説明

運搬箱および運搬箱の繰り返し使用方法

【課題】 商品の運搬箱を繰り返し使用する。
【解決手段】 箱本体1の四周壁の側面部2及び端面部3と、運搬箱の上面開口を塞ぐ中蓋4及び上蓋5と、下面開口を塞ぐ中底6及び下底7を有し、一方の側面部2の外端と、他方の端面部3の外端とを連結され、宅配便用とメール便用に使い分けられる運搬箱である。中蓋4は端面部3に連なる部分、上蓋5は、側面部2に連なる部分である。宅配便用として使用されるときには、下面開口は、中底6及び下底7によって塞がれ、上面開口は、中蓋4、上蓋5によって塞がれた運搬箱に組み立てられ、メール便として使用されるときには、両側面部2、2を幅方向の中央折曲線8で2つ折に折り畳まれ、折り重ねられた両側面部2、2の部分は接着されて平板状に保形される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商品の運送に用いる運搬箱、特に通販メーカーなどにおいて商品の配送に繰り返し使用する運搬箱とその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
通信販売は、広告・カタログを通じて商品を宣伝し、客から通信による注文を受け、郵便や宅配便でその商品を配送する販売方式であり、一般には「通販(通販メーカー)」と呼ばれている。通販で取扱われる商品は、ファッション/ブランド/インナー/家具・インテリア・雑貨/ビューティ&ヘルシー/フード/アニメ、ゲームのグッズ/、CD、DVD/書籍などあらゆる商品に及んでおり、その商品の運搬には、主として宅配便が活用されている。
【0003】
宅配便による商品の運送に際しては、運送中に受けるかも知れない衝撃や振動による商品の破損、劣化を防止するため、商品は梱包される。宅配便を扱う宅配業者ではこれらのニーズに応じるため、商品の特性に合わせて専用の運搬箱を提供している。通販メーカーにおいては、宅配業者が提供する運搬箱を購入するか、あるいは自社に専用の箱を調達して商品の梱包に使用している。
【0004】
現在このような目的に使用される箱はほとんどが紙製の段ボール箱である。そして一度商品の梱包に使用された段ボール箱は、商品の返品などの特定の目的を除き、通販メーカーにおいて、再びその商品の運搬に使用されることはなく、ほとんどの場合には、商品の届け先で物品の保管箱として再利用されるかあるいは、再利用されないままに破棄されているのが実情である。
【0005】
もっとも、宅配便に使用した資材を再利用しようとする試みはなかったわけではない。例えば特許文献1には、費用ならびに資材の無駄をなくす目的で発明されたという封筒である。この封筒は、封筒の配達時には、宅配便(メール便)で配達し、返送時は郵便で配達することで、角型封筒を再度利用しようというものである。この封筒は、要するに宅配のメール便で配達された角型封筒の一部を封筒又は返信用はがきに利用しようというものであり、簡単に言えば往復はがきと同様に、1つの封筒を2度使用して省資源化を図ろうとするものである。
【0006】
しかし、言うまでもなく、宅配便を利用して配達されるのは封筒ばかりはなく、商品の宅配便、特に通信販売で扱われる商品の宅配便の取扱量は莫大な数におよぶが、その取扱商品の運搬箱(段ボール箱が多い)の再利用に関してはほとんど注目されていないのが実情である。
【特許文献1】特許公開2003−341685
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
解決しようとする問題点は、商品の宅配便、特に通信販売で扱われる商品の宅配便の取扱量は莫大な数におよぶが、その取扱商品の運搬箱の再利用に関してはほとんど注目されていなかった点である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、段ボール箱の繰り返し使用を可能にするため、繰り返し使用可能な段ボール箱、例えばプラスチック製の段ボール箱を用い、商品販売業者は、そのの箱に商品を詰めて宅配便にて搬送し、商品が客に届けられた後は、箱を定型に折り畳み、その形態を保持したままメール便として商品販売業者に返却することをもっとも主要な特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、商品販売業者において、平板状に折り畳まれた段ボール箱を箱型に組み立てたときには、宅配便用の運搬箱となり、箱の上面には、宅配便伝票の貼付指示が表示され、箱内に商品を収納し、貨物として宅配業者に運送を依頼し、あて先の客に配送した後は、宅配業者が使用済みの運搬箱を回収し、これを折り畳んで、そのままメール便として商品販売業者へ返却され、商品販売業者は、折り畳まれた段ボール箱を再び箱型に組み立てることによってその箱を商品の運搬箱として繰り返し使用することができる。
