説明

運動器具用抵抗装置

【解決手段】人力により回転し得る駆動回転軸6を支持する受け台と、駆動回転軸6の回転中心線6aの外周で受け台に取り付けた連動磁石15,16と、駆動回転軸6とともに回転するフライホイール9と、連動磁石15,16とフライホイール9との間で駆動回転軸6とともに回転して連動磁石15,16とフライホイール9との間で生じる磁力線を通過する回転板10とを備えている。回転中心線6aに対する連動磁石15,16の半径方向距離を変更し得るように受け台に対し連動磁石15,16を移動調節可能に支持して、各区画面31及び各段差面32と連動磁石15,16との回転中心線方向距離Wの和を各種変更することができる。
【効果】フライホイール9を兼用して運動器具用抵抗装置を小型化することができるとともに、複数の連動磁石15,16の相対的位置関係を各種組み合わせるだけで、電磁ブレーキ作用による負荷抵抗範囲を広げることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種運動器具において、人力により回転し得る回転電気導体に磁石の磁力線が働いて発生する渦電流で電磁ブレーキ作用による負荷を与える抵抗装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下記特許文献1に開示された運動器具用抵抗装置では、人力により回転し得る駆動回転軸の両端部のうち、一端部側にフライホイールが配設されているとともに、他端部側には上記電磁ブレーキ作用による負荷を与える負荷付与機構が配設されている。しかし、駆動回転軸の両端部で互いに分けて配設したフライホイールと負荷付与機構とにより運動器具用抵抗装置が大型化する問題があった。そこで、上記電磁ブレーキ作用による負荷を与える運動器具用抵抗装置を小型化したものが下記特許文献2に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2002−263212号公報
【特許文献2】特開2009−297086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1,2に開示された運動器具用抵抗装置を始めとして現在市場に出回っているものは負荷抵抗範囲が狭いため、大きい負荷抵抗を必要とする運動や小さい負荷抵抗を必要とする運動などの各種運動目的に応じてそれぞれ用意する必要があり、汎用性に欠ける問題があった。
【0005】
この発明は負荷抵抗範囲の広い運動器具用抵抗装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
後記実施形態の図面(図1〜8)の符号を援用して本発明を説明する。
請求項1の発明にかかる運動器具用抵抗装置は、人力により回転し得る駆動回転軸6を支持する支持体5と、この駆動回転軸6の回転中心線6aの外周でこの支持体5に取り付けた磁石15,16と、この駆動回転軸6とともに回転するフライホイール9と、この磁石15,16とフライホイール9との間で駆動回転軸6とともに回転して磁石15,16とフライホイール9の電気導体面31,32との間で生じる磁力線を通過する回転電気導体10とを備えている。前記磁石は可動手段13,14,20,21,22,23,24,25,26により相対的位置関係を変更し得る複数の磁石15,16を含む。例えば、各磁石15,16は互いに連動して相対的位置関係を変更し得る。
【0007】
請求項1の発明では、磁石15,16との間で磁力線を生じさせる電気導体としてフライホイール9を兼用したので、電磁ブレーキ作用による負荷を与える負荷付与機構Mを簡略化することができる。また、複数の磁石15,16の相対的位置関係を各種組み合わせるだけで、電磁ブレーキ作用による負荷抵抗を各種変更して負荷抵抗範囲を広げることができる。
【0008】
請求項1の発明を前提とする請求項2の発明において、前記各磁石15,16の相対的位置関係の変更により、その各磁石15,16とフライホイール9の電気導体面31,32との間の回転中心線方向距離Wの和を変更し得る。請求項2の発明では、複数の磁石15,16の相対的位置関係を各種組み合わせて回転中心線方向距離Wの和を各種変更して負荷抵抗範囲を広げることができる。
【0009】
請求項1または請求項2の発明を前提とする請求項3の発明において、前記各磁石15,16は、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lを変更し得るように支持体5に対し可動手段により移動調節可能に支持されている。請求項3の発明では、各磁石15,16の半径方向距離Lを変更して磁石15,16とフライホイール9の電気導体面31,32との間の回転中心線方向距離Wを変更する簡単な構成により、負荷を調節することができる。
