説明

運動データ表示制御装置、携帯型機器及びプログラム

【課題】ユーザが停止中であるか否かを適確に判断して、誤差の無い正確な運動データを提供すると共に、消費電力の効率の改善を図ること。
【解決手段】ユーザの運動中は所定の時間間隔で現在位置データを取得してゆき、この取得された位置データに基づいて現在の運動データを算出表示する(A5→A13)が、運動を止めて振動が検出されなくなった場合は前記時間間隔を延長し、再び振動が検出されるようになった場合は延長した時間間隔を元に戻す制御を行う(A15→A16、A17→A27)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ユーザの運動中の運動データが表示される表示部を備えている運動データ表示制御装置等に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、GPS衛星を用いた位置計測システム(GPS:Global Positioning System)によりユーザの現在位置を示す位置データを取得する測位機能を備えた運動データ表示制御装置が存在する。
【0003】
そして、このような運動データ表示制御装置を具備した携帯型機器の一種として、例えば長距離走者等のユーザが装着する腕時計であって、取得した位置データに基づいて、単位時間毎にユーザの走行に係る情報である運動データ(例えば、走行距離や走行速度等)を算出して表示するものが考案されている(例えば、特許文献1。)。
【特許文献1】特開平10−39059号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に開示されているような腕時計では、GPSの測位機能により取得される位置データに数十メートル程の誤差があるために、ユーザが停止している場合であっても常に動いているかのように計測されてしまい、誤った運動データがユーザに提供され得る。
【0005】
また、取得される位置データに誤差があることを考慮すると、ユーザが停止している場合に、移動している場合と同じように位置データを取得することは、消費電力の面から見ても非効率である。
【0006】
本発明はこのような課題に鑑みて為されたものであり、その目的とするところは、ユーザが停止中であるか否かを適確に判断して、誤差の無い正確な運動データを提供すると共に、消費電力の効率の改善を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上の課題を解決するために、請求項1に記載の運動データ表示制御装置は、
ユーザの運動中の運動データが表示される表示部(例えば、図2の表示部40)を備えている運動データ表示制御装置(例えば、図1の腕時計1)において、
振動を検出する振動検出手段(例えば、図2の振動検出部60)と、
所定の時間間隔で現在位置を示す位置データを取得していく位置データ取得手段(例えば、図2のGPS受信部50)と、
この位置データ取得手段により取得された位置データに基づいて現在の運動データを算出する運動データ算出手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA7、A9)と、
この運動データ算出手段により算出された運動データを前記表示部に表示する制御を行う運動データ表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA11、A13)と、
前記振動検出手段により振動が検出されなくなった場合に、前記時間間隔を延長し、前記振動検出手段により再び振動が検出されるようになった場合に、前記延長した時間間隔を元に戻す制御を行う時間間隔制御手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA15;Yes→A16、ステップA17;Yes→A27)と、
を備えることを特徴している。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の運動データ表示制御装置であって、
前記運動データ算出手段は、前記時間間隔制御手段により前記時間間隔が延長された場合に、運動データの算出を停止し、前記延長された時間間隔が元に戻された場合に、運動データの算出を再開する(例えば、図2のCPU20;図5のステップA15;Yes→A17;No→A20、A21、ステップA17;Yes→A29;No→A7、A9)ことを特徴している。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動データ表示制御装置であって、
