説明

遊星運動式真空撹拌脱泡装置

【課題】 小型真空ポンプにより高真空度を維持して撹拌脱泡の多量処理ができ、機構簡単で故障が少なく取扱容易で安価に製作できエネルギー節減ができる遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供する。
【解決手段】 ケース70内を隔壁75を介し真空圧チャンバー701と大気圧チャンバー702に隔離し真空圧チャンバー内に空気を密封した密封箱200を設けた回転フレーム20を回転軸21に固着し回転フレームの密封箱内部に自転用電動機30を設け磁性流体シール33を介し容器ホルダ回転軸601と連結した機構を備え大気圧チャンバー内に公転用電動機10を設け回転軸11を磁性流体シール12を介し真空圧チャンバー内の回転軸21に連結し大気圧チャンバー内の回転軸21外周面にスリツプリング装置40を設け回転軸21の中空孔部を経て自転用電動機と電気接続しスリツプリング装置にブラシング装置50を電気接触し外部電源から給電できる機構を備えたもの。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類又は2種類以上の物質を収容した容器を、あたかも宇宙の遊星のように、公転させると共に自転させる運動を、真空雰囲気中で行うことにより、撹拌して、前記物質を均一混合すると共に脱泡できるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置の改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊星運動を利用した脱泡撹拌装置は、特許第2711964号(特開平6−71110号)、特許第3213735号(特開平7−289873号)などに示されるように、数多くの装置が市販されているが、いずれも撹拌、脱泡処理が大気圧下で行われるため、例えば、医学用、半導体用等の使用目的によって、数ミクロン以下の精度の脱泡度を必要とする場合には十分に対応することができないことが知られている。そこで、撹拌、脱泡処理時に真空圧をかけて行うことが考えられ、この種の装置が出現したが、この遊星運動式真空撹拌脱泡装置は、図5に示すように、ケース1内に設けた真空圧チャンバー2内に、公転用アーム3と、公転用アーム3上に設けた自転用容器ホルダ4と、容器ホルダ4を自転させるための歯車伝動装置5を設け、隔壁6を介して設けた大気圧チャンバー7内に、磁性流体シール8a及び8bによりそれぞれ軸封して真空圧チャンバー2内の公転用アーム3の回転軸及び歯車伝動装置5の回転軸にそれぞれ直結する公転用電動機9a及び自転用電動機9bにより回転させると共に、大型の真空ポンプ9cをケース1外に設置して真空圧チャンバー2内を真空吸引していたが、公知の磁性流体シール8a及び8bは、真空圧に対する耐圧度が低いので、たとえ真空ポンプ2を真空度0.1トール程度の高性能のもので、かつ、大型のものを使用しても、リーク量が大きく、真空圧チャンバー1内の真空度を約10トール乃至約5トール程度に下げて維持しなければならない欠点があった。
そこで、本発明者は、各容器ホルダに自転用電動機を直結しても、各自転用電動機は、かなり小型で小電力で済み、また、容器内の被撹拌脱泡物質は通常2分以内に撹拌脱泡が済むことに着目して、真空圧チャンバー内に容積が大きく、かつ、空気を密封した密封箱状の公転用回転フレームを設け、その内に自転用電動機を設置して小型の磁性流体シールを介して真空圧チャンバー内の容器ホルダ及び容器を自転できるようにすれば、真空圧チャンバーは、全体としての容積減少から小型の真空ポンプで高真空度を維持できると共に、エネルギーの節減になることを見出し、本発明を完成した。
【特許文献1】特開2004−74130号公報
【非特許文献1】真空装置付遊星式・脱泡装置KK−V300のホームページ(http://www.kurabo.co.jp/el/kk/kkv_0.1.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、小型の真空ポンプを使用して高真空度の真空圧チャンバーを維持して撹拌及び脱泡ができるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供するものである。
また、本発明は、バツチ操作に拘わらず、多量処理ができるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供するものである。
