説明

遠心分離機、遠心分離機用ロータ

【課題】ロータと回転ヘッドの簡単な着脱と、確実な固定の両方を実現する。
【解決手段】本発明の遠心分離機のロータは、回転ヘッドが挿入されるロータ穴と雄型部材とを備える。雄型部材は、ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が回転軸の下方にあり、重心よりも下方の回転シャフトと反対側に凸部を有する。回転ヘッドは、上部に回転シャフトの軸心を中心とする円筒状であり、内側面に環状の凹部を有するロータ結合部を備える。回転シャフトが停止した状態でロータが回転ヘッドの上に配置されているときには、雄型部材はロータ結合部の内側にあり、かつ、雄型部材の凸部がロータ結合部の凹部と対向している。回転シャフトが回転すると、凸部が凹部に嵌るように可動する。また、凸部が凹部に嵌っているときに、ロータを回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合に、凸部には凹部に嵌る方向に力が加わる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、軸心が鉛直方向である回転シャフトの上部に取り付けられた回転ヘッドと、回転ヘッドの上部に配置されるロータとを備えた遠心分離機に関する。特に、ロータと回転ヘッドとの着脱方法および固定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機は、軸心が鉛直方向である回転シャフト、回転シャフトを回転させるためのモータ、回転シャフトの上部に取り付けられた回転ヘッド、試料を入れるためのロータ、ロータの上部を覆う蓋、全体を覆う筺体から構成されている。そして、ロータは、回転シャフトに着脱可能である。着脱の最も一般的な方法はネジ止めであるが、回転シャフト、回転ヘッド、ロータが回転する際に生じる遠心力を利用して、回転中はロータが回転ヘッドから外れないようにした遠心分離機もある。具体的には、特許文献1、特許文献2、特許文献3などがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実公昭42−18399号公報
【特許文献2】特許第4239119号明細書
【特許文献3】特許第3861476号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1、特許文献2、特許文献3は、いずれかの部材が遠心力で外側に移動することを利用し、回転中はロータが回転ヘッドから外れないようにしている。しかし、回転によって生じる力は遠心力だけではなく、高速回転時には揚力も生じる。特に、蓋をしないで回転させてしまった場合、蓋を確実に止めないで回転させてしまった場合や、大きなアンバランスが生じた状態で回転させてしまった場合など、本来の使い方でない場合に、想定外のロータを離脱させる力(ロータの回転によって発生する揚力および振動などのロータを持ち上げる力)が発生し、ロータが外れてしまう事故が発生している。つまり、特許文献1、特許文献2、特許文献3のような遠心力だけを利用した構造では、誤操作がありえることも考慮すると、高速回転させたときに十分な安全性は確保できていない。
【0005】
本願発明は、このような状況を鑑みてなされたものであり、遠心分離機において、ロータと回転ヘッドの簡単な着脱と、ロータを離脱させる力も考慮したロータと回転ヘッドの確実な固定の両方を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の遠心分離機は、軸心が鉛直方向である回転シャフトの上部に取り付けられた回転ヘッドと、回転ヘッドの上部に配置されるロータとを備える。ロータは、回転ヘッドが挿入されるロータ穴と雄型部材とを備える。雄型部材は、ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が回転軸の下方にあり、重心よりも下方の回転シャフトと反対側に凸部を有する。回転ヘッドは、上部に回転シャフトの軸心を中心とする円筒状であり、内側面に環状の凹部を有するロータ結合部を備える。そして、回転シャフトが停止した状態でロータが回転ヘッドの上に配置されているときには、雄型部材はロータ結合部の内側にあり、かつ、雄型部材の凸部がロータ結合部の凹部と対向している。回転シャフトが回転すると、凸部が凹部に嵌るように可動する。また、凸部が凹部に嵌っているときに、ロータを回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合に、凸部には凹部に嵌る方向に力が加わる。例えば、凹部の上側の面である凹部上面の法線が、回転軸よりも軸心に近い位置を通るように形成されている。つまり、ロータに離脱力が働いて上方に持ち上げられた場合に、凸部の上側の面(凸部接触面)と凹部上面とが接触する面の法線が、回転軸の中心よりも軸心に近い位置を通るように回転軸が配置されている。
