遠心式の分散装置
【課題】ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を向上し得る遠心式の分散装置を提供する。
【解決手段】ケーシング1の前壁部2の内面に環状溝10が形成されると共に、前壁部2に対向するロータ5の前方側には、掻き出し片9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設され、予備混合物Fpを回転翼6の回転によりケーシング1の内部に吸引導入する導入口11が、環状溝10と連通する状態で前壁部2に設けられ、生成流体Fを吐出する吐出口12が、翼室8に連通する状態で外周壁部4に設けられた遠心式の分散装置であって、掻き出し片9が、ロータ5の径方向での位置を異ならせて複数備えられ、環状溝10が、ロータ5の径方向での異なる位置に夫々備えられた掻き出し片9に対応して、同心状に複数設けられている。
【解決手段】ケーシング1の前壁部2の内面に環状溝10が形成されると共に、前壁部2に対向するロータ5の前方側には、掻き出し片9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設され、予備混合物Fpを回転翼6の回転によりケーシング1の内部に吸引導入する導入口11が、環状溝10と連通する状態で前壁部2に設けられ、生成流体Fを吐出する吐出口12が、翼室8に連通する状態で外周壁部4に設けられた遠心式の分散装置であって、掻き出し片9が、ロータ5の径方向での位置を異ならせて複数備えられ、環状溝10が、ロータ5の径方向での異なる位置に夫々備えられた掻き出し片9に対応して、同心状に複数設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端開口が前壁部と後壁部とで閉じられた円筒状の外周壁部を備えたケーシングの内部に、径方向外方側に回転翼を備えたロータが回転駆動自在な状態で同心状に配設され、複数の透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータが前記ロータにおける前記前壁部側である前方側で且つ前記回転翼の内側に位置させて同心状に固定配設され、前記ステータと前記ケーシングの外周壁部との間に、前記回転翼が周回する環状の翼室が形成され、前記前壁部の内面に環状溝が形成されると共に、前記前壁部に対向する前記ロータの前方側には、掻き出し片がその先端部を前記環状溝内に進入した状態で前記ロータと一体的に周回可能に配設され、分散質と液相分散媒とが予備混合された予備混合物を前記回転翼の回転により前記ケーシングの内部に吸引導入する導入口が、前記環状溝と連通する状態で前記前壁部に設けられ、分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体を吐出する吐出口が、前記翼室に連通する状態で前記外周壁部に設けられた遠心式の分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる遠心式の分散装置(以下、単に分散装置と記載する場合がある)は、回転翼の回転による吸引作用により、分散質と液相分散媒との予備混合物を導入口から吸引導入して、分散質と液相分散媒とを更に混合し、その混合により生成された生成流体を回転翼の回転により生じる遠心力により吐出口から吐出するものである。
つまり、掻き出し片をその先端部を環状溝内に進入させた状態でロータと一体的に周回させて、導入口から環状溝に導入される予備混合物を掻き出し片の先端部により掻き出すことにより、予備混合物をせん断して細かく解砕すると共に予備混合物の流動を乱して、分散質と液相分散媒とを混合するように構成されている。
【0003】
以下、掻き出し片の先端部における側面のうち、ロータの径方向外方側に向く側面を外向き側面と記載し、ロータの径方向内方側に向く側面を内向き側面と記載し、並びに、環状溝の内面のうち、ロータの径方向外方側に位置して径方向内方側を向く内面を内向き内面と記載し、ロータの径方向内方側に位置して径方向外方側を向く内面を外向き内面と記載して、掻き出し片による予備混合物のせん断作用について説明を加える。
つまり、掻き出し片の先端部が環状溝に進入した状態では、掻き出し片の先端部の外向き側面と環状溝の内向き内面とが互いに対向し、掻き出し片の先端部の内向き側面と環状溝の外向き内面とが互いに対向することになる。
【0004】
そして、掻き出し片がその先端部が環状溝内に進入した状態で周回すると、導入口から環状溝に導入される予備混合物に対して、主として、掻き出し片の先端部の外向き側面と環状溝の内向き内面との間、及び、掻き出し片の先端部の内向き側面と環状溝の外向き内面との間の2領域においてせん断作用が働く。そして、そのせん断作用により、予備混合物が細かく解砕されると共に、せん断作用が働くことにより予備混合物の流動が乱されて、分散質と液相分散媒とが混合される。
