説明

運賃精算システム、発券装置、運賃精算装置及び整理券

【課題】券類の台紙である紙の無駄な消費を無くすことができ、しかもこれを簡素な構成により実現することができる発券装置及び整理券を提供する。
【解決手段】整理券発行機7から整理券を発行する際、整理券には整理券番号に加えて、バーコードが印刷される。このバーコード情報Dbcは、運賃箱5に転送され、そのときの乗車停留所に対応付けてリスト表46に格納される。乗客が降車する際、運賃とともに整理券が運賃箱5に投入されると、整理券に印刷されたバーコードがバーコード読取部41によって読み取られる。そして、読み取ったバーコードがリスト表46に照らされて乗車区間番号が割り出され、割り出された乗車区間番号と、そのときの停留所の区間番号とから、必要運賃が算出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乗客乗車時に整理券を発行してこれを受け取らせ、降車の際には運賃及び整理券を受け付けて、現金又は現金代替媒体で運賃精算を行う運賃精算システム、発券装置、運賃精算装置及び整理券に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、路線バスやワンマン鉄道等の運搬車両には、乗車停留所(乗車区間)がどこであるかの証明として整理券を発行する整理券発行機が設置されている。この種の運搬車両を利用する場合、乗員は乗車の際、乗車口に設置された整理券発行機から整理券を抜き取って所持し、これをどの停留所(乗車区間)で乗ったのかの証明とする。そして、降車の際には、車内の運賃表示器に表示された運賃表から、所持する整理券の番号に対応した金額を確認して必要運賃を把握し、降車口に設置された運賃箱に必要運賃を整理券とともに投入して運賃精算を行う。この種の整理券発行機は、当出願人が例えば特許文献1,2等で種々の技術を提案している。
【0003】
このような整理券発行機は、整理券を発行する際、内部のロール紙を巻き取ってロール紙先端をプリンタヘッドまで至らせ、この先端部分を印刷面として、乗車停留所に対応する数字や文字等をプリンタヘッドで印刷する。そして、ロール紙の印刷部分をカッタにより所定サイズに切断し、これを整理券発券機の発券口から整理券として所定量飛び出させ、乗員による整理券の抜き取りを可能とする。整理券発行機は、路線バスが停留所に停留している期間においてこの整理券発行を行い、乗客によって整理券が抜き取られる都度、前述したような整理券の印刷打ち出しを繰り返し行って、乗客による整理券の受け取りを可能とする。
【0004】
また、路線バスが停留所を発車すると、乗客によって抜き取られなかった整理券は、整理券発行機の内部に一旦引き込まれ、路線バス走行中の勝手な抜き取りが不可とされる。そして、路線バスが次の停留所に停車すると、一旦引き込み状態をとっていた整理券が発券口から再度飛び出す状態をとり、乗客による整理券の抜き取りを可能とする。また、路線バスが停留所を再発進した際、運行経路が延びて整理券番号を切り換える必要が発生した場合には、整理券発行機の内部に引き込んだ整理券を破棄し、次の番号を印刷した整理券が新たに作成される。そして、路線バスが次停留所に停車すると、その新しく作成した整理券を発券口から飛び出させて乗客に受け取らせる。
【0005】
ところで、この種の整理券発行機は、乗車区間が次区間に移って整理券番号が切り換わる度に、前の番号が印刷された整理券を破棄するものであるので、紙を無駄にしてしまう問題がある。特に、運行経路が長くなる系統を運行する場合は、例えば乗車区間が数十にも及ぶので、その分だけ廃棄する紙の量が多くなり、紙の浪費の問題が顕著になる。そこで、これを解消する技術として、例えば再利用できる媒体を整理券として使用し、無駄な紙の消費を無くす技術が例えば特許文献3〜5等に開示されている。
【0006】
ここで、各文献の技術内容を簡単に説明すると、まず特許文献3は、乗車時に乗車地データを整理券の磁気ストライプに記録するとともに、整理券の裏面に乗車位置番号を印字する技術である。また、特許文献4は、乗車時に乗車地データをICタグに記憶しつつ、ICタグの表面に乗車区間番号をリライト可能に印字する技術である。さらに、特許文献5は、乗車時に磁気カード式乗車券のIDを読み取り、このIDを乗車地データと組にしてメモリに記憶しておき、降車時に磁気カード式乗車券のIDを読み取り、その読み取ったIDに対応する乗車地データと現在地とから運賃を算出し、この運賃を磁気カード式乗車券から減算する。
【特許文献1】特許第2597303号公報
【特許文献2】特開2003−323645号公報
【特許文献3】特開昭62−75895号公報
【特許文献4】特許第3216178号公報
【特許文献5】特許第2631194号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献3〜5の技術は、再利用可能な媒体を整理券として使用することにより、紙の無駄な消費を無くすという問題は解消できるものの、整理券として使用する媒体として、磁気ストライプ、IDタグ、磁気カード等を用いるので、システム構造が複雑化、ひいては部品コストが高くつく問題があった。このため、紙の無駄な消費を、簡素なシステム構造のものでなし得る技術が新たに要望されていた。
【0008】
本発明の目的は、券類の台紙である紙の無駄な消費を無くすことができ、しかもこれを簡素な構成により実現することができる発券装置及び整理券を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記問題点を解決するために、本発明では、乗車地がどこであるのかの証明として整理券を発券装置で発行し、降車の際に運賃精算装置で現金又は現金代替媒体で運賃の精算を行う運賃精算システムにおいて、前記発券装置に設けられ、前記整理券の各々が持つ券固有のIDとして識別IDを前記整理券に印刷して、当該整理券を発券口から抜き取り可能に発行するID印刷手段と、前記発券装置に設けられ、前記ID印刷手段が前記整理券に印刷した前記識別IDを、前記発券装置から前記運賃精算装置に転送する転送手段と、前記運賃精算装置に設けられ、前記転送手段から受け付けた前記識別IDを、そのときの乗車地に対応付けて乗車地情報として記憶する情報登録手段と、前記運賃精算装置に設けられ、当該運賃精算装置に投入された前記整理券に関して、当該整理券に印刷された前記識別IDを読み取り、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地を割り出し、該割り出し乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃を算出する運賃算出手段とを備えたことを要旨とする。