さらに、本発明は、容器を自転させるための機械的伝動装置を設けず、機構簡単で故障が少なく、取扱容易で安価に製作でき、エネルギーの節減ができる遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明遊星運動式真空撹拌脱泡装置は、上記課題を達成するため、図示するように、2種類又は2種類以上の物質を収容した容器61を、あたかも宇宙の遊星のように、公転させると共に自転させる運動を、真空雰囲気中で行うことにより、撹拌して、前記物質を均一混合すると共に脱泡できるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置であって、ケース70内を隔壁75を介して真空圧チャンバー701と大気圧チャンバー702に隔離して、真空圧チャンバー701内には、支持フレーム76、77を設けて、真空圧チャンバー701に対し密封される中空部を設けた回転軸21を回転可能に軸支し、回転軸21に上板201と側板202と底板203とからなる空気を密封して密封箱状に形成した回転フレーム20を固着し、回転フレーム20の上板201に容器ホルダ60を回転軸601により回転可能に軸支し、容器ホルダ60内に着脱可能に嵌合又は係着する容器61を設け、回転フレーム20の上板201から回転フレーム20内部に突出する容器ホルダ60の回転軸601を、磁性流体シール33により上板201下面に軸封して、回転フレーム20内部に設けた自転用電動機30の回転軸31と連結してなる機構を備え、大気圧チャンバー702内に、公転用電動機10を設け、真空圧チャンバー701内の回転フレーム20の回転軸21から大気圧チャンバー702内に突出した回転軸21を磁性流体シール12により隔壁75下面に軸封して公転用電動機10の回転軸11と連結し、大気圧チャンバー702内の回転フレーム20の回転軸21外周面にスリツプリング装置40を設けて、回転軸21の中空部の孔部を介して、回転フレーム20内部に設けた自転用電動機30と電気接続し、スリツプリング装置40のスリツプリング41にブラシング装置50のブラシ51を電気接触させて外部電源から給電できるようにしてなる機構を備えているものである。
また、本発明遊星運動式真空撹拌脱泡装置は、上記課題を達成するため、図示するように、上記発明において、前記回転フレーム20が、真空圧チャンバー701内で、真空ポンプを小型化できるような大きな容積を有しているものである。
本発明において、公転用電動機は、直流電動機、交流電動機いずれも使用でき、これらの電動機の回転数は公知の電動機回転速度制御装置で可変でき、また、ブレーキ付電動機が好ましい。
また、自転用電動機は、直流電動機、交流電動機いずれも使用でき、また、これらの電動機の回転数は公知の電動機回転速度制御装置で可変でき、また、ブレーキ付電動機が好ましい。
回転フレームは、空気を密封して、内部に収容する自転用電動機を保護すると共に、真空圧チャンバーの容積減少に寄与させるものである。
回転フレームの回転軸は、回転フレーム内の自転用電動機に給電するため、中空部を設けて真空圧チャンバーから密封できると共に、中空部は回転フレーム内部に設けた自転用電動機に給電するため、中空部の孔部を通じて大気圧チャンバーのスリツプリング装置から電源コードを挿入して回転フレーム内部の自転用電動機に電気接続できるようにするものである。
また、本発明において、磁性流体シールは、真空圧チャンバーに対し大気圧チャンバーから回転軸の回転運動を伝達するために使用される軸封装置で、磁石と磁極とを利用して磁性流体を回転軸上で保持して密封する公知のものである。
また、本発明において、スリツプリング装置のスリツプリングは、金属、黒鉛等の電導材からなり、公転用電動機により回転する大気圧チャンバー内の回転フレームの回転軸外周面に、電気絶縁されて取り付けられ、回転フレームの回転軸の中空部の孔部を介して自転用電動機に給電できるように電気接続される。
また、本発明において、ブラシ装置のカーボンブラシは、電気黒鉛質、黒鉛質、金属黒鉛質、合成樹脂含浸黒鉛質等からなり、スリツプリングに常時、電気接触できるようにバネ等で押圧されると共に、外部電源に電気接続されて給電を受けるものである。
また、本発明において、容器ホルダは、容器を自転させるため、容器を着脱可能に嵌着乃至係着できるようにすると共に、自転用電動機により駆動回転されるものである。
