説明

運転室内気圧上昇防止装置

【課題】複雑化することなく簡素な構成で、しかも特別な動力も必要としない運転室内気圧上昇防止装置を得る。
【解決手段】回動可能なドアを有する運転室内には空調装置26が設けられている。該空調装置は、送風機28を収容した吸気ボックス42と、該吸気ボックスの前記送風機吸込側に外気を取り入れるための外気ダクト29と、前記外気ダクトの前記吸気ボックス側開口を開閉する外気導入ダンパ43と、前記吸気ボックスの前記送風機吸込側に運転室内の空気を取り入れるための内気取入口41と、前記吸気ボックス内と前記外気ダクト内とを連通するように設けられた内気圧排出通路44と、この内気圧排出通路を圧力差で自動的に開閉して前記吸気ボックス内の空気を前記内気圧排出通路に排出する減圧弁45とを備えている。運転室のドアが閉止動作され運転室内の気圧が上昇すると前記減圧弁が開かれ、内気が前記内気圧排出通路を介して外部に放出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転室内気圧上昇防止装置に関し、特に油圧ショベルなどの作業機械における運転室(キャブ)などの気圧上昇防止装置として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
油圧ショベルなどの作業機械の運転室においては、高気密化が要求されていることから、室内の気密性が高くなってきており、ドアの閉止時に瞬間的に運転室内の気圧が上昇することにより、ドアが閉まりにくくなり、半ドア状態になり易くなっている。
【0003】
そこで、特許文献1に示すように、油圧ショベルなどの作業機械の運転室におけるドアの開閉動作を検出するリミットスイッチを設け、ドアの開動作が検出されたとき、運転室内を換気する換気口を開閉するダンパ装置のダンパを開動作させるようにして、ドアの閉止動作時には運転室の気圧が上昇して半ドア状態になるのを防止するようにした半ドア防止装置が提案されている。
【0004】
また、特許文献2に示すように、乗用車などの車両でも、半ドア状態になるのを防止するための車室内気圧上昇防止装置が提案されている。この特許文献2に開示された車室内気圧上昇防止装置は、車室の内外を連通する流路管の内部にファンと流路切換バルブとを設け、加速度センサがドアの開放動作開始状態を検出したときに、流路切換バルブを内気排出の向きに自動的に切換え、加速度センサがドアの閉止動作開始状態を検出したとき、ファンが回転して車室内の内気排出が行われるように構成したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−142667号公報
【特許文献2】特開平10−147139号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記従来の運転室内気圧上昇防止装置は何れも、ドアの開閉動作を検出するリミットスイッチや加速度センサを設ける必要があり、更にダンパ装置のダンパを開動作させたり、或いは流路切換バルブを切り替えると共にファンを回転させて車室内の内気排出を行う必要があった。
【0007】
このように従来のものでは、リミットスイッチや加速度センサが必要であると共に、ダンパ、或いは流路切換バルブやファンを作動させる動力も必要であり、運転室内気圧上昇防止装置の構成が複雑化するという課題があった。
本発明の目的は、複雑化することなく簡素な構成で、しかも特別な動力も必要としない運転室内気圧上昇防止装置を得ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、乗降口を有する運転室と、該運転室に回動可能に設けられ前記乗降口を開閉するドアと、前記運転室内に設けられ外気を取入れつつ室内に調和空気を供給する空調装置とを備え、前記ドア閉止時に瞬時に上昇する運転室内の気圧上昇を防止するようにした運転室内気圧上昇防止装置であって、前記空調装置は、送風機を収容した吸気ボックスと、該吸気ボックスの前記送風機の吸込側に外気を取り入れるための外気ダクトと、この外気ダクトの前記吸気ボックス側開口を開閉するための外気導入ダンパと、前記吸気ボックスの前記送風機吸込側に前記運転室内の空気を取り入れるための内気取入口と、前記吸気ボックス内と前記外気ダクト内とを連通する内気圧排出通路と、この内気圧排出通路を圧力差で自動的に開閉して前記吸気ボックス内の空気を前記内気圧排出通路に排出する減圧弁とを備え、前記運転室ドアの閉止動作による運転室内の気圧上昇により前記減圧弁が開かれて内気が前記内気圧排出通路を介して外部に放出可能に構成されていることを特徴とする。
【0009】
上記運転室内気圧上昇防止装置において、前記外気ダクトにはその外気入口側に外気フィルタが設けられ、前記内気圧排出通路の外気ダクト側開口は前記外気フィルタに対向するように配置して設けるようにすると良い。
