運動軌跡解析方法及び運動軌跡解析装置
【課題】運動軌跡解析において、衝突後に入射方向に反射するという不自然な解析結果を得ることを防止する解析方法を提供する。
【解決手段】情報処理装置1によって、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて平面と衝突を繰り返しながら運動する物体の軌跡を解析する方法において、情報処理装置の制御手段11は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の接線方向の物体速度が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を記憶手段21に記憶しておき、記憶手段21から減衰定数を読み出し、読み出した減衰定数を用いて平面と衝突を繰り返しながら運動する物体の運動軌跡の解析を行う。
【解決手段】情報処理装置1によって、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて平面と衝突を繰り返しながら運動する物体の軌跡を解析する方法において、情報処理装置の制御手段11は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の接線方向の物体速度が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を記憶手段21に記憶しておき、記憶手段21から減衰定数を読み出し、読み出した減衰定数を用いて平面と衝突を繰り返しながら運動する物体の運動軌跡の解析を行う。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の運動軌跡の解析方法に関し、特に、バネ−ダシュポット系を接触モデルとして用いた場合の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路斜面災害に対する総合的なリスクマネジメントを実現させるための技術として、道路斜面災害の抱えるリスクを面的にかつ的確に評価する技術の体系化が必要とされている。対象を落石に絞ると、落石に対する防護工の位置、規模を設計する際には、数値解析による落石の運動軌跡の予測が実施される(特許文献1参照)。落石の運動軌跡の予測は、落下の可能性を有する岩塊が道路や住居地域に到達する可能性及び到達時の運動エネルギーや跳躍高さを計算するために必要であるからである。
【0003】
今日、不連続性岩盤や粒状体の解析に広く利用されている数値解析法として、1971年にP.A.Cundallにより提案された個別要素法(非特許文献1参照)がある。この数値解析法では、物体(例えば、岩塊)が平面(地面)に接触しているとき、その接触点にバネ−ダシュポットを接触法線方向および接線方向に配して、ダシュポットにより衝突に伴うエネルギー損失を表現する。不連続性岩盤の安定解析のように不連続面の方向や間隔などの幾何学的特性が、その挙動の支配的要因であり、また、この方法を準静的な安定解析に適用するのであれば、解析対象の生じた振動を速やかに静止に導くことを第一条件に、ダシュポットの減衰係数(粘性係数)の値に臨界減衰係数(臨界粘性係数)を用いることが有効となる。
【0004】
【特許文献1】特許第2683863号
【非特許文献1】Cundall, P. A. 1971. "A computer model for simulating progressive, large-scale movements in blocky rock systems", Symposium on rock mechanics, Nancy, Vol. 2、 pp129-136.
【非特許文献2】大町達夫・荒井靖博、「個別要素法で用いる要素定数の決め方について」、構造工学論文集、Vol.32A,pp. 715-723, 土木学会,1986.3.
【0005】
しかしながら、落石のような速度を伴う現象を解析する際には、減衰係数は衝突前後の速度を支配する重要な入力条件であり、前述の準静的解析の例とは異なって、慎重な検討が必要である。
【0006】
例えば、落石を質点とし、バネ−ダシュポット系を接触モデルとして、落石軌跡解析を実施した際に、入射角の大きさによっては、入射方向に反射する結果が得られる場合がある。このような結果は、自然界では発生し得ない現象である。このような不合理な解析結果は物体の落下運動の解析に限らず、所定の速度で接触点に衝突する物体の運動軌跡の解析において発生し得る。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、運動軌跡解析において、衝突後に入射方向に反射するという不自然な解析結果を得ることを防止する解析方法を提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運動軌跡解析方法は、接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する方法である。解析方法は情報処理装置の制御手段により実行される。解析方法は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を情報処理装置の記憶手段に記憶しておくステップと、記憶手段から減衰定数を読み出すステップと、読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行うステップとを含む。
【0009】
本発明に係る運動軌跡解析装置は、接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を解析する装置であって、解析に必要なパラメータを記憶する記憶手段と、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて落下する物体の運動軌跡の解析処理を実行する制御手段とを備える。記憶手段は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を記憶しておく。制御手段は、記憶手段から減衰定数を読み出し、読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う。
【0010】
本発明に係る運動軌跡プログラムは、平面に衝突を繰り返しながら運動する物体の運動軌跡を接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する処理を、情報処理装置に実行させるプログラムである。そのプログラムは、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の接線方向の物体速度が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を前記情報処理装置の記憶手段に記憶しておく機能と、記憶手段から減衰定数を読み出す機能と、読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う機能とを、情報処理装置の制御手段に実行させる。
【0011】
なお、法線方向及び接線方向のばねの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定されてもよい。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衝突後の接線方向の質点の速度が正となるように決定された接線方向の減衰定数ζsを用いて解析を行うため、衝突後に接線方向において入射側に反射するという不合理な結果が算出されることを防止でき、精度のよい運動軌跡解析を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。最初に本発明の落石軌跡解析方法におけるモデルについて説明する。