前記運動データ算出手段は、前記位置データ取得手段により取得された位置データに基づいて移動距離を前記運動データとして算出する距離算出手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA7)を有し、
前記運動データ表示制御手段は、前記距離算出手段により算出された移動距離を表示する制御を行う距離表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA11)を有する、
ことを特徴としている。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動データ表示制御装置であって、
前記運動データ算出手段は、前記位置データ取得手段により取得された位置データ及び前記時間間隔に基づいて移動速度を前記運動データとして算出する速度算出手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA9)を有し、
前記運動データ表示制御手段は、前記速度算出手段により算出された移動速度を表示する制御を行う速度表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA13)を有する、
ことを特徴としている。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1又は2に記載の運動データ表示制御装置であって、
前記運動データ算出手段は、運動継続時間を前記運動データとして算出する時間算出手段(例えば、図2の計時部90)を有し、
前記運動データ表示制御手段は、前記時間算出手段により算出された運動継続時間を表示する制御を行う時間表示制御手段(例えば、図2のCPU20;図5のステップA1)を有する、
ことを特徴としている。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5の何れか一項に記載の運動データ表示制御装置をユーザの身体の一部に装着される装着本体に具備したことを特徴とする携帯型機器(例えば、図1の腕時計1)である。
【0013】
請求項7に記載のプログラムは、
振動を検出する振動検出手段と、表示手段とを備えたコンピュータに、
所定の時間間隔で現在位置を示す位置データを取得していく位置データ取得機能と、
この位置データ取得機能により取得された位置データに基づいて現在の運動データを算出する運動データ算出機能(例えば、図5のステップA7、A9)と、
この運動データ算出機能により算出された運動データを前記表示手段に表示させる運動データ表示制御機能(例えば、図5のステップA11、A13)と、
前記振動検出手段により振動が検出されなくなった場合に、前記時間間隔を延長し、前記振動検出手段により再び振動が検出されるようになった場合に、前記延長した時間間隔を元に戻す制御を行う時間間隔制御機能(例えば、図5のステップA15;Yes→A16、ステップA17;Yes→A27)と、
を実現させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の発明によれば、振動を検出すると共に、所定の時間間隔で取得した位置データに基づいて現在の運動データを算出し、算出した運動データを表示する。また、振動が検出されなくなった場合は、前記時間間隔を延長し、再び振動が検出されるようになった場合は、延長した時間間隔を元に戻す。従って、振動が検出されなくなった場合は、位置データを取得する時間間隔が長くなるため、それに伴って運動データを算出する時間間隔が長くなり、次に運動データが算出されるまでの間は表示が更新されなくなる。このため、ユーザが停止中に、誤差が含まれ得る運動データを次々に表示更新してユーザに不適切な情報を提供するといったことがなく、誤差の無い正確な運動データを提供することができるようになる。また、振動が検出されなくなった場合は、位置データを取得する時間間隔が長くなることから、振動が検出されている場合に比べて単位時間当たりの位置データの取得回数が少なくなり、結果として消費電力を抑えることができるようになる。
【0015】
請求項2に記載の発明によれば、前記時間間隔が延長された場合に、運動データの算出を停止し、延長された時間間隔が元に戻された場合に、運動データの算出を再開する。従って、ユーザの停止中は、位置データが取得された場合であっても運動データの算出が停止され、運動データの表示が更新されないため、誤った運動データが提供される可能性を完全に排除することができるようになる。
【0016】
請求項3に記載の発明によれば、取得した位置データに基づいて移動距離を算出し、運動データとして表示することができる。
