説明

過酸化水素小滴ベースのアッセイ

本発明は、改良された過酸化水素アッセイ、およびかかるアッセイを実施するための小滴アクチュエータを提供することに関する。本発明の小滴アクチュエータは、小滴ベースの過酸化水素アッセイを実施するために使用してよい。それらは、本発明の過酸化水素アッセイの結果を分析するための検出器を伴っていてもよい。それらは、過酸化水素アッセイを実施するために小滴操作および/または検出を制御するシステムの構成要素として提供されてもよい。検出器による測定は、試料中の被分析物の存在を定量するために使用されてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(助成金に関する情報)
本発明は、米国国立衛生研究所によって授与されたDK066956−02およびGM072155−02の下での政府の支援でなされた。米国政府は本発明の一部の権利を有する。
【0002】
(関連出願)
各々を参照により本願明細書に援用する本願明細書に引用する特許出願に加えて、本願は、「過酸化水素小滴ベースのアッセイ(Hydrogen Peroxide Droplet−Based Assays)」と題する、2007年3月5日出願の米国仮特許出願第60/892,971号、および「過酸化水素小滴ベースのアッセイ(Hydrogen Peroxide Droplet−Based Assays)」と題する、2007年10月16日出願の米国仮特許出願第60/980,186号に関連し、それらに基づく優先権を主張する。これらの開示全体を、参照により本願明細書に援用する。
【0003】
本発明は、概して、改良された過酸化水素アッセイの分野に関する。特に、本発明は、過酸化水素小滴ベースのアッセイ、およびかかるアッセイを実施するための小滴アクチュエータに関する。
【背景技術】
【0004】
種々のアッセイは、標的分子についての間接的な分析のための中間体として過酸化水素を利用する。例えば、グルコースは、グルコースオキシダーゼを使用して過酸化水素を生成し、そしてペルオキシダーゼとともに過酸化水素を使用して基質を酸化し検出可能な信号(色の変化など)を生成することにより、測定することができる。かかる酸化され得る基質の例としては、アンプレックスレッド(Amplex Red)(インビトロジェン(Invitrogen))およびPS−ATTO(ルミゲン(Lumigen))が挙げられる。当該技術分野で、過酸化水素アッセイを小型化および/または加速しようとするアプローチについてのニーズが存在する。
【0005】
小滴アクチュエータは、実に様々な小滴操作を実施するために使用される。小滴アクチュエータは、典型的には基板を備え、その基板の小滴操作表面上で小滴操作を実施するために配置された電極が付随している。小滴アクチュエータは、小滴操作表面からほぼ平行に離されて、小滴操作が行われ得る隙間を形成する上板(top plate)をも有していてもよい。この隙間は、小滴アクチュエータ上で取り扱われるはずの流体と非混和性であるフィラー流体で満たされていてもよい。過酸化水素ベースのアッセイを含めるために、小滴アクチュエータの能力を広げることについてのニーズが存在する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、改良された過酸化水素アッセイ、およびかかるアッセイを実施するための小滴アクチュエータを提供する。本発明の小滴アクチュエータは、小滴ベースの過酸化水素アッセイを実施するために使用してよい。
【0007】
一実施形態では、被分析物を検出するために過酸化水素アッセイを実施する方法が提供される。この方法は、過酸化水素アッセイ試薬および試料を、約1nL〜約10μLの範囲の体積を有する小滴の中へと混合する工程と、前記小滴の中で前記アッセイを実施して、検出可能な信号を得る工程とを含む。
【0008】
別の実施形態では、過酸化水素アッセイを実施する方法であって、過酸化水素アッセイ試薬および試料を、小滴の中へと混合する工程と、前記小滴の中で前記アッセイを実施して、検出可能な信号を得る工程とを含み、前記アッセイが実質的に線形の結果を生成することを特徴とする方法が提供される。
【0009】
さらに別の実施形態では、被分析物を検出するために過酸化水素アッセイを実施する別の方法が提供される。この方法は、過酸化水素アッセイ試薬および試料を、小滴の中へと混合して、前記小滴の中で前記アッセイを実施して、検出可能な信号を得る工程であって、前記被分析物の実質的にすべてが消費される工程と、前記信号を検出する工程と、前記信号を分析して前記試料中の被分析物の量を決定する工程とを含む。
【0010】
