説明

遠心分離分取装置,遠心力発生装置,そして遠心分離分取方法

【課題】本発明の目的は、従来に比べ大きく減らされた量の液体試料から遠心分離された少量の複数の成分を相互に容易に分離可能な、遠心分離分取装置,遠心力発生装置,そして遠心分離分取方法を提供することである。
【解決手段】遠心分離分取装置10は:流体試料導入路12と;遠心力により試料導入路から流出した流体試料BLが流入され、遠心力により流体試料から複数の成分BC,BPが分離され積層する分離成分積層路14と;そして、上記積層路中に複数の成分が積層された後に上記積層路に代わり遠心力の作用方向に向けられ、上記積層路中の最上層の成分BPが導入され、導入された成分が遠心力により上記積層路中の残りの成分BCから分離され採取される分取路16と;を備える。遠心力発生装置はこのような分取装置に上述した如く遠心力を適用する。遠心分離分取方法はこのような分取装置の使用法を規定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遠心分離分取装置,遠心力発生装置,そして遠心分離分取方法に関係している。
【背景技術】
【0002】
遠心分離装置は、試料容器に入れられた流体試料を複数の成分に分離するために使用されている。試料容器中で遠心力により流体試料から分離された複数の成分は試料容器中で遠心力が作用した方向に相互に積層されている。このように、試料容器中で相互に分離され相互に積層されている複数の成分の中の所望の成分に対し種々の検査を行なうには、試料容器から所望の成分のみをさらに抽出しなければならない。
【0003】
現状では、試料容器中の複数の成分から所望の成分を抽出するには通常ピペットが使用されている。しかし、ピペットで扱える所望の成分量には限界がある。
【0004】
液体試料が例えば血液の場合、遠心分離装置により血液から有形成分である血球類と液体成分である血漿、もしくは血清とを分離することが出来る。
【0005】
そして、現状では略10ml程度の血液が各種血液検査を行うために必要な血液量となっている。
【特許文献1】特開2005−114438号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
老齢者もしくは乳幼児から採血を行う事は、一般成人に比べ困難であるため、所望の血液検査の為に必要な採血量を大きく減らすことが出来ることがより望ましい。またより幅広い環境、簡便な環境での採血の需要も高い。
【0007】
本願の発明は、このような事情の下で為され、本願の発明の目的は、従来に比べて準備する液体試料の量を大きく減らしても、このような液体試料から遠心力により分離された従来よりも遥かに少ない量の複数の成分を相互に容易に分取可能な、遠心分離分取装置,遠心力発生装置,そして遠心分離分取方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
このような目的を達成するために、本願の発明に従った遠心分離分取装置は:遠心分離される流体試料が導入され、導入された流体試料に第1の回転角位置で第1遠心力が負荷されたときに上記第1遠心力により上記流体試料が流出する流体試料出口を有する試料導入路と;上記第1遠心力により試料導入路の流体試料出口から流出した流体試料が流入される流体試料入口を有しており、流体試料入口から流入した上記流体試料に負荷された上記第1遠心力により上記流体試料から複数の成分が分離され、上記複数の成分が積層する分離成分積層路と;そして、試料導入路の流体試料出口と分離成分積層路の流体試料入口との間に位置する分離成分入口を有しており、第2の回転角位置で第2遠心力が負荷されたときに分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離されて採取される分取路と;を備えている、ことを特徴とする。
【0009】
また、上述した目的を達成するために、本願の発明に従った遠心力発生装置は:回転駆動源からの回転力が伝達されて所定の回転中心線の回りに回転する回転部材と;回転部材において回転中心線に対し対称に配置され、上述したこの発明に従った遠心分離分取装置を試料導入路,分離成分積層路,そして分取路が上記回転中心線と交差する面内に配置されるよう夫々が着脱可能に支持し、回転部材の回転により回転中心線の周囲を公転する少なくとも1対の試料台と;そして、回転部材に対し少なくとも1対の試料台を所定の第1の回転角位置と所定の第2の回転角位置との間で相互に正反対の方向に回動させる試料台回動機構と;を備えている。少なくとも1対の試料台に支持されている少なくとも1対の遠心分離分取装置の夫々の試料導入路,分離成分積層路,そして分取路は:少なくとも1対の試料台が第1の回転角位置に配置されている間に回転部材が回転されることにより、試料導入路中の流体試料に作用される第1遠心力により試料導入路中の流体試料を流体試料出口から分離成分積層路中に流体試料入口を介して流入させるとともに分離成分積層路中に流入した流体試料を上記第1遠心力の作用により複数の成分に分離させ積層させ;次に、少なくとも1対の試料台が第1の回転角位置から第2の回転角位置へと回転されるとともに回転部材が回転されることにより、分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中で流体試料入口に最も近い成分を分離成分入口から分取路中に導入し、第2遠心力を作用させることにより上記導入された成分を分離成分入口から遠ざけ上記導入された成分を分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離させて採取させる、ことを特徴とする。
【0010】
さらに、上述した目的を達成するために、本願の発明に従った遠心分離分取方法では:
夫々の一端が相互に接続されている試料導入路,分離成分積層路,そして分取路を含んでいて、試料導入路は遠心分離される流体試料が導入される他端を有し、分離成分積層路は閉塞された他端を有し、分取路は少なくとも1つの所定容量の容器が着脱可能に設けられた他端を有しており、
試料導入路及び分離成分積層路は、試料導入路中の流体試料に所定の方向に向かう第1遠心力が作用したときに上記流体試料を試料導入路の上記一端を流体試料出口として試料導入路から流出させるとともに分離成分積層路の上記一端を流体試料入口として分離成分積層路中に流入させ、分離成分積層路中の上記流体試料に上記第1遠心力を作用させて上記流体試料から複数の成分を分離させるとともに上記複数の成分を分離成分積層路の上記他端で上記第1遠心力の作用する方向に積層させるよう配置されていて、
分取路は、分離成分積層路の上記他端に上記複数の成分が積層された後に第2遠心力を作用した場合分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中で分離成分積層路の上記一端の流体試料入口に最も近い成分が分離成分入口から導入され、導入された成分に上記第2遠心力が作用されることにより上記導入された成分が分離成分入口から遠ざかり上記導入された成分が分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離されて分取路の上記他端の少なくとも1つの所定容量の容器に採取するよう配置されている、
遠心分離分取装置を準備する。
【0011】
