説明

過酸化水素濃度の測定装置及び測定方法

【課題】過酸化水素の濃度を迅速かつ正確に測定し、かつ装置の小型化を容易とする。
【解決手段】過酸化水素濃度測定装置14は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体に過酸化水素を含む被測定水を接触させ、被測定水に含まれる過酸化水素を分解して、水と酸素を発生させる過酸化水素分解手段16と、過酸化水素分解手段の出口側での被測定水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定計17と、を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は過酸化水素濃度測定装置及び測定方法に関し、超純水や純水に含まれる微量の過酸化水素の濃度を測定する装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、半導体装置の製造工程や液晶表示装置の製造工程における洗浄水等の用途として、有機物、イオン成分、微粒子、細菌等が高度に除去された超純水等の純水が使用されている(以下、本明細書では超純水を含めて純水という。)。特に、半導体装置を含む電子部品を製造する際には、その洗浄工程において多量の純水が使用されており、その水質に対する要求も年々高まっている。電子部品製造の洗浄工程等において使用される純水では、純水中に含まれる有機物がその後の熱処理工程において炭化して絶縁不良等を引き起こすことを防止するため、水質管理項目の一つである全有機炭素(TOC;Total Organic Carbon)濃度を極めて低いレベルとすることが求められるようになってきている。
【0003】
このような純水水質への高度な要求が顕在化するに伴って、近年、純水中に含まれる微量の有機物を分解し除去する様々な方法の検討がなされている。その方法の一つとして、純水への過酸化水素の注入と紫外線酸化処理とを併用した有機物の分解除去方法が知られている。
【0004】
紫外線酸化処理によって有機物の分解除去を行う場合、波長254nmと波長185nmを含む紫外線が使用される。被処理水に185nmの波長の紫外線が照射されると、被処理水の水と反応してヒドロキシルラジカル(・OH)(以下、OHラジカルという)が生成され、このOHラジカルの酸化力によって、被処理水中の微量有機物が二酸化炭素や有機酸に分解される。紫外線照射を受けた被処理水は、後段に配置されているイオン交換装置に送られ、発生した二酸化炭素や有機酸が除去される。一方、波長254nm及び185nmの光はともに、過酸化水素と反応してOHラジカルを生成する。つまり、過酸化水素を純水に注入することによって、波長254nmの光をOHラジカルの生成に寄与させることができるため、より多くのOHラジカルを発生させることができる。
【0005】
有機物の分解効率を向上させるための一つの方策は、OHラジカルの生成量を増加させることであり、そのためには過酸化水素濃度を高くすればよい。しかし、過酸化水素はその酸化力のために、後段のイオン交換装置内の樹脂を酸化劣化させるなどの悪影響を及ぼす可能性がある。このため、純水中の微量有機物を効率的に除去するためには適正な量のH22を添加することが重要であり、そのためにはその前提としてH22の濃度を正確に測定することが必要となる。特許文献1には水処理プロセスの所定の位置から被測定水を過酸化水素分解手段に導入し、過酸化水素を水と酸素に分解した後、被測定水中の溶存酸素を測定することによって被測定水に含まれていた過酸化水素の濃度を算出する技術が開示されている。過酸化水素分解手段を通る前の被測定水の溶存酸素濃度を測定し、溶存酸素濃度のブランク値を求めることも開示されている。過酸化水素分解手段としては、活性炭、合成炭素系吸着材、イオン交換樹脂及びPt等を用いた金属触媒が挙げられている。
【0006】
過酸化水素分解手段としては、アニオン交換樹脂にPt、Pd等の白金族ナノコロイドを担持させた触媒担持樹脂を用いる技術も知られている(特許文献2)。超純水はSV(空間速度)100〜2000h-1で触媒担持樹脂に通水され、過酸化水素は、2H22→2H2O+O2の反応で水と酸素に分解され、5ppb以下の濃度まで低減される。他の過酸化水素分解手段として、白金族の触媒金属をアニオン交換樹脂に担持させ、アニオン交換樹脂の総交換容量の70%以上をOH形とする技術も知られている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−274386号公報
【特許文献2】特開2007−185587号公報
【特許文献3】特開2010−069460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1〜3に記載の技術は過酸化水素分解手段に導入される被測定水の空間速度SVを低く抑える必要があった。特許文献1に記載の技術ではSVは100〜2000h-1が好適であるとされ(段落[0020])、特許文献2に記載の技術ではSVは1〜100h-1が好適であるとされ(段落[0021])、特許文献3に記載の技術ではSVは30〜2000h-1が好適であるとされている(段落[0033])。
【0009】
SVが小さいと処理能力を確保するために過酸化水素分解手段を大型化する必要がある。またSVが小さいと、溶存酸素濃度の測定値が安定化するまでに時間を要する。これは、通水初期に触媒自身や充填カラムに残存していた酸素が被処理水の通水によって排除されるまでの時間が長くなるためである。さらに、過酸化水素分解手段の上流側に配管継手が存在する場合、継手を通して酸素が外部から混入する可能性がある。SVが小さいと、このような酸素が過酸化水素分解手段の内部に滞留しやすくなり、溶存酸素の測定精度が悪化するおそれがある。
【0010】
過酸化水素の濃度は市販の過酸化水素濃度計を用いて測定することもできる。しかし、市販品の多くが定量下限1ppm程度であり、低濃度の過酸化水素の測定は不可能である。低濃度域の過酸化水素濃度計としては、市販品でAHP−310L(平沼産業)などがあるが、これらは高価である。さらに、過酸化水素濃度計は測定の都度試料をサンプリングして分析するため連続的な測定ができず、しかも1回の測定に数分程度を要するため、過酸化水素濃度の急激な変動に対応できない。
【0011】
本発明の目的は、過酸化水素の濃度を迅速かつ正確に測定でき、かつ装置の小型化が容易な過酸化水素濃度の測定装置及び測定方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の過酸化水素濃度測定装置は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体に過酸化水素を含む被測定水を接触させ、被測定水に含まれる過酸化水素を分解して、水と酸素を発生させる過酸化水素分解手段と、過酸化水素分解手段の出口側での被測定水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定計と、を有している。
【0013】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体は2000h-1を超えるSVで通水しても過酸化水素の除去が可能である。このため、過酸化水素分解手段の小型化が容易である。しかもSVの増大と過酸化水素分解手段の小型化との相乗効果により、高速での通水が可能である。このため、触媒自身や充填カラムに残存していた酸素が抜けやすく、装置の立ち上がり速度が向上し、迅速な測定が可能となる。継手を通して酸素が混入する場合も、SVが増加することで酸素が排除されやすくなるため、測定精度への悪影響も抑えられる。