【0014】
<解析モデル>
1.減衰係数と反発係数の関係
一般に、衝突に際しては、熱、音あるいは塑性変形などにより力学的エネルギーは保存されない。このようなエネルギー損失を表す指標として、反発係数(Reと表記する)がある。接触中のダシュポットによるエネルギー損失と反発係数で表現される損失が等しいとして、次のように法線方向の減衰係数ηnを決定することができる(詳細は後述)。
【0015】
ここで、留意すべき点は以下の点である。
1)剛体を用いる個別要素法(DEM:Distinct Element Method)では、要素の運動方程式を重心座標や重心速度について記述するのに対し、前述のバネ−ダシュポットは剛体表面あるいは外周上の接触点(2次元多角形では頂点)に配置することになる。
2)剛体要素の重心周りの回転運動を許すとき、剛体円要素を除き、接触点における平面法線方向速度は重心位置におけるその値とは異なっており、たとえ、上式により減衰係数を決定したとしても平面法線方向運動のエネルギー損失を表現するものとはなっていないことに注意が必要である。
3)接線方向速度に対して、式(1)に類似する考え方を導入するには、摩擦および(剛体を取り扱う場合には)回転への考察が必要である。
【0016】
接線方向の減衰定数については、大町らが振動台実験の解析を行って、振動台試験を再現するための条件として減衰定数を求めている(非特許文献2参照)が、この提案では、実験条件に依存するなどの問題点がある。以下では、個別要素法に限らず、衝突時のエネルギー損失をバネ−ダシュポット系で表現するモデルにおいて、接線方向の減衰定数が衝突後の物体の運動に与える影響について、一自由度弾性系の運動方程式の解を基礎に考察した結果について説明する。
【0017】
2.粗い平面への質点の平面への入射・反射
今、図1に示すように、粗い(摩擦抵抗を有する)平面に質点が速度vを有して入射角α1で衝突し、反射角α2で反射する場合を考える。座標系として法線方向をn、接線方向をsと表記し、α1、α2については反時計方向に正とすると、衝突前の速度成分vn、vsは次のように記述される。
【0018】
反発係数をRenとすると、衝突後の速度v'の法線方向成分vn'は次式で得られる。
【0019】
運動量と力積の関係は、質量をm、衝突時の法線方向(n)と接線方向(s)の反力をfn、fs、接触時間をΔtとして次式で与えられる。
【0020】
今、衝突時に摩擦則が成立すると仮定すれば、静止摩擦係数をμ(=tanφ)とおいて、次式が得られる。
【0021】
従ってvs'は次式で得られる。
【0022】
このとき、接線方向の速度比Res=vs'/vsは次式となる。
【0023】
上式より、接線方向の速度比Resは摩擦係数μ、入射角α1および反発係数Renに依存する量となる。ここで、tanα1=μ(1+Ren)を満たすα1では、Res=0となり、vs'=0、すなわち、反射方向は平面法線方向に一致することがわかる。また、(7)式よりtanα1<μ(1+Ren)を満たすα1では、vs'<0となり、質点は接線方向において入射方向側へ反射することを上式は示している。しかし、実現象では、入射方向に反射することは考えにくく、この場合は、摩擦角は完全に動員されず(つまり、式(5)は成立せず、fs<μfnとなること)、質点は接線方向の運動量を損失する、特に、完全に損失する場合はvs'=0となると考えるべきである。tanα1>μ(1+Ren)を満たすα1では、vs'=Resvsとなる接線方向速度を有して反射することになる。
【0024】
ここで、衝突中の運動を表現するモデルとして、図2を考える。すなわち、接触法線方向および接線方向それぞれにバネとダシュポットの並列配置を考え、接線方向のバネの力esおよびダシュポットの力dsに次の条件(A)を課すモデルである。
es>entanφなるとき、es=entanφおよびds=0 (A)
【0025】
これは、個別要素法で一般に採用される接触モデルであるが、このモデルを用いるとき、粗い平面への質点の衝突に関して以下のことが言える。
【0026】
(i) tanα1>μ(1+Ren)なる入射角のとき
摩擦角は完全に動員される場合には、vs'=Resvsとなっている。このとき、下記式となる。
tanα2=vs'/vn'
=-(Resvs)/(Renvn)
=-(Res)/(Ren)tanα1 (B)
また、摩擦角が動員されない(例えば、Ks<Knなどの条件により(A)の条件に至らない)場合は、接線方向のエネルギー損失は小さくなるので、(B)のα2に比べ、反射角は大きくなる。
【0027】
(ii) tanα1<μ(1+Ren)なる入射角のとき
このとき、(A)の条件は発生しない。従って、衝突中の質点の運動は、バネの剛性係数とダシュポットの減衰係数に依存するが、法線方向の減衰固有周期Tdnと接線方向の減衰固有周期Tdsの大小により、質点が平面と非接触に復するとき、vs'<0となって、入射方向へ反射する解が求まることがある。図3は、法線方向と接線方向の運動の軌跡を解析例である。これは、入射速度10m/s、α1=30度として、図中の条件を与えた例である。なお、摩擦角φ=90とは、すべりは生じないとしたことを意味する。同図において実線Xが従来の解析方法により得られた結果、破線Yが本発明の解析方法(詳細は後述)により得られた結果である。実線Xに示すように従来の方法では、衝突後、質点が接線方向において入射方向に飛び出す結果となっている。これに対して本発明では、破線Yに示すように、衝突後、質点が接線方向において入射方向と反対方向に飛び出す結果が得られる。
【0028】
本発明では、上記(ii)の場合について、入射方向に反射しない解を求めるための条件を求めた。その条件の導出について以下に詳細に述べる。
【0029】
3.バネ−ダシュポット系を接触モデルとして用いるときの減衰定数
(1)法線方向の減衰定数の決定
まず、バネ−ダシュポット系を接触モデルとし、図1のように平面と質点の衝突が発生した場合、衝突中の質点の運動は以下の方程式で表現できる。
ここで、質点の質量m、ばねの剛性係数K、ダッシュポットの減衰係数ηであり、添字iは法線方向または接線方向を示す添字である。(8)式は減衰振動を示し、図4は解の一例を描画したものである。添字iを法線方向を表わす「3」とし、x3=0を接触平面として、質点が破線のような放物運動ののち、時刻t=t1で速度vで平面と衝突したとする。その後、実線の軌跡をたどり、時刻t=t2で非接触に復し、速度v'で反射するとする。t*=t-t1=0,x3=0,dx3/dt=vnとすれば、次式が成り立つ。
質点の斜面との接触時間Δtは次式となることから、接触時間Δtは減衰固有周期Tdnの1/2となることがわかる。
【0030】
非接触に復する時刻t=t2(t*=t2-t1=π/ωdn)での法線方向の速度vn'は次式で表される。
【0031】
反発係数の定義からRenは次式で求められる。
ここで、
なお、ηは減衰係数を示し、η0は減衰係数の臨界値を示す。
【0032】
さらに、ηn/η0=ζn(法線方向の減衰定数)として(12)式を簡単にすると、次式となる。
なお、上式は下記のようにも表記できる(前出の(1)式と同じ)。
【0033】
(2)接線方向の減衰定数の決定
添字iを接線方向を表わす「1」として接線方向にx1軸をとり、t*=t-t1=0でx1=0、dx1/dt=vsとすれば、法線方向と同様に次式が成り立つ。
ここで、
【0034】
質点が非接触に復するときの接線方向速度は次式で得られる。
上式より、Resは以下のように得られる。
【0035】
(16)式において、Res<0なら、平面法線方向に対して入射側へ反射することになる。そこで、出射側へ反射するようにするためには、Res≧0となることが必要である。(16)式において、exp(-πβs/ωdn)>0であることから、Res≧0となるためには次式が成り立つ必要がある。
