説明

遠心分離機

【課題】ロータの取り付けに対する確認を簡単に行え、使用者が安心感を得られるようにする。
【解決手段】モータ12と、モータ12の回転シャフトに取り付けられた回転ヘッド16と、回転ヘッド16に取り付けられるロータ30とを有する遠心分離機において、回転ヘッド16上にロータ30を載置するだけで、載置されたロータ30の種類を識別するロータ識別手段(磁石41,磁気センサ42)と、ロータ30が正しく載置されたことを使用者に通知する通知手段(ブザー63,点灯装置64)とを備える。ロータ識別手段はロータ30が回転ヘッド16上に正しく載置されている場合に、ロータ30の種類を識別するように調整されている。ロータ識別手段により使用可能なロータ30であると判断された時、通知手段は通知を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は遠心分離機におけるロータの取り付けに関し、特にロータが正しく取り付けられたことを使用者が知ることができるようにした遠心分離機に関する。
【背景技術】
【0002】
遠心分離機はチャンバ内に突出されたモータの回転シャフトにロータを取り付けて使用する。ロータは遠心分離機毎に複数の種類があり、使用者は遠心分離する試料に適したロータを選択し、使用者自身が交換して使用する。
【0003】
回転シャフトへのロータの取り付け方には、主に下記に示したような3つの方式がある。
(1)ねじ止め方式
工具を使う、あるいはつまみを回すなど、ねじ止めによりロータを回転シャフトに固
定する方式。
(2)ワンタッチ方式
回転シャフト上のボタンを押すなどしてロータを回転シャフトに取り付け、取り付け
後、ボタンを離すとロータが回転シャフトに固定される方式。
(3)置くだけ方式
ロータを回転シャフト上に置くだけの方式。ロータが回転すると、遠心力によりロー
タの外れを防止する機構が作動してロータが回転シャフトに固定される。
【0004】
(3)の置くだけ方式は、(1)のねじ止め方式や(2)のワンタッチ方式に比べ、使用者の作業負担が軽減され、その点で基本的に使い勝手の良いものとなっている。特許文献1にはロータの回転シャフトへの取り付けにおいて、このような置くだけ方式を採用した遠心分離機が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第3861476号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、回転シャフトへのロータの取り付けにおいては、例えば異物等の存在によってロータが所定の位置に正しく取り付けられていない場合が生じうる。ロータは20,000rpm以上で回転するものもあり、ロータが正しく取り付けられていないと、回転中に例えばロータが外れるなど重大な事故につながる可能性がある。
【0007】
一方、使用者はロータが正しく取り付けられたかどうかを確認するために、ロータを取り付け直す動作をしがちであり、このようなことは作業性を悪化させるものとなっていた。特に、ねじ止め方式やワンタッチ方式に慣れている使用者が置くだけ方式を使用した場合、ねじを止める、ボタンを押すなどの操作がないため、不安を感じ、ロータを何度も取り付け直す動作をし、その点で本来の使い勝手の良さが損なわれる事態となっていた。
【0008】
この発明の目的はこのような問題に鑑み、ロータが正しく取り付けられたか否かを判断し、ロータが正しく取り付けられた場合、そのことを使用者に通知することにより、ロータが正しく取り付けられたことを使用者が知ることができるようにした遠心分離機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明によれば、モータと、モータの回転シャフトに取り付けられた回転ヘッドと、回転ヘッドに取り付けられるロータとを有する遠心分離機は、回転ヘッド上にロータを載置するだけで、載置されたロータの種類を識別するロータ識別手段と、ロータが回転ヘッド上に正しく載置されたことを使用者に通知する通知手段とを備え、ロータ識別手段はロータが回転ヘッド上に正しく載置されている場合にロータの種類を識別するように調整されており、ロータ識別手段によりロータの識別が行われ、使用可能なロータであると判断された時、通知手段は前記通知を行う。
【0010】
請求項2の発明では請求項1の発明において、通知手段は音及び光の少なくとも一方により前記通知を行う。