【発明の効果】
【0007】
本発明の遠心分離機によれば、ロータを回転ヘッドに取り付ける際にネジ止めの必要がない。また、ロータを回転ヘッドから取り外す際にもネジを外す必要がない。さらに、回転中に想定していないロータを回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合にも、凸部と凹部とが離れない。したがって、簡単な着脱と確実な固定の両方を実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の遠心分離機の内部の構成を示す断面図。
【図2】ロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図3】ロータのフレームと雄型部材の部分を拡大した図。
【図4】回転しているときの雄型部材と回転ヘッドとの関係を示す断面図。
【図5】ロータ20を離脱させる力を、凸部62−1が凹部8に嵌る方向の力に変換する原理を説明する図。
【図6】変形例1のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図7】変形例1のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面斜視図。
【図8】回転シャフトが停止した状態での変形例2のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図9】変形例2のフレーム21を示した図。
【図10】回転シャフトが回転した状態での変形例2のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図11】回転シャフトが停止しても雄型部材がロータ結合部の内側に戻らない状態のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図12】雄型部材をロータ結合部の内側に戻した状態のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図13】変形例4のロータのフレームと雄型部材とガイドピンの部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図。
【図14】変形例4の回転ヘッドを上部側から見た平面図。
【図15】変形例4のフレームと雄型部材とガイドピンを拡大した図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、同じ機能を有する構成部には同じ番号を付し、重複説明を省略する。
【実施例1】
【0010】
図1は、本発明の遠心分離機の内部の構成を示す断面図である。この図には、軸心9が鉛直方向である回転シャフト3と、回転シャフト3の上部に取り付けられた回転ヘッド2と、回転ヘッド2の上部に配置されるロータ20と、ロータ20の上部を覆う蓋25が示されている。なお、図示されていないが、回転シャフト3を回転させるためのモータ、全体を覆うための筺体なども、遠心分離機1の構成要素である。
【0011】
ロータ20の上部側は試料を入れる部分であり、試料挿入部36を複数備えている。また、ロータ20は、回転ヘッド2が挿入されるロータ穴28、29、フレーム21、雄型部材23−1、23−2、ガイドピン24なども備える。なお、ロータ穴28は直径が一定の断面円形の穴であり、ロータ穴29は直径が穴の内部ほど小さくなった断面円形の穴である。また、この図では雄型部材は2つ配置されているが、1つでもよいし、3つ以上でもよい。雄型部材の数は、ロータ20の大きさなどを考慮して適宜決めればよい。雄型部材23−1、23−2は、ロータ穴28の内部に水平に配置された回転軸22−1、22−2を中心として回転自在であり、重心が回転軸22−1、22−2の下方にあり、重心よりも下方の回転シャフト3の軸心9と反対側に凸部62−1、62−2を有する。なお、ロータ20を組み立てる際には、まず雄型部材23−1、23−2をフレーム21に取り付け、その後フレーム21をロータ20に取り付ければ、製造が容易である。また、ロータ20は、軸心9を中心とした断面円形の貫通穴30、31も備えており、フレーム21に形成されている貫通穴31にはネジ(ネジ部)が形成されている。