【0010】
この構成によれば、発券装置が整理券を発行する際には、整理券に券固有の識別IDが印刷された状態で整理券が発行される。そして、整理券は発券装置の発券口から抜き取り可能に飛び出して、乗車する乗客によって抜き取られるのを待ち、乗車する乗客により1枚ずつ抜き取られる。このとき、整理券に印刷された識別IDが発券装置から運賃精算装置に転送され、この識別IDがそのときの乗車地(例えば、乗車区間番号や乗車停留所)に対応付けられて運賃精算装置に乗車地情報として記憶される。そして、乗客が降車する際に、必要運賃とともに所持していた整理券が運賃精算装置に投入されると、整理券に印刷されている識別IDを読み取り、この識別IDを乗車地情報と照らして乗車地を割り出し、その割り出し乗車地と車両現在地(例えば、現在区間番号や現在停留所)とから、乗客に科す必要運賃が算出される。
【0011】
このため、もし仮に発券装置で発行した整理券が抜き取られずに車両が停留所から次停留所に向かって再発進した際に、乗客に科す必要運賃が繰り上がったとしても、整理券はそのまま継続して使用することが可能となる。よって、必要運賃が繰り上がる都度、即ち今までであれば整理券番号が切り換わる都度、用紙を破棄していたが、本構成の場合は用紙の破棄が必要無くなるので、用紙を有効的に使用することが可能となる。また、整理券としては従来通り、紙を使用することが可能となるので、例えば磁気記録式等に比較して、システム構造を簡素なものとすることも可能となる。
【0012】
本発明では、前記発券装置に設けられ、前記識別IDに加えて、乗車地がどこであるのかを視認可能な記号を前記整理券に印刷する記号印刷手段と、前記発券装置に設けられ、前記識別IDが印刷された前記整理券が抜き取られずに停留所から車両が再発進して、乗客に科す必要運賃が繰り上がった際、前記整理券に印刷された記号を、次の乗車地に対応した新たな記号に書き換える書換手段とを備えたことを要旨とする。
【0013】
この構成によれば、乗車地がどこであるのかを視認可能な記号が整理券に印刷されるので、乗車地がどこであるのかを整理券を見れば直ぐに確認することが可能となる。また、この記号は必要運賃が繰り上がれば、それに伴って新たな記号に書き換えられる。よって、乗車地を整理券に印刷するようにしても、正しい記号を整理券にその都度、表示させておくことが可能となる。
【0014】
本発明では、乗車地がどこであるのかの証明として整理券が発行可能であり、降車の際に運賃精算装置で現金又は現金代替媒体で受け付けて運賃の精算が実行可能な発券装置において、前記整理券の各々が持つ券固有のIDとして識別IDを前記整理券に印刷して、当該整理券を発券口から抜き取り可能に発行するID印刷手段と、前記ID印刷手段が前記整理券に印刷した前記識別IDを、前記発券装置から前記運賃精算装置に転送する転送手段とを備え、前記転送手段から転送された識別IDは、そのときの乗車地に対応付けて前記運賃精算装置で乗車地情報として記憶され、前記運賃精算装置に前記整理券が投入された際、当該整理券の前記識別IDは、前記運賃精算装置によって読み取られ、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地が割り出され、該割り出し乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃が算出されることを要旨とする。
【0015】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることが可能となる。
本発明では、乗車地がどこであるのかの証明として発券装置から発行された整理券を乗車時に乗客に受け取らせ、降車の際に現金又は現金代替媒体により運賃の精算を行う運賃精算装置において、前記発券装置が前記整理券を発行するときに前記整理券に印刷した券固有の識別IDを前記発券装置から受け付けると、当該識別IDをそのときの乗車地に対応付けて乗車地情報として記憶する情報登録手段と、前記運賃精算装置に投入された前記整理券に関して、当該整理券に印刷された前記識別IDを読み取り、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地を割り出し、該割り出し乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃を算出する運賃算出手段とを備えたことを要旨とする。
【0016】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることが可能となる。
本発明では、乗車地がどこであるのかの証明として各停留所で発券装置から発行される整理券であって、前記整理券の各々が持つ券固有のIDとして識別IDが印刷され、当該識別IDが前記発券装置から運賃精算装置に転送されるとともに、当該識別IDがそのときの乗車地に対応付けて乗車地情報として前記運賃精算装置に記憶され、当該運賃精算装置に整理券が投入された際には、当該整理券に印刷された前記識別IDが読み取られ、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地が割り出され、当該割り出された乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃が算出されることを要旨とする。
【0017】
この構成によれば、請求項1と同様の作用効果を得ることが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、券類の台紙である紙の無駄な消費を無くすことができ、しかもこれを簡素な構成により実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を具体化した発券装置及び整理券の一実施形態を図1〜図9に従って説明する。