【0010】
特に本発明によれば、運搬箱の上面開口を塞ぐ上蓋と中蓋との関係を宅配便の伝票貼付面と、メール便のシール貼付面とに使い分け、宅配便としての配送時には上蓋の宅配便の伝票貼付面を表面に現し、メール便のシール貼付面が付された中蓋は上蓋の下に隠し、メール便としての返却時には上蓋を2つ折りにして宅配便の伝票貼付面を隠し、中蓋のメール便のシール貼付面が外面に現れるようにしたため、宅配便とメール便とを混乱なく使い分けることができる。
【0011】
本発明においては、上蓋と中蓋(中底と下底)とは高さを異ならせてあるため、特に平面形状が正方形の運搬箱においては、これを箱型に組み立てたときに、誤って中蓋を上蓋に重ねるという誤りが生じることがなく、また長方形の箱においても、上蓋と中蓋との区別が容易となり、宅配便として用いるときには、箱上面に「宅配便の伝票貼付面」を箱の上面に表わし、また、箱を折り畳んだときには、必ず、折り畳まれた平板の前面及び背面に「メール便のシール貼付面」を表すことができる。なお、「宅配便の伝票貼付面」の表示を黒文字、「メール便のシール貼付面」を赤文字のように色違いに標記することによって、配送先の誤りをなくすことができる。
【0012】
さらに、段ボール箱を回収して折り畳んだときに、折り重ねられる箱の側面の表面には、接着手段として面ファスナーの小片を向き合わせに取り付けたので、メール便として使用するときには、2つ折となった箱の側面は、折り畳み状態のまま面ファスナーで接着され、回収した箱を平板に折り畳んだ形状を保たせておくことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
1つの箱を宅配便とメール便とに使い分けるという目的を、段ボール箱の折り畳み方を工夫することによって実現した。
【実施例1】
【0014】
図1は、本発明方法に用いる運送箱の組み立て要領を示す図であり、運搬箱としての構造は通常の段ボール箱と基本的に同じである。すなわち、本発明方法に用いる運搬箱は、箱本体1の四周壁となるそれぞれ対を成す側面部2,2及び端面部3,3と、運搬箱の上面開口を塞ぐ中蓋4、4及び上蓋5、5と、下面開口を塞ぐ中底6,6及び下底7,7とからなっており、図2の展開図に示す一方の側面部2の外端と、他方の端面部3の外端とを連結してループ状に構成したものである。
【0015】
この実施例において、側面部2は、端面部3に比べて横幅が長くなっており、したがって組み立てられた箱は上方から視て長方形に組み立てられるが、運搬箱としては、必ずしも長方形である必要はなく、正方形の箱であってもよい。本発明において、中蓋4は、上蓋5より高さが低く、また、中底6は下底7よりも高さは低く設定されている。また、側面部2の幅方向の中央には上下方向に折曲線8が付されている。なお、両側面部3の両側の定位置、折曲線8をはさんで等距離の位置には、互いに接着して側面部3を2つ折に保形するための接着手段として面ファスナー9が取り付けられている。
【0016】
本発明による運搬箱の組み立て要領は、基本的には通常の段ボール箱の組み立て要領と同じである。すなわち、図1(a)において、対を成す両側面部2,2及び両端面部3,3を箱本体1の対抗壁として互いに向き合わせに配置し、ついで図1(b)のように両端の中底6,6を内側に直角に折り曲げ、次に図1(c)のように両側の下底7,7を内側に折り曲げ、両下底7,7間にまたがって粘着テープ(図示略)で封止する。
【0017】
これによって、上面開放の角型の箱となり、内部に商品を収容した後、最初に両側の中蓋4,4を内側に折り曲げ、さらに図1(d)のように上蓋5,5を中蓋4,4の上に被せ、両上蓋5,5間にまたがって粘着テープ(図示略)を貼り付けて封止する。本発明において、対の上蓋4,4、および対の下底7,7は、直立姿勢からこれを内側に折り曲げたときにその端縁は互いに突き合わさるようにその高さが設定されているが、中蓋4は上蓋5よりも高さが低く、また中底6は、下底7よりも高さが低く設定されているため、中蓋4と上蓋5とは容易に区別される。特に運搬箱の平面形状が正方形の場合には、中蓋4と上蓋5とは同じ幅のため、両者を明確に区別しておくことが重要である。上蓋5の高さを中蓋4の高さよりも高さ設定しておくことによって、重ねる順序は必ず中蓋が先、上蓋が後になって、その順序に誤りを生じさせない。
