状態では、
【0033】
請求項3に記載の遊技機は、請求項1に記載の発明において、前記払出制御手段は、前記払出動作中に電断する場合に、電断により前記回転駆動手段による回転が停止した前記回転体の前記払出動作開始時からの回転角度を前記所定回転角度で除算した値を所定角度回転数とし、
電断時の前記払出動作における前記予定払出数から前記所定角度回転数を減算した値を前記残数に代えて残数とすることを特徴とする。
【0034】
請求項3に記載の発明においては、遊技球払出手段から払い出される遊技球の数は、回転体の回転角度により決定され、所定回転角度毎に遊技球が払い出されるので、払出動作開始時からの回転体の回転角度を所定回転角度で除算することにより、遊技球検知手段の遊技球の検知を用いなくても、残数を決定することができる。この残数には、上述の未検知遊技球数を考慮する必要がない。この場合に、上述のように電断により所定回転角度の途中で回転体の回転が止まった際に、上述の途中回転角度が遊技球落下回転角度より大きいと、所定回転角度で除算することにより求めた払出数より払い出される遊技球が一つ多くなる。その場合には、上述のように残数を1つ減らす必要がある。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、遊技球の払出中に電断になった後の復帰時に遊技球が余分に払い出されるのを防止することによって不正行為による遊技球の払い出しを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施の形態に係るパチンコ遊技機を示す斜視図である。
【図2】前記パチンコ遊技機のガラス扉を開いた状態を示す斜視図である。
【図3】前記パチンコ遊技機の遊技球払出用流路中の遊技球払出装置を示す図である。
【図4】前記パチンコ遊技機の遊技球払出の制御系を示すブロック図である。
【図5】(a)〜(d)は前記遊技球払出装置における遊技球の払出動作を説明するための図である。
【図6】(a)〜(d)は前記遊技球払出装置における遊技球の払出動作を説明するための図である。
【図7】前記遊技球払出装置における未検知遊技球を説明するための図である。
【図8】前記遊技球払出装置を制御する払出制御装置で行われる電断退避処理を説明するためのフローチャートである。
【図9】前記払出制御装置で行われる電断復帰処理を説明するためのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0037】
本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。
図1及び図2に示すように、パチンコ遊技機は、遊技店の島設備に設置される縦長の矩形状の機枠1と、機枠1に扉状に開閉自在に取り付けられた前面枠2と、前面枠2に収納された遊技盤3と、前面枠2の前面に扉状に開閉自在に取り付けられ、中央に大きく開口部5が形成されたガラス扉4と、このガラス扉4の開口部5に取り付けられた透明な二重ガラス板6と、前記ガラス扉4の前面の前記二重ガラス板6の下に設けられ、遊技球B(図3等に図示)を収容する上皿7および上皿7から溢れる遊技球Bを収容する下皿8と、前記ガラス扉4の上皿7および下皿8の向かって右側に設けられる回転式操作ハンドル9とを備える。
【0038】
また、機枠1上部の背面側には、島設備側から供給される遊技球Bを貯留するとともに、後述の流路21(図3に図示)を介して遊技球Bを上皿7に払い出すための貯留タンク20が設けられている。
このパチンコ遊技機を島設備に設置した際には、パチンコ遊技機に隣接して図示しないサンド装置が設けられ、サンド装置に例えば紙幣を投入することによってプリペイドカード(記録媒体:図4に図示)45が購入可能で、プリペイドカード45に記録されたポイントを貸球としての遊技球Bに交換可能になっている。
【0039】
前記ガラス扉4の上皿7の向かって右側には、前記ポイントの表示や、貸球の払出操作や、プリペイドカード45の排出操作が可能な操作部10が設けられている。操作部10からの信号は、サンド装置の球貸信号制御装置43に入力され、球貸信号制御装置43からの球貸信号に基いて、パチンコ遊技機の遊技球払出装置37から貸球としての遊技球Bが上皿7に払い出されるようになっている。