また、前記外気ダクトの吸気ボックス側開口に設けられている前記外気導入ダンパに連通孔を形成し、この連通孔に前記吸気ボックス側と前記外気ダクト側とを接続する前記内気圧排出通路を取り付け、この内気圧排出通路に減圧弁を設けるように構成しても良い。
前記減圧弁は、前記内気圧排出通路内の吸気ボックス側に設けられた弁座と、この弁座に押圧される弁体と、該弁体を前記吸気ボックス側に押圧する押圧手段を備えた構成にすると良い。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転室内と連通した空調装置の吸気ボックス内と、外気を前記空調装置に取り入れる外気ダクト内とを連通するように内気圧排出通路を設け、この内気圧排出通路を圧力差で自動的に開閉して前記吸気ボックス内の空気を前記内気圧排出通路に排出する減圧弁を備える構成としたので、前記運転室ドアの閉止動作によって運転室内の気圧が上昇すると前記減圧弁が自動的に開かれ、内気は前記内気圧排出通路を介して外部に放出されるから、運転室内の気圧が所定値以上に上昇するのを防止できる。従って、複雑化することなく簡素な構成で、しかも特別な動力も必要としない運転室内気圧上昇防止装置を得ることができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の運転室内気圧上昇防止装置の実施例1が適用された油圧ショベルを示す全体図である。
【図2】図1中の運転室(キャブ)を拡大して示す正面図である。
【図3】運転室を図2中の矢印III−III方向からみた断面図である。
【図4】図3に示す空調装置を一部断面で示す詳細平面図である。
【図5】本発明の実施例2を説明する図で、図4に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の運転室内気圧上昇防止装置の実施例を、油圧ショベルに適用した場合を例に挙げ、添付図面に従って詳細に説明する。
【実施例1】
【0013】
図1〜図4により、本発明の運転室内気圧上昇防止装置の実施例1を説明する。図1は本発明の実施例1が適用された油圧ショベルを示す全体図、図2は図1中の運転室(キャブ)を拡大して示す正面図、図3は運転室を図2中の矢印III−III方向からみた断面図、図4は図3に示す空調装置を一部断面で示す詳細平面図である。
【0014】
図1において、1は建設機械としての油圧ショベルで、該油圧ショベル1は、図に示すように自走可能なクローラ式の下部走行体2と、該下部走行体2上に旋回可能に搭載された上部旋回体3と、作業装置7とにより大略構成されている。
【0015】
油圧ショベル1の前記上部旋回体3は、建設機械のフレームを構成する旋回フレーム4を有し、該旋回フレーム4上には、運転室(キャブ)10と、該運転室10の後側に位置し、原動機及び油圧ポンプ(図示せず)等を収容した建屋カバー5と、該建屋カバー5の後側に位置するカウンタウエイト6等が設けられている。
上部旋回体3の前部に設けられた作業装置7は、旋回フレーム4の前部中央に俯仰動可能に設けられ、例えばバケット7A等を用いて土砂等の掘削作業を行うものである。
【0016】
前記運転室10は、図1〜図3に示すように、運転室ボックス11、ドア21、前記運転室ボックス11を下側から覆う床板22(図3参照)等により構成されている。また、前記運転室10の内部には、図3に示すように、運転席23、操作レバー装置24,25及び空調装置26等が設けられている。
【0017】
運転室10の外殻をなす運転室ボックス11は、図2及び図3に示すように、箱形状のボックス構造に形成され、上側を覆う上面部12、前側の前面部13、後側の後面部14及び左右両側に位置する側面部15,16を有している。
【0018】
運転室ボックス11の前記側面部15,16のうち、車両の後方からみて左側に位置する一方の側面部15は、図1に示すように上部旋回体3(車体)の左,右方向に関して作業装置7とは反対側に位置し、この側面部15には、オペレータが運転室10内に乗降するためのドア21が設けられている。
【0019】
前記側面部15は、薄肉の鋼板等からなる2枚のパネル15A,15B(以下、外側パネル15A,内側パネル15Bという)等を、スポット溶接等の手段で互いに接合することにより中空構造物として構成されている。
【0020】
また、前記運転室ボックス11の側面部15には、図3に示すように、前,後に離間してフロントピラー17とリヤピラー18とが設けられ、該フロントピラー17とリヤピラー18との間には、センタピラー20が設けられている。そして、運転室ボックス11の側面部15には、フロントピラー17とセンタピラー20との間に位置してドア用開口部となる乗降口19が形成され、該乗降口19はドア21によって開閉される。