図1に示すように、路線バスやワンマン鉄道等の運搬車両には、乗客による運賃支払いを管理する運賃精算システム1が搭載されている。この運賃精算システム1には、運賃精算システム1を統括管理するコントロールユニットとして統括制御ユニット2が設けられている。この統括制御ユニット2は、システム統括制御機能のみならず、ディスプレイ3(2画面式)が一体に組み込まれることにより表示機能を持つとともに、音声放送を管理する音声放送機能も持っている。この統括制御ユニット2には、複数存在する系統(運行路線)の中から運転手が1つの系統を選択設定する際に操作する系統操作盤4が接続されている。また、統括制御ユニット2には、乗客の運賃投入先として車内降車口に設置された運賃箱5が接続されている。なお、運賃箱5が運賃精算装置に相当する。
【0020】
統括制御ユニット2は、系統操作盤4でどの系統が選択されたのかを確認し、系統操作盤4で設定された系統で使用すべき運賃データDunを運賃箱5に出力して、指定系統に応じた運賃形体での運賃精算を運賃箱5に実行させる。また、この統括制御ユニット2は、車両走行中において、指定系統に応じた各種画面(運賃表、停留所名、広告等)をディスプレイ3に表示可能であるとともに、同じく指定系統に応じた各種音声放送(次停留所アナウンス、広告アナウンス等)も管理する。即ち、統括制御ユニット2は、音声放送機能付き表示機であって、指定系統に応じた表示及び音声放送をこれ一台で管理する。
【0021】
また、運賃箱5には、どの乗車区間(停留所)で乗車したのかの証明として乗客に整理券6を発行する整理券発行機7が接続されている。整理券発行機7は、車内乗車口に設置されるとともに、熱転写により用紙に印刷を行うサーマル式が使用されている。整理券6には、例えば整理券番号8やバーコード9等が印刷されている。整理券番号8は、図2に示すように、例えば連続する2〜3つの停留所の括り、いわゆる乗車区間で区分けされた番号であって、どの乗車区間から車両に乗車したのかを表すものである。また、バーコード9は、各々の整理券6が持つ固有のIDとして付されたものであって、各整理券6で異なるものが印刷されている。なお、整理券発行機7が発券装置に相当し、バーコード9が識別IDに相当する。
【0022】
運賃箱5は、統括制御ユニット2から取得した運賃データDunを基に、乗客が降車する際に必要となる運賃がどれだけであるのかを把握している。ここで、この運賃データDunは、図3に示すように、整理券6で整理券番号8として付した区間番号と、車両の停車停留所の区間番号とが関連付けられたマップデータ(表)からなっている。よって、運賃精算の際には、乗客降車のために停車したその停留所の区間番号のラインと、乗客に受け取らせた整理券6に付された区間番号のラインとが交差する枠の金額を運賃として割り出し、これを必要運賃として乗客に科している。そして、乗客降車の際に運賃箱5の運賃投入口に運賃が投入されると、運賃箱5はこの投入運賃が必要金額を満たすかどうかを確認しつつ、投入運賃を蓄積する。
【0023】
図5に示すように、整理券発行機7は、発行機本体10が例えば直方体の箱形状をなすとともに、発行機本体10の前面に整理券6の発券口11が設けられている。整理券発行機7は、車両が停留所に停車した際、発券口11から券先端が所定量飛び出す発券口飛び出し状態を整理券6にとらせて、乗客による整理券6の抜き取りを待ち、整理券6が発券口11から抜き取られると、新たな整理券6を作成してこれに発券口飛び出し状態を再度とらせ、整理券6の抜き取りの都度、この処理を繰り返すことにより整理券6を発券口11から発行する。
【0024】
発行機本体10の内部には、整理券6の台紙のセット先として用紙セット部12が設けられている。この用紙セット部12には、整理券6の台紙として一対のロール紙13,14が上下に線対称の配置状態でセットされている。これらロール紙13,14には、用紙引き出し用の駆動源として紙送りモータ15,16(図6参照)が各々連結されている。上側紙送りモータ15は、上側ロール紙13を図5の紙面時計回りに回して紙送りを行う。また、下側紙送りモータ16は、下側ロール紙14を図5の紙面反時計回りに回して紙送りを行う。これらロール紙13,14は、上下のうちの一方がまず先に優先して使用され、使用状態にある一方が紙切れになると用紙供給が他方に切り換わる。
【0025】
用紙セット部12において上側ロール紙13と下側ロール紙14との間には、発券口11に向かって略水平に延びる用紙通路17が設けられている。この用紙通路17には、上側ロール紙13及び下側ロール紙14の共通通路として使用され、これらロール紙13,14のうち使用状態をとる一方が通過して発券口11に送り出されている。また、これらロール紙13,14のうち使用状態にないものは、用紙通路17の入口手前まで送られて、即ち用紙通路17の入口手前で止められて待機状態をとっている。
【0026】
整理券発行機7内の用紙搬送経路上において用紙通路17の出口寄りの位置には、上側ロール紙13に数字や文字等の印刷を施すプリンタヘッド18が設けられている。また、プリンタヘッド18の対向位置には、印刷実行下にある上側ロール紙13をプリンタヘッド18に押し付けるプラテンローラ20が設けられている。プリンタヘッド18は、上側ロール紙13を上側から印刷すべく用紙搬送経路に対してその上側に配置され、サーマルヘッドが使用されている。また、整理券発行機7内の用紙搬送経路上においてプリンタヘッド18の隣位置には、下側ロール紙14用のプリンタヘッド19及びそのプラテンローラ21が並設されている。このプリンタヘッド19は、上側ロール紙13用のプリンタヘッド18に対して配置向きが上下逆をとるだけで、基本的な構造は同じである。また、これらプラテンローラ20,21には、これらローラ20,21を自転させるプラテンモータ22,23(図6参照)が各々連結されている。
【0027】
また、整理券発行機7内の用紙搬送経路上においてその出口寄りの位置には、発券口11側に送り出されているロール紙13(14)を切断可能なカッタ24が設けられている。このカッタ24は、プリンタヘッド18(プリンタヘッド19)がロール紙13(14)に文字や記号を印刷し終わった後にロール紙13(14)を切断して、プリンタヘッド18(プリンタヘッド19)による印刷箇所を整理券6としてロール紙本体側から切り離すべく働く。