【0012】
回転ヘッド2は、上部にロータ結合部6と駆動ピン7を備える。ロータ結合部6は、回転シャフトの軸心9を中心とする円筒状であり、内側面に環状の凹部8を有する。また、回転ヘッド2は、ロータ結合部6の外側に、ロータ穴28に嵌る直径が一定で断面円形の円柱部分4と、ロータ穴29に嵌る直径が下部ほど大きくなった断面円形の円錐台部分5も有する。蓋25は、つまみ26と、つまみ26を回転させることによりフレーム21の貫通穴31にネジ止めするためのネジ部27を有している。また、ガイドピン24は駆動ピン7の間しか移動できないので、回転ヘッド2が回転すると、駆動ピン7からガイドピン24に動力が伝えられ、ロータ20が回転する。また、回転ヘッド2が停止するときも、駆動ピン7によってガイドピン24の移動範囲が限定されるので、ロータ20は回転ヘッド2と一緒に停止する。
【0013】
回転シャフト3が停止した状態でロータ20が回転ヘッド2の上に配置されているときには、雄型部材23−1、23−2の重心が回転軸22−1、22−2の真下となる。このとき、雄型部材23−1、23−2はロータ結合部6の内側にあり、かつ、雄型部材23−1、23−2の凸部62−1、62−2がロータ結合部6の凹部8と対向している。
【0014】
回転シャフト3が回転すると、凸部62−1、62−2が凹部8に嵌るように可動する。そして、凸部62−1、62−2が凹部8に嵌っているときに、ロータ20を回転ヘッド2から離脱させる力が加わると、凸部62−1、62−2には凹部8に嵌る方向に力が加わる。例えば、前記凹部62−1、62−2の上側の面である凹部上面11の法線が、回転軸よりも軸心に近い位置を通るように形成されている。つまり、ロータに離脱力が働いて上方に持ち上げられた場合に、凸部62−1、62−2の上側の面(図2の凸部接触面35−1)と凹部上面11との接点から引いた法線が、回転軸の中心33−1、33−2よりも軸心9に近い位置を通るように回転軸22−1、22−2を配置すればよい。
【0015】
図2はロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図、図3はロータのフレームと雄型部材の部分を拡大した図、図4は回転しているときの雄型部材と回転ヘッドとの関係を示す断面図である。図3(A)は、フレームを上部側から見た平面図、図3(B)はA−A断面で切断した場合の断面図、図3(C)は図3(A)のB方向から見た場合の側面図である。なお、図2と図4は、雄型部材23−1のみしか示していないが、このように1つの雄型部材でもよいし、図1や図3のように2つの雄型部材を備えてもよいし、上述したように3個以上備えても良い。凹部8は、ロータ結合部6の内側面よりも窪んだ凹部底面10と、ロータ20に離脱力が発生したときに凸部62−1と接触する凹部上面11と、ロータ結合部6の最上部に位置する凹部円筒部12で構成されている。凸部62−1は、ロータ20が回転したときに凹部底面10と接触して雄型部材23−1の姿勢(位置)を決める凸部位置決め面34−1と、ロータ20に離脱力が発生したときに凹部上面11と接触する凸部接触面35−1で構成されている。図4に示したように、凹部上面11の凸部接触面35−1との接触部分から引いた法線は、回転軸の中心33−1よりも軸心9に近い位置を通っている。
【0016】
本発明の遠心分離機は、このような構造なので、ロータを回転ヘッドに取り付ける際にネジ止めの必要がない。また、ロータを回転ヘッドから取り外す際にもネジを外す必要がない。さらに、回転中に想定していないロータを回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合にも、凸部と凹部とが離れない。したがって、簡単な着脱と確実な固定の両方を実現できる。
【0017】
ロータを離脱させる力を、凸部が凹部に嵌る方向の力に変換する原理
次に、ロータ20を離脱させる力を、凸部62−1が凹部8に嵌る方向の力に変換する原理を説明する。図5は、この原理を説明するための模式図である。この図では、凸部62−1を円、雄型部材23−1を線で表している。また、これらの図では、雄型部材23−1の質量は凸部62−1に集中しているものとする。図5(A)は凹部上面11が水平の場合を、図5(B)は凹部上面11と凸部62−1との接点から引いた法線が回転軸の中心33−1よりも軸心9から遠い位置を通る場合を、図5(C)は凹部上面11と凸部62−1との接点から引いた法線が回転軸の中心33−1よりも軸心9に近い位置を通る場合であって、離脱力が発生していないときを、図5(D)は凹部上面11と凸部62−1との接点から引いた法線が回転軸の中心33−1よりも軸心9に近い位置を通る場合であって、離脱力が発生しているときを示している。