さらなる実施形態では、単一の検出器を用いて複数の被分析物を単一の小滴アクチュエータ上で検出する方法が提供される。この方法は、基板であって、前記基板の小滴操作表面上で小滴操作を実施するために配置されている電極を備える基板と、過酸化水素が中間体であるアッセイを実施するための1以上の試薬を含む、前記小滴操作表面と流体連通している1以上の容器とを備える小滴アクチュエータ装置を準備する工程を含む。この方法はさらに、単一の小滴アクチュエータ上で複数の過酸化水素アッセイ実施するために、小滴操作を使用して、複数の試料小滴を複数の試薬と混合する工程とを含む。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の一実施形態に係る過酸化水素ベースのグルコースアッセイを提供することの種々の態様を示す図である。
【図2】緩衝液中での信号生成と比較して、試料中での信号生成の速度を示す速度のスケッチを示す図である。
【図3】試料中の被分析物(グルコース)の量を測定するための端点アッセイを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
(定義)
本願明細書で使用する場合、以下の用語は示された意味を有する。
【0013】
1以上の電極に関する「活性化する」は、小滴操作をもたらす1以上の電極の電気的状態の変化をもたらすことを意味する。
【0014】
「小滴」は、フィラー流体によって少なくとも一部は境界が画されている小滴アクチュエータ上の液体の体積を意味する。例えば、小滴は、フィラー流体によって完全に取り囲まれていてもよいし、フィラー流体および小滴アクチュエータの1以上の表面によって境界が画されていてもよい。小滴は、実に様々な形状を取ってよく、非限定的な例としては、ほぼ円板形状、スラグ(slug)形状、先端を切った球形(truncated sphere)、楕円形、球状、一部扁平な球形、半球体、卵形、円筒状、および小滴操作(没入することまたは裂くことなど)中に形成されるかまたはかかる形状が小滴アクチュエータの1以上の表面と接触する結果として形成される種々の形状が挙げられる。
【0015】
「小滴操作」は、小滴アクチュエータ上での小滴のあらゆる取り扱いを意味する。小滴操作としては、例えば、小滴を小滴アクチュエータへと充填すること;供給源の小滴から1以上の小滴を分配すること;小滴を2以上の小滴へと裂くか、分離するかまたは分割すること;1つの場所から別の場所へと任意の方向に小滴を運ぶこと;2以上の小滴を単一の小滴へと没入させるかまたは組み合わせること;小滴を希釈すること;小滴を混合すること;小滴を激しく撹拌すること;小滴を変形させること;小滴をある位置に保持すること;小滴を定温放置すること;小滴を加熱すること;小滴を気化させること;小滴を冷却すること;小滴を配置すること;小滴アクチュエータから外へ小滴を運ぶこと;本願明細書に記載される他の小滴操作;および/または上記のものの任意の組み合わせを挙げることができる。用語「没入させる(merge)」、「没入させること(merging)」、「組み合わせる(combine)」、「組み合わせること(combining)」などは、2個以上の小滴から1個の小滴を作り出すことを記載するために使用される。かかる用語が2以上の小滴に関して使用される場合、その2以上の小滴を1つの小滴へと組み合わせる結果を生じるのに十分な小滴操作の任意の組み合わせが使用されてよいことを理解するべきである。例えば、「小滴Aを小滴Bに没入させる」は、小滴Aを固定した小滴Bと接触するように運ぶこと、小滴Bを固定した小滴Aと接触するように運ぶこと、または小滴AおよびBを互いに接触するように運ぶことによって、達成することができる。用語「裂くこと」、「分離すること」および「分割すること」は、任意の特定の結果を含意することは意図されておらず、すなわち、結果として生じる小滴の大きさに関しては、結果として生じる小滴の大きさは、同じであってもよいし異なっていてもよく、または結果として生じる小滴の数に関しては、結果として生じる小滴の数は2、3、4、5またはこれより多くであってもよい。用語「混合すること」は、小滴内での1以上の成分のより均一な分布をもたらす小滴操作を指す。「充填する」小滴操作の例としては、微量透析による充填(microdialysis loading)、圧力支援充填(pressure assisted loading)、ロボット充填(robotic loading)、受動充填(passive loading)、およびピペット充填が挙げられる。小滴操作は、種々の手法(液滴駆動(electrowetting)および/または誘電泳動など)を用いて、電極および/または電場によって媒介されてもよい。
【0016】
用語「上部」および「底部」は、便宜のためだけに、小滴アクチュエータの上部基板および底部基板に関して説明全体にわたって使用される。なぜなら、小滴アクチュエータは、空間におけるその位置に関係なく機能的であるからである。
【0017】
