説明

遠心力集塵装置及びこれを用いた電気掃除機

【課題】遠心力集塵装置において、小型で、且つ塵埃の捕集効率を向上させること。
【解決手段】塵埃を旋回流で遠心分離する内側分離室4と、内側分離室4を内部に有すると共に、内側分離室4内で塵埃の一部を分離された排気から、塵埃を旋回流で更に遠心分離する外側分離室31と、内側分離室4の内壁の接線方向に含塵空気を流入させる吸気口2と、内側分離室4内で塵埃の一部を分離された排気を外側分離室31に向け、内側分離室4の外壁の略円周方向に排出する排出口とを備え、外側分離室31の外郭に、塵埃ろ過用のフィルタ6を有する集塵体7を形成したもので、内側分離室4内に発生した旋回流によって綿ごみ等のごみが分離され集塵室に捕集されると共に、分離し切れなかった細塵等の塵埃は、外側分離室31のフィルタ6を有する集塵体7によって旋回流を利用して捕集され、小型で塵埃の捕集効率の良い遠心力集塵装置を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、塵埃を含む空気流から旋回流の遠心力により塵埃を分離し、塵埃のみを集塵する遠心力集塵装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の遠心力集塵装置はエアサイクルシステムやサイクロン方式の電気掃除機に多く利用されている(例えば、特許文献1、2参照)。
【0003】
図6及び図7は、上記特許文献1に記載された従来の遠心力集塵装置を示すものである。図6及び図7に示すように、遠心力集塵装置35は、塵埃を含む空気流Aを吸引する吸気口2と、吸気口2に沿って略円筒形の内形構造を有し空気流Aを旋回させて発生した旋回流Bで空気流から塵埃を遠心分離する分離室4と、分離された塵埃を集塵する集塵室5と、前記塵埃と分離された空気流Dを分離室4内から排気口6を通して遠心力集塵装置35外へ排出する排気管7から構成された遠心力集塵装置が開示されている。
【0004】
また、上記特許文献2において、接続パイプ内部に配設した旋回流発生翼にて直進する気流を旋回流に変換し、この旋回流中で発生する遠心力作用によって細塵を開口部を通じて細塵用集塵室に送り込み、その細塵用集塵室内での旋回流でさらに細塵を空気と分離する構成の遠心力集塵装置が開示されている。
【特許文献1】特開2000−317349号公報
【特許文献2】特開平8−322768号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような上記従来のサイクロン作用による遠心力集塵装置にあっては、分離されるべき塵埃が排気パイプに向かう気流の影響を受けると舞い上げられて排出され、捕集効率が悪くなるためサイクロン作用による遠心力集塵部の長さを長く取る必要があり、機器が大型化し、背丈の低い部分や機器への組込みには不具合があった。特に細塵は、舞い上がり易いため、サイクロン作用では分離しきれず排気と共に一部が排出されるため、それをろ過するフィルタ等が下流側に必要となり、集塵装置がさらに大きくなり、構造も複雑になるという課題を有していた。
【0006】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、本体を大型化することなく小型コンパクトな機器に組込み可能で、吸い込み性能の持続性の良いサイクロン作用による遠心力集塵装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記従来の課題を解決するために、本発明の遠心力集塵装置は、略円筒形状を有し含塵空気から塵埃を旋回流で遠心分離する内側分離室と、前記内側分離室を内部に有すると共に、前記内側分離室にて塵埃の一部を分離された排気から、塵埃を旋回流で更に遠心分離する外側分離室と、前記外側分離室の外部から前記内側分離室の内壁の接線方向に含塵空気を流入させる吸気口と、前記内側分離室にて塵埃の一部を分離された排気を外側分離室に向けて、前記内側分離室の外壁の略円周方向に排出する排出口とを備え、前記外側分離室の外郭に、塵埃ろ過用のフィルタを有する集塵体を形成するものである。
【0008】