【0011】
請求項3の発明では請求項1の発明において、ロータ識別手段は、ロータの軸心を中心に等角間隔で磁石が取り付けられる位置が予め決められ、ロータの種類に応じて磁石の有無からなる配列パターンが異なるようにされて、ロータの底部に取り付けられた磁石と、ロータの底部の磁石が取り付けられた部分と対向し、前記軸心を中心として前記等角間隔以下の間隔をもって非回転固定部側に配設された複数の磁気センサとを有し、磁気センサの出力を処理してロータの種類を識別するものとされる。
【0012】
請求項4の発明では請求項1の発明において、回転ヘッド上に載置されたロータと回転ヘッドとの固定が、回転シャフトの回転に伴う遠心力によって作動する機構によって行われる構造とされる。
【発明の効果】
【0013】
この発明によれば、使用者はロータが正しく取り付けられたことを音や光により知ることができるため、安心感が得られ、確認を簡単に行うことができ、その点で使い勝手の良い遠心分離機を提供することができる。
また、ロータの取り付けミスを防ぐことができるため、ロータが回転中に外れるといった重大な事故の発生を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】この発明による遠心分離機の一実施例の構成を示す断面図。
【図2】ロータの取り付け構造を示す断面図。
【図3】磁気センサと磁石の相対位置関係を示す図。
【図4】磁気センサの配列の一例を示す図。
【図5】図1に示した遠心分離機の電気的構成を示すブロック図。
【図6】磁石の配設例を示す図。
【図7】磁気センサと磁石の相対位置の例を示す図。
【図8】Aは磁気センサの出力データを示す表、BはCPUがAの出力データに基づき、RAMに書き込んだ磁石配置パターンのデータを示す表、CはBの上段データと下段データの“OR”をとったデータを示す表。
【図9】Aはロータが正常に取り付けられた状態を示す図、Bはロータの取り付けが正常でない場合の一例を示す図。
【図10】ロータが正しく取り付けられたことを検出し、通知する手順を示すフローチャート。
【図11】ロータ識別手段の他の構成例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
この発明の実施形態を図面を参照して実施例により説明する。
【0016】
図1はこの発明による遠心分離機の一実施例の構成を示したものである。筐体11内にはモータ12がその回転シャフト(図1では隠れて見えない)が鉛直方向とされて設置されている。モータ12は支持板13に固定支持されており、支持板13は防振ゴム14を介して筐体11内部の水平仕切り板11a上に搭載固定されている。
【0017】
筐体11の上半部にはチャンバ15が形成されており、このチャンバ15内にロータ30が収容されている。ロータ30はモータ12の回転シャフトに取り付けられた回転ヘッド16に取り付けられている。
【0018】
筐体11の上面にはチャンバ15を蓋するチャンバ蓋17が蝶番18を介して取り付けられており、チャンバ蓋17は開閉自在とされている。また、筐体11の前面側にはフレーム21が配設されており、このフレーム21の上端側の傾斜面部21aに操作・表示パネル22が配置されている。なお、フレーム21内には筐体11の前面に取り付けられた制御装置50が収容されている。
【0019】
ロータ30の取り付けは、この例では置くだけ方式の取り付けを採用している。以下、ロータ30の取り付け構造を図2を参照して説明する。
ロータ30の軸心には回転ヘッド16が挿入される円形のロータ穴31が形成されており、ロータ穴31の下端開放側は開放端に向って徐々に拡径されている。ロータ穴31の内部上端側にはフレーム32が収容されている。
【0020】
フレーム32は段付きの円柱状をなし、上端側は大径部32aとされ、下端側は小径部32bとされている。フレーム32には、その大径部32aの中間部分から小径部32bの下端に渡って、径方向に貫通するスリット32cが形成されており、このスリット32c内に一対の係止部材33が配置されている。係止部材33はフレーム32のスリット32c内に水平に配置された一対の軸34にそれぞれ軸支されて、軸34回りに回動自在とされている。
【0021】