【0040】
貯留タンク20と上皿7との間には、貯留タンク20に貯留された遊技球Bを一列に流下させる流路21(図3に図示)が設けられ、この流路21に流路21の一部を利用して遊技球払出装置37が形成されている。
遊技球払出装置37は、停止した状態で流路21内の遊技球Bの流下を止め、回転することにより遊技球Bを一つずつ流下させるスプロケット状の回転体38と、この回転体38を回転駆動するステッピングモータ39(図4に図示)とを備える。
【0041】
流路21は、上述のように貯留タンク20と上皿7とを繋ぐように上下に延在し、その途中に遊技球払出装置37が形成されている。なお、流路21の遊技球払出装置37の上側には、遊技球払出装置37が停止状態の場合に、遊技球Bが停止して貯まった状態になっている。この流路21の遊技球払出装置37の上側には、遊技球抜取口28が設けられ、この遊技球抜取口28には、開閉自在に開閉部材24が設けられ、例えば、メンテナンスやその他の目的で流路21から遊技球Bを抜き取れるようになっている。
【0042】
回転体38は、その外周部分に凹部40と凸部41が繰り返し形成されることでスプロケット状の形状になっている。また、回転体38の回転軸は水平に配置されている。凹部40は略円弧状に凹んで形成されるとともに、凹部40の円弧の半径が遊技球Bの半径と略同じに形成され、前記凹部40に遊技球Bを保持して遊技球Bを回転移動可能になっている。なお、凹部40の円弧は、半円より短い円弧になっている。また、凹部40は、回転体38の外周に周方向に等間隔に並んで形成される。この実施形態では、4つの凹部40が設けられ、これら4つの凹部40同士の間がそれぞれ凸部41とされている。
【0043】
すなわち、凹部40は、回転体38の外周に回転角度で90度毎に配置されている。なお、凹部40の数は、4つでなくともよく、例えば、4つより少なくても、多くてもどちらでも良い。
回転体38は、上向いた凹部40に流路21の回転体38より上側で最も下の遊技球Bを保持し、回転体38が回転することにより遊技球Bを保持した凹部40が斜めを向いた際に、遊技球Bを放出するようになっている。この際には、回転方向後側の凹部40に次に払い出す遊技球Bが保持されている。
【0044】
流路の回転体38が配置される部分、すなわち、遊技球払出装置37の一部になる部分は、回転体38の最上部より回転方向の少し後側の部分と回転体38の最下部になる部分とまでの間が、回転体38の回転中心から回転体38の凸部41の半径より少しだけ大きな半径の円弧になるように形成されている。これにより、流路21のこの部分が回転体38の外周部分に近接して配置される。この部分は、流路21を流下する遊技球Bを凹部40に受ける前の部分になる。
【0045】
また、流路21の回転体38が配置される部分において、回転体38の最上部から少しだけ回転方向前側の部分と、最下部より回転方向後側の部分とまでの間が、回転体38の回転中心から回転体の凹部40の最短の半径に遊技球Bの直径を加算した半径より少しだけ大きな半径の円弧とされている。この部分で凹部40に遊技球Bを受けた回転体38が回転して遊技球Bを払い出すようになっている。回転体38には、凹部40が4つあることから、回転体38が1/4回転するたびに1個の遊技球Bが払い出されるとともに、回転体38が一回転すると4つの遊技球Bが払い出される。すなわち、回転体38の回転角度90度毎に一つの遊技球Bが払い出される。
【0046】
この回転体38は回転駆動手段としてのステッピングモータ39により回転されるようになっている。このステッピングモータ39は、回転体38を一回転させる際のステップ数が96ステップとされている。したがって、24ステップ毎に遊技球Bを払い出すようになっている。
また、流路21の遊技球払出装置37の下側には、遊技球払出検知センサ23が設けられ、払い出された遊技球Bが一つずつ検知されるようになっている。これにより、払い出された遊技球Bの数を確認可能になっている。
【0047】
すなわち、図5(a)〜(d)および図6(a)〜(d)に示すように、回転体38は、ステッピングモータ39が24ステップする間に1/4回転し、その回転の間に遊技球Bを流路21の回転体38より上側から回転体38より下側に流下させられる。