【0017】
請求項4に記載の発明によれば、取得した位置データ及び時間間隔に基づいて移動速度を算出し、運動データとして表示することができる。
【0018】
請求項5に記載の発明によれば、運動継続時間を算出し、運動データとして表示することができる。
【0019】
請求項6に記載の発明によれば、請求項1〜5の何れか一項に記載の発明と同様の作用効果を奏する携帯型機器を実現することができる。
【0020】
請求項7に記載の発明によれば、振動を検出する振動検出手段と、表示手段とを備えたコンピュータに、所定の時間間隔で取得した位置データに基づいて現在の運動データを算出し、算出した運動データを表示させる機能を実現させる。また、振動が検出されなくなった場合は、前記時間間隔を延長し、再び振動が検出されるようになった場合は、延長した時間間隔を元に戻す機能を実現させる。従って、振動が検出されなくなった場合は、位置データを取得する時間間隔が長くなるため、それに伴って運動データを算出する時間間隔が長くなり、次に運動データが算出されるまでの間は表示が更新されなくなる。このため、ユーザが停止中に、誤差が含まれ得る運動データを次々に表示更新してユーザに不適切な情報を提供するといったことがなく、誤差の無い正確な運動データを提供することができるようになる。また、振動が検出されなくなった場合は、位置データを取得する時間間隔が長くなることから、振動が検出されている場合に比べて単位時間当たりの位置データの取得回数が少なくなり、結果として消費電力を抑えることができるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明を適用した携帯型機器の一種である腕時計1について説明する。腕時計1は、例えばユーザである長距離走者(以下、「走者」と呼ぶ。)がマラソン等の長距離走において装着し、運動中の運動データを計測する目的で使用される。
【0022】
〔構成〕
先ず、構成を説明する。
図1は、腕時計1の概略外観図であり、図2は、腕時計1の内部構成を示すブロック図である。腕時計1は、本体2と、バンド部3とから構成され、本体2には、CPU(Central Processing Unit)20と、モードを選択するためのボタンを含む入力部30と、運動データ等のデータが表示される表示部40と、GPS衛星5からの信号(電波)を受信し、走者の現在位置を示す位置データを取得するGPS受信部50と、振動を検出する振動検出部60と、ROM(Read Only Memory)70と、RAM(Random Access Memory)80と、計時部90とが内蔵され、各部がバス100で相互にデータ通信可能に接続されて構成されている。
【0023】
CPU20は、入力部30を介して入力される指示に基づいて、ROM70内のプログラムに従って各種処理を実行し、その処理結果を表示部40に表示させる。
【0024】
入力部30は、押下されたボタンの信号をCPU20に出力する。この入力部30におけるボタンの押下操作により、走者は通常の時計としての時刻表示モードと、運動データの計測を行う計測モードとの何れかを選択することができる。また、計測モードを選択した場合には、計測の開始、終了を指示する。尚、この入力部30は、必ずしもボタンである必要はなく、例えばタッチパネルであってもよい。
【0025】
表示部40は、計測された運動データ等の各種データが表示される部分であって、LCD(Liquid Crystal Display)等により構成されており、CPU20から入力される表示信号に基づいた表示を行う。
【0026】
GPS受信部50は、GPS衛星5から送信されるGPS信号(電波)を受信し、地球座標系における現在位置を測位する回路部であり、測位することによって取得した位置データをCPU20に出力する。
【0027】
振動検出部60は、例えば傾斜センサ等で構成される振動センサであり、走者の腕の振りに応じた振動を検出する。具体的には、走者の走行中の腕の振りに合わせた振動をON/OFFとして検出する。走者が停止中の場合には腕の振りが無いため、ON/OFFの連続的な切り替わりを検出せず、振動の検出がなされないことになる。
【0028】
ROM70は、腕時計1の備える各種機能を実現するためのプログラム等を記憶し、走者により計測モードが選択され、計測の開始が指示されることでCPU20により読み出され、運動データ計測処理(図5参照)として実行される運動データ計測プログラム701を記憶している。
【0029】