【0036】
以下、(17)式が成立するための条件を場合に分けて説明する。
【0037】
(i)0<cos(ωds/ωdn)π<1のとき
となる。ηs/η0=ζs(接線方向の減衰定数)として式(18)式を変換すると、
【0038】
なお、0<cos(ωds/ωdn)π<1となるのは、(a)0<(ωds/ωdn)<1/2または(d)3/2<(ωds/ωdn)<2のときである。それぞれの場合に分けて検討する。
【0039】
(a) 0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
下記式が成り立つ。
質量mは一定であるから、上式の条件は次式で表される。
【0040】
(d) 3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
このとき、(19)式の左辺の項は次式を満たす。
また、3/2<(ωds/ωdn)<2のとき、0>tan(ωds/ωdn)πとなるので、下記の関係が成り立つとき、式(19)は自動的に成立する。
よって、3/2<(ωds/ωdn)<2が、(17)式が成立するための条件となる。
【0041】
(ii)-1<cos(ωds/ωdn)π<0のとき
このとき、下記式が成り立つ。
ここで、-1<cos(ωds/ωdn)π<0より、1/2<(ωds/ωdn)<3/2となる。1/2<(ωds/ωdn)≦1において、tan(ωds/ωdn)π≦0なるため、下記式が成り立たない。
従って、1<(ωds/ωdn)<3/2のみにおいて、式(21)が成立し、式(20)に対応する条件として、下式の成立が必要となる。
【0042】
以上より、入射方向に反射しない解を求めるための条件、すなわち、Res≧0となる条件として、接線方向の減衰定数ζsについて下記の条件が得られる。
(a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
(b)1/2<(ωds/ωdn)≦1のとき
常にRes<0となるため、ζsの解はない。
(c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
(d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
常にRes>0となるため、ζsは任意の値をとる。
【0043】
以上の条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された接線方向の減衰定数ζsを用いて運動軌跡の解析を行うことで、質点が衝突後に接線方向において入射方向に反射するという不合理な事象の発生を防止できる。
【0044】
図5は、質点の衝突前後の速度変化の様子を説明した図である。図5(A)は法線方向の速度変化の様子を示し、図5(B)は接線方向の速度変化の様子を示す。図5(B)において、曲線51は上記の条件(a)の場合の変化の様子を示し、曲線52は条件(b)の場合の変化の様子を示し、曲線53は上記の条件(c)、(d)の場合の変化の様子を説明したものである。例えば、図5(B)において、曲線52は、質点が非接触に復する時刻t2において負の値を示し、これは入射方向に反射することを意味している。これに対して、曲線51、53は、時刻t2において正の値を示していることから、入射方向とは逆方向に反射することを示している。
【0045】
<減衰定数の計算例>
図6(A)は、Ks/Kn=1としてζn、ζsを0.05刻みで変化させたときの、ωds/ωdnの値を計算した結果を示した図である。図6(A)において、ωds/ωdnの値が0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域、1<(ωds/ωdn)<3/2を満たす領域、3/2<(ωds/ωdn)<2を満たす領域にそれぞれ区別できるようにハッチングを施している。例えば、ζnが0.01、ζsが0.90のとき、ωds/ωdnの値は0.44となり、この場合ωds/ωdnの値が0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域に属することがわかる。
【0046】
図6(B)は、図6(A)の表のζn、ζsの値に対応させて下記式の値を計算したものである。
Res>0が成立するためには、条件(a)においては(24)式の値が正になることが必要であり、条件(c)においては、(24)式の値が負になることが必要である。図6(B)より、Ks/Kn=1とした場合にRes>0が成立するのは、1<(ωds/ωdn)<3/2の場合すなわち条件(c)と、3/2<(ωds/ωdn)<2を満たす条件(d)の場合に限られることがわかる。図6(B)で、条件(c)と条件(c)を満たすζn、ζsの組み合わせの中から、解析時の条件に応じた1つの組み合わせを用いて、上記モデルに従い,物体の運動の軌跡を解析することにより、衝突後に接線方向において入射側に反射するという不合理な結果が算出されることを防止できる。
【0047】
図6(A)及び図6(B)の例では、図5(B)の曲線53に示すような接線方向の周期は法線方向のそれより長く、接線方向の速度が一旦負となった後に正となることを待って非接触に復する条件(c)、(d)の場合のみ、ζn、ζsの組み合わせを得られた。しかし、Ks/Kn=1、0<(ωds/ωdn)<1/2の条件下では、Res>0となるζn、ζsの組み合わせは得られなかった。0<(ωds/ωdn)<1/2の条件下で、すなわち、図5(B)の曲線51に示すようなvsの減少過程のみで非接触に復するには、Kn>Ksとして条件を与える必要がある。図7に、そのような条件を満たすようにKs/Kn=0.1として計算した例を示している。図7(A)においても、0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域に対してハッチングが施されている。図7(B)を参照すると、図7(A)において0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域に対応する領域中で計算値が正となるものが存在していることが分かる。そのような正の計算値を与えるζn、ζsの組み合わせが条件(a)を満たすものとして求められる。以上のようにして減衰定数ζn、ζsの組み合わせを決定することができる。
【0048】
図8、9、10に質点の運動軌跡の解析結果の例を示す。計算条件は図中に示したとおりである。図8では、0<(ωds/ωdn)<1/2として、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例である。図9、10では、1<(ωds/ωdn)<3/2とした。図9は、非接触への復帰時の速度vsが負となるようにζn、ζsの値を選んだ例であり、図10は、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例を示している。図9では、接触を開始して0.033秒後に非接触に復しており、その時点でvs<0となっているのに対し、図10では、接触を開始して0.033秒後に非接触に復する時点で、vs>0となっていることがわかる。これらより、図6、7の表に示した条件が有効に用いることができることが確認できる。
【0049】
以上から質点が平面と非接触に復するとき、vs>0すなわち、入射方向と同一方向に運動を続ける際の減衰定数ζsの条件が明らかとなった。なお、上記の説明では、運動する物体を質点として扱ったが、運動する物体を剛体としても本発明の思想を同様に適用することは可能である。
【0050】