図5(a)に示す一つの凹部40が上を向いた状態が回転体38のホームポジション(原点位置)になる。
【0048】
この際の回転体38の回転角度を0とする。なお、回転体40には、凹部40が4つあることから、回転体40にホームポジションが4つあることになり、一つのホームポジションから回転角度が90度になると次のホームポジションの回転角度として回転角度が再び0度になる。図5及び図6における回転体38のホームポジションからの回転角度は、図5(a)が0度、図5(b)が15度、図5(c)が30度、図5(d)が45度、図6(a)が60度、図6(b)が遊技球Bが凹部40から落下する角度、例えば、ここでは70.2度、図6(c)が75度、図6(d)が90度で次のホームポジションの0度である。
【0049】
また、回転体38のホームポジションになる回転角度は、そのホームポジションに対応する凹部40が略上を向いた状態なら任意に設定することができる。すなわち、ホームポジションは、対応する凹部40に保持された遊技球が落下するぐらい凹部4が斜めになっている状態ではなく、凹部40が略上を向いている状態である。
【0050】
上述のように回転体38の一回転がステッピングモータ39の96ステップに対応するので、1ステップで回転体38が3.75度だけ回転することになる。したがって、回転体38を遊技球Bを一つ払い出す角度である90度回転させるのに必要はステップ数は24ステップになる。
図5、図6においては、ホームポジションから90度までの回転体38の回転を15度ずつの回転角度(図6(b)を除く)、すなわち、ステッピングモータ39の4ステップずつの回転で図示している。
【0051】
また、回転体38は、遊技球Bを凹部40に受けた後に、回転体38の凹部40側の外周面と、流路21の内周面との間で保持しているが、凹部40が遊技球Bを保持していられる回転体38の回転角度は、90度直前(例えば、85度以上など)ではなく、例えば、上述の図6(b)に示す70.2度とされている。
【0052】
すなわち、回転体38が90度回転する度に、遊技球Bが1個払い出されるが、ホームポジションからの回転角度では、70.2度で遊技球Bが払い出される状態になる。この状態で、遊技球Bが回転体38の係合から解除されて落下可能になる。ここで遊技球Bを1個払い出す場合には、遊技球Bを1個落下させたの後も回転体38が回転する。すなわち、ステッピングモータが24ステップになるまで回転体38を回転させることにより、回転体38が、90度回転して、次の凹部40に対応するホームポジションの回転角度になる。
【0053】
言い換えれば、4つのホームポジションからそれぞれ70.2度になる回転角度まで回転するたびに、遊技球Bが払い出されるが、遊技球Bの払出後は、回転体38の回転角度が次のホームポジションに向かうまで回転する。
また、ステッピングモータ39の1ステップで回転体38が3.75度回転することから、ホームポジションから18ステップ回転させることによって回転体38は、67.5度回転し、19ステップ回転させることによって71.25度回転する。すなわち、回転体38を18ステップから19ステップに対応する回転角度回転させた際に、遊技球Bが回転体38から離れて払い出された状態になる。
【0054】
また、連続して複数の遊技球Bを払い出す際は、最初のホームポジションからの回転角度が、90度に払い出すべき遊技球Bの数を乗算した値になる。この回転角度まで回転体38が回転した後に停止することによって設定された予定払出数の遊技球Bが連続的に払い出されることになる。
【0055】
また、遊技球払出装置37の回転体38により、払い出された遊技球は、流路21の遊技球払出装置37より下流の遊技球払出検知センサ23に検知される。図7に示すように、この遊技球払出装置37(回転体38)の遊技球の払出位置と、遊技球払出検知センサ23の遊技球の検知位置との間には、遊技球払出装置37から払い出された後で、かつ、遊技球払出検知センサ23に検知されていない未検知遊技球B(図7で多数の点が描画された遊技球Bの上から2つの遊技球、3つ目の遊技球は遊技球払出検知センサ23に検知された状態)が少なくとも2個配置されるようになっている。