【0028】
整理券発行機7の内部においてカッタ24の斜め上方位置には、例えば整理券番号8が切り換わるなどして整理券6を破棄するときに動作する廃券レバー25が設けられている。この廃券レバー25は、発行機本体10の長さ方向(図5の矢印L)を回動軸26として、この回動軸26回りに揺動可能に取り付けられている。また、図4に示すように、廃券レバー25の下方位置には、廃券レバー25の揺動運動の駆動源である廃券モータ27がギア28を介して廃券レバー25の回動軸26に連結されている。また、図5に示すように、廃券レバー25の下方位置には、破棄された整理券6の収納先として長細い箱形状の廃券収納部29が設けられている。
【0029】
ここで、停留所で停車していた車両が次停留所に向かって再発進した際、例えば乗車区間が次区間に移って整理券番号8が切り換わると、発行済みの整理券6が不要とみなされる。このとき、廃券レバー25は先端が持ち上がった通常位置から、廃券モータ27によって先端が下方に揺動する動きをとる。このため、発券口11において抜き取り可能状態をとる整理券6が廃券レバー25によって下方に強制的に押し込まれ、不要となった整理券6が廃券収納部29に送り込まれて破棄される。
【0030】
整理券発行機7内の用紙搬送経路上において用紙通路17の出口付近には、この発券口11における整理券6の有無を検出する発券センサ30が設けられている。また、用紙通路17の入口付近においてその上方位置には、この入口付近において上側ロール紙13の有無を検出する上側ロール紙通過検出センサ31が設けられている。さらに、用紙通路17の入口付近においてその下方位置には、この入口付近において下側ロール紙14の有無を検出する下側ロール紙通過検出センサ32が設けられている。これら発券センサ30、上側ロール紙通過検出センサ31及び下側ロール紙通過検出センサ32は、例えばフォトカプラが使用され、ロール紙13(14)が対向位置に位置すると反射光を受け付けてロール紙13(14)を検出する。
【0031】
また、整理券発行機7内において発券口11とカッタ24との間には、整理券6を出し引き可能とする搬送ローラ33が設けられている。搬送ローラ33は、発券口飛び出し状態をとる整理券6を発行機本体10の内部に引き込んで収納状態をとらせたり、或いはこの逆に収納状態をとる整理券6を発行機本体10の外に押し出して、元の発券口飛び出し状態をとらせたりするために働く。この搬送ローラ33には、搬送ローラ33を自転させる駆動源として搬送モータ34(図6参照)が連結されている。また、搬送ローラ33の対向位置には、搬送ローラ33と連れ回りする従動ローラ35が設けられている。
【0032】
例えば、まず最初に上側ロール紙13が用紙セット部12にセットされたとすると、上側紙送りモータ15、プラテンモータ22,23、搬送モータ34が各々正転し、発券センサ30が上側ロール紙13の先端を検出するまで、上側紙送りモータ15及び3つのローラ20,21,33によって紙送りされる。そして、発券センサ30が上側ロール紙13を検出すると、上側紙送りモータ15、プラテンモータ22,23、搬送モータ34が停止して、上側ロール紙13の紙送りが停止される。そして、カッタ24が動作して上側ロール紙13の先端の余り部分を切断するとともに、廃券レバー25が下方に揺動して、先端の余り部分を廃券収納部29に破棄する。このセット後、続けて下側ロール紙14を用紙セット部12にセットされると、今度は下側紙送りモータ16、プラテンモータ22,23、搬送モータ34が各々正転し、下側ロール紙通過検出センサ32が下側ロール紙14の先端を検出するまで、下側ロール紙14が紙送りされる。これにより、用紙セット部12への上側ロール紙13及び下側ロール紙14のセットが完了する。
【0033】
続いて、整理券6が上側ロール紙13で発行される場合、プリンタヘッド18で1走査を印刷しつつ、4つのモータ15,22,23,34が正転して上側ロール紙13を次走査位置まで紙送りする動作を繰り返し行うことにより、上側ロール紙13に整理券番号8やバーコード9の印刷が実行される。この印刷が終了すると、カッタ24が作動してこの印刷箇所をロール紙本体側から切り離し、この部分が整理券6として発券口11から飛び出した発券口飛び出し状態をとる。そして、この整理券6が発券口11から抜き取られたことを発券センサ30で検出すると、前述した印刷→切断が繰り返し実行され、整理券6の引き抜きの都度、整理券6が発券口11から発券される。
【0034】
図6に示すように、整理券発行機7には、この整理券発行機7のコントロールユニットとして発行機制御装置36が設けられている。この発行機制御装置36は、例えばCPU、ROM、RAM等からなり、ROMに格納された制御プログラムに従って動作する。また、この発行機制御装置36には、入力側に発券センサ30、上側ロール紙通過検出センサ31、下側ロール紙通過検出センサ32が接続されている。また、発行機制御装置36の出力側には、紙送りモータ15,16、プリンタヘッド18,19、プラテンモータ22,23、カッタ24、廃券モータ27、搬送モータ34が接続されている。発行機制御装置36は、各センサ30〜32から取得するセンサ出力等を基に、出力側の各種部品群を動作させることによって整理券発行機7を動作させる。
【0035】
また、この発行機制御装置36には、ロール紙13,14への整理券番号8やバーコード9の印刷を管理する印刷処理部37が設けられている。印刷処理部37は、バーコード9を発券の度に異なる柄で印刷するとともに、バーコード9の隣位置に整理券番号8を印刷する。また、発行機制御装置36には、発券口11から抜き取られた整理券6のバーコード9がどのような柄(バーコード柄)であるのかの通知情報として、バーコード情報Dbcを運賃箱5に転送するバーコード情報転送部38が設けられている。さらに、発行機制御装置36には、整理券番号8の切り換えが必要となった際に、印刷済みの番号を塗りつぶして整理券6の余白に新たな整理券番号8を印刷する番号書換部39が設けられている。なお、印刷処理部37がID印刷手段及び記号印刷手段を構成し、バーコード情報転送部38が転送手段に相当し、番号書換部39が書換手段に相当する。
【0036】