【0018】
宅配便の運搬箱として使用された後は、メール便として商品販売業者に戻すために、定型に折り畳まれる。折り畳みの要領を図3に示す。図3(a)において、箱本体1の中蓋4、上蓋5並びに中底6及び下底7を図1(a)のように起立させた状態で、図3(a)に示すように両側面部2に付された折曲線8に沿って両側面部2を2つ折に折曲し、折曲部分を折り重ねると、側面部2の面ファスナーの小片9、9が互いに接着して図3(b)のように折り畳み状態が保形され定型の平板状となる。
【0019】
なお、対を成す上蓋5,5には、図1(d)に示したように、その一方に「宅急便(登録商標)伝票」又は「宅配便伝票」Aの表示、他方には、「貼付位置」Bの表示が黒文字をもって表示され、箱に組み立てたときには、その表示が箱の上面に表される。一方、中蓋4には、「メール便シール貼り位置」Cの表示が赤文字によって付され、平板状に折り畳んだときには、その表示が平板の前面及び背面に現される。さらに、両端面部3は、宅配業者にとっての顧客、つまり商品販売業者(通販メーカー)である顧客企業の「(商品名、商標)印刷スペース」Dとなっており、中底6は、この運搬箱を使用する商品販売業者(例えば通販メーカー)の住所、名称のラベルEが宅配便の発送元、メール便の発送先の標記として使用される。
【0020】
本発明の運搬箱を特定の商品販売業者(通販メーカー)に専用の運搬箱として使用するときには、商品販売業者(通販メーカー)の住所、名称のラベルEの領域に、商品販売業者の社名、住所など必要な事項をあらかじめ印刷し、「メール便シール添付位置」には、当該商品販売業者に専用のメール便シールを添付しておくのが好都合である。本発明による運搬箱は、配送すべき商品の大きさに適合して使い分けることができるように、形状(正方形、長方形の区別)や大きさ(平面形状は正方形、長方形で高さが違うもの)が異なる数種類を準備しておくことが好ましい。
【0021】
次に本発明による運搬箱の使用例を説明する。図4は、商品販売業者である通販メーカーでの使用例である。図4において、通販メーカーには商品の発送に備えて一定数の運搬箱を保管している。運搬箱は、2つ折に折り畳んで保管されている。本発明による運搬箱の繰り返し使用は、セットアップ処理、梱包処理、配送処理、回収処理を繰り返すことによって実現される。
【0022】
(1)セットアップ処理は、運搬箱を組み立てる処理である。通販メーカーでは、商品の注文を受けたときに、セットアップ処理として2つ折に折り畳まれた運搬箱をまず中空の枠型に広げ、図1(a)〜(d)の要領で中底6、下底7の順に折曲して上面開放の箱本体1に組み立てる。
【0023】
(2)梱包処理は、組み立てられた箱本体1に商品を梱包する処理である。注文を受けた商品を運搬箱に収容し、中蓋4、上蓋5の順に折曲して箱本体1を封止し、対を成す上蓋5,5間にまたがって、あて先などの必要な情報を記載した「宅配便伝票」を添付し、宅配便の貨物として配送を宅配業者に配送を依頼する。
【0024】
(3)配送処理は、貨物を宅配便の貨物としてあて先に配送する処理である。通販メーカーより依頼を受けた宅配業者は、宅配便伝票の記載内容に従って、そのあて先に配送する。
(4)回収処理は、あて先に配送した貨物から商品を取り出し、運搬箱を回収し、回収した運搬箱を折り畳んでメール便として通販メーカーに配送する処理である。
【0025】
宅配業者(商品を配送した貨物自動車の運転手)は、運搬箱から、商品を取り出してあて先の商品注文主に手渡し、商品の受領確認を得た後、空になった運搬箱は、商品を配送した貨物自動車の運転手が回収し、貨物自動車の運転手が直接、又は一旦配送基地に移送したのち、メール便として通販メーカーに配送される。
【0026】
なお、回収処理においては、空になった運搬箱を2つ折の平板状に展開した状態で両側面部に付された折曲線に沿って両側面部を2つ折に折り畳むと、平板状に折り畳まれた運搬箱の両外面には、「メール便」のシールと、箱の両端面部には、あて先である通販メーカーの住所、名称が現れるため、その表示にしたがって、特別の処理を行うまでもなく宅配便からメール便の処理に切り替えて当該運搬箱を宅配便を依頼した通販メーカーに戻し、再使用の際のセットアップの処理に備えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