なお、運動する物体の例として落石が考えられるが、これに限らず、他の物体でもよい。また、本発明の思想は落下運動に限らず、衝突時のエネルギー損失をバネ−ダシュポット系で表現するモデルを用いて、質点が所定の速度で接触点に衝突する場合の運動軌跡の解析についても適用できる。
【0051】
<運動軌跡解析装置>
図11に、上述の運動軌跡解析方法を利用して質点の運動軌跡の解析を行う運動軌跡解析装置の構成を示す。運動軌跡解析装置1はパーソナルコンピュータのような情報処理装置で構成される。運動軌跡解析装置1は、その全体動作を制御する制御部11と、画面表示を行う表示部17と、ユーザが操作を行う操作部19と、データやプログラムを記憶するデータ格納部21とを備える。表示部17は例えば、液晶ディスプレイで構成され、操作部19はキーボードやマウス等である。さらに、運動軌跡解析装置1は、外部機器やネットワークに接続するためのインタフェース25を含む。
【0052】
制御部11は運動軌跡解析装置1全体の動作を制御するものであり、CPUやMPUからなり、プログラムを実行することで所定の機能を実現する。制御部11で実行されるプログラムは通信回線を通じて、またはCD−ROM等の記録媒体で提供されてもよい。制御部11は、質点の運動軌跡の解析を行う機能を実行する運動軌跡解析部15を有している。
【0053】
データ格納部21はデータやプログラムを記憶する手段であり、例えばハードディスクや半導体メモリ、光ディスクで構成することができる。データ格納部21は、落石軌跡解析プログラム、その解析に必要なパラメータ等の情報を格納する。
【0054】
落石運動軌跡解析プログラムは、前述のバネ−ダッシュポット系の接触モデルを用いて落石の解析を行うためのプログラムであり、例えば、(9.1)、(9.2)、(14.1)、(14.2)式を用いて落石運動軌跡の解析を行うことが可能なプログラムである。このようなプログラムは既に公知であり、例えば市販のITASCA社(米国、ミネソタ州)のUDECがある。落石運動解析プログラムは、制御部11の落石運動解析部15によりデータ格納部21から読み出されて実行される。
【0055】
解析に必要なm,g,K,ω等の種々のパラメータは操作部19を介して運動軌跡解析装置1に入力され、データ格納部21に保持される。なお、パラメータはI/F25を介してネットワークから取得してもよい。
【0056】
制御部11の落石運動解析部15は、解析に用いるパラメータの1つである接線方向の減衰定数ζsを上述の方法で算出し、その値をデータ格納部21に格納する。すなわち、条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された減衰定数ζsがデータ格納部21に格納される。なお、条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された減衰定数ζsは、ネットワークもしくは光ディスク等の記録媒体または操作部19を介して運動軌跡解析装置1の外部から取得し、データ格納部21に事前に格納しておいてもよい。
【0057】
運動軌跡解析部15は、解析処理実行時には、データ格納部21から接線方向の減衰定数ζsを読み出し、その減衰定数ζsの値を用いて解析プログラムにしたがい運動軌跡の解析を行う。解析結果はデータ格納部21に格納される。このとき、解析結果を表示部17上に表示してもよいし、I/F25を解してプリンタから印刷してもよい。
【0058】
本運動軌跡解析装置によれば、条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された接線方向の減衰定数ζsを用いて解析を行うため、衝突後に接線方向において入射側に反射するという不合理な結果が算出されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】質点と平面の衝突前後の質点速度、入射角度、反射角度を説明した図
【図2】バネ−ダシュポット系の接触モデルを説明した図
【図3】本発明及び従来の方法により質点と平面の衝突時の運動の軌跡を解析した結果の一例を示した図
【図4】衝突中の質点の運動方程式の解の一例を示した図
【図5】衝突中の質点の法線方向及び接線方向における運動の軌跡の解析結果の例を説明した図。
【図6】(A)Ks/Kn=1として、減衰定数ζn、ζsを所定間隔(0.05)で変化させたときのωds/ωdnの計算結果を示した図、(B)Res>0となるζn、ζsの組み合わせを求めるために、減衰定数ζn、ζsを所定間隔で変化させたときの(24)式の値の計算結果を示した図
【図7】(A)Ks/Kn=0.1として、減衰定数ζn、ζsを所定間隔(0.05)で変化させたときのωds/ωdnの計算結果を示した図、(B)Res>0となるζn、ζsの組み合わせを求めるために、減衰定数ζn、ζsを所定間隔で変化させたときの(24)式の値の計算結果を示した図
【図8】質点の運動軌跡の解析結果の例を示した図(0<(ωds/ωdn)<1/2として、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例)
【図9】質点の運動軌跡の解析結果の例を示した図(1<(ωds/ωdn)<3/2として、非接触への復帰時の速度vsが負となるようにζn、ζsの値を選んだ例)
【図10】質点の運動軌跡の解析結果の例を示した図(1<(ωds/ωdn)<3/2として、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例)
【図11】本発明の実施形態である運動軌跡解析装置の構成を示した図
【符号の説明】
【0060】
1 落下軌跡解析装置
11 制御部
15 落下軌跡解析部
17 表示部
19 操作部
21 データ格納部
25 インタフェース(I/F)
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の運動軌跡の解析方法に関し、特に、バネ−ダシュポット系を接触モデルとして用いた場合の解析方法に関する。
【背景技術】
【0002】
道路斜面災害に対する総合的なリスクマネジメントを実現させるための技術として、道路斜面災害の抱えるリスクを面的にかつ的確に評価する技術の体系化が必要とされている。対象を落石に絞ると、落石に対する防護工の位置、規模を設計する際には、数値解析による落石の運動軌跡の予測が実施される(特許文献1参照)。落石の運動軌跡の予測は、落下の可能性を有する岩塊が道路や住居地域に到達する可能性及び到達時の運動エネルギーや跳躍高さを計算するために必要であるからである。
【0003】
今日、不連続性岩盤や粒状体の解析に広く利用されている数値解析法として、1971年にP.A.Cundallにより提案された個別要素法(非特許文献1参照)がある。この数値解析法では、物体(例えば、岩塊)が平面(地面)に接触しているとき、その接触点にバネ−ダシュポットを接触法線方向および接線方向に配して、ダシュポットにより衝突に伴うエネルギー損失を表現する。不連続性岩盤の安定解析のように不連続面の方向や間隔などの幾何学的特性が、その挙動の支配的要因であり、また、この方法を準静的な安定解析に適用するのであれば、解析対象の生じた振動を速やかに静止に導くことを第一条件に、ダシュポットの減衰係数(粘性係数)の値に臨界減衰係数(臨界粘性係数)を用いることが有効となる。
【0004】
【特許文献1】特許第2683863号
【非特許文献1】Cundall, P. A. 1971. "A computer model for simulating progressive, large-scale movements in blocky rock systems", Symposium on rock mechanics, Nancy, Vol. 2、 pp129-136.