一方、運賃箱5には、この運賃箱5のコントロールユニットとして運賃箱制御装置40が設けられている。この運賃箱制御装置40は、例えばCPU、ROM、RAM等からなり、ROMに格納された制御プログラムに従って動作する。また、運賃箱5には、運賃箱5の運賃投入口に運賃硬貨とともに整理券6が投入された際、整理券6の搬送過程において整理券6のバーコード9を読取可能なバーコード読取部41が設けられている。このバーコード読取部41は、例えば光学センサからなり、読み取ったバーコード9の読取情報を運賃箱制御装置40に出力する。なお、バーコード読取部41が運賃精算手段を構成する。
【0037】
また、運賃箱制御装置40には、整理券発行機7のバーコード情報転送部38から転送されてきたバーコード情報Dbcを受け取ると、このバーコード情報Dbcを、そのときに停車状態にある停留所の区間番号(即ち、発券時の整理券番号8)と組にして、運賃箱本体のメモリ42に保持するバーコード情報保持部43が設けられている。ところで、運賃箱5は統括制御ユニット2から受け取った運賃データDunから、今現在どの停留所にいるのかは把握可能であるので、バーコード情報Dbcを受け取った際、これをそのときの停留所の区間番号に対応付けて保持することが可能である。さらに、運賃箱制御装置40には、運賃投入口に整理券6が投入された際、整理券6のバーコード9を読み取ってこれと対応する区間番号をメモリ42から読み出し、読取バーコードの区間番号と現在の区間番号とから乗車運賃を算出する運賃精算部44が設けられている。なお、バーコード情報保持部43が情報登録手段に相当し、運賃精算部44が運賃算出手段を構成する。
【0038】
次に、本例の運賃精算システム1の動作について説明する。なお、ここでは、上下一対のロール紙13,14のうち上側ロール紙13が使用状態に入っていて、上側ロール紙13で整理券6が印刷される場合を想定する。
【0039】
車両が停留所で停車して扉が開くと、扉開信号が運賃箱5から整理券発行機7に出力される。整理券発行機7は、運賃箱5から扉開信号を入力すると、図7(a)に示すように、これより以前に作成した整理券6を蓄えていない初期状態であれば、整理券6の新規発券の動作に入る。このとき、印刷処理部37は、上側ロール紙13に上側プリンタヘッド18で1走査分の印刷を行い、その後、上側ロール紙13を紙送りして再度1走査分の印刷を行う一連の印刷を繰り返し行って、上側ロール紙13に整理券番号8とバーコード9とを印刷する。
【0040】
上側ロール紙13への整理券番号及びバーコード9の印刷が完了した際、上側ロール紙13の先端部分は、印刷時の紙送りに伴って上側ロール紙13の先端所定量が発券口11から飛び出す状態をとる。そして、この印刷が完了した際には、カッタ24が作動してこのときの印刷箇所をロール紙本体から切り離す。これにより、図7(b)に示すように、この切り離し部分が整理券6として発券口11から飛び出す発券口飛び出し状態、即ち整理券6が発券口11から抜き取り可能な状態をとり、整理券6の発行が完了する。
【0041】
このとき、図8に示すように、バーコード9は、整理券6の中央位置においてコード線が券長さ方向(図8の矢印M)に並ぶ向きで印刷されている。また、整理券番号8は、バーコード9の隣位置において整理券6の送出側(図8の矢印Ma)の先端寄り位置に印刷されている。このため、バーコード9の隣のうち整理券番号8が印刷されていない部分が余白部分45として残されている。この余白部分45は、次整理券番号8aを印刷するスペースとして使用され、本例の場合には複数個(本例は2個)の整理券番号8が印刷可能となっている。
【0042】
なお、バーコード情報転送部38は、発券口11から整理券6が抜き取られたことを発券センサ30で検出すると、このときに抜き取られた整理券6のバーコード9がどんな柄をとっているのかの通知情報として、バーコード情報Dbcを運賃箱5に転送する。このバーコード情報Dbcは、バーコード9の各々が所望の太さを持つバーコード線が、どのような並び(間隔)で配置しているのかを通知する情報データである。バーコード情報保持部43は、整理券発行機7からバーコード情報Dbcを受け付けると、受け付けたこのバーコード情報Dbcを、そのときに車両が停車状態にある停留所の区間番号に対応付けてメモリ42に記憶する。即ち、バーコード情報保持部43は、図6の丸枠に示すように、バーコード情報転送部38から取得したバーコード情報Dbcと、バーコード印刷時における停車停留所の区間番号とが対応付けられたリスト表46を作成して、バーコード情報Dbcをメモリ42に記憶する。なお、リスト表46が乗車地情報に相当する。
【0043】
また、発券口11から発行された整理券6が抜き取られると、整理券発行機7は整理券6の抜き取りの都度、整理券6を発行するが、バーコード情報転送部38は整理券6が発券口11から抜き取られる都度、抜き取られた整理券6のバーコード情報Dbcを整理券発行機7から運賃箱5に転送する。そして、これらバーコード情報Dbcは、そのときに車両が停車状態にある停留所の区間番号に対応付けられて、図6のリスト表46の形式に則ってメモリ42に保持される。
【0044】
続いて、停留所で停車状態をとっていた車両が次停留所に向かって再発進する際、車両の扉が閉状態をとると、扉閉信号が運賃箱5から整理券発行機7に出力される。このとき、図7(c)に示すように、印刷処理部37は、搬送ローラ33及びプラテンモータ22,23を逆転させて、発券口飛び出し状態をとる整理券6を、発券センサ30で整理券6の先端エッジを検出できなくなるまで発行機本体10の内部に引き込み、整理券6を発行機本体10の内部に隠れた収納状態とする。これにより、車両運行中に発券口11から整理券6が勝手に抜き取られるようなことがない。なお、このときは、上側紙送りモータ15が逆転して上側ロール紙13の巻き取りが開始され、上側ロール紙13の先端エッジが上側ロール紙通過検出センサ31で検出できなくなるまで上側ロール紙13が巻き取られる。これにより、上側ロール紙13の先端部分がプリンタヘッド18,19付近から待避して、整理券6が収納状態をとることが可能となる。
【0045】