層、領域または基板などの所与の構成要素が、本願明細書中で、別の構成要素「上に」配置されるかまたは形成されると言及されるとき、その所与の構成要素は、他の構成要素上に直接存在してもよいし、あるいは、介在する構成要素(例えば、1以上のコーティング、層、中間層、電極または接点)が存在してもよい。用語「上に配置される」および「上に形成される」は、どのように所与の構成要素が配置されているかまたは別の構成要素と関連して置かれているかを記載するために、同義で用いられることがさらに理解されるであろう。従って、用語「上に配置される」および「上に形成される」は、物質輸送、堆積、または製作の特定の方法に関して何らの限定をも加えないことが意図されている。
【0018】
任意の形態の液体(例えば、移動できるものであるか固定されているものであるかにかかわらず、小滴または連続体)が電極、アレイ、マトリクスもしくは表面「の上(on)」、「に(at)」、または「にわたって(over)」存在すると記載される場合、かかる液体は、電極/アレイ/マトリクス/表面と直接に接していてもよいし、その液体と電極/アレイ/マトリクス/表面との間に挟まれた1以上の層または膜(film)と接触していてもよい。
【0019】
小滴が小滴アクチュエータ「の上にある」または小滴アクチュエータ「の上に充填される」として記載される場合、その小滴は、その小滴アクチュエータ上に、小滴アクチュエータを使用して小滴上で小滴操作を実施することを容易にする様式で配置され、その小滴はその小滴アクチュエータ上に、小滴の特性または小滴からの信号を感知することを容易にする様式で配置され、かつ/またはその小滴は、その小滴アクチュエータ上での小滴操作にすでに供されたことを理解するべきである。
【0020】
本発明は、改良された過酸化水素アッセイ、およびかかるアッセイを実施するための小滴アクチュエータを提供することに関する。本発明の小滴アクチュエータは、小滴ベースの過酸化水素アッセイを実施するために使用してよい。それらは、本発明の過酸化水素アッセイの結果を分析するための検出器を伴っていてもよい。それらは、過酸化水素アッセイを実施するために小滴操作および/または検出を制御するシステムの構成要素として提供されてもよい。検出器による測定は、試料中の被分析物の存在を定量するために使用されてもよい。
【0021】
(1.1.過酸化水素アッセイ)
一般に、酸化され得る被分析物の存在下でのオキシダーゼは、過酸化水素を発生させるために使用される。ペルオキシダーゼおよびその過酸化水素の存在下で、基質は、信号分子へと変換され得る。この信号分子は、色の変化、化学発光または蛍光などの測定可能な信号を生成してもよいし、そのような信号を生成するために使用されてもよい。本発明は、酸化され得る被分析物を含む試料小滴が、小滴操作を用いて、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、および過酸化物およびペルオキシダーゼの存在下で信号分子を生成するために使用できる基質を含む1以上の小滴と混合される、小滴ベースの過酸化水素アッセイを提供する。例えば、酸化され得る被分析物を含む小滴は、1以上の小滴操作を用いて、オキシダーゼ、ペルオキシダーゼ、および/または基質を含む1以上の小滴と接触するように運ばれてよい。このオキシダーゼは、酸化され得る被分析物に対して特異的であるように、例えば、グルコースについてはグルコースオキシダーゼであるように選択することができる。このペルオキシダーゼは、上記基質に特異的であるように、例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼであるように選択することができる。
【0022】
一例として、本発明は、過酸化水素ベースのグルコースアッセイを提供することができ、図1はそのアッセイの種々の態様を図示する。一般に、グルコースを含む試料は、ある量のペルオキシダーゼ(西洋ワサビペルオキシダーゼなど)および検出可能な信号を生成するための信号分子の存在下でグルコースオキシダーゼと混合される。本発明の過酸化水素アッセイを用いて検出することができる他の適切な被分析物の例としては、クレアチニン、ラクテート、ピルベート、ビリルビン、グルタメート、および血中に存在する他の代謝産物が挙げられる。
【0023】
適切な酵素条件下で過酸化水素の存在下で信号分子を生成する基質のいずれも、本発明のアッセイで使用してよい。例としては、ルミゲン(Lumigen)から入手できるPS−ATTO(ウルトラ)およびインビトロジェン(Invitrogen)から入手できるアンプレックスレッド(Amplex Red)が挙げられる。信号分子は、例えば、吸光度、化学発光および/または蛍光によって、マイクロタイターまたはより小さい小滴での検出を許容するように選択されてもよい。
【0024】
(1.2.微小規模の過酸化水素アッセイ)