【0018】
図5には、凸部62−1に働く力のうち、重力による力F1、遠心力による力F2、ロータ20を離脱させる力によって凸部62−1が受ける力F3を示している。これらの力の他に、凸部62−1には、凹部底面10や凹部上面11が凸部62−1を押し返す反力、雄型部材23−1が凸部62−1を引っ張る力があるが、これらの力は、F1〜F3と釣り合うために生じる力なので、図では省略している。
【0019】
力F1の方向は下向きであり、力F2の方向は図の右方向である。また、雄型部材23−1は回転軸を中心として回転自在だから、力F3の方向は回転軸の中心33−1の方向である。そして、凸部62−1は、これらの力の合計の方向に動こうとするので、反時計回りに動こうとしたり、時計回りに動こうとしたりする。反時計回りに動こうとする場合は、凸部62−1が凹部8に嵌ろうとする方向であり、結局、凸部62−1は凹部上面11か凹部底面10に押し付けられる。そして、凹部上面11か凹部底面10からの反力も凸部62−1に働く力として加わり、凸部62−1に働く力がつりあう。一方、時計回りに動こうとする場合は、凸部62−1が凹部8から外れる場合であり、ロータ20が離脱してしまう危険がある。 まず、力F3がない場合を考える。図5(A)、図5(B)、図5(C)のどの場合も、力F1と力F2の合計の方向と雄型部材23−1の線とが一致するように、凸部62−1は動こうとする。したがって、回転速度が速くなり、F2が十分大きくなれば、凸部62−1が凹部8に嵌る。例えば、1分間に1000回転する場合、軸心9から1cm離れた位置では、F2はF1の10倍以上となる。なお、図5(C)の場合は、凹部上面11と凸部62−1との接点から引いた法線が回転軸の中心33−1よりも軸心9に近い位置を通るので、力F3がないときには、凸部62−1は凹部底面10にのみ接触しており、凹部上面11との間には隙間がある。
【0020】
一方、力F3が加わると力の関係が変化する。以下の説明では、力F3の凹部上面11と垂直の力を力F31、平行の力を力F32とする。回転数が一定ならば、力F1と力F2は一定である、しかし、ロータ20が外れるような事故では想定していない力F3が加わる。つまり、力F3が大きくなったときでも凸部62−1が凹部8に嵌ろうとする力が加わるかを確認すれば、凹部上面11をどのような向きにすればよいかが分かる。
【0021】
まず、凹部上面11と平行の力について検討する。図5(A)と図5(B)の場合、力F3が大きくなれば力F32も大きくなるので、凸部62−1が凹部8に嵌ろうとする力は弱くなってしまう。また、そもそも力F3は想定外の力なので、凸部62−1が凹部8に嵌ろうとする力がどの程度残るのか設計できない。したがって、外れる方向に力が加わる危険がある。
【0022】
一方、凹部上面11と凸部62−1との接点から引いた法線が回転軸の中心33−1よりも軸心9に近い位置を通る場合には、力F3がないときには、凸部62−1と凹部上面11との間には隙間がある(図5(C))。そして、ロータ20に強い離脱力が働くと、図5(D)に示すように、回転軸の中心33−1が持ち上げられ、凸部62−1と凹部上面11とが接触する。ここで、図5(D)中の33’−1は、力F3が働く前の回転軸の中心の位置を示している。図5(D)の場合、力F3が大きくなれば力F32も大きくなるので、凸部62−1が凹部8に嵌ろうとする力は強くなる。したがって、凹部上面11と凸部62−1との接点から引いた法線が回転軸の中心33−1よりも軸心9に近い位置を通る場合(凹部上面の法線が、回転軸よりも軸心に近い位置を通るように形成されている場合)には、ロータ20を離脱させる力を、凸部62−1が凹部8に嵌る方向の力に変換できるので、想定していないロータを回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合にも、凸部と凹部とが離れない。
【0023】
このように、本発明によれば、ロータを回転ヘッドに取り付ける際にネジ止めの必要がない。また、ロータを回転ヘッドから取り外す際にもネジを外す必要がない。さらに、回転中に想定していないロータを回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合にも、凸部と凹部とが離れない。したがって、簡単な着脱と確実な固定の両方を実現できる。