【0056】
したがって、遊技球払出検知センサ23で例えば一つ目に遊技球が検知された場合に、遊技球払出装置37においては、既に3個の遊技球が払い出されている状態になる。また、上述のようにホームポジションからのステップ数が19以上で、遊技球払出装置37から遊技球が払い出された直後の場合は、払い出された直後の遊技球を加えた3個の遊技球が遊技球払出装置37と遊技球払出検知センサ23との間に配置され、これら3つの遊技球が未検知遊技球になる。
【0057】
すなわち、この遊技球払出装置37および遊技球払出検知センサ23においては、遊技球が連続的に払いだされている状態で、上述の未検知遊技球の数が2以上、3以下になる。なお、未検知遊技球数の数は、回転体38による遊技球の払出速度と、回転体38と遊技球払出検知センサ23の間の距離とによって決まるもので、例えば、パチンコ遊技機の各機種の違いや、複数機種で共通で使われる可能性のある遊技盤3を除くパチンコ遊技機の背面側構成の違いによって異なる設定になる可能性がある。また、残数が未検知遊技球の数以下になると、実際の未検知遊技球の数は、例えば、残数と同じになる。
【0058】
なお、この実施形態では、回転体38が24ステップ未満で19ステップ以上になった際に回転体38から落下する遊技球Bとは、別に、回転体38と遊技球払出検知センサ23との間にある遊技球Bを上述の未検知遊技球Bとし、この未検知遊技球Bの数を2に設定している。なお、回転体38から落下直後の遊技球Bを未検知遊技球Bに含まれるものとして、未検知遊技球Bの数が2と3との間で変化するものとしてもよい。
【0059】
次に、遊技球Bの払い出しに関する制御系について図4のブロック図を参照して説明する。
図4に示すように、遊技球払出装置37は、CPU,ROM、RAM等を備えた払出制御装置34により制御されるようになっている。払出制御装置34には、遊技機の主制御装置30が接続されるとともに、球貸信号制御装置43が接続される。また、払出制御装置34には、遊技球払出検知センサ23が接続され、遊技球払出装置37から払い出される遊技球を検知するようになっている。
遊技機の主制御装置30には、例えば、各入賞口にそれぞれ設けられた入賞球検知センサ31が接続されるとともに、パチンコ遊技機におけるエラーを検知するエラー検知センサ32等が接続されている。
入賞球検知センサ31は、各入賞口にそれぞれ設けられ、各入賞口に入賞した遊技球Bを検知するもので、主制御装置30は、各入賞球検知センサ31からの入賞信号に基いて遊技を制御するとともに、入賞信号に基いて賞球としての遊技球Bの払い出しを遊技球払出装置37から行わせるために、払出制御装置34に払い出すべき遊技球Bの数としての予定払出数の情報を含むコマンドを出力する。
払出制御装置34には、プリペイドカード45のデータを読み込で遊技球Bの貸出制御を行うためのCRユニット42が球貸信号制御装置43を介して接続されている。
【0060】
払出制御装置34は、CRユニット42から球貸信号制御装置43を介して入力される球貸信号に基づいて貸球を払出す制御を行うが、この際には、一回の貸球信号が遊技球B25個の払い出しを示すものになっている。これにより払出制御装置34は、貸球信号の入力を記憶するとともに、入力された貸球信号毎に、遊技球払出装置37に予定払出数として25個の遊技球Bを払い出すように制御することになる。
【0061】
ここで、上述のように主制御装置30からの予定払出数を含むコマンドや、球貸信号制御装置43からの25個の予定払出数を示す球貸信号が入力した払出制御装置34は、遊技球払出装置37に対して払出信号を出力するが、この払出信号には、払い出すべき遊技球Bの数を示す予定払出数の情報が含まれている。
この予定払出数の情報は、例えば、予定払出数に上述の回転体38が遊技球Bを1個払い出すのに必要なステッピングモータのステップ数を乗算したものである。
遊技球払出装置37では、このステップ数になる数のパルス電力をステッピングモータに入力する。
【0062】