【非特許文献2】大町達夫・荒井靖博、「個別要素法で用いる要素定数の決め方について」、構造工学論文集、Vol.32A,pp. 715-723, 土木学会,1986.3.
【0005】
しかしながら、落石のような速度を伴う現象を解析する際には、減衰係数は衝突前後の速度を支配する重要な入力条件であり、前述の準静的解析の例とは異なって、慎重な検討が必要である。
【0006】
例えば、落石を質点とし、バネ−ダシュポット系を接触モデルとして、落石軌跡解析を実施した際に、入射角の大きさによっては、入射方向に反射する結果が得られる場合がある。このような結果は、自然界では発生し得ない現象である。このような不合理な解析結果は物体の落下運動の解析に限らず、所定の速度で接触点に衝突する物体の運動軌跡の解析において発生し得る。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、運動軌跡解析において、衝突後に入射方向に反射するという不自然な解析結果を得ることを防止する解析方法を提供することにある。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の運動軌跡解析方法は、接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する方法である。解析方法は情報処理装置の制御手段により実行される。解析方法は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を情報処理装置の記憶手段に記憶しておくステップと、記憶手段から減衰定数を読み出すステップと、読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行うステップとを含む。
【0009】
本発明に係る運動軌跡解析装置は、接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を解析する装置であって、解析に必要なパラメータを記憶する記憶手段と、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて落下する物体の運動軌跡の解析処理を実行する制御手段とを備える。記憶手段は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を記憶しておく。制御手段は、記憶手段から減衰定数を読み出し、読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う。
【0010】
本発明に係る運動軌跡プログラムは、平面に衝突を繰り返しながら運動する物体の運動軌跡を接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する処理を、情報処理装置に実行させるプログラムである。そのプログラムは、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の接線方向の物体速度が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を前記情報処理装置の記憶手段に記憶しておく機能と、記憶手段から減衰定数を読み出す機能と、読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う機能とを、情報処理装置の制御手段に実行させる。
【0011】
なお、法線方向及び接線方向のばねの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定されてもよい。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、衝突後の接線方向の質点の速度が正となるように決定された接線方向の減衰定数ζsを用いて解析を行うため、衝突後に接線方向において入射側に反射するという不合理な結果が算出されることを防止でき、精度のよい運動軌跡解析を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、添付の図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。最初に本発明の落石軌跡解析方法におけるモデルについて説明する。
【0014】
<解析モデル>
1.減衰係数と反発係数の関係
一般に、衝突に際しては、熱、音あるいは塑性変形などにより力学的エネルギーは保存されない。このようなエネルギー損失を表す指標として、反発係数(Reと表記する)がある。接触中のダシュポットによるエネルギー損失と反発係数で表現される損失が等しいとして、次のように法線方向の減衰係数ηnを決定することができる(詳細は後述)。
【0015】
ここで、留意すべき点は以下の点である。
1)剛体を用いる個別要素法(DEM:Distinct Element Method)では、要素の運動方程式を重心座標や重心速度について記述するのに対し、前述のバネ−ダシュポットは剛体表面あるいは外周上の接触点(2次元多角形では頂点)に配置することになる。
2)剛体要素の重心周りの回転運動を許すとき、剛体円要素を除き、接触点における平面法線方向速度は重心位置におけるその値とは異なっており、たとえ、上式により減衰係数を決定したとしても平面法線方向運動のエネルギー損失を表現するものとはなっていないことに注意が必要である。
3)接線方向速度に対して、式(1)に類似する考え方を導入するには、摩擦および(剛体を取り扱う場合には)回転への考察が必要である。
【0016】
接線方向の減衰定数については、大町らが振動台実験の解析を行って、振動台試験を再現するための条件として減衰定数を求めている(非特許文献2参照)が、この提案では、実験条件に依存するなどの問題点がある。以下では、個別要素法に限らず、衝突時のエネルギー損失をバネ−ダシュポット系で表現するモデルにおいて、接線方向の減衰定数が衝突後の物体の運動に与える影響について、一自由度弾性系の運動方程式の解を基礎に考察した結果について説明する。
【0017】
2.粗い平面への質点の平面への入射・反射
今、図1に示すように、粗い(摩擦抵抗を有する)平面に質点が速度vを有して入射角α1で衝突し、反射角α2で反射する場合を考える。座標系として法線方向をn、接線方向をsと表記し、α1、α2については反時計方向に正とすると、衝突前の速度成分vn、vsは次のように記述される。
【0018】
反発係数をRenとすると、衝突後の速度v'の法線方向成分vn'は次式で得られる。
【0019】
運動量と力積の関係は、質量をm、衝突時の法線方向(n)と接線方向(s)の反力をfn、fs、接触時間をΔtとして次式で与えられる。
【0020】
今、衝突時に摩擦則が成立すると仮定すれば、静止摩擦係数をμ(=tanφ)とおいて、次式が得られる。
【0021】
従ってvs'は次式で得られる。
【0022】
このとき、接線方向の速度比Res=vs'/vsは次式となる。
【0023】
上式より、接線方向の速度比Resは摩擦係数μ、入射角α1および反発係数Renに依存する量となる。ここで、tanα1=μ(1+Ren)を満たすα1では、Res=0となり、vs'=0、すなわち、反射方向は平面法線方向に一致することがわかる。また、(7)式よりtanα1<μ(1+Ren)を満たすα1では、vs'<0となり、質点は接線方向において入射方向側へ反射することを上式は示している。しかし、実現象では、入射方向に反射することは考えにくく、この場合は、摩擦角は完全に動員されず(つまり、式(5)は成立せず、fs<μfnとなること)、質点は接線方向の運動量を損失する、特に、完全に損失する場合はvs'=0となると考えるべきである。tanα1>μ(1+Ren)を満たすα1では、vs'=Resvsとなる接線方向速度を有して反射することになる。
【0024】
ここで、衝突中の運動を表現するモデルとして、図2を考える。すなわち、接触法線方向および接線方向それぞれにバネとダシュポットの並列配置を考え、接線方向のバネの力esおよびダシュポットの力dsに次の条件(A)を課すモデルである。
es>entanφなるとき、es=entanφおよびds=0 (A)
【0025】
これは、個別要素法で一般に採用される接触モデルであるが、このモデルを用いるとき、粗い平面への質点の衝突に関して以下のことが言える。
