遊星歯車装置
【課題】部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れた遊星歯車装置を提供する
【解決手段】内歯車10と太陽歯車20に噛合する4個の遊星歯車30は2個1組とし、それぞれの組の2個の遊星歯車は、キャリヤ50にて太陽歯車20を挟んで相対向して配置する。また、一方の組みの2個の遊星歯車30は、他方の組みの2個の遊星歯車30に対して90度の間隔で配置されている。弾性リング60は、4個の遊星歯車30のシャフト33同士を、太陽歯車20を中心に周方向に一体連結して、太陽歯車20を挟んで相対向する遊星歯車30の一方の組みのシャフト33同士を、内歯車10の方向に弾性力を付与し、太陽歯車を挟んで相対向する遊星歯車30の他方の組みのシャフト33同士を、太陽歯車20の方向に弾性力を付与する。
【解決手段】内歯車10と太陽歯車20に噛合する4個の遊星歯車30は2個1組とし、それぞれの組の2個の遊星歯車は、キャリヤ50にて太陽歯車20を挟んで相対向して配置する。また、一方の組みの2個の遊星歯車30は、他方の組みの2個の遊星歯車30に対して90度の間隔で配置されている。弾性リング60は、4個の遊星歯車30のシャフト33同士を、太陽歯車20を中心に周方向に一体連結して、太陽歯車20を挟んで相対向する遊星歯車30の一方の組みのシャフト33同士を、内歯車10の方向に弾性力を付与し、太陽歯車を挟んで相対向する遊星歯車30の他方の組みのシャフト33同士を、太陽歯車20の方向に弾性力を付与する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置は、入力軸と出力軸とが同軸線上に配置でき、大きな減速比が取得でき、しかも、大きなトルク伝達ができることから、広い分野で利用されている。ところで、複数個設けられた遊星歯車は、太陽歯車と内歯車に噛み合って自転しながら公転する構造上、ギア歯及び軸の精度限界からバックラッシュを大きめに取る等、音に対して不利な構造となっていることから、打音を抑える工夫が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、内歯車を2つに分割しその分割した2つの分割歯車を引張コイルスプリングで連結し、そのコイルスプリングの弾性力にて、2つの分割歯車を互いに引っ張り合うようにさせる。そして、2つの分割歯車が引張コイルスプリングの弾性力にて、内歯車と遊星歯車との噛み合い及び遊星歯車と太陽歯車との噛み合いにおいて、各歯面の接触面圧を一定に維持させ、噛み合い打音を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記遊星歯車装置の打音防止構造は、各歯車を分割しなければならず、部品数が増え構造がより複雑となり組み付けに非常に手間を要していた。
また、分割歯車を互いに引っ張り合うようにしているため、内歯車と遊星歯車との噛み合いは、各歯面の接触面圧を一定に維持させるのに十分であるが、遊星歯車と太陽歯車との噛み合いにおいては、各歯面の接触面圧を一定に維持させるには十分でなかった。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであって、その目的は、部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れた遊星歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、遊星歯車装置であって、2個のキャリヤに周方向で等間隔に連結支持された4個の遊星歯車を2個1組みとし、それぞれの組みの2個の遊星歯車を太陽歯車を挟んで相対向して配置するとともに、一方の組みの2個の遊星歯車を、他方の組みの2個の遊星歯車に対して、90度の間隔で配置し、前記4個の遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心に周方向に一体連結するとともに、前記太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の前記遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び前記太陽歯車のいずれか一方に、且つ前記太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸同士を、前記内歯車及び前記太陽歯車のいずれか他方にそれぞれ弾性力を付与するように弾性リングを設けた。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、弾性リングは、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の前記遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び前記太陽歯車のいずれか一方に、且つ、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び太陽歯車のいずれか他方にそれぞれ弾性力を付与する。従って、太陽歯車を挟んで相対向する遊星歯車は、それぞれ内歯車の内歯及び太陽歯車の外歯に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられ、バックラッシュによる遊星歯車の複数の同時噛合いに起因する打音もなく静かに回転する。その結果、遊星歯車装置は、部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れたものとなる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、楕円形の弾性リングであって、その長径と短径とが交差する交点を挟んで長径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、前記交点を挟んで短径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結した。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、弾性リングが弾性変形された状態から楕円形状に復元しようとすることから、弾性リングの第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、内歯車の方向に弾性力が付与され、弾性リングの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は太陽歯車の方向に弾性力が付与される。そして、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく内歯車の内歯に押して付けられた状態となり、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく太陽歯車の外歯に押して付けられた状態となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、真円形の弾性リングであって、その弾性リングの中心点を通過する第1線上であって、中心点を挟んで等しい第1距離にある弾性リングの2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、前記弾性リングの中心点を通過するとともに前記第1線と直交する第2線上であって、中心点を挟んで等しく且つ前記第1距離より短い第2距離にある弾性リングの2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結した。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、弾性リングが弾性変形された状態から円形状に復元しようとすることから、弾性リングの第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、内歯車の方向に弾性力が付与され、弾性リングの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は太陽歯車の方向に弾性力が付与される。そして、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく内歯車の内歯に押して付けられた状態となり、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく太陽歯車の外歯に押して付けられた状態となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸の一側軸部同士を連結支持する一側キャリヤと反対側の他側キャリアに配置されるとともに、4個の前記遊星歯車の支持軸の他側軸部同士をそれぞれ弾性変形させて連結した。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、一側キャリヤを支点とする内歯車の方向に弾性力が付与される。また、弾性リングの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、一側キャリヤを支点とする太陽歯車の方向に弾性力が付与される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心軸線に周方向に一体連結する2個のキャリヤで構成した。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、キャリヤが弾性変形された状態から元の状態に復元しようとすることから、キャリヤの第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、内歯車の方向に弾性力が付与され、キャリヤの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は太陽歯車の方向に弾性力が付与される。そして、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく内歯車の内歯に押して付けられた状態となり、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく太陽歯車の外歯に押して付けられた状態となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れた遊星歯車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の遊星歯車装置の全体斜視図。
【図2】第1実施形態の遊星歯車装置の分解斜視図。
【図3】第1実施形態の一側キャリヤに遊星歯車が取着された状態を示す正面図。
【図4】第1実施形態の他側キャリヤに遊星歯車が取着された状態を示す正面図。
【図5】第1実施形態の他側キャリヤの正面図。
【図6】第1実施形態の他側キャリヤに形成した軸受長穴の説明するための説明図。
【図7】第1実施形態の外力を加えていない状態での弾性リングの正面図。
【図8】第1実施形態の調芯作用が働いている状態での弾性リングの正面図。