そして、試料導入路の上記他端に遠心分離される流体試料を導入し;遠心分離分取装置の試料導入路中の流体試料に前記第1遠心力を作用させて上記流体試料を試料導入路の上記一端を流体試料出口として試料導入路から流出させるとともに分離成分積層路の上記一端を流体試料入口として分離成分積層路中に流入させ、分離成分積層路中の上記流体試料に上記第1遠心力をさらに作用させて上記流体試料から複数の成分を分離させるとともに上記複数の成分を分離成分積層路の上記他端で上記遠心力の作用する方向に積層させ;分離成分積層路の上記他端に上記複数の成分が積層された後に前記第2遠心力を作用させて分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中で分離成分積層路の上記一端の流体試料入口に最も近い成分を分取路の上記一端の分離成分入口を介して分取路中に導入し、導入された成分に上記第2遠心力を作用させることにより上記導入された成分を分離成分入口から遠ざけて分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離し分取路の上記他端の少なくとも1つの所定容量の容器に採取させ;そして、遠心分離分取装置に対する第1および第2遠心力の作用を停止させた後に、上記成分を採取した上記少なくとも1つの所定容量の容器を分取路の上記他端から取り外す;ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上述した如く構成されていることを特徴としているこの発明に従った遠心分離分取装置,遠心力発生装置,そして遠心分離分取方法によれば、従来に比べて準備する液体試料の量を大きく減らしても、このような液体試料から遠心力により分離された従来よりも遥かに少ない量の複数の成分を相互に容易に分取可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1の(A)及び(B)中に示されている如く、この発明の一実施の形態に従っている遠心分離分取装置10は、夫々の一端が相互に接続されている試料導入路12,分離成分積層路14,そして分取路16を含んでいる本体10aを備えている。
【0014】
試料導入路12は直線状に延出していて、遠心分離される流体試料、この実施の形態では血液BL、を保持した流体試料保持部材18が着脱可能に装着される他端を含む。流体試料保持部材18は例えば摩擦嵌合により試料導入路12の他端に着脱可能に装着され、試料導入路12の他端に装着されたときに試料導入路12の他端と同心的に配置される貫通孔18aを有している。貫通孔18aは10μLの容積を有している。
【0015】
分離成分積層路14の一端は、試料導入路12の一端から試料導入路12の延出方向に向かい少し直線状に延出していて、次に上記延出方向から90度以内の範囲内、この実施の形態では略45度、で傾斜して直線状に延出している。分離成分積層路14の他端、即ち傾斜して延びている部分の延出端、は、上記他端に対し例えば螺合や摩擦嵌合により着脱可能に装着されているプラグ部材20により閉塞されている。分離成分積層路14は、その傾斜部分の空洞の容積がプラグ部材20により閉塞される領域を除いて略6μLである。
【0016】
分取路16は、試料導入路12及び分離成分積層路14と同じ平面内で試料導入路12及び分離成分積層路14の直線部分から分離成分積層路14の傾斜部分が延びている側に直角に延出している。分取路16の他端、即ち延出端、は、本体10aの外表面に開放されていて、少なくとも1つの所定量の容器22が着脱可能に装着されるよう構成されている。この実施の形態において分取路16の他端は複数に分岐されていて、相互に並列に配置されている。
【0017】
分取路16の他端の相互に並列な複数の分岐には、複数の相互に同じ寸法と容量を有した複数の容器22が密封部材24を介して着脱可能に液密に接続されている。複数の容器22の夫々の容量は、略110nLである。
【0018】
複数の容器22は相互に並列に容器保持部材26に着脱可能に保持されている。容器保持部材26は、本体10aの外表面において分取路16の他端の相互に並列な複数の分岐が開放されている所定の部分に対し着脱可能に固定することが出来るよう構成されている。容器保持部材26が、図1の(B)中に示されている如く、本体10aの外表面の上記所定の部分から分離されている間には、容器保持部材26に対し複数の容器22を容易に所定の配列で保持させることが出来るし、容器保持部材26から複数の容器22を容易に取り出すことが出来る。さらに、複数の容器22を所定の配列で保持している容器保持部材26を、図1の(A)中に示されている如く、本体10aの外表面の上記所定の部分に固定することにより、分取路16の他端の相互に並列な複数の分岐に対し複数の容器22を同時に接続させることが出来る。
【0019】
図2の(A)及び(B)中に示されている如く、容器22は、段付の円筒状の容器本体22aと、容器本体22aの孔中に液密で摺動可能に挿入されている一端を有するピストン22bと、を含む。ピストン22bの他端は容器本体22aの大径部における孔の開口から外部空間に所定距離突出しており、容器本体22aの小径部における孔の開口からピストン22bの他端までの孔の部分に所定の容量(略110nL)の空洞を提供している。図2の(A)及び(B)中には、容器22の複数の寸法の一例が示されていて、各寸法の単位はミリメートルである。
【0020】
図1の(A)及び(B)を参照しながら前述したこの発明の一実施の形態に従っている遠心分離分取装置10の全ての構成部材は、合成樹脂により形成されていて、使い捨てである。
【0021】
次に、図3の(A)乃至(E)を参照しながら、図1の(A)及び(B)を参照しながら前述したこの発明の一実施の形態に従っている遠心分離分取装置10を使用した遠心分離分取方法を説明する。
【0022】
複数の空の容器22を保持した容器保持部材26が外表面の所定の部分に固定されている遠心分離分取装置10の試料導入路12の他端に、遠心分離される流体試料、この実施の形態では血液BL、を保持した流体試料保持部材18が着脱可能に装着された後に、遠心分離分取装置10は、公知の図示しない遠心力発生装置の所定の位置に着脱可能に固定される。
【0023】
遠心力発生装置は、例えば電動機の如き回転駆動源に連結されている回転部材と、回転部材の上面に設置されている試料台と、を含む。試料台は、回転部材の上面に対し、90度の回転角の範囲内で回動可能であり、上記回転角の一端と他端に選択的に固定可能である。
【0024】
遠心分離分取装置10は試料台上に載置され着脱可能に固定される。この時、遠心分離分取装置10は、試料導入路12,分離成分積層路14,そして分取路16が上記回転部材の回転中心軸と直交する仮想平面上に横たわるよう上記試料台上に載置される。しかも、図3の(A)中に示されている如く、試料導入路12及び試料導入路12に対し直線状に延出している分離成分積層路14の一端が上記回転中心軸の半径方向に略平行になるよう、上記試料台上で配置される。上記半径方向は、上記回転部材が回転したときに遠心分離分取装置10に発生させる遠心力の向かう方向CFDである。
【0025】
次に、遠心力発生装置の回転部材が所定の方向に所定の回転数で回転される。回転部材のこの回転により遠心力方向CFDに沿い負荷される第1遠心力により、図3の(B)中に示されている如く、遠心分離分取装置10の試料導入路12に装着されている流体試料保持部材18の貫通孔18a中の血液BLは、貫通孔18a中から試料導入路12の一端を介して分離成分積層路14の一端中に流出する。即ち、試料導入路12の一端は遠心力が負荷された流体試料である血液BLが遠心力により流出する流体試料出口として機能し、分離成分積層路14の一端は流体試料出口から流出した流体試料である血液BLが流入される流体試料入口として機能する。