運動データ計測処理とは、CPU20が、振動検出部60により振動が検出されている場合は、GPS受信部50による位置データ取得の時間間隔を“1秒”に設定し、GPS受信部50により取得される位置データに基づいて、走者の走行距離と走行速度とを運動データとして算出して、表示更新させる処理である。一方、振動検出部60による振動の検出がなされなくなった場合は、CPU20は、再び振動が検出されるまで位置データ取得の時間間隔を“30秒”に設定し、位置データが取得された場合であっても走者の走行距離及び走行速度の算出は行わず、表示更新も行わない。また、CPU20は、走行距離と走行速度とに加えて走行継続時間を運動データとして表示させる。但し、走行継続時間は、振動の検出・不検出に関わらず、ストップウォッチの原理で常時表示更新させる。この運動データ計測処理については、詳細に後述する。
【0030】
RAM80は、CPU20の作業領域として各種データを一時的に記憶するための記憶領域であり、計測データ802を記憶する計測データ格納領域801を備えている。
【0031】
計測データ802は、位置データ803と運動データ804とが対応付けられたデータであり、そのデータ構成例を図3に示す。位置データ803は、GPS衛星5からの信号(電波)に基づいてGPS受信部50により取得されるデータであり、走者の現在位置が緯度及び経度で表される。
【0032】
運動データ804は、走者の運動状態を表すデータであり、走行距離と、走行継続時間と、走行速度とで構成される。走行距離は位置データ803に基づいて算出され、走行速度は位置データ803と位置データ取得の時間間隔(“1秒”)とに基づいて算出される。但し、計測データ格納領域801には、時間間隔毎に走行継続時間が記憶されるが、表示部40に表示される走行継続時間は常時更新される。
【0033】
CPU20は、振動が検出されている場合は、GPS受信部50により取得された位置データ803に基づいて走行距離と走行速度とを算出し、走行継続時間と併せて運動データ804とする。そして、運動データ804を位置データ803に対応付けて、計測データ格納領域801に順次格納していく。一方、CPU20は、振動が検出されなくなった場合は、走行距離を最新の値とし、走行速度を「0km/h」として、走行継続時間と合わせて運動データ804とする。そして、計測データ格納領域801に順次格納していく。
【0034】
計時部90は、時刻表示モードにおいて現在時刻を表示させるための時計機能と、計測モードにおいてストップウォッチとしての役割を果たすストップウォッチ機能とを備えた機能部である。
【0035】
〔原理〕
次に、図4を参照して、運動データ計測の原理について説明する。
ここでは、走者が腕時計1を装着し、A地点からC地点までの走行コースを走行する場合を例に挙げて説明する。
【0036】
先ず、走者はA地点から走行を開始し、途中のB地点まで休息を取ることなく走行を続けたとする。この場合、A−B区間においては、継続的に振動が検出されるため、位置データ取得の時間間隔を“1秒”とし、取得した位置データ803に基づいて“1秒”毎に運動データ804を算出する。
【0037】
次に、走者はB地点において走行を中断し、一時的に休息を取ったとする。この場合、振動が検出されなくなるため、位置データ取得の時間間隔を“30秒”に延長する。また、位置データ803を“30秒”毎に取得するが、取得した位置データ803に基づいた運動データ804の算出は停止する。但し、運動データのうち、走行継続時間については計測を継続する。
【0038】
最後に、走者はB地点から走行を開始し、ゴールであるC地点まで休息を取ることなく走行を続けたとする。この場合、B−C区間においては、継続的に振動が検出されるため、位置データ取得の時間間隔を再び“1秒”に戻し、運動データ804の算出を再開する。
【0039】
〔動作〕
次に動作を説明する。
図5は、走者により計測モードにおいて計測の開始が指示され、CPU20により運動データ計測プログラム701が読み出されて実行されることにより腕時計1において実行される運動データ計測処理の流れを示すフローチャートである。
【0040】
先ず、CPU20は、初期設定として位置データ取得の時間間隔を“1秒”に設定し、計時部90にストップウォッチを始動させ、走行継続時間を運動データとして表示部40に表示させる(ステップA1)。以後、表示される走行継続時間は、ストップウォッチの原理で常時更新される。
【0041】
次いで、CPU20は、ストップウォッチの計測時間が正秒であるか否かを判定することで位置データ取得の時間間隔である“1秒”が経過したか否かを判定する(ステップA3)。そして、経過していないと判定した場合には(ステップA3;No)、そのまま待機し、経過したと判定した場合には(ステップA3;Yes)、GPS受信部50から走者の位置データ803を取得して(ステップA5)、計測データ格納領域801に格納する(ステップA6)。