【0014】
本発明の過酸化水素濃度の測定方法は、モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体に過酸化水素を含む被測定水を接触させ、被測定水に含まれる過酸化水素を分解して、水と酸素を発生させるステップと、過酸化水素が分解された後の被測定水の溶存酸素濃度を測定するステップと、を有している。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、過酸化水素の濃度を迅速かつ正確に測定でき、かつ装置の小型化が容易な過酸化水素濃度の測定装置及び測定方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1A】純水製造装置の一構成例を示す模式図である。
【図1B】純水製造装置の他の構成例を示す模式図である。
【図1C】純水製造装置の他の構成例を示す模式図である。
【図2】過酸化水素分解手段の前後で溶存酸素濃度を測定する場合の過酸化水素濃度測定装置まわりの構成例を示す模式図である。
【図3】純水製造装置の他の構成例を示す模式図である。
【図4】実施例で用いた装置の概略構成を示す模式図である。
【図5】他の実施例で用いた装置の概略構成を示す模式図である。
【図6】図5に示す実施例で用いた装置から得られた溶存酸素濃度と過酸化水素濃度との関係を示すグラフである。
【図7】図5に示す実施例で用いた装置の応答特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明に係る純水及び超純水の製造装置及び製造方法は、長期安定的に過酸化水素濃度を調整できるため、過酸化水素添加と紫外線照射を併用する純水及び超純水の製造装置及び製造方法において、効果的にTOC成分の分解除去を行うことが可能である。
【0018】
また、高価な過酸化水素モニタを用いることなく過酸化水素濃度を制御することができるため、コストの低減が可能である。以下、図面を参照して本発明のいくつかの実施形態について説明する。
【0019】
被処理水としては、少なくとも脱塩処理がなされた水を想定しており、被処理水に対し、過酸化水素を添加する過酸化水素添加手段と、過酸化水素添加手段により過酸化水素が添加された被処理水に対し、紫外線を照射して紫外線酸化処理を実行する紫外線酸化装置と、被処理水中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素濃度測定装置と、測定した濃度により過酸化水素の添加量を制御する制御手段とを少なくとも備えている。
【0020】
このような純水製造装置は、一次純水を製造するための純水製造システムに適用できるほか、二次純水製造用のシステム、いわゆるサブシステムにも適用できるものである。以下、本発明をサブシステムに適用した場合を例に挙げて、実施形態を説明することとする。
【0021】
図1Aは、本発明の実施の一形態における純水製造装置(以下、単に純水製造装置1という)の概略構成を示している。このシステムは、一次純水系(不図示)で製造された純水(被処理水)を貯留するタンク2と、タンク2から純水を送出するポンプ(P)3を備え、ポンプ3の後段に、熱交換器4、紫外線酸化装置(UV)6、イオン交換装置(CP)8、限外ろ過装置(UF)10が母管24上にこの順で配置されている。タンク2にはTOC成分を含む被処理水が貯蔵され、この被処理水がタンク2から母管24に流入するようにされている。イオン交換装置(CP)8と限外ろ過装置(UF)10との間には、必要に応じて、膜式脱気装置(MD)9が挿入されていても良い。さらにこのシステムでは、被処理水中に含まれるTOC成分を効果的に除去するため、被処理水が紫外線照射装置(UV)6に導入される前に、過酸化水素を添加する過酸化水素添加装置11が設けられている。被処理水中の過酸化水素の濃度は過酸化水素濃度測定装置14によって測定され、その測定結果に応じて制御手段25が過酸化水素の適切な添加量を制御する。
【0022】
紫外線照射装置(UV)6では波長254nmと波長185nmを含む紫外線が被処理水に照射されOHラジカルが生成される。生成されたOHラジカルは被処理水中に含まれるTOCを二酸化炭素や有機酸に分解する。発生した二酸化炭素や有機酸はイオン交換装置(CP)8で除去される。この際、紫外線照射装置(UV)6を通過した被処理水には添加した過酸化水素や紫外線照射装置で発生した過酸化水素が含まれている可能性がある。過酸化水素はイオン交換装置(CP)8の樹脂などに悪影響を与えるおそれがあるため、紫外線照射装置(UV)6とイオン交換装置(CP)8の間に過酸化水素分解触媒7を設けて、過酸化水素を水と酸素に分解するのが好ましい。このようにして、被処理水は、高度に不純物が除去された水となって、ユースポイントに送られることになる。使用されなかった水は循環して、タンク2に戻される。
【0023】
以上が純水製造装置1の概略的な構成と処理の手順である。以下、純水製造装置1の主要な構成要素についてさらに詳細に説明する。
【0024】
(1)過酸化水素添加装置11
過酸化水素添加装置11は、紫外線照射装置(UV)6の前段に設けられた所定の注入点26で、タンク2から母管24に流入する被処理水に過酸化水素を添加する。過酸化水素添加装置11は所定の濃度の過酸化水素溶液を貯蔵する過酸化水素溶液貯槽12と、過酸化水素溶液を注入するための注入ポンプ13と、を有している。注入ポンプ13と注入点26との間には、必要に応じて注入量を調節するための流量調節バルブを設置してもよい。過酸化水素溶液の注入点26は、移送ポンプ3の吐出側に設けられている。この場合、過酸化水素と被処理水の混合を確実に行うため、スタティックミキサー等の混合器5を注入点26の後段に設置することが好ましい。
【0025】
図1Bに示すように、注入点26は移送ポンプ3の吸入側に設置してもよい。この場合、過酸化水素溶液の注入量を調節するため、過酸化水素溶液貯槽12と注入点26との間に流量調節バルブ27を設置する。移送ポンプ3のケーシング内で過酸化水素が混合されるため、スタティックミキサー等の混合器5は不要であるが、図1Aと同様の位置に設置してもかまわない。
【0026】
(2)紫外線照射装置(UV)6
紫外線照射装置(UV)6は、被処理水が流通する反応容器と、反応容器内の被処理水に紫外線を照射する紫外線ランプと、を備えている。
【0027】
紫外線ランプとしては、少なくとも波長185nm及び波長254nmの成分の光を発生する低圧紫外線ランプを用いることが好ましい。波長185nmの光は水及び過酸化水素からOHラジカルを発生させるため、TOC成分の分解に効果的に寄与する。波長254nmの光は、過酸化水素からOHラジカルを発生させるため、同様にTOC成分の分解に寄与する。
【0028】
反応容器は、被処理水と気相との界面が形成されない密閉流通式であることが好ましい。被処理水と気相との界面が形成されないため、水中を透過した波長254nmの光は気相に抜けることが防止され、OHラジカルの生成反応に有効に用いられる。反応容器の内面は、ステンレス鋼(SUS)などの金属で鏡面仕上げすることが好ましい。これによって波長254nmの光を反応容器の内面で反射させて、光の利用効率を高めることができる。