【0010】
請求項3の発明を前提とする請求項4の発明において、前記可動手段は、前記回転中心線方向距離Wの和が最も小さくなる各磁石15,16の相対的位置関係を有する最大抵抗状態F1と最も大きくなる各磁石15,16の相対的位置関係を有する最小抵抗状態F3とのうち、一方から他方へ、順次、抵抗を変化し得る切替え操作部26を備えている。請求項4の発明では、切替え操作部26により、最大抵抗状態F1と最小抵抗状態F3との間で抵抗を順次変化させて負荷抵抗範囲で最適な負荷を選択することができる。
【0011】
請求項4の発明を前提とする請求項5の発明において、前記可動手段は、駆動回転軸6の回転中心線6aに対し半径方向へ偏心した軸心12aを中心に回動し得る複数のレバー13,14と、前記切替え操作部26により駆動回転軸6の回転中心線6aを中心に回動し得る連動部材20と、この連動部材20と各レバー13,14との間に設けたカム機構部21,22,23,24とを備え、前記磁石15,16はこの各レバー13,14に取り付けられ、この切替え操作部26により連動部材20とカム機構部21,22,23,24とを介して各レバー13,14を互いに連動して回動させて駆動回転軸6の回転中心線6aに対する各磁石15,16の半径方向距離Lを変更し得る。請求項5の発明では、簡単な構成により駆動回転軸6の回転中心線6aに対する磁石15,16の半径方向距離Lを容易に変更することができる。
【0012】
請求項2から請求項5のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする請求項6の発明において、前記磁石15,16とフライホイール9の電気導体面31,32との間に磁気シールド体30を設けた。例えば、この磁気シールド体30はフライホイール9及び回転電気導体10とともに着脱可能に設けられている。請求項6の発明では、この磁気シールド体30が磁束を吸収して負荷を減少させることができる。
【0013】
次に、請求項以外の技術的思想について実施形態の図面の符号を援用して説明する。
請求項2から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明を前提とする第7の発明において、前記回転電気導体10は駆動回転軸6の回転中心線6aの外周でその回転中心線6aの方向へ貫通する透孔29を有している。例えば、複数の透孔29が駆動回転軸6の回転中心線6aの外周で環状に並設されている。第7の発明では、透孔29を磁力線が通過するため、その透孔29により回転電気導体10の負荷抵抗を小さくして、その透孔29の有無により回転電気導体10の内外周間での負荷抵抗差を大きくすることができる。
【0014】
請求項2から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明、または第7の発明を前提とする第8の発明において、前記フライホイール9の電気導体面31,32は、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lが小さくなるに従い磁石15,16に対する回転中心線方向距離Wが複数段階的にまたは無段階的に大きくなるように形成されている。第8の発明では、半径方向へ移動し得る磁石15,16に対する回転中心線方向距離Wが変化する電気導体面31,32の形態変化により、フライホイール9の回転中心線6a側から遠くなる外周側ほど重くして、フライホイール9としての機能を高めることができる。
【0015】
請求項2から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明、または第7の発明または第8の発明を前提とする第9の発明において、前記フライホイール9の電気導体面31,32は、駆動回転軸6の回転中心線6aを中心とする環状に形成されている。第9の発明では、フライホイール9の回転中にその電気導体面31,32と磁石15,16との間で生じる磁力線により負荷を連続的に与えることができる。
【0016】