一対の係止部材33の各下端には互いに外向きに突出する係止突起33aが形成されている。係止部材33はその重心が軸34の下方に位置するように構成されている。なお、フレーム32の小径部32bの下端面には一対のガイドピン35(図2では1つしか見えない)がスリット32cが形成されている径方向と直交する方向において互いに180°をなす位置に突設されている。
【0022】
一方、モータ12の回転シャフト12aに取り付けられた回転ヘッド16はロータ30のロータ穴31に合致する外形形状を有しており、その上部にはロータ結合部16aが形成されている。ロータ結合部16aは円筒状をなし、その内周面には凹部16bが環状に形成されている。また、ロータ結合部16aの内部底面には一対の駆動ピン19が互いに180°をなす位置に突設されている。これら駆動ピン19が位置する円周の径は一対のガイドピン35が位置する円周の径と等しくされている。
【0023】
ロータ30の回転ヘッド16への取り付けはロータ30を単に回転ヘッド16上に載置するだけとされ、回転ヘッド16はロータ穴31に収容される。モータ12が駆動され、回転ヘッド16が回転すると、回転ヘッド16の一対の駆動ピン19がロータ30の一対のガイドピン35と当接し、これにより駆動ピン19からガイドピン35に動力が伝えられ、ロータ30が回転する。
【0024】
一方、一対の係止部材33は回転に伴う遠心力によって回動し、その係止突起33aが回転ヘッド16のロータ結合部16aに形成されている凹部16bに嵌り込む。これにより、回転中のロータ30に上方に、つまり回転ヘッド16から外れる方向に力が働いたとしても、外れが阻止されるものとなっている。
【0025】
なお、図2中、36はロータ30に形成されている試料挿入部を示し、37はロータ30の蓋を示す。また、38は蓋37を固定するためのつまみを示す。つまみ38はその中心に軸38aを有し、軸38aの先端にはねじ38bが形成されている。ねじ38bはロータ30に形成されている穴39を介してフレーム32に形成されているねじ穴32dに螺合される。
【0026】
上述したように、この例では置くだけとされたロータ30は遠心力によって作動する機構(係止部材33)によって回転ヘッド16から離脱することなく、回転ヘッド16に固定されるものとなっている。
【0027】
遠心分離機はこの例ではさらにロータ識別手段と、ロータ30が回転ヘッド16上に正しく載置されたことを使用者に通知する通知手段とを備える。
【0028】
ロータ識別手段は磁石と磁気センサとを用いて構成されており、以下、その構成を説明する。
【0029】
ロータの軸心を中心に、等角間隔で磁石が取り付けられる位置が予め決められ、ロータの種類に応じて磁石の有無からなる配列パターンが異なるようにされて、磁石41がロータ30の底部に図1に示したように取り付けられる。一方、ロータ30の底部の磁石41が取り付けられた部分と対向し、ロータ30の軸心を中心として前記等角間隔以下の間隔をもって複数の磁気センサ42が非回転固定部側に配設される。図1ではモータ12の本体上に配置された固定部材43に磁気センサ42が配設されている。
【0030】
図3は磁気センサ42と磁石41の相対位置関係を模式的に示したものであり、図4は磁気センサ42の配列の一例を示したものである。また、図5は遠心分離機の電気的構成をブロック図で示したものである。なお、磁気センサ42と磁石41は図1に示したように鉛直方向において対向配置されるが、図3においては相対位置関係をわかりやすくすべく、平面的に示している。
【0031】
磁気センサ42は、この例では交互に配列されたA群センサA1〜A12及びB群センサB1〜B12で構成され、それらA群センサ出力とB群センサ出力との“OR”をとった出力でロータ30を識別するものとなっている。また、磁石41はM1〜M7の位置に最大7個取り付けられるものとなっている。30°間隔のM1〜M7の場所に磁石41が「有る」「無し」の組み合わせによって128種類のロータの組み合わせが可能となる。図6Aは磁石41の個数が最も多い場合、図6Bは磁石41が1個で、最も少ない場合である。ここでは次の条件を追加することにより、組み合わせを63種類としている。
条件1:M1の位置はすべてのロータに磁石を取り付ける。
条件2:図6Cの組み合わせは使用しない。
【0032】
磁気センサ42は図4のように配置する。A1〜A12、B1〜B12は磁気センサ42の番号で、各磁気センサ42は15°ごとに回転シャフト12aを中心にして、固定部材43の円周上に配置する。計24個の磁気センサ42は図5に示したようにマルチプレクサ44及び45に接続される。