【0026】
(i) tanα1>μ(1+Ren)なる入射角のとき
摩擦角は完全に動員される場合には、vs'=Resvsとなっている。このとき、下記式となる。
tanα2=vs'/vn'
=-(Resvs)/(Renvn)
=-(Res)/(Ren)tanα1 (B)
また、摩擦角が動員されない(例えば、Ks<Knなどの条件により(A)の条件に至らない)場合は、接線方向のエネルギー損失は小さくなるので、(B)のα2に比べ、反射角は大きくなる。
【0027】
(ii) tanα1<μ(1+Ren)なる入射角のとき
このとき、(A)の条件は発生しない。従って、衝突中の質点の運動は、バネの剛性係数とダシュポットの減衰係数に依存するが、法線方向の減衰固有周期Tdnと接線方向の減衰固有周期Tdsの大小により、質点が平面と非接触に復するとき、vs'<0となって、入射方向へ反射する解が求まることがある。図3は、法線方向と接線方向の運動の軌跡を解析例である。これは、入射速度10m/s、α1=30度として、図中の条件を与えた例である。なお、摩擦角φ=90とは、すべりは生じないとしたことを意味する。同図において実線Xが従来の解析方法により得られた結果、破線Yが本発明の解析方法(詳細は後述)により得られた結果である。実線Xに示すように従来の方法では、衝突後、質点が接線方向において入射方向に飛び出す結果となっている。これに対して本発明では、破線Yに示すように、衝突後、質点が接線方向において入射方向と反対方向に飛び出す結果が得られる。
【0028】
本発明では、上記(ii)の場合について、入射方向に反射しない解を求めるための条件を求めた。その条件の導出について以下に詳細に述べる。
【0029】
3.バネ−ダシュポット系を接触モデルとして用いるときの減衰定数
(1)法線方向の減衰定数の決定
まず、バネ−ダシュポット系を接触モデルとし、図1のように平面と質点の衝突が発生した場合、衝突中の質点の運動は以下の方程式で表現できる。
ここで、質点の質量m、ばねの剛性係数K、ダッシュポットの減衰係数ηであり、添字iは法線方向または接線方向を示す添字である。(8)式は減衰振動を示し、図4は解の一例を描画したものである。添字iを法線方向を表わす「3」とし、x3=0を接触平面として、質点が破線のような放物運動ののち、時刻t=t1で速度vで平面と衝突したとする。その後、実線の軌跡をたどり、時刻t=t2で非接触に復し、速度v'で反射するとする。t*=t-t1=0,x3=0,dx3/dt=vnとすれば、次式が成り立つ。
質点の斜面との接触時間Δtは次式となることから、接触時間Δtは減衰固有周期Tdnの1/2となることがわかる。
【0030】
非接触に復する時刻t=t2(t*=t2-t1=π/ωdn)での法線方向の速度vn'は次式で表される。
【0031】
反発係数の定義からRenは次式で求められる。
ここで、
なお、ηは減衰係数を示し、η0は減衰係数の臨界値を示す。
【0032】
さらに、ηn/η0=ζn(法線方向の減衰定数)として(12)式を簡単にすると、次式となる。
なお、上式は下記のようにも表記できる(前出の(1)式と同じ)。
【0033】
(2)接線方向の減衰定数の決定
添字iを接線方向を表わす「1」として接線方向にx1軸をとり、t*=t-t1=0でx1=0、dx1/dt=vsとすれば、法線方向と同様に次式が成り立つ。
ここで、
【0034】
質点が非接触に復するときの接線方向速度は次式で得られる。
上式より、Resは以下のように得られる。
【0035】
(16)式において、Res<0なら、平面法線方向に対して入射側へ反射することになる。そこで、出射側へ反射するようにするためには、Res≧0となることが必要である。(16)式において、exp(-πβs/ωdn)>0であることから、Res≧0となるためには次式が成り立つ必要がある。
【0036】
以下、(17)式が成立するための条件を場合に分けて説明する。
【0037】
(i)0<cos(ωds/ωdn)π<1のとき
となる。ηs/η0=ζs(接線方向の減衰定数)として式(18)式を変換すると、
【0038】
なお、0<cos(ωds/ωdn)π<1となるのは、(a)0<(ωds/ωdn)<1/2または(d)3/2<(ωds/ωdn)<2のときである。それぞれの場合に分けて検討する。
【0039】
(a) 0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
下記式が成り立つ。
質量mは一定であるから、上式の条件は次式で表される。
【0040】
(d) 3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
このとき、(19)式の左辺の項は次式を満たす。
また、3/2<(ωds/ωdn)<2のとき、0>tan(ωds/ωdn)πとなるので、下記の関係が成り立つとき、式(19)は自動的に成立する。
よって、3/2<(ωds/ωdn)<2が、(17)式が成立するための条件となる。
【0041】
(ii)-1<cos(ωds/ωdn)π<0のとき
このとき、下記式が成り立つ。
ここで、-1<cos(ωds/ωdn)π<0より、1/2<(ωds/ωdn)<3/2となる。1/2<(ωds/ωdn)≦1において、tan(ωds/ωdn)π≦0なるため、下記式が成り立たない。
従って、1<(ωds/ωdn)<3/2のみにおいて、式(21)が成立し、式(20)に対応する条件として、下式の成立が必要となる。
【0042】
以上より、入射方向に反射しない解を求めるための条件、すなわち、Res≧0となる条件として、接線方向の減衰定数ζsについて下記の条件が得られる。
(a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
(b)1/2<(ωds/ωdn)≦1のとき
常にRes<0となるため、ζsの解はない。
(c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
(d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
常にRes>0となるため、ζsは任意の値をとる。
【0043】
以上の条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された接線方向の減衰定数ζsを用いて運動軌跡の解析を行うことで、質点が衝突後に接線方向において入射方向に反射するという不合理な事象の発生を防止できる。
【0044】
図5は、質点の衝突前後の速度変化の様子を説明した図である。図5(A)は法線方向の速度変化の様子を示し、図5(B)は接線方向の速度変化の様子を示す。図5(B)において、曲線51は上記の条件(a)の場合の変化の様子を示し、曲線52は条件(b)の場合の変化の様子を示し、曲線53は上記の条件(c)、(d)の場合の変化の様子を説明したものである。例えば、図5(B)において、曲線52は、質点が非接触に復する時刻t2において負の値を示し、これは入射方向に反射することを意味している。これに対して、曲線51、53は、時刻t2において正の値を示していることから、入射方向とは逆方向に反射することを示している。
【0045】
<減衰定数の計算例>
図6(A)は、Ks/Kn=1としてζn、ζsを0.05刻みで変化させたときの、ωds/ωdnの値を計算した結果を示した図である。図6(A)において、ωds/ωdnの値が0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域、1<(ωds/ωdn)<3/2を満たす領域、3/2<(ωds/ωdn)<2を満たす領域にそれぞれ区別できるようにハッチングを施している。例えば、ζnが0.01、ζsが0.90のとき、ωds/ωdnの値は0.44となり、この場合ωds/ωdnの値が0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域に属することがわかる。
【0046】
図6(B)は、図6(A)の表のζn、ζsの値に対応させて下記式の値を計算したものである。