一実施形態では、本発明は、微小規模の過酸化水素アッセイを提供する。この実施形態では、試料は、微小滴中で過酸化水素アッセイ試薬と混合される。この反応は信号を生成し、それが検出される。信号は、その試料中に存在する標的被分析物の量を測定するために使用される。この過酸化水素アッセイ試薬は、例えば、オキシダーゼ、過剰のペルオキシダーゼ、および過酸化水素およびペルオキシダーゼの存在下で信号分子へと変換され得る基質を含んでいてよい。この試薬は、反応を促進するために適した任意のさらなる試薬または補助因子も含んでいてよい。
【0025】
一実施形態では、反応は、オイル(シリコンオイルなど)に一部または完全に取り囲まれている小滴中で起こる。別の実施形態では、反応は、小滴アクチュエータ表面上で起こる。試薬は、小滴操作を用いて、小滴アクチュエータ表面上で混合されてよい。この小滴アクチュエータは、小滴が配置される隙間を形成するために、表面から離された上板(top plate)を備えていてもよい。信号の検出は、小滴が小滴アクチュエータ上にある間に行ってもよい。さらに、小滴操作は、最大量の信号が取り込まれ得るように、過酸化水素試薬の1以上を含む1以上の小滴を、検出器の存在下で試料と混合するために使用されてもよい。
【0026】
一実施形態では、本発明の過酸化水素アッセイは、非常に小さい試料体積を用いて実施することができる。一実施形態では、試料体積は、約1nL〜約10μL、または約10nL〜約1μL、または約500nL未満、400nL未満、300nL未満、200nL未満、100nL未満の範囲である。反応体積は、同様に小さくてよい。例えば、一実施形態では、試料およびすべての過酸化水素試薬を含む反応体積は、約1nL〜約10μL、または約10nL〜約1μL、または約500nL未満、400nL未満、300nL未満、200nL未満、100nL未満の範囲である。
【0027】
他の利点としては、アッセイのための小型化された形式でのより高速の動力学に起因する結果までの時間の減少、および多重化に起因するより高い処理量が挙げられる。例えば、一実施形態では、このシステムは、過酸化水素アッセイを約5分未満、4分未満、3分未満、2分未満もしくは1分未満、または約45秒未満もしくは30秒未満で実行する。
【0028】
(1.3.実質的に線形の動力学を有する過酸化水素アッセイ)
図2は、緩衝液中での信号生成と比較して、試料中での信号生成の速度を示す速度のスケッチを示す。グルコース、グルコースオキシダーゼ、水素ペルオキシダーゼ(hydrogen peroxidase)、および化学発光アクセプターまたは蛍光を利用した。アッセイ条件は、信号生成の初期速度を評価するために設計した。試料中のすべてのグルコースは消費されず、この反応の動力学は初期は線形の速度(rate velocity)であった。実線は、緩衝液中の反応を表す。阻害剤が存在しないため、試料中のグルコースの量に比例する直線の動力学が観察された。点線は、血清中での反応を表す。初期速度の遅れが観察され、これは恐らくは血清中の阻害剤の存在に起因するものである。この試料では、動力学は確かに線形になるが、それは初期の遅れの後でのみのことである。この遅れは、例えば1−5分であるかも知れない。数秒以内に試料中の被分析物(グルコース)の量を定量する所望される用途については、これらのアッセイ条件は望ましくない。
【0029】
初期の遅れは、過剰量のペルオキシダーゼ、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼを提供することにより、阻害剤の存在下でも克服できることを、本発明者らは驚きをもって見出した。このようにして、内因性阻害剤の影響は、減少させるかまたは排除することができる。ペルオキシダーゼ濃度を増加させることによって、そしてグルコースオキシダーゼ濃度を固定したままにすることによって、本発明者らは血清中で線形の動力学を観察した。この遅れは、取るに足らないものである程度まで最小化された。一実施形態では、このプロセスは、約1μg/ml〜約100μg/mlの範囲のHRPを用いる。この実施形態では、グルコースオキシダーゼは、典型的な量、例えば、約200μg/mlで用いられてよい。
【0030】
血液、血清、および血漿などの生体液に対して過酸化物ベースのアッセイを実施する場合、アッセイ結果の線形性を妨げる分子が、生体液中に存在してもよい。例えば、反応成分もしくは中間体と競合し得るかまたはそれらを消費し得る種々の阻害剤または成分が、その生体液中に存在してもよい。例としては、ヘモグロビン、アスコルベート(ビタミンC)、ビリルビン、グルタチオン、およびカタラーゼが挙げられる。本発明は、かかる妨害物質の存在下でさえも試料中の被分析物の量を信頼性高く示す線形の信号を生成するための方法を提供する。例えば、本発明は、阻害物質の存在下で生体液中の被分析物の量を測定するために過酸化水素アッセイを実施する方法であって、ほぼまたは実質的に線形の結果を生成する方法を提供する。実質的に線形の結果は、被分析物を含む試料を、オキシダーゼ、過剰のペルオキシダーゼ、および酸化され得る信号分子(アンプレックスレッド(Amplex Red)など)と混合することによって生成してもよい。このペルオキシダーゼは、ほぼまたは実質的に線形の結果をもたらすのに十分な過剰量で提供されてもよい。