【0033】
磁石41の強さと磁気センサ42の関係はM2〜M7の位置の磁石41は磁気センサ42と磁気センサ42の中間点にあるとき(図7A)、Ai,Bi両方の磁気センサに出力を出すことができるに十分な磁力の強さと、その磁力を検出できる磁気センサ42の感度があるものとする。また、Bi磁気センサよりもAi磁気センサに近づいているとき(図7B)はAiの磁気センサのみに出力が得られ、AiよりもBiに近づいているときは(図7C)Biの磁気センサのみに出力が得られる関係にあるものとする。
【0034】
M1の位置の磁石41はM2〜M7の位置の磁石41よりも強い磁力を有するものとする。M1の位置の磁石41が図7AのようにAi磁気センサとBi磁気センサの中間点にあるときはAi,Bi磁気センサの両方に出力が得られ、Bi磁気センサよりもAi磁気センサに近づいているときはAi磁気センサのみに出力が得られるのはM2〜M7の位置の磁石41と同じである。しかし、M1の位置の磁石41はM2〜M7の位置の磁石41よりも強いので、M2〜M7の位置の磁石41の場合よりも、磁石41が磁気センサ42から離れても磁気センサ42に出力が得られる。この結果、M1の位置の磁石41の方が磁気センサ42に感応される範囲が広い。
【0035】
ロータ30が回転ヘッド16上に載置されて取り付けられる場合、ロータ30が取り付けられる回転方向の角度は任意であり、定まった角度の位置は存在しない。つまり、図6A,BのM1の位置の磁石41がA1〜12,B1〜12の磁気センサ42のどこに近づくかは定まっていない。磁石41が磁気センサ42に近づき、磁気センサ42に出力が得られたとき、高レベルとし、論理“1”とする。出力が得られないとき、低レベルとし、論理“0”とする。図6Aの磁石配置のロータ30が使用され、図4の磁気センサ42と組み合わされ、M1の磁石がA1磁気センサに図3に示したように最も近づいているときの磁気センサ42の出力は図8Aのようになる。
【0036】
図5に示した制御装置50のCPU(Central Processing Unit)51は図8Aのような信号を次のようにして読む。
【0037】
まず、CPU51からマルチプレクサ44のセレクト端子Saにセレクト信号が送られ、入力a1と出力cがつながる。磁気センサA1の出力はマルチプレクサ44の出力cにデータとして送られ、CPU51に入力される。次に、再びCPU51からセレクト端子Saにセレクト信号が送られ、入力a2と出力cがつながる。磁気センサA2の出力はマルチプレクサ44の出力cにデータとして送られる。データはCPU51に入力される。このようにして磁気センサA−12までのデータがRAM52に格納される。
【0038】
CPU51はこのデータを次のように分析し、RAM52のアドレスRA−1からRA−12のセルに格納する。CPU51はデータのうち“0”が5回続いた次のデータが“1”であるか否か判定する。もし“1”であれば、RAM52のRA−1番地に格納し、以下順番にRA−2番地からRA−12番地までデータを格納する。データは12個あるが、12番目のデータの次は再び1番目につながるリング状のデータとして扱う。もし“0”であればさらに次のデータを読み“1”があるまで読み続ける。“1”があればこれを1番目のデータとして扱い、RAM52のRA−1番地に格納し、以下順番にRA−2番地からRA−12番地までデータを格納する。12個すべてが“0”であるときは、RA−1番地からRA−12番地まですべて“0”を格納する。
【0039】
次に、CPU51からマルチプレクサ45のセレクト端子Sbにセレクト信号が送られ、入力b1と出力fがつながる。磁気センサB1の出力はマルチプレクサ45の出力fにデータとして送られ、CPU51に入力される。前記の磁気センサ42のA1からA12までの出力をCPU51に入力し、判定した方法と同じ手法を使い、RAM52のRB−1番地からRB−12番地にデータを格納する。
【0040】
磁気センサ42の出力はRAM52に図8Bのように格納されることになる。RA−1番地からRA−12番地までのデータをデータA列、RB−1番地からRB−12番地までのデータをデータB列とする。CPU51はさらにデータA列とデータB列の“OR”を計算する。その結果をRAM52の新しいR−1番地からR−12番地までに図8Cのように格納する。このデータをデータN列とする。