【0005】
ちなみに、分散質として例えば粉体が挙げられ、液相分散媒として例えば溶媒が挙げられ、生成流体としては、例えば、粉体を溶媒に溶解させてペーストが生成される。
粉体としては、粉体であれば特に除外されるものではないが、例えば、電池電極材料等の化学原料、脱脂粉乳や小麦粉等の食品原料、医薬原料等であって、顆粒、粉体、細粒等の粉体(これら粉体の混合物を含む)を例示することができる。粉体には、粉粒体も含まれる。また、溶媒としては、粉体を良好に溶解することができる溶媒であれば特に除外されるものではないが、例えば水を例示することができる。
【0006】
このような分散装置において、従来は、掻き出し片が、ロータの径方向において一箇所に存在する状態で設けられ、環状溝が、ロータの径方向での一箇所に存在する掻き出し片に対応して、一条設けられていた(例えば、特許文献1参照。)。
尚、上記特許文献1では、複数の掻き出し片が、ロータの径方向における同位置に位置する状態で周方向に一列に並べて配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−216172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の分散装置では、掻き出し片がロータの径方向においては一箇所にしか存在しないため、導入口から導入される予備混合物に対して、ロータの径方向における異なる2領域でしかせん断力を作用させることができず、又、予備混合物の流動に乱れを十分に生じさせることができない。特に、分散質(例えば、粉体)の割合が高くなるほど流動性は低くなり、分散質が凝集した塊(いわゆるダマ)が発生し易く、しかも、発生するダマが大きくなり易いので、分散質と液相分散媒との混合を十分に行うことができず、改善が望まれていた。
【0009】
即ち、分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体の用途として、例えば、対象物に分散質を主成分とする膜や部材を形成する用途がある。この用途では、例えば、生成流体を対象物に塗布した後に加熱する等の処理を実行することにより、液相分散媒を蒸発させて、分散質を主成分とする膜や部材を形成する。このような用途においては、予備混合物中の液相分散媒の比率を低くして、処理の効率化を図ることが望まれる。
しかしながら、処理の効率化を図るために、予備混合物中の液相分散媒の比率を低くすると、予備混合物の流動性が低くなるので、従来の分散装置では、ダマ発生の問題が特に顕著となり、分散質と液相分散媒とを十分に混合することができなかった。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を向上し得る遠心式の分散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る遠心式の分散装置は、
両端開口が前壁部と後壁部とで閉じられた円筒状の外周壁部を備えたケーシングの内部に、径方向外方側に回転翼を備えたロータが回転駆動自在な状態で同心状に配設され、複数の透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータが前記ロータにおける前記前壁部側である前方側で且つ前記回転翼の内側に位置させて同心状に固定配設され、前記ステータと前記ケーシングの外周壁部との間に、前記回転翼が周回する環状の翼室が形成され、前記前壁部の内面に環状溝が形成されると共に、前記前壁部に対向する前記ロータの前方側には、掻き出し片がその先端部を前記環状溝内に進入した状態で前記ロータと一体的に周回可能に配設され、分散質と液相分散媒とが予備混合された予備混合物を前記回転翼の回転により前記ケーシングの内部に吸引導入する導入口が、前記環状溝と連通する状態で前記前壁部に設けられ、分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体を吐出する吐出口が、前記翼室に連通する状態で前記外周壁部に設けられた遠心式の分散装置であって、
その特徴構成は、前記掻き出し片が、前記ロータの径方向での位置を異ならせて複数備えられ、
前記環状溝が、前記ロータの径方向での異なる位置に夫々備えられた前記掻き出し片に対応して、同心状に複数設けられている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、ロータの径方向での異なる位置に夫々位置する複数の掻き出し片が、夫々に対応する環状溝に先端部が進入した状態でロータと一体的に周回するので、導入口から導入される予備混合物に対して、ロータの径方向における掻き出し片が通過する複数の異なる位置(以下、掻き出し片通過位置と記載する場合がある)夫々で2領域ずつせん断力を作用させることができるようになり、導入口から導入される予備混合物に対して、ロータの径方向においてせん断力を作用させる箇所を多くすることができる。