【0026】
分離成分積層路14中に流入した血液BLは、プラグ部材20により閉塞されている他端上で上記遠心力の作用を受けて複数の成分、例えば有形成分である血球類BCと液体成分である血漿(もしくは血清)BPとに分離される。複数の成分である血球類BCと血漿BPとは、夫々の密度の差異により、分離成分積層路14の他端上で相互に積層される。この際には、密度が大きな血球類BCの全てが分離成分積層路14の他端側の傾斜部分に位置し、密度が小さな血漿BPは血球類BCよりも分離成分積層路14の一端に近い位置にある。詳細には、血漿BPは、分離成分積層路14において傾斜部分の入口近傍から、直線部分の分取路16との交差部位の手前まで位置している。
【0027】
次に、遠心力発生装置の回転部材の回転が停止され、試料台が回転部材に対し90度自転された後に、回転部材に対し再度固定される。このときに試料台と一体になって自転した遠心分離分取装置10では、図3の(C)中に示されている如く、試料導入路12及び分離成分積層路14の一端の直線部分に代わり分取路16が、回転部材が回転したときに遠心分離分取装置10に発生させる遠心力の向かう方向CFDに対し略平行に配置される。
【0028】
遠心分離分取装置10のこの自転により、分離成分積層路14中の血漿BPは分取路16の一端に導入され、血球類BCは傾斜部分中に残り傾斜部分と直線部分との境界を越えて直線部分には流入しない。このとき、試料導入路12の一端の流体試料出口と分離成分積層路14の一端の流体試料入口との間に位置する分取路16の一端は、分離成分入口として機能する。
【0029】
次に、遠心力発生装置の回転部材の回転が再度開始される。回転部材のこの回転により遠心力方向CFDに向かい負荷される第2遠心力により、血漿BPは、図3の(D)中に示されている如く、分取路16の一端から他端に向かい遠ざけられ、分離成分積層路14中に留められる血球類BCから分離される。分取路16の他端に到達した血漿BPは、他端の複数の容器22の孔を順次満たす。
【0030】
次に、遠心力発生装置の回転部材の回転が再度停止される。回転が停止された回転部材の試料台上の遠心分離分取装置10から、図3の(E)中に示されている如く、容器保持部材26を取り外せば、容器保持部材26に保持されていて夫々の孔に血漿BPが満たされている複数の容器22を容器保持部材26から取り外すことが出来る。複数の容器22の夫々の孔に満たされている血漿BPの量は相互に等しい。そして、夫々の容器22の孔中の所定量の血漿BPは、ピストン22bを容器本体22aの小径部に向かい押すことにより、容器本体22aの孔中から押し出すことが出来る。
【0031】
また、分離成分積層路14の傾斜部分に残された血球類BCは、プラグ部材20を分離成分積層路14の他端から取り外すことにより傾斜部分から容易に回収することが出来る。
【0032】
図3の(A)乃至(E)を参照した上述した説明からは、複数の空の容器22を保持した容器保持部材26及び血液BLを保持した流体試料保持部材18を伴った遠心分離分取装置10が、図3の(A)中に示されている如く、遠心力発生装置の回転部材の試料台に固定された後は、回転部材の回転,回転部材の回転停止及び試料台の90度自転,回転部材の再回転,そして回転部材の回転再停止までを自動で行なうことが出来ることが明らかである。
【0033】
そして、この自動操作の間に、遠心分離分取装置10中では、血液BLからの複数の成分、この実施の形態では血球類BC及び血漿BP、の分離,一方の成分である血漿BPの他方の成分である血球類BCからの分取,さらには分取された成分である血漿BPの秤量までが全て自動で行なわれる。
【0034】
この為、従来に比べて準備する液体試料としての血液BLの量を大きく減らしても、このような液体試料から遠心力により分離された従来よりも遥かに少ない量の複数の成分である血球類BC及び血漿BPを相互に容易に分取可能である。
【0035】
次に図4を参照しながら、この発明の第2の実施の形態に従った遠心分離分取装置10´について図4を参照しながら説明する。
【0036】
第2の実施の形態に従った遠心分離分取装置10´の構成部材の大部分は、図1の(A)及び(B)中に示されている第1の実施の形態に従った遠心分離分取装置10の構成部材の大部分と同じである。従って、第2の実施の形態の遠心分離分取装置10´において第1の実施の形態の遠心分離分取装置10の構成部材と同じ構成部材には、第1の実施の形態に従った遠心分離分取装置10の対応する構成部材に付されていた参照符号と同じ参照符号を付して、詳細な説明は省略する。
【0037】
第2の実施の形態の遠心分離分取装置10´が第1の実施の形態の遠心分離分取装置10と異なっているのは、分取路16の他端が複数に分岐されていないことである。遠心分離分取装置10´の本体10aの外表面において分取路16の他端が開口した所定の部分に着脱可能に固定された容器保持部材26´は、分取路16の延出方向に同軸上に直線状に相互に隣接して配置された複数の容器22´を着脱可能に保持している。複数の容器22´の夫々は相互に同じ寸法形状を有しており、大径部と小径部とを有した段付の円筒形状の容器本体22´aを含む。大径部において小径部とは反対側の端面には小径部よりも大きな径の凹所が形成されている。夫々の容器22´において小径部の外周面には環状の密封部材22´cが被嵌されている。複数の容器22´は、夫々の容器本体22´の密封部材22´cを伴った小径部を隣接する容器22´の容器本体22´の大径部の凹所に挿入させることに容器保持部材26´中に同軸上に直線状に配置されている。複数の容器22´の相互間の密封部材22´cは、複数の容器22´の夫々の中心孔を密封状態で相互に接続していて、夫々の中心孔を相互に等しい容量の分取溜まりとしている。容器保持部材26´が遠心分離分取装置10´の本体10aの外表面の上記所定の部分に固定された時に分取路16の他端の開口と対面する容器保持部材26´中の最も外側の容器22´の大径部の凹所にも環状の密封部材22´cが配置されていて、この密封部材22´cは上記所定の部分における分取路16の他端の開口と上記最も外側の容器22´の孔との密封した接続を保障する。
【0038】
第2の実施の形態の遠心分離分取装置10´は第1の実施の形態の遠心分離分取装置10と同様にして、試料導入路12に装着された流体試料保持部材18が保持している血液BLを遠心力を使用して複数の成分である血球類BCと血漿BPとに分離した後に、更に遠心力を利用して一方の成分である血漿BPを他方の成分である血球類BCから分離し分取路16の他端に分取することができ、さらに複数の容器22´の孔中に秤量することが出来る。
【0039】
そして、第2の実施の形態の遠心分離分取装置10´は第1の実施の形態の遠心分離分取装置10と同様の技術的な利点を得ることが出来る。
【0040】
第1及び第2の実施の形態に従った遠心分離分取装置10及び10´の夫々において、試料導入路12及び分離成分積層路14の一端とは相互に直線状に配置され、分離成分積層路14の他端を含む傾斜部は分離成分積層路14の一端に対し45度に傾斜し、そして試料導入路12及び分離成分積層路14の一端に対し分取路16は分離成分積層路14の傾斜部の側で90度の角度で交差している。