【0021】
一方、リヤピラー18とセンタピラー20との間には、図2、図3に示すように側面部15の一部をなす窓ガラス15Cが取付けられている。また、運転室ボックス11の側面部15には、図2に示す如く窓ガラス15Cの下側となる位置に外気吸込口32、点検カバー33等が設けられている。
【0022】
なお、運転室ボックス11の右側に位置する他方の側面部16は、フロントピラー17とリアピラー18との間を1枚のパネルで接合することにより構成されている。
【0023】
前記センタピラー20は、図3に示すように、外側パネル15Aと内側パネル15Bとの間で中空構造体として形成され、乗降口19の後側位置で上下方向に延びている。また、このセンタピラー20には、横断面が略L字状に屈曲したヒンジ取付部20Aが形成され、このヒンジ取付部20Aにはヒンジ37がボルト、溶接等の手段で取付けられている。
【0024】
即ち、センタピラー20は、運転室ボックス11(側面部15)の前後方向の中間部位で上下方向に延び、該センタピラー20の前側は乗降口19、後側は外気吸込口32となっている。前記ヒンジ37には昇降用のドア21と点検カバー33がそれぞれ開閉可能に取付けられている。前記ドア21は、2枚の金属パネル等を互いに接合することにより形成されたドア枠体21Aと、該ドア枠体21Aの内側に取付けられた窓ガラス21Bなどにより構成されている。
【0025】
運転室10の床を構成する前記床板22は、運転室ボックス11の前面部13、後面部14及び左,右の側面部15,16の下端に取付けられ、運転室ボックス11を下側から覆うものである。
運転席23の左右両側に設けられた前記操作レバー装置24,25には、作業装置7等を作動制御するための操作レバー24A,25A等が設けられている。
【0026】
図3において、26は前記運転席23の後側に位置して運転室ボックス11内に設けられた空調装置で、この空調装置26は、図3及び図4に示すように、内部に冷房用のエバポレータ(蒸発器)、暖房用のヒータコア(いずれも図示せず)等を収容したユニットケース27と、該ユニットケース27内に空気を流通させる送風機28と、該送風機28の吸込側に接続された外気ダクト29と、該外気ダクト29の先端側に設けられ外気フィルタ31が着脱可能に取付けられているフィルタケース30等により構成されている。
【0027】
前記フィルタケース30は、一方側が、前記運転室ボックス11を構成する前記側面部15の内側パネル15Bに溶接等の手段を用いて固着され、前記フィルタケース30の他方側は、前記外気ダクト29の流入側(先端側)に接続されている。
空調装置26の前記送風機28は、前記外気ダクト29及び内気取入口40(図4参照)から吸込んだ空気をユニットケース27内の前記エバポレータまたはヒータコアに流通させ、冷却または加熱された空気を前記ユニットケース27の吹出口27A及び27B等から運転室10内に向けて吹き出するものである。
【0028】
前記外気フィルタ31はフィルタケース30内に着脱可能に取り付けられ、外部の空気を清浄化(外気中のダストを除去)した状態で外気ダクト29内へと流通させるものである。前記外気フィルタ31には、係止爪(図示せず)などが設けられており、外気フィルタ31は前記フィルタケース30内に抜止め状態で装着されている。
【0029】
前記外気フィルタ31を前記フィルタケース30に取り付けたり、取り外す場合には、前記運転室ボックス11の側面部15に設けられている前記点検カバー33を開くことで、オペレータなどにより行うことができ、外気フィルタ31の保守、点検、交換作業等が可能な構成となっている。
【0030】
前記点検カバー33には、図2に示すように、上下方向に細長く延びるスリット状の複数の外気取入孔33Bが形成され、これらの外気取入孔33Bから取り入れられた外気は、前記外気フィルタ31に向け流通される。
【0031】
なお、図2において、34はドア21を全開位置に保持するために前記運転室ボックス11の側面部15に設けられたドアキャッチャ、35は前記ドア21から外側に突出して設けられたフックで、このフック35は前記ドア21が全開にされたとき前記ドアキャッチャ34に係止され、それによってドア21は全開状態に保持されるものである。前記ドアキャッチャ34は窓ガラス15Cよりも下側で前記点検カバー33よりも上側に取り付けられ、また前記フック35はドア21の窓ガラス21Bよりも下側のドア枠体21Aに取り付けられている。
【0032】
次に、本実施例における空調装置26の詳細構成を図4により説明する。