【0042】
そして、CPU20は、取得した位置データ803に基づいて走行距離を算出すると共に(ステップA7)、位置データ803と位置データ取得の時間間隔(“1秒”)とに基づいて走行速度を算出する(ステップA9)。そして、CPU20は、ステップA7及びA9で算出した走行距離及び走行速度を、ストップウォッチで計測されている走行継続時間と併せて運動データ804とし、位置データ803に対応付けて計測データ格納領域801に格納する(ステップA10)。
【0043】
次いで、CPU20は、ステップA7及びA9で算出した走行距離及び走行速度で、表示部40の表示を更新させる(ステップA11、A13)。そして、CPU20は、振動検出部60により振動が検出されなくなったか否かを判定する(ステップA15)。
【0044】
ステップA15において、振動が検出されていると判定した場合には(ステップA15;No)、CPU20は、ステップA29へと処理を移行し、振動が検出されなくなったと判定した場合には(ステップA15;Yes)、GPS受信部50による位置データ取得の時間間隔を“30秒”に設定する(ステップA16)。
【0045】
次いで、CPU20は、振動が検出されたか否かを判定し(ステップA17)、未だ検出されないと判定した場合には(ステップA17;No)、位置データ取得の時間間隔である“30秒”が経過したか否かを判定する(ステップA19)。
【0046】
ステップA19において、“30秒”が経過していないと判定した場合には(ステップA19;No)、CPU20は、走行距離を、ステップA7において算出され、運動データ804に記憶されている最新の値とし(ステップA20)、走行速度を「0km/h」とする(ステップA21)。そして、CPU20は、ステップA20及びA21で設定した走行距離及び走行速度を、ストップウォッチで計測されている走行継続時間と併せて運動データ804とし、計測データ格納領域801に格納する(ステップA22)。また、表示部40に表示される走行速度及び走行距離は、ステップA20及びA21で設定した値のままとする。
【0047】
また、ステップA19において、“30秒”が経過したと判定した場合には(ステップA19;Yes)、CPU20は、GPS受信部50から走者の位置データ803を取得して(ステップA23)、計測データ格納領域801に格納し(ステップA25)、ステップA20へと処理を移行する。
【0048】
一方、ステップA17において、振動が検出されたと判定した場合には(ステップA17;Yes)、CPU20は、GPS受信部50による位置データ取得の時間間隔を“1秒”に設定する(ステップA27)。
【0049】
そして、CPU20は、走者により計測の終了が指示されたか否かを判定し(ステップA29)、指示されなかったと判定した場合には(ステップA29;No)、ステップA3に戻り、指示されたと判定した場合には(ステップA29;Yes)、運動データ計測処理を終了する。
【0050】
〔表示画面〕
次に、これまでの処理について、表示画面例を参照しつつ、具体的に説明する。
尚、表示画面中では、走行距離、走行継続時間及び走行速度を、簡単に距離、時間及び速度として表示する。また、表示画面中に示される運動データの数値は、図3の計測データ802に示した数値に基づいたものである。
【0051】
図6(a)〜(c)は、振動検出部60により振動が検出されている間、即ち走者の走行中に表示部40に表示される表示画面の遷移例を示す図である。
先ず、表示画面W10では、運動データのうち、走行距離D10が「2590m」、走行継続時間T10が「4’37”75」、走行速度V10が「21.6km/h」として表示されている。その後、計測時間が正秒である「4’38”00」になると、GPS受信部50により取得された位置データに基づいて(図5のステップA5)、走行距離「2595m」と走行速度「18.0km/h」とが新たに算出され(図5のステップA7、A9)、走行継続時間「4’38”00」と共に、表示画面W12においてD12、T12、V12としてそれぞれ表示更新される(図5のステップA11、A13)。
【0052】
その後、計測時間が経過していき、計測時間「4’38”32」においては、表示画面W14の走行継続時間T14として「4’38”32」が表示されるが、表示画面W12の「4’38”00」から“1秒”が経過していないため、走行距離及び走行速度は、表示画面W12の走行距離「2595m」及び走行速度「18.0km/h」のままである。尚、この後、計測時間が「4’39”00」になった時点で、新たに取得される位置データに基づいて、走行距離及び走行速度が新たに算出されて更新されることになる。