また、車両が次停留所で停車して扉が開くと、扉開信号が運賃箱5から整理券発行機7に出力される。整理券発行機7は、運賃箱5から扉開信号を入力すると、発行機本体10の内部に整理券6を収納していれば、この整理券6を元の発券口飛び出し状態に戻す。このときは、図7(d)に示すように、搬送ローラ33及びプラテンモータ22,23を正転させて、収納状態をとる整理券6の紙送りが開始され、整理券6の先端エッジを発券センサ30で検出してから所定時間の間、モータ回転を継続することにより、整理券6に元の発券口飛び出し状態をとらせる。これにより、発行機本体10の内部に収納した整理券6に、抜き取り可能な状態を再度とらせることが可能となる。
【0046】
このとき、発券口11から再度飛び出し状態をとった整理券6が発券口11から抜き取られると、整理券発行機7が整理券6の発券動作に入って上側紙送りモータ15、プラテンモータ22,23、搬送モータ34が各々正転し、発券センサ30が上側ロール紙13の先端を検出するまで、上側ロール紙13が紙送りされる。そして、発券センサ30が上側ロール紙13の先端を検出すると、これら上側紙送りモータ15、プラテンモータ22,23、搬送モータ34が停止して上側ロール紙13の紙送りが停止し、カッタ24により上側ロール紙13の先端の余り部分が切断されて、これが廃券レバー25により廃券収納部29に破棄される。この後、前述した手順で上側ロール紙13の印刷→切断が実行され、整理券6が発券口11から発券される。一方、車両が停留所から再発進した際、発券口11から再度飛び出し状態をとった整理券6が抜き取られなければ、この整理券6は収納状態を再度とって再利用される。
【0047】
ここで、運賃箱5は、車両の走行する区間番号が次番号に移って区間番号が切り換わったことを確認すると、整理券6に印刷する整理券番号8を次番号に切り換える指令として、整理券番号切換信号を整理券発行機7に出力する。番号書換部39は、運賃箱5から整理券番号切換信号を入力すると、整理券6に既に印刷した整理券番号8を塗りつぶして、余白部分45に次整理券番号8aを印刷することにより、整理券6に新たな整理券番号8aを印刷する。なお、整理券6に余白がなくなると、廃券レバー25が動作してこの整理券6が廃券収納部29に収納される。
【0048】
このとき、整理券6を収納状態とする際には、整理券6を極力ゆっくり逆送させ、発券センサ30で整理券6の先端エッジを検出できなった時点で、整理券6を停止させる動作をとっている。これにより、収納状態をとる整理券6は、先端エッジが発券センサ30の略真下、即ち搬送経路終端位置(図7(a)参照)に位置する位置状態をとっているとみなせる。また、ロール紙13(14)に整理券番号8を印刷するときには、ロール紙13(14)の先端を発券センサ30で見るというように、用紙位置が位置合わせされてから整理券番号8の印刷が行われるので、整理券番号8を整理券6のどの座標位置に印刷したのかは把握可能である。
【0049】
よって、整理券番号8の書き換えの際には、搬送経路終端位置を逆走開始始点として整理券6を逆走させ、搬送モータ34の回転量を見ながら、プリンタヘッド18の略真下位置(図7(a)参照)に、整理券6に印刷済みの整理券番号8が、正確に言うと印刷済み整理券番号8の印刷開始位置が位置する位置状態をとるまで、整理券6を発行機本体10に引き込む。そして、整理券6がこの状態をとったときに、整理券番号8の書き換え印刷を実行させ、印刷済みの整理券番号8を黒く塗りつぶすとともに、余白部分45に次整理券番号8aを印刷する動作を実行する。
【0050】
乗客は車両から降車する際、整理券6に印刷されている整理券番号8を見て自身が乗車した乗車区間を確認しつつ、さらにディスプレイ3に表示されている運賃表を確認して、必要運賃がいくらであるのかを確認する。そして、乗客は降車する際に、運賃箱5の投入口に、運賃としての硬貨と、乗車時に整理券発行機7から抜き取った整理券6とを、運賃箱5の硬貨投入口に投入する。硬貨投入口に投入された硬貨は、運賃箱5内の硬貨搬送経路を介して、運賃箱5にセットされた運賃箱金庫47に収納される。
【0051】
一方、硬貨投入口に投入された整理券6は、整理券6の搬送経路過程で、自身に印刷されたバーコード9がバーコード読取部41によって読み取られる。バーコード読取部41が読み取った読取情報は、発行機制御装置36の運賃精算部44に出力される。運賃精算部44は、バーコード読取部41から受け取った読取情報を、メモリ42のリスト表46に照らし合わせることにより、硬貨投入口に投入されたバーコード9に対応する区間番号を割り出し、リスト表46から割り出したこの区間番号と、現在の区間番号とから乗車運賃を算出する。運賃精算部44は、算出した乗車運賃の金額情報を、運賃箱金庫47のメモリ48に金庫データとして保管する。また、バーコード読取部41でバーコード9が読み取られた整理券6は、運賃箱5内の紙幣搬送経路を介して、運賃箱金庫47に硬貨とともに一括収納される。
【0052】
さて、本例においては、整理券6にバーコード9を印刷するとともに、このバーコード9を乗車時の区間番号に対応つけて運賃箱5にリスト表46(データ)として保持し、乗客降車時に硬貨投入口に整理券6が投入された際には、この整理券6に印刷されたバーコード9を読み取って乗車時の区間番号を割り出し、この区間番号と現在の区間番号とから必要運賃を算出する。このため、整理券番号8が切り換わっても、整理券番号8が印刷済みの整理券6を再利用することが可能となるので、ロール紙13(14)の無駄な消費を極力少なく抑えることが可能となる。
【0053】
従って、本実施形態の構成によれば、以下に記載の効果を得ることができる。
(1)発券口11から印刷発行した整理券6が抜き取られずに次停留所に持ち越された際、もし仮に整理券番号8が切り換わる場合であっても、この整理券6を継続して使用することができる。このため、整理券番号8が切り換わる度に整理券6を破棄する必要がなくなるので、ロール紙13(14)の有効利用を図ることができる。また、このように整理券6の有効利用を図る場合でも、整理券6は紙を使用するもので済むので、この種の運賃精算システム1を紙に印刷を行うという簡素な構造のもので済ますこともできる。
【0054】
(2)整理券6には乗車区間に対応した整理券番号8が印刷されるので、乗客がどの乗車区間から乗車したかということを、目視により直ぐに確認することができる。また、整理券6に印刷した整理券番号8を切り換える必要が生じた際には、先に印刷した整理券番号8を黒く塗りつぶして、余白に新たな整理券番号8aを印刷する。このため、1枚の整理券6を複数の乗車区間に亘って共通使用する場合であっても、整理券6に正しい整理券番号8を標記する状態をとらせることができる。