又、ロータの径方向において掻き出し片が通過する間の領域においても、掻き出し片の先端部により掻き出された予備混合物がぶつかり合って混合される。
これらのことにより、予備混合物を十分に細かく解砕することができると共に、予備混合物の流動に十分に乱れを生じさせることができるようになり、ダマを極力少なくすると共に、ダマが発生したとしてもそのダマを細かく解砕して大きさを小さくすることができる。
【0013】
ちなみに、従来のように、掻き出し片をロータの径方向において一箇所に存在する状態で設ける場合に、その掻き出し片におけるロータの径方向に沿う方向での幅を、本特徴構成のようにロータの径方向での異なる位置に備えられた複数の掻き出し片の合計幅と同等の幅にすることが想定される。
しかしながら、このように掻き出し片の幅を広くしても、導入口から導入される予備混合物に対してせん断力を作用させることができるのは、ロータの径方向において2領域のままであるので、予備混合物を細かく解砕する作用、並びに、予備混合物の流動に乱れを生じさせる作用を向上させることができるものではない。
従って、ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力(分散性)を向上し得る遠心式の分散装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、前記ロータの径方向での異なる位置の夫々において、前記掻き出し片が周方向に複数配設されて、複数の同心状の掻き出し片列が形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、ロータの径方向における複数の掻き出し片通過位置の夫々において、ロータが一回転する間に、導入口から導入される予備混合物に対して、周方向に並ぶ掻き出し片の個数と同じ回数せん断力を作用させることができるので、予備混合物をより一層細かく解砕すると共に、予備混合物の流動をより一層乱して、ダマの発生をより一層少なくすることができる。
従って、ダマの発生をより一層抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力をより一層向上することができる。
【0016】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、前記各掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、周方向において均等間隔で、且つ、互いに隣接する掻き出し片列同士で周方向での並び位相が異なるように配設されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、ロータの径方向において互いに隣接する掻き出し片通過位置では、交互に掻き出し片が通過して、導入口から導入される予備混合物に対して交互にせん断力を作用させることができるので、各掻き出し片列を構成する掻き出し片の個数を少なくしながらも、ロータが一回転する間に、導入口から導入される予備混合物に対してより多くの回数せん断力を作用させることができる。
つまり、導入室内の予備混合物に対して高い周波数で圧力脈動を起こさせることができるので、予備混合物を細かく解砕する作用、並びに、予備混合物の流動に乱れを生じさせる作用を更に向上させることができるようになり、ダマの発生を更に抑制することができる。
従って、ダマの発生を更に抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を更に向上することができる。
【0018】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、各掻き出し片が棒状に形成され、前記ロータの径方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記前壁部側に位置し、前記ロータの軸心方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記ロータの径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻き出し片の基端部が前記ロータと一体回転するように固定され、
前記ロータが、その軸心方向視において前記掻き出し片の先端が前側となる向きに回転駆動される点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、掻き出し片のうち環状溝の外部に位置する部分は、ロータの軸心方向視で、ロータの径方向に対して径方向外方側を向くように傾斜しているので、環状溝に進入して周回する掻き出し片の先端部により環状溝から掻き出された予備混合物は、掻き出し片のうち環状溝の外部に位置する部分により、ロータの径方向外方に流動するように案内される。