【図9】第2実施形態の外力を加えていない状態での弾性リングの正面図。
【図10】第2実施形態の調芯作用が働いている状態での弾性リングの正面図。
【図11】第3実施形態の遊星歯車装置の分解斜視図。
【図12】第3実施形態の外力を加えていない状態での一側キャリヤの正面図。
【図13】第3実施形態の調芯作用が働いている状態での一側キャリヤの正面図。
【図14】第3実施形態の外力を加えていない状態での他側キャリヤの正面図。
【図15】第3実施形態の調芯作用が働いている状態での他側キャリヤの正面図。
【図16】一側キャリヤの別例を説明するための要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の遊星歯車装置の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1、図2において、遊星歯車装置1は、その円筒状のギアケース2内に、内歯車10、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50、弾性リング60を備えている。
(内歯車10)
内歯車10は、合成樹脂製であって、円筒状に形成され、その内周面に内歯11が形成されている。内歯車10は、円筒状に形成された合成樹脂製のギアケース2に対して、その外周面が同ギアケース2の内周面に対して摺動可能に配設されている。内歯車10の中心軸線はギアケース2、即ち、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致し、内歯車10はその中心軸線C1を中心にギアケース2内を回転可能に収容されている。
(太陽歯車20)
太陽歯車20は、外周面に外歯21を形成した合成樹脂製の平歯車であって、内歯車10の中心位置に配設されている。詳述すると、太陽歯車20は、その回転軸22の中心軸線が、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するように回転可能に配置されている。
(遊星歯車30)
4個の遊星歯車30は、外周面に外歯31を形成した合成樹脂製の平歯車であって、内歯車10と太陽歯車20の間にそれぞれ配置される。そして、各遊星歯車30は、その外歯31が内歯車10の内歯11と太陽歯車20の外歯21と噛合するようになっている。
【0020】
4個の遊星歯車30は、2個1組とし、それぞれその組の2個の遊星歯車30が太陽歯車20を挟んで相対向して配置されている(図3、図4参照)。そして、一方の組みの2個の遊星歯車30は、他方の組みの2個の遊星歯車30に対して、90度の間隔で配置されている。
【0021】
4個の遊星歯車30は、その中心位置に金属製のシャフト33が貫通されていて、シャフト33に対してラジアル方向に回転可能かつスラスト方向に移動不能に支持されている。従って、シャフト33の中心軸線は、遊星歯車30の中心軸線と一致するようになっている。
【0022】
なお、遊星歯車30を貫通支持するシャフト33について、遊星歯車30の一側面側(一側キャリヤ40側)から突出した軸部を一側軸部33aといい、その他側面側(他側キャリヤ50側)から突出した軸部を他側軸部33bという。
【0023】
また、一方の組みの2個の遊星歯車30と他方の組みの2個の遊星歯車30を、特に区別して説明するときには、説明の便宜上、一方の組みの2個の遊星歯車30の符号を「30A」と他方の組みの2個の遊星歯車30の符号を「30B」として表現する。
(一側キャリヤ40)
各遊星歯車30の一側から突出したシャフト33の一側軸部33aは、図3に示すように、環状の合成樹脂製よりなる一側キャリヤ40に形成した軸受穴41にそれぞれ貫通支持されている。一側キャリヤ40に形成した各軸受穴41は、断面円形であって、一側軸部33aに対して回転可能に支持連結している。従って、一側キャリヤ40は、各遊星歯車30を、一側軸部33aの中心軸線(遊星歯車30の中心軸線)を中心に、回転可能に支持している。
【0024】
しかも、一側キャリヤ40は、各シャフト33の一側軸部33a(各遊星歯車30)を、太陽歯車20の中心軸線を中心としてその周方向において互いに90°の等間隔に保持している。
(他側キャリヤ50)
各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bは、図4に示すように、環状の合成樹脂製よりなる他側キャリヤ50に形成した軸受長穴51にそれぞれ貫通支持されている。
【0025】
他側キャリヤ50に形成した各軸受長穴51は、図5、図6に示すように、遊星歯車装置1の中心軸線C1を中心とし、その径方向に長い長穴であって、その幅狭の間隔がシャフト33の直径と一致させ、その幅広の間隔がシャフト33の直径より長く形成されている。
【0026】
従って、他側キャリヤ50は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを、軸受長穴51内で回転可能に支持するとともに、軸受長穴51に沿ってその径方向に偏倚させることができるようになっている。しかも、他側キャリヤ50は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを、遊星歯車装置1の中心軸線C1を中心としてその周方向において互いに90°の等間隔に保持している。
(弾性リング60)
他側キャリヤ50に形成した各軸受長穴51から突出した各シャフト33の他側軸部33bは、弾性リング60に形成した第1軸受穴61及び第2軸受穴62のいずれかに貫通支持されている。弾性リング60に形成した第1軸受穴61及び第2軸受穴62は、断面円形であって、他側軸部33bを回転可能に支持連結している。
【0027】
弾性リング60は、合成樹脂で形成されている。そして、弾性リング60は、図7に示すように、外力を加えない状態では外形が楕円形状をなし、その長径と短径とが交差する交点P1を直交する中心軸線が、各他側軸部33bを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。ここで、弾性リング60の幅方向(交点P1を中心に径方向)の中心位置を通る線を環状線Lzという。
【0028】
楕円形状の弾性リング60は、環状線Lzと交差する長径線L1上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した他側軸部33bを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、弾性リング60は、環状線Lzと交差する短径線L2上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した他側軸部33bを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0029】
従って、第1軸受穴61と第2軸受穴62は、交点P1までの距離が相違する。即ち、長径線L1上に位置する第1軸受穴61の交点P1までの距離D1は、短径線L2上に位置する第2軸受穴62の交点P1までの距離D2より長くなる。本実施形態では、距離D1と距離D2の平均値(=(D1+D2)/2)が、太陽歯車20の中心軸線(遊星歯車装置1の中心軸線C1)から各遊星歯車30の中心軸線までの距離D0(図4参照)と一致させているが、D0,D1,D2の関係は、D1>D0、D2<D0を満足する距離関係であれば良い。
【0030】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング60の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング60の第2軸受穴62を貫通させる。
【0031】
この時、弾性リング60の第1軸受穴61は、交点P1までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、交点P1から離間する方向に弾性力が付与される。
【0032】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心軸線C1から離間する方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Aであって、内歯車10の内歯11と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。
【0033】
一方、弾性リング60の第2軸受穴62は、交点P1までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しようとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、交点P1に近づく方向に弾性力が付与される。
【0034】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心軸線C1に近づく方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Bであって、太陽歯車20の外歯21と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0035】
つまり、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。また、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0036】
しかも、4個の遊星歯車30は、1つの楕円形状の弾性リング60にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態となる。
【0037】
ここで、例えば、一側キャリヤ40を入力軸とし、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として、遊星歯車装置1を使用した場合、太陽歯車20の回転軸22は、一側キャリヤ40の入力軸と同方向に回転すると共に増速して回転する。
【0038】
このとき、回転開始時は、4個の遊星歯車30は、1つの楕円形状の弾性リング60にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく、静かに回転する。
【0039】
また、一側及び他側キャリヤ40,50(弾性リング60)は、4個の遊星歯車30を2個1組とし、それぞれその組の2個の遊星歯車30が中心軸線C1を挟んで相対向して連結支持するとともに、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、他方の組みの2個の遊星歯車30Bに対して、90度の間隔で配置した。
【0040】
従って、一側キャリヤ40の定常回転トルクが大きくなると、歯車の噛み合い作用が勝って調芯作用が働き、弾性リング60による遊星歯車30のシャフト33の傾きがなくなり、通常の遊星歯車と同じ軸回転となる。その結果、弾性リング60は、楕円形状から図8に示す円形となり、一側及び他側キャリヤ40,50(弾性リング60)がバランスよく保持され静音性能をより向上させる。