【0053】
図6(d)〜(f)は、振動検出部60により振動が検出されていない間、即ち走者の停止中に表示部40に表示される表示画面の遷移例を示す図である。
表示画面W14の表示の後、例えば計測時間「4’38”75」において走者が走行を停止したことで振動が検出されなくなると、位置データ取得の時間間隔が“30秒”に設定される(図5のステップA16)。また、走行距離と走行速度との算出が停止され、計測時間が「4’39”00」になると、表示画面W16において走行継続時間T16として「4’39”00」が表示される。しかし、走行距離D16は走者が停止する直前の最新の値である「2595m」、走行速度V16は「0km/h」と表示される。
【0054】
その後、計測時間が経過していき、計測時間「4’39”48」においては、表示画面W18の走行継続時間T18として「4’39”48」が表示更新されるが、走行距離及び走行速度は、表示画面W16の走行距離「2595m」及び走行速度「0km/h」のままとされる。また、計測時間が正秒である「4’40”00」になった場合の表示画面が表示画面W20であるが、位置データ取得の時間間隔が“30秒”であるため、走行継続時間T20は「4’40”00」として表示更新されるが、走行距離及び走行速度は表示更新されない。
【0055】
〔作用効果〕
以上の通りに、本実施形態によれば、振動が検出されている間は、位置データ取得の時間間隔を“1秒”に設定し、取得された位置データに基づいて走行距離と走行速度とを運動データとして算出して表示更新するが、振動が検出されない間は、位置データ取得の時間間隔を“30秒”に設定し、位置データが取得された場合であっても走行距離及び走行速度の算出を行わないようにする。
【0056】
具体的には、走者が走行を停止した場合には、走行距離として走行を停止する直前の最新の値、走行速度として「0km/h」を表示させるようにしているため、停止中における正確な走行距離と走行速度とが表示されることになる。従って、走者が停止中であるか否かを適確に判断して、誤差の無い正確な運動データを提供することができる。
【0057】
また、振動が検出されない間は、位置データ取得の時間間隔が“1秒”から“30秒”に延長されることから、振動が検出されている間に比べて単位時間当たりの位置データの取得回数が少なくなり、結果として消費電力を抑えることができるようになる。
【0058】
〔変形例〕
(A)位置データ取得の時間間隔
本実施形態では、GPS受信部50による位置データ取得の時間間隔を、振動が検出されている間は“1秒”、振動が検出されない間は“30秒”に設定するものとして説明した。しかし、この時間間隔は適宜変更可能である。また、振動が検出されない間は、位置データを一切取得しないようにしても勿論良い。
【0059】
(B)マークの表示
本実施形態では、振動が検出されない間は走行距離と走行速度との算出を停止するようにしているため、走者にその旨を伝えるようにすれば尚良い。例えば、振動が検出されない間は、図7(a)〜(c)の表示画面W30〜W34に示すようなマークM30〜M34を表示させる。
【0060】
(C)走行継続時間の表示
本実施形態では、振動が検出されない間も走行継続時間の表示を常時更新させるものとして説明した。しかし、このような構成を採るのではなく、振動が検出されない間はストップウォッチによる計測を停止し、図7(d)〜(f)の表示画面W40〜W44のT40〜T44に示すように、振動が検出されなくなった時の計測時間(ここでは、「4’38”75」)のまま、走行継続時間の表示を更新させないようにしても良い。
【0061】
(D)振動センサの種類
本実施形態では、振動センサは傾斜センサであるものとして説明したが、例えば加速度センサやジャイロセンサ等のセンサで同様の機能を実現させても良い。
【0062】
(E)位置データの取得方法
本実施形態では、GPS衛星5から送信される信号(電波)に基づいて位置データを取得するものとして説明した。しかし、例えば走行コースに沿って、所定の設置位置に信号を発信する発信機を設置しておき、走者が発信機の近傍を通過した際に、当該発信機から送信される信号を受信して位置データを取得するような構成としても良い。
【0063】
(F)運動データ表示制御装置を具備した携帯型機器の形態
本実施形態では、本発明を適用した携帯型機器として腕時計1を例に挙げて説明したが、例えばポケット等に収容可能な小型機器としても良い。また、ベルトをつけて腕や足首などに装着可能な装置としても良いし、ヘッドホン型の装置としても良い。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】腕時計の概略外観図。