【0031】
(1.4.フラッシュ過酸化水素アッセイ)
図3は、試料中の被分析物(グルコース)の量を測定するための終点(「フラッシュ」とも呼ばれる)アッセイを図示する。終点アッセイでは、被分析物のすべてが消費された。そして信号は、試料中に含まれる被分析物の量の実質的に全体を表す。終点アッセイの反応動力学は、オキシダーゼおよびペルオキシダーゼの両方を高めることによって、増加される。この反応は、およそ1−2分で完了した。血清中の被分析物(例えばグルコース)と阻害剤の比は高く、阻害剤の効果は最少になり全信号出力の中では無視できるほどになるため、血清中の内因性阻害剤の影響は最少である。終点アッセイの測定は、小滴アクチュエータの中、センサの直下で実施することができ、従って信号出力の取り込みを最大にすることができる。血清および試薬は、小滴操作を用いて混合されてもよく、信号の取り込みは即座に始まることが可能である。一実施形態では、上記プロセスは、約1μg/ml〜約100μg/mlの範囲のペルオキシダーゼ(例えば、西洋ワサビペルオキシダーゼ)、および約200μg/ml、300μg/ml、400μg/ml、500μg/ml、600μg/ml、700μg/ml、800μg/ml、900μg/mlを超える量、または約1mg/mlを超える量のオキシダーゼ(例えば、グルコースオキシダーゼ)を用いる。
【0032】
(1.5.多重過酸化水素アッセイ)
共通の中間体である過酸化水素の使用は、一共通中間体および一検出器のスキームを用いて、複数の被分析物の分析を提供する。従って、本発明は、過酸化水素アッセイを用いる分析することができる複数の被分析物を分析するための試薬を含む小滴アクチュエータを提供する。一実施形態では、複数の試薬小滴および試料小滴が小滴アクチュエータ上で提供され、複数の過酸化水素アッセイを実施するために小滴操作を用いて組み合わされる。このアッセイは、実質的に平行してまたは逐次的に実施されてよい。一実施形態では、このアッセイは、各アッセイが1つの検出器の存在下で実施され得るように、逐次的に実施される。検出後、そして小滴は小滴操作を用いて検出器から離れるように運ばれてもよいため、引き続くアッセイが、小滴操作を用いてその検出器の存在場所で設定されてもよい。あるいは、アッセイは、その検出器から離れて設定され、検出器の存在場所へと運ばれてもよい。小滴アクチュエータおよび/または検出装置は、電気的に結合されてプロセッサによって制御されてもよい。小滴ベースの過酸化水素アッセイ手順に影響を及ぼすために、このプロセッサは、例えば、小滴操作の電極を制御するためにプログララムされてもよい。一実施形態では、曲線が最初は線形ではない場合、複数の反応を順次開始し、曲線が線形になるまで定温放置することができ、この時点で反応が、小滴操作を用いて検出器の存在場所へと逐次的に運ばれてもよい。
【0033】
(2.小滴アクチュエータ)
本発明とともに使用するのに適した小滴アクチュエータ構成の例については、「エレクトロウェッティング方式の技術を用いて小滴を操作するための装置(Apparatus for Manipulating Droplets by Electrowetting−Based Techniques)」と題する、2005年6月28日にPamulaらに対して発行された米国特許第6,911,132号、「プリント基板上で液滴を操作するための装置および方法(Apparatuses and Methods for Manipulating Droplets on a Printed Circuit Board)」と題する、2006年1月30日出願の米国特許出願第11/343,284号、「マイクロ流体工学用静電気アクチュエータおよびその使用方法(Electrostatic Actuators for Microfluidics and Methods for Using Same)」と題する、2004年8月10日にShenderovらに対して発行された米国特許第6,773,566号、および「可動部を有しないマイクロ流体工学用アクチュエータ(Actuators for Microfluidics Without Moving Parts)」と題する、2000年1月24日にShenderovらに対して発行された米国特許第6,565,727号;ならびに「小滴ベースの生化学(Droplet−Based Biochemistry)」と題する、Pollackらの2006年12月11日出願の国際特許出願第PCT/US06/47486を参照。これらの開示を、参照により本願明細書に援用する。