【0041】
なお、ここでは、一側キャリヤ40を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として、遊星歯車装置1を使用したが、一側キャリヤ40を出力軸、太陽歯車20の回転軸22を入力軸としたり、内歯車10を入力軸、一側キャリヤ40を出力軸としたり、また、一側キャリヤ40を入力軸、内歯車10を出力軸としたりして使用してもよい。さらに、内歯車10を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸としたり、太陽歯車20の回転軸22を入力軸、内歯車10を出力軸としたりして使用してもよい。
【0042】
次に、上記のように構成した遊星歯車装置1の効果について説明する。
(1)本実施形態によれば、回転開始時において、4個の遊星歯車30をそれぞれ内歯車10の内歯11及び太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく静かに回転させることができる。
(2)本実施形態によれば、4個の遊星歯車30をそれぞれ内歯車10の内歯11及び太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付ける部材を、1つの楕円形状の弾性リング60にて行った。
【0043】
従って、構造、組み付けが簡便となり、コストダウンが図ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の遊星歯車装置の第2実施形態を図面に従って説明する。
【0044】
本実施形態は、4個の遊星歯車30をそれぞれ内歯車10の内歯11及び太陽歯車20の外歯21に対して押して付ける部材に特徴を有し、第1実施形態の弾性リング60と相違する。
【0045】
そのため、本実施形態では、説明の便宜上、第1実施形態と相違する点について詳細に説明し、第1実施形態と共通の部分については符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。
【0046】
図9は、本実施形態の弾性リング70を示し、第1実施形態の弾性リング60と同様に、他側キャリヤ50に形成した各軸受長穴51から突出した各シャフト33の他側軸部33bを貫通支持する。
【0047】
弾性リング70は、合成樹脂で形成されている。弾性リング70は、図9に示すように、外力を加えない状態では外形が真円形状をなし、中心点P2が、各他側軸部33bを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。
【0048】
弾性リング70は、中心点P2を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した他側軸部33bを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、弾性リング70は、中心点P2を挟んで相対向する2位置であって第1軸受穴61に対して中心点P2を中心として90°の間隔位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した他側軸部33bを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0049】
そして、第1軸受穴61と第2軸受穴62は、中心点P2までの距離を相違させている。つまり、第1軸受穴61は弾性リング70の外側面寄りに、第2軸受穴62は弾性リング70の内側面寄りに偏倚させて形成させ、第1実施形態と同様に、第1軸受穴61の中心軸線までの距離D1が、第2軸受穴62の中心点P2までの距離D2より長くなるようにしている。
【0050】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング70の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング70の第2軸受穴62を貫通させる。
【0051】
この時、弾性リング70の第1軸受穴61は、中心点P2までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、中心点P2から離間する方向に弾性力が付与される。
【0052】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心点P2から離間する方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Aであって、内歯車10の内歯11と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。
【0053】
一方、弾性リング70の第2軸受穴62は、中心点P2までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しとうとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、中心点P2に近づく方向に弾性力が付与される。
【0054】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心点P2に近づく方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Bであって、太陽歯車20の外歯21と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0055】
従って、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。また、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0056】
しかも、4個の遊星歯車30は、1つの弾性リング70にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態となる。従って、第1実施形態と同様に、部品点数の削減、構造及び組み付けが簡便にすることができる。
【0057】
そして、例えば、一側キャリヤ40を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として回転させたとき、回転開始時は、4個の遊星歯車30は、1つの形状の弾性リング70にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく、静かに回転する。
【0058】
そして、一側キャリヤ40の定常回転トルクが大きくなると、歯車の噛み合い作用が勝って調芯作用が働き、弾性リング60による遊星歯車30のシャフト33の傾きがなくなり、通常の遊星歯車と同じ軸回転となる。その結果、距離D1と距離D2がほぼ等しくなり、弾性リング70は、円形状から図10に示す楕円形状となって、一側及び他側キャリヤ40,50(弾性リング60)がバランスよく保持され静音性能をより向上させる。
【0059】
このように、本実施形態の円形の弾性リング70であって、第1軸受穴61と第2軸受穴62の中心軸線までの距離D1,D2をそれぞれ相違させることによって、第1実施形態と同様な効果を有する。
(第3実施形態)
次に、本発明の遊星歯車装置の第3実施形態を図11〜図15に従って説明する。
【0060】
本実施形態は、第1及び第2実施形態の弾性リング60,70を省略し、これら弾性リング60,70の機能を一側及び他側キャリヤに設けた点に特徴を有する。
そのため、本実施形態では、説明の便宜上、相違する点について詳細に説明し、第1及び第2実施形態と共通の部分については符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。
【0061】
図11は本実施形態の遊星歯車装置1を示し、図12は、各遊星歯車30の一側から突出したシャフト33の一側軸部33aを貫通支持する一側キャリヤ80を示し、図14は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを貫通支持する他側キャリヤ90を示す。
【0062】
一側キャリヤ80は、合成樹脂で形成されている。そして、一側キャリヤ80は、外力を加えない状態では外形が楕円形状をなし、その長径と短径とが交差する交点P1が、各一側軸部33aを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。ここで、一側キャリヤ80の幅方向(交点P1を中心に径方向)の中心位置を通る線を環状線Lzという。
【0063】
楕円形状の一側キャリヤ80は、環状線Lzと交差する長径線L1上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した一側軸部33aを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、一側キャリヤ80は、環状線Lzと交差する短径線L2上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した一側軸部33aを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0064】
つまり、第1軸受穴61と第2軸受穴62を、第1実施形態と同様に、交点P1までの距離を相違させ、長径線L1上に位置する第1軸受穴61の交点P1までの距離D1を、短径線L2上に位置する第2軸受穴62の交点P1までの距離D2より長くしている。
【0065】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の一側軸部33aに対して、それぞれ一側キャリヤ80の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の一側軸部33aに対して、それぞれ一側キャリヤ80の第2軸受穴62を貫通させる。
【0066】
この時、一側キャリヤ80の第1軸受穴61は、交点P1までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の一側軸部33aは、中心軸線C1から離間する方向に弾性力が付与される。
【0067】
一方、一側キャリヤ80の第2軸受穴62は、交点P1までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しようとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の一側軸部33aは、中心軸線C1に近づく方向に弾性力が付与される。
【0068】
図14は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを貫通支持する他側キャリヤ90を示す。
他側キャリヤ90は、合成樹脂で形成されている。そして、他側キャリヤ90は、外力を加えない状態では外形が一側キャリヤ80と同一形状の楕円形状をなし、その長径と短径とが交差する交点P1が、各他側軸部33bを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。ここで、他側キャリヤ90の幅方向(交点P1を中心に径方向)の中心位置を通る線を環状線Lzという。