さらに、本発明において、真空ポンプは、真空圧チャンバー内を高度の真空度に維持するため使用するもので、ケース内に収容される。
【発明の効果】
【0005】
本発明装置は、ケースの真空圧チャンバー内の容積を、大きな容積を占める回転フレームにより、減少させることができるので、小型の真空ポンプで高真空度を維持できるようになった。
また、本発明装置は、従来のように、容器ホルダの自転が真空圧チャンバー内の複雑な機構の機械伝動装置を介することがなく、各容器ホルダに直接、自転用電動機が連結されるので、容器ホルダを従来のように、1対1の2個組に制約される必要がなく、2対乃至3対の容器ホルダを設置できる余裕ができ、バツチ操作に拘わらず多量処理ができ、また機構簡単なため故障が少なく、取扱が容易で、安価に製作でき、機械的伝動装置を駆動する大きな自転用電動機や大形の真空ポンプを必要としないので、エネルギーの節減がはかれる利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明装置は、ケース内を真空圧チャンバーと大気圧チャンバーとに隔離すること、真空圧チャンバー内に空気を密封した密封箱状の回転フレームを回転軸に回転可能に支持すること、回転フレーム上板に1対又は複数対の容器ホルダの回転軸を回転可能に支持すること、回転フレーム内部に各容器ホルダに対応する自転用電動機を設けること、回転フレームの回転軸を磁性流体シールを介して真空圧チャンバーと大気圧チャンバーの隔壁に軸封すること、大気圧チャンバー内の回転フレームの回転軸にスリツプリング装置とブラシング装置を設けること、回転フレームの回転軸を真空圧チャンバーに対し密封される中空軸とし、中空部の孔部に配線して自転用電動機とスリツプリング装置とを電気接続すること、大気圧チャンバー内に公転用電動機を設け、回転フレームの回転軸に連結すること、ブラツシング装置を外部電源に接続できるようにすることである。
【実施例1】
【0007】
本発明装置の実施例1が図1乃至図4に示されている。本発明実施例1に示す遊星運動式撹拌・脱泡撹拌装置は、ケース70内部の上部に真空圧チャンバー701、下部に大気圧チャンバー702を設け、隔壁75で完全に隔離して形成されている。真空圧チャンバー701には、支持フレーム76及び77に回転可能に支持された回転軸21に固着された、空気を密封し密封箱状に形成した回転フレーム20と、回転フレーム20内部にそれぞれ設けた自転用電動機30、回転フレーム20の上板201に回転軸601を介して回転可能に軸支された1対の容器ホルダ60及び各容器ホルダ60内に着脱可能に嵌着又は係着した容器61とを備えている。
回転フレーム20は、多角形状に傾斜させて形成した上板201と多角形状の側板202と多角筒状の底板203とからなり、上板201は、容器ホルダ60の回転軸601を回転可能に軸支し、回転フレーム20内部には自転用電動機30が取りつけられ、自転用電動機30の回転軸31と連結したユニバーサルジヨイント32が上板201下面に取りつけられた磁性流体シール33を介して軸封された容器ホルダ60の回転軸601と連結されている。
また、回転フレーム20は、底板203に自転用電動機30等を取り出すための蓋2031を着脱可能に密着している。
また、回転フレーム20を固着した回転軸21は、中空状(図示しない)に形成され、中空部に孔部を介して自転用電動機30に給電するための電線コード(図示しない)がスリツプリング装置40から挿入されている。
なお、真空圧チャンバー701内で使用される軸受は、いわゆる公知の真空用軸受が使用される。
大気圧チャンバー702には、公転用電動機10と、スリツプリング装置40と、ブラシ装置50と、真空ポンプ80と、公転用電動機10の回転数の制御板13と自転用電動機30の回転数の制御板34を備えている。
公転用電動機10は、回転フレーム20の回転軸21を駆動回転するもので、真空圧チャンバー701内の回転フレーム20の回転軸21が隔壁75下面に取りつけた磁性流体シール12を介して大気圧チャンバー702に突出し、公転用電動機10の回転軸11に連結され、公転用電動機10は制御板13を介して外部電源(図示しない)から給電される。
スリツプリング装置40は、大気圧チャンバー702に突出した回転軸21外周面に電気絶縁された2個のスリツプリング41を取り付けている。各スリツプリング41は、銅合金製電導材等で形成されて回転軸21の中空部の電線コードを介して各自転用電動機30に給電するための電気接続(図示しない)をしている。