請求項2から請求項6のうちいずれか一つの請求項の発明、または第7の発明または第8の発明または第9の発明を前提とする第10の発明において、前記フライホイール9の電気導体面は、駆動回転軸6の回転中心線6aを中心とする同心円環状をなす複数の区画面31を半径方向へ並設して互いに隣接する両区画面31間に段差面32を形成したものである。第10の発明では、フライホイール9の回転中にその電気導体面31,32と磁石15,16との間で生じる磁力線により負荷を連続的に与えることができる。また、フライホイール9において半径方向へ移動し得る磁石15,16に対する回転中心線方向距離Wが変化する電気導体面31,32を容易に形成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、磁石15,16との間で磁力線を生じさせる電気導体としてフライホイール9を有効に兼用して、電磁ブレーキ作用による負荷を与える運動器具用抵抗装置1を小型化することができるばかりでなく、負荷抵抗範囲の広い運動器具用抵抗装置1を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】(a)は本実施形態にかかる抵抗装置を設置した自転車運動器具を概略的に示す使用状態図であり、(b)は上記抵抗装置のみを示す一部切欠き正面図である。
【図2】最大抵抗状態にある上記抵抗装置の一部破断部分正面図である。
【図3】(a)は上記抵抗装置の最大抵抗状態を図2のA1−A1線で切断して側面側から見た断面図であり、(b)は同じく図2のA2−A2線で切断して側面側から見た断面図である。
【図4】中間抵抗状態にある上記抵抗装置の一部破断部分正面図である。
【図5】(a)は上記抵抗装置の中間抵抗状態を図4のB1−B1線で切断して側面側から見た断面図であり、(b)は同じく図4のB2−B2線で切断して側面側から見た断面図である。
【図6】最小抵抗状態にある上記抵抗装置の一部破断部分正面図である。
【図7】(a)は上記抵抗装置の最小抵抗状態を図6のC1−C1線で切断して側面側から見た断面図であり、(b)は同じく図6のC2−C2線で切断して側面側から見た断面図である。
【図8】(a)は図2または図4または図6のD−D線で切断して側面側から見た回転板を示す断面図であり、(b)は同じくフライホイールを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態にかかる運動器具用抵抗装置について図面を参照して説明する。
図1(a)に示すように、この抵抗装置1は、自転車2の後車輪3を支えるように設置されたブラケット4に対し図1(b)に示す支持体としての受け台5に取り付けられている。図2,3に示す駆動回転軸6はこの受け台5に支持され、この受け台5上でローラ7がこの駆動回転軸6に対し回転中心線6aを中心に一体的に回転し得るように支持されている。このローラ7に自転車2の後車輪3が当てがわれる。この受け台5においてその片側に設けられたケース8は図3(a)に示すように周壁8aと端壁8bとを有し、この駆動回転軸6の一端部側はこのケース8の端壁8bから突出している。この駆動回転軸6の一端部側には、電気導体であるステンレス等の金属からなるフライホイール9が嵌合されて支持されているとともに、電気導体であるアルミニウム等の金属からなる回転電気導体としての回転板10がこのフライホイール9の内側とケース8の端壁8bとの間で嵌合されて支持され、このフライホイール9及び回転板10は締付ねじ11によりケース8の端壁8b側へ押し付けられて駆動回転軸6とともに回転中心線6aを中心に一体的に回転し得る。このフライホイール9及び回転板10はこの締付ねじ11を緩めて駆動回転軸6の一端部側に対し着脱し得る。このケース8とフライホイール9と回転板10との間で負荷付与機構Mが配設されている。次に、この負荷付与機構Mを詳述する。
【0020】
前記ケース8内においては、駆動回転軸6の回転中心線6aに対し180度の点対称位置で半径方向へ偏心して回転中心線6aと平行な軸心12aを有する一対の支軸12が支持され、これらの支軸12の軸心12aを中心にレバー13,14(可動手段)が回動可能に支持されている。その各レバー13,14の一端部には連動磁石15,16(永久磁石)が取り付けられている。この連動磁石15,16は円形状の端面17,18を有している。このケース8の端壁8bには支軸12の軸心12aを中心とする円弧状の長孔19が形成され、この長孔19から連動磁石15,16の端面17,18が露出している。
【0021】