【0029】
(3)過酸化水素(H22)分解触媒7
過酸化水素分解触媒7としては、白金族金属が担持された触媒金属担持体を用いることが好ましい。被処理水中の過酸化水素を白金族金属触媒と接触させ、触媒分解によって過酸化水素を除去できる。白金族金属触媒は、例えば、アニオン交換体に担持させられている。アニオン交換体は、粒状のアニオン交換樹脂であってもよいし、アニオン交換樹脂が一体のものとして成形されたモノリス状有機多孔質アニオン交換体であってもよい。アニオン交換体に白金族金属触媒を担持することにより、高い触媒能力の発揮と、触媒からの溶出物の低減に効果がある。触媒金属担持体の詳細については(7)に示す。
【0030】
(4)過酸化水素濃度測定装置14
過酸化水素濃度測定装置14は被処理水中の過酸化濃度を迅速かつ正確に測定することができる。本実施形態では、過酸化水素濃度測定装置14は純水製造装置1の一つの構成要素として組み込まれているが、従来の過酸化水素濃度測定装置に代えて単独で用いることもできる。
【0031】
まず、過酸化水素濃度測定装置14の設置位置について説明する。過酸化水素濃度測定装置14は、過酸化水素の注入点26と紫外線照射装置(UV)6との間の位置から被測定水(被処理水)を分取する構成とすることが望ましい。紫外線照射装置(UV)6では、添加した過酸化水素の分解反応の他、水からの過酸化水素の生成、溶存酸素の分解/生成、溶存窒素の分解/生成などの複雑な反応が生じる。そのため、紫外線照射装置(UV)6の前段で被測定水を分取することで、添加した過酸化水素濃度をより正確に測定することができる。混合器5が設けられる場合は、図1Aに示すように、混合器5と紫外線照射装置(UV)6との間の位置に分岐管28を設け、過酸化水素が十分に混合した被測定水を分取することが望ましい。
【0032】
紫外線照射装置(UV)6に導入される被処理水の過酸化水素濃度が高く(例えば100ppb以上)、紫外線照射装置(UV)6での過酸化水素の分解/生成が無視ないし許容できる場合は、図1Cに示すように、紫外線照射装置(UV)6の後段に分岐管28を設置しても差し支えない。
【0033】
過酸化水素濃度測定装置14は過酸化水素分解手段16と、過酸化水素分解手段16を通過した後の被処理水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定計(DO計)17と、を有している。過酸化水素分解手段16は、過酸化水素を含む被測定水を、白金族金属が担持された触媒金属担持体と接触させ、過酸化水素を分解して水と酸素を発生させる(2H22→2H2O+O2)。この結果上昇した被処理水中の溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度測定計(DO計)17で測定される。過酸化水素分解手段16は一例では、カラムとカラムに充填された触媒金属担持体とを有する触媒反応器である。溶存酸素濃度を正確に測定するためには、密閉型の触媒反応器を用いることが望ましい。触媒反応器と接続される配管も、外部からの酸素の混入を防止するため、溶接構造など密閉性の高い構造とすることが望ましい。溶存酸素濃度測定計(DO計)17は市販されている一般的な測定計を用いることができる。
【0034】
溶存酸素濃度と過酸化水素濃度との間には相関関係が存在することが知られており、溶存酸素濃度が分かれば過酸化水素濃度を知ることができる。概略の過酸化水素濃度を求めるだけであれば、溶存酸素濃度の測定値自体を指標として用いることができるため、特に換算のための演算手段を設ける必要はない。しかし、高精度での過酸化水素濃度の測定が望まれる場合は、溶存酸素濃度測定計(DO計)17での溶存酸素濃度の測定結果に基づき、被測定水中の過酸化水素濃度を算出する演算手段を備えることが望ましい。演算手段は、溶存酸素濃度と過酸化水素濃度との関係を示す数値データ、換算式などを含んでいる。
【0035】
被処理水の溶存酸素濃度が変動する場合には、過酸化水素分解手段16に流入する前の被測定水の溶存酸素濃度を測定し、ブランクレベル(被測定水中に元々存在している溶存酸素濃度)の影響を除去することが望ましい。この目的で、溶存酸素濃度測定計(DO計)17を過酸化水素分解手段16の入口側と出口側とに切り替え可能に接続し、過酸化水素分解手段16の入口側での被処理水の溶存酸素濃度の測定を可能とする切換手段21を設けることができる。図2を参照すると、切換手段21は、過酸化水素分解手段16の入口側配管と溶存酸素濃度測定計(DO計)17とを結ぶ配管23a及び配管23a上に設けられた第1のバルブ22aと、過酸化水素分解手段16の出口側配管と溶存酸素濃度測定計(DO計)17とを結ぶ配管23b及び配管23b上に設けられた第2のバルブ22bと、を有している。
【0036】
過酸化水素分解手段16の入口側の溶存酸素濃度DO1を求めるときは、第1のバルブ22aを開き、第2のバルブ22bを閉じる。これによって、配管23aを通して過酸化水素分解手段16の入口側の被処理水が溶存酸素濃度測定計(DO計)17に流入する。過酸化水素分解手段16の出口側の溶存酸素濃度DO2を求めるときは、第2のバルブ22bを開き、第1のバルブ22aを閉じる。これによって、配管23bを通して過酸化水素分解手段16の出口側の被処理水が溶存酸素濃度測定計(DO計)17に流入する。この操作を順次行うことによって、過酸化水素分解手段16の入口側の溶存酸素濃度DO1と出口側の溶存酸素濃度DO2を求めることができる。過酸化水素分解手段16の出口側の溶存酸素濃度DO2から過酸化水素分解手段16の入口側の溶存酸素濃度DO1を差し引いた値(ΔDO=DO2−DO1)を求め、得られたΔDOを用いてより正確に過酸化水素の濃度を測定することができる。詳細は後述するが、このようなデータ(検量線)の一例を実施例の図6に示している。ブランクレベルが小さい場合は過酸化水素分解手段16の出口側の溶存酸素濃度DO2だけを用いて(すなわち、ΔDO=DO2として)検量線を作成することができる。この場合ΔDOが相対的に大きく計算されるため、得られる検量線は、図6に示すグラフが全体的に+側にシフト(平行移動)したようなグラフとなる。
【0037】
このような切換手段21を設ける代わりに過酸化水素分解手段16の入口側及び出口側に各々専用の溶存酸素濃度測定計(DO計)17を設けても同様の効果が得られる。
【0038】
溶存酸素は過酸化水素分解手段16で生成された酸素の濃度だけを測定することが望ましい。しかし、実際には元々被処理水中に含まれていた溶存酸素も検出される。このため被処理水中の溶存酸素濃度が高い場合、過酸化水素分解手段16に流入する被処理水中の溶存酸素濃度をできるだけ抑えるために、過酸化水素分解手段16の前段または過酸化水素濃度測定装置14の前段に、被処理水中の溶存酸素を除去する脱気膜15を設けることが好ましい。これにより、過酸化水素を分解する前に被処理水中の溶存酸素が除去され、より正確な分析が可能となる。脱気膜15は小型であるため、過酸化水素濃度測定装置14の小型化に寄与する。
【0039】
過酸化水素濃度測定装置14で取り扱える被処理水の水質は特に限定されないが、過酸化水素濃度は0〜400ppbの範囲が好ましい。すなわち過酸化水素濃度測定装置14は、純水または超純水に好適に用いることができる。特に超純水は、通常10〜50ppb程度の過酸化水素を含んでいるため、本測定装置での測定に適している。
【0040】