【図2】腕時計の内部構成を示すブロック図。
【図3】計測データのデータ構成の一例を示す図。
【図4】運動データ計測の原理を示す図。
【図5】運動データ計測処理の流れを示すフローチャート。
【図6】表示画面の一例を示す図。
【図7】変形例における表示画面の一例を示す図。
【符号の説明】
【0065】
1 腕時計
2 本体
3 バンド部
5 GPS衛星
20 CPU
30 入力部
40 表示部
50 GPS受信部
60 振動検出部
70 ROM
701 運動データ計測プログラム
80 RAM
801 計測データ格納領域
90 計時部
100 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ユーザの運動中の運動データが表示される表示部を備えている運動データ表示制御装置において、
振動を検出する振動検出手段と、
所定の時間間隔で現在位置を示す位置データを取得していく位置データ取得手段と、
この位置データ取得手段により取得された位置データに基づいて現在の運動データを算出する運動データ算出手段と、
この運動データ算出手段により算出された運動データを前記表示部に表示する制御を行う運動データ表示制御手段と、
前記振動検出手段により振動が検出されなくなった場合に、前記時間間隔を延長し、前記振動検出手段により再び振動が検出されるようになった場合に、延長した時間間隔を元に戻す制御を行う時間間隔制御手段と、
を備えることを特徴とする運動データ表示制御装置。
【請求項2】
前記運動データ算出手段は、前記時間間隔制御手段により前記時間間隔が延長された場合に、運動データの算出を停止し、延長された時間間隔が元に戻された場合に、運動データの算出を再開することを特徴とする請求項1に記載の運動データ表示制御装置。
【請求項3】
前記運動データ算出手段は、前記位置データ取得手段により取得された位置データに基づいて移動距離を前記運動データとして算出する距離算出手段を有し、
前記運動データ表示制御手段は、前記距離算出手段により算出された移動距離を表示する制御を行う距離表示制御手段を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運動データ表示制御装置。
【請求項4】
前記運動データ算出手段は、前記位置データ取得手段により取得された位置データ及び前記時間間隔に基づいて移動速度を前記運動データとして算出する速度算出手段を有し、
前記運動データ表示制御手段は、前記速度算出手段により算出された移動速度を表示する制御を行う速度表示制御手段を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運動データ表示制御装置。
【請求項5】
前記運動データ算出手段は、運動継続時間を前記運動データとして算出する時間算出手段を有し、
前記運動データ表示制御手段は、前記時間算出手段により算出された運動継続時間を表示する制御を行う時間表示制御手段を有する、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の運動データ表示制御装置。
【請求項6】
請求項1〜5の何れか一項に記載の運動データ表示制御装置をユーザの身体の一部に装着される装着本体に具備したことを特徴とする携帯型機器。
【請求項7】
振動を検出する振動検出手段と、表示手段とを備えたコンピュータに、
所定の時間間隔で現在位置を示す位置データを取得していく位置データ取得機能と、
この位置データ取得機能により取得された位置データに基づいて現在の運動データを算出する運動データ算出機能と、
この運動データ算出機能により算出された運動データを前記表示手段に表示させる運動データ表示制御機能と、
前記振動検出手段により振動が検出されなくなった場合に、前記時間間隔を延長し、前記振動検出手段により再び振動が検出されるようになった場合に、前記延長した時間間隔を元に戻す制御を行う時間間隔制御機能と、
を実現させるためのプログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2007−24579(P2007−24579A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−204402(P2005−204402)
【出願日】平成17年7月13日(2005.7.13)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【Fターム(参考)】