説明

過冷却溶融物から硝酸塩含有製品を製造する方法

本発明は、過冷却溶融物から硝酸塩含有製品(肥料、工業製品)を製造する方法であって、XN−水溶液(ここで、XはCa、Mg、NH、Na及びKから選択される一つ以上であり、Nは硝酸である)を50〜99.8重量%のXN含有量となるまで濃縮する。XNの好ましい範囲は、70〜99.5重量%である。溶融物を結晶点以下に冷却して保持し、平衡相から成る微粉化固体XN粉末を前記溶融物に添加する。その後、溶融物の滴が形成され、70秒間で冷却及び固化される。粒子の固化のために冷却ベルトを使用することが好ましい。ベルトは、空気、水、油又は他の媒体により冷却される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、過冷却溶融物(undercooling melt)からの硝酸塩含有製品(肥料、工業製品)の製造に関する。
【背景技術】
【0002】
純CN(Ca(NO)は560℃で溶融し、この超高温は粒状化(particulation)に不都合である。遠心式若しくはノズル式噴射造粒装置(prilling equipment)又はパン/ドラム造粒機のような装置を使用するために、該CN溶融物は5〜8重量%の硝酸アンモニウム(AN)を含有する組成を有していなければならない。今日の、全ての粒子化(prilled)又は顆粒化(granulated)CNは、14〜16重量%の水(結晶水)に加えて、この量のANを含有している。該硝酸アンモニウム含有量が該溶融物から除去されるなら、組成物は粒子化(prilling)/顆粒化(granulation)が不可能なほどに過冷してしまう。
【0003】
ANなしのCNが依然として必要であり、大量のCN−水固形物(CN-water solid)を容易に製造する方法を見出すことが望まれている。
【0004】
英国特許第392531号から、分配可能でケーキングしない(non-caking)、硝酸カルシウムを含有する肥料を製造する方法が知られている。この特許によると、硝酸カルシウム/水溶液を濃縮して砂−糊のような(sandy-pasty)稠度とする。ここで、その中には、約90〜95重量%の硝酸カルシウム(無水硝酸カルシウムとして計算)が含有されている。その後、濃縮された製品を、少しの実質的な更なる濃縮もなしに、50〜100℃の温度、バルク(bulk)での機械的な分解によって顆粒形態に変換する。この方法では、装置上に塩の堆積物を与え、フレーク状(flaked)の埃っぽい製品を与えてしまう。従って、この方法は、CNの大規模製造に適切でないと考えられる。
【0005】
文献に十分記載されている結晶化方法において、CN−水溶液からCN・4HO結晶を得ることができる。このような結晶は、市販されている。このような結晶は、69〜70重量%のCNを含有しているが、通常、それらは高ケーキング傾向(high caking tendency)を有しており、時間がたつにつれて、取り扱いが難しく、そして困難になる。従って、結晶性物質を製造するのには望まれない。
【0006】
CN−AN−水系の相図(グメリン(Gmelin)から)を作成することにより、普通のプラント用装置で粒状化することができる、より狭い溶融組成領域を見出すことが可能であり、今日の顆粒化又は粒子化CNは、77〜80重量%のCN、5〜8重量%のAN及び15〜17重量%の水を含有している。
【0007】
CN−水(図1)の相図を検討することにより、下記の固体化合物が系内に形成され得ることがわかる。
Ca(NO)・4H
Ca(NO)・3H
Ca(NO)・2H
Ca(NO
【0008】
さらに、CN−水系によれば、70重量%を超える全てのCN濃度で固化すべきであることが理解でき、これは温度が40〜43℃より低ければ、全ての液体が平衡で見えなくなることを意味する。また、70重量%未満のCNがあるCN−水溶液を冷却することにより、CN・4HO結晶が形成されることがわかる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、大量の高品質固体CN−水粒子を容易に製造する方法を得ることである。他の目的は、超冷却溶融物(super cooling melt)を形成する傾向が頻繁にある硝酸含有塩を一般に提供することができる製造方法を得ることである。