したがって、ステッピングモータ39は、後述の払出制御装置34からの制御信号に基き、遊技球払出装置37のステッピングモータ39の駆動回路から出力されパルス電力を与えることにより1ステップずつ回転し、これにより回転体38を回転させる。
また、払出制御装置34では、ステップ数を記憶するようになっているが、この際に、回転体のホームポジション毎に区切ってステップ数を記憶する。すなわち、回転体38がホームポジションになる24ステップ毎に区切って記憶するようになっている。また、払出制御装置34からは、例えば、一度の払出動作で1〜25個の遊技球Bを払い出すように制御信号が入力するので、この払出操作開始からのステップ数もカウントして記憶するようになっている。
【0063】
遊技球払出装置37から払い出される遊技球Bには、上述のサンド装置側からの要求による貸球の払い出しと、主制御装置30からの賞球信号に基く、賞球の払い出しとがある。
この場合に、貸球の場合には、一回の遊技球Bの払出数が25に設定されており、貸球の数が25個より多い場合には、25個の払い出しを繰り返し行うようになっている。
【0064】
それに対して賞球の払い出しは、払い出される遊技球Bの数が入賞口の種類によって異なる場合が多く、たとえば、一例としては、入賞口の種類によって、賞球数が3個、7個、12個の3種類になっている場合がある。なお、賞球数は、例えば、1〜15のいずれかから選択される。また、パチンコ遊技機における賞球数の種類は、3種類に限られるものではなく、それ以下でもそれ以上であってもよい。
【0065】
ステッピングモータ39の駆動制御においては、基本的にはフィードバック制御は必要ないが、例えば、島設備側の問題等で、貯留タンク20に遊技球Bが供給されずに、貯留タンク20が空になった場合や、貯留タンク20や流路21で球詰まりが発生した場合などに、遊技球払出装置37まで、遊技球Bが流下しない場合に、ステッピングモータ39が回転しても遊技球Bが払い出されない場合があることから、遊技球払出検知センサ23で払い出される遊技球Bをカウントし、予定払出数に対して払い出された遊技球Bが不足した場合に、不足分を払い出すように、ステッピングモータ39により回転体38を余計に回転させるものになっている。
【0066】
次に、少なくとも払出制御装置34を含む払出制御装置用の基板で電断が発生した場合の処理を説明する。なお、払出制御装置34には、電断に対応する機能として、電断した際に電池等により短時間だけ電力が供給され、電断時のデータ退避処理を行った後に停止するようになっている。
また、払出制御装置34には、電断時を含めて電池等により常時電力が供給されているバッテリバックアップメモリ(BBメモリ:記憶保持手段)が備えられ、データ退避処理では、復帰時に必要になる後述のデータが電断で消えてしまわないように、BBメモリに通常のメモリからデータを退避することになる。
【0067】
次に、図8のフローチャートを参照して、払出制御装置34における電断時のデータ電断退避処理を説明する。
なお、払出制御装置34では、電源から供給される電圧を検知する電圧検知手段を備えており、電圧検知手段が電源からの電圧が所定電圧以下になった場合に払出制御装置34のCPUに信号を出力し、CPUに信号が入力することに基いて払出制御装置34でデータ退避処理が開始される。なお、この際には、払出制御装置34への電力供給の電圧が所定電圧以下になっても、一時的にバックアップ用の電力が払出制御装置34に供給され、払出制御装置34が作動するようになっている。
【0068】
このデータ退避処理では、上述のステッピングモータ39に出力されたパルス電力数としてのステップ数が上述のBBメモリに記憶される(ステップS1)。この際に記憶されるステップ数は、例えば、上述の予定払出数に対応する個数の遊技球Bを連続的に払い出す払出動作が開始されてからのステップ数である。なお、最後にホームポジションになってからのステップ数を記憶するものとしてもよい。また、払出動作が行われていない場合には、ステップ数として0が記憶される。
【0069】
