遠心分離法による飲料調製用カプセルシステム
遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えることによって、飲料を調製するためのカプセルシステムであって、複数の異なるカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)を備え、セットにおける各カプセルがセットにおける他のカプセルと異なる固有の特性を有する飲料を選択的に注出するためのカプセルであり、セットにおける各カプセルが、側壁および自由縁部(3)を有する本体(2)と、上壁(4)と、抽出可能成分または不溶解性成分と、基準位置で遠心分離抽出装置(7)の回転型カプセルホルダ(14)に本体を挿入するための挿入直径(D)とを有し、セットにおける複数の異なるカプセルが、セットにおける本体の可変深さ(d1、d2、d3)に応じた異なる貯蔵容積の本体(2)を有するが、セットのすべてのカプセルが同じ挿入直径(D)を有する、カプセルシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルに遠心力を加えることによって抽出装置内でカプセルから飲料、特にコーヒーを調製することに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心力を用いて液体をカプセルに含まれる成分に通すことによってコーヒーなどの飲料を調製するためのシステムがある。国際公開第2008/148604号パンフレットに、可能な解決策が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
欧州特許出願公開第1208782号明細書は、異なる寸法のカプセルからコーヒー飲料を調製するための装置に関する。カプセルの容積は、カプセル本体を開口側で拡張し、異なる直径のカプセルを作ることによって得られる。その結果、この装置にカプセルを適応させることが繁雑になり、適切な気密性を確保するための可動要素が必要となる。遠心分離装置において、このように可動要素を設けると、装置をある一定期間使用した後、装置との間に摩耗を生じさせるとともに、カプセルに遠心力を加える際に振動を生じさせることになる。
【0004】
遠心分離システムにおいて、カプセルが遠心分離装置に適切に支持されなければ、振動を生じさせるさらなるリスクが存在する。容積を異にし、様々な量の成分を含むカプセルのセットの場合、不安定化のリスクが増し、結果的に、振動を発生させるリスクが生じる。抽出装置は、振動すると動く可能性があり、非常に大きな騒音を発生させうる。さらに、カプセルホルダが支持されないと、遠心分離中にカプセルが変形し、容器、特にプラスチックカプセルが破損してしまう可能性が生じうる。
【0005】
したがって、多種多様な飲料、特に、遠心分離抽出装置において異なる特性(風味、濃度、クレマなど)を有するコーヒーを適宜に注出可能なカプセルシステムを提供する必要がある。
【0006】
本発明により、前述した問題の解決策が提供されるとともに、従来技術にさらなる利益がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のことから、本発明は、遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えることによって、飲料を調製するためのカプセルシステムであって、
複数の異なるカプセルからなるセットを備え、セットにおける各カプセルがセットにおける他のカプセルと異なる固有の特性を有する飲料を選択的に注出するためのカプセルであり、セットにおける各カプセルが、側壁および自由縁部を有する本体と、上壁と、抽出可能成分または不溶解性成分と、基準位置で遠心分離抽出装置の回転型カプセルホルダに本体を挿入するための挿入直径(D)とを有し、
セットにおける複数の異なるカプセルが、セットにおける本体の可変深さに応じた異なる貯蔵容積の本体を有するが、セットのすべてのカプセルが同じ挿入直径を有する、カプセルシステムに関する。
【0008】
「挿入直径」という用語は、カプセル本体の外面上で測定される基準直径をさす。
【0009】
カプセルをこのように構成することで、多種多様な飲料、例えば、リステロット、エスプレッソおよびルンゴコーヒー(またはより多量のコーヒー)をさらに都合よく注出することができる。特に、カプセルの幾何学的な構成により、抽出装置に特殊な適応を施す必要もなく、同じ抽出装置で異なる容積のカプセルを収容することができる。
【0010】
ある形態において、セットにおける複数の異なるカプセルは、セットにおいて実質的に同じ角度または同じ段付き状の形状を有する少なくとも1つの本体上側部分を有する。「角度」という用語は、カプセルの回転中心軸線に対して、カプセルの軸方向(または本体上側部分の非直線プロファイルの場合、軸方向の曲率線)の部分の角度を意味する。
【0011】
本体上側部分は、例えば、切頭状(truncated)または円筒状部分でありうる。
【0012】
ある形態において、本体の下側部分は可変長であるのに対して、上側部分は、セットのすべてのカプセルで一定長でありうる。下側部分は、凸状、平坦または凹状でありうる。
【0013】
慣例により、「上側部分」という用語は、本体の自由縁部に近い本体の部分を意味し、「下側部分」という用語は、カプセルの本体の底部に向かう本体の部分を意味する。
【0014】
別の形態において、セットにおける複数の異なるカプセルの本体は、その表面全体で凸状であり、セットにおいて可変の深さを有する。この形態において、本体の上側部分および下側部分は、別個の部分ではなく、単一の凸状部分に融合される。
【0015】
好ましくは、不溶解性または抽出可能な成分の量は、セットにおいて増大する本体の貯蔵容積(すなわち深さ)に応じて増大する。その結果、セットにおける各カプセルは、異なる量および異なる特性の飲料を注出しうる。「特性」という用語は、飲料をさす場合、風味、濃度、泡またはクレマ、色合いなどを区別する飲料の任意の特質を意味する。このような特質は、任意の適当な分析手段によって測定可能であり、または任意の官能検査および/または目視検査によって示されうる。
【0016】
特に、複数の異なるカプセルは、セットにおいて焙煎および/または挽き具合の特性が異なる焙煎され挽かれたコーヒーを含む。カプセルは、リステロット、エスプレッソ、ルンゴなどの異なるコーヒーまたは同じタイプではあるが、異なる特性、例えば、異なる風味やクレマを有するコーヒーを注出するように適応されうる。
【0017】
カプセルシステムは、各カプセルを識別し、識別の結果に応じて抽出パラメータを調節するための、セットにおける複数の異なるカプセルに関連付けられた識別手段をさらに備える。調節可能なパラメータは、以下のパラメータ、すなわち、回転速度、流量、カプセルの出口での背圧および/またはカプセルに供給される液体の容量の1つ以上から選択されうる。識別手段は、さまざまな特性(量、風味、濃度、クレマ、色合いなど)を有する多種多様な飲料の注出に関与する。識別手段は、カプセルホルダを駆動する回転モータおよび/またはカプセルに液体を供給するポンプを制御することによって、遠心分離抽出装置に配置されてパラメータの調節を制御する制御手段に関連付けられる。
【0018】
本発明の別の特徴において、抽出装置は、セットにおけるカプセルの本体の部分を支持するように配設された支持面を有する回転型カプセルホルダを備え、側壁の部分は、カプセルの挿入直径と整合する基準直径を有する。このようにして、カプセルホルダの支持面は、同じ基準位置でセットにおける任意のカプセルを保持するために、セットにおけるカプセルの挿入直径に対応する基準直径を含む。この同じ位置は、例えば、抽出ユニットを閉じる前、基準面(P)に沿ったカプセル本体の自由縁部の基準位置によって決定されうる。さらに、カプセルホルダの支持面は、セットにおける複数の異なるカプセルの本体の上側部分を保持する一方で、カプセルの本体の下側部分を支持しない。
【0019】
その結果、セットにおけるすべてのカプセルが、各カプセルと、回転中の装置、すなわちカプセルホルダとの間の相対運動の可能性を制限しながら装置にぴったりと適合されるため、遠心分離中に振動を発生させるリスクが軽減される。
【0020】
本発明はまた、遠心分離抽出装置の回転カプセルホルダにおいて遠心分離することによって飲料を調製するためのカプセルであって、側壁および自由縁部を有する本体と、上壁と、抽出可能成分または不溶解性成分と、カプセルの本体の挿入直径(D)とを有し、この挿入直径(D)が、回転カプセルホルダの支持面の基準直径と整合するとともに、カプセルホルダに挿入されたときにカプセルを自己閉塞(self-blocking)するように、本体の自由縁部からある距離だけ下方に配置される、カプセルに関する。
【0021】
好ましくは、カプセルは、カプセルホルダの支持面の角度(β)よりわずかに小さい角度(α)で直径(D)の部分から延伸する上側部分を備える。
【0022】
上側部分の角度(α)は、カプセルホルダの支持部分の角度(β)よりも、好ましくは1〜8度、最も好ましくは1〜5度だけ小さい。
【0023】
このような構成により、カプセルの縁部に閉鎖力がかかると、カプセルホルダ内でのカプセルの自己閉塞機能が働き、遠心分離プロセス中の振動の危険性が結果的に軽減される。
【0024】
慣例により、「角度」とは、本明細書において、カプセルの軸方向の表面が、回転軸線に対応するカプセル本体の中心軸線に対してなす角度をさす。測定された表面は真っ直ぐな直線ではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、わずかな曲率線を有しうることに留意されたい。