【0024】
[変形例1]
実施例1では、雄型部材23−1、23−2の重心が回転軸22−1、22−2の真下となったときに、雄型部材23−1、23−2はロータ結合部6の内側にあるように配置されていた。しかし、設計上の都合から、回転シャフト3が停止した状態での重心の位置を回転軸22−1、22−2の真下ではない位置に調整したい場合もある。図6は変形例1のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図、図7は変形例1のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面斜視図である。本変形例では、回転シャフト3が停止した状態での重心の位置を、回転軸22−1、22−2の真下よりも軸心9に近い位置に調整した例を示す。本変形例では、フレーム21に環状の弾性体61が備えられており、雄型部材23−1、23−2を軸心9側に押している。
【0025】
このように、回転シャフト3が停止した状態での重心の位置を調整できるので、設計自由度が増加させることができる。
【0026】
[変形例2]
小型ロータ(概ね5kg以下)は高速回転(18000〜22000回転)するとロータ穴28、29と回転ヘッド2の円柱部分4と円錐台部分5の間にある微小な隙間が原因となって、振動が生じることがある。本変形例では、この課題を解決する。
【0027】
図8は回転シャフトが停止した状態での変形例2のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図、図9は変形例2のフレーム21を示した図、図10は回転シャフトが回転した状態での変形例2のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図である。図9(A)は図8のC側からフレーム21を見た側面図であり、図9(B)は図8のD側からフレーム21を見た側面図である。図10(A)はロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図、図10(B)は第2雄型部材40に加わる力を示す図、図10(C)は雄型部材23−1に加わる力を示す図である。本変形例では、ロータ20は第2雄型部材40も備えている。第2雄型部材40は、ロータ穴28の内部に水平に配置された回転軸22−2を中心として回転自在であり、重心が回転軸22−2の下方にあり、重心よりも下方の回転シャフト3と反対側に第2凸部41を有する。また、本変形例では、第2雄型部材40の厚みwに対して、雄型部材23−1の厚みをw/2としている。
【0028】
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、第2雄型部材40の重心が回転軸22−2の真下となる。このとき、第2雄型部材40はロータ結合部6の内側にあり、かつ、第2雄型部材40の第2凸部41がロータ結合部6の凹部8と対向している。回転シャフト3が回転すると、第2凸部41が凹部の一部(図10では、凹部上面11と凹部円筒部12の凹部境界線42)と接触するように移動する。また、雄型部材23−1も実施例1で説明したように移動し、凸部62−1が凹部底面10に接触する。このように、雄型部材23−1と第2雄型部材40とを非対称とすることで微妙な力のアンバランスが生じるので、ロータ20が回転ヘッド2のどこかに押さえつける力が生じる。この力が働くことで、ロータ穴28、29と円柱部分4と円錐台部分5の間にある微小な隙間は一方に寄せられるので、振動を軽減できる。
【0029】
より具体的には、以下のような原理によるものと考えられる。雄型部材23−1の厚みを第2雄型部材40の半分としたことで、雄型部材23−1は第2雄型部材40よりも軽くなる。したがって、回転時に働く第2雄型部材40の遠心力F1は雄型部材23−1の遠心力F4よりも大きい。まず、回転軸の中心33−2を支点としたときのモーメントのつりあいについて考える。遠心力F1は回転軸22−2を時計回りにまわそうとする。また、第2凸部41と凹部境界線42とが接触している面は軸心9に平行ではないので、摩擦を考えなければ、第2凸部41は凹部境界線42から力F2(接触している面の法線方向の力)を受ける。力F2は回転軸22−2を反時計回りにまわそうとする。そして、これらの力によって生じるモーメントがつりあう。したがって、回転軸22−2には遠心力F1と力F2の合計の力F3が加わることになる。