Res>0が成立するためには、条件(a)においては(24)式の値が正になることが必要であり、条件(c)においては、(24)式の値が負になることが必要である。図6(B)より、Ks/Kn=1とした場合にRes>0が成立するのは、1<(ωds/ωdn)<3/2の場合すなわち条件(c)と、3/2<(ωds/ωdn)<2を満たす条件(d)の場合に限られることがわかる。図6(B)で、条件(c)と条件(c)を満たすζn、ζsの組み合わせの中から、解析時の条件に応じた1つの組み合わせを用いて、上記モデルに従い,物体の運動の軌跡を解析することにより、衝突後に接線方向において入射側に反射するという不合理な結果が算出されることを防止できる。
【0047】
図6(A)及び図6(B)の例では、図5(B)の曲線53に示すような接線方向の周期は法線方向のそれより長く、接線方向の速度が一旦負となった後に正となることを待って非接触に復する条件(c)、(d)の場合のみ、ζn、ζsの組み合わせを得られた。しかし、Ks/Kn=1、0<(ωds/ωdn)<1/2の条件下では、Res>0となるζn、ζsの組み合わせは得られなかった。0<(ωds/ωdn)<1/2の条件下で、すなわち、図5(B)の曲線51に示すようなvsの減少過程のみで非接触に復するには、Kn>Ksとして条件を与える必要がある。図7に、そのような条件を満たすようにKs/Kn=0.1として計算した例を示している。図7(A)においても、0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域に対してハッチングが施されている。図7(B)を参照すると、図7(A)において0<(ωds/ωdn)<1/2を満たす領域に対応する領域中で計算値が正となるものが存在していることが分かる。そのような正の計算値を与えるζn、ζsの組み合わせが条件(a)を満たすものとして求められる。以上のようにして減衰定数ζn、ζsの組み合わせを決定することができる。
【0048】
図8、9、10に質点の運動軌跡の解析結果の例を示す。計算条件は図中に示したとおりである。図8では、0<(ωds/ωdn)<1/2として、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例である。図9、10では、1<(ωds/ωdn)<3/2とした。図9は、非接触への復帰時の速度vsが負となるようにζn、ζsの値を選んだ例であり、図10は、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例を示している。図9では、接触を開始して0.033秒後に非接触に復しており、その時点でvs<0となっているのに対し、図10では、接触を開始して0.033秒後に非接触に復する時点で、vs>0となっていることがわかる。これらより、図6、7の表に示した条件が有効に用いることができることが確認できる。
【0049】
以上から質点が平面と非接触に復するとき、vs>0すなわち、入射方向と同一方向に運動を続ける際の減衰定数ζsの条件が明らかとなった。なお、上記の説明では、運動する物体を質点として扱ったが、運動する物体を剛体としても本発明の思想を同様に適用することは可能である。
【0050】
なお、運動する物体の例として落石が考えられるが、これに限らず、他の物体でもよい。また、本発明の思想は落下運動に限らず、衝突時のエネルギー損失をバネ−ダシュポット系で表現するモデルを用いて、質点が所定の速度で接触点に衝突する場合の運動軌跡の解析についても適用できる。
【0051】
<運動軌跡解析装置>
図11に、上述の運動軌跡解析方法を利用して質点の運動軌跡の解析を行う運動軌跡解析装置の構成を示す。運動軌跡解析装置1はパーソナルコンピュータのような情報処理装置で構成される。運動軌跡解析装置1は、その全体動作を制御する制御部11と、画面表示を行う表示部17と、ユーザが操作を行う操作部19と、データやプログラムを記憶するデータ格納部21とを備える。表示部17は例えば、液晶ディスプレイで構成され、操作部19はキーボードやマウス等である。さらに、運動軌跡解析装置1は、外部機器やネットワークに接続するためのインタフェース25を含む。
【0052】
制御部11は運動軌跡解析装置1全体の動作を制御するものであり、CPUやMPUからなり、プログラムを実行することで所定の機能を実現する。制御部11で実行されるプログラムは通信回線を通じて、またはCD−ROM等の記録媒体で提供されてもよい。制御部11は、質点の運動軌跡の解析を行う機能を実行する運動軌跡解析部15を有している。
【0053】
データ格納部21はデータやプログラムを記憶する手段であり、例えばハードディスクや半導体メモリ、光ディスクで構成することができる。データ格納部21は、落石軌跡解析プログラム、その解析に必要なパラメータ等の情報を格納する。
【0054】
落石運動軌跡解析プログラムは、前述のバネ−ダッシュポット系の接触モデルを用いて落石の解析を行うためのプログラムであり、例えば、(9.1)、(9.2)、(14.1)、(14.2)式を用いて落石運動軌跡の解析を行うことが可能なプログラムである。このようなプログラムは既に公知であり、例えば市販のITASCA社(米国、ミネソタ州)のUDECがある。落石運動解析プログラムは、制御部11の落石運動解析部15によりデータ格納部21から読み出されて実行される。
【0055】
解析に必要なm,g,K,ω等の種々のパラメータは操作部19を介して運動軌跡解析装置1に入力され、データ格納部21に保持される。なお、パラメータはI/F25を介してネットワークから取得してもよい。
【0056】
制御部11の落石運動解析部15は、解析に用いるパラメータの1つである接線方向の減衰定数ζsを上述の方法で算出し、その値をデータ格納部21に格納する。すなわち、条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された減衰定数ζsがデータ格納部21に格納される。なお、条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された減衰定数ζsは、ネットワークもしくは光ディスク等の記録媒体または操作部19を介して運動軌跡解析装置1の外部から取得し、データ格納部21に事前に格納しておいてもよい。
【0057】
運動軌跡解析部15は、解析処理実行時には、データ格納部21から接線方向の減衰定数ζsを読み出し、その減衰定数ζsの値を用いて解析プログラムにしたがい運動軌跡の解析を行う。解析結果はデータ格納部21に格納される。このとき、解析結果を表示部17上に表示してもよいし、I/F25を解してプリンタから印刷してもよい。
【0058】
本運動軌跡解析装置によれば、条件(a)、(c)、(d)を満たすように決定された接線方向の減衰定数ζsを用いて解析を行うため、衝突後に接線方向において入射側に反射するという不合理な結果が算出されることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】質点と平面の衝突前後の質点速度、入射角度、反射角度を説明した図
【図2】バネ−ダシュポット系の接触モデルを説明した図
【図3】本発明及び従来の方法により質点と平面の衝突時の運動の軌跡を解析した結果の一例を示した図
【図4】衝突中の質点の運動方程式の解の一例を示した図
【図5】衝突中の質点の法線方向及び接線方向における運動の軌跡の解析結果の例を説明した図。
【図6】(A)Ks/Kn=1として、減衰定数ζn、ζsを所定間隔(0.05)で変化させたときのωds/ωdnの計算結果を示した図、(B)Res>0となるζn、ζsの組み合わせを求めるために、減衰定数ζn、ζsを所定間隔で変化させたときの(24)式の値の計算結果を示した図
【図7】(A)Ks/Kn=0.1として、減衰定数ζn、ζsを所定間隔(0.05)で変化させたときのωds/ωdnの計算結果を示した図、(B)Res>0となるζn、ζsの組み合わせを求めるために、減衰定数ζn、ζsを所定間隔で変化させたときの(24)式の値の計算結果を示した図
【図8】質点の運動軌跡の解析結果の例を示した図(0<(ωds/ωdn)<1/2として、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例)
【図9】質点の運動軌跡の解析結果の例を示した図(1<(ωds/ωdn)<3/2として、非接触への復帰時の速度vsが負となるようにζn、ζsの値を選んだ例)