【0025】
さらに、振動を回避するためにすべてのカプセルをしっかりと支持する他にも、セットのすべてのカプセルを収容できるように、カプセルホルダの中心は中空でありうる。別の形態において、カプセルホルダは、セットの中に長め(すなわち、深め)のカプセルを受けることができる底壁を有しうる。この利点は、本質的に、固有のカプセルホルダで、セットにおけるすべてのカプセルを受け入れられることである。
【0026】
本発明は、遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出するためのシステムであって、
複数の異なる容積からなるカプセルセットと、
セットにおける複数の異なるカプセルに対応する識別手段と、
流量、回転速度、セットにおける任意のカプセル内の注入液体量、およびそれらの任意の組合せのパラメータのうち少なくとも1つを含む所定の抽出パラメータに従って、カプセルに対して遠心力を加える際に遠心分離抽出装置を作動可能な制御手段を有する遠心分離抽出装置と、
を備えるシステムにさらに関する。
【0027】
特に、制御手段は、流量およびカプセル内の注入液体量を含む、セットの任意のカプセルに対して装置を作動可能である。
【0028】
言い換えれば、セットにおける各カプセルに対して、基準流量または流量プロファイル(例えば、0.2〜10ml/secの範囲内に含まれる任意の値)および特定の注入液体量(例えば、25、40、120、230または400ml)が対応する。流量または容量の特定の値は、セットにおける複数の異なるカプセルに共通のものであってもよい。
【0029】
特に、流量は、装置および/またはカプセルの流れ制限手段によって遠心分離液体にかかる回転速度および/または背圧を変更することによって制御される。
【0030】
例えば、コーヒー飲料の場合、流量を0.2ml/sから10ml/sに変更することで、コーヒーの特性が大きく変化しうる。
【0031】
流量は、好ましくは、カプセルの容積に応じて制御される。好ましくは、容積が小さいほど、流量は少ない。
【0032】
制御はまた、流れ制限手段の背圧を変える、カプセルの識別可能な形状または開口特性などの受動手段によって実現されうる。例えば、セットにおける異なる容積のカプセルは、異なる出口断面が与えられることで、遠心分離液体にかかる異なる背圧値を加えうる。
【0033】
好ましくは、本発明のシステムは、制御手段による注入液体量および回転速度の調節、ならびに任意的に、選択的流れ制限手段による背圧の調節を意図している。
【0034】
識別手段は、装置を作動するための制御手段によって識別される。
【0035】
識別手段は、パラメータを能動的に制御するための制御手段に接続された検知手段によって検知可能であり、または受動的識別手段、例えば選択的流れ制限手段でありうる。
【0036】
特に、識別手段は、遠心分離抽出装置の制御手段に接続される検知手段によって認識されるカプセル認識手段を備え、制御手段は、認識の結果に応じて抽出パラメータを制御する。
【0037】
認識手段は、バーコード、色、標識、ロゴなど視覚コードによって、または無線周波数コード(RFID)、磁気要素、または識別可能な形状によって区別化されうる。
【0038】
本発明は、さらに、遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出する方法であって、
複数の異なる容積のカプセルからなるセットを準備するステップと、
カプセルのセットからカプセルを選択し、飲料を抽出するための遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えるステップとを含み、
流量、回転速度および注入液体量のうち少なくとも1つのパラメータが、選択されたカプセルの容積に応じて調節される方法に関する。
【0039】
好ましくは、流量および注入液体量は、カプセルの選択された容積に応じて調節される。
【0040】
別の形態において、回転速度およびカプセル内の注入液体量は、選択されたカプセルの容積に応じて調節される。
【0041】
この方法は、回転速度および/または遠心分離液体にかかる背圧を調節することによって流量を調節することを意図している。言い換えれば、流量は、飲料の調製中、回転速度および/または遠心分離液体にかかる背圧を調節することによって、設定値に可能な限り近い値に維持されるか、または所定のプロファイルに応じて変更される。
【0042】
他の形態において、識別手段は、ユーザインタフェースの選択手段として形成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、小容積カプセルの概略側面図である。
【図2】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、大容積であるが同じ挿入直径のカプセルの概略側面図である。
【図3】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、図1のカプセルの底面図である。
【図4】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、図1のカプセルが挿入される遠心分離装置の概略図である。
【図5】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、図2のカプセルが挿入される装置の概略図である。
【図6】カプセルシステムに属するカプセルセットの第2の実施形態を示す、凸状底部分を有する小容積カプセルである。
【図7】カプセルシステムに属するカプセルセットの第2の実施形態を示す、凸状底部分を有する大容積カプセルである。
【図8】システムに属するカプセルセットの第3の可能な実施形態を示す、凸状本体の小容積カプセルである。
【図9】システムに属するカプセルセットの第3の可能な実施形態を示す、凸状本体の中容積カプセルである。
【図10】システムに属するカプセルセットの第3の可能な実施形態を示す、凸状本体の大容積カプセルである。
【図11】別のカプセルセットを有するカプセルシステムの第4の可能な実施形態を示す、小容積カプセルが挿入された遠心分離抽出装置を示す。
【図12】別のカプセルセットを有するカプセルシステムの第4の可能な実施形態を示す、大容積カプセルが挿入された遠心分離抽出装置を示す。
【図13】カプセルシステムの第5の可能な実施形態を示す、第5の実施形態によるカプセルホルダに異なる容積のカプセルが適合される方法の概略図を示す。
【図14】カプセルシステムの第5の可能な実施形態を示す、装置を閉じる前の図13の詳細図を示す。
【図15】カプセルシステムの第5の可能な実施形態を示す、装置を閉じた後の図13の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1〜図5に示す本発明のカプセルシステムは、容積は異なるが同じ挿入直径「D」のカプセル1A、1Bのセットを備える。図1のカプセルは小容積カプセル1Aを示すのに対して、図2のカプセルは大容積カプセル1Bを示す。2つのカプセルは、外向きに延伸する自由縁部3を有するカップ形状の本体2と、上壁4とを備える。上壁は、熱または超音波の溶接線などのシールによって本体の自由縁部に接続される。上壁は、穿孔可能な膜、多孔性壁またはそれらの組合せでありうる。カプセルは、抽出装置(図3)においてカプセルを遠心分離している間の回転軸線を表す中心軸線「I」を有する。
【0045】
小容積カプセルと大容積カプセルとの間の容積差は、特に、セットのカプセル本体の深さ(d1、d2)を変更することによって得られる。特に、小容積カプセル1Aの本体の深さは、大容積カプセル1Bの本体の深さより浅い。この例において、挿入直径Dから始まり、カプセルの底部6に向かって延伸する切頭形の単一本体部分が設けられる。カプセル1Aおよび1Bの本体部分は同型であり、同じ角度「A」をなす。角度は、中心軸線Iに対して1から55度までの範囲でありうる。挿入直径「D」は、本明細書において、自由縁部3の下面と本体の上側部分との間の交差線で決定される。
【0046】
小容積カプセルは、大容積カプセルよりも少ない量の抽出浸出成分、例えば挽きコーヒーを含む。小容積カプセル1Aは、5〜15グラムの挽きコーヒーで25ml〜60mlのショートコーヒーを注出することを意図したものである。大容積カプセル1Bは、ロングコーヒー、すなわち60mlを超える(例えば、80〜500ml)コーヒーを注出することを意図したものであり、8〜30グラムの挽きコーヒーを含む。
【0047】
カプセル1A、1Bは、遠心分離抽出装置7(図4および図5)に挿入されることを意図したものである。図4に示すように、この装置は、ヒータ10と、カプセル内の液体を計量するためのポンプ11と、液体供給源、例えば貯水部12とを備える流体回路9によって、加熱液体、好ましくはお湯が供給される抽出ユニット8を備える。抽出ユニットは、インタフェースアセンブリ13と、カプセルホルダ14と、コレクタ15とを備える。遠心分離液体の流れ制限部を形成する周囲出口29が、カプセルの周囲、例えば、インタフェースアセンブリ13とカプセルホルダまたはカプセル6との間に設けられる。国際公開第2008/148656号パンフレットに記載されているように、カプセルの縁部に配置され作用するばね付勢弁によって、流れ制限部が形成されうる。弁の一部は、同時係属中の欧州特許出願公開第0817069.1号明細書に記載されているようなカプセル自体によって形成されうる。このような流れ制限部は、遠心分離液体に背圧を加える。コレクタは、カップに向けられた開口ダクトとして形成されているような飲料出口16によって終端する。カプセルホルダ14は、支持面18を形成する部分24が、カプセル1A、1Bの本体上側部分と相補的な形状になるように設計される。