【0010】
本発明のこれら及び他の目的は、下記のような方法で得られ、本発明は、添付の特許請求の範囲によってさらに定義及び特徴付けられる。
【課題を解決するための手段】
【0011】
従って、本発明は、過冷却溶融物から硝酸塩含有製品(肥料、工業製品)を製造する方法であって、XN−水溶液(ここで、XはCa、Mg、NH、Na及びKから選択される一つ以上のものであり、Nは硝酸である)を50〜99.8重量%のXN含有量となるまで濃縮する方法に関する。好ましいXNの範囲は、70〜99.5重量%である。溶融物を結晶点以下の温度に冷却して保持し、平衡相から成る微粉化固体XN粉末を溶融物に加える。その後、溶融物の滴(drop)が形成され、70秒間で、好ましくは20〜70秒間で冷却及び固化される。粒子の固化のために冷却ベルトを使用することが好ましい。ベルトは、空気、水、油又は他の媒体により冷却される。
【0012】
溶融温度は、溶融物の結晶点よりも0〜10℃低く保持することが好ましい。硝酸カルシウム粒子を製造する場合、CN・2HO及びCN・3HOを種粒子として使用する。形成される粒子は、0.2〜0.8mm、好ましくは0.4〜0.6mmの粒径を有している。粒子は、74重量%の硝酸カルシウム、14重量%の硝酸カリウム、及び12重量%の水から成る溶融物から製造することができる。また、固体粒子は、硝酸塩、塩化物及び結晶水の均一な混合物から成るものから製造することができる。この例としては、50重量%の硝酸カルシウム、4重量%の硝酸アンモニウム、26.5重量%の塩化カルシウム、及び18〜20重量%の水から本質的に成る溶融物から製造される粒子である。
溶融物の粒子を製造するために、いくつかの実験を行った。
【実施例】
【0013】
[実施例1−顆粒(granule)]
70、75及び78重量%を超えるCNとなるまでCN−水溶液を濃縮した。固体NH−CN(ノルスク ヒドロ アーエスアーからの硝酸カルシウム)を含有する各種溶融物を、各種割合及び各種温度で、回転実験用パン造粒機(rotating laboratory pan granulator)上に吹き付けた。
液体/溶融物が固化しないような、成功した試験はなかった。全体のマトリックス(固体CN+溶融物)は、許容範囲内の液体/固体の割合で、処理できない粘着性のスラリーに変わった。
【0014】
[実施例2−粒子化(prill)]
上記のCN濃度をもつ溶融物を、文献により与えられる結晶点に近い温度で保持した。高圧で溶融物をノズルに供給して、滴を形成し、5〜10秒で20℃に冷却した後、細かく砕いたNH−CNを溶融物中に混合した。冷却媒体として、油及び空気を試した。過冷却のため、固体粒子は形成されなかった。
【0015】
[実施例3−錠剤(pastille)の製造]
試験1
70、75及び78重量%の純CNを超えるCN濃度をもつCN−溶融物の滴を、冷却された金属プレート上において数分間で10℃に冷却した。溶融物−滴は、粘性のあるネバネバする液体に変わり、固体粒子は形成されなかった。
【0016】
試験2
上記と同じ手順だが、今回はプレートに滴を配置(set)する前に、微粉化固体CN粉末を溶融物に加えた。NH−CN及び破砕されたCN・4HO結晶の固体を使用した。
溶融物−滴は、冷却された時に、粒子強度のないスラリーに変わった。
【0017】
試験3
23重量%の水及び77重量%のCNを有するCN溶融物をプレート上で48時間、20℃で冷却した。この間に白色固体物質が形成された。
今や明らかに、該溶融物がこれらの時間で強固な固体物質に変わり、該物質がCN・2HO及びCN・3HOから成ることがX線分析で示された。
しかしながら、簡便な粒状化プロセスにとって、この固化時間はあまりにも長すぎる。
【0018】
試験4a
試験1と同じ手順だが、今回は23重量%の水及び77重量%のCNから成るCN−溶融物を50〜55℃に冷却し、試験3による2重量%の破砕された物質を溶融物に十分に混合した。