ブラシング装置50は、支持フレーム78に取りつけられ、2個のカーボンブラシ51は、各スリツプリング41にバネ52で押圧して当接し電気接触すると共に、外部電源(図示しない)から給電されるように配線されている。
真空ポンプ80は、真空吸引管81を介して真空圧チャンバー701内を真空吸引するものである。
ケース70は、蓋74により密封又は開蓋される。
従って、各容器61に被脱泡撹拌物質を入れて、容器ホルダ60と共に回転できるように容器ホルダ60に嵌着乃至係着する。
次に、ケース70の蓋74をしめて、真空ポンプ80を起動して真空圧チャンバー701内を所定真空度に維持し、公転用電動機10と各自転用電動機30に対し、電動機回転速度制御装置13及び34により、それぞれ予め設定した電動機回転数をダイヤル合わせして運転すれば、容器61内の被脱泡撹拌物質は、通常2分以内に、容器61の自転運動及び公転運動により、均一混合されると共に高度に脱泡されることになる。
【0008】
本発明実施例装置と従来例装置とを使用して、同一被撹拌脱泡物質の同一量(300g×2カップ)を2分間撹拌脱泡した場合の比較は次のとおりである。
【0009】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明装置は、構造簡単で製作しやすく量産可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明装置の実施例を示す全体概略説明図である。
【図2】図1のケース蓋を開けて容器を除いて示した平面図である。
【図3】図1の容器ホルダーの回転軸の拡大説明図である。
【図4】図1のスリツプリング装置及びブラシング装置の拡大説明図である。
【図5】従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
10 公転用電動機
11 公転用電動機の回転軸
12 磁性流体シール
13 公転用電動機の回転速度等の制御板
20 回転フレーム
201 回転フレームの上板
202 回転フレームの側板
203 回転フレームの底板
2031 回転フレームの底板の密封蓋
21 回転フレームの回転軸
30 自転用電動機
31 自転用電動機の回転軸
32 自転用電動機のユニバーサルジヨイント
33 磁性流体シール
34 自転用電動機の回転速度等の制御板
40 スリツプリング装置
41 スリツプリング
50 ブラシ装置
51 ブラシ
52 バネ
60 容器ホルダ
601 容器ホルダの回転軸
61 容器
70 ケース
74 ケースの密封蓋
701 真空圧チャンバー
702 大気圧チャンバー
75 隔壁
76、77、78 支持フレーム
80 真空ポンプ
81 真空吸引管

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種類又は2種類以上の物質を収容した容器を、公転させると共に自転させる遊星運動を、真空雰囲気中で行うことにより、撹拌して、前記物質を均一混合すると共に脱泡できるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、遊星運動を利用した脱泡撹拌装置は、特許第2711964号(特開平6−71110号)、特許第3213735号(特開平7−289873号)などに示されるように、数多くの装置が市販されているが、いずれも撹拌、脱泡処理が大気圧下で行われるため、例えば、医学用、半導体用等の使用目的によって、数ミクロン以下の精度の脱泡度を必要とする場合には十分に対応することができないことが知られている。そこで、撹拌、脱泡処理時に真空圧をかけて行うことが考えられ、この種の装置が出現したが、この遊星運動式真空撹拌脱泡装置は、図5に示すように、ケース1内に設けた真空圧チャンバー2内に、公転用アーム3と、公転用アーム3上に設けた自転用容器ホルダ4と、容器ホルダ4を自転させるための機械的伝動装置5を設け、隔壁6を介して設けた大気圧チャンバー7内に、磁性流体シール8a及び8bによりそれぞれ軸封して真空圧チャンバー2内の公転用アーム3の回転軸及び機械的伝動装置5の回転軸にそれぞれ直結する公転用電動機9a及び自転用電動機9bにより回転させると共に、大型の真空ポンプ9cをケース1外に設置して真空圧チャンバー2内を真空吸引していた。しかしながら、特開平6−71110号公報、特開平7−289873号公報に見られるような容器自転のための複雑な機械的伝動装置5を真空圧チャンバー内部で真空圧から隔離することは大がかりな真空圧からの隔離装置を必要とし、製作費が高価につく上に、上記伝動装置の真空圧からの隔離のため公転用アームに取りつける自転用容器の配置がかなり制約され、自転用容器は公転用アーム上に1対以上設置することは容易でなく、また、大型の真空ポンプや大容量の真空圧チャンバーや機械的伝動装置5を駆動する大型の自転用電動機9bが必要とならざるを得ない欠点があった。