次に、回転軸の中心33−1を支点としたときのモーメントのつりあいについて考える。遠心力F4は、回転軸22−1を反時計回りにまわそうとする。また、凹部底面10は軸心9に平行な面なので、凸部62−1は遠心力F4と反対の方向に力F5を受ける。力F5は回転軸22−1を時計回りにまわそうとする。そして、これらの力によって生じるモーメントがつりあう。したがって、回転軸22−1には遠心力F4と力F5の合計の力F6が加わることになる。つまり、ロータ20には力F3と力F6が働くことになり、ロータ20は、全体的には図10の左下方向に押し付けられることになる。実際には、摩擦なども加わるためさらに複雑な力が加わっていると考えられるが、いずれにしても雄型部材23−1と第2雄型部材40とを非対称とすることで生じる微妙な力のアンバランス(第2雄型部材40が回転シャフト3の回転によって受ける力と、雄型部材23−1が回転シャフト3の回転によって受ける力とはバランスが取れていないこと)によって振動が軽減していると考えられる。
【0030】
なお、本発明では遠心力によって動く部材である雄型部材23−1と第2雄型部材40とがロータ20に具備されている。したがって、ロータの重さや形状などを考慮してアンバランスの程度を最適に調整できるので、ロータの種類ごとに振動を十分に低減できる。
【0031】
[変形例3]
これまでの実施例、変形例での説明では、回転シャフト3の回転が止まれば雄型部材23−1、23−2は、重力などによってロータ結合部6の内側に戻るので、ロータ20を容易に取り外すことができると説明した。しかし、試料などが漏れてしまい、雄型部材23−1、23−2の周辺に付着してしまうことがある。このような場合に、回転シャフト3の回転が止まっても、雄型部材23−1、23−2がロータ結合部6の内側に戻らないことも想定される。本変形例ではこの課題を解決する。
【0032】
図11は回転シャフトが停止しても雄型部材がロータ結合部の内側に戻らない状態のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図、図12は雄型部材をロータ結合部の内側に戻した状態のロータのフレームと雄型部材の部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図である。本変形例では、雄型部材23−1、23−2は、回転軸22−1、22−2よりも上方に、凸部62−1、62−2が凹部8に嵌った状態のときに貫通穴31の内側に出る突起部43−1、43−2を有している。
【0033】
遠心分離機1の回転が停止し、ロータ20を取り外そうとするときに外れない場合、以下のように、雄型部材23−1、23−2をロータ結合部6の内側に戻せばよい。まず、蓋25を外し、貫通穴30、31が見える状態にする。そして、先端が細くなった解除シャフト44を貫通穴30、31に挿入する。解除シャフト44は先端が細く、取っ手に近い方が徐々に太くなっているので、突起部43−1は図の右方向、突起部43−2は図の左方向に押される。したがって、図12に示すように解除シャフト44を深く押し込めば、雄型部材23−1、23−2をロータ結合部6の内側に戻すことができる。なお、解除シャフト44の貫通穴31に接触する部分にネジを形成しておき、フレーム21の貫通穴31に形成されたネジを利用して解除シャフト44を押し込む仕組みにすれば、無理なく解除シャフト44を押し込むことができる。
【0034】
したがって、回転シャフト3の回転が止まっても、雄型部材23−1、23−2がロータ結合部6の内側に戻らない問題が生じても、雄型部材23−1、23−2をロータ結合部6の内側に戻すことができ、ロータ20を取り外すことができる。
【0035】
[変形例4]
実施例1の場合、ロータ20と回転ヘッド2との位置関係は、ガイドピン24が駆動ピン7の間に拘束されることによって決まる。しかし、ガイドピン24は駆動ピン7の間では移動可能なので、ロータ20と回転ヘッド2との間にはすべりが生じる。また、ロータ20は回転ヘッド2の上部に配置されているが、ロータ20は、円錐台部分5に支えられている。したがって、前述のすべりによって、特にロータ穴29と円錐台部分5に摩耗が生じることになる。本変形例では、ロータ20と回転ヘッド2との間のすべりをなくす。
【0036】