【0069】
楕円形状の他側キャリヤ90は、環状線Lzと交差する長径線L1上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した他側軸部33bを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、他側キャリヤ90は、環状線Lzと交差する短径線L2上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した他側軸部33bを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0070】
つまり、第1軸受穴61と第2軸受穴62を、一側キャリヤ80と同様に、交点P1までの距離を相違させ、長径線L1上に位置する第1軸受穴61の交点P1までの距離D1を、短径線L2上に位置する第2軸受穴62の交点P1までの距離D2より長くしている。
【0071】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ他側キャリヤ90の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ他側キャリヤ90の第2軸受穴62を貫通させる。
【0072】
この時、他側キャリヤ90の第1軸受穴61は、交点P1までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、中心軸線C1から離間する方向に弾性力が付与される。
【0073】
一方、他側キャリヤ90の第2軸受穴62は、交点P1までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しようとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の一側軸部33aは、中心軸線C1に近づく方向に弾性力が付与される。
【0074】
従って、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、一側及び他側キャリヤ80,90がシャフト33の一側及び他側軸部33a,33bを同時に交点P1から離間する方向に弾性力を付与し復元させることによって、ガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。
【0075】
また、遊星歯車装置1が静止状態において、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、一側及び他側キャリヤ80,90がシャフト33の一側及び他側軸部33a,33bを同時に交点P1に近づく方向に弾性力を付与し復元させることによって、ガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0076】
つまり、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、その外歯31の内歯車10側全体がガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。また、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、その外歯31の太陽歯車20側全体がガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0077】
しかも、4個の遊星歯車30は、既存の一側キャリヤ80と他側キャリヤ90にて、それぞれ対応する内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態となる。従って、第1及び第2実施形態のように、弾性リング60,70が不要となり、部品点数の削減、構造及び組み付けが簡便にすることができる。しかも、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90は、同一形状なので、互いに共用でき部品管理も容易となる。
【0078】
ここで、例えば、遊星歯車装置1を、内歯車10を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として使用した場合、太陽歯車20の回転軸22は、内歯車10の入力軸と逆方向に、増速して回転する。
【0079】
このとき、回転開始時は、4個の遊星歯車30は、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90にて、それぞれ対応する内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく、静かに回転する。
【0080】
そして、一側及び他側キャリヤ80,90の定常回転トルクが大きくなると、歯車の噛み合い作用が勝って調芯作用が働き、一側及び他側キャリア80,90による遊星歯車30のシャフト33の傾きがなくなり、通常の遊星歯車と同じ軸回転となる。その結果、一側及び他側キャリヤ80,90は、楕円形状からそれぞれ、図13、図15に示す円形となり、一側及び他側キャリヤ80,90がバランスよく保持され静音性能をより向上させる。
【0081】
なお、ここでは、遊星歯車装置1を、内歯車10を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として使用した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、内歯車10を出力軸、太陽歯車20の回転軸22を入力軸として使用した。
【0082】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、各遊星歯車30の一側から突出したシャフト33の一側軸部33aを貫通支持する一側キャリヤ40に形成した軸受穴41の形状を、図16に示すように、遊星歯車30に向かうほどその内径が拡開するように形成してもよい。
【0083】
これによって、シャフト33が弾性リング60にて軸受穴41を支点として、回動するとき、シャフト33の回動を容易にすることができる。
・上記第3実施形態では、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90の両方に、弾性リング60の機能を持たせたが、いずれか一方に弾性リング60の機能を持たせて実施させてもよい。
【0084】
・上記第3実施形態では、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90の形状を、第1実施形態の楕円形状の弾性リング60と同じにしたが、第2実施形態の円形状の弾性リング70と同じにして実施してもよく、一側キャリア80と他側キャリア90の周方向の位置を互いに90度ずらして配置してもよい。
【0085】
・上記第1実施形態では、円筒状のギアケース2内に、内歯車10、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50を配置した遊星歯車装置1に具体化したが、ギアケース2を省略してもよい。例えば、内歯車10内に、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50を配置した遊星歯車装置1に具体化してもよい。
【0086】
・上記第1実施形態では、遊星歯車30は、シャフト33に対してラジアル方向に回転可能かつスラスト方向に移動不能に支持されるようにしたが、シャフト33に対してラジアル方向に回転不能可能に固着するようにしてもよい。この場合、シャフト33を遊星歯車30と同じ合成樹脂で一体的に成形することができる。
【0087】
また、この場合、シャフト33は、一側及び他側キャリヤ40,50に対して回転可能に支持される必要がある。
・上記第1〜第3実施形態では、内歯車10、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50,80,90、弾性リング60,70を合成樹脂で成形したが、ゴム、アルミ、ステレス、鉄等の金属で成型してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…遊星歯車装置、2…ギアケース、10…内歯車、11…内歯、20…太陽歯車、21…外歯、22…回転軸、30,30A,30B…遊星歯車、31…外歯、33…シャフト、33a…一側軸部(支持軸)、33b…他側軸部(支持軸)、40,80…一側キャリヤ、41…軸受穴、50,90…他側キャリヤ、51…軸受長穴、60,70…弾性リング、61…第1軸受穴、62…第2軸受穴、C1…中心軸線、L1…長径線、L2…短径線、P1…交点、P2…中心点。
【技術分野】
【0001】
本発明は、遊星歯車装置に関する。
【背景技術】
【0002】
遊星歯車装置は、入力軸と出力軸とが同軸線上に配置でき、大きな減速比が取得でき、しかも、大きなトルク伝達ができることから、広い分野で利用されている。ところで、複数個設けられた遊星歯車は、太陽歯車と内歯車に噛み合って自転しながら公転する構造上、ギア歯及び軸の精度限界からバックラッシュを大きめに取る等、音に対して不利な構造となっていることから、打音を抑える工夫が種々提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1では、内歯車を2つに分割しその分割した2つの分割歯車を引張コイルスプリングで連結し、そのコイルスプリングの弾性力にて、2つの分割歯車を互いに引っ張り合うようにさせる。そして、2つの分割歯車が引張コイルスプリングの弾性力にて、内歯車と遊星歯車との噛み合い及び遊星歯車と太陽歯車との噛み合いにおいて、各歯面の接触面圧を一定に維持させ、噛み合い打音を抑えるようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−247631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記遊星歯車装置の打音防止構造は、各歯車を分割しなければならず、部品数が増え構造がより複雑となり組み付けに非常に手間を要していた。
また、分割歯車を互いに引っ張り合うようにしているため、内歯車と遊星歯車との噛み合いは、各歯面の接触面圧を一定に維持させるのに十分であるが、遊星歯車と太陽歯車との噛み合いにおいては、各歯面の接触面圧を一定に維持させるには十分でなかった。
【0006】