【図10】質点の運動軌跡の解析結果の例を示した図(1<(ωds/ωdn)<3/2として、非接触への復帰時の速度vsが正となるようにζn、ζsの値を選んだ例)
【図11】本発明の実施形態である運動軌跡解析装置の構成を示した図
【符号の説明】
【0060】
1 落下軌跡解析装置
11 制御部
15 落下軌跡解析部
17 表示部
19 操作部
21 データ格納部
25 インタフェース(I/F)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する方法であって、
前記解析方法は情報処理装置の制御手段により実行され、
運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を前記情報処理装置の記憶手段に記憶しておくステップと、
前記記憶手段から前記減衰定数を読み出すステップと、
前記読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行うステップと
を含むことを特徴とする運動軌跡解析方法。
【請求項2】
法線方向及び接線方向のばねの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定された、
ことを特徴とする請求項1記載の運動軌跡解析方法。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【請求項3】
前記物体が落石であることを特徴とする請求項1記載の運動軌跡解析方法。
【請求項4】
接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を解析する装置であって、
解析に必要なパラメータを記憶する記憶手段と、
接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて運動する物体の運動軌跡の解析処理を実行する制御手段とを備え、
前記記憶手段は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を記憶しておき、
前記制御手段は、前記記憶手段から前記減衰定数を読み出し、前記読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う
ことを特徴とする運動軌跡解析装置。
【請求項5】
法線方向及び接線方向のばねの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定された、
ことを特徴とする請求項4記載の運動軌跡解析装置。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【請求項6】
平面に衝突を繰り返しながら運動する物体の運動軌跡を接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する処理を、情報処理装置に実行させるプログラムであって、
運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を前記情報処理装置の記憶手段に記憶しておく機能と、
前記記憶手段から前記減衰定数を読み出す機能と、
前記読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う機能と
を前記情報処理装置の制御手段に実行させることを特徴とする運動軌跡解析プログラム。
【請求項7】
法線方向及び接線方向のバネの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定された、
ことを特徴とする請求項6記載の落下軌跡解析プログラム。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【請求項1】
接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を、接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する方法であって、
前記解析方法は情報処理装置の制御手段により実行され、
運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を前記情報処理装置の記憶手段に記憶しておくステップと、
前記記憶手段から前記減衰定数を読み出すステップと、
前記読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行うステップと
を含むことを特徴とする運動軌跡解析方法。
【請求項2】
法線方向及び接線方向のばねの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定された、
ことを特徴とする請求項1記載の運動軌跡解析方法。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【請求項3】
前記物体が落石であることを特徴とする請求項1記載の運動軌跡解析方法。
【請求項4】
接触点に衝突しながら運動する物体の運動軌跡を解析する装置であって、
解析に必要なパラメータを記憶する記憶手段と、
接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて運動する物体の運動軌跡の解析処理を実行する制御手段とを備え、
前記記憶手段は、運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を記憶しておき、
前記制御手段は、前記記憶手段から前記減衰定数を読み出し、前記読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う
ことを特徴とする運動軌跡解析装置。
【請求項5】
法線方向及び接線方向のばねの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定された、
ことを特徴とする請求項4記載の運動軌跡解析装置。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【請求項6】
平面に衝突を繰り返しながら運動する物体の運動軌跡を接触点の法線方向及び接線方向にバネとダッシュポットを配置した接触モデルを用いて解析する処理を、情報処理装置に実行させるプログラムであって、
運動する物体が接触点に接触した後、非接触へ復帰する時点の物体の接線方向の速度成分が正となるように決定された、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数を前記情報処理装置の記憶手段に記憶しておく機能と、
前記記憶手段から前記減衰定数を読み出す機能と、
前記読み出した減衰定数を用いて物体の運動軌跡の解析を行う機能と
を前記情報処理装置の制御手段に実行させることを特徴とする運動軌跡解析プログラム。
【請求項7】
法線方向及び接線方向のバネの剛性係数をそれぞれKn、Ksとし、法線方向の減衰固有周期Tdn=2π/ωdn、接線方向の減衰固有周期Tds=2π/ωdsとしたときに、接線方向に配置されたダッシュポットの減衰定数ζsは以下の(a)、(c)、(d)のいずれかの条件を満たすよう決定された、
ことを特徴とする請求項6記載の落下軌跡解析プログラム。
a)0<(ωds/ωdn)<1/2のとき
c)1<(ωds/ωdn)<3/2のとき
d)3/2<(ωds/ωdn)<2のとき
減衰定数ζsは任意の値
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図7】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図6】
【図7】
【公開番号】特開2010−47970(P2010−47970A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−212978(P2008−212978)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(504150461)国立大学法人鳥取大学 (271)
【Fターム(参考)】
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