これによって、内側分離室内に発生した旋回流によって綿ごみ、粗塵等のごみが分離され捕集されると共に、分離し切れずに内側分離室から外側分離室に排出された細塵は、外側分離室の外郭を形成する塵埃ろ過用のフィルタによって、旋回流を利用して捕集されるものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の遠心力集塵装置は、サイクロン作用を作り出す分離室が小型でも分離ごみが舞い上がりにくく、また内側分離室を通過した細塵を外側分離室の外郭を形成したフィルタ(集塵体)にて旋回流を利用して捕集するようにしたため、比較的少ないフィルタ面積でも細塵の捕集率が高く、高い吸込み性能が持続でき、小型かつシンプルな遠心力集塵装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、略円筒形状を有し含塵空気から塵埃を旋回流で遠心分離する内側分離室と、前記内側分離室を内部に有すると共に、前記内側分離室にて塵埃の一部を分離された排気から、塵埃を旋回流で更に遠心分離する外側分離室と、前記外側分離室の外部から前記内側分離室の内壁の接線方向に含塵空気を流入させる吸気口と、前記内側分離室にて塵埃の一部を分離された排気を外側分離室に向けて、前記内側分離室の外壁の略円周方向に排出する排出口とを備え、前記外側分離室の外郭に、塵埃ろ過用のフィルタを有する集塵体を形成する構成としたことにより、サイクロン作用を作り出す内側分離室で塵埃の一部を分離した後、外側分離室の外郭に形成した集塵体で、内側分離室を通過した排気を、更にろ過できるため、内側分離室で分離しきれなかった細塵を効率よく捕集することができ、高性能を持続でき、小型かつシンプルな構成の遠心力集塵装置を実現することができる。
【0011】
第2の発明は、第1の発明の内側分離室より外側分離室に向けて排出された排気が、塵埃ろ過用のフィルタの面とほぼ平行に流れるように、集塵体を形成したもので、集塵体表面に付着した細塵を、外側分離室内で作り出される旋回流によって、効率よく捕集することができる。
【0012】
第3の発明は、第1または第2の発明の集塵体で捕獲した塵埃を溜める細塵室を、内側分離室で捕獲した塵埃を溜める集塵室に近接して設けたもので、細塵室と集塵室とを一箇所に集約することにより、ごみ蓄積量の確認やごみ捨て作業の簡便化を図るものである。
【0013】
第4の発明は、第3の発明の細塵室と集塵室とを、同時に開口する開閉蓋を配備してなるもので、近接する細塵室と集塵室とを、ごみ捨ての際に同時に開口できるので、ごみ捨て作業が容易になるものである。
【0014】
第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明の集塵体は、その一部に、旋回流を発生させる流路を形成したことにより、集塵体の面積を有効に活用しながら旋回流によって効率よく塵埃を捕集することができる。
【0015】
第6の発明は、第1〜第5のいずれか1つの発明の排出口に、粗塵をろ過する濾材を設けたもので、気流の一部を内側分離室内で旋回させることにより、綿ごみなどの粗塵や細塵を旋回させて、旋回する粗塵でもって細塵をも捕集できるなど、低い圧損ながら捕集効率を高めることができる。
【0016】
第7の発明は、第1〜第6のいずれか1つの発明の遠心力集塵装置を用いた電気掃除機としたもので、優れた吸込み性能を持続するサイクロン式の電気掃除機を提供することが可能となる。
【0017】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0018】
(実施の形態1)
図1〜図5は、本発明の第1の実施の形態における遠心力集塵装置を示すものである。
【0019】
図1〜図5において、遠心力集塵装置1は、遠心力集塵装置1の上方に配置し塵埃を含む空気流Aを遠心力集塵装置1内に接線方向に流入させ旋回流Bを発生させる吸気口2と、旋回流Bで塵埃を含む空気(含塵空気)流から塵埃を遠心分離する略円筒形の内側分離室4と、分離された塵埃を集塵する集塵室5と、内側分離室4を内部に有し、上記と同様に内部で旋回流を発生させて、内側分離室4内で一部の塵埃を分離され内側分離室4を通過して流れ込む排気から塵埃を遠心分離する外側分離室31と、前記外側分離室31の外郭の一部を構成する集塵体7とを備え、前記集塵体7は、塵埃(例えば、粗塵、細塵等)を濾過するフィルタ6によって形成されている。
【0020】
ここで、外側分離室31の外郭を形成する集塵体7の上部は、天板8によって上部を一体に接合しており、天板の一部にも小フィルタ9が配備されている。
【0021】
集塵体7の下部には塵埃(例えば、粗塵、細塵等)を集塵する細塵室10が形成してあり、細塵室10と内側分離室4下部の集塵室5とは一体に接合してある。
【0022】
11は細塵室10と集塵室5とを、同時に開閉する開閉蓋であり、フック12で係止されるようになっている。
【0023】