本発明は、上記問題を解消するためになされたものであって、その目的は、部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れた遊星歯車装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、遊星歯車装置であって、2個のキャリヤに周方向で等間隔に連結支持された4個の遊星歯車を2個1組みとし、それぞれの組みの2個の遊星歯車を太陽歯車を挟んで相対向して配置するとともに、一方の組みの2個の遊星歯車を、他方の組みの2個の遊星歯車に対して、90度の間隔で配置し、前記4個の遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心に周方向に一体連結するとともに、前記太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の前記遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び前記太陽歯車のいずれか一方に、且つ前記太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸同士を、前記内歯車及び前記太陽歯車のいずれか他方にそれぞれ弾性力を付与するように弾性リングを設けた。
【0008】
請求項1に記載の発明によれば、弾性リングは、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の前記遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び前記太陽歯車のいずれか一方に、且つ、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び太陽歯車のいずれか他方にそれぞれ弾性力を付与する。従って、太陽歯車を挟んで相対向する遊星歯車は、それぞれ内歯車の内歯及び太陽歯車の外歯に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられ、バックラッシュによる遊星歯車の複数の同時噛合いに起因する打音もなく静かに回転する。その結果、遊星歯車装置は、部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れたものとなる。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、楕円形の弾性リングであって、その長径と短径とが交差する交点を挟んで長径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、前記交点を挟んで短径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結した。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、弾性リングが弾性変形された状態から楕円形状に復元しようとすることから、弾性リングの第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、内歯車の方向に弾性力が付与され、弾性リングの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は太陽歯車の方向に弾性力が付与される。そして、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく内歯車の内歯に押して付けられた状態となり、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく太陽歯車の外歯に押して付けられた状態となる。
【0011】
請求項3に記載の発明は、請求項1に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、真円形の弾性リングであって、その弾性リングの中心点を通過する第1線上であって、中心点を挟んで等しい第1距離にある弾性リングの2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、前記弾性リングの中心点を通過するとともに前記第1線と直交する第2線上であって、中心点を挟んで等しく且つ前記第1距離より短い第2距離にある弾性リングの2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結した。
【0012】
請求項3に記載の発明によれば、弾性リングが弾性変形された状態から円形状に復元しようとすることから、弾性リングの第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、内歯車の方向に弾性力が付与され、弾性リングの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は太陽歯車の方向に弾性力が付与される。そして、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく内歯車の内歯に押して付けられた状態となり、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく太陽歯車の外歯に押して付けられた状態となる。
【0013】
請求項4に記載の発明は、請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸の一側軸部同士を連結支持する一側キャリヤと反対側の他側キャリアに配置されるとともに、4個の前記遊星歯車の支持軸の他側軸部同士をそれぞれ弾性変形させて連結した。
【0014】
請求項4に記載の発明によれば、第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、一側キャリヤを支点とする内歯車の方向に弾性力が付与される。また、弾性リングの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、一側キャリヤを支点とする太陽歯車の方向に弾性力が付与される。
【0015】
請求項5に記載の発明は、請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心軸線に周方向に一体連結する2個のキャリヤで構成した。
【0016】
請求項5に記載の発明によれば、キャリヤが弾性変形された状態から元の状態に復元しようとすることから、キャリヤの第1軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は、内歯車の方向に弾性力が付与され、キャリヤの第2軸受穴に貫通支持された遊星歯車の支持軸は太陽歯車の方向に弾性力が付与される。そして、太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく内歯車の内歯に押して付けられた状態となり、太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車は、ガタ付くことなく太陽歯車の外歯に押して付けられた状態となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、部品数が少なく構造がより簡単で組み付けが容易な静音性能に優れた遊星歯車装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】第1実施形態の遊星歯車装置の全体斜視図。
【図2】第1実施形態の遊星歯車装置の分解斜視図。
【図3】第1実施形態の一側キャリヤに遊星歯車が取着された状態を示す正面図。
【図4】第1実施形態の他側キャリヤに遊星歯車が取着された状態を示す正面図。
【図5】第1実施形態の他側キャリヤの正面図。
【図6】第1実施形態の他側キャリヤに形成した軸受長穴の説明するための説明図。
【図7】第1実施形態の外力を加えていない状態での弾性リングの正面図。
【図8】第1実施形態の調芯作用が働いている状態での弾性リングの正面図。
【図9】第2実施形態の外力を加えていない状態での弾性リングの正面図。
【図10】第2実施形態の調芯作用が働いている状態での弾性リングの正面図。
【図11】第3実施形態の遊星歯車装置の分解斜視図。
【図12】第3実施形態の外力を加えていない状態での一側キャリヤの正面図。
【図13】第3実施形態の調芯作用が働いている状態での一側キャリヤの正面図。
【図14】第3実施形態の外力を加えていない状態での他側キャリヤの正面図。
【図15】第3実施形態の調芯作用が働いている状態での他側キャリヤの正面図。
【図16】一側キャリヤの別例を説明するための要部断面図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
(第1実施形態)
以下、本発明の遊星歯車装置の第1実施形態を図面に従って説明する。
図1、図2において、遊星歯車装置1は、その円筒状のギアケース2内に、内歯車10、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50、弾性リング60を備えている。
(内歯車10)
内歯車10は、合成樹脂製であって、円筒状に形成され、その内周面に内歯11が形成されている。内歯車10は、円筒状に形成された合成樹脂製のギアケース2に対して、その外周面が同ギアケース2の内周面に対して摺動可能に配設されている。内歯車10の中心軸線はギアケース2、即ち、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致し、内歯車10はその中心軸線C1を中心にギアケース2内を回転可能に収容されている。
(太陽歯車20)
太陽歯車20は、外周面に外歯21を形成した合成樹脂製の平歯車であって、内歯車10の中心位置に配設されている。詳述すると、太陽歯車20は、その回転軸22の中心軸線が、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するように回転可能に配置されている。
(遊星歯車30)
4個の遊星歯車30は、外周面に外歯31を形成した合成樹脂製の平歯車であって、内歯車10と太陽歯車20の間にそれぞれ配置される。そして、各遊星歯車30は、その外歯31が内歯車10の内歯11と太陽歯車20の外歯21と噛合するようになっている。
【0020】
4個の遊星歯車30は、2個1組とし、それぞれその組の2個の遊星歯車30が太陽歯車20を挟んで相対向して配置されている(図3、図4参照)。そして、一方の組みの2個の遊星歯車30は、他方の組みの2個の遊星歯車30に対して、90度の間隔で配置されている。
【0021】
4個の遊星歯車30は、その中心位置に金属製のシャフト33が貫通されていて、シャフト33に対してラジアル方向に回転可能かつスラスト方向に移動不能に支持されている。従って、シャフト33の中心軸線は、遊星歯車30の中心軸線と一致するようになっている。
【0022】
なお、遊星歯車30を貫通支持するシャフト33について、遊星歯車30の一側面側(一側キャリヤ40側)から突出した軸部を一側軸部33aといい、その他側面側(他側キャリヤ50側)から突出した軸部を他側軸部33bという。
【0023】
また、一方の組みの2個の遊星歯車30と他方の組みの2個の遊星歯車30を、特に区別して説明するときには、説明の便宜上、一方の組みの2個の遊星歯車30の符号を「30A」と他方の組みの2個の遊星歯車30の符号を「30B」として表現する。
(一側キャリヤ40)