そこで、本発明者は各容器を自転させるため各容器にそれぞれ自転用電動機を連結しても、各自転用電動機は小型で済み、また、大がかりで複雑な機械的伝動装置が介在しないので、容器は1対以上増設できる、真空圧チャンバーも小容量にできる、真空ポンプも小型で済むなどの利点を見出し本発明を完成した。
【特許文献1】特開2004−74130号公報
【非特許文献1】真空装置付遊星式・脱泡装置KK−V300のホームページ(http://www.kurabo.co.jp/el/kk/kkv_0.1.html)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、バツチ操作に拘わらず、小容積の真空圧チャンバーで自転容器数を増設して多量処理ができるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供するものである。
また、本発明は、容器を自転させるための大がかりで複雑な機械的伝動装置を設けず、機構簡単で故障が少なく、取扱容易で安価に製作でき、エネルギーの節減ができる遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供するものである。
さらに、本発明は、小型の真空ポンプを使用し高真空度の真空圧チャンバーを維持して高能率の撹拌及び脱泡ができるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明遊星運動式真空撹拌脱泡装置は、上記課題を達成するため、図示するように、2種類又は2種類以上の物質を収容した容器61を、公転させると共に自転させる運動を、真空雰囲気中で行うことにより、撹拌して、前記物質を均一混合すると共に脱泡できるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置であって、ケース70内を隔壁75を介して真空圧チャンバー701と大気圧チャンバー702に隔離して、真空圧チャンバー701内には、支持フレーム77を設けて、真空圧チャンバー701に対し密封される中空部を設けた回転軸21を回転可能に軸支し、回転軸21に上板201と側板202と底板203とからなる空気を密封し自転用電動機30を収容した密封箱200を設けた回転フレーム20を固着し、回転フレーム20の密封箱200の上板201に容器ホルダ60を回転軸601により回転可能に軸支し、容器ホルダ60内に着脱可能に嵌合又は係着する容器61を設け、回転フレーム20の密封箱200上板201から内部に突出する容器ホルダ60の回転軸601を、磁性流体シール33により上板201下面に軸封して、自転用電動機30の回転軸31と連結した機構を備え、大気圧チャンバー702内に、公転用電動機10を設け、真空圧チャンバー701内の回転フレーム20の回転軸21から大気圧チャンバー702内に突出した回転軸21を磁性流体シール12により隔壁75下面に軸封して公転用電動機10の回転軸11と連結し、大気圧チャンバー702内の回転フレーム20の回転軸21外周面にスリツプリング装置40を設けて、回転軸21の中空部を介して、回転フレーム20の密封箱200内部に設けた自転用電動機30と電気接続し、スリツプリング装置40のスリツプリング41にブラシング装置50のブラシ51を電気接触させて外部電源から給電できるようにした機構を備えているものである。
本発明において、公転用電動機は、直流電動機、交流電動機いずれも使用でき、これらの電動機の回転数は公知の電動機回転速度制御装置で可変できる。
また、自転用電動機は、直流電動機、交流電動機いずれも使用でき、また、これらの電動機の回転数は公知の電動機回転速度制御装置で可変できる。
回転フレームは、空気を密封した密封箱を設け、内部自転用電動機を収容すると共に、真空圧チャンバーの容積減少に寄与させるものである。