なお開閉蓋11に当接する細塵室10及び集塵室5の下端にはタイト用のパッキン13が取り付けてある。
【0024】
吸気口2は、外側分離室31の外郭を形成する集塵体7と、内側分離室4とを貫通する形で配備してあり、吸気口2周囲においても集塵体7と分離室4の間に空気路(隙間)が設けられている。14は開閉蓋11のヒンジである。15は集塵体7を支える枠体で、開口16が複数箇所形成してあり、天板8と、細塵室10に接合されており、集塵装置全体の剛性を確保している。集塵体7には、渦巻き状に折り曲げた渦室17を複数個形成しており、渦室17内でも旋回流Cが生じるようにしてあり、細塵を分離する。
【0025】
次に、本実施の形態における気流の流れ等を説明する。
【0026】
遠心力集塵装置1は、掃除機の集塵装置装入室19に設置され、ファンモータ20の吸引力が遠心力集塵装置1に均一に加わることにより、吸気口2から含塵空気が分離室4に接線方向に入る。3は吸気口2と集塵装置装入室19のタイトを行う円形パッキンである。
【0027】
分離室4には網状の濾材で形成したプレフィルタ18を取り付けた排出口23が、らせん状で、かつ上部から下部へと下がるに従って、徐々に開口面積が広がるように設けてある。プレフィルタ18は綿ごみ等の粗塵を捕獲するものであり、プレフィルタ18の網の目は粗いものであるが完全開放でないため、内側分離室4内の空気の一部は内側分離室4外である外側分離室31に排出され、一部は内側分離室4内で旋回流Bとなる。内側分離室4内部で旋回流Bが生じているため排出される気流も旋回流Bに沿って流れ出し、内側分離室4の円周方向(円の接線方向)に排出される。内側分離室4の円周面を集塵体7で形成しているため、円周方向に排出された気流は、略円弧状に形成した集塵体7のフィルタ6面に沿ってフィルタ6面とほぼ平行に流れ、集塵体7の形状に沿った旋回流Dとなり、気流と細塵等の塵埃を分離する作用が働く。
【0028】
内側分離室4内では塵埃を含む吸引空気が旋回流によって回転している間に気流と塵埃が分離され、塵埃は集塵室5に溜まる。排出口23は内側分離室4の上部ほど開口面積が小さいため、上部では旋回する気流が多く、下方に行くに従って旋回流が少なくなり内側分離室4外に排出される気流が多くなる。そのため内側分離室4の高さを、従来に比べ低くしても下方の集塵室5に落ちたごみは、ほとんど舞い上がらずに集塵室に5に溜まる。また旋回流で分離された綿ごみは、旋回する間に固まり、プレフィルタ18の表面をクリーニングしながら回転する。その際プレフィルタ18を通過しようとする細塵の一部が綿ごみに付着し、捕集されるので、プレフィルタ18が低圧損の目の粗い濾材から構成されていても目詰まりし難く、かつ高い捕集性能を得ることができる。
【0029】
外側分離室31内に入った空気はフィルタ6に沿って旋回するが、排気口室23から流路面積が広い空間に排出されるため、流速が落ちて細塵等の塵埃が落下し易くなり、旋回流による気流と細塵等の塵埃の分離作用が促進される。
【0030】
フィルタ6の目に対して細塵等の塵埃を含む気流はほぼ平行方向で衝突するため、フィルタ6面に対して垂直な気流で衝突する場合に比べ、見かけ上フィルタの目は、狭くなり、フィルタの目が少し大きく、比較的圧損の少ないものでも、細塵等の塵埃を高効率で捕集することができる。
【0031】
またフィルタ6の目の奥までは細塵が入り込み難くなり、振動などの除塵動作によっても、付着した細塵等の塵埃が落ち易く、性能が回復し易くなる。圧損が少なく、目詰まりも軽減できるため、フィルタ6の面積を従来機構のフィルタ面積より小さくしても吸込み性能及び性能の持続性が確保できるため、集塵体7自体を小さくすることが可能となる。
【0032】
細塵等の塵埃を捕集された清浄空気は、枠体15の開口16より排出され、ファンモータ20に吸引された後、掃除機外に排出される。通常、フィルタ6は吸引力を受けると外側に広がるが枠体15によって外周を保持されるため、広がることはなく、掃除機の集塵装置収納室19の内壁との距離が一定に保たれ、空気通路が常に確保される。また集塵体7を分離室4周囲に張り巡らせることにより、広い面積を確保することができるため、フィルタ6をプリーツ加工する必要がなく、ほぼ平面形状で構成できるので、除塵の際に付着したごみが落ち易くなる。
【0033】
本実施の形態では、遠心力集塵装置1を振動させる振動体21が掃除機運転ごとに、1回駆動し、プレフィルタ18及びフィルタ6に付いたごみ、細塵等の塵埃を振動によって落とすため、常に表面は、ほぼ初期状態を持続することができる。
【0034】