次に、遊技球払出検知センサ23からの信号入力の回数を払出動作開始時から電断までカウントした遊技球払出検知センサ23の検知に基く払出数Nと、上述の予定払出数Mが記憶される(ステップS2)。なお、主制御装置30からのコマンドまたは球貸信号制御装置からの球貸信号に基いて設定された遊技球Bの予定払出数に対応して、払出制御装置34が遊技球払出装置37で遊技球Bの払出動作をさせた場合に、遊技球払出検知センサ23からの信号が入力するたびに、予定払出数から1減算した値を残数として算出して記憶してもよい。なお、残数は、予定払出数Mから払出数Nを減算した値になる。
【0070】
なお、払出制御装置34には、主制御装置30から複数のコマンドが入力したり、球貸信号制御装置43から複数の球貸信号が入力した際に、払出制御装置34で記憶しておくものとした場合には、これらのデータもBBメモリに記憶させる。すなわち、上述のステップ数、予定払出数Mおよび払出数N以外にもバックアップが必要なデータを記憶する。
データのバックアップが終了した際に払出制御装置34を停止して電断退避処理を終了する。
【0071】
次に、図9に示すフローチャートを参照して、払出制御装置34における電断から復帰した際の電断復帰処理を説明する。
電断時に上述の電断退避処理が行われた後に、電断から復帰した場合に、電断復帰処理が行われる。電断復帰時に、上述の電断退避処理が遊技球払出装置37による払出動作中(すなわち、払出制御装置34による払出処理中)であったか否かが判定される(ステップS11)。
【0072】
払出処理中でない場合には、遊技球の上述の残数を設定する処理以外の電断復帰処理を行う。電断が払出処理中に行われた場合は、上述のBBメモリに記憶されたステップ数が例えば、払出動作開始時からの場合は、基本的に1以上になっている(払出動作開始後に1になる)。この場合には、ステップ数を回転体38が遊技球を一個払い出す際のステップ数24で除算して余りを求める。
【0073】
この余りは、回転体38の電断で中断した回転の際に最後に至ったホームポジションからのステップ数になり、電断退避処理において、上述のようにどちらのステップ数を記憶していてもよい。また、このホームポジションからのステップ数を求める際に、ホームポジションになるたびにステップ数を0からカウント開始するものとしてもよいし、払出動作開始時にステップ数をカウント開始し、電断ににななる際にカウントされたステップ数を上述の24ステップで除算して余りを求めるものとしてもよい。そして、回転体38が電断の前の最後に至ったホームポジションからのステップ数が上述のように回転体38から遊技球が落下した後のステップ数としての19〜24ステップになっているか否かが判定される(ステップS12)。
【0074】
ステップ数が19以上(19〜24)ならば、残数決定手段としての払出制御装置34が上述の予定払出数M−払出数Nである残数から1減算する(ステップS13)。これにより、電断時に回転体38から払い出された直後の遊技球が遊技球払出検知センサ23に検知されないことにより、電断時に記憶されている残数が実際より1多くなっているのを修正することができる。
【0075】
次に、M−Nで表される残数が2以上か否かを判定する(ステップS14)。残数が2以上、すなわち、例えば、予定払出数25とした場合に、遊技球払出検知センサ23で検知された払出数が23以下の場合に、残数が2以上になる。この場合に、遊技球払出検知センサ23で遊技球Bを検知した際に、その遊技球Bの上側に遊技球払出装置37から既に払い出された遊技球Bが例えば2つあることになる。なお、この際に、上述のステップ19〜24で払い出された直後の遊技球Bは除く。これら二つの遊技球は、この段階で電断が発生した場合に、遊技球払出検知センサ23に検知されず、非検知遊技球になり、非検知遊技球数が2になる。したがって、残数が2以上の段階で、電断した場合に、遊技球払出検知センサ23で遊技球Bを検知した回数に基く残数は、実際の残数より2つ多くなっている。
【0076】
そこで、残数が2以上の場合に、残数から非検知遊技球数である2を減算する(ステップS15)。この場合に残数が2の場合には、予定払出数になる遊技球が全て遊技球払出装置37から払い出された状態になり、実際の残数は、0になる。したがって、残数が2より小さい場合(2以下の場合も)には、全て残数が0になる。すなわち、残数が非検知遊技球数より小さい場合(または、以下の場合)には、残数を0とする(ステップS16)。