【0041】
制御装置50のROM53には、予めロータ30ごとに定められた磁石配列から得られる各ロータのデータ列が格納されている。CPU51はデータN列と各ロータのデータ列とを照合し、同じデータ列を探し、どのロータであるかを識別する。なお、磁石41の配列を判別するのに磁気センサ42のどの信号をデータN列の始めにするかは重要であり、この例ではロータ30に取り付ける磁石41の最大数Nm=7とし、“0”が12−Nm=5個以上続いた後にくる“1”をデータN列の先頭データとしている。ロータ30に取り付ける磁石41の最大数Nmがいくつであるかによって、この条件は変わる。例えば、磁石41の最大数Nmが6個であれば、“0”が12−Nm=6個以上続いた後にくる“1”をデータN列の先頭データとすればよい。
【0042】
上記のようにしてロータ30の識別が始動前に行われ、CPU51はRAM52に格納されている運転データに基づき、ロータ30に関する最高回転数や最大遠心力等の情報を表示装置61に表示して使用者に伝える。これにより、使用者は正しい遠心条件の設定が可能となり、操作装置62を操作して設定が行われる。なお、操作装置62及び表示装置61は図1に示した操作・表示パネル22に配設されている。
【0043】
次に、ロータ30が回転ヘッド16上に正しく取り付けられたことを判断し、使用者に通知する方法・手段について説明する。
【0044】
図9Aはロータ30が回転ヘッド16上に正しく取り付けられた状態を示し、図9Bはロータ30が回転ヘッド16上に正しく取り付けられていない状態の一例を示す。図9Bではロータ30のガイドピン35が回転ヘッド16の駆動ピン19上にちょうど乗ってしまい、つまりピン乗りした状態となっている。
【0045】
この図9Bに示したような状態でロータ30が載置された場合、通常はガイドピン35もしくは駆動ピン19の位置が相対的にスライドする。つまり、ロータ30もしくは回転ヘッド16(モータ12)が相対的に回転してピン位置がずれることで、ロータ30は所定の位置に設置される。
【0046】
しかしながら、例えばロータ30のロータ穴31と回転ヘッド16との嵌合部分に、薬品などの異物が付着することにより、嵌合部分の摩擦が大きくなると、ロータ30もしくは回転ヘッド16が相対的に回転しないといった状況が生じ、ピン位置がずれないといった事態が生じうる。この場合、ロータ30は所定の位置に設置されないことになる。また、回転ヘッド16やロータ30に異物が取り付いた場合などにも、ロータ30が正しく取り付けられない場合が生じうる。
【0047】
ロータ30が回転ヘッド16上に正しく取り付けられた場合、ロータ30底部に埋め込まれて取り付けられている磁石41と、固定部材43に配設されている磁気センサ42との距離は図9Aに示したように所定の距離Xとなる。これに対し、ロータ30が正しく取り付けられていない場合、磁石41と磁気センサ42との距離はXにはならず、図9Bに示したようにYとなる。距離Yは距離Xより大きく、この例ではこの距離Yの大きさからロータ30が正しく取り付けられていないことを検出するものとし、検出には上述したロータ識別手段を利用する。
【0048】
即ち、ロータ識別手段の磁気センサ42には一般にホールICが用いられるが、ロータ30が正しい位置に載置されている場合(距離Xの場合)、ホールICはロータ底部の磁石41に反応し、出力が得られるようにし、ロータ30が正しい位置に載置されていない場合(距離Yの場合)、ホールICは磁石41に反応せず、出力が得られないように調整する。この調整は例えば磁気センサ42の取り付けを調整し、磁石41との距離を所定の距離に設定することによって行われる。
【0049】
上述したように、この例ではロータ識別手段を利用してロータ30が正しく取り付けられたか否かの検出をも行うものとなっている。
【0050】
図10はロータ30が正しく取り付けられたか否かをCPU51が判断する手順を示したものであり、以下、順に説明する。
<ステップS1>
遠心分離機の電源がONされた場合、ロータ30が正しく取り付けられていることを確認できるまで、遠心分離機の運転を禁止する。
<ステップS2>
一定時間毎(例えば、25msec周期)に磁石41の読み取りを行う。
【0051】
<ステップS3>