【0041】
しかしながら、この発明の目的を達成するには、遠心分離分取装置10及び10´の夫々において、試料導入路12,分離成分積層路14,そして分取路16は、以下の条件を満たしていれば良い。
【0042】
即ち、図5の(A)中に示されている如く第1遠心力が負荷される場合:
試料導入路12中で遠心力により試料導入路12の一端の流体試料出口に向かい流体試料の一例としての血液BLが移動する方向BLDと上記遠心力が向かう遠心力方向CFDとが為す第1角度θ1が、90度未満であり;
分離成分積層路14中で上記遠心力により流体試料の一例としての血液BLから分離された複数の成分の一例としての血球類BC及び血漿BPが積層される成分積層方向CLDと上記遠心力方向CFDとが為す第2角度θ2が、90度未満であり;そして、
上記遠心力方向CFDに分取路16が向けられた後に分取路16中に導入された成分の一例としての血漿BPが上記遠心力により分取路16の一端の分離成分入口から遠ざかる分取方向が、上記遠心力方向CFDに分離成分積層路14が向けられている間に、向いている分取前方向PRSDと上記遠心力方向CFDとが為す第3角度θ3が、90度以上180度未満である。ただし、第1角度θ1と第3角度θ3の合計は、180度未満である。
【0043】
さらに、図5の(B)中に示されている如く第2遠心力が負荷される場合:
上記遠心力方向CFDに分取路16が向けられた後に分離成分積層路14における成分積層方向(図5の(A)のCLD)が向いている成分積層後方向POCLDと上記遠心力方向CFDとが為す第4角度φ2が、90度未満であるとともに;
分取方向SDと上記遠心力方向CFDとが為す第5角度φ3が、90度未満である。
【0044】
またさらに、試料導入路12の全体,分離成分積層路14の一端の直線部及び他端を含む傾斜部,そして分取路16の全体の夫々は、直線状である必要はなく、以下の条件を満たすのであれば、湾曲していることが出来る。
【0045】
即ち、図6中に示されている如く:
試料導入路12中で上記遠心力により試料導入路12の一端である流体試料出口に向かい移動する流体試料の一例である血液BLが試料導入路12の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルBLTVと上記遠心力が向かう遠心力方向CFDと為す角度が、90度未満であり;
分離成分積層路14中で上記遠心力により流体試料の一例である血液BLから分離され積層される複数の成分の一例である血球類BC及び血漿BPが分離成分積層路14の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルBCTVと上記遠心力方向CFDとが為す角度が、90度未満であり;
上記遠心力向CFDに分取路16が向けられた後に分取路16中に導入され上記遠心力により分取路16の一端である分離成分入口から遠ざかる上記成分の一例である血漿BPが分取路16の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルBPTVが、上記遠心力方向CFDに分離成分積層路が向けられている間に、向く方向と上記遠心力方向CFDとが為す角度が、90度以上180度未満であり;
分離成分積層路14中で上記遠心力により流体試料の一例である血液BLから分離され積層される複数の成分の一例である血球BC及び血漿BPが分離成分積層路14の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルBCTVが、上記遠心力方向CFDに分取路16が向けられた後に、向く方向と上記遠心力方向CFDとが為す角度が90度未満であり、そして;
上記遠心力方向CFDに分取路16が向けられた後に分取路16中に導入され上記遠心力により分取路16の一端である分離成分入口から遠ざかる上記成分の一例である血漿BPが分取路16の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルBPTVと上記遠心力方向CFDとが為す角度が、90度未満である。
【0046】
さらに、この発明の目的を達成するには、遠心分離分取装置10及び10´の夫々において、試料導入路12,分離成分積層路14,そして分取路16は、以下の条件を満たす必要がある。
【0047】
図7中に示されている如く、分離成分積層路14中で流体試料の一例である血液BLから分離された複数の成分の一例である血球類BC及び血漿BPから、1つの成分の一例である血漿BPを残りの成分の一例である血球類BCから分取路16中に分取するために、第1及び第2の実施の形態に従った遠心分離分取装置10及び10´の夫々を、分取路16を遠心力方向CFDに向けた状態で遠心力発生装置の回転部材により回転部材の回転中心RCの周りに公転させた時、図7中に示されている如く、この公転により分離成分積層路14中の血球類BCの表面が生じる等遠心力面EQCFSが分離成分積層路14の一端に対する分取路16の一端の交差位置を越えないことである。
【0048】
次に、図8の(A)及び(B)を参照しながら、図1の(A)及び(B)中に示されている遠心分離分取装置10の試料導入路12及び分離成分積層路14、そして次に分取路16に遠心力を作用させるのに使用される、この発明の一実施の形態に従った遠心力発生装置30の構造を説明する。
【0049】
遠心力発生装置30は:回転駆動源32からの回転力が伝達されて所定の回転中心線の回りに回転する回転部材34と;回転部材34において回転中心線CLに対し対称に配置された少なくとも1対、この実施の形態では1対、の試料台36A,36Bと;そして、回転部材34に対し1対の試料台36A,36Bを所定の第1の回転角位置と所定の第2の回転角位置との間で相互に正反対の方向に回動させる試料台回動機構38と;を備えている。
【0050】
1対の試料台36A,36Bの夫々には、遠心分離分取装置10を、試料導入路12,分離成分積層路14,そして分取路16が回転中心線CLと交差する、この実施の形態では直交する、面内に配置されるよう、支持し着脱可能に固定することが出来る。1対の試料台36A,36Bの夫々は、回転部材34の回転により回転中心線CLの周囲を公転する。
【0051】
回転部材34は円板形状をしていて、垂直上方に延出している回転中心軸34aを有している。回転中心軸34aは、図示されていない軸受を介して第1の回転中心軸支持体40に回転自在に支持されている。回転駆動源32は回転部材34の上方に第1の回転駆動源支持体42により支持されていて、両方向電動機により構成されている。両方向電動機の出力軸32aが、回転中心軸34aの上端に接続されている。
【0052】
1対の試料台36A,36Bの夫々は回転部材34の上面に位置していて、回転部材34に対し回転中心線CLと同じ方向に相互に平行に延出した回転中心軸44を有している。回転中心軸44は回転部材34により回転自在に支持されている。回転部材34の下面側において回転中心軸44には、回転力入力歯車46が同心的に固定されている。
【0053】
