説明

道路用標示体

【課題】ベース部と柱状の本体部とを容易に固定できると共に、車両などが接触してもその固定が外れにくい道路用標示体を提供する。
【解決手段】下方に開口する中空部を筒壁の内側に備えた筒形状に本体部を形成させ、前記中空部内に挿入可能な上方に突出する挿入部をベース部に設け、前記挿入部の外側面に下方に傾斜して外方に突出するかえし部を備えた固定部材を取り付け、前記挿入部を前記本体部の中空部内に挿入させ、前記固定部材のかえし部を前記本体部の筒壁の内側面へ食い込ませて、前記本体部と前記ベース部とを固定させる
車両などが接触して本体部を外側から歪ませても、本体部の筒壁へかえし部がより強く食い込むようになされて前記本体部と前記ベース部との固定が弱まることがなく、前記本体部と前記ベース部との固定が外れにくくなされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は道路における車線のセンターラインや歩道と車道との境界を隔てるための標示、車線誘導標示あるいは交通規制誘導標示や交通案内表示や通行規制標示などを目的として、道路に立設して設置される道路用標示体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
センターライン等に設置される従来の道路用標示体は、その設置場所の状況や目的に応じて、種々の形状のものが製造されて利用されており、これらに関連する発明も開示されている。
【0003】
例えば特許文献1には、標識柱本体挿入穴と掛止環装着溝とを有する台座と、その台座の掛止環装着溝中に抜け止めされた状態で組み込まれる金属製又は硬質樹脂の掛止環と、台座の本体挿入穴中に円周状の間隔を開けて挿入される標識柱本体とよりなり、前記掛止環を台座の掛止環装着溝中に組込んだ状態において標識柱本体を掛止環内径に圧入して該掛止環の傾斜爪を標識柱本体に食い込ませることにより台座と標識柱本体とを一体的に結合させたことを特徴とする道路標識柱、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−282298号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1の如き道路標識柱は、傾斜爪を備えた掛止環内に標識柱本体を圧入させて標識柱本体に傾斜爪を食い込ませるので、車両などが標識柱本体に接触してこれを外側から歪ませた場合に、標識柱本体への傾斜爪の食い込みが緩んで、台座から標識柱本体が抜けてしまう危険性が大きくなるという問題があった。
【0006】
そこで本発明は、ベース部と柱状の本体部とを容易に固定できると共に、車両などが接触してもその固定が外れにくい道路用標示体を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明は以下のような構成としている。
すなわち本発明に係る道路用標示体は、柱形状に形成された本体部と、該本体部と別体に形成された該本体部を立設させるベース部とを備えた道路用標示体であって、
前記本体部は下方に開口する中空部を筒壁の内側に備えた筒形状に形成され、
前記ベース部には前記中空部内に挿入可能な上方に突出する挿入部が設けられ、
該挿入部の外側面には下方に傾斜して外方に突出するかえし部を備えた固定部材が取り付けられており、
前記挿入部が前記本体部の中空部内に挿入されて、前記固定部材のかえし部が前記本体部の筒壁の内側面に当接し、該内側面への前記かえし部の食い込みによって前記本体部と前記ベース部とが固定されていることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る道路用標示体によれば、下方に開口する中空部を筒壁の内側に備えた筒形状に前記本体部を形成させ、前記中空部内に挿入可能な上方に突出する挿入部を前記ベース部に設け、
この挿入部の外側面にかえし部を備えた固定部材を取り付けて、前記挿入部を前記本体部の中空部内に挿入させて、前記固定部材のかえし部を前記本体部の筒壁の内側面に当接させ、この内側面への前記かえし部の食い込みによって前記本体部と前記ベース部とを固定させるので、前記ベース部の挿入部を前記本体部の中空部へ挿入させるだけで容易に本体部とベース部とを固定できる。
また、前記かえし部は下方に傾斜して外方に突出するので、下方に開口する前記本体部の中空部へ前記ベース部の挿入部を挿入させる際には、前記本体部の内側面が前記かえし部の傾斜部分に当接して滑り、容易に挿入させることができる。
また、前記本体部の中空部内に挿入可能な挿入部の外側面に前記かえし部を備えた前記固定部材を取り付けて、前記本体部の筒壁の内側面への前記かえし部の食い込みによって前記本体部と前記ベース部とを固定させるので、道路用標示体に車両などが接触して本体部を外側から歪ませても、本体部の筒壁へかえし部がより強く食い込むようになされて前記本体部と前記ベース部との固定が弱まることがなく、前記本体部と前記ベース部との固定が外れにくくなされる。