他の実施形態では、図3に示すように、溶存酸素濃度測定計17は、過酸化水素分解触媒7とイオン交換装置(CP)8との間に設けている。前述のように、過酸化水素分解触媒7は本来、イオン交換装置(CP)8への悪影響を防止するために母管24上に設けられている。しかし、過酸化水素分解触媒7は過酸化水素分解手段16と機能的に同等であるため、過酸化水素分解触媒7の後段に溶存酸素濃度測定計(DO計)17を設けることで、過酸化水素濃度測定装置14を、紫外線照射装置(UV)6とイオン交換装置(CP)8との間の区間に設けた構成が得られる。
【0041】
前述の通り、過酸化水素が添加された被処理水を紫外線照射装置(UV)6で処理すると、添加された過酸化水素の一部は紫外線照射装置(UV)6で反応するが、未反応のまま紫外線照射装置(UV)6から排出される過酸化水素も存在する。紫外線照射装置6(UV)から排出される過酸化水素は過酸化水素分解触媒7において、過酸化水素分解手段16での反応と同様に、水と酸素に分解されるため、被処理水中の溶存酸素濃度が上昇する。従って、過酸化水素分解触媒7の後段で溶存酸素濃度を測定することで、被処理水中の過酸化水素濃度を概略把握することができる。本構成では過酸化水素分解触媒7を過酸化水素濃度測定装置の構成要素として流用できるため部品数の削減が可能となる。
【0042】
(5)制御手段25
制御手段25は溶存酸素濃度の値に応じて、過酸化水素添加装置11によって添加される過酸化水素の添加量を調節する。上述のように、溶存酸素濃度と過酸化水素濃度との間には相関性がある。そこで、この相関性に基づいて、演算手段が過酸化水素濃度を算出し、算出された過酸化水素濃度と目標濃度とを用いて、制御手段25が過酸化水素の添加量を調節する。制御手段25としては専用の制御ユニット、汎用のコンピュータなど任意の構成を用いることができる。制御手段25は電力操作器などの、被測定水の流量を調節する流量調節手段を有しており、これを用いて流量調節バルブ27の開度や注入ポンプ13の出力を調節する。
【0043】
具体的には、制御手段25は、溶存酸素濃度測定計(DO計)17で測定された溶存酸素濃度または溶存酸素濃度から求められた過酸化水素濃度が所定の値より小さい場合は過酸化水素の添加量を増加させ、所定の値より大きい場合は過酸化水素の添加量を減少させる。過酸化水素分解手段16の前段で溶存酸素濃度をさらに測定する場合は、演算手段が、溶存酸素濃度測定計(DO計)17で測定された被測定水の溶存酸素濃度の差分から、被測定水中の過酸化水素濃度を算出する。制御手段25は溶存酸素濃度測定計(DO計)17で測定された溶存酸素の差分または溶存酸素の差分から求められた過酸化水素濃度が所定の値より小さい場合は過酸化水素の添加量を増加させ、所定の値より大きい場合は過酸化水素の添加量を減少させる。
【0044】
(6)被処理水水質及び過酸化水素添加量
本発明の被処理水水質は特に限定されないが、純水製造装置は、TOCが100ppb以下、溶存酸素濃度が100ppb以下、かつ電気抵抗率が1MΩcm以上の被処理水に特に好適に適用できる。本発明の純水製造装置は、排水系などのTOCがより高い被処理水にも適用できるが、排水系などでは一般に過酸化水素が大量に添加されるため、添加量を正確に制御する必要性は低下する。これに対してTOCが100ppb以下の被処理水の場合、過酸化水素濃度を高精度で制御する必要性が高いため、本発明が好適に適用できる。
【0045】
被処理水の溶存酸素濃度は、添加する過酸化水素の量にもよるが、低濃度でかつ濃度変動が少ない方が好ましい。溶存酸素濃度が低く変動が少ないと、過酸化水素由来の溶存酸素濃度の分析精度が向上する。例えば、溶存酸素濃度100ppbの被処理水に対し、過酸化水素濃度が100ppbとなるように過酸化水素を添加する場合、理論上、溶存酸素濃度測定計(DO計)17での溶存酸素濃度は147ppb(=ブランクレベル100ppb+過酸化水素由来の溶存酸素濃度47ppb)となる。被処理水の溶存酸素濃度(ブランクレベル)が高いと、測定値中の過酸化水素由来の溶存酸素濃度の比率が相対的に低下する。また、ブランクレベルの変動が大きい場合は、過酸化水素由来の溶存酸素濃度の測定値の信頼性が低下する。なお前述のように、被処理水の溶存酸素濃度(ブランクレベル)の影響を少なくする目的で、過酸化水素分解手段16の前段に脱気膜15を設けることができる。
【0046】
被処理水への過酸化水素の添加量については以下の通りである。被処理水のTOC濃度が10ppb以下の場合、過酸化水素濃度が20ppb以上400ppb以下となるように過酸化水素を添加することが好ましい。被処理水のTOC濃度が10ppb以上100ppb以下の場合、過酸化水素をTOCに対して物質量比で1以上10以下となるように添加することが望ましい。過酸化水素を上記の範囲を超えて添加すると大量のOHラジカルが発生するが、OHラジカルはTOC成分に遭遇しないとすぐに過酸化水素に戻ってしまう(2OH・→H22)。このため過剰のOHラジカルが存在していると、過酸化水素に戻る反応ばかりが起きて、処理効率が上がらない可能性がある。
【0047】
(7)過酸化水素分解手段16
過酸化水素分解手段16についてさらに詳細に説明する。過酸化水素分解手段16は、活性炭、合成炭素系吸着材、イオン交換樹脂などを用いることもできるが、より好ましくは触媒金属担持体が好ましい。触媒金属担持体としては、アニオン交換樹脂にPt(白金)、Pd(パラジウム)等の過酸化水素分解能力を有する触媒金属を担持させた触媒樹脂が利用できるが、空間速度(SV)を得るためには、モノリス状有機多孔質アニオン交換体(以下、「モノリスアニオン交換体」という場合がある。)に白金族金属が担持された触媒金属担持体を用いることが望ましい。この触媒金属担持体は200〜20000h-1好ましくは2000〜20000h-1のSVで被処理水を通水させることができる。
【0048】
特にPdをモノリス状有機多孔質アニオン交換体に担持させたPdモノリスは、高速で被測定水を通水させることができるため、装置の小型化が容易である。また、SVが大きいため、例えば過酸化水素分解手段16の上流側の配管から空気が混入した場合にも、その影響を抑えることができる。例えば空気が間欠的に混入する場合、高SVのため空気は直ちに下流側へ押し流され、過酸化水素分解手段16に長く滞留することがない。空気が連続的に混入する場合でも、SVが大きいために空気が希釈されて、測定値に及ぼす影響が緩和される。このような理由によって分析精度の向上が可能となる。また、装置立ち上げ時に触媒自身や充填カラムに空気が残留している場合、空気が抜けて計測値が安定するまで待っている必要があるが、高SVのため残留している空気は速やかに排除され、装置の立ち上げ時間が短縮される。
【0049】
モノリスアニオン交換体として特に好ましいのは、以下に述べるAタイプ及びBタイプである。これらのモノリスアニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体は、過酸化水素分解触媒7にも同様に好適に適用できる。
【0050】
(7−1)Aタイプのモノリスアニオン交換体
Aタイプのモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μm、好ましくは30〜200μm、特に好ましくは40〜100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。Aタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。水湿潤状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、水湿潤状態での開口の平均直径が大き過ぎると、被処理水とAタイプのモノリスアニオン交換体および担持された白金族金属ナノ粒子との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。なお、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、水湿潤状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
【0051】
Aタイプのモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25〜50%、好ましくは25〜45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とAタイプのモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0052】
また、Aタイプのモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/g、好ましくは0.8〜4ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にAタイプのモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とAタイプのモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0053】
なお、Aタイプのモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
【0054】
Aタイプのモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.4〜1.0mg当量/mlである。体積当りのアニオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、Aタイプのモノリスアニオン交換体の重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。
【0055】
Aタイプのモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3〜10モル%、好適には0.3〜5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン等の芳香族ビニルポリマーが挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
【0056】
Aタイプのモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基等が挙げられる。
【0057】
導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、対アニオンを塩化物イオン、臭化物イオンなどにイオン交換した後、EPMAを用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、アニオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
【0058】
Aタイプのモノリスアニオン交換体は、骨太のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えば骨太モノリスの1.4〜1.9倍のように大きく膨潤する。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、Aタイプのモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
【0059】
(7−2)Bタイプのモノリスアニオン交換体
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
【0060】
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された平均太さが水湿潤状態で1〜60μm、好ましくは3〜58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μm、好ましくは15〜90μm、特に好ましくは20〜80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は、連続する骨格相と連続する空孔相とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造である。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動を達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
【0061】
Bタイプのモノリスアニオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質アニオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質アニオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なアニオンの吸着挙動を達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、被処理水中の溶存酸素の除去が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのアニオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にBタイプのモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とBタイプのモノリスアニオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
【0062】
上記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径を算出することもできる。また、上記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態のBタイプのモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の骨格の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
【0063】