回転部材34の下方には試料台回転駆動歯車48が回転部材34と同心的に配置されている。試料台回転駆動歯車48は、垂直下方に延出している回転中心軸48aを有していている。回転中心軸48aは、図示されていない軸受を介して第2の回転中心軸支持体50に回転自在に支持されている。第2の回転中心軸支持体50の下方で、試料台回転駆動源52が第2の回転駆動源支持体54により支持されている。試料台回転駆動源52は両方向ステップモータにより構成されていて、両方向ステップモータの出力軸52aが回転中心軸48aの下端に接続されている。回転中心軸48aにはさらにロータリーエンコーダ56が取り付けられている。
【0054】
試料台回転駆動歯車48は、一方の試料台36Aの回転力入力歯車46と直接かみ合わされていて、他方の試料台36Bの回転力入力歯車46とは、回転部材34の下面に回転自在に支持されている反転歯車58を介して間接的にかみ合わされている。試料台回転駆動歯車48が一方向に回転すると、一方の試料台36Aは上記一方向とは反対の他方向に回転し、同時に他方の試料台36Bは上記一方向に回転する。しかしながら、一方の試料台36Aの回転角度と他方の試料台36Bの回転角度とは同じになるよう、一方の試料台36Aの回転力入力歯車46,反転歯車58,そして他方の試料台36Bの回転力入力歯車46の夫々の歯数が設定されている。
【0055】
回転部材34の下面にはさらに、回転中心線CLに対し対称に1対の連結ピン34bが固定されている。試料台回転駆動歯車48の上面には、カム部材60が固定されている。カム部材60は、回転中心線CLに対し同心的な仮想円上で所定の回転角度の間に延出した1対のカム溝60aを有していて、1対のカム溝60aは回転中心線CLに対し対称に配置されている。
【0056】
カム部材60の上面と回転部材34の下面との間には、図示しないクラッチ部材が介在されている。
【0057】
回転部材34の下面にはさらに、回転中心線CLと1対の軸回転力入力歯車46の回転中心軸44の回転中心線とを結ぶ直線上で1対の軸回転力入力歯車46の外側に配置されている相互に同じ1対の偏心錘歯車62A,62Bが回転可能に配置されている。一方の偏心錘歯車62Aは一方の軸回転力入力歯車46に噛みあわされていて、他方の偏心錘歯車62Bは他方の軸回転力入力歯車46に噛みあわされている。
【0058】
試料台回動機構38は、回転部材34の1対の連結ピン60と協働する1対のカム溝60aを有したカム部材60を伴った回転部材34,1対の試料台36A,36Bの1対の回転力入力歯車46,そして反転歯車58の組み合わせによって構成されている。
【0059】
次に、図9の(A)及び(B)をさらに参照しながら、図8の(A)及び(B)を参照しながら前述した遠心力発生装置30の動作を説明する。
【0060】
図9の(A)は、遠心力発生装置30の初期状態を示している。この状態においては、回転部材34の為の回転駆動源32及び試料台回転駆動歯車48の為の試料回転駆動源52の夫々の動作は停止しており、1対の偏心錘歯車62A,62Bは回転中心線CLの径方向において夫々の偏心錘64を相互に正反対の方向を向けている。また、回転部材34の下面の1対の連結ピン34bが、カム部材60の1対のカム溝60aの夫々において、図9の(A)のように回転駆動源32から試料回転駆動源52を見たときの反時計回り方向の端に当接している。さらに、カム部材60と回転部材34との間の図示しないクラッチ部材は、カム部材60と回転部材34とを相互に一体的に回転可能に接続している。回転部材34におけるこの時の1対の試料台46の夫々の回転角位置を第1の回転角位置と規定する。
【0061】
この状態の間に、1対の試料台46上に、夫々の試料導入路12中に流体試料である血液が流体試料保持部材18によって導入された1対の遠心分離分取装置10が図9の(A)中に示されているように載置され、そして着脱可能に固定される。
【0062】
即ち、1対の遠心分離分取装置10は、夫々の試料導入路12及び分離成分積層路14の直線部が回転中心線CLの径方向の内方に向かうよう配置される。図3の(A)を参照。
【0063】
次に、回転部材34の為の回転駆動源32に通電され、そして試料台回転駆動歯車48の為の試料台回転駆動源52には通電されない。この結果、回転部材34が図9の(A)において矢印UCDで示す反時計回り方向に回転され、1対の試料台46上の1対の遠心分離分取装置10もまた上記反時計回り方向UCDに回転中心線CLの周囲を公転する。
【0064】
この間に、回転部材34の回転は、図示しないクラッチ部材によりカム部材60に伝達され、カム部材60は回転部材34と一体に回転する。従って、回転部材34の回転中に、試料台回転駆動歯車48は回転部材34に対し相対的に回転しない。また、1対の偏心錘歯車62A,62Bは、回転部材34の回転に伴い夫々の偏心錘64に負荷される遠心力により夫々の偏心錘64を回転中心線CLの径方向において相互に正反対の方向を向けているよう保持され、回転部材34に対し相対的に回転(自転)しない。この結果、1対の遠心分離分取装置10が固定された1対の試料台46も、回転部材34に対し相対的に回転(自転)しない。
【0065】
1対の遠心分離分取装置10の夫々の試料導入路12中の流体試料保持部材18に保持されている血液BLは、遠心力により試料導入路12の一端である流体試料出口から分離成分積層路14中に分離成分積層路14の一端である流体試料入口を介して流入され、さらには分離成分積層路14中で上記遠心力の作用により複数の成分である血球類BC及び血漿BPに分離され積層される。図3の(B)を参照。
【0066】
次に、回転部材34の為の回転駆動源32に対する通電が停止され、回転部材34の上述した回転が停止される。1対の遠心分離分取装置10に遠心力が作用しなくなると、1対の遠心分離分取装置10の夫々の分離成分積層路14中で分離されて積層されている複数の成分、即ち血球類BC及び血漿BP、の中で分取通路16の一端に近い一方の成分である血漿BPが、分取路16の一端である分離成分入口に流入するようになる。
【0067】
また、回転部材34とカム部材60との間の図示しないクラッチ部材が遮断される。この後に試料台回転駆動歯車48の為の試料台回転駆動源52に通電され、回転部材34に対し試料台回転駆動歯車48が図9の(A)において矢印UCDで示す反時計回り方向に回転される。試料台回転駆動歯車48のこの相対的な回転は、回転部材34の下面の1対の連結ピン34bに対し、カム部材60の1対のカム溝60aの夫々において、図9の(B)のように回転駆動源32から試料回転駆動源52を見たときの時計回り方向の端が当接した時点で、停止される。さらに、カム部材60と回転部材34との間の図示しないクラッチ部材が、カム部材60と回転部材34とを相互に一体的に回転可能に再び接続する。
【0068】
試料台回転駆動歯車48のこの回転は、1対の試料台36A,36Bの回転力入力歯車46に直接的に又は反転歯車58を介して間接的に伝達される。そして、一方の試料台36Aの回転入力歯車46を図9の(A)中に示されている第1の回転角位置から時計回り方向に90度回転させ、また、他方試料台36Bの回転入力歯車46を図9の(A)中に示されている第1の回転角位置から反時計回り方向に90度回転させる。さらに、1対の試料台36A,36Bの回転力入力歯車46のこのような回転は、1対の偏心錘歯車62A,62Bの1回転を生じさせる。即ち、この1回転の後の1対の偏心錘歯車62A,62Bは、図9の(B)中に示されているように、図9の(A)中に示されているのと同様に、回転中心線CLの径方向において夫々の偏心錘64を相互に正反対の方向を向けている。
【0069】