【0034】
(3.流体)
本発明のアプローチに従って有用な試料流体の例について、第2節に列挙した特許、特に、2006年12月11日出願の「小滴ベースの生化学(Droplet−Based Biochemistry)」と題する国際特許出願第PCT/US06/47486号を参照。いくつかの実施形態では、流体としては、全血、リンパ液、血清、血漿、汗、涙液、唾液、痰、脳脊髄液、羊水、精液、膣液、漿液、滑液、心膜液、腹腔液、胸水、漏出液、滲出液、嚢胞液、胆汁、尿、胃液、腸液、糞便試料、流動化組織、流動化微生物、生物学的綿棒および生物の洗浄液などの生物試料が挙げられる。
【0035】
(4.フィラー流体)
本発明のアッセイで使用される小滴は、フィラー流体によって完全にまたは一部取り囲まれていてもよい。このフィラー流体は、例えば、シリコーンオイルなどの低粘度のオイルであってよい。フィラー流体の他の例は、「小滴ベースの生化学(Droplet−Based Biochemistry)」と題する、2006年12月11日出願の国際特許出願第PCT/US06/47486号に提示されている。
【0036】
(結び)
実施形態の上記の詳細な説明は、本発明の具体的な実施形態を図示する添付の図面を参照する。異なる構造および操作を有する他の実施形態は、本発明の範囲から逸脱しない。
【0037】
本願明細書はいくつかの節に分けられているが、これは読み手の便宜のためだけのものである。見出しは、本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0038】
本発明の種々の細部は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で変更されてよいことは理解されるであろう。さらに、上記の説明は、例証の目的だけのためのものであり、限定する目的のためのものではない。なぜなら、本発明は添付の特許請求の範囲によって画定されるからである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被分析物を検出するために過酸化水素アッセイを実施する方法であって、過酸化水素アッセイ試薬および試料を、約1nL〜約10μLの範囲の体積を有する小滴の中へと混合する工程と、前記小滴の中で前記アッセイを実施して、検出可能な信号を得る工程とを含む方法。
【請求項2】
前記過酸化水素アッセイ試薬が、オキシダーゼと、ペルオキシダーゼと、ペルオキシダーゼおよび過酸化水素の存在下で信号分子を生成する基質とを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ペルオキシダーゼが西洋ワサビペルオキシダーゼを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記被分析物がグルコースを含み、前記オキシダーゼがグルコースオキシダーゼを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記試料が、生体液を含み、前記ペルオキシダーゼが、実質的に線形の結果を生成する量で提供される、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記結果が、約5秒未満である遅延時間を有する、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記結果が実質的に遅延時間を有しない、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記小滴が約10nL〜約1μLの範囲のサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記小滴が約1nL〜約500nLの範囲のサイズを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記過酸化水素アッセイ試薬および試料を混合する工程が、1以上の小滴操作を用いて1以上の試料小滴を1以上の過酸化水素アッセイ試薬と混合する工程を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記小滴操作の1以上が、電極が媒介する小滴操作を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記小滴操作の1以上が、電場が媒介する小滴操作を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記小滴操作の1以上が、液滴駆動が媒介する小滴操作を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記小滴操作の1以上が、電気泳動が媒介する小滴操作を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