図において、40は運転室内の空気を空調装置26内に取り入れるための内気取入口、41はこの内気取入口40に設けられた内気フィルタで、運転室内の空気は前記内気フィルタ41によりダストを除去され清浄化された状態で前記空調装置26の吸気ボックス42内に取り込まれ、前記外気フィルタ31から外気ダクト29を介して取り込まれた外気と混合されて前記送風機28に吸い込まれる。送風機28に吸い込まれた空気はユニットケース27内に吹き出され、該ユニットケース27内のエバポレータやヒータコアで冷却または加熱される。この冷却または加熱された空気は、ユニットケース27の上面部に設けられた吹出口27A及び前面側に設けられた吹出口27Bから運転室内に吹き出されるように構成されている。
【0033】
また、図4において、43は前記吸気ボックス42の外気ダクト29側に設けられ外気ダクト29の吸気ボックス側開口を開閉する外気導入ダンパで、前記吸気ボックス42内に外気を取り入れて空調を行う場合に開かれ、内気のみ循環させて空調を行う場合には閉じられている。
【0034】
44は前記吸気ボックス42内と前記外気ダクト29内とを連通するように設けられた内気圧排出通路、45は前記吸気ボックス42の前記内気圧排出通路44側に設けられ吸気ボックス42内の空気を内気圧排出通路44に排出する減圧弁で、この減圧弁45は前記吸気ボックス42側の圧力と前記外気ダクト29側の圧力との圧力差で開閉するように構成されている。この減圧弁45は、前記内気圧排出通路44内の吸気ボックス42側に設けられた弁座45aと、この弁座45aに押圧される弁体45bと、該弁体45bを前記吸気ボックス42側に押圧する押圧手段45cを備えている。前記押圧手段45cは、この実施例ではコイルばねで構成しているが、板ばねや他の弾性部材で押圧したり、或いは弁体45b自体に弾力性を持たせるなどして弁体が弁座に押圧されるようにすれば良い。
【0035】
このように構成することにより、運転室10のドア21が閉止動作されると運転室内の気圧が上昇して所定の圧力、例えば180Paを超えると、前記減圧弁45の弁体45bに作用する圧力が、前記コイルばね(押圧手段)45cの押圧力に打ち勝って、減圧弁45を開き、運転室10内の空気が内気フィルタ41、吸気ボックス42、内気圧排出通路44、外気ダクト29及び外気フィルタ31を介して外部に放出される。
【0036】
即ち、前記吸気ボックス42内は、運転室10とは内気取入口40で連通され、また大気側(外部)とも前記内気圧排出通路44で連通されているので、前記内気圧排出通路44を開閉する減圧弁45が吸気ボックス42内の圧力上昇(圧力差)により自動的に開くように構成しておくことにより、内気が前記内気圧排出通路44を介して外部に放出され、運転室内の気圧が所定の圧力以上に上昇するのを防止できるものである。
【0037】
従って、本実施例によれば、前記ドア21の閉止動作によって運転室10内の気圧が上昇し、運転室10内の気圧が減圧弁45の設定圧力を超えると、運転室内の空気が空調装置26に設けた前記内気圧排出通路44を介して、自動的に外部に放出されるから、運転室内の気圧が前記設定圧力値以上に上昇するのを防止することができる。これにより、運転室のドア21が閉まりにくくなって半ドア状態になるのを防止できる。また、運転室内の気圧が瞬時に上昇して、不快感を感じるようなことも防止できる効果がある。
【0038】
更に、本実施例によれば、前記内気圧排出通路44の外気ダクト側開口は外気フィルタ31に対向するように配置して設けられている。これによって、ドア開閉動作時に運転室内の空気が、内気圧排出通路44から外部に噴出される際に、空調装置の前記外気フィルタ31に吹き付けられるので、外気フィルタ31に付着しているダストを風圧で除去することができ、空調装置の外気フィルタの掃除を不要にしたり、掃除の間隔を長くすることもできるという効果も得られ、メンテナンス性の向上も図ることができる。
【0039】
なお、本実施例では、減圧弁45を、弁体が押圧手段で弁座に押圧されるもので説明したが、前記減圧弁45は、運転室内の気圧(内気と外気の圧力差も含む)が所定値以上に上昇すると自動的に開かれて運転室内の空気を外部に放出できるものであれば良い。
【実施例2】
【0040】
図5は、本発明の運転室内気圧上昇防止装置の実施例2を説明する図で、図4に相当する図である。図5において図4と同一符号を付した部分は同一又は相当する部分を示している。
【0041】
実施例1では、内気圧排出通路44を、吸気ボックス42と外気ダクト29を貫通するように設けた例について説明したが、この実施例2では、前記外気ダクト29の吸気ボックス42側開口を開閉する外気導入ダンパ43を利用し、この外気導入ダンパ43に連通孔47を形成して、該連通孔47に筒状部材で形成し前記吸気ボックス側と前記外気ダクト側とを接続する内気圧排出通路44′を取り付けるようにしたものである。この内気圧排出通路44′には実施例1と同様の減圧弁45が設けられている。他の構成については実施例1と同様であるので、説明を省略する。