【0009】
また、前記かえし部を前記挿入部の上下方向に複数並設して形成させれば、かえし部の一部が損傷するなどしても、上下方向に並設された他のかえし部の本体部への食い込みが継続されて、前記本体部と前記ベース部との固定が外れにくくなされるので、好ましい。
【0010】
また、前記固定部材を上下方向に向かう前記挿入部の外側面に沿う金属板とさせて、この金属板の一部が上方から下方に至る程、外方向へ向けて徐々に傾斜して曲がるアール曲げ加工を行って、前記かえし部を形成させれば、前記ベース部から前記本体部を引き抜こうとする力が働いたときに、前記本体部の筒壁に食い込んだ前記ベース部のかえし部の一部にその力が集中することがなく、かえし部全体に力が分散されるため、前記かえし部が破壊されにくく、ベース部と本体部との固定が外れにくくなされるので、好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る道路用標示体によれば、車両などが接触してもベース部と柱状の本体部との固定が外れにくい。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明に係る道路用標示体の実施の一形態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
【図2】図1の道路用標示体の本体部とベース部とを分解させた状態を示す図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】図1のベース部を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
【図5】図4のA−A断面図である。
【図6】図4のベース部に取り付ける固定部材を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
【図7】図4のベース部に図6の固定部材を取り付けた状態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図である。
【図8】図7のA−A断面図である。
【図9】図8のベース部に本体部1を取り付けた状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施の形態を図面に基づき具体的に説明する。
図面において、1は道路用標示体の本体部であり、5はベース部である。
本体部1はベース部5の上面に立設されて設けられており、その外周側面には入射光に対して平行に出射光を反射する再帰反射性を有する反射シート13が被着されている。
ベース部5はその上面から挿通されて下面より下方に雄ねじ部分を突出させるアンカーボルト8によって設置面に固定されている。
【0014】
図2は図1の道路用標示体の本体部1とベース部5とを分解させた状態を示す図であり、図3は図1のA−A断面図である。
本体部1は、長手方向が上下へ向いて下方に開口する円筒形の中空柱状体に形成された筒壁11を有し、その上端には内部の中空部15の開口部分を塞ぐようにキャップ14が固定されている。
本体部1はオレフイン系炭化水素から形成される。オレフイン系炭化水素は、リサイクルが容易であり、又リサイクル時に有害物質の発生が少ない。なお使用するオレフイン系炭化水素の種類は限定されるものではないが、オレフイン系炭化水素の中でもとりわけ成形性に優れ、且つ衝撃に対して強く、コスト安である、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましい。又ポリエチレンとポリプロピレンとの混合材料であってもよく、さらにガラス繊維等の補強材が混入されたものであってもよい。ガラス繊維等の補強材を混入したものをリサイクルする場合は、例えばリサイクルする際の溶融状態において、フイルター等で濾過することにより取り除くことができる。
【0015】
ベース部5は扁平な円錐台形状に形成されており、ベース部5の上面中央には、長手方向を上下に向けた円筒形状に形成された挿入部51が上方に突出して設けられている。
またベース部5には、上面から下面に貫通する貫通穴56が前記挿入部51を囲うように4箇所形成されており、この各貫通穴56に前記のアンカーボルト8を挿通させて路面に埋設固定させたアンカーナットに螺結させることで、ベース部5を路面に設置可能としている。
ベース部5は本体部1と同様に、オレフイン系炭化水素から形成される。そしてオレフイン系炭化水素の種類は限定されるものではないが、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、又ポリエチレンとポリプロピレンとの混合材料であってもよい。
【0016】