回転フレームの回転軸は、回転フレームの密封箱内の自転用電動機に給電するため、中空部を設けて真空圧チャンバーから密封できると共に、中空部は回転フレームの密封箱内部に設けた自転用電動機に給電するため、中空部の孔部を通じて大気圧チャンバーのスリツプリング装置から電源コードを挿入して回転フレームの密封箱内部の自転用電動機に給電できるようにするものである。
また、本発明において、磁性流体シールは、真空圧チャンバーに対し大気圧チャンバー又は空気密封箱から回転軸の回転運動を伝達するために使用される軸封装置で、磁石と磁極とを利用して磁性流体を回転軸上で保持して密封する公知のものである。
また、本発明において、スリツプリング装置のスリツプリングは、金属、黒鉛等の電導材からなり、公転用電動機により回転する大気圧チャンバー内の回転フレームの回転軸外周面に、電気絶縁されて取り付けられ、回転フレームの回転軸の中空部の孔部を介して自転用電動機に給電できるように電気接続される。
また、本発明において、ブラシ装置のカーボンブラシは、電気黒鉛質、黒鉛質、金属黒鉛質、合成樹脂含浸黒鉛質等からなり、スリツプリングに常時、電気接触できるようにバネ等で押圧されると共に、外部電源に電気接続されて給電を受けるものである。
また、本発明において、容器ホルダは、容器を自転させるため、容器を着脱可能に嵌着乃至係着できるようにすると共に、自転用電動機により駆動回転されるものである。
さらに、本発明において、真空ポンプは、真空圧チャンバー内を高度の真空度に維持するため使用するもので、ケース内の大気圧チャンバー内に収容される。
【発明の効果】
【0005】
本発明装置は、従来のように、容器ホルダの自転を真空圧チャンバー内の複雑で大がかりな機械的伝動装置とその真空圧に対する隔離機構を介することなく、各容器ホルダが密封箱を介して直接的に、自転用電動機連結されるので、容器ホルダ従来のように、1対1の2個組に制約される必要がなく、2対乃至3対の容器ホルダを設置できる余裕ができ、バツチ操作に拘わらず多量処理ができ、また機構簡単なため故障が少なく、取扱が容易で、安価に製作でき、機械的伝動装置を駆動する大型の自転用電動機や大容量の真空圧チャンバーとこれに対する大型の真空ポンプを必要としないので、エネルギーの節減がはかれる利点がある。
さらに、本発明装置は、大がかりで複雑な機械的伝動装置やその真空圧からの隔離機構がないので真空圧チャンバー内の容積を減少させることができ、小型の真空ポンプで高真空度を維持できるようになった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明装置は、ケース内を真空圧チャンバーと大気圧チャンバーとに隔離すること、真空圧チャンバー内に空気を密封した密封箱を設けた回転フレームを回転軸に回転可能に支持すること、回転フレームの密封箱上板に容器ホルダの回転軸を回転可能に支持すること、回転フレームの密封箱内部に容器ホルダの回転軸を駆動する自転用電動機を設けること、密封箱内に突出した容器ホルダの回転軸を上板下面で磁性流体シールにより軸封すること、回転フレームの回転軸を磁性流体シールを介して真空圧チャンバーと大気圧チャンバーの隔壁下面に軸封すること、大気圧チャンバー内の回転フレームの回転軸にスリツプリング装置とブラシング装置を設けること、回転フレームの回転軸を真空圧チャンバーに対し密封される中空軸とし、中空部の孔部に配線して自転用電動機とスリツプリング装置とを電気接続すること、大気圧チャンバー内に公転用電動機を設け、回転フレームの回転軸に連結すること、スリツプリング装置に電気接触するブラツシング装置を外部電源に接続できるようにすることである。
【実施例1】
【0007】
本発明装置の実施例1が図1乃至図4に示されている。本発明実施例1に示す遊星運動式真空撹拌脱泡装置は、ケース70内部上部に真空圧チャンバー701、下部に大気圧チャンバー702を設け、隔壁75で完全に隔離して形成されている。真空圧チャンバー701には、支持フレーム76及び77に回転可能に支持された回転軸21に固着された、空気を密封し密封箱200を設けた回転フレーム20と、回転フレーム20の密封箱200の内部にそれぞれ設けた自転用電動機30、回転フレーム20の密封箱200の上板201に回転軸601を介して回転可能に軸支された1対の容器ホルダ60及び各容器ホルダ60内に着脱可能に嵌着又は係着した容器61とを備えている。
回転フレーム20は、上板201と側板202と底板203とからなる1対の密封箱200を設け、上板201は、容器ホルダ60の回転軸601を回転可能に軸支し、回転軸601は上板201下面に取りつけられた磁性流体シール33を介して軸封されてユニバーサルジヨイント32を経て自転用電動機30の回転軸31と連結されている。