以上、実施例においては、通販メーカーの商品配送用に適用した場合の例について説明したが、通販メーカーに限らず、商品や物品の宅配のために当該運搬箱をストックすることが可能であれば、本発明方法を適用して同じ運搬箱を繰り返し使用して省資源化を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】(a)〜(d)は運搬箱の組み立て要領を順に示す図である。
【図2】本発明による運搬箱の展開図である。
【図3】(a)、(b)は本発明による運搬箱の折り畳み要領を示す図である。
【図4】本発明による運搬箱を繰り返し使用する要領を示す図である。
【符号の説明】
【0029】
1 箱本体
2 側面部
3 端面部
4 中蓋
5 上蓋
6 中底
7 下底
8 折曲線
9 面ファスナー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱本体の四周壁となるそれぞれ対を成す側面部及び端面部と、運搬箱の上面開口を塞ぐ中蓋及び上蓋と、下面開口を塞ぐ中底及び下底を有し、一方の側面部の外端と、他方の端面部の外端とを連結してループ状に構成され、宅配便用とメール便用に使い分けられる運搬箱であって、
中蓋は端面部に連なる部分、上蓋は、側面部に連なる部分であり、
側面部は幅方向の中央に折曲線を有し、折曲線をはさんでその両側に接着手段が取り付けられ、
宅配便用として使用されるときには、下面開口は、中底及び下底によって塞がれ、上面開口は、中蓋、上蓋によって塞がれた運搬箱に組み立てられ、
メール便として使用されるときには、両側面部を幅方向の中央折曲線で2つ折に折り畳まれ、折り重ねられた両側面部の部分は接着手段で接着されて平板状に保形されるものであることを特徴とする運搬箱。
【請求項2】
上面開口は、それぞれ対を成す中蓋、上蓋の順に折り曲げることによって塞がれるものであり、
運搬箱の上面に現れる上蓋の表面には、宅配便伝票の貼付位置が表示され、平板状に保形されたときに前面および背面に現れる中蓋の表面には、メール便のシール貼付位置が表示されるものであることを特徴とする請求項1に記載の運搬箱。
【請求項3】
中蓋は、上蓋より高さが低く設定され、運搬箱に組み立てられるときに、上面開口を塞ぐ順序は、おのずから中蓋、上蓋の順序に設定されるようにしたことを特徴とする請求項2に記載の運搬箱。
【請求項4】
宅配便伝票の貼付位置の表示と、メール便のシール貼付位置の表示とは、互いに色を異ならせて表示されていることを特徴する請求項2に記載の運搬箱。
【請求項5】
セットアップ処理と梱包処理と配送処理と回収処理とを有する運搬箱の繰り返し使用方法であって、
セットアップ処理は、商品販売業者において、運搬箱を組み立てる処理であり、
梱包処理は、組み立てられた箱本体に商品を梱包する処理であり、
配送処理は、貨物を宅配便の貨物としてあて先に配送する処理であり、
回収処理は、あて先に配送した貨物から商品を取り出し、運搬箱を回収し、回収した運搬箱を折り畳んでメール便として商品販売業者に配送する処理であることを特徴とする運搬箱の繰り返し使用方法。
【請求項6】
セットアップ処理は、商品販売業者が商品の注文を受けたときに、2つ折に折り畳まれた運搬箱をまず中空の枠型に広げ、中底、下底の順に折曲して上面開放の箱本体に組み立てる処理であり、
梱包処理は、注文を受けた商品を運搬箱に収容し、中蓋、上蓋の順に折曲して箱本体を封止し、対を成す上蓋間にまたがって、あて先などの必要な情報を記載した「宅配便伝票」を添付し、宅配便の貨物として配送を宅配業者に配送を依頼する処理であり、
配送処理は、商品販売業者より依頼を受けた宅配業者が、宅配便伝票の記載内容に従って、そのあて先に配送する処理であることを特徴とする請求項5に記載の運搬箱の繰り返し使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−13169(P2010−13169A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−176619(P2008−176619)
【出願日】平成20年7月7日(2008.7.7)
【出願人】(507022983)ヤマト包装技術研究所株式会社 (19)
【Fターム(参考)】