挿入部51は、円筒形の本体部1の内周側面に対応した形状に形成されており、その外周側面に沿って板状の固定部材6が取り付けられている。
前記の本体部1は、ベース部5の上面に設けた挿入部51を、内部の中空部15に下方から挿入させて、ベース部5の上面に立設されており、本体部1は前記固定部材6を介して挿入部51に固定されている。
【0017】
図4は図1のベース部5を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、図5は図4のA−A断面図である。
ベース部5の挿入部51の外周側面には、外方へ突出する突条形状のリブ52が形成されている。
リブ52は、台形形状の断面で挿入部51の全長に亘り長手方向に沿って形成されており、8本のリブ52が挿入部51の周方向へ等間隔に並設させて形成されている。そして各リブ52の突出の大きさは、挿入部51が本体部1の中空部15に挿入されたときに、各リブ52の突出した面が筒壁11の内周側面に当接するように形成されている。
【0018】
また、ベース部5の挿入部51には、外周側面から内周側面へ貫通する四角形状の取付穴53が形成されている。この取付穴53は、挿入部51の上部付近に2個1組で形成されており、隣り合う2本のリブ52の中間位置に上下方向へ2個並べて形成されている。そして挿入部51には2組4個の取付穴53が形成されており、円筒形状の挿入部51の中心を挟んで相対する筒壁部分にそれぞれ1組ずつ合計2組形成されている。
この各取付穴53は固定部材6の取り付けに用いられる。
【0019】
図6は図4のベース部5に取り付ける固定部材6を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、(ハ)は側面図である。
固定部材6は上下方向に長い長方形状の板部62から形成されており、ステンレス板を曲げ加工して形成されている。
板部62の前面には、前方に突出する三角板形状のかえし部61が形成されている。
かえし部61は、板部62にVの字形状の切り込みを設け、この切り込みの内側部分が前方へ突出するように曲げ加工して形成させており、より詳細にはかえし部61は上方の根本部分から下方の先端部分に至る程その傾斜の角度が徐々に大きくなって外方に曲がるアール曲げ加工されている。
本実施形態の固定部材6には、かえし部61を上下方向に並べて5個並設させて形成させている。
【0020】
板部62の後面上部には、後方に突出する四角板形状の取付片63が形成されている。取付片63は、2個1組で上下方向に並設して形成されており、上側の取付片63は、板部62の上端から上方に突出して形成させた四角板部分を後方へ突出するよう曲げ加工して形成させ、下側の取付片63は板部62に逆Uの字形状の切り込みを設け、この切り込みの内側部分が後方へ突出するように曲げ加工して形成させている。
前記の2個1組の各取付片63は、その左右の幅の大きさと各取付片63の間隔の大きさとを、ベース部5に形成させた2個1組の取付穴53の左右の幅の大きさと各取付穴53の間隔の大きさとに対応させて形成させている。
【0021】
図7は図4のベース部に図6の固定部材を取り付けた状態を示す、(イ)は平面図であり、(ロ)は正面図であり、図8は図7のA−A断面図である。
固定部材6は、板部62の後面から突出する各取付片63をベース部5の取付穴53に挿入させ、板部62の後面を挿入部51の外周側面に当接させて、取り付けられる。固定部材6は、2個1組の各取付穴52に1個取り付けられ、2組の各取付穴52にそれぞれ1個づつ合計2個の固定部材6が、それぞれ2本のリブに挟まれ挿入部51の長手方向に沿って取り付けられる。
固定部材6の各かえし部61の突出の大きさは、ベース部5に形成されたリブ52の突出の大きさより大きく形成されており、挿入部51の外周側面に取り付けられた固定部材6は、その各かえし部61を隣接する各リブ52よりも外方へ突出させて設けられる。
【0022】
図9は図8のベース部に本体部1を取り付けた状態を示す断面図である。
本体部1の下方から、ベース部5の挿入部51を中空部15に挿入させていくと、筒壁11の内周側面にベース部5の突出した面が当接し、次に筒壁11の内周側面の下端に固定部材6のかえし部61が当接する。
更に挿入部51を本体部1内に挿入させていくと、かえし部61のより下部分へ筒壁11の内周側面下端が当接すると共に、かえし部61が挿入部51の内側方向へ押圧されて、かえし部61の外方への突出がリブ52と同程度となるまで押し込まれる。
最後に本体部1の下端がベース部5の上面に達するまで挿入部51を中空部15に挿入させると、図9に示すような状態となされる。
【0023】
図9の状態において、筒壁11の内周側面に押圧された固定部材6のかえし部61は、弾性的な復元力によって斜め下方向に向いた先端を筒壁11の内周側面に食い込ませている。このような状態で、本体部1を上方へ引き抜こうとする力が働くと、かえし部61の復元力と相まって、その先端が筒壁11の内周側面により潜り込むように食い込んで引っ掛かり、本体部1の上方への抜けを防止させる。