図13は変形例4のロータのフレームと雄型部材とガイドピンの部分および回転ヘッドの部分を拡大した断面図、図14は変形例4の回転ヘッドを上部側から見た平面図、図15は変形例4のフレームと雄型部材とガイドピンを拡大した図である。図15(A)は側面図、図15(B)は下部側から見た底面図である。なお、図13、図15には雄型部材は1つしか示していないが、2つまたはそれ以上の雄型部材を備えても良い。本変形例のガイドピン53は、実施例1のガイドピン24よりも長い。そして、回転ヘッド2は、ガイドピン53が挿入される駆動穴51を備えている。
【0037】
本変形例のロータ20は、雄型部材23−1の近傍にロータ結合部6の内側に入るガイドピン53も備える。回転ヘッド2は、ガイドピン53が挿入される駆動穴51も備える。ロータ20を回転ヘッド2の上部から取り付けるときには、まず、ガイドピン53は、駆動ピン7によって範囲が限定される。そして、ガイドピン53の先端は駆動穴51に挿入され、ガイドピン53は駆動穴51に制限されてガイドピン53の位置が決まる。
【0038】
このように駆動穴51によってガイドピン53の位置が固定されるので、ロータ20と回転ヘッド2との間にはすべりが生じない。したがって、ロータ穴29と円錐台部分5の摩耗を防ぐことができる。
【0039】
なお、図14に点線で示した空気穴54を備えても良い。空気穴54はフレーム21とロータ結合部6との間に閉じ込められた空気を外部に逃がす役割を果たす。フレーム21とロータ結合部6が精度良く製造された場合、フレーム21とロータ結合部6との間に閉じ込められた空気によって、ロータ20が回転ヘッド2の上にスムーズに降りず、空気が抜けるにしたがってゆっくりと下降してしまうことがある。このようにゆっくりと下降したのでは操作者にとって余分な時間を費やすことになるし、ロータ20の取り付けミスにもつながりやすい。したがって、空気穴54を備えることで、このような課題を解決できる。
【符号の説明】
【0040】
1 遠心分離機 2 回転ヘッド
3 回転シャフト 4 円柱部分
5 円錐台部分 6 ロータ結合部
7 駆動ピン 8 凹部
9 軸心 10 凹部底面
11 凹部上面 12 凹部円筒部
20 ロータ 21 フレーム
22 回転軸 23 雄型部材
24 ガイドピン 25 蓋
26 つまみ 27 ネジ部
28、29 ロータ穴 30、31 貫通穴
33 回転軸の中心 34 凸部位置決め面
35 凸部接触面 36 試料挿入部
40 第2雄型部材 41 第2凸部
42 凹部境界線 43 突起部
44 解除シャフト 51 駆動穴
53 ガイドピン 54 空気穴
61 弾性体 62 凸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸心が鉛直方向である回転シャフトの上部に取り付けられた回転ヘッドと、前記回転ヘッドの上部に配置されるロータとを備えた遠心分離機であって、
前記ロータは、
前記回転ヘッドが挿入されるロータ穴と、
前記ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が前記回転軸の下方にあり、重心よりも下方の前記回転シャフトと反対側に凸部を有する雄型部材と
を備え、
前記回転ヘッドは、上部に前記回転シャフトの軸心を中心とする円筒状であり、内側面に環状の凹部を有するロータ結合部を備え、
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、前記雄型部材は前記ロータ結合部の内側にあり、かつ、前記雄型部材の凸部が前記ロータ結合部の凹部と対向し、
前記回転シャフトの回転によって前記凸部が前記凹部に嵌るように可動し、
前記凸部が前記凹部に嵌っているときに、前記ロータを前記回転ヘッドから離脱させる力が加わった場合に、前記凸部には前記凹部に嵌る方向に力が加わる
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
軸心が鉛直方向である回転シャフトの上部に取り付けられた回転ヘッドと、前記回転ヘッドの上部に配置されるロータとを備えた遠心分離機であって、
前記ロータは、
前記回転ヘッドが挿入されるロータ穴と、
前記ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が前記回転軸の下方にあり、重心よりも下方の前記回転シャフトと反対側に凸部を有する雄型部材と
を備え、
前記回転ヘッドは、上部に前記回転シャフトの軸心を中心とする円筒状であり、内側面に環状の凹部を有するロータ結合部を備え、
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、前記雄型部材は前記ロータ結合部の内側にあり、かつ、前記雄型部材の凸部が前記ロータ結合部の凹部と対向し、