【0042】
この実施例2においても、前記ドア21の閉止動作によって運転室10内の気圧が上昇し、運転室10内の気圧が減圧弁45の設定圧力(例えば180Pa)を超えると、運転室内の空気が、空調装置26の吸気ボックス42を通り、外気導入ダンパ43に設けた前記内気圧排出通路44を介して、外部に自動的に放出されるから、運転室内の気圧が前記設定圧力以上に上昇するのを防止できる。従って、運転室のドア21が閉まりにくくなって半ドア状態になったり、また運転室内の気圧が瞬時に上昇して不快感を生じることも防止できる効果がある。
【0043】
また、本実施例によれば、内気圧排出通路44′を、吸気ボックス42や外気ダクト29に孔を形成して取り付ける必要がないから、空調装置26の組立時に、前記内気圧排出通路44′を、外気導入ダンパ43の弁板に予め取り付けておけば、本実施例の運転室内気圧上昇防止装置を極めて容易に構成することができる効果もある。
【0044】
以上説明したように、上述した本発明の各実施例によれば、従来のように、ドアの閉止動作時に運転室の気圧が上昇して半ドア状態になるのを防止するために、ドアの開閉動作を検出するリミットスイッチや加速度センサを設ける必要がなく、またダンパ、或いは流路切換バルブやファンを作動させる必要もないから、それらのための動力も不要となる。従って、複雑化することなく簡素な構成で、しかも特別な動力も必要としない運転室内気圧上昇防止装置を得ることができる。
【符号の説明】
【0045】
1:油圧ショベル、2:下部走行体、3:上部旋回体、4:旋回フレーム、
5:建屋カバー、6:カウンタウェイト、7:作業装置、
10:運転室(キャブ)、11:運転室ボックス、19:乗降口、
21:ドア、22:床板、23:運転席、24,25:操作レバー装置、
26:空調装置、27:ユニットケース、27A,27B:吹出口、
28:送風機、29:外気ダクト、30:フィルタケース、31:外気フィルタ、
33:点検カバー、33B:外気取入孔、
40:内気取入口、41:内気フィルタ、42:吸気ボックス、43:外気導入ダンパ、
44,44′:内気圧排出通路、
45:減圧弁(45a:弁座、45b:弁体、45c:押圧手段)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗降口を有する運転室と、該運転室に回動可能に設けられ前記乗降口を開閉するドアと、前記運転室内に設けられ外気を取入れつつ室内に調和空気を供給する空調装置とを備え、前記ドア閉止時に瞬時に上昇する運転室内の気圧上昇を防止するようにした運転室内気圧上昇防止装置であって、
前記空調装置は、送風機を収容した吸気ボックスと、該吸気ボックスの前記送風機の吸込側に外気を取り入れるための外気ダクトと、この外気ダクトの前記吸気ボックス側開口を開閉するための外気導入ダンパと、前記吸気ボックスの前記送風機吸込側に前記運転室内の空気を取り入れるための内気取入口と、前記吸気ボックス内と前記外気ダクト内とを連通する内気圧排出通路と、この内気圧排出通路を圧力差で自動的に開閉して前記吸気ボックス内の空気を前記内気圧排出通路に排出する減圧弁とを備え、
前記運転室ドアの閉止動作による運転室内の気圧上昇により前記減圧弁が開かれて内気が前記内気圧排出通路を介して外部に放出可能に構成されている
ことを特徴とする運転室内気圧上昇防止装置。
【請求項2】
請求項1に記載の運転室内気圧上昇防止装置において、前記外気ダクトにはその外気入口側に外気フィルタが設けられ、前記内気圧排出通路の外気ダクト側開口は前記外気フィルタに対向するように配置して設けられていることを特徴とする運転室内気圧上昇防止装置。
【請求項3】
請求項1に記載の運転室内気圧上昇防止装置において、前記吸気ボックスの前記外気ダクトの側に設けられている前記外気導入ダンパに連通孔を形成し、この連通孔に前記吸気ボックス側と前記外気ダクト側とを接続する内気圧排出通路を取り付け、この内気圧排出通路に減圧弁が設けられていることを特徴とする運転室内気圧上昇防止装置。
【請求項4】
請求項1に記載の運転室内気圧上昇防止装置において、前記減圧弁は、前記内気圧排出通路内の吸気ボックス側に設けられた弁座と、この弁座に押圧される弁体と、該弁体を前記吸気ボックス側に押圧する押圧手段を備えていることを特徴とする運転室内気圧上昇防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−144928(P2012−144928A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−5147(P2011−5147)
【出願日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】