前記被分析物が、オキシダーゼの存在下で過酸化水素を生成することができる血液中に存在する代謝産物からなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記被分析物が、クレアチニン、ラクテート、ピルベート、ビリルビン、グルタメートからなる群から選択される、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記小滴が、前記小滴と非混和性であるフィラー流体によって一部または完全に取り囲まれている、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記フィラー流体がオイルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記フィラー流体がシリコンオイルを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
前記アッセイが、前記被分析物の実質的にすべてが消費されるフラッシュアッセイを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
前記フラッシュアッセイを実施するための試料および試薬が、1以上の小滴操作を用いて、小滴アクチュエータ上で、センサの存在下で混合される、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
過酸化水素アッセイを実施する方法であって、過酸化水素アッセイ試薬および試料を、小滴の中へと混合する工程と、前記小滴の中で前記アッセイを実施して、検出可能な信号を得る工程とを含み、前記アッセイが実質的に線形の結果を生成することを特徴とする方法。
【請求項23】
被分析物を検出するために過酸化水素アッセイを実施する方法であって、
(a)過酸化水素アッセイ試薬および試料を、小滴の中へと混合して、前記小滴の中で前記アッセイを実施して、検出可能な信号を得る工程であって、前記被分析物の実質的にすべてが消費される工程と、
(b)前記信号を検出する工程と、
(c)前記信号を分析して、前記試料中の被分析物の量を決定する工程と
を含む方法。
【請求項24】
前記アッセイを実施するための前記試料および試薬が、1以上の小滴操作を用いて、小滴アクチュエータ上で、センサの存在下で混合される、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
前記被分析物の実質的にすべてが、約5分が経たないうちに消費される、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
前記被分析物の実質的にすべてが、約2分が経たないうちに消費される、請求項23に記載の方法。
【請求項27】
前記試料が生物試料を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項28】
前記試料が、血液、血清、および血漿からなる群から選択される、請求項23に記載の方法。
【請求項29】
単一の検出器を用いて複数の被分析物を単一の小滴アクチュエータ上で検出する方法であって、
(a)
(i)基板であって、前記基板の小滴操作表面上で小滴操作を実施するために配置されている電極を含む基板と、
(ii)過酸化水素が中間体であるアッセイを実施するための1以上の試薬を含む、前記小滴操作表面と流体連通している1以上の容器と
を備える小滴アクチュエータ装置を準備する工程と、
(b)単一の小滴アクチュエータ上で複数の過酸化水素アッセイ実施するために、小滴操作を使用して、複数の試料小滴を複数の試薬と混合する工程と
を含む方法。
【請求項30】
アッセイ反応が逐次的に開始され、検出器への提供が、実質的に線形の動力学を有するアッセイ反応のある段階の間に小滴が提供されるように、時期が設定されている、請求項29に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−519935(P2010−519935A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552855(P2009−552855)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/US2008/055891
【国際公開番号】WO2008/109664
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(509225524)アドヴァンスト リキッド ロジック インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】