【0055】
(3)停留所で一時停車していた車両が次停留所に向かって再発進した際には、それまで発券口11から抜き取り可能に発券口飛び出し状態をとっていた整理券6が発行機本体10の内部に引き込まれて収納状態をとる。このため、車両走行中における整理券6の抜き取りが不可となるので、整理券6の不正抜き取りを防止することができる。
【0056】
なお、実施形態はこれまでに述べた構成に限らず、以下の態様に変更してもよい。
・ プリンタヘッド18,19は、必ずしもサーマルヘッドに限らず、例えば磁気式やインクジェット等の他の形式を採用してもよい。また、プリンタヘッド18は、必ずしも1種類のみを搭載する必要はなく、例えばサーマルヘッド及び磁気式の2種類を併用するものでもよい。
【0057】
・ カッタ24の配置位置は、必ずしも用紙搬送経路の出口付近に限らず、例えばプリンタヘッド18,19よりも経路内側位置に配置されてもよい。
・ ディスプレイ3の画面は、必ずしも複数画面(2画面)に限定されず、例えば1画面でもよい。
【0058】
・ 整理券6に印刷される乗車区間視認用の記号は、必ずしも番号(数字)に限らず、例えば絵柄でもよい。
・ 整理券番号8を書き換えるときの整理券6の印刷位置の把握は、搬送モータ34をどれだけ回転させたのか、即ちどれだけのステップ量でモータ34を回したのかを見るソフトウェア的な方式に限定されない。例えば、搬送モータ34にエンコーダを設けて、このエンコーダにより搬送モータ34の回転数を見て、整理券番号8の印刷位置を把握するものでもよい。
【0059】
・ 整理券番号8の書き換えに際してモータ回転量から印刷位置を見る場合、回転量を見る対象のモータは、必ずしも搬送モータ34に限らず、例えばプラテンモータ22,23(プラテンローラ20,21)や、紙送りモータ15,16を採用してもよい。
【0060】
・ 運賃箱5は、投入された運賃(硬貨)を計数せずにただ単に運賃箱金庫47に収納する構造のものに限定されない。例えば、運賃箱5に硬貨計数機を載せ、運賃箱に投入された硬貨をこの硬貨計数機で計数して、投入金額を確認する形式のものでもよい。
【0061】
・ 運賃箱5は、必要運賃をディスプレイ3の運賃表により乗客に確認させて、必要運賃を投入させる形式に限定されない。例えば、運賃箱5に投入された整理券6のバーコード9を読み取って必要運賃を算出した際、これを表示機で表示することによりこの額に見合った金額を乗客に硬貨投入口に投入させ、このときの投入金額が必要運賃を満足するかを確認して、運賃の受け付けを行う精算式としてもよい。
【0062】
・ 運賃箱5へのバーコード9の転送は、例えば整理券6にバーコード9が印刷されたタイミングのときに行ってもよい。
・ 運賃箱5へのバーコード9の転送は、車両が停留所を発車した後、次停留所に停車するまでの間に、複数のバーコード9の情報群(データ群)を一括して送るものでもよい。
【0063】
・ 整理券6へのバーコード9の印刷は、乗客が整理券6を抜き取る都度、行われることに限定されず、抜き取り前に予めバーコード9を印刷しておく形式でもよい。また、これ以外の形式としては、例えば予めバーコード9が印刷されたロール紙13(14)を使用するものでもよい。この場合、整理券6を発行する都度、整理券6に印刷されたバーコード9を読み取り、これを運賃箱5に転送する処理が必要となる。
【0064】
・ 整理券6に印刷されるバーコード9は、例えば暗号化、スクランブル化、チェックコード付与等により、不正対策が施されていてもよい。
・ ロール紙は、必ずしも1対必要ではなく、1つのみでもよいし、或いは3つ以上でもよい。
【0065】
・ 整理券6の余白に新たな整理券番号8を印刷する際、印刷可能個数は必ずしも3つに限らず、余白の大きさや番号サイズ等に応じて、その個数は適宜変更可能である。
・ プリンタヘッド18,19は、必ずしもサーマル式に限らず、例えばロイコ式を採用することも可能である。この場合、一旦印字した整理券番号8を消去して、新たな整理券番号8をその箇所に新たに印刷することが可能となるので、整理券6を全く廃棄する必要がなくなり、紙の有効利用に非常に効果が高くなる。
【0066】
・ 運賃箱5は、現金支払い式の場合、これが必ずしも硬貨のみを対象とするものに限らず、例えば紙幣の受け付けにも対応するものでもよい。
・ 運賃箱5は、投入運賃と必要運賃と間に差額がある場合、これを釣り銭として支払うことが可能となっているものでもよい。
【0067】
・ 運賃箱5は、運賃支払いの形式が必ずしも現金式であることに限定されず、例えば磁気カード等のプリペイドカード(現金代替媒体)による運賃支払いが可能なものを採用してもよい。
【0068】
・ 識別IDは、必ずしもバーコード9に限らず、券固有のユニークIDであれば、その形態は特に限定されない。
・ バーコードと乗車区間番号とを対応付けて保持するときのメモリ形式は、必ずしも図6に示すようなリスト表46に限らず、種々の形式を採用可能である。
【0069】
・ 運賃精算システム1は、この種の路線バスやワンマン鉄道等の車両に使用されることに限らず、乗客に運賃を科してこの精算を行うことが必要な車両であれば、この搭載先は特に限定されない。
【0070】
次に、上記実施形態及び別例から把握できる技術的思想について、それらの効果とともに以下に追記する。
(1)請求項1又は2において、前記運賃算出手段により算出された算出データは、前記運賃精算装置に設けられた記憶手段に格納され、前記運賃精算装置に投入された前記運賃は、当該運賃精算装置では計数されずに、単に前記運賃精算装置の金庫に蓄積される。この構成によれば、運賃精算装置に投入される運賃を実際に計数する運賃計数機器を運賃精算装置に搭載しないので、その分だけ運賃精算装置を簡素で安価なものとすることが可能となる。
【0071】