図9の(A)中に示されている第1の回転角位置から時計回り方向又は反時計回り方向に90度回転された1対の試料台36A,36B上の1対の遠心分離分取装置10は、図9の(B)中に示されている如く、夫々の試料導入路12及び分離成分積層路14の直線部に代わり夫々の分取路16が回転中心線CLの径方向の外方に向かうよう配置される。回転部材34におけるこの時の1対の試料台46の夫々の回転角位置を第2の回転角位置と規定する。
【0070】
次に、回転部材34の為の回転駆動源32に前述したのとは逆方向に再度通電され、そして試料台回転駆動歯車48の為の試料台回転駆動源52には通電されない。この結果、回転部材34が図9の(B)において図9の(A)の場合とは逆の矢印CDで示す時計回り方向に回転され、1対の試料台46上の1対の遠心分離分取装置10もまた上記時計回り方向CDに回転中心線CLの周囲を公転する。
【0071】
この間に、回転部材34の回転は、図示しないクラッチ部材によりカム部材60に伝達され、カム部材60は回転部材34と一体に回転する。従って、回転部材34の回転中に、試料台回転駆動歯車48は回転部材34に対し相対的に回転しない。また、1対の偏心錘歯車62A,62Bは、回転部材34の回転に伴い夫々の偏心錘64に負荷される遠心力により夫々の偏心錘64を回転中心線CLの径方向において相互に正反対の方向を向けているよう保持され、回転部材34に対し相対的に回転(自転)しない。この結果、1対の遠心分離分取装置10が固定された1対の試料台46も、回転部材34に対し相対的に回転(自転)しない。
【0072】
1対の遠心分離分取装置10の夫々において、前回の遠心により分離成分積層路14中で分取通路16の一端に近い位置に積層され分取路16の一端である分離成分入口に流入していた一方の成分である血漿BPが、遠心力の作用により分取路16の一端から他端に向かい遠ざかる。この結果、血漿BPは、分離成分積層路14中で分取通路16の他端のプラグ部材20に近い位置に残留された他方の成分である血球類BCから完全に分離される。分取路16の他端に到達した血漿BPは、上記他端において、容器保持部材26中に保持されている複数の容器22中に分取され秤量される。図3の(D)を参照。
【0073】
次に、回転部材34の為の回転駆動源32に対する通電が停止され、回転部材34の上述した回転が停止される。1対の遠心分離分取装置10に遠心力が作用しなくなっても、分離成分積層路14中で分取通路16の他端のプラグ部材20に近い位置に残留された他方の成分である血球類BCは分取路16の一端である分離成分入口に流入しない。
【0074】
また、回転部材34とカム部材60との間の図示しないクラッチ部材が遮断される。この後に試料台回転駆動歯車48の為の試料台回転駆動源52に通電され、回転部材34に対し試料台回転駆動歯車48が図9の(B)において矢印CDで示す時計回り方向に回転される。試料台回転駆動歯車48のこの相対的な回転は、回転部材34の下面の1対の連結ピン34bに対し、カム部材60の1対のカム溝60aの夫々において、図9の(A)のように回転駆動源32から試料回転駆動源52を見たときの反時計回り方向の端が当接した時点で、停止される。さらに、カム部材60と回転部材34との間の図示しないクラッチ部材が、カム部材60と回転部材34とを相互に一体的に回転可能に再び接続する。
【0075】
試料台回転駆動歯車48のこの回転は、1対の試料台36A,36Bの回転力入力歯車46に直接的に又は反転歯車58を介して間接的に伝達される。そして、一方の試料台36Aの回転入力歯車46を図9の(B)中に示されている第2の回転角位置から反時計回り方向に図9の(A)中に示されている第1の回転角位置まで90度回転させ、また、他方試料台36Bの回転入力歯車46を図9の(B)中に示されている第2の回転角位置から反時計回り方向に図9の(A)中に示されている第1の回転角位置まで90度回転させる。さらに、1対の試料台36A,36Bの回転力入力歯車46のこのような回転は、1対の偏心錘歯車62A,62Bの1回転を生じさせる。即ち、この1回転の後の1対の偏心錘歯車62A,62Bは、図9の(A)中に示されているように、回転中心線CLの径方向において夫々の偏心錘64を相互に正反対の方向を向けている。
【0076】
図9の(B)中に示されている第1の回転角位置から反時計回り方向又は時計回り方向に90度回転された1対の試料台36A,36Bは1対の遠心分離分取装置10とともに、図9の(A)中に示されている第1の回転角位置に復帰する。このとき、遠心力発生装置30は、図9の(A)中に示されている初期状態に復帰する。
【0077】
この後に、1対の試料台36A,36Bから1対の遠心分離分取装置10が取り外され、さらに1対の遠心分離分取装置10の夫々から容器保持部材26が取り外される。取り外された容器保持部材26からは、複数の容器22を取り外すことが出来る。図3の(E)を参照。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】(A)は、この発明の一実施の形態に従った遠心分離分取装置の概略的な水平断面図であり;そして、 (B)は、(A)に概略的に示されている遠心分離分取装置の分解図である。
【図2】(A)は、図1の(A)中に示されている遠心分離分取装置の所定容量の容器の拡大された水平断面図であり;そして、 (B)は、図2の(A)中に示されている容器の正面図である。
【図3】(A)は、図1の(A)中に示されている遠心分離分取装置を、試料導入路及び分離成分積層路が遠心力の作用する方向に向けられている間に試料導入路に液体試料としての血液が導入された状態で、概略的に示す水平断面図であり; (B)は、図3の(A)中に示されている遠心分離分取装置に遠心力が負荷されて試料導入路から血液が分離成分積層路中に導入され、分離成分積層路中で複数の成分である血球類と血漿とに分離されて血球類と血漿とが積層された状態を、概略的に示す水平断面図であり; (C)は、図3の(B)中に示されている遠心分離分取装置を試料導入路及び分離成分積層路に代わり分取路を遠心力の作用する方向に向けるよう回動させることにより分離成分積層路から分取路中に血漿を導入した状態を、概略的に示す水平断面図であり; (D)は、図3の(C)中に示されている遠心分離分取装置に遠心力が負荷されて分取路中の血漿を分離成分積層路中の血球類から遠ざけて分離し所定容量の複数の容器に分取した状態を、概略的に示す水平断面図であり;そして、 (E)は、図3の(D)中に示されている遠心分離分取装置から複数の容器を取り外した状態を、概略的に示す水平断面図である。
【図4】図1の(A)及び(B)中に示されているこの発明の一実施の形態に従った遠心分離分取装置の変形例の概略的な水平断面図である。
【図5】(A)は、この発明に従った遠心分離分取装置において試料導入路及び分離成分積層路が遠心力の作用する方向に向けられている間に、試料導入路,分離成分積層路,そして分取路が上記遠心力と協働して夫々の所望の機能を果たすのに必要な遠心力作用方向に対する角度条件を概略的に示す平面図であり;そして、 (B)は、この発明に従った遠心分離分取装置において試料導入路及び分離成分積層路に代わり分取路が遠心力の作用する方向に向けられている間に、試料導入路,分離成分積層路,そして分取路が上記遠心力と協働して夫々の所望の機能を果たすのに必要な遠心力作用方向に対する角度条件を概略的に示す平面図である。