前記ケース8内においては、駆動回転軸6の回転中心線6aを中心に連動部材としての連動板20(可動手段)が回動可能に支持され、この連動板20にはカム機構部としての一対のカム溝21,22(可動手段)が形成されている。前記各レバー13,14の他端部にはカム機構部としてのカムローラ23,24(可動手段)が取り付けられている。一方のカム溝21は、駆動回転軸6に近い位置でその回転中心線6aを中心とする円弧状に延びる溝部21aと、その溝部21aと連通部21cで連続してその回転中心線6aから離間するように延びる溝部21bとからなる。一方のレバー13のカムローラ23はこのカム溝21に係入されている。他方のカム溝22は、駆動回転軸6に遠い位置でその回転中心線6aを中心とする円弧状に延びる溝部22aと、その溝部22aと連通部22cで連続してその回転中心線6aに接近するように延びる溝部22bとからなる。他方のレバー14のカムローラ24はこのカム溝22に係入されている。
【0022】
前記ケース8の周壁8aに連結されたチューブ25(可動手段)は図1(b)に示す切替え操作部としての遠隔操作摘み26(可動手段)に連結され、そのチューブ25内に挿通されたワイヤ25aの一端部が前記連動板20に連結されているとともに、この遠隔操作摘み26内に設けられた切換機構(図示せず)にそのワイヤ25aの他端部が連結されている。この遠隔操作摘み26に対する操作により、ワイヤ25aを介して連動板20が回動し、さらにカム溝21,22及びカムローラ23,24を介してレバー13,14が連動磁石15,16とともに回動する。
【0023】
前記回転板10の外周縁は前記フライホイール9の外周縁の内側に沿って円形状をなし、その回転板10には駆動回転軸6の回転中心線6aの方向の両側でその外周縁により囲まれた端面27,28が形成され、その両端面27,28間で貫通する複数の透孔29が駆動回転軸6の付近に等角度間隔で円環状に並設されている。この回転板10の両端面27,28のうち一方の端面27は前記連動磁石15,16の端面17,18に対し隙間Gをあけて面している。
【0024】
この回転板10の一方の端面27とケース8の端壁8bとの間で鉄等の磁気シールド体30が駆動回転軸6の外周に挿嵌されて前記各透孔29の一部を塞いでいる。この磁気シールド体30も締付ねじ11を緩めてフライホイール9及び回転板10とともに駆動回転軸6の一端部側に対し着脱し得る。
【0025】
フライホイール9の外周縁により囲まれた内端面には駆動回転軸6の回転中心線6aを中心とする同心円環状をなす電気導体面としての複数の区画面31が半径方向へ並設されて互いに隣接する両区画面31間に電気導体面としての段差面32が形成され、前記回転板10の両端面27,28のうち他方の端面28はこの各区画面31に対し隙間Sをあけて面している。前記連動磁石15,16の端面17,18を通り且つ駆動回転軸6の回転中心線6aに対し直交する磁石移動面Hに対しこの各区画面31がなす回転中心線方向距離Wは、前記駆動回転軸6の回転中心線6aと各連動磁石15,16の端面17,18の中心線17a,18aとがなす半径方向距離Lが小さくなるに従い複数段階的に大きくなる。
【0026】
図2及び図3に示すように遠隔操作摘み26を最大抵抗状態F1に切り替えると、連動板20が復帰ばね(図示せず)の弾性力によりカム溝21,22とともに回動し、カムローラ23がカム溝21で溝部21aの端部に位置するとともに、カムローラ24がカム溝22で溝部22bの端部に位置し、レバー13及びレバー14が支軸12を中心に回動する。そのため、レバー13に取り付けられた連動磁石15とレバー14に取り付けられた連動磁石16とが共に、長孔19の外端部に位置し、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lが最大になる最大離間位置Pで保持される。
【0027】
図4及び図5に示すように遠隔操作摘み26を最大抵抗状態F1から中間抵抗状態F2に切り替えると、連動板20が復帰ばね(図示せず)の弾性力に抗してカム溝21,22とともに回動し、カムローラ23がカム溝21で溝部21aの端部から溝部21bへ向けて円弧状に相対移動して連通部21cに位置するとともに、カムローラ24がカム溝22で溝部22bの端部から溝部22aへ向けて相対移動して連通部22cに位置し、レバー14のみが支軸12を中心に回動する。そのため、レバー13に取り付けられた連動磁石15は最大離間位置Pで保持されるが、レバー14に取り付けられた連動磁石16は、長孔19に沿って外端部から内端部へ円弧状に移動し、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lが最小になる最小離間位置Qで保持される。
【0028】