(2)請求項1、2、前記技術的思想(1)のいずれかにおいて、前記運賃精算装置には、当該運賃精算装置に投入された運賃の収納先として、該運賃精算装置の装置本体に対して着脱可能な着脱式金庫が設けられ、前記運賃算出手段は、前記必要運賃として算出した算出データを、前記着脱式金庫に設けられた記憶手段に格納する。この構成によれば、金庫内に収めた運賃とともに算出データを運賃精算装置から持ち運ぶことが可能となるので、運賃や算出データの一括管理を行い易くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】運賃精算システムの概略構成を示すモデル図。
【図2】停留所番号と区間番号との関係を示す説明図。
【図3】必要運賃を割り出すときに使用する運賃データの概念を示す表。
【図4】廃券レバーの具体的な構造を示す模式図。
【図5】発券装置の内部構成を概略的に示す側視図。
【図6】運賃精算システムの電気構成を示すブロック図。
【図7】(a)〜(d)は発券装置の動作遷移を示す説明図。
【図8】整理券番号及びバーコードが印刷された整理券を示す平面図。
【図9】先の整理券番号が塗りつぶされて番号が新たに印刷された整理券の平面図。
【符号の説明】
【0073】
1…運賃精算システム、5…運賃精算装置としての運賃箱、6…整理券、7…発券装置としての整理券発行機、9…識別IDとしてのバーコード、11…発券口、37…ID印刷手段及び記号印刷手段を構成する印刷処理部、38…転送手段としてのバーコード情報転送部、39…書換手段としての番号書換部、41…運賃算出手段を構成するバーコード読取部、43…情報登録手段としてのバーコード情報保持部、44…運賃算出手段を構成する運賃精算部、46…乗車地情報としてのリスト表。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗車地がどこであるのかの証明として整理券を発券装置で発行し、降車の際に運賃精算装置で現金又は現金代替媒体で運賃の精算を行う運賃精算システムにおいて、
前記発券装置に設けられ、前記整理券の各々が持つ券固有のIDとして識別IDを前記整理券に印刷して、当該整理券を発券口から抜き取り可能に発行するID印刷手段と、
前記発券装置に設けられ、前記ID印刷手段が前記整理券に印刷した前記識別IDを、前記発券装置から前記運賃精算装置に転送する転送手段と、
前記運賃精算装置に設けられ、前記転送手段から受け付けた前記識別IDを、そのときの乗車地に対応付けて乗車地情報として記憶する情報登録手段と、
前記運賃精算装置に設けられ、当該運賃精算装置に投入された前記整理券に関して、当該整理券に印刷された前記識別IDを読み取り、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地を割り出し、該割り出し乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃を算出する運賃算出手段と
を備えたことを特徴とする運賃精算システム。
【請求項2】
前記発券装置に設けられ、前記識別IDに加えて、乗車地がどこであるのかを視認可能な記号を前記整理券に印刷する記号印刷手段と、
前記発券装置に設けられ、前記識別IDが印刷された前記整理券が抜き取られずに停留所から車両が再発進して、乗客に科す必要運賃が繰り上がった際、前記整理券に印刷された記号を、次の乗車地に対応した新たな記号に書き換える書換手段と
を備えたことを特徴とする請求項1に記載の運賃精算システム。
【請求項3】
乗車地がどこであるのかの証明として整理券が発行可能であり、降車の際に運賃精算装置で現金又は現金代替媒体で受け付けて運賃の精算が実行可能な発券装置において、
前記整理券の各々が持つ券固有のIDとして識別IDを前記整理券に印刷して、当該整理券を発券口から抜き取り可能に発行するID印刷手段と、
前記ID印刷手段が前記整理券に印刷した前記識別IDを、前記発券装置から前記運賃精算装置に転送する転送手段とを備え、
前記転送手段から転送された識別IDは、そのときの乗車地に対応付けて前記運賃精算装置で乗車地情報として記憶され、前記運賃精算装置に前記整理券が投入された際、当該整理券の前記識別IDは、前記運賃精算装置によって読み取られ、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地が割り出され、該割り出し乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃が算出されることを特徴とする発券装置。
【請求項4】
乗車地がどこであるのかの証明として発券装置から発行された整理券を乗車時に乗客に受け取らせ、降車の際に現金又は現金代替媒体により運賃の精算を行う運賃精算装置において、
前記発券装置が前記整理券を発行するときに前記整理券に印刷した券固有の識別IDを前記発券装置から受け付けると、当該識別IDをそのときの乗車地に対応付けて乗車地情報として記憶する情報登録手段と、
前記運賃精算装置に投入された前記整理券に関して、当該整理券に印刷された前記識別IDを読み取り、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地を割り出し、該割り出し乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃を算出する運賃算出手段と
を備えたことを特徴とする運賃精算装置。
【請求項5】
乗車地がどこであるのかの証明として各停留所で発券装置から発行される整理券であって、
前記整理券の各々が持つ券固有のIDとして識別IDが印刷され、当該識別IDが前記発券装置から運賃精算装置に転送されるとともに、当該識別IDがそのときの乗車地に対応付けて乗車地情報として前記運賃精算装置に記憶され、当該運賃精算装置に整理券が投入された際には、当該整理券に印刷された前記識別IDが読み取られ、当該識別IDを前記乗車地情報に照らして乗車地が割り出され、当該割り出された乗車地とそのときの車両現在地とから、乗客に科す必要運賃が算出されることを特徴とする整理券。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2010−113681(P2010−113681A)
【公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−288079(P2008−288079)
【出願日】平成20年11月10日(2008.11.10)
【出願人】(000144544)レシップ株式会社 (179)
【Fターム(参考)】