なお外側分離室31の内部の旋回流は、旋回流Dだけでなく、渦室17の渦状形状の軸部の空気を小フィルタ9からも吸引することによって旋回流Cを生じさせており、細塵を分離、捕集できる能力を高め、フィルタ面積を有効活用すると共に、掃除用のブラシ等が挿入できる空間を確保している。
【0035】
溜まったごみ、細塵等の塵埃は、集塵装置収納室19の蓋体22を開けて遠心力集塵装置1を取り出し、フック12を解除して開閉蓋11を開けることにより、集塵室5と細塵室10のごみ、細塵を同時に廃棄することができ、容易にごみ捨てをすることができる。
【0036】
以上のように、本実施の形態においては、プリーツ加工がない比較的面積の小さいフィルタ6で形成した集塵体7を外郭に形成した外側分離室31に、塵埃を旋回流で遠心分離する内側分離室4を収めることにより、遠心力集塵装置1自体を小型に構成でき、それでいて内側分離室4内で綿ごみ等の粗塵と細塵の一部を、集塵体7で細塵等の塵埃を、旋回流を利用して捕獲することができ、優れた吸い込み性能が持続する、使い勝手の良い遠心力集塵装置1を提供することができる。
【0037】
尚、本実施の形態では、キャニスタ型の電気掃除機に遠心力集塵装置を設置する場合で説明を行ったが、アップライト型の電気掃除機に設置する場合でも同様の効果が得られるものである。
【産業上の利用可能性】
【0038】
以上のように、本発明にかかる遠心力集塵装置は、小型でありながら優れた吸い込み性能の持続を実現するもので、サイクロン方式の電気掃除機の性能及び使い勝手の向上に活用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】本発明の実施の形態1における遠心力集塵装置の平面断面図
【図2】同遠心力集塵装置の縦断面図
【図3】同遠心力集塵装置の斜視図
【図4】同遠心力集塵装置の内側分離室と集塵体との分解斜視図
【図5】同遠心力集塵装置のフィルタの部分断面図
【図6】従来の遠心力集塵装置の縦断面図
【図7】同遠心力集塵装置の平面図
【符号の説明】
【0040】
1 遠心力集塵装置
2 吸気口
3 円形パッキン
4 内側分離室
5 集塵室
6 フィルタ
7 集塵体
8 天板
9 小フィルタ
10 細塵室
11 開閉蓋
12 フック
13 パッキン
14 ヒンジ
15 枠体
16 開口
17 渦室
18 プレフィルタ
19 集塵装置収納室
20 ファンモータ
21 振動体
22 蓋体
23 排出口
31 外側分離室

【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状を有し含塵空気から塵埃を旋回流で遠心分離する内側分離室と、前記内側分離室を内部に有すると共に、前記内側分離室にて塵埃の一部を分離された排気から、塵埃を旋回流で更に遠心分離する外側分離室と、前記外側分離室の外部から前記内側分離室の内壁の接線方向に含塵空気を流入させる吸気口と、前記内側分離室にて塵埃の一部を分離された排気を外側分離室に向けて、前記内側分離室の外壁の略円周方向に排出する排出口とを備え、前記外側分離室の外郭に、塵埃ろ過用のフィルタを有する集塵体を形成した遠心力集塵装置。
【請求項2】
内側分離室より外側分離室に向けて排出された排気が、塵埃ろ過用のフィルタの面とほぼ平行に流れるように、集塵体を形成した請求項1記載の遠心力集塵装置。
【請求項3】
集塵体で捕獲した塵埃を溜める細塵室を、内側分離室で捕獲した塵埃を溜める集塵室に近接して設けた請求項1または2記載の遠心力集塵装置。
【請求項4】
細塵室と集塵室とを、同時に開口する開閉蓋を備えた請求項3記載の遠心力集塵装置。
【請求項5】
集塵体は、その一部に、旋回流を発生させる流路を形成した請求項1〜4のいずれか1項に記載の遠心力集塵装置。
【請求項6】
排出口に、粗塵をろ過する濾材を設けた請求項1〜5のいずれか1項に記載の遠心力集塵装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載の遠心力集塵装置を用いた電気掃除機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−207085(P2008−207085A)
【公開日】平成20年9月11日(2008.9.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−45069(P2007−45069)
【出願日】平成19年2月26日(2007.2.26)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】