【0048】
特に、カプセルホルダは、カプセルホルダにカプセルがぴったりと適合するように、直径「D」と実質的に等しい基準直径を形成する上側開口に基準環状線19を有することで、不安定化、ひいては、遠心分離中の振動をもたらす半径方向の遊びが生じる可能性をなくす。また、カプセルは、本体が半径方向に実質的に変形することなく、カプセルの上側縁部がホルダの上側フランジにしっかりと支持される。この構成において、抽出ユニットは、インタフェースアセンブリ13によってカプセルの上壁に対して閉じられる。アセンブリ13は、カプセルの回転軸線Iに正確に沿って導入可能な中央注入針20を備える。インタフェースアセンブリ13は、遠心分離飲料がカプセルホルダ14とインタフェースアセンブリ13との間の周囲出口29を通ってカプセルから流出することができるように、国際公開第2008/148604号パンフレットに記載されているように、カプセルの周囲に一連の出口穿孔器21を備えうる。カプセルが透過性上壁を有する場合、出口穿孔器を有しない装置が想定されうる。同様に、注入針は省略可能であり、上壁が透過性のものであれば、単純な注入穴に取り替えられうる。好ましくは、出口29は、飲料の流路に与えられる流れ制限部を形成し、カプセル内に圧力勾配をもたらす。このような制限部は、国際公開第2008/148646号パンフレットに記載されるような小さなオリフィスまたは絞り弁によって得られうる。
【0049】
図4および図5に示すように、カプセルホルダは、異なる容積(すなわち、可変深さの本体によって得られる)のカプセルを挿入可能なように、中央が中空のものでありうる。カプセルホルダの底部は、閉鎖されたものか、または部分的に閉鎖されたものでありうる。この場合、カプセルホルダの深さは、セットにある大容積(すなわち、より深い)カプセル、例えばカプセル1Bの深さに少なくとも等しい。
【0050】
カプセル1Aまたは1Bからの飲料の抽出は、比較的高速に、例えば500〜15000rpmで軸線Iに沿って回転(R)するように、インタフェースアセンブリ13およびカプセルホルダ14をカプセルとともに駆動することによって得られる。回転は、回転モータ(図示せず)によって行われる。液体は成分を通り抜け、カプセルの上側周囲で、すなわち、穿孔器21によって上壁に設けられた出口穿孔を通ってカプセルを離れる。多くの穿孔器が上壁の周囲に均等に配置されるため、飲料の層流が上壁の全周囲に沿って半径方向に分散することによって液体が流出しうる。遠心分離液体は、コレクタ8に対して、カプセルの縁部とインタフェースアセンブリ13の上面との間に放出される。その後、液体飲料は収集され、ダクト16を通って吐出される。
【0051】
図6および図7は、カプセル1Cおよび1Dが、カプセルの深さd1、d2を変更するための拡張部を形成する本体の上側部分26および下側部分22を備える、別のカプセルセットの第2の実施形態を示す。上側部分26は、カプセルホルダ内でカプセルを基準付ける(referencing)のに必要な同じ挿入直径Dと、一定の角度とを有する切頭部分を形成する。下側部分は、切頭状とは異なる形状を有し、図示するように凸状部分でありうる。大容積カプセル1Dにおいて、カプセルの深さd2は、より長い(すなわち、より深い)下側部分22によって増大される。小容積カプセル1Cにおいて、カプセルの深さd1は、より短い下側部分22によって低減される。
【0052】
図8、図9および図10は、本体がそれぞれ可変深さd1、d2、d3の単一の凸状部分23a、23b、23cを有する、本発明による別のカプセルセットの第3の実施形態を示す。凸状部分は、切頭状または円筒状部分のゾーンがないセットの特定のカプセル(例えば、カプセル1E、1F)の場合、連続的な凸状でありうる。大容積カプセル1Gは、切頭状または円筒状部分の上側部分を含んでもよい。
【0053】
図11および図12の実施形態において、抽出装置のカプセルホルダ3は、カプセルの上側部分26に対して支持面18を形成する第1の部分24と、小容積カプセル1H(図11)および大容積カプセル1I(図12)の両方を収容するのに十分な長さの閉鎖面をカプセルの下方に形成する下側部分25とを備える。一例として、小容積カプセルは25mlの貯蔵容積を有し、中サイズのカプセルは30mlの貯蔵容積を有し、大容積カプセルは40mlの貯蔵容積を有する。
【0054】
この実施形態において、小容積カプセル1Hおよび大容積カプセル1Iは、上側部分、例えば、同じ角度の上側部分26を備えてもよい。上側部分26の長さは同じものであってもよく、またはカプセルホルダの表面18と適合するものであれば、わずかに異なるものであってもよい。大容積カプセル1Iは、異なる角度(軸線Iに対して小さいことが好ましい)をもつ形状にされてもよい拡張部分、例えば、挿入直径「D」より小さな直径の円錐柱または円柱(図12)を形成する下側部分27を備えてもよい。
【0055】
可変深さのカプセルの数は、記載したすべての実施形態のセットにおいて限定されるものではないことは言うまでもない。
【0056】
すべての実施形態において、切頭部分は、連続的な切頭状面と同等であり、カプセルの底部の方向に直径が小さくなる一連の段付き部分または別の同等の任意の/装飾的な形状と取り替えられうることは言うまでもない。
【0057】
前の実施形態とは対照的に、図13〜図14の実施形態において、セットのカプセルは、カプセルの縁部からある距離だけ下方の位置の挿入直径Dを本体側壁の上側部分に有するカプセルホルダにおいて基準付け可能である。挿入直径Dは、セットのすべてのカプセルで一定である。抽出ユニットを閉じる前にカプセルホルダの適所にある異なる容積のカプセル1J、1Kおよび1Lが図示されている(小容積カプセル1Jおよびより深いカプセル1Lは点線でのみ表されており、中容積カプセル1Kが実線で表されている)。図から分かるように、すべてのカプセルは、一定の基準位置に沿ってカプセルの挿入直径Dの全体で保持される。特に、セットのすべてのカプセルは、共通する基準面Pに沿った上側縁部3を有する。対照的に、本体の導入深さ(d1、d2、d3)は、深さに応じて容積を適応するようにカプセルホルダ3において変化する。
【0058】
この形態において、傾斜角度αが支持面18の角度βよりわずかに小さくなるように上側部分を設計することが有益である。この角度は、カプセルの回転軸線Iまたは図14に示すように回転軸線Iに平行な軸線I1に対して測定される。その結果、セットのすべてのカプセルは、導入時、カプセルホルダ内で自己閉塞する。したがって、カプセルが、抽出ユニットを閉じる間にインタフェースアセンブリ13によって縁部3を押圧されると、本体は、最終的な回転配置になるようにわずかに変形するが、すべての遊びは適切に補償される。角度αは、カプセルホルダの支持部分の角度βより1〜5度小さいことが好ましい。
【0059】
本発明によるセットのカプセルは、セットにおいて焙煎レベルおよび/または挽き具合の特性が異なることが好ましい焙煎され挽かれたコーヒーを含む。
【0060】
コーヒー豆は、一般に、焙煎されたコーヒー豆を作るために焙煎され、次に、カプセルに充填される焙煎され挽かれたコーヒー粉末を生成するために挽かれる。焙煎を含む任意の適切なプロセスが使用されうる。本明細書において使用する場合、「焙煎」という用語は、コーヒーの風味を作り出すための、コーヒー豆に対する任意の適切な熱処理を含む。適切な焙煎技術は、オーブン焙煎、押出し焙煎、蒸気焙煎(例えば、後工程焙煎なし)、赤外線焙煎、マイクロ波焙煎、誘電/誘導加熱焙煎およびそれらの組合せを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
コーヒー豆は、任意の所望の焙煎色に焙煎されうる。次に、焙煎されたコーヒー豆は、任意のコーヒー挽き器(例えば、Probat社またはMatsubo社の挽き器)を使用して挽かれうる。本発明の最終製品に望ましい特定の粒子サイズ分布に応じて、コーヒーの破片は、粒子体積分布、すなわち「グラインド量」に合わせて挽かれうる。コーヒーの粒度分布を決定するために、粒子サイズ分布(D4,3)および細粒分レベルは、典型的に、Malvern社の「Mastersizer S」(登録商標)を使用してレーザ回折によって決定される。
【0062】
本発明のシステムは、有益には、カプセルの容積および/またはカプセルの製品特性(粒度分布、焙煎など)および/または注出される飲料(リステロット、エスプレッソ、ルンゴ、大きいサイズまたは特大サイズのコーヒーなど)に応じて、抽出パラメータ、特に、流量およびカプセル内の注入液体量を確実に制御するために、各カプセルに関連付け可能な識別手段ID1、ID2、ID3(図4および図5)またはID4、ID5(図11および図12)を含む。本発明のシステムは、2つの主要パラメータ、すなわち、装置におけるカプセルの回転速度および遠心分離液体にかかる背圧によって影響を受ける異なる流量を注出可能である。所与の背圧に対して、回転速度が速いほど、流量は多い。逆に、所与の回転速度に対して、背圧が大きいほど、流量は少ない。同時係属中の国際出願PCT/EP08/066666号明細書に記載されているように、カプセルの封入物の下流に配置された流れ制限弁の閉鎖力を変更することによって、および/または、制限出口の断面を変更することによって、背圧が変更されうる。本発明の文脈において、「流量」という用語は、カプセルに注入される液体の流れ、特に水の流れをさし、流量計のような任意の適切な手段によって測定され、制御手段によってモニタ可能なものである。