磁石読み取り結果の変化を監視する。一定時間(例えば、25msec周期の監視で20回=500msec)変化がない状態になるまで待つ。これは使用者がロータ30を取り付けている間は、磁石41と磁気センサ42間の距離が変わり、磁石41の読み取りに変化が生じるためであり、ロータ30の取り付けが完了するまで待つ。
<ステップS4>
磁石41の有り無し(磁石41を検出したか否か)を判定する。磁石41を検出しなかった場合はロータ30が外されたと判定する。
【0052】
<ステップS5>
磁石41を検出しなかった場合、ロータ30が正しく置かれた通知をしたこと(正しく置かれたことの通知済み)をクリアし、ステップS2に戻る。
<ステップS6>
磁石41の検出結果より、磁石41の配列を決定する。
【0053】
<ステップS7>
磁石41の配列がROM53に登録されているかチェックする。ROM53に登録されていれば、磁石41の読み取りは正常に行えたと判断することができる。また、磁石41の読み取りが正常にできたことは正常にロータ30が取り付けられたと判断することができる。なお、磁石41の配列がROM53に登録されていない場合、ロータ30の取り付けが正常でない、あるいは使用不可のロータを取り付けたなど、正常でないことがあると判断して、遠心分離機の運転を禁止するステップS1に戻る。
【0054】
<ステップS8>
ロータ30の取り付けが正常であることを使用者に通知済みであるか否かを判定する。磁石41の検出は常時行っている。そのため、二重に通知することを防止する。
<ステップS9>
ロータ30の取り付けが正常であることを使用者に通知する。
<ステップS10>
遠心分離機の運転を許可する。
【0055】
以下、ステップS2に戻り、磁石41の読み取り、検出を実行する。ロータ30がいつ交換されるかわからないため、磁石41の検証は常時、実行する。
【0056】
ステップS9における使用者へのロータ30の取り付けが正常であることの通知は音や光により行うことができる。この例では音及び光の双方によって行うものとし、ブザー63及び点灯装置64を具備するものとする。ブザー63は図1における操作・表示パネル22に配設され、また点灯装置64は図1に示したようにチャンバ15内に設置される。点灯装置64は使用者が認識しやすいように、この例では使用者から見てチャンバ15の奥側の内壁面上部に設置されている。点灯装置64には例えばLEDが用いられる。
【0057】
以上説明したように、この例によれば、使用者はロータ30が正しく取り付けられたことをブザー音及び点灯装置64の点灯の双方によって知ることができるため、安心感が得られ、取り付けの確認も簡易に行えるものとなる。また、ロータ30が回転中に外れるといった事故も防止することができる。
【0058】
なお、上述した例ではブザー音及び点灯装置64の点灯の双方によってロータ30が正しく取り付けられたことを通知するものとしているが、いずれか一方だけとしてもよい。但し、遠心分離機の設置場所は騒音の多い場所であることが多く、ブザー音が聞き取れないといった場合を考慮して、点灯装置64の点灯による光によって通知するのが好ましく、さらにはより確実な通知を行うためにはこの例のように音及び光の双方によって通知を行うのが好ましい。
【0059】
一方、ロータ30が回転ヘッド16上に正しく取り付けられていない場合の図9Bに示したようなロータ30の高さ異常(ロータ30とモータ12間の距離大)を検出するためには、例えば距離センサや近接スイッチ等を用いることも考えられるが、この場合には新たな部品、回路が必要となり、その分、価格が上昇する。これに対し、この例ではロータ30の種類を判別するためのロータ識別手段を流用してロータ30の取り付け異常を検出するものとなっており、新たなハードウェアは必要ではなく、ソフトウェアの変更だけで済むため、価格の上昇を抑えることができる。
【0060】
ロータ識別手段は上述した構成に限らず、他の構成とすることもできる。図11はロータ識別手段の他の構成例を示したものである。この例ではロータ30の底部にロータ30の軸心を中心とする環状の溝71を設け、この溝71と対向する位置に位置検出器72を設置した構成となっている。位置検出器72は非回転固定部側に設置され、この例ではモータ12の本体上に配置された固定部材73に位置検出器72が設置されている。
【0061】