滴を冷却すると、結晶が形成され、30〜70秒のうちに、1kgを超える粒子強度をもつ硬い錠剤(hard pastille)が形成された。時間の経過につれて、粒子強度が実質的により高くなった。
粒子はこの手順で形成され、この手順の重要な部分は、明らかに、室温で系の平衡相から成る微粉化固体物質を加えることである(CN・2HO及びCN・3HO)。
【0019】
試験4b
試験4aと同じ手順だが、今回は溶融物組成が、25重量%/75重量%及び21.5重量%/78.5重量%(HO/CaN)である。
【0020】
試験5
試験4と同じ手順であり、溶融物(23重量%のHO/77重量%のCN)の温度を約45℃に下げた後、微粉化固体物質を種粒子(seeding particle)として混合した。結晶がビーカー中で形成し始める時に、冷却プレート上に滴を滴下すると同時に50℃より低い温度をもつ純溶融物(23重量%/77重量%)をビーカーに撹拌しながら加えた。
この方法では、固体物質の一部分を添加するだけで、適切な組成(right composition)をもつ固体結晶を含有する滴を金属プレート上に連続的に形成及び固化させ、結晶化を始めさせる。
しかしながら、許容可能なリサイクル割合(recycling ratio)をもつ顆粒化又は粒子化技術の使用にとっては、40〜70秒はあまりにも長すぎる時間である。
大量の粒子を製造するために手順5を使用することについては、40〜70秒の結晶化時間を得る方法が期待される。
【0021】
[実施例4−工業規模でのCN錠剤の製造]
冷却剤として水を使用することにより低温に保持されている移動(moving)鋼冷却ベルト(米国特許第5326541号明細書)上で試験を行った。このベルトに関して、ノズルをもつ回転ドラムが、固化し得る滴をベルト上に供給する。実地試験は、CN溶融物(23重量%/77重量%)を用いて行った。
「試験5」で記載した手順を使用することにより、数百kgのCN粒子(錠剤)を冷却ベルト上に製造した。
【0022】
[実施例5−MgN錠剤の製造]
CN溶融物を、1:MgN67重量%とHO33重量%との組成を有するMgN−水溶融物(沸点180℃)、及び2:MgN58重量%と42重量%との組成を有するMgN−水溶融物(沸点155℃)で置き換えて、実施例3の試験5を繰り返した。溶融物1及び2は両方とも、試験5(実施例3)に記載の手順により30℃に冷却した。乾燥機(exsiccator)で3日間、組成物1及び2を固化させた後、形成された固体を微粉末に砕き、種物質(seeding material)を製造した。
溶融物1及び2、並びに記載された手順を用いることで、我々は、それぞれNgN・4HO及びMgN・6HOを得た。また、MgN・6HOは、MgN・6HO溶融物が非常に容易に固化するので、種物質なしに製造された。
【0023】
[実施例6−MgN−AN及びCNの錠剤の製造]
67重量%のCN、4.0重量%のAN、10重量%のMgN及び20重量%の水から成る溶融物を110℃で保持した。溶融物を65℃に冷却し、冷却金属プレート上に滴を滴下することができるように、種物質を十分に混合した。
60秒の間に、プレート上に硬い錠剤が形成された。乾燥機で2〜3日間、溶融組成物を結晶化させた後、砕いて微粉末にし、種物質を製造した。
【0024】
[実施例7−CN、AN及びCaClの混合物]
50重量%のCN、4重量%のAN、26.5重量%のCaCl及び18〜20重量%の水から成る溶融物を、NH−CN及びCaCl・2HOの混合物を溶融(130〜140℃)することにより製造した。
4bで記載した手順(120℃で種物質を添加)を使用することにより、30秒以内に、冷却鋼プレート上に良好な粒子が形成された。粒子は、均一な固化CaN−AN CaCl粒子から成っていた。
【0025】
[実施例8−CN及びKNの混合物]
74重量%のCN、14重量%のKN及び12重量%の水から成る溶融物を、CN−KN−HO溶液から水を蒸発させることにより製造した。溶融温度を、結晶点よりも約5〜6℃高い、86℃に下げた。3重量%の微細に砕いた種物質を十分に混合し、冷却金属プレートに滴を滴下した(23℃)。