また、Bタイプのモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5〜5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理水量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのアニオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒効果が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にBタイプのモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とBタイプのモノリスアニオン交換体との接触効率が低下して、過酸化水素分解効果も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、被処理水との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通水が可能となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
【0064】
なお、Bタイプのモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001〜0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.005〜0.1MPa/m・LVである。
【0065】
Bタイプのモノリスアニオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3〜5モル%、好ましくは0.5〜3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレンが挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド−ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
【0066】
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlのイオン交換容量を有する。Bタイプのモノリスアニオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、Bタイプのモノリスアニオン交換体の乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5〜4.5mg当量/gである。
【0067】
Bタイプのモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、Aタイプのモノリスアニオン交換体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果もAタイプのモノリスアニオン交換体と同様である。
【0068】
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、Aタイプのモノリスアニオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
【0069】
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積をBタイプのモノリスアニオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20〜1:40とすればよい。
【0070】
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5〜100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
【0071】
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、共連続構造のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4〜1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、Bタイプのモノリスアニオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量を大きくでき、更に、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能である。
【0072】
(触媒金属担持体)
触媒金属担持体は、モノリスアニオン交換体に白金族金属が担持されてなるものであり、モノリスアニオン交換体に、白金族金属のナノ粒子が担持されている触媒金属担持体であることが好ましい。
【0073】
モノリスアニオン交換体としては、上述したA,Bタイプのモノリスアニオン交換体が好ましい。
【0074】
白金族金属とは、ルテニウム、ロジウム、パラジウム、オスミウム、イリジウム、白金である。これらの白金族金属は、一種類を単独で用いても、二種類以上の金属を組み合わせて用いてもよく、更に、二種類以上の金属を合金として用いてもよい。これらの中で、白金、パラジウム、白金/パラジウム合金は触媒活性が高く、好適に用いられる。
【0075】
白金族金属のナノ粒子の平均粒子径は、1〜100nmであり、好ましくは1〜50nm、更に好ましくは1〜20nmである。平均粒子径が1nm未満であると、ナノ粒子が担体から脱離する可能性が高くなるため好ましくなく、一方、平均粒子径が100nmを超えると、金属の単位質量当たりの表面積が少なくなり触媒効果が効率的に得られなくなるため好ましくない。なお、ナノ粒子の平均粒子径が上記範囲内の場合、表面プラズモン共鳴によりナノ粒子は強く着色するため、目視によっても確認可能である。
【0076】
乾燥状態の触媒金属担持体中の白金族金属ナノ粒子の担持量((白金族金属ナノ粒子/乾燥状態の白金族金属担持触媒)×100)は、0.004〜20重量%、好ましくは0.005〜15重量%である。白金族金属ナノ粒子の担持量が0.004重量%未満であると、過酸化水素分解効果が不十分になるため好ましくない。
【0077】
触媒金属担持体において、白金族金属ナノ粒子の担体であるモノリスアニオン交換体のイオン形は、白金族金属ナノ粒子を担持した後は、通常、塩化物形のような塩形となる。このような塩形のものを過酸化水素分解用の触媒として用いても良い。また、触媒金属担持体は、モノリスアニオン交換体のイオン形を、OH形に再生したものであってもよい。そして、これらのうち、モノリスアニオン交換体のイオン形がOH形であることが、高い触媒効果が得られるため好ましい。白金族金属ナノ粒子を担持した後のモノリスアニオン交換体のOH形への再生方法には特に制限はなく、水酸化ナトリウム水溶液を通液する等の公知の方法を用いればよい。
【実施例】
【0078】
(1)純水製造装置の実施例
<参考例1>
図4に示す構成の実験装置において、超純水を通水流量330L/hで供給し、過酸化水素濃度が22ppbとなるように過酸化水素を添加し、さらに脱気膜を通して溶存酸素濃度を減少させて、これを被処理水とした。本実施例ではTOC成分としてのメタノールは添加していない。図中のPはポンプ、Sはサンプリング点を示す。紫外線照射装置(UV)6の入口で被処理水の一部を分岐させ、過酸化水素分解手段16に通水流量12L/hで通水した。供給された超純水の水質は、TOC濃度が1ppb未満、電気抵抗率が18MΩ・cm以上であった。被処理水のTOC濃度はTOC計(Anatel社製A−1000XP型)を用いてオンラインで測定した。過酸化水素濃度はサンプリングした後、フェノールフタリン法を用いて吸光光度計にて測定した。測定された過酸化水素濃度は被処理水の実際の過酸化水素濃度を示している。
【0079】