図6及び図7に示すように遠隔操作摘み26を中間抵抗状態F2から最小抵抗状態F3に切り替えると、連動板20が復帰ばね(図示せず)の弾性力に抗してカム溝21,22とともに回動し、カムローラ23がカム溝21で連通部21cから相対移動して溝部21bの端部に位置するとともに、カムローラ24がカム溝22で連通部22cから円弧状に相対移動して溝部22aの端部に位置し、レバー13のみが支軸12を中心に回動する。そのため、レバー14に取り付けられた連動磁石16は最小離間位置Qで保持されるが、レバー13に取り付けられた連動磁石15は、長孔19に沿って外端部から内端部へ円弧状に移動し、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lが最小になる最小離間位置Qで保持される。
【0029】
一方、前述した遠隔操作摘み26の切替操作を解除すると、復帰ばね(図示せず)の弾性力により連動板20が回動して、最小抵抗状態F3から中間抵抗状態F2を経て最大抵抗状態F1に切り替えられる。
【0030】
さて、自転車2の後車輪3により受け台5上のローラ7が回転すると、駆動回転軸6とともにフライホイール9及び回転板10も回転し、各連動磁石15,16とフライホイール9の各区画面31及び各段差面32との間で生じる磁力線を回転板10が通過する。その磁力線が回転板10に働くと、回転板10には渦電流が発生して電磁ブレーキ作用による負荷が与えられる。その負荷が自転車2の後車輪3を回転させる人の抵抗として働く。また、各連動磁石15,16を半径方向へ移動調節して駆動回転軸6の回転中心線6aに対する各連動磁石15,16の半径方向距離Lを変更すると、フライホイール9の各区画面31及び各段差面32と各連動磁石15,16との間の回転中心線方向距離Wが変更されて磁束密度が変更されるため、回転板10の負荷抵抗が変化する。
【0031】
従って、各連動磁石15,16の半径方向距離Lが大きくなって回転中心線方向距離Wが小さくなるほど、また、回転板10の回転速度が大きくなるほど、回転板10の負荷抵抗は大きくなる。一方、各連動磁石15,16の半径方向距離Lが小さくなって回転中心線方向距離Wが大きくなるほど、また、回転板10の回転速度が小さくなるほど、回転板10の負荷抵抗は小さくなる。この回転中心線方向距離Wの和は前記最大抵抗状態F1で最大になるとともに前記最小抵抗状態F3で最小になるため、最大抵抗状態F1と最小抵抗状態F3との間で回転板10の負荷抵抗を変更することができる。
【0032】
前記回転板10には複数の透孔29が駆動回転軸6の付近に円環状に並設されているので、その各透孔29では磁力線による渦電流が発生しにくくなって電磁ブレーキ作用による負荷が減少する。また、この回転板10には鉄等の磁気シールド体30が駆動回転軸6に挿嵌されているので、この磁気シールド体30が磁束を吸収して負荷が減少する。
【0033】
本実施形態は下記の効果を有する。
* フライホイール9本来の機能ばかりでなく、連動磁石15,16との間で磁力線を生じさせる電気導体としての機能をもフライホイール9に持たせて、フライホイール9を兼用したので、部品点数を減らして、電磁ブレーキ作用による負荷を与える負荷付与機構Mを簡略化し、運動器具用抵抗装置1を小型化することができる。
【0034】
* 複数の連動磁石15,16の相対的位置関係を各種組み合わせるだけで、各連動磁石15,16における回転中心線方向距離Wの和を各種変更して、電磁ブレーキ作用による負荷抵抗範囲を広げることができる。
【0035】
* 各連動磁石15,16の半径方向距離Lを変更して各連動磁石15,16とフライホイール9の区画面31,32との間の回転中心線方向距離Wを変更する簡単な構成により、負荷を調節することができる。
【0036】
* 遠隔操作摘み26により、最大抵抗状態F1と中間抵抗状態F2と最小抵抗状態F3との間で抵抗を三段階に順次変化させて負荷抵抗範囲で最適な負荷を選択することができる。
【0037】
* 前記各レバー13,14と前記連動板20と前記カム機構部(カム溝21,22及びカムローラ23,24)と前記遠隔操作摘み26とによる簡単な構成で、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する連動磁石15,16の半径方向距離Lを容易に変更することができる。
【0038】
* 磁気シールド体30により磁束を吸収して最小抵抗状態F3における負荷をより一層減少させることができる。
前記実施形態以外にも例えば下記のように構成してもよい。
【0039】
・ 前記実施形態では一対のレバー13,14に各連動磁石15,16を取り付けたが、三以上のレバーに連動磁石を取り付け、三以上の連動磁石の相対的位置関係の組み合わせを各種変更してもよい。
【0040】
・ 各連動磁石15,16を互いに連動させずに別々に移動させて各連動磁石15,16の相対的位置関係を変更し得るようにしてもよい。