また、本体部1の中空部15に挿入されるベース部5の挿入部51の外周側面に固定部材6が取り付けられて、外方へ突出するかえし部61が筒壁11の内周側面に食い込むように設けられているので、道路用標示体に車両などが接触して外部から押圧する力が加えられた場合には、筒壁11の内周側面とベース部5の挿入部51の外周側面との隙間が小さくなるように力が働くので、かえし部61が筒壁11の内周側面から引き離されることがなく、逆にかえし部61が食い込むように力が働くので、固定部材6を介した本体部1とベース部5との固定が外れにくくなされる。
【0024】
また、本実施形態では、ベース部5の挿入部51に筒壁11の内周側面に当接するようにリブ52を設け、並設された2本のリブ52の間に固定部材6を設けているので、道路用標示体に車両などが接触して外部から力が加えられても、筒壁11の内周側面とベース部5の挿入部51の外周側面との隙間の変化がより小さくなるように抑制される。このため、2本のリブ52の間に取り付けられた固定部材6を介した、本体部1とベース部5との固定がより安定的になされる。
【0025】
また、本実施形態のかえし部61は、上方の根本部分から下方の先端部分に至る程その傾斜の角度が徐々に大きくなって外方に曲がるようなアール曲げ加工されているが、これに限るものではなく、上方の根本部分に折り曲げ部分を設けて斜め下方へ直線的に突出するように形成させてもよい。しかし、本実施形態のように、かえし部61をアール曲げ形状とすることで、ベース部5に固定させた本体部1を上方へ引き抜くような力が働いたときに、かえし部61の折り曲げ部分等に力が集中することがなく、アール曲げさせたかえし部全体に力が分散されるので、かえし部61が折損するような問題が抑制され、本体部1とベース部5との固定が安定させて継続させることができる。
【0026】
また、本実施形態の固定部材6は、上下方向に5個のかえし部61を上下方向に並べて形成させているので、車両などの接触の衝撃などによってかえし部61の一部が破損しても、他のかえし部61が筒壁11の内周側面に食い込み、本体部1とベース部5との固定を安定的に継続させることができる。
尚、本実施形態の固定部材6は、上下に長い長方形状の板体62に形成させて、挿入部51の外周側面の長手方向に沿って取り付けるので、円筒形の筒壁11を有する本体部1と円筒形の挿入部51との固定に限らず、三角筒形状や四角筒形状など、多様な形状の断面の筒状体に形成された本体部1とこれに対応した形状の挿入部51を備えたベース部5との固定においても、固定部材6を挿入部51の外側面に長手方向に沿って取り付けることで容易に両者を固定させることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 本体部
11 筒壁
13 反射シート
14 キャップ
15 中空部
5 ベース部
51 挿入部
52 リブ
53 取付穴
56 貫通穴
6 固定部材
61 かえし部
62 板部
63 取付片

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱形状に形成された本体部と、該本体部と別体に形成された該本体部を立設させるベース部とを備えた道路用標示体であって、
前記本体部は下方に開口する中空部を筒壁の内側に備えた筒形状に形成され、
前記ベース部には前記中空部内に挿入可能な上方に突出する挿入部が設けられ、
該挿入部の外側面には下方に傾斜して外方に突出するかえし部を備えた固定部材が取り付けられており、
前記挿入部が前記本体部の中空部内に挿入されて、前記固定部材のかえし部が前記本体部の筒壁の内側面に当接し、該内側面への前記かえし部の食い込みによって前記本体部と前記ベース部とが固定されていることを特徴とする道路用標示体。
【請求項2】
前記かえし部が前記挿入部の上下方向に複数並設して形成されていることを特徴とする請求項1に記載の道路用標示体。
【請求項3】
前記固定部材は上下方向に向かう前記挿入部の外側面に沿う金属板であり、該金属板の一部が上方から下方へ至る程、外方向へ向けて徐々に傾斜して曲がるアール曲げ加工されて、前記かえし部が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の道路用標示体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−236572(P2011−236572A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−106842(P2010−106842)
【出願日】平成22年5月7日(2010.5.7)
【出願人】(000002462)積水樹脂株式会社 (781)
【Fターム(参考)】