つまり、ロータの径方向における複数の異なる位置を周回する複数の掻き出し片により、導入口から環状溝に導入された予備混合物が掻き出されると共に、その掻き出された予備混合がロータの径方向外方に流動するように案内されるので、導入口からケーシング内に導入された予備混合物を滞留を抑制しながら良好に混合して、生成流体として吐出口から吐出することができる。
従って、分散質と液相分散媒とが良好に混合された生成流体を効率良く生成することができる。
【0020】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、隣接する掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、前記ロータの軸心方向視において、内側の列の掻き出し片の基端側の部分と、当該掻き出し片に対応する外側の列の掻き出し片の先端側の部分とが重なる形態で、周方向に配設されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、隣接する掻き出し片列のうちの内側の掻き出し片列の掻き出し片により掻き出されると共にロータの径方向外方側に移動案内される予備混合物は、内側の掻き出し片列の掻き出し片の基端部と外側の掻き出し片列の掻き出し片の先端部との間に押し込められて圧縮作用を受けるので、更に解砕されることになり、予備混合物の解砕並びに混合を促進させることができる。
従って、分散質と液相分散媒との混合能力を更に向上することができる。
【0022】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、前記吐出口から吐出された生成流体の一部を、循環路を介して前記ケーシング内に戻す戻し口が前記前壁部に設けられ、
前記ステータの内周側を前記前壁部側の導入室と前記ロータ側の戻し室とに仕切る仕切体が、前記ロータの前方側に当該ロータと一体回転する状態で設けられると共に、前記仕切体の前壁部側に前記掻き出し片が設けられ、
前記導入室及び前記戻し室が、前記ステータの複数の透孔を介して前記翼室と連通されるように構成され、
前記導入口が前記導入室に連通し、前記戻し口が前記戻し室に連通するように構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、予備混合物は、導入口から導入室に導入されて、その導入室において掻き出し片のせん断作用を受けて混合され、更に、透孔を通過するときにせん断作用を受けて混合されて、翼室に流入する。一方、吐出口から吐出された生成流体の一部は循環路を通して戻し口から戻し室に導入されて、その戻し室において更に混合され、更に、透孔を通過するときにせん断作用を受けて混合されて、翼室に流入する。
そして、導入室から透孔を通過して翼室に流入した生成流体と、戻し室から透孔を通過して翼室に流入した生成流体とは、翼室を周回する回転翼により混合されて吐出口から吐出される。
つまり、吐出口から吐出された生成流体の一部を戻し室に戻してその戻し室で更に混合した後、導入室にて予備混合物が混合されて生成された生成流体と混合して吐出口から吐出する形態で、導入室から導入される予備混合物を混合するので、ダマの発生を極力抑制して、分散質と液相分散媒とを適切に混合することができる。
従って、分散質と液相分散媒とが適切に混合された生成流体を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】遠心式の分散装置を備えた粉体溶解システムの概略構成図
【図2】定量供給装置の要部を示す縦断面図
【図3】図2のIII−III方向視での断面図
【図4】遠心式の分散装置の縦断側面図
【図5】図4のV−V方向視での断面図
【図6】図4のVI−VI方向視での断面図
【図7】ケーシングの前壁部、ステータ及び仕切り体の組み付け構成を示す分解斜視図
【図8】仕切り体への掻き出し片の配設構成を説明する図
【図9】掻き出し片の斜視図
【図10】掻き出し片が2列異位相配設形態で配設された場合の導入室内における予備混合物の流動状態のシミュレーション結果を示す図
【図11】掻き出し片が2列同位相配設形態で配設された場合の導入室内における予備混合物の流動状態のシミュレーション結果を示す図
【図12】掻き出し片が1列配設形態で配設された場合の導入室内における予備混合物の流動状態のシミュレーション結果を示す図
【図13】導入室内における導入口近傍の圧力分布をシミュレーションした結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る遠心式の分散装置(以下、単に分散装置と記載する場合がある)Yを備えた粉体溶解システムを示す。