【0063】
本質的に知られているように、回転速度の制御は、インタフェースアセンブリ13の一部、カプセルホルダ14およびカプセルをまとめて回転駆動する回転モータ(図示せず)を選択的に作動させる制御手段によって実行される。カプセルに注入される液体容量の制御は、適切な液体容量を計量するためにポンプ11を選択的に作動させる制御手段によって実行される。
【0064】
特に、識別手段は、異なる飲料容量を注出するために異なる注入液体容量を設定し、および/または、装置の回転速度を設定しうる。特に、セットの大容積カプセルの場合、識別手段は、小容積カプセルより大きな液体容量を設定しうる。また、識別手段は、液体がカプセルに滞留する時間がさまざまになるようにするために、大容積カプセルの場合より小さな容積のカプセルに対して異なる流量を設定し、および/または、大容積カプセルの場合より小さい容積のカプセルの場合、異なる回転速度を設定しうる。好ましくは、カプセルの容積が小さいほど、または飲料(すなわち、カプセル内の注入液体量)が少ないほど、流量は少ない。最後に、識別手段は、カプセル内または流れ制限部が配置される出口29での異なる背圧値を設定してもよい。好ましくは、注入液体量、回転速度およびカプセル内の背圧は、容量に応じて制御手段(C)によって調節可能であり/調節される。加えて、注入液体の温度は、液体ヒータ10を選択的に作動させる制御手段によって、カプセル容積に応じて変更可能である。例えば、液体の温度は、大量の液体の温度損失を補償するために高温で加熱されうる。
【0065】
図4および図5に示すように、識別手段は、ユーザインタフェース30の選択手段ID1、ID2、ID3として形成されうる。選択手段は、物理的スイッチ、またはタッチスクリーンの多肢選択式インタフェースなど任意の他の種類のセレクタでありうる。各セレクタは、注出される飲料の種類、例えば、リステロット、エスプレッソ、ルンゴなどのような特定のコーヒーの特定の種類、特定の飲料容量(例えば、25、40、80、110、250mlなど)および/または香りの強さおよび/または泡/クレマのレベルの特定の選択肢に対応する。制御手段Cに接続されているユーザインタフェースにより、抽出パラメータは、遠心分離抽出装置を作動させるための選択手段のユーザによる選択に応じて調節される。
【0066】
図11および図12に示す別の形態において、識別手段は、異なるカプセルに直接関連付けられる。この場合、識別手段ID4、ID5(またはそれ以上)は、カプセルに取り付けられ、または埋め込まれたカプセル認識手段である。認識手段は、装置に挿入されるカプセルの種類に関する情報を、検知装置31を介して抽出装置に伝達可能な任意の機械、光学、磁気または無線周波数認識手段でありうる。例えば、認識手段は、バーコード、色コード、RFIDタグ、磁気感知要素または機械キーもしくは形状である。
【0067】
これらの異なるパラメータの調節を制御する主な利益は、異なる容量(例えば、リステロット、エスプレッソ、ルンゴ、アメリカーノなど)、香りの強度および泡/クレマ容量の多種多様な飲料、特にコーヒーを供給する可能性を本質的にもたらす。本発明によって提供される可能性は、これらのパラメータをすべてまとめて適切に調節できない従来の抽出方法より優れている。
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセルに遠心力を加えることによって抽出装置内でカプセルから飲料、特にコーヒーを調製することに関する。
【背景技術】
【0002】
遠心力を用いて液体をカプセルに含まれる成分に通すことによってコーヒーなどの飲料を調製するためのシステムがある。国際公開第2008/148604号パンフレットに、可能な解決策が記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
欧州特許出願公開第1208782号明細書は、異なる寸法のカプセルからコーヒー飲料を調製するための装置に関する。カプセルの容積は、カプセル本体を開口側で拡張し、異なる直径のカプセルを作ることによって得られる。その結果、この装置にカプセルを適応させることが繁雑になり、適切な気密性を確保するための可動要素が必要となる。遠心分離装置において、このように可動要素を設けると、装置をある一定期間使用した後、装置との間に摩耗を生じさせるとともに、カプセルに遠心力を加える際に振動を生じさせることになる。
【0004】
遠心分離システムにおいて、カプセルが遠心分離装置に適切に支持されなければ、振動を生じさせるさらなるリスクが存在する。容積を異にし、様々な量の成分を含むカプセルのセットの場合、不安定化のリスクが増し、結果的に、振動を発生させるリスクが生じる。抽出装置は、振動すると動く可能性があり、非常に大きな騒音を発生させうる。さらに、カプセルホルダが支持されないと、遠心分離中にカプセルが変形し、容器、特にプラスチックカプセルが破損してしまう可能性が生じうる。
【0005】
したがって、多種多様な飲料、特に、遠心分離抽出装置において異なる特性(風味、濃度、クレマなど)を有するコーヒーを適宜に注出可能なカプセルシステムを提供する必要がある。
【0006】
本発明により、前述した問題の解決策が提供されるとともに、従来技術にさらなる利益がもたらされる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以上のことから、本発明は、遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えることによって、飲料を調製するためのカプセルシステムであって、
複数の異なるカプセルからなるセットを備え、セットにおける各カプセルがセットにおける他のカプセルと異なる固有の特性を有する飲料を選択的に注出するためのカプセルであり、セットにおける各カプセルが、側壁および自由縁部を有する本体と、上壁と、抽出可能成分または不溶解性成分と、基準位置で遠心分離抽出装置の回転型カプセルホルダに本体を挿入するための挿入直径(D)とを有し、
セットにおける複数の異なるカプセルが、セットにおける本体の可変深さに応じた異なる貯蔵容積の本体を有するが、セットのすべてのカプセルが同じ挿入直径を有する、カプセルシステムに関する。
【0008】
「挿入直径」という用語は、カプセル本体の外面上で測定される基準直径をさす。
【0009】
カプセルをこのように構成することで、多種多様な飲料、例えば、リステロット、エスプレッソおよびルンゴコーヒー(またはより多量のコーヒー)をさらに都合よく注出することができる。特に、カプセルの幾何学的な構成により、抽出装置に特殊な適応を施す必要もなく、同じ抽出装置で異なる容積のカプセルを収容することができる。
【0010】
ある形態において、セットにおける複数の異なるカプセルは、セットにおいて実質的に同じ角度または同じ段付き状の形状を有する少なくとも1つの本体上側部分を有する。「角度」という用語は、カプセルの回転中心軸線に対して、カプセルの軸方向(または本体上側部分の非直線プロファイルの場合、軸方向の曲率線)の部分の角度を意味する。
【0011】
本体上側部分は、例えば、切頭状(truncated)または円筒状部分でありうる。
【0012】
ある形態において、本体の下側部分は可変長であるのに対して、上側部分は、セットのすべてのカプセルで一定長でありうる。下側部分は、凸状、平坦または凹状でありうる。
【0013】
慣例により、「上側部分」という用語は、本体の自由縁部に近い本体の部分を意味し、「下側部分」という用語は、カプセルの本体の底部に向かう本体の部分を意味する。
【0014】
別の形態において、セットにおける複数の異なるカプセルの本体は、その表面全体で凸状であり、セットにおいて可変の深さを有する。この形態において、本体の上側部分および下側部分は、別個の部分ではなく、単一の凸状部分に融合される。
【0015】
好ましくは、不溶解性または抽出可能な成分の量は、セットにおいて増大する本体の貯蔵容積(すなわち深さ)に応じて増大する。その結果、セットにおける各カプセルは、異なる量および異なる特性の飲料を注出しうる。「特性」という用語は、飲料をさす場合、風味、濃度、泡またはクレマ、色合いなどを区別する飲料の任意の特質を意味する。このような特質は、任意の適当な分析手段によって測定可能であり、または任意の官能検査および/または目視検査によって示されうる。
【0016】
特に、複数の異なるカプセルは、セットにおいて焙煎および/または挽き具合の特性が異なる焙煎され挽かれたコーヒーを含む。カプセルは、リステロット、エスプレッソ、ルンゴなどの異なるコーヒーまたは同じタイプではあるが、異なる特性、例えば、異なる風味やクレマを有するコーヒーを注出するように適応されうる。
【0017】
カプセルシステムは、各カプセルを識別し、識別の結果に応じて抽出パラメータを調節するための、セットにおける複数の異なるカプセルに関連付けられた識別手段をさらに備える。調節可能なパラメータは、以下のパラメータ、すなわち、回転速度、流量、カプセルの出口での背圧および/またはカプセルに供給される液体の容量の1つ以上から選択されうる。識別手段は、さまざまな特性(量、風味、濃度、クレマ、色合いなど)を有する多種多様な飲料の注出に関与する。識別手段は、カプセルホルダを駆動する回転モータおよび/またはカプセルに液体を供給するポンプを制御することによって、遠心分離抽出装置に配置されてパラメータの調節を制御する制御手段に関連付けられる。