各遊星歯車30の一側から突出したシャフト33の一側軸部33aは、図3に示すように、環状の合成樹脂製よりなる一側キャリヤ40に形成した軸受穴41にそれぞれ貫通支持されている。一側キャリヤ40に形成した各軸受穴41は、断面円形であって、一側軸部33aに対して回転可能に支持連結している。従って、一側キャリヤ40は、各遊星歯車30を、一側軸部33aの中心軸線(遊星歯車30の中心軸線)を中心に、回転可能に支持している。
【0024】
しかも、一側キャリヤ40は、各シャフト33の一側軸部33a(各遊星歯車30)を、太陽歯車20の中心軸線を中心としてその周方向において互いに90°の等間隔に保持している。
(他側キャリヤ50)
各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bは、図4に示すように、環状の合成樹脂製よりなる他側キャリヤ50に形成した軸受長穴51にそれぞれ貫通支持されている。
【0025】
他側キャリヤ50に形成した各軸受長穴51は、図5、図6に示すように、遊星歯車装置1の中心軸線C1を中心とし、その径方向に長い長穴であって、その幅狭の間隔がシャフト33の直径と一致させ、その幅広の間隔がシャフト33の直径より長く形成されている。
【0026】
従って、他側キャリヤ50は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを、軸受長穴51内で回転可能に支持するとともに、軸受長穴51に沿ってその径方向に偏倚させることができるようになっている。しかも、他側キャリヤ50は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを、遊星歯車装置1の中心軸線C1を中心としてその周方向において互いに90°の等間隔に保持している。
(弾性リング60)
他側キャリヤ50に形成した各軸受長穴51から突出した各シャフト33の他側軸部33bは、弾性リング60に形成した第1軸受穴61及び第2軸受穴62のいずれかに貫通支持されている。弾性リング60に形成した第1軸受穴61及び第2軸受穴62は、断面円形であって、他側軸部33bを回転可能に支持連結している。
【0027】
弾性リング60は、合成樹脂で形成されている。そして、弾性リング60は、図7に示すように、外力を加えない状態では外形が楕円形状をなし、その長径と短径とが交差する交点P1を直交する中心軸線が、各他側軸部33bを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。ここで、弾性リング60の幅方向(交点P1を中心に径方向)の中心位置を通る線を環状線Lzという。
【0028】
楕円形状の弾性リング60は、環状線Lzと交差する長径線L1上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した他側軸部33bを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、弾性リング60は、環状線Lzと交差する短径線L2上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した他側軸部33bを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0029】
従って、第1軸受穴61と第2軸受穴62は、交点P1までの距離が相違する。即ち、長径線L1上に位置する第1軸受穴61の交点P1までの距離D1は、短径線L2上に位置する第2軸受穴62の交点P1までの距離D2より長くなる。本実施形態では、距離D1と距離D2の平均値(=(D1+D2)/2)が、太陽歯車20の中心軸線(遊星歯車装置1の中心軸線C1)から各遊星歯車30の中心軸線までの距離D0(図4参照)と一致させているが、D0,D1,D2の関係は、D1>D0、D2<D0を満足する距離関係であれば良い。
【0030】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング60の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング60の第2軸受穴62を貫通させる。
【0031】
この時、弾性リング60の第1軸受穴61は、交点P1までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、交点P1から離間する方向に弾性力が付与される。
【0032】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心軸線C1から離間する方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Aであって、内歯車10の内歯11と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。
【0033】
一方、弾性リング60の第2軸受穴62は、交点P1までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しようとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、交点P1に近づく方向に弾性力が付与される。
【0034】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心軸線C1に近づく方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Bであって、太陽歯車20の外歯21と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0035】
つまり、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。また、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0036】
しかも、4個の遊星歯車30は、1つの楕円形状の弾性リング60にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態となる。
【0037】
ここで、例えば、一側キャリヤ40を入力軸とし、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として、遊星歯車装置1を使用した場合、太陽歯車20の回転軸22は、一側キャリヤ40の入力軸と同方向に回転すると共に増速して回転する。
【0038】
このとき、回転開始時は、4個の遊星歯車30は、1つの楕円形状の弾性リング60にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく、静かに回転する。
【0039】
また、一側及び他側キャリヤ40,50(弾性リング60)は、4個の遊星歯車30を2個1組とし、それぞれその組の2個の遊星歯車30が中心軸線C1を挟んで相対向して連結支持するとともに、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、他方の組みの2個の遊星歯車30Bに対して、90度の間隔で配置した。
【0040】
従って、一側キャリヤ40の定常回転トルクが大きくなると、歯車の噛み合い作用が勝って調芯作用が働き、弾性リング60による遊星歯車30のシャフト33の傾きがなくなり、通常の遊星歯車と同じ軸回転となる。その結果、弾性リング60は、楕円形状から図8に示す円形となり、一側及び他側キャリヤ40,50(弾性リング60)がバランスよく保持され静音性能をより向上させる。
【0041】
なお、ここでは、一側キャリヤ40を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として、遊星歯車装置1を使用したが、一側キャリヤ40を出力軸、太陽歯車20の回転軸22を入力軸としたり、内歯車10を入力軸、一側キャリヤ40を出力軸としたり、また、一側キャリヤ40を入力軸、内歯車10を出力軸としたりして使用してもよい。さらに、内歯車10を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸としたり、太陽歯車20の回転軸22を入力軸、内歯車10を出力軸としたりして使用してもよい。
【0042】
次に、上記のように構成した遊星歯車装置1の効果について説明する。
(1)本実施形態によれば、回転開始時において、4個の遊星歯車30をそれぞれ内歯車10の内歯11及び太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく静かに回転させることができる。
(2)本実施形態によれば、4個の遊星歯車30をそれぞれ内歯車10の内歯11及び太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付ける部材を、1つの楕円形状の弾性リング60にて行った。
【0043】
従って、構造、組み付けが簡便となり、コストダウンが図ることができる。
(第2実施形態)
次に、本発明の遊星歯車装置の第2実施形態を図面に従って説明する。
【0044】
本実施形態は、4個の遊星歯車30をそれぞれ内歯車10の内歯11及び太陽歯車20の外歯21に対して押して付ける部材に特徴を有し、第1実施形態の弾性リング60と相違する。
【0045】
そのため、本実施形態では、説明の便宜上、第1実施形態と相違する点について詳細に説明し、第1実施形態と共通の部分については符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。
【0046】
図9は、本実施形態の弾性リング70を示し、第1実施形態の弾性リング60と同様に、他側キャリヤ50に形成した各軸受長穴51から突出した各シャフト33の他側軸部33bを貫通支持する。
【0047】
弾性リング70は、合成樹脂で形成されている。弾性リング70は、図9に示すように、外力を加えない状態では外形が真円形状をなし、中心点P2が、各他側軸部33bを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。
【0048】
弾性リング70は、中心点P2を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した他側軸部33bを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、弾性リング70は、中心点P2を挟んで相対向する2位置であって第1軸受穴61に対して中心点P2を中心として90°の間隔位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した他側軸部33bを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0049】
そして、第1軸受穴61と第2軸受穴62は、中心点P2までの距離を相違させている。つまり、第1軸受穴61は弾性リング70の外側面寄りに、第2軸受穴62は弾性リング70の内側面寄りに偏倚させて形成させ、第1実施形態と同様に、第1軸受穴61の中心軸線までの距離D1が、第2軸受穴62の中心点P2までの距離D2より長くなるようにしている。