この粉体溶解システムは、分散質として粉体Pを用い、液相分散媒として溶媒Rを用いて、粉体Pを溶媒Rに溶解させて生成流体としてペーストFを生成するものである。
本実施形態においては、例えば、粉体PとしてCMC(カルボキシルメチルセルロース)を用い、溶媒Rとして水を用いた。
【0026】
図1に示すように、粉体溶解システムは、粉体Pを定量供給する定量供給装置Xと、溶媒Rを定量供給する溶媒供給装置50と、定量供給装置Xから定量供給される粉体Pと溶媒供給装置50から定量供給される溶媒Rとを負圧吸引して溶解混合する分散装置Yと、分散装置Yから吐出されたペーストFから、完全に溶解していない粉体Pを含む溶媒R(以下、未溶解ペーストFr)を分離する分離装置70等を備えて構成されている。
【0027】
図1に示すように、定量供給装置Xは、上部開口部31aから受け入れた粉体Pを下部開口部31bから排出させるホッパ31と、ホッパ31内の粉体Pを攪拌する攪拌機構32と、ホッパ31の上部開口部31aが大気開放された状態で、下部開口部31bの下流側に接続された分散装置Yの吸引により下部開口部31bに作用する負圧吸引力によって、下部開口部31bから排出された粉体Pを分散装置Yに定量供給する容積式の定量供給機構40とを備えて構成されている。
【0028】
ホッパ31は、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状に構成され、その中心軸A1が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている。そのホッパ31の上部開口部31a及び下部開口部31b夫々の横断面形状(上面視)は、中心軸A1を中心とする円形状とされ、又、ホッパ31における逆円錐形状の内側壁面の傾斜角度は、水平面に対して略60度とされる。
【0029】
攪拌機構32は、ホッパ31内に配設されて、ホッパ31内の粉体Pを攪拌する攪拌羽根32Aと、当該攪拌羽根32Aをホッパ31の中心軸A1周りに回転させる羽根駆動モータM1と、羽根駆動モータM1をホッパ31の上部開口部31aの上方に位置させて支持する取付部材32Bと、羽根駆動モータM1の回転駆動力を攪拌羽根32Aに伝動させる伝動部材32Cとを備えて構成される。
【0030】
攪拌羽根32Aは、棒状部材を概略V字形状に屈曲して構成され、その一方の辺部がホッパ31の内側壁面に沿う状態で、他方の辺部の端部がホッパ31の中心軸A1と同軸で回転自在に枢支されて配設されている。また、当該攪拌羽根32Aは、横断面形状が三角形に形成されており、三角形の一辺を形成する面がホッパ31の内側壁面と略平行となるように配設されている。これにより、攪拌羽根32Aは、ホッパ31の内側壁面に沿って中心軸A1周りに回転可能に配設されている。
【0031】
図1〜図3に示すように、容積式の定量供給機構40は、ホッパ31の下部開口部31bから供給される粉体Pを下流側の分散装置Yに所定量ずつ定量供給する機構である。
具体的には、ホッパ31の下部開口部31bに接続される導入部41と、供給口43a及び排出口43bを備えたケーシング43と、ケーシング43内に回転可能に配設された計量回転体44と、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2とを備えて構成される。
【0032】
導入部41は、ホッパ31の下部開口部31bとケーシング43の上部に形成された供給口43aとを連通する筒状に形成され、最下端には、ケーシング43の供給口43aと同形状のスリット状の開口が形成されている。この導入部41は、ケーシング43の供給口43a側ほど細くなる先細り状に形成されている。当該スリット状の開口の形状は、ホッパ31の大きさ、粉体Pの供給量、粉体Pの特性等に応じて適宜設定することができるが、例えば、スリット状の開口の長さ方向の寸法を20〜100mm程度、幅方向の寸法を1〜5mm程度に設定するようにする。
【0033】
ケーシング43は、概略直方体形状に形成され、水平方向に対して45度傾斜した姿勢で、導入部41を介してホッパ31に接続されている。
図2及び図3に示すように、ケーシング43の上面には、導入部41のスリット状の開口に対応したスリット状の供給口43aが設けられ、ホッパ31の下部開口部31bからの粉体Pをケーシング43内に供給可能に構成されている。傾斜状に配置されたケーシング43の下方側の側面(図2において右側面)の下部には、計量回転体44にて定量供給された粉体Pを膨張室47を介して下流側の分散装置Yに排出する排出口43bが設けられ、その排出口43bには、粉体排出管45が接続されている。当該膨張室47は、供給口43aから計量回転体44の粉体収容室44bに供給された粉体Pが定量供給されるケーシング43内の位置に設けられ、排出口43bから作用する負圧吸引力によって、供給口43aよりも低圧に維持される(例えば、−0、06MPa程度)。すなわち、排出口43bは、分散装置Yの一次側に接続されることによって、負圧吸引力が膨張室47に作用し供給口43bよりも低圧状態に維持されるようにしている。計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bの状態が負圧状態(例えば、−0、06MPa程度)と当該負圧状態よりも高圧の状態に変化するように構成されている。