前記回転シャフトの回転によって前記凸部が前記凹部に嵌るように可動し、
前記凹部の上側の面である凹部上面の法線は、前記回転軸よりも前記軸心に近い位置を通る
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項3】
請求項1または2記載の遠心分離機であって、
前記ロータは、
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、前記雄型部材は前記ロータ結合部の内側にあるように、前記雄型部材を軸心方向に押えるための環状の弾性体も備える
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の遠心分離機であって、
前記ロータは、前記ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が前記回転軸の下方にあり、重心よりも下方の前記回転シャフトと反対側に第2凸部を有する第2雄型部材も備え、
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、前記第2雄型部材は前記ロータ結合部の内側にあり、かつ、前記第2雄型部材の第2凸部が前記ロータ結合部の凹部と対向し、
前記回転シャフトの回転によって前記第2凸部が前記凹部の一部と接触するように可動し、前記第2雄型部材が前記回転シャフトの回転によって受ける力と、前記雄型部材が前記回転シャフトの回転によって受ける力とはバランスが取れない
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項5】
請求項1から3のいずれかに記載の遠心分離機であって、
前記ロータは、前記ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が前記回転軸の下方にあり、重心よりも下方の前記回転シャフトと反対側に第2凸部を有する第2雄型部材も備え、
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、前記第2雄型部材は前記ロータ結合部の内側にあり、かつ、前記第2雄型部材の第2凸部が前記ロータ結合部の凹部と対向し、
前記回転シャフトの回転によって前記第2凸部が前記凹部の一部と接触するように可動し、前記凹部の一部が前記第2凸部に前記ロータを前記第2雄型部材側に寄せる力を加える
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の遠心分離機であって、
前記ロータは、前記軸心を中心とした断面円形の貫通穴も備え、
前記雄型部材は、前記回転軸よりも上方に、前記凸部が前記凹部に嵌った状態のときに前記貫通穴の内側に出る突起部を有している
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項7】
請求項1から6のいずれかに記載の遠心分離機であって、
前記ロータは、前記雄型部材の近傍に前記ロータ結合部の内側に入るガイドピンも備え、
前記回転ヘッドは、前記ガイドピンが挿入される駆動穴も備えている
ことを特徴とする遠心分離機。
【請求項8】
軸心が鉛直方向である回転シャフトと、
上部に前記回転シャフトの軸心を中心とする円筒状であり、内側面に環状の凹部を有するロータ結合部を備え、前記回転シャフトの上部に取り付けられた回転ヘッド
を備えた遠心分離機の前記回転ヘッドの上部に配置される遠心分離機用ロータであって、
前記回転ヘッドが挿入されるロータ穴と、
前記ロータ穴の内部に水平に配置された回転軸を中心として回転自在であり、重心が前記回転軸の下方にあり、重心よりも下方の前記回転シャフトと反対側に凸部を有する雄型部材と
を備え、
前記回転シャフトが停止した状態で前記ロータが前記回転ヘッドの上に配置されているときには、前記雄型部材は前記ロータ結合部の内側にあり、かつ、前記雄型部材の凸部が前記ロータ結合部の凹部と対向し、
前記回転シャフトの回転によって前記凸部が前記凹部に嵌るように可動し、
前記凹部の上側の面である凹部上面と前記凸部とが接触するときには、接触面の法線は、前記回転軸よりも前記軸心に近い位置を通る
ことを特徴とする遠心分離機用ロータ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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