【0018】
本発明の別の特徴において、抽出装置は、セットにおけるカプセルの本体の部分を支持するように配設された支持面を有する回転型カプセルホルダを備え、側壁の部分は、カプセルの挿入直径と整合する基準直径を有する。このようにして、カプセルホルダの支持面は、同じ基準位置でセットにおける任意のカプセルを保持するために、セットにおけるカプセルの挿入直径に対応する基準直径を含む。この同じ位置は、例えば、抽出ユニットを閉じる前、基準面(P)に沿ったカプセル本体の自由縁部の基準位置によって決定されうる。さらに、カプセルホルダの支持面は、セットにおける複数の異なるカプセルの本体の上側部分を保持する一方で、カプセルの本体の下側部分を支持しない。
【0019】
その結果、セットにおけるすべてのカプセルが、各カプセルと、回転中の装置、すなわちカプセルホルダとの間の相対運動の可能性を制限しながら装置にぴったりと適合されるため、遠心分離中に振動を発生させるリスクが軽減される。
【0020】
本発明はまた、遠心分離抽出装置の回転カプセルホルダにおいて遠心分離することによって飲料を調製するためのカプセルであって、側壁および自由縁部を有する本体と、上壁と、抽出可能成分または不溶解性成分と、カプセルの本体の挿入直径(D)とを有し、この挿入直径(D)が、回転カプセルホルダの支持面の基準直径と整合するとともに、カプセルホルダに挿入されたときにカプセルを自己閉塞(self-blocking)するように、本体の自由縁部からある距離だけ下方に配置される、カプセルに関する。
【0021】
好ましくは、カプセルは、カプセルホルダの支持面の角度(β)よりわずかに小さい角度(α)で直径(D)の部分から延伸する上側部分を備える。
【0022】
上側部分の角度(α)は、カプセルホルダの支持部分の角度(β)よりも、好ましくは1〜8度、最も好ましくは1〜5度だけ小さい。
【0023】
このような構成により、カプセルの縁部に閉鎖力がかかると、カプセルホルダ内でのカプセルの自己閉塞機能が働き、遠心分離プロセス中の振動の危険性が結果的に軽減される。
【0024】
慣例により、「角度」とは、本明細書において、カプセルの軸方向の表面が、回転軸線に対応するカプセル本体の中心軸線に対してなす角度をさす。測定された表面は真っ直ぐな直線ではなく、本発明の範囲から逸脱することなく、わずかな曲率線を有しうることに留意されたい。
【0025】
さらに、振動を回避するためにすべてのカプセルをしっかりと支持する他にも、セットのすべてのカプセルを収容できるように、カプセルホルダの中心は中空でありうる。別の形態において、カプセルホルダは、セットの中に長め(すなわち、深め)のカプセルを受けることができる底壁を有しうる。この利点は、本質的に、固有のカプセルホルダで、セットにおけるすべてのカプセルを受け入れられることである。
【0026】
本発明は、遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出するためのシステムであって、
複数の異なる容積からなるカプセルセットと、
セットにおける複数の異なるカプセルに対応する識別手段と、
流量、回転速度、セットにおける任意のカプセル内の注入液体量、およびそれらの任意の組合せのパラメータのうち少なくとも1つを含む所定の抽出パラメータに従って、カプセルに対して遠心力を加える際に遠心分離抽出装置を作動可能な制御手段を有する遠心分離抽出装置と、
を備えるシステムにさらに関する。
【0027】
特に、制御手段は、流量およびカプセル内の注入液体量を含む、セットの任意のカプセルに対して装置を作動可能である。
【0028】
言い換えれば、セットにおける各カプセルに対して、基準流量または流量プロファイル(例えば、0.2〜10ml/secの範囲内に含まれる任意の値)および特定の注入液体量(例えば、25、40、120、230または400ml)が対応する。流量または容量の特定の値は、セットにおける複数の異なるカプセルに共通のものであってもよい。
【0029】
特に、流量は、装置および/またはカプセルの流れ制限手段によって遠心分離液体にかかる回転速度および/または背圧を変更することによって制御される。
【0030】
例えば、コーヒー飲料の場合、流量を0.2ml/sから10ml/sに変更することで、コーヒーの特性が大きく変化しうる。
【0031】
流量は、好ましくは、カプセルの容積に応じて制御される。好ましくは、容積が小さいほど、流量は少ない。
【0032】
制御はまた、流れ制限手段の背圧を変える、カプセルの識別可能な形状または開口特性などの受動手段によって実現されうる。例えば、セットにおける異なる容積のカプセルは、異なる出口断面が与えられることで、遠心分離液体にかかる異なる背圧値を加えうる。
【0033】
好ましくは、本発明のシステムは、制御手段による注入液体量および回転速度の調節、ならびに任意的に、選択的流れ制限手段による背圧の調節を意図している。
【0034】
識別手段は、装置を作動するための制御手段によって識別される。
【0035】
識別手段は、パラメータを能動的に制御するための制御手段に接続された検知手段によって検知可能であり、または受動的識別手段、例えば選択的流れ制限手段でありうる。
【0036】
特に、識別手段は、遠心分離抽出装置の制御手段に接続される検知手段によって認識されるカプセル認識手段を備え、制御手段は、認識の結果に応じて抽出パラメータを制御する。
【0037】
認識手段は、バーコード、色、標識、ロゴなど視覚コードによって、または無線周波数コード(RFID)、磁気要素、または識別可能な形状によって区別化されうる。
【0038】
本発明は、さらに、遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出する方法であって、
複数の異なる容積のカプセルからなるセットを準備するステップと、
カプセルのセットからカプセルを選択し、飲料を抽出するための遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えるステップとを含み、
流量、回転速度および注入液体量のうち少なくとも1つのパラメータが、選択されたカプセルの容積に応じて調節される方法に関する。
【0039】
好ましくは、流量および注入液体量は、カプセルの選択された容積に応じて調節される。
【0040】
別の形態において、回転速度およびカプセル内の注入液体量は、選択されたカプセルの容積に応じて調節される。
【0041】
この方法は、回転速度および/または遠心分離液体にかかる背圧を調節することによって流量を調節することを意図している。言い換えれば、流量は、飲料の調製中、回転速度および/または遠心分離液体にかかる背圧を調節することによって、設定値に可能な限り近い値に維持されるか、または所定のプロファイルに応じて変更される。
【0042】
他の形態において、識別手段は、ユーザインタフェースの選択手段として形成されうる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、小容積カプセルの概略側面図である。
【図2】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、大容積であるが同じ挿入直径のカプセルの概略側面図である。
【図3】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、図1のカプセルの底面図である。
【図4】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、図1のカプセルが挿入される遠心分離装置の概略図である。
【図5】本発明によるカプセルシステムの第1の実施形態を示す、図2のカプセルが挿入される装置の概略図である。
【図6】カプセルシステムに属するカプセルセットの第2の実施形態を示す、凸状底部分を有する小容積カプセルである。
【図7】カプセルシステムに属するカプセルセットの第2の実施形態を示す、凸状底部分を有する大容積カプセルである。
【図8】システムに属するカプセルセットの第3の可能な実施形態を示す、凸状本体の小容積カプセルである。
【図9】システムに属するカプセルセットの第3の可能な実施形態を示す、凸状本体の中容積カプセルである。
【図10】システムに属するカプセルセットの第3の可能な実施形態を示す、凸状本体の大容積カプセルである。
【図11】別のカプセルセットを有するカプセルシステムの第4の可能な実施形態を示す、小容積カプセルが挿入された遠心分離抽出装置を示す。
【図12】別のカプセルセットを有するカプセルシステムの第4の可能な実施形態を示す、大容積カプセルが挿入された遠心分離抽出装置を示す。
【図13】カプセルシステムの第5の可能な実施形態を示す、第5の実施形態によるカプセルホルダに異なる容積のカプセルが適合される方法の概略図を示す。
【図14】カプセルシステムの第5の可能な実施形態を示す、装置を閉じる前の図13の詳細図を示す。
【図15】カプセルシステムの第5の可能な実施形態を示す、装置を閉じた後の図13の詳細図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0044】
図1〜図5に示す本発明のカプセルシステムは、容積は異なるが同じ挿入直径「D」のカプセル1A、1Bのセットを備える。図1のカプセルは小容積カプセル1Aを示すのに対して、図2のカプセルは大容積カプセル1Bを示す。2つのカプセルは、外向きに延伸する自由縁部3を有するカップ形状の本体2と、上壁4とを備える。上壁は、熱または超音波の溶接線などのシールによって本体の自由縁部に接続される。上壁は、穿孔可能な膜、多孔性壁またはそれらの組合せでありうる。カプセルは、抽出装置(図3)においてカプセルを遠心分離している間の回転軸線を表す中心軸線「I」を有する。