【図6】この発明に従った遠心分離分取装置において試料導入路,分離成分積層路,そして分取路の夫々の中の流体試料又は分離成分が、遠心力の作用により試料導入路,分離成分積層路,そして分取路の夫々の中で適切に移動することが出来る夫々の内周面の任意の位置における接線ベクトル条件を概略的に示す平面図である。
【図7】この発明に従った遠心分離分取装置において試料導入路及び分離成分積層路に代わり分取路が遠心力の作用する方向に向けられている間に、分離成分積層路中に残っている成分を遠心力により分取路中に流入させない条件を概略的に示す平面図である。
【図8】(A)は、図1の(A)及び(B)中に示されている遠心分離分取装置の試料導入路及び分離成分積層路、そして次に分取路に遠心力を作用させるのに使用される、この発明の一実施の形態に従った遠心力発生装置の概略的な側面図であり;そして、 (B)は、図8の(A)中に示されている遠心力発生装置中で1対の試料台の回転角度位置を所定の範囲内で変化させる歯車列を概略的に示す平面図である。
【図9】(A)は、図8の(B)中に示されている歯車列により、図8の(A)中に示されている1対の試料台に支持されている1対の遠心分離分取装置が試料導入路及び分離成分積層路を遠心力の作用する方向に向けられている状態を概略的に示す平面図であり;そして、 (B)は、図8の(B)中に示されている歯車列により、図8の(A)中に示されている1対の試料台に支持されている1対の遠心分離分取装置が試料導入路及び分離成分積層路に代わり分取路を遠心力の作用する方向に向けられている状態を概略的に示す平面図である。
【符号の説明】
【0079】
10,10´…遠心分離分取装置、10a…本体、12…試料導入路、14…分離成分積層路、16…分取路、18…流体試料保持部材、18a…貫通孔、20…プラグ部材、22,22´…容器、22a,22´a…容器本体、22b…ピストン、22´c…密封部材、24…密封部材、26,26´…容器保持部材、BL…血液(流体試料)、BC…血球類(成分)、BP…血漿(成分)、CFD…遠心力方向、30…遠心力発生装置、32…回転駆動源、32a…出力軸、34…回転部材、34a…回転中心軸、34b…連結ピン、CL…回転中心線、36A,36B…試料台、38…試料台回動機構、40…第1の回転中心軸支持体、42…第1の回転駆動源支持体、44…回転中心軸、46…回転力入力歯車、48…試料台回転駆動歯車、48a…回転中心軸、50…第2の回転中心軸支持体、52…試料台回転駆動源、52a…出力軸、54…第2の回転中心軸支持体、56…ロータリーエンコーダ、58…反転歯車、60…カム部材、60a…カム溝、62A,62B…偏心錘歯車(偏心部材)、64…偏心錘。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離される流体試料が導入され、導入された流体試料に第1の回転角位置で第1遠心力が負荷されたときに上記第1遠心力により上記流体試料が流出する流体試料出口を有する試料導入路と;
上記第1遠心力により試料導入路の流体試料出口から流出した流体試料が流入される流体試料入口を有しており、流体試料入口から流入した上記流体試料に負荷された上記第1遠心力により上記流体試料から複数の成分が分離され、上記複数の成分が積層する分離成分積層路と;そして、
試料導入路の流体試料出口と分離成分積層路の流体試料入口との間に位置する分離成分入口を有しており、第2の回転角位置で第2遠心力が負荷されたときに分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離されて採取される分取路と;
を備えている、ことを特徴とする遠心分離分取装置。
【請求項2】
試料導入路中で流体試料出口に向かい流体試料が移動する方向と上記第1遠心力が向かう遠心力方向とが為す第1角度が、90度未満であり、
分離成分積層路中で流体試料から分離された複数の成分が積層される成分積層方向と上記第2遠心力方向とが為す第2角度が、90度未満であり、
上記第1遠心力が作用する場合の上記分取路中に導入された上記成分が分離成分入口から遠ざかる分取方向と上記第1遠心力方向とが為す第3角度が、90度以上180度未満であり、そして、
第1角度と第3角度の合計が、180度未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離分取装置。
【請求項3】
上記第2遠心力が作用する場合の分離成分積層路における成分積層方向と上記第2遠心力が作用する方向とが為す第4角度が90度未満であるとともに、
分取方向と上記第2遠心力が作用する方向とが為す第5角度が90度未満である、
ことを特徴する請求項2に記載の遠心分離分取装置。
【請求項4】
試料導入路中で流体試料出口に向かい移動する流体試料が試料導入路の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルと上記第1遠心力が作用する方向とが為す角度が、90度未満であり、
分離成分積層路中で流体試料から分離され積層される複数の成分が分離成分積層路の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルと上記第1遠心力が作用する方向とが為す角度が、90度未満であり、
上記第2遠心力が作用する場合の分取路中に導入され分離成分入口から遠ざかる上記成分が分取路の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルと上記第1遠心力が作用する方向とが為す角度が、90度以上180度未満であり、
分離成分積層路中で流体試料から分離され積層される複数の成分が分離成分積層路の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルと上記第2遠心力が作用する方向とが為す角度が90度未満であり、そして、
上記第2遠心力が作用する場合の分取路中に導入され分離成分入口から遠ざかる上記成分が分取路の内周面の全ての位置において発生させる接線ベクトルと上第2記遠心力が作用する方向とが為す角度が、90度未満である、
ことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離分取装置。
【請求項5】
上記第2遠心力が作用する場合の分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分において流体試料入口に最も近い表面は上記第2遠心力が作用する方向において流体試料入口と同じ位置又は流体試料入口から遠ざかる方向の位置にあって、上記第2遠心力が作用する前と後の両方において流体試料入口を越えて分取路の分離成分入口中に流入しない、ことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離分取装置。
【請求項6】
分取路において分離成分入口から遠い位置に、上記第2遠心力が作用する場合に分離成分入口から分取路に導入され分離成分入口から遠ざけられた上記成分が貯められる少なくとも1つの所定容量の容器が取り外し可能に設けられている、ことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離分取装置。
【請求項7】
分取路において分離成分入口から遠い位置に、上記第2遠心力が作用する場合に分離成分入口から分取路に導入され分離成分入口から遠ざけられた上記成分が貯められる複数の所定容量の容器が取り外し可能に設けられており、