・ フライホイール9の電気導体面については、図2,4,6に示すように、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lが小さくなるに従い連動磁石15,16に対する回転中心線方向距離Wが複数段階的に大きくなるように各区画面31及び各段差面32を形成すること以外に、その回転中心線方向距離Wが無段階的に大きくなるように傾斜面33を形成する。
【0041】
・ フライホイール9の電気導体面については、前記実施形態とは逆に、駆動回転軸6の回転中心線6aに対する半径方向距離Lが大きくなるに従い連動磁石15,16に対する回転中心線方向距離Wが複数段階的または無段階的に大きくなるように形成する。
【0042】
・ フライホイール9の全体を電気導体により成形せずに、フライホイール9の内端面に環状の電気導体を埋め込んだり複数の電気導体を等角度間隔で埋め込む。
・ 回転板10の全体を電気導体により成形せずに、回転板10の回転に伴い連動磁石15,16に面する回転板10の外周部に環状の電気導体を埋め込んだり複数の電気導体を等角度間隔で埋め込む。
【0043】
・ フライホイール9と回転板10とを互いに分離して設けず、それらを同一の材質により一体成形する。
・ 回転板10において各透孔29を省略する。
【符号の説明】
【0044】
5…支持体、6…駆動回転軸、6a…回転中心線、9…フライホイール、10…回転電気導体、12a…軸心、13,14…レバー、15,16…連動磁石、20…連動板(連動部材)、21,22…カム溝(カム機構部)、23,24…カムローラ(カム機構部)、26…遠隔操作摘み(切替え操作部)、30…磁気シールド体、31…フライホイールの区画面(電気導体面)、32…フライホイールの段差面(電気導体面)、L…半径方向距離、W…回転中心線方向距離、F1…最大抵抗状態、F3…最小抵抗状態。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人力により回転し得る駆動回転軸を支持する支持体と、この駆動回転軸の回転中心線の外周でこの支持体に取り付けた磁石と、この駆動回転軸とともに回転するフライホイールと、この磁石とフライホイールとの間で駆動回転軸とともに回転して磁石とフライホイールの電気導体面との間で生じる磁力線を通過する回転電気導体とを備え、
前記磁石は可動手段により相対的位置関係を変更し得る複数の磁石を含むことを特徴とする運動器具用抵抗装置。
【請求項2】
前記各磁石の相対的位置関係の変更により、その各磁石とフライホイールの電気導体面との間の回転中心線方向距離の和を変更し得ることを特徴とする請求項1に記載の運動器具用抵抗装置。
【請求項3】
前記各磁石は、駆動回転軸の回転中心線に対する半径方向距離を変更し得るように支持体に対し可動手段により移動調節可能に支持されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の運動器具用抵抗装置。
【請求項4】
前記可動手段は、前記回転中心線方向距離の和が最も小さくなる各磁石の相対的位置関係を有する最大抵抗状態と最も大きくなる各磁石の相対的位置関係を有する最小抵抗状態とのうち、一方から他方へ、順次、抵抗を変化し得る切替え操作部を備えていることを特徴とする請求項3に記載の運動器具用抵抗装置。
【請求項5】
前記可動手段は、駆動回転軸の回転中心線に対し半径方向へ偏心した軸心を中心に回動し得る複数のレバーと、前記切替え操作部により駆動回転軸の回転中心線を中心に回動し得る連動部材と、この連動部材と各レバーとの間に設けたカム機構部とを備え、前記磁石はこの各レバーに取り付けられ、この切替え操作部により連動部材とカム機構部とを介して各レバーを互いに連動して回動させて駆動回転軸の回転中心線に対する各磁石の半径方向距離を変更し得ることを特徴とする請求項4に記載の運動器具用抵抗装置。
【請求項6】
前記磁石とフライホイールの電気導体面との間に磁気シールド体を設けたことを特徴とする請求項1から請求項5のうちいずれか一つの請求項に記載の運動器具用抵抗装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−251051(P2011−251051A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128019(P2010−128019)
【出願日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(591186866)株式会社箕浦 (8)