【0045】
小容積カプセルと大容積カプセルとの間の容積差は、特に、セットのカプセル本体の深さ(d1、d2)を変更することによって得られる。特に、小容積カプセル1Aの本体の深さは、大容積カプセル1Bの本体の深さより浅い。この例において、挿入直径Dから始まり、カプセルの底部6に向かって延伸する切頭形の単一本体部分が設けられる。カプセル1Aおよび1Bの本体部分は同型であり、同じ角度「A」をなす。角度は、中心軸線Iに対して1から55度までの範囲でありうる。挿入直径「D」は、本明細書において、自由縁部3の下面と本体の上側部分との間の交差線で決定される。
【0046】
小容積カプセルは、大容積カプセルよりも少ない量の抽出浸出成分、例えば挽きコーヒーを含む。小容積カプセル1Aは、5〜15グラムの挽きコーヒーで25ml〜60mlのショートコーヒーを注出することを意図したものである。大容積カプセル1Bは、ロングコーヒー、すなわち60mlを超える(例えば、80〜500ml)コーヒーを注出することを意図したものであり、8〜30グラムの挽きコーヒーを含む。
【0047】
カプセル1A、1Bは、遠心分離抽出装置7(図4および図5)に挿入されることを意図したものである。図4に示すように、この装置は、ヒータ10と、カプセル内の液体を計量するためのポンプ11と、液体供給源、例えば貯水部12とを備える流体回路9によって、加熱液体、好ましくはお湯が供給される抽出ユニット8を備える。抽出ユニットは、インタフェースアセンブリ13と、カプセルホルダ14と、コレクタ15とを備える。遠心分離液体の流れ制限部を形成する周囲出口29が、カプセルの周囲、例えば、インタフェースアセンブリ13とカプセルホルダまたはカプセル6との間に設けられる。国際公開第2008/148656号パンフレットに記載されているように、カプセルの縁部に配置され作用するばね付勢弁によって、流れ制限部が形成されうる。弁の一部は、同時係属中の欧州特許出願公開第0817069.1号明細書に記載されているようなカプセル自体によって形成されうる。このような流れ制限部は、遠心分離液体に背圧を加える。コレクタは、カップに向けられた開口ダクトとして形成されているような飲料出口16によって終端する。カプセルホルダ14は、支持面18を形成する部分24が、カプセル1A、1Bの本体上側部分と相補的な形状になるように設計される。
【0048】
特に、カプセルホルダは、カプセルホルダにカプセルがぴったりと適合するように、直径「D」と実質的に等しい基準直径を形成する上側開口に基準環状線19を有することで、不安定化、ひいては、遠心分離中の振動をもたらす半径方向の遊びが生じる可能性をなくす。また、カプセルは、本体が半径方向に実質的に変形することなく、カプセルの上側縁部がホルダの上側フランジにしっかりと支持される。この構成において、抽出ユニットは、インタフェースアセンブリ13によってカプセルの上壁に対して閉じられる。アセンブリ13は、カプセルの回転軸線Iに正確に沿って導入可能な中央注入針20を備える。インタフェースアセンブリ13は、遠心分離飲料がカプセルホルダ14とインタフェースアセンブリ13との間の周囲出口29を通ってカプセルから流出することができるように、国際公開第2008/148604号パンフレットに記載されているように、カプセルの周囲に一連の出口穿孔器21を備えうる。カプセルが透過性上壁を有する場合、出口穿孔器を有しない装置が想定されうる。同様に、注入針は省略可能であり、上壁が透過性のものであれば、単純な注入穴に取り替えられうる。好ましくは、出口29は、飲料の流路に与えられる流れ制限部を形成し、カプセル内に圧力勾配をもたらす。このような制限部は、国際公開第2008/148646号パンフレットに記載されるような小さなオリフィスまたは絞り弁によって得られうる。
【0049】
図4および図5に示すように、カプセルホルダは、異なる容積(すなわち、可変深さの本体によって得られる)のカプセルを挿入可能なように、中央が中空のものでありうる。カプセルホルダの底部は、閉鎖されたものか、または部分的に閉鎖されたものでありうる。この場合、カプセルホルダの深さは、セットにある大容積(すなわち、より深い)カプセル、例えばカプセル1Bの深さに少なくとも等しい。
【0050】
カプセル1Aまたは1Bからの飲料の抽出は、比較的高速に、例えば500〜15000rpmで軸線Iに沿って回転(R)するように、インタフェースアセンブリ13およびカプセルホルダ14をカプセルとともに駆動することによって得られる。回転は、回転モータ(図示せず)によって行われる。液体は成分を通り抜け、カプセルの上側周囲で、すなわち、穿孔器21によって上壁に設けられた出口穿孔を通ってカプセルを離れる。多くの穿孔器が上壁の周囲に均等に配置されるため、飲料の層流が上壁の全周囲に沿って半径方向に分散することによって液体が流出しうる。遠心分離液体は、コレクタ8に対して、カプセルの縁部とインタフェースアセンブリ13の上面との間に放出される。その後、液体飲料は収集され、ダクト16を通って吐出される。
【0051】
図6および図7は、カプセル1Cおよび1Dが、カプセルの深さd1、d2を変更するための拡張部を形成する本体の上側部分26および下側部分22を備える、別のカプセルセットの第2の実施形態を示す。上側部分26は、カプセルホルダ内でカプセルを基準付ける(referencing)のに必要な同じ挿入直径Dと、一定の角度とを有する切頭部分を形成する。下側部分は、切頭状とは異なる形状を有し、図示するように凸状部分でありうる。大容積カプセル1Dにおいて、カプセルの深さd2は、より長い(すなわち、より深い)下側部分22によって増大される。小容積カプセル1Cにおいて、カプセルの深さd1は、より短い下側部分22によって低減される。
【0052】
図8、図9および図10は、本体がそれぞれ可変深さd1、d2、d3の単一の凸状部分23a、23b、23cを有する、本発明による別のカプセルセットの第3の実施形態を示す。凸状部分は、切頭状または円筒状部分のゾーンがないセットの特定のカプセル(例えば、カプセル1E、1F)の場合、連続的な凸状でありうる。大容積カプセル1Gは、切頭状または円筒状部分の上側部分を含んでもよい。
【0053】
図11および図12の実施形態において、抽出装置のカプセルホルダ3は、カプセルの上側部分26に対して支持面18を形成する第1の部分24と、小容積カプセル1H(図11)および大容積カプセル1I(図12)の両方を収容するのに十分な長さの閉鎖面をカプセルの下方に形成する下側部分25とを備える。一例として、小容積カプセルは25mlの貯蔵容積を有し、中サイズのカプセルは30mlの貯蔵容積を有し、大容積カプセルは40mlの貯蔵容積を有する。
【0054】
この実施形態において、小容積カプセル1Hおよび大容積カプセル1Iは、上側部分、例えば、同じ角度の上側部分26を備えてもよい。上側部分26の長さは同じものであってもよく、またはカプセルホルダの表面18と適合するものであれば、わずかに異なるものであってもよい。大容積カプセル1Iは、異なる角度(軸線Iに対して小さいことが好ましい)をもつ形状にされてもよい拡張部分、例えば、挿入直径「D」より小さな直径の円錐柱または円柱(図12)を形成する下側部分27を備えてもよい。
【0055】
可変深さのカプセルの数は、記載したすべての実施形態のセットにおいて限定されるものではないことは言うまでもない。
【0056】
すべての実施形態において、切頭部分は、連続的な切頭状面と同等であり、カプセルの底部の方向に直径が小さくなる一連の段付き部分または別の同等の任意の/装飾的な形状と取り替えられうることは言うまでもない。
【0057】
前の実施形態とは対照的に、図13〜図14の実施形態において、セットのカプセルは、カプセルの縁部からある距離だけ下方の位置の挿入直径Dを本体側壁の上側部分に有するカプセルホルダにおいて基準付け可能である。挿入直径Dは、セットのすべてのカプセルで一定である。抽出ユニットを閉じる前にカプセルホルダの適所にある異なる容積のカプセル1J、1Kおよび1Lが図示されている(小容積カプセル1Jおよびより深いカプセル1Lは点線でのみ表されており、中容積カプセル1Kが実線で表されている)。図から分かるように、すべてのカプセルは、一定の基準位置に沿ってカプセルの挿入直径Dの全体で保持される。特に、セットのすべてのカプセルは、共通する基準面Pに沿った上側縁部3を有する。対照的に、本体の導入深さ(d1、d2、d3)は、深さに応じて容積を適応するようにカプセルホルダ3において変化する。
【0058】
この形態において、傾斜角度αが支持面18の角度βよりわずかに小さくなるように上側部分を設計することが有益である。この角度は、カプセルの回転軸線Iまたは図14に示すように回転軸線Iに平行な軸線I1に対して測定される。その結果、セットのすべてのカプセルは、導入時、カプセルホルダ内で自己閉塞する。したがって、カプセルが、抽出ユニットを閉じる間にインタフェースアセンブリ13によって縁部3を押圧されると、本体は、最終的な回転配置になるようにわずかに変形するが、すべての遊びは適切に補償される。角度αは、カプセルホルダの支持部分の角度βより1〜5度小さいことが好ましい。
【0059】
本発明によるセットのカプセルは、セットにおいて焙煎レベルおよび/または挽き具合の特性が異なることが好ましい焙煎され挽かれたコーヒーを含む。