また、回転フレーム20の密封箱200は、底板203に自転用電動機30を取り出すための蓋2031を着脱可能に密着している。
また、回転フレーム20を固着した回転軸21は、真空圧チャンバー701に対し密封される中空状(図示しない)に形成され、中空部孔部(図示しない)を介して自転用電動機30に給電するための電線コード(図示しない)がスリツプリング装置40から入されている。
なお、真空圧チャンバー701内で使用される軸受は、いわゆる公知の真空用軸受が使用される。
大気圧チャンバー702には、公転用電動機10と、スリツプリング装置40と、ブラシ装置50と、真空ポンプ80と、公転用電動機10の回転数の制御13と自転用電動機30の回転数の制御34を備えている。
公転用電動機10は、回転フレーム20の回転軸21を駆動回転するもので、真空圧チャンバー701内の回転フレーム20の回転軸21が隔壁75下面に取りつけた磁性流体シール12を介して大気圧チャンバー702に突出し、公転用電動機10の回転軸11に連結され、公転用電動機10は制御13を介して外部電源(図示しない)から給電される。
スリツプリング装置40は、大気圧チャンバー702に突出した回転軸21外周面に電気絶縁された2個のスリツプリング41を取り付けている。各スリツプリング41は、銅合金製電導材等で形成されて回転軸21の真空圧チャンバー701に対し密封される中空部の電線コード(図示しない)を介して各自転用電動機30に給電するための電気接続(図示しない)をしている。
ブラシング装置50は、支持フレーム78に取りつけられ、2個のカーボンブラシ51は、各スリツプリング41にバネ52で押圧して当接し電気接触すると共に、外部電源(図示しない)から給電されるように配線されている。
真空ポンプ80は、真空吸引管81を介して真空圧チャンバー701内を真空吸引するものである。
ケース70は、蓋74により密封又は開蓋される。
従って、各容器61に被脱泡撹拌物質を入れて、容器ホルダ60と共に回転できるように容器ホルダ60に嵌着乃至係着する。
次に、ケース70の蓋74をしめて、真空ポンプ80を起動して真空圧チャンバー701内を所定真空度に維持し、公転用電動機10と各自転用電動機30に対し、制御盤13及び34により、それぞれ予め設定した電動機回転数をダイヤル合わせして運転すれば、容器61内の被脱泡撹拌物質は、通常2分以内に、容器61の自転運動及び公転運動により、均一混合されると共に高度に脱泡されることになる。
【0008】
本発明実施例装置と従来例装置とを使用して、同一被撹拌脱泡物質の同一量(300g×2カップ)を2分間撹拌脱泡した場合の比較は次のとおりである。
【0009】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0010】
本発明装置は、構造簡単で製作しやすく量産可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明装置の実施例を示す全体概略説明図である。
【図2】図1のケース蓋を開けて容器を除いて示した平面図である。
【図3】図1の容器ホルダーの回転軸の拡大説明図である。
【図4】図1のスリツプリング装置及びブラシング装置の拡大説明図である。
【図5】従来例の説明図である。
【符号の説明】
【0012】
10 公転用電動機
11 公転用電動機の回転軸
12 磁性流体シール
20 回転フレーム
201 回転フレームの上板
202 回転フレームの側板
203 回転フレームの底板
200 密封箱
21 回転フレームの回転軸
30 自転用電動機
31 自転用電動機の回転軸
33 磁性流体シール
40 スリツプリング装置
41 スリツプリング
50 ブラシ装置
51 ブラシ
60 容器ホルダ
601 容器ホルダの回転軸
61 容器
70 ケース
701 真空圧チャンバー
702 大気圧チャンバー
75 隔壁
76、77、78 支持フレーム