【0050】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング70の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ弾性リング70の第2軸受穴62を貫通させる。
【0051】
この時、弾性リング70の第1軸受穴61は、中心点P2までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、中心点P2から離間する方向に弾性力が付与される。
【0052】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心点P2から離間する方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Aであって、内歯車10の内歯11と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。
【0053】
一方、弾性リング70の第2軸受穴62は、中心点P2までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しとうとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、中心点P2に近づく方向に弾性力が付与される。
【0054】
これによって、シャフト33は一側軸部33aを支点として軸受長穴51に沿って中心点P2に近づく方向に回動し、同シャフト33に取着された遊星歯車30Bであって、太陽歯車20の外歯21と噛合する外歯31の他側軸部33b側の部分が、太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0055】
従って、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。また、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、その外歯31の他側軸部33b側の部分がガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0056】
しかも、4個の遊星歯車30は、1つの弾性リング70にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態となる。従って、第1実施形態と同様に、部品点数の削減、構造及び組み付けが簡便にすることができる。
【0057】
そして、例えば、一側キャリヤ40を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として回転させたとき、回転開始時は、4個の遊星歯車30は、1つの形状の弾性リング70にて、内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく、静かに回転する。
【0058】
そして、一側キャリヤ40の定常回転トルクが大きくなると、歯車の噛み合い作用が勝って調芯作用が働き、弾性リング60による遊星歯車30のシャフト33の傾きがなくなり、通常の遊星歯車と同じ軸回転となる。その結果、距離D1と距離D2がほぼ等しくなり、弾性リング70は、円形状から図10に示す楕円形状となって、一側及び他側キャリヤ40,50(弾性リング60)がバランスよく保持され静音性能をより向上させる。
【0059】
このように、本実施形態の円形の弾性リング70であって、第1軸受穴61と第2軸受穴62の中心軸線までの距離D1,D2をそれぞれ相違させることによって、第1実施形態と同様な効果を有する。
(第3実施形態)
次に、本発明の遊星歯車装置の第3実施形態を図11〜図15に従って説明する。
【0060】
本実施形態は、第1及び第2実施形態の弾性リング60,70を省略し、これら弾性リング60,70の機能を一側及び他側キャリヤに設けた点に特徴を有する。
そのため、本実施形態では、説明の便宜上、相違する点について詳細に説明し、第1及び第2実施形態と共通の部分については符号を同じにしてその詳細な説明を省略する。
【0061】
図11は本実施形態の遊星歯車装置1を示し、図12は、各遊星歯車30の一側から突出したシャフト33の一側軸部33aを貫通支持する一側キャリヤ80を示し、図14は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを貫通支持する他側キャリヤ90を示す。
【0062】
一側キャリヤ80は、合成樹脂で形成されている。そして、一側キャリヤ80は、外力を加えない状態では外形が楕円形状をなし、その長径と短径とが交差する交点P1が、各一側軸部33aを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。ここで、一側キャリヤ80の幅方向(交点P1を中心に径方向)の中心位置を通る線を環状線Lzという。
【0063】
楕円形状の一側キャリヤ80は、環状線Lzと交差する長径線L1上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した一側軸部33aを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、一側キャリヤ80は、環状線Lzと交差する短径線L2上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した一側軸部33aを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0064】
つまり、第1軸受穴61と第2軸受穴62を、第1実施形態と同様に、交点P1までの距離を相違させ、長径線L1上に位置する第1軸受穴61の交点P1までの距離D1を、短径線L2上に位置する第2軸受穴62の交点P1までの距離D2より長くしている。
【0065】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の一側軸部33aに対して、それぞれ一側キャリヤ80の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の一側軸部33aに対して、それぞれ一側キャリヤ80の第2軸受穴62を貫通させる。
【0066】
この時、一側キャリヤ80の第1軸受穴61は、交点P1までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の一側軸部33aは、中心軸線C1から離間する方向に弾性力が付与される。
【0067】
一方、一側キャリヤ80の第2軸受穴62は、交点P1までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しようとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の一側軸部33aは、中心軸線C1に近づく方向に弾性力が付与される。
【0068】
図14は、各遊星歯車30の他側から突出したシャフト33の他側軸部33bを貫通支持する他側キャリヤ90を示す。
他側キャリヤ90は、合成樹脂で形成されている。そして、他側キャリヤ90は、外力を加えない状態では外形が一側キャリヤ80と同一形状の楕円形状をなし、その長径と短径とが交差する交点P1が、各他側軸部33bを貫通支持した時、遊星歯車装置1の中心軸線C1と一致するようになっている。ここで、他側キャリヤ90の幅方向(交点P1を中心に径方向)の中心位置を通る線を環状線Lzという。
【0069】
楕円形状の他側キャリヤ90は、環状線Lzと交差する長径線L1上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、一方の組の遊星歯車30Aから突出した他側軸部33bを貫通支持する第1軸受穴61が形成されている。また、他側キャリヤ90は、環状線Lzと交差する短径線L2上であって、前記交点P1を挟んで相対向する2位置に、他方の組の遊星歯車30Bから突出した他側軸部33bを貫通支持する第2軸受穴62が形成されている。
【0070】
つまり、第1軸受穴61と第2軸受穴62を、一側キャリヤ80と同様に、交点P1までの距離を相違させ、長径線L1上に位置する第1軸受穴61の交点P1までの距離D1を、短径線L2上に位置する第2軸受穴62の交点P1までの距離D2より長くしている。
【0071】
そして、一方の組みの2個の遊星歯車30Aから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ他側キャリヤ90の第1軸受穴61を貫通させ、他方の組みの2個の遊星歯車30Bから突出したシャフト33の他側軸部33bに対して、それぞれ他側キャリヤ90の第2軸受穴62を貫通させる。
【0072】
この時、他側キャリヤ90の第1軸受穴61は、交点P1までの距離D1が短くなるように(縮む方向に)弾性変形し復元しようとするため、第1軸受穴61に貫通支持されたシャフト33の他側軸部33bは、中心軸線C1から離間する方向に弾性力が付与される。
【0073】
一方、他側キャリヤ90の第2軸受穴62は、交点P1までの距離D2が長くなるように(伸びる方向に)弾性変形し復元しようとするため、第2軸受穴62に貫通支持されたシャフト33の一側軸部33aは、中心軸線C1に近づく方向に弾性力が付与される。
【0074】
従って、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、一側及び他側キャリヤ80,90がシャフト33の一側及び他側軸部33a,33bを同時に交点P1から離間する方向に弾性力を付与し復元させることによって、ガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。
【0075】
また、遊星歯車装置1が静止状態において、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、一側及び他側キャリヤ80,90がシャフト33の一側及び他側軸部33a,33bを同時に交点P1に近づく方向に弾性力を付与し復元させることによって、ガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0076】
つまり、遊星歯車装置1が静止状態において、一方の組みの2個の遊星歯車30Aは、その外歯31の内歯車10側全体がガタ付くことなく内歯車10の内歯11に押して付けられた状態となる。また、他方の組みの2個の遊星歯車30Bは、その外歯31の太陽歯車20側全体がガタ付くことなく太陽歯車20の外歯21に押して付けられた状態となる。
【0077】
しかも、4個の遊星歯車30は、既存の一側キャリヤ80と他側キャリヤ90にて、それぞれ対応する内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態となる。従って、第1及び第2実施形態のように、弾性リング60,70が不要となり、部品点数の削減、構造及び組み付けが簡便にすることができる。しかも、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90は、同一形状なので、互いに共用でき部品管理も容易となる。