【0077】
なお、基本的には、遊技球の払出数は、ステッピングモータ39で回転する回転体38の回転角度を示すステップ数により制御されており、払出開始からのステップ数で実際に払い出された遊技球数を算出することが可能である。すなわち、予定払出数になる遊技球の払出動作における払出開始時からのステップ数を、遊技球が1個払い出される回転角度(90度)だけ回転体38を回転させるステップ数(24)で除算することにより、払い出される遊技球の数としての払出数を算出することができる。また、この算出された払出数を予定払出数から減算することによって残数を求めることができる。なお、残数は、予定払出数からステップ数が24増加するたびに1減算していくことによって常時求めることができる。
【0078】
このステップ数に基づく払出数および残数を上述の遊技球払出検知センサ23における検知信号に基く払出数および残数に代えることによって上述の遊技球払出装置37と遊技球払出検知センサ23との間の距離に基づく、電断時の払出数および残数の誤差を解消することができる。
【0079】
なお、この場合に、予定払出数になる遊技球の払出動作の開始時からのステッピングモータ39のステップ数をカウントし、電断時にこのカウントされたステップ数をBBメモリに記憶する。電断復帰時に上述の記憶されたステップ数を例えば遊技球が一個払い出されるステップ数で除算し、商を払出数とする。この際に、余りがある場合に、余りのステップ数が回転体38から遊技球がリリースされる直前のステップ数より一つ大きなステップ数(リリース直後のステップ数)以上の場合に、払出数を1増加する。なお、予定払出数から払出数を減算した残数を既に求めている場合には、残数から上述のように1減算する。これにより、上述の非検知遊技球による残数の誤差を回避できる。
【0080】
以上のようなパチンコ遊技機においては、電断からの復帰後に遊技球払出検知センサ23からの検知信号のカウントに基く残数分だけ遊技球が払い出されることにより、予定払出数より多い遊技球を払い出してしまうことがないので、例えば、払出制御装置34に不正な回路基板を接続され、払出制御装置34において、遊技球の払出中に電断と復帰を繰り返させることにより、復帰時に余分に払い出される遊技球を繰り返し不正に得ることを防止することができる。
【0081】
なお、これらの処理は、球詰まりなどにより遊技球払出装置37から遊技球が払い出されないような場合、例えば、電断復帰後に遊技球払出装置37で払出動作がなされたにもかかわらず、遊技球払出検知センサ23で遊技球が払い出されない場合には、エラーとするとともに、エラー解除操作後に、残数を電断前の状態に戻して、残数分の払出を行うものとしてもよい。
また、電断時に上述のMとNを記憶し、復帰時にM−Nから残数を求めても良いし、電断時にM−Nから残数を求め残数を記憶しても良いし、上述のように遊技球払出検知センサ23からの検知信号に基いて、予定払出数を1ずつ減算することによって残数を求めて記憶してもよい。
【0082】
また、ステップ数を記憶する場合にも、電断時に払出動作開始時からのステップ数を記憶し、復帰時に当該ステップ数を一個の遊技球の払出時に必要なステップ数(24)で除算し、商になるステップ数と余りになるステップ数を求めても良いし、電断時に前述の商になるステップ数と余りになるステップ数を記憶してもよい。
すなわち、電断時でも復帰時でも算出が可能な値は、電断時に算出するものとしても、復帰時に算出するものとしてもよい。
【0083】
以上、本発明者によってなされた発明を適用した実施の形態について説明したが、この実施の形態による本発明の開示の一部をなす論述および図面により本発明は限定されることはない。すなわち、この実施の形態に基づいて当業者等によりなされる他の実施の形態、実施例および運用技術等は全て本発明の範疇に含まれることは勿論であることを付け加えておく。
【符号の説明】
【0084】
B 遊技球
21 流路
23 遊技球払出検知センサ(遊技球払出検知手段)
34 払出制御装置(払出制御手段、残数算出記憶手段、記憶保持手段、残数決定手段、残数変更手段)
37 遊技球払出装置(遊技球払出手段)
38 回転体