複数の所定容量の容器は、分取路中を分離成分入口から遠ざかるよう移動する上記成分の移動方向と交差する方向に並べられている、ことを特徴とする請求項6に記載の遠心分離分取装置。
【請求項8】
分取路において分離成分入口から遠い位置に、上記第2遠心力が作用する場合に分離成分入口から分取路に導入され分離成分入口から遠ざけられた上記成分が貯められる複数の所定容量の容器が取り外し可能に設けられており、
上記複数の容器は、分取路中を分離成分入口から遠ざかるよう移動する上記成分の移動方向に沿い並べられている、ことを特徴とする請求項6に記載の遠心分離分取装置。
【請求項9】
上記複数の容器は、上記成分の上記移動方向に相互に隣接して配置され、上記移動方向において相互に接続される分取溜まりを有している、ことを特徴とする請求項8に記載の遠心分離分取装置。
【請求項10】
分離成分積層路において、流体試料入口から流入した上記流体試料から複数の成分が分離され上記複数の成分が積層する方向で流体試料入口から遠い位置に着脱可能に設けられた封止プラグを備えていて、封止プラグが上記遠い位置から分離されたときに分離成分積層路は上記遠い位置を介して外部空間に連通される、ことを特徴とする請求項1に記載の遠心分離分取装置。
【請求項11】
回転駆動源からの回転力が伝達されて所定の回転中心線の回りに回転する回転部材と;
回転部材において回転中心線に対し対称に配置され、請求項1乃至9のいずれか1項に記載の遠心分離分取装置を試料導入路,分離成分積層路,そして分取路が上記回転中心線と交差する面内に配置されるよう夫々が着脱可能に支持し、回転部材の回転により回転中心線の周囲を公転する少なくとも1対の試料台と;そして、
回転部材に対し少なくとも1対の試料台を所定の第1の回転角位置と所定の第2の回転角位置との間で相互に正反対の方向に回動させる試料台回動機構と;
を備えていて、
少なくとも1対の試料台に支持されている少なくとも1対の遠心分離分取装置の夫々の試料導入路,分離成分積層路,そして分取路は、
少なくとも1対の試料台が第1の回転角位置に配置されている間に回転部材が回転されることにより、試料導入路中の流体試料に作用される第1遠心力により試料導入路中の流体試料を流体試料出口から分離成分積層路中に流体試料入口を介して流入させるとともに分離成分積層路中に流入した流体試料を上記第1遠心力の作用により複数の成分に分離させ積層させ、
次に少なくとも1対の試料台が第1の回転角位置から第2の回転角位置へと回転されるとともに回転部材が回転されることにより、分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中で流体試料入口に最も近い成分を分離成分入口から分取路中に導入し、第2遠心力を作用させることにより上記導入された成分を分離成分入口から遠ざけ上記導入された成分を分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離させて採取させる、
ことを特徴とする遠心力発生装置。
【請求項12】
夫々が回転部材に回転可能に設けられていて、夫々が夫々の回転中心線に対し偏心した偏心錘を有しており、試料台回動機構による少なくとも1対の試料台の夫々の第1の回転角位置と第2の回転角位置との間の回動により回転し、夫々の試料台の第1の回転角位置及び第2の回転角位置への配置により夫々の偏心錘を回転部材の回転中心線と夫々の回転中心線とを通過する直線上で回転部材の回転中心線から夫々の回転中心線よりも外側に配置する少なくとも1対の偏心部材を備えている、ことを特徴とする請求項11に記載の遠心力発生装置。
【請求項13】
回転部材において、回転部材の回転中心線と少なくとも1対の試料台の夫々の回転中心線とを通過する直線上で回転部材の回転中心線から少なくとも1対の試料台の夫々よりも遠くに少なくとも1対の偏心部材の夫々の回転中心線が配置されている、ことを特徴とする請求項12に記載の遠心力発生装置。
【請求項14】
夫々の一端が相互に接続されている試料導入路,分離成分積層路,そして分取路を含んでいて、試料導入路は遠心分離される流体試料が導入される他端を有し、分離成分積層路は閉塞された他端を有し、分取路は少なくとも1つの所定容量の容器が着脱可能に設けられた他端を有しており、
試料導入路及び分離成分積層路は、試料導入路中の流体試料に所定の方向に向かう第1遠心力が作用したときに上記流体試料を試料導入路の上記一端を流体試料出口として試料導入路から流出させるとともに分離成分積層路の上記一端を流体試料入口として分離成分積層路中に流入させ、分離成分積層路中の上記流体試料に上記第1遠心力を作用させて上記流体試料から複数の成分を分離させるとともに上記複数の成分を分離成分積層路の上記他端で上記第1遠心力の作用する方向に積層させるよう配置されていて、
分取路は、分離成分積層路の上記他端に上記複数の成分が積層された後に第2遠心力を作用した場合分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中で分離成分積層路の上記一端の流体試料入口に最も近い成分が分離成分入口から導入され、導入された成分に上記第2遠心力が作用されることにより上記導入された成分が分離成分入口から遠ざかり上記導入された成分が分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離されて分取路の上記他端の少なくとも1つの所定容量の容器に採取するよう配置されている、
遠心分離分取装置を準備し;
試料導入路の上記他端に遠心分離される流体試料を導入し;
遠心分離分取装置の試料導入路中の流体試料に前記第1遠心力を作用させて上記流体試料を試料導入路の上記一端を流体試料出口として試料導入路から流出させるとともに分離成分積層路の上記一端を流体試料入口として分離成分積層路中に流入させ、分離成分積層路中の上記流体試料に上記第1遠心力をさらに作用させて上記流体試料から複数の成分を分離させるとともに上記複数の成分を分離成分積層路の上記他端で上記遠心力の作用する方向に積層させ;
分離成分積層路の上記他端に上記複数の成分が積層された後に前記第2遠心力を作用させて分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中で分離成分積層路の上記一端の流体試料入口に最も近い成分を分取路の上記一端の分離成分入口を介して分取路中に導入し、導入された成分に上記第2遠心力を作用させることにより上記導入された成分を分離成分入口から遠ざけて分離成分積層路中の積層されている上記複数の成分の中の残りの成分から分離し分取路の上記他端の少なくとも1つの所定容量の容器に採取させ;そして、
遠心分離分取装置に対する第1および第2遠心力の作用を停止させた後に、上記成分を採取した上記少なくとも1つの所定容量の容器を分取路の上記他端から取り外す;
ことを特徴とする遠心分離分取方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−86919(P2008−86919A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−271057(P2006−271057)
【出願日】平成18年10月2日(2006.10.2)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】