【0078】
ここで、例えば、遊星歯車装置1を、内歯車10を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として使用した場合、太陽歯車20の回転軸22は、内歯車10の入力軸と逆方向に、増速して回転する。
【0079】
このとき、回転開始時は、4個の遊星歯車30は、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90にて、それぞれ対応する内歯車10の内歯11又は太陽歯車20の外歯21に対して、それぞれガタ付くことなく押して付けられた状態から回転するため、バックラッシュによる遊星歯車30の複数の同時噛合いに起因する打音もなく、静かに回転する。
【0080】
そして、一側及び他側キャリヤ80,90の定常回転トルクが大きくなると、歯車の噛み合い作用が勝って調芯作用が働き、一側及び他側キャリア80,90による遊星歯車30のシャフト33の傾きがなくなり、通常の遊星歯車と同じ軸回転となる。その結果、一側及び他側キャリヤ80,90は、楕円形状からそれぞれ、図13、図15に示す円形となり、一側及び他側キャリヤ80,90がバランスよく保持され静音性能をより向上させる。
【0081】
なお、ここでは、遊星歯車装置1を、内歯車10を入力軸、太陽歯車20の回転軸22を出力軸として使用した場合を説明したが、これに限定されるものではなく、内歯車10を出力軸、太陽歯車20の回転軸22を入力軸として使用した。
【0082】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記第1及び第2実施形態では、各遊星歯車30の一側から突出したシャフト33の一側軸部33aを貫通支持する一側キャリヤ40に形成した軸受穴41の形状を、図16に示すように、遊星歯車30に向かうほどその内径が拡開するように形成してもよい。
【0083】
これによって、シャフト33が弾性リング60にて軸受穴41を支点として、回動するとき、シャフト33の回動を容易にすることができる。
・上記第3実施形態では、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90の両方に、弾性リング60の機能を持たせたが、いずれか一方に弾性リング60の機能を持たせて実施させてもよい。
【0084】
・上記第3実施形態では、一側キャリヤ80と他側キャリヤ90の形状を、第1実施形態の楕円形状の弾性リング60と同じにしたが、第2実施形態の円形状の弾性リング70と同じにして実施してもよく、一側キャリア80と他側キャリア90の周方向の位置を互いに90度ずらして配置してもよい。
【0085】
・上記第1実施形態では、円筒状のギアケース2内に、内歯車10、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50を配置した遊星歯車装置1に具体化したが、ギアケース2を省略してもよい。例えば、内歯車10内に、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50を配置した遊星歯車装置1に具体化してもよい。
【0086】
・上記第1実施形態では、遊星歯車30は、シャフト33に対してラジアル方向に回転可能かつスラスト方向に移動不能に支持されるようにしたが、シャフト33に対してラジアル方向に回転不能可能に固着するようにしてもよい。この場合、シャフト33を遊星歯車30と同じ合成樹脂で一体的に成形することができる。
【0087】
また、この場合、シャフト33は、一側及び他側キャリヤ40,50に対して回転可能に支持される必要がある。
・上記第1〜第3実施形態では、内歯車10、太陽歯車20、4個の遊星歯車30、一側及び他側キャリヤ40,50,80,90、弾性リング60,70を合成樹脂で成形したが、ゴム、アルミ、ステレス、鉄等の金属で成型してもよい。
【符号の説明】
【0088】
1…遊星歯車装置、2…ギアケース、10…内歯車、11…内歯、20…太陽歯車、21…外歯、22…回転軸、30,30A,30B…遊星歯車、31…外歯、33…シャフト、33a…一側軸部(支持軸)、33b…他側軸部(支持軸)、40,80…一側キャリヤ、41…軸受穴、50,90…他側キャリヤ、51…軸受長穴、60,70…弾性リング、61…第1軸受穴、62…第2軸受穴、C1…中心軸線、L1…長径線、L2…短径線、P1…交点、P2…中心点。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遊星歯車装置であって、
2個のキャリヤに周方向で等間隔に連結支持された4個の遊星歯車を2個1組みとし、それぞれの組みの2個の遊星歯車を太陽歯車を挟んで相対向して配置するとともに、一方の組みの2個の遊星歯車を、他方の組みの2個の遊星歯車に対して、90度の間隔で配置し、
前記4個の遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心に周方向に一体連結するとともに、前記太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の前記遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び前記太陽歯車のいずれか一方に、且つ前記太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸同士を、前記内歯車及び前記太陽歯車のいずれか他方にそれぞれ弾性力を付与するように弾性リングを設けたことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、楕円形の弾性リングであって、その長径と短径とが交差する交点を挟んで長径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、前記交点を挟んで短径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、
前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項3】
請求項1に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、真円形の弾性リングであって、その弾性リングの中心点を通過する第1線上であって、中心点を挟んで等しい第1距離にある弾性リングの2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、
前記弾性リングの中心点を通過するとともに前記第1線と直交する第2線上であって、中心点を挟んで等しく且つ前記第1距離より短い第2距離にある弾性リングの2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、
前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸の一側軸部同士を連結支持する一側キャリヤと反対側の他側キャリアに配置されるとともに、4個の前記遊星歯車の支持軸の他側軸部同士をそれぞれ弾性変形させて連結したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心軸線に周方向に一体連結する2個のキャリヤで構成したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項1】
遊星歯車装置であって、
2個のキャリヤに周方向で等間隔に連結支持された4個の遊星歯車を2個1組みとし、それぞれの組みの2個の遊星歯車を太陽歯車を挟んで相対向して配置するとともに、一方の組みの2個の遊星歯車を、他方の組みの2個の遊星歯車に対して、90度の間隔で配置し、
前記4個の遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心に周方向に一体連結するとともに、前記太陽歯車を挟んで相対向する一方の組みの2個の前記遊星歯車の支持軸同士を、内歯車及び前記太陽歯車のいずれか一方に、且つ前記太陽歯車を挟んで相対向する他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸同士を、前記内歯車及び前記太陽歯車のいずれか他方にそれぞれ弾性力を付与するように弾性リングを設けたことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項2】
請求項1に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、楕円形の弾性リングであって、その長径と短径とが交差する交点を挟んで長径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、前記交点を挟んで短径線上であって、前記弾性リングの径方向の幅の中心位置にある2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、
前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項3】
請求項1に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、真円形の弾性リングであって、その弾性リングの中心点を通過する第1線上であって、中心点を挟んで等しい第1距離にある弾性リングの2位置に一対の第1軸受穴がそれぞれ形成され、
前記弾性リングの中心点を通過するとともに前記第1線と直交する第2線上であって、中心点を挟んで等しく且つ前記第1距離より短い第2距離にある弾性リングの2位置に一対の第2軸受穴がそれぞれ形成され、
前記一対の第1軸受穴に一方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、前記一対の第2軸受穴に他方の組みの2個の遊星歯車の支持軸を、それぞれ弾性変形させて連結したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸の一側軸部同士を連結支持する一側キャリヤと反対側の他側キャリアに配置されるとともに、4個の前記遊星歯車の支持軸の他側軸部同士をそれぞれ弾性変形させて連結したことを特徴とする遊星歯車装置。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の遊星歯車装置において、
前記弾性リングは、4個の前記遊星歯車の支持軸同士を、前記太陽歯車を中心軸線に周方向に一体連結する2個のキャリヤで構成したことを特徴とする遊星歯車装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−62974(P2012−62974A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−208321(P2010−208321)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]