過酸化水素分解手段16としては、内径10mmのナイロンカラムに層高30mm(約2.5mL)でPdモノリスを充填したものを用いた。溶存酸素濃度は、溶存酸素濃度計(ハック・ウルトラ社製model−3600)を用いてオンラインで測定した。過酸化水素分解手段16出口での溶存酸素濃度の測定値は19ppb、過酸化水素濃度は1ppb未満であった。
【0080】
<実施例1>
実施例1では通水流量を120L/hに変化させ、過酸化水素分解手段16出口での溶存酸素濃度の値が19ppb(参考例1と同等)となるように過酸化水素注入ポンプ13の流量を制御した。他の条件は参考例1と同様とした。結果を表1に示す。過酸化水素分解手段16出口での過酸化水素濃度の測定値は23ppbであり、参考例における測定値22ppbと同程度であった。これより、被処理水の過酸化水素濃度が低い場合でも、過酸化水素分解手段16の出口での溶存酸素濃度を基に被処理水の過酸化水素濃度を制御できることが確認された。
【0081】
【表1】

【0082】
<比較例1>
比較例1では、過酸化水素注入ポンプ13の流量を制御しないことを除いて、実施例1と同様の実験を行った。結果を表1に示す。過酸化水素分解手段16出口での過酸化水素濃度は30ppbであった。被処理水の流量が減少したにもかかわらず過酸化水素注入ポンプ13からの過酸化水素の添加量が一定であったため、過剰に過酸化水素が添加される結果となった。
【0083】
<参考例2>
図4に示す構成の実験装置において、超純水を通水流量330L/hで供給し、TOC濃度が10ppbとなるようにメタノールを添加し、過酸化水素濃度が82ppbとなるように過酸化水素を添加し、さらに脱気膜を通して溶存酸素濃度を減少させて、これを被処理水とした。使用した超純水の水質、過酸化水素分解手段16への通水流量は参考例1と同様とし、TOC、過酸化水素濃度、溶存酸素濃度は参考例1と同様の方法で測定した。
【0084】
過酸化水素分解手段16としては、内径10mmのナイロンカラムに層高60mm(約5mL)でPdモノリスを充填したものを用いた。過酸化水素分解手段16出口での溶存酸素濃度の測定値は62ppb、過酸化水素濃度は1ppb未満であった。
【0085】
【表2】

【0086】
<実施例2>
実施例2では通水流量を120L/hに変化させ、過酸化水素分解手段16出口での溶存酸素濃度の値が62ppb(参考例2と同等)となるように過酸化水素注入ポンプ13の流量を調節したことを除いて、参考例2と同様の実験を行った。結果を表2に示す。過酸化水素分解手段16出口での過酸化水素濃度の測定値は94ppbであり、参考例における測定値82ppbより多少高い程度であった。流量が変動しても被処理水の過酸化水素濃度を一定に維持できる結果となった。
【0087】
<比較例2>
比較例2では、過酸化水素注入ポンプ13の流量を制御しないことを除いて、実施例2と同様の実験を行った。結果を表2に示す。過酸化水素分解手段16出口での過酸化水素濃度の測定値は159ppbであり、参考例における測定値82ppbより大幅に高くなった。被処理水の流量が減少したにもかかわらず過酸化水素注入ポンプ13からの過酸化水素の添加量が一定であったため、過剰に過酸化水素が添加されたためである。
【0088】
<参考例3>
図4に示す構成の実験装置において、TOC濃度が90ppb、過酸化水素濃度が308ppbとなるようにメタノール及び過酸化水素を添加したことを除き、参考例2と同様の実験を行った。過酸化水素分解手段16出口での溶存酸素濃度は250ppb、過酸化水素濃度は1ppb未満であった。
【0089】
【表3】

【0090】
<実施例3>
実施例3では通水流量のみを600L/hに変化させ、過酸化水素分解手段16出口での溶存酸素濃度の値が250ppb(参考例3と同様)となるように過酸化水素注入ポンプ13の流量を調節したことを除いて、参考例3と同様の実験を行った。結果を表3に示す。過酸化水素分解手段16出口での過酸化水素濃度の測定値は308ppbとなり参考例3と同等であった。これよりTOCが存在し、かつ過酸化水素濃度が高濃度であっても被処理水の過酸化水素濃度が制御可能であることが分かる。
【0091】
<比較例3>
比較例3では、過酸化水素注入ポンプ13の流量を制御しないことを除いて実施例3と同様の実験を行った。結果を表3に示す。紫外線照射装置(UV)6入口での過酸化水素濃度は188ppbであった。被処理水の流量が増加したにもかかわらず過酸化水素注入ポンプ13からの過酸化水素の添加量が一定であったため、過酸化水素が少なく添加される結果となった。
【0092】
(2)過酸化水素濃度測定装置14(ΔDO測定)単体での実施例
図5に示す構成の実験装置において、超純水を通水流量200L/hで供給し、過酸化水素除去触媒にて過酸化水素濃度を1ppb未満に調整した。その後25〜400ppbの範囲で過酸化水素濃度を変化させながら過酸化水素を添加し、さらに脱気膜を通して溶存酸素濃度を10ppb未満に調整し、これを被処理水とした。過酸化水素除去触媒としては、内径57mmのテフロン(登録商標)カラムに層高10mm(約25mL)でPdモノリスを充填したものを用いた。使用したPdモノリスは、OH形であり、Pd担持量は乾燥状態で1.8%であった。供給された超純水の水質は、電気抵抗率が18MΩ・cm以上、TOCが1ppb以下であった。種々の過酸化水素濃度の被処理水についてサンプリングを行い、フェノールフタリン法を用いた吸光光度計にて過酸化水素濃度を測定した。測定された過酸化水素濃度は被処理水の実際の過酸化水素濃度を示している。
【0093】
これと同時に、被処理水の一部を分取し、過酸化水素濃度測定装置14に12L/h(SV4800)で通水した。過酸化水素分解手段16としては、内径9mmのナイロンカラムに層高30mm(約2.5mL)でPdモノリスを充填したものを用いた。使用したPdモノリスはOH形であり、Pdの担持量は1.8%であった。
【0094】
過酸化水素分解手段16出口の溶存酸素濃度DO2と過酸化水素分解手段16入口の溶存酸素濃度DO1を測定し、それらの差分(ΔDO=DO2−DO1))を算出した。被処理水のDO1,DO2は、溶存酸素濃度計(ハック・ウルトラ社製model−3600)にて測定した。
【0095】
以上の測定結果から、ΔDOと過酸化水素濃度との関係をプロットし、図6に示す検量線を得た。図6より、ΔDOと実際の過酸化水素濃度は優れた直線関係にあることが分かる。図中のRは決定係数であり、1に近いほど測定値と検量線の差が小さいことを意味する。
【0096】
なお、図5に示す実験装置には、過酸化水素除去触媒をバイパスするラインが設けられており、バルブによって切換えることができるようになっている。
【0097】
<参考例1>
図5に示す実験装置において、上記バルブの操作によって過酸化水素除去触媒をバイパスさせ(過酸化水素除去触媒に通水せず)、かつ過酸化水素を添加せず、その他の条件は上記と同様として、実験装置に被処理水を供給した。被処理水をサンプリングし、過酸化水素濃度をフェノールフタリン法にて測定した。結果を表4に示す。得られた過酸化水素濃度は、供給された超純水の実際の過酸化水素濃度である。
【0098】
<実施例1>
図5に示す実験装置に、参考例1と同様の条件で被処理水を供給し、過酸化水素濃度測定装置14に通水した。過酸化水素濃度測定装置14で被処理水のΔDOを測定し、これを図6に示す検量線に当てはめて過酸化水素濃度を算出した。結果を表4に示す。参考例1とほぼ同じ値が得られ、本測定方法が有効な測定手段であることが確認された。
【0099】