80 真空ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類又は2種類以上の物質を収容した容器61を、あたかも宇宙の遊星のように、公転させると共に自転させる運動を、真空雰囲気中で行うことにより、撹拌して、前記物質を均一混合すると共に脱泡できるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置であって、ケース70内を隔壁75を介して真空圧チャンバー701と大気圧チャンバー702に隔離して、真空圧チャンバー701内には、支持フレーム76、77を設けて、真空圧チャンバー701に対し密封される中空部を設けた回転軸21を回転可能に軸支し、回転軸21に上板201と側板202と底板203とからなる空気を密封して密封箱状に形成した回転フレーム20を固着し、回転フレーム20の上板201に容器ホルダ60を回転軸601により回転可能に軸支し、容器ホルダ60内に着脱可能に嵌合又は係着する容器61を設け、回転フレーム20の上板201から回転フレーム20内部に突出する容器ホルダ60の回転軸601を、磁性流体シール33により上板201下面に軸封して、回転フレーム20内部に設けた自転用電動機30の回転軸31と連結してなる機構を備え、大気圧チャンバー702内に、公転用電動機10を設け、真空圧チャンバー701内の回転フレーム20の回転軸21から大気圧チャンバー702内に突出した回転軸21を磁性流体シール12により隔壁75下面に軸封して公転用電動機10の回転軸11と連結し、大気圧チャンバー702内の回転フレーム20の回転軸21外周面にスリツプリング装置40を設けて、回転軸21の中空部の孔部を介して、回転フレーム20内部に設けた自転用電動機30と電気接続し、スリツプリング装置40のスリツプリング41にブラシング装置50のブラシ51を電気接触させて外部電源から給電できるようにしてなる機構を備えていることを特徴とした遊星運動式真空撹拌脱泡装置。
【請求項2】
前記回転フレーム20が、真空圧チャンバー701内で、真空ポンプを小型化できるような大きな容積を有していることを特徴とする請求項1記載の遊星運動式真空撹拌脱泡装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
2種類又は2種類以上の物質を収容した容器61を、あたかも宇宙の遊星のように、公転させると共に自転させる運動を、真空雰囲気中で行うことにより、撹拌して、前記物質を均一混合すると共に脱泡できるようにした遊星運動式真空撹拌脱泡装置であって、ケース70内を隔壁75を介して真空圧チャンバー701と大気圧チャンバー702に隔離して、真空圧チャンバー701内には、支持フレーム76、77を設けて、真空圧チャンバー701に対し密封される中空部を設けた回転軸21を回転可能に軸支し、回転軸21に上板201と側板202と底板203とからなる空気を密封して密封箱状に形成すると共に、真空圧チャンバー701内で、真空ポンプ80を小型化できるような大きな容積を有している回転フレーム20を固着し、回転フレーム20の上板201に容器ホルダ60を回転軸601により回転可能に軸支し、容器ホルダ60内に着脱可能に嵌合又は係着する容器61を設け、回転フレーム20の上板201から回転フレーム20内部に突出する容器ホルダ60の回転軸601を、磁性流体シール33により上板201下面に軸封して、回転フレーム20内部に設けた自転用電動機30の回転軸31と連結してなる機構を備え、大気圧チャンバー702内に、公転用電動機10を設け、真空圧チャンバー701内の回転フレーム20の回転軸21から大気圧チャンバー702内に突出した回転軸21を磁性流体シール12により隔壁75下面に軸封して公転用電動機10の回転軸11と連結し、大気圧チャンバー702内の回転フレーム20の回転軸21外周面にスリツプリング装置40を設けて、回転軸21の中空部の孔部を介して、回転フレーム20内部に設けた自転用電動機30と電気接続し、スリツプリング装置40のスリツプリング41にブラシング装置50のブラシ51を電気接触させて外部電源から給電できるようにしてなる機構を備えていることを特徴とした遊星運動式真空撹拌脱泡装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−289253(P2006−289253A)
【公開日】平成18年10月26日(2006.10.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−112859(P2005−112859)
【出願日】平成17年4月8日(2005.4.8)
【特許番号】特許第3823141号(P3823141)
【特許公報発行日】平成18年9月20日(2006.9.20)
【出願人】(391042232)ワタナベ株式会社 (41)
【Fターム(参考)】