39 ステッピングモータ(回転駆動手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊技球を払い出す遊技球払出手段と、
一回の払出動作で連続的に払い出すべき遊技球の数としての予定払出数が入力されることに基き、前記予定払出数分の遊技球を払い出すように前記遊技球払出手段を制御する払出制御手段と、
前記遊技球払出手段から払い出される遊技球を順次カウントするために、前記遊技球払出手段から払い出される遊技球を検知する遊技球払出検知手段と、
前記予定払出数に対応して前記遊技球払出手段による遊技球の払出動作が開始されてから前記遊技球払出検知手段で遊技球が検知される毎に前記予定払出数の値から順次1ずつ減算するとともに、減算される値を残数として更新記憶する残数算出記憶手段とを備え、
前記遊技球払出手段は、払い出される遊技球を貯留する貯留タンクから遊技球を一列に連続的に流下させる流路と、
当該流路の前記遊技球払出検知手段より上流に設けられ、回転停止時に当該流路における遊技球の流下を止めるとともに、一回転の所定数分の一になる所定回転角度だけ回転する度に、前記流路の遊技球を一つずつ下方に流下させる回転体と、
前記払出動作中の前記回転体の回転角度を特定可能で、前記回転体を、前記所定回転角度に前記予定払出数を乗算した乗算回転角度だけ回転させるとともに前記払出動作開始時からの前記回転体の回転角度が前記乗算回転角度になる際に前記回転体の回転を停止する回転駆動手段とを備え、
前記払出制御手段は、電断状態でも記憶を保持可能な記憶保持手段を備え、
かつ、前記払出動作中に電断になる場合に、この電断時に前記残数算出記憶手段に記憶されている前記残数を前記記憶保持手段に記憶するとともに、電断からの復帰時に前記記憶保持手段に記憶されている残数分の遊技球を払い出すように前記遊技球払出手段を制御する遊技機において、
前記払出制御手段は、前記払出動作中に電断になる場合に、電断により前記回転駆動手段による回転が停止する前記回転体の前記払出動作開始時からの回転角度を前記所定回転角度で除算した場合の余りに対応する途中回転角度を求め、この途中回転角度が、前記所定回転角度内の前記回転体の回転角度で、かつ、遊技球が前記回転体に保持された状態から解放されて落下する回転角度としての遊技球落下回転角度以下の場合に、前記残数を変更することなく維持し、前記途中回転角度が前記遊技球落下回転角度以上の場合に、前記残数を当該残数から1減算した値に変更する残数決定手段を備えることを特徴とする遊技機。
【請求項2】
前記遊技球払出検知手段の遊技球を検知する位置と、前記遊技球払出手段の前記回転体が遊技球を落下させる位置との間に、前記回転体により連続的に払い出されて流下するとともに、未だに払出遊技球検知手段で検知されていない遊技球である未検知遊技球が1以上の未検知遊技球数だけ並ぶことが可能な間隔が設けられ、
前記払出動作中に電断になる場合に、前記払出制御手段は、前記残数が前記未検知遊技球数以上であれば、前記残数決定手段により決定されている前記残数を当該残数から前記未検知遊技球数を減算した値に変更し、
前記残数が前記未検知遊技球数より少なければ、前記残数決定手段により決定されている前記残数を0に変更する残数変更手段を備えることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。
【請求項3】
前記払出制御手段は、前記払出動作中に電断する場合に、電断により前記回転駆動手段による回転が停止した前記回転体の前記払出動作開始時からの回転角度を前記所定回転角度で除算した値を所定角度回転数とし、
電断時の前記払出動作における前記予定払出数から前記所定角度回転数を減算した値を前記残数に代えて残数とすることを特徴とする請求項1に記載の遊技機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−13632(P2013−13632A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−149593(P2011−149593)
【出願日】平成23年7月5日(2011.7.5)
【出願人】(000154679)株式会社平和 (1,976)
【Fターム(参考)】