【表4】

【0100】
<実施例2>
図5に示す構成の実験装置において、超純水を通水流量200L/hで供給し、過酸化水素除去触媒にて過酸化水素濃度を1ppb未満に調整した。その後過酸化水素濃度が120ppbとなるように過酸化水素を添加し、さらに脱気膜を通して溶存酸素濃度を10ppb未満に調整し、これを被処理水とした。使用した超純水の水質は、実施例1と同じであり、過酸化水素測定装置は、参考例1及び実施例1と同様のものを使用した。本実施例では過酸化水素の注入開始前からΔDOを測定し、過酸化水素の注入開始後も測定を継続して、装置の応答特性を評価した。結果を図7に示す。本実施例では過酸化水素を添加してから3分程度で測定値が安定した。
【0101】
<比較例2>
過酸化水素測定装置の過酸化水素分解手段16に活性炭を用いたことを除いて、実施例2と同様の実験を行った。過酸化水素分解手段16として、内径25mmのアクリルカラムに活性炭(三菱化学カルゴン製ダイアホープM006)を400mL(層高約800mm)で充填したものを用いた。通水条件は12L/h(SV30h-1)とした。結果を図7に示す。比較例2では、過酸化水素を添加してから10分経過しても安定しなかった。実施例2と比較例2の比較より、本測定装置は短時間で測定値が安定し、応答特性に優れていることが確認された。
【符号の説明】
【0102】
1 純水製造装置
3 移送ポンプ
6 紫外線照射装置
7 過酸化水素分解触媒
8 イオン交換装置
11 過酸化水素添加装置
14 過酸化水素濃度測定装置
16 過酸化水素分解手段
17 溶存酸素濃度測定計
26 注入点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体に過酸化水素を含む被測定水を接触させ、前記被測定水に含まれる過酸化水素を分解して、水と酸素を発生させる過酸化水素分解手段と、
前記過酸化水素分解手段の出口側での前記被測定水の溶存酸素濃度を測定する溶存酸素濃度測定計と、
を有する過酸化水素濃度測定装置。
【請求項2】
前記溶存酸素濃度測定計での溶存酸素濃度の測定結果に基づき、前記被測定水中の過酸化水素濃度を算出する演算手段を有する、請求項1に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項3】
前記溶存酸素濃度測定計を前記過酸化水素分解手段の入口側と出口側とに切り替え可能に接続し、前記過酸化水素分解手段の入口側での前記被測定水の溶存酸素濃度の測定を可能とする切換手段と、
前記溶存酸素濃度測定計で測定された前記過酸化水素分解手段の前記入口側と前記出口側の溶存酸素濃度の差分から、前記被測定水中の前記過酸化水素濃度を算出する演算手段と、
を有する、請求項1に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項4】
前記触媒金属担持体は、白金族金属の担持量が乾燥状態で0.004〜20重量%である、請求項1から3のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項5】
前記モノリス状有機多孔質アニオン交換体はOH形である、請求項1から4のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項6】
前記触媒金属担持体は、有機多孔質アニオン交換体に、平均粒子径1〜100nmの白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
前記有機多孔質アニオン交換体は、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30〜300μmの開口となる連続マクロポア構造を有し、0.3〜10モル%の架橋構造単位を含有する有機ポリマー材料からなり、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、アニオン交換容量が湿潤状態で0.4〜1mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している、請求項1から5のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項7】
前記触媒金属担持体は、有機多孔質アニオン交換体に白金族金属のナノ粒子が、担持されている白金族金属担持触媒であり、
前記有機多孔質アニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3〜5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1〜60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10〜100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5〜5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3〜1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している、請求項1から5のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項8】
前記過酸化水素分解手段の前段に前記被測定水中の溶存酸素を除去する脱気膜を有する、請求項1から7のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項9】
前記被測定水が200〜20000h-1の空間速度で前記触媒金属担持体に通水されるように、前記被測定水の流量を調節する流量調節手段を有する、請求項1から8のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度測定装置。
【請求項10】
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体に過酸化水素を含む被測定水を接触させ、前記被測定水に含まれる過酸化水素を分解して、水と酸素を発生させるステップと、
前記過酸化水素が分解された後の前記被測定水の溶存酸素濃度を測定するステップと、
を有する過酸化水素濃度の測定方法。
【請求項11】
前記過酸化水素が分解される前の前記被測定水の溶存酸素濃度を測定するステップと、
前記過酸化水素を分解する前後の前記被測定水の前記溶存酸素濃度の差分から、前記被測定水中の過酸化水素濃度を算出するステップと、を有する、請求項10に記載の過酸化水素濃度の測定方法。
【請求項12】
前記被測定水を200〜20000h-1の空間速度で前記触媒金属担持体に通水させる、請求項10または11に記載の過酸化水素濃度の測定方法。
【請求項13】
前記過酸化水素を分解する前に前記被測定水中の溶存酸素を除去するステップを有する、請求項10から12のいずれか1項に記載の過酸化水素濃度の測定方法。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−63303(P2012−63303A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−209236(P2010−209236)
【出願日】平成22年9月17日(2010.9.17)
【出願人】(000004400)オルガノ株式会社 (606)
【Fターム(参考)】