溝71を設ける位置は予め決められ、この例ではG1〜G3の3箇所とされている。これら3箇所のうち、必ず1箇所は溝71がない状態とする。この場合、G1〜G3の3箇所に溝71が「有る」「無し」の組み合わせによって、7種類のロータ30の識別が可能となる。
【0062】
位置検出器72はG1〜G3の3箇所とそれぞれ対向するように3つ設置される。位置検出器72は例えば近接スイッチなど距離を判別検出できるものとする。
【0063】
ロータ30が回転ヘッド16上に正しく取り付けられた状態での位置検出器72とロータ30の底部との距離を図11に示したように距離xとし、位置検出器72と溝71の内部底面との距離を距離yとする。位置検出器72の検出距離は距離xよりもわずかに長く、距離yよりも短くし、即ち位置検出器72の出力がONとなる距離は距離xよりもわずかに長く、距離yよりも短くなるように設定する。
【0064】
この例では上述したように、G1〜G3の3箇所のうち、必ず1箇所は溝71がない状態としており、この溝71がない部分でロータ30が正しく取り付けられたか否かを検出することができる。検出の流れは下記1)〜3)となる。
1)ロータ30が取り付けられる。
2)3つの位置検出器72の出力の組み合わせを読み取り、ロータ30の種類を判別す
る。図11では位置検出器72の出力は左からOFF,OFF,ONとなる。
3)3つの位置検出器72のうち、少なくとも1つの位置検出器72の出力がONとな
ることで、ロータ30の種類の判別と同時にロータ30が正しい位置に設置された
ことも検出することができる。なお、ロータ30が正しく取り付けられていない場
合は3つの位置検出器72のいずれの出力もONとはならず、これによりロータ3
0の取り付け異常を検出することができる。
【符号の説明】
【0065】
11 筐体 12 モータ
12a 回転シャフト 15 チャンバ
16 回転ヘッド 16a ロータ結合部
16b 凹部 19 駆動ピン
22 操作・表示パネル 30 ロータ
31 ロータ穴 32 フレーム
33 係止部材 33a 係止突起
34 軸 35 ガイドピン
41 磁石 42 磁気センサ
43 固定部材 44,45 マルチプレクサ
50 制御装置 51 CPU
52 RAM 53 ROM
61 表示装置 62 操作装置
63 ブザー 64 点灯装置
71 溝 72 位置検出器
73 固定部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータと、前記モータの回転シャフトに取り付けられた回転ヘッドと、前記回転ヘッドに取り付けられるロータとを有する遠心分離機であって、
前記回転ヘッド上に前記ロータを載置するだけで、載置されたロータの種類を識別するロータ識別手段と、
前記ロータが前記回転ヘッド上に正しく載置されたことを使用者に通知する通知手段とを備え、
前記ロータ識別手段は前記ロータが前記回転ヘッド上に正しく載置されている場合に、前記ロータの種類を識別するように調整されており、
前記ロータ識別手段により前記ロータの識別が行われ、使用可能なロータであると判断された時、前記通知手段は前記通知を行うことを特徴とする遠心分離機。
【請求項2】
請求項1記載の遠心分離機において、
前記通知手段は音及び光の少なくとも一方により前記通知を行うことを特徴とする遠心分離機。
【請求項3】
請求項1記載の遠心分離機において、
前記ロータ識別手段は、
前記ロータの軸心を中心に等角間隔で磁石が取り付けられる位置が予め決められ、ロータの種類に応じて磁石の有無からなる配列パターンが異なるようにされて、前記ロータの底部に取り付けられた磁石と、
前記ロータの底部の磁石が取り付けられた部分と対向し、前記軸心を中心として前記等角間隔以下の間隔をもって非回転固定部側に配設された複数の磁気センサとを有し、
前記磁気センサの出力を処理してロータの種類を識別するものとされていることを特徴とする遠心分離機。
【請求項4】
請求項1記載の遠心分離機において、
前記回転ヘッド上に載置された前記ロータと前記回転ヘッドとの固定が、前記回転シャフトの回転に伴う遠心力によって作動する機構によって行われる構造とされていることを特徴とする遠心分離機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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