【0060】
コーヒー豆は、一般に、焙煎されたコーヒー豆を作るために焙煎され、次に、カプセルに充填される焙煎され挽かれたコーヒー粉末を生成するために挽かれる。焙煎を含む任意の適切なプロセスが使用されうる。本明細書において使用する場合、「焙煎」という用語は、コーヒーの風味を作り出すための、コーヒー豆に対する任意の適切な熱処理を含む。適切な焙煎技術は、オーブン焙煎、押出し焙煎、蒸気焙煎(例えば、後工程焙煎なし)、赤外線焙煎、マイクロ波焙煎、誘電/誘導加熱焙煎およびそれらの組合せを含みうるが、これらに限定されるものではない。
【0061】
コーヒー豆は、任意の所望の焙煎色に焙煎されうる。次に、焙煎されたコーヒー豆は、任意のコーヒー挽き器(例えば、Probat社またはMatsubo社の挽き器)を使用して挽かれうる。本発明の最終製品に望ましい特定の粒子サイズ分布に応じて、コーヒーの破片は、粒子体積分布、すなわち「グラインド量」に合わせて挽かれうる。コーヒーの粒度分布を決定するために、粒子サイズ分布(D4,3)および細粒分レベルは、典型的に、Malvern社の「Mastersizer S」(登録商標)を使用してレーザ回折によって決定される。
【0062】
本発明のシステムは、有益には、カプセルの容積および/またはカプセルの製品特性(粒度分布、焙煎など)および/または注出される飲料(リステロット、エスプレッソ、ルンゴ、大きいサイズまたは特大サイズのコーヒーなど)に応じて、抽出パラメータ、特に、流量およびカプセル内の注入液体量を確実に制御するために、各カプセルに関連付け可能な識別手段ID1、ID2、ID3(図4および図5)またはID4、ID5(図11および図12)を含む。本発明のシステムは、2つの主要パラメータ、すなわち、装置におけるカプセルの回転速度および遠心分離液体にかかる背圧によって影響を受ける異なる流量を注出可能である。所与の背圧に対して、回転速度が速いほど、流量は多い。逆に、所与の回転速度に対して、背圧が大きいほど、流量は少ない。同時係属中の国際出願PCT/EP08/066666号明細書に記載されているように、カプセルの封入物の下流に配置された流れ制限弁の閉鎖力を変更することによって、および/または、制限出口の断面を変更することによって、背圧が変更されうる。本発明の文脈において、「流量」という用語は、カプセルに注入される液体の流れ、特に水の流れをさし、流量計のような任意の適切な手段によって測定され、制御手段によってモニタ可能なものである。
【0063】
本質的に知られているように、回転速度の制御は、インタフェースアセンブリ13の一部、カプセルホルダ14およびカプセルをまとめて回転駆動する回転モータ(図示せず)を選択的に作動させる制御手段によって実行される。カプセルに注入される液体容量の制御は、適切な液体容量を計量するためにポンプ11を選択的に作動させる制御手段によって実行される。
【0064】
特に、識別手段は、異なる飲料容量を注出するために異なる注入液体容量を設定し、および/または、装置の回転速度を設定しうる。特に、セットの大容積カプセルの場合、識別手段は、小容積カプセルより大きな液体容量を設定しうる。また、識別手段は、液体がカプセルに滞留する時間がさまざまになるようにするために、大容積カプセルの場合より小さな容積のカプセルに対して異なる流量を設定し、および/または、大容積カプセルの場合より小さい容積のカプセルの場合、異なる回転速度を設定しうる。好ましくは、カプセルの容積が小さいほど、または飲料(すなわち、カプセル内の注入液体量)が少ないほど、流量は少ない。最後に、識別手段は、カプセル内または流れ制限部が配置される出口29での異なる背圧値を設定してもよい。好ましくは、注入液体量、回転速度およびカプセル内の背圧は、容量に応じて制御手段(C)によって調節可能であり/調節される。加えて、注入液体の温度は、液体ヒータ10を選択的に作動させる制御手段によって、カプセル容積に応じて変更可能である。例えば、液体の温度は、大量の液体の温度損失を補償するために高温で加熱されうる。
【0065】
図4および図5に示すように、識別手段は、ユーザインタフェース30の選択手段ID1、ID2、ID3として形成されうる。選択手段は、物理的スイッチ、またはタッチスクリーンの多肢選択式インタフェースなど任意の他の種類のセレクタでありうる。各セレクタは、注出される飲料の種類、例えば、リステロット、エスプレッソ、ルンゴなどのような特定のコーヒーの特定の種類、特定の飲料容量(例えば、25、40、80、110、250mlなど)および/または香りの強さおよび/または泡/クレマのレベルの特定の選択肢に対応する。制御手段Cに接続されているユーザインタフェースにより、抽出パラメータは、遠心分離抽出装置を作動させるための選択手段のユーザによる選択に応じて調節される。
【0066】
図11および図12に示す別の形態において、識別手段は、異なるカプセルに直接関連付けられる。この場合、識別手段ID4、ID5(またはそれ以上)は、カプセルに取り付けられ、または埋め込まれたカプセル認識手段である。認識手段は、装置に挿入されるカプセルの種類に関する情報を、検知装置31を介して抽出装置に伝達可能な任意の機械、光学、磁気または無線周波数認識手段でありうる。例えば、認識手段は、バーコード、色コード、RFIDタグ、磁気感知要素または機械キーもしくは形状である。
【0067】
これらの異なるパラメータの調節を制御する主な利益は、異なる容量(例えば、リステロット、エスプレッソ、ルンゴ、アメリカーノなど)、香りの強度および泡/クレマ容量の多種多様な飲料、特にコーヒーを供給する可能性を本質的にもたらす。本発明によって提供される可能性は、これらのパラメータをすべてまとめて適切に調節できない従来の抽出方法より優れている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えることによって、飲料を調製するためのカプセルシステムであって、
複数の異なるカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)を備え、前記セットにおける各カプセルが前記セットにおける他のカプセルと異なる固有の特性を有する飲料を選択的に注出するためのカプセルであり、前記セットにおける各カプセルが、側壁および自由縁部(3)を有する本体(2)と、上壁(4)と、抽出可能成分または不溶解性成分と、基準位置で前記遠心分離抽出装置(7)の回転型カプセルホルダ(14)に前記本体を挿入するための挿入直径(D)とを有し、
前記セットにおける前記複数の異なるカプセルが、前記セットにおける前記本体の可変深さ(d1、d2、d3)に応じた異なる貯蔵容積の前記本体(2)を有するが、前記セットにおけるすべてのカプセルが同じ挿入直径(D)を有する、カプセルシステム。
【請求項2】
前記セットにおける前記複数の異なるカプセル(1A、1B;1C、1D;1H、1I;1J、1K、1L)が、実質的に同じ角度または同じ段付き状の形状を有する少なくとも1つの本体上側部分(26)を有する、請求項1に記載のカプセルシステム。
【請求項3】
前記セットにおける前記複数の異なるカプセル(1C、1D;1H、1I、1J、1K、1L)が、前記異なる貯蔵容積を提供するための可変深さを有する少なくとも1つの下側部分(22、27)を有する、請求項2に記載のカプセルシステム。
【請求項4】
前記セットにおける前記複数の異なるカプセル(1E、1F、1G)が、前記異なる貯蔵容積を提供するための可変深さの本体凸状部分を有する、請求項1に記載のカプセルシステム。
【請求項5】
前記不溶解性成分または前記抽出可能成分の量が、前記セットにおいて増大する貯蔵容積に応じて増大する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカプセルシステム。
【請求項6】
前記カプセルが、前記セットにおいて異なる焙煎および/または挽き具合の特性を有する焙煎され挽かれたコーヒーを含む、請求項5に記載のカプセルシステム。
【請求項7】
前記セットにおける前記複数のカプセルが、各カプセルを識別し、前記識別の結果に応じて前記遠心分離抽出装置における抽出パラメータを調節するための識別手段を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカプセルシステム。
【請求項8】
調節可能な前記パラメータが、抽出中の前記カプセルの回転速度および/または流量および/または前記カプセルに供給される液体の容量を含む、請求項7に記載のカプセルシステム。
【請求項9】
前記識別手段のセットが、前記カプセルに注入される液体または前記カプセルから抽出される飲料の流れ、好ましくは流量のモニタリングに関する少なくとも1つのパラメータを含む、請求項7または8に記載のカプセルシステム。
【請求項10】
前記セットにおける任意のカプセルの前記本体の部分を支持するように配設された支持面(18)を有する、前記遠心分離抽出装置のカプセルホルダ(14)を備え、前記本体の部分が、前記セットにおける任意のカプセルの挿入直径(D)と整合する基準直径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のカプセルシステム。
【請求項11】
前記カプセルホルダの前記支持面(18)が、前記セットにおける前記複数の異なるカプセルの前記本体の上側部分(26)を保持する一方で、前記カプセル(1A、1B、1C、1D、1H、1I)の前記本体の下側部分(22、27)を支持しない、請求項10に記載のカプセルシステム。
【請求項12】
遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出するためのシステムであって、
複数の異なる容積を有するカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)と、
前記セットにおける前記複数の異なるカプセルに対応する識別手段(ID1、ID2、ID3;ID4、ID5)と、
流量、回転速度、前記セットにおける任意のカプセル内の注入液体量、注入液体の温度およびそれらの組合せのパラメータのうち少なくとも1つを含む所定の抽出パラメータに従って、前記カプセルに対して遠心力を加える際に前記遠心分離抽出装置を作動可能な制御手段(C)を有する、遠心分離抽出装置と、
を備えるシステム。
【請求項13】
前記制御手段(C)が、前記流量および前記セットにおける任意のカプセル内の前記注入液体量に従って、前記カプセルに対して前記遠心分離抽出装置を作動させる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記識別手段が、前記遠心分離抽出装置の前記制御手段(C)に接続される検知手段(31)によって認識されるカプセル認識手段(ID4、ID5)を備え、前記遠心分離抽出装置が、前記認識の結果に応じて前記抽出パラメータを制御する、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出する方法であって、
複数の異なる容積を有するカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)を準備するステップと、
カプセルの前記セットからカプセルを選択し、飲料を抽出するための前記遠心分離抽出装置内で前記カプセルに遠心力を加えるステップと、
を含み、
流量、回転速度および注入液体量のうち少なくとも1つのパラメータが、前記選択されたカプセルの容積に応じて調節される、方法。
【請求項16】
前記流量および前記注入液体量が、前記選択されたカプセルの容積に応じて調節される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カプセルの容積が小さいほど、前記流量が少なくなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カプセルの容積が小さいほど、前記カプセル内の前記注入液体量が少なくなる、請求項16または17に記載の方法。
【請求項1】
遠心分離抽出装置内でカプセルに遠心力を加えることによって、飲料を調製するためのカプセルシステムであって、
複数の異なるカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)を備え、前記セットにおける各カプセルが前記セットにおける他のカプセルと異なる固有の特性を有する飲料を選択的に注出するためのカプセルであり、前記セットにおける各カプセルが、側壁および自由縁部(3)を有する本体(2)と、上壁(4)と、抽出可能成分または不溶解性成分と、基準位置で前記遠心分離抽出装置(7)の回転型カプセルホルダ(14)に前記本体を挿入するための挿入直径(D)とを有し、
前記セットにおける前記複数の異なるカプセルが、前記セットにおける前記本体の可変深さ(d1、d2、d3)に応じた異なる貯蔵容積の前記本体(2)を有するが、前記セットにおけるすべてのカプセルが同じ挿入直径(D)を有する、カプセルシステム。
【請求項2】
前記セットにおける前記複数の異なるカプセル(1A、1B;1C、1D;1H、1I;1J、1K、1L)が、実質的に同じ角度または同じ段付き状の形状を有する少なくとも1つの本体上側部分(26)を有する、請求項1に記載のカプセルシステム。
【請求項3】
前記セットにおける前記複数の異なるカプセル(1C、1D;1H、1I、1J、1K、1L)が、前記異なる貯蔵容積を提供するための可変深さを有する少なくとも1つの下側部分(22、27)を有する、請求項2に記載のカプセルシステム。
【請求項4】
前記セットにおける前記複数の異なるカプセル(1E、1F、1G)が、前記異なる貯蔵容積を提供するための可変深さの本体凸状部分を有する、請求項1に記載のカプセルシステム。
【請求項5】
前記不溶解性成分または前記抽出可能成分の量が、前記セットにおいて増大する貯蔵容積に応じて増大する、請求項1〜4のいずれか一項に記載のカプセルシステム。
【請求項6】
前記カプセルが、前記セットにおいて異なる焙煎および/または挽き具合の特性を有する焙煎され挽かれたコーヒーを含む、請求項5に記載のカプセルシステム。
【請求項7】
前記セットにおける前記複数のカプセルが、各カプセルを識別し、前記識別の結果に応じて前記遠心分離抽出装置における抽出パラメータを調節するための識別手段を備える、請求項1〜6のいずれか一項に記載のカプセルシステム。
【請求項8】
調節可能な前記パラメータが、抽出中の前記カプセルの回転速度および/または流量および/または前記カプセルに供給される液体の容量を含む、請求項7に記載のカプセルシステム。
【請求項9】
前記識別手段のセットが、前記カプセルに注入される液体または前記カプセルから抽出される飲料の流れ、好ましくは流量のモニタリングに関する少なくとも1つのパラメータを含む、請求項7または8に記載のカプセルシステム。
【請求項10】
前記セットにおける任意のカプセルの前記本体の部分を支持するように配設された支持面(18)を有する、前記遠心分離抽出装置のカプセルホルダ(14)を備え、前記本体の部分が、前記セットにおける任意のカプセルの挿入直径(D)と整合する基準直径を有する、請求項1〜9のいずれか一項に記載のカプセルシステム。
【請求項11】
前記カプセルホルダの前記支持面(18)が、前記セットにおける前記複数の異なるカプセルの前記本体の上側部分(26)を保持する一方で、前記カプセル(1A、1B、1C、1D、1H、1I)の前記本体の下側部分(22、27)を支持しない、請求項10に記載のカプセルシステム。
【請求項12】
遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出するためのシステムであって、
複数の異なる容積を有するカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)と、
前記セットにおける前記複数の異なるカプセルに対応する識別手段(ID1、ID2、ID3;ID4、ID5)と、
流量、回転速度、前記セットにおける任意のカプセル内の注入液体量、注入液体の温度およびそれらの組合せのパラメータのうち少なくとも1つを含む所定の抽出パラメータに従って、前記カプセルに対して遠心力を加える際に前記遠心分離抽出装置を作動可能な制御手段(C)を有する、遠心分離抽出装置と、
を備えるシステム。
【請求項13】
前記制御手段(C)が、前記流量および前記セットにおける任意のカプセル内の前記注入液体量に従って、前記カプセルに対して前記遠心分離抽出装置を作動させる、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記識別手段が、前記遠心分離抽出装置の前記制御手段(C)に接続される検知手段(31)によって認識されるカプセル認識手段(ID4、ID5)を備え、前記遠心分離抽出装置が、前記認識の結果に応じて前記抽出パラメータを制御する、請求項12または13に記載のシステム。
【請求項15】
遠心分離抽出装置内で遠心力が加えられるカプセルを使用して飲料を抽出する方法であって、
複数の異なる容積を有するカプセルからなるセット(1A、1B;1C、1D;1E、1F、1G;1H、1I;1J、1K、1L)を準備するステップと、
カプセルの前記セットからカプセルを選択し、飲料を抽出するための前記遠心分離抽出装置内で前記カプセルに遠心力を加えるステップと、
を含み、
流量、回転速度および注入液体量のうち少なくとも1つのパラメータが、前記選択されたカプセルの容積に応じて調節される、方法。
【請求項16】
前記流量および前記注入液体量が、前記選択されたカプセルの容積に応じて調節される、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記カプセルの容積が小さいほど、前記流量が少なくなる、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記カプセルの容積が小さいほど、前記カプセル内の前記注入液体量が少なくなる、請求項16または17に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公表番号】特表2013−502954(P2013−502954A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526044(P2012−526044)
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062366
【国際公開番号】WO2011/023711
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年8月25日(2010.8.25)
【国際出願番号】PCT/EP2010/062366
【国際公開番号】WO2011/023711
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(599132904)ネステク ソシエテ アノニム (637)
【Fターム(参考)】
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