50〜60秒の間に、硬い錠剤/粒子がプレート上に形成された。
乾燥機で2〜3日間、溶融組成物を結晶化させた後、砕いて粉末にし、固体を形成させることにより、適切な種物質(right seeding material)を製造した。
【0026】
従って、以下の:
・溶融物又はCN−水の組成を是正し、
・溶融物の温度(結晶点以下)を是正し、
・種物質(固化物質の平衡相から成る)を是正し、
・20〜70秒以上で結晶化させることができる冷却ベルト又は同様の方式
を適用することにより、ANなしに固体CN粒子(CN+結晶水)を製造する手順を見出すことができた。この手順は、Ca、Mg、K、Na、NHを含有するいくつかの硝酸塩系、又はこれら硝酸塩の混合物若しくは硝酸塩と塩化物との混合物の固体を製造するのに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】CN−水の相図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
過冷却溶融物から硝酸塩含有製品(肥料、工業製品)を製造する方法であって、
XN−水溶液(ここで、XはCa、Mg、NH、Na及びKから選択される一つ以上であり、Nは硝酸である)を50〜99.8重量%のXN含有量となるまで濃縮し、溶融物を結晶点以下の温度に冷却して保持し、平衡相から成る微粉化固体XN粉末を前記溶融物に添加し、ここで、溶融物の滴が形成された後、70秒間で冷却及び固化される方法。
【請求項2】
前記XN含有量が、70〜99.5重量%である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
冷却ベルトが、粒子の固化のために使用される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ベルトが、空気、水、油又は他の媒体により冷却される請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記溶融物の滴が、20〜70秒間で冷却及び固化される請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記温度が、前記溶融物の開始結晶点よりも好ましくは0〜10℃低く保持される請求項1に記載の方法。
【請求項7】
硝酸カルシウムが製造され、CN・2HO及びCN・3HOが種粒子として使用される請求項1に記載の方法。
【請求項8】
0.2〜0.8mm、好ましくは0.4〜0.6mmの粒径を有する粒子が形成される請求項1に記載の方法。
【請求項9】
粒子が、74重量%の硝酸カルシウム、14重量%の硝酸カリウム及び12重量%の水から成る溶融物から製造される請求項1に記載の方法。
【請求項10】
硝酸塩、塩化物及び結晶水の均一な化学混合物から成る固体粒子が製造される請求項1に記載の方法。
【請求項11】
固体粒子が、50重量%の硝酸カルシウム、4重量%の硝酸アンモニウム、26.5重量%の塩化カルシウム及び18〜20重量%の水から本質的に成る溶融物から製造される請求項10に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2006−504608(P2006−504608A)
【公表日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−548172(P2004−548172)
【出願日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【国際出願番号】PCT/NO2002/000400
【国際公開番号】WO2004/039722
【国際公開日】平成16年5月13日(2004.5.13)
【出願人】(504387698)ヤラ・インターナショナル・アーエスアー (2)
【氏名又は名称原語表記】Yara International ASA
【住所又は居所原語表記】Bygdoy alle 2, P.O.box 2464 Solli, N−0202 Oslo, Norway
【Fターム(参考)】