【0034】
計量回転体44は、計量回転体駆動モータM2の駆動軸48に配設した円盤部材49に、複数(例えば、8枚)の板状隔壁44aを円盤部材49の中心部を除いて放射状に等間隔に取り付けて構成され、周方向で等間隔に粉体収容室44bを複数区画(例えば、8室)形成するように構成されている。粉体収容室44bは、計量回転体44の外周面及び中心部において開口するように構成されている。計量回転体44の中心部には、開口閉鎖部材42が周方向に偏在して固定状に配設され、各粉体収容室44bの中心部側の開口をその回転位相に応じて閉塞或いは開放可能に構成されている。なお、粉体Pの供給量は、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2による計量回転体44の回転数を変化させることで、調整できる。
【0035】
計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bが、膨張室47に開放される膨張室開放状態、膨張室47及び供給口43aと連通しない第1密閉状態、供給口43aに開放される供給口開放状態、供給口43a及び膨張室47と連通しない第2密閉状態の順で、その状態が繰り返して変化するように構成されている。なお、計量回転体44の外周面側の開口が第1密閉状態及び第2密閉状態において閉鎖されるようにケーシング43が形成されるとともに、計量回転体44の中心部側の開口が第1密閉状態、供給口開放状態及び第2密閉状態において閉鎖されるように、開口閉鎖部材42がケーシング43に固定して配設される。
【0036】
従って、定量供給装置Xにおいては、ホッパ31内に貯留された粉体Pが攪拌羽根32Aにより攪拌されながら定量供給機構40に供給され、定量供給機構40により、粉体Pが排出口43bから粉体排出管45を通して分散装置Yに定量供給される。
【0037】
具体的に説明すると、定量供給機構40の排出口43bの下流側に接続された分散装置Yからの負圧吸引力により、ケーシング43内における膨張室47の圧力が負圧状態(例えば、−0、06MPa程度)となる。一方で、ホッパ31の上部開口部31aは大気開放されているので、ホッパ31内は大気圧程度の状態となる。膨張室47と計量回転体44の隙間を介して連通する導入部41の内部及び下部開口部31bの近傍は、上記負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態となる。
【0038】
この状態で、ホッパ31の内壁面及び下部開口部31bの近傍の粉体Pが、攪拌機構32の攪拌羽根32Aにより攪拌されることで、攪拌羽根32Aによるせん断作用によりホッパ31内の粉体Pが解砕され、一方、計量回転体44は計量回転体駆動モータM2により回転させられることで、空の粉体収容室44bが次々と供給口43aに連通する状態となる。そして、ホッパ31内の粉体Pは下部開口部31bから導入部41を流下し、次々と供給口43aに連通する状態となる計量回転体44の粉体収容室44bに所定量ずつ収容されて、その粉体収容室44bに収容された粉体Pは膨張室47に流下し、排出口43bから排出される。従って、定量供給装置Xにより、粉体Pを粉体排出管45を通して所定量ずつ連続して分散装置Yの混合導入口11に定量供給することができる。
【0039】
図1に示すように、粉体排出管45には、分散装置Yの混合導入口11への粉体Pの供給を停止可能なシャッタバルブ46が配設されている。
【0040】
図1に示すように、溶媒供給装置50は、溶媒源51からの溶媒Rを、設定流量で分散装置Yの混合導入口11に連続的に供給するように構成されている。
具体的には、溶媒供給装置50は、溶媒Rを送出する溶媒源51と、溶媒源51から溶媒Rが送出される溶媒供給管52と、溶媒源51から溶媒供給管52に送出される溶媒Rの流量を設定流量に調整する流量調整バルブ(図示せず)と、設定流量に調整された溶媒Rを定量供給機構40から定量供給される粉体Pに混合して混合導入口11に供給するミキシング機構60とを備えて構成されている。
【0041】
図4に示すように、ミキシング機構60は、粉体排出管45と溶媒供給管52とを混合導入口11に連通接続するミキシング部材61を備えて構成されている。
このミキシング部材61は、円筒状の混合導入口11よりも小径に構成されて、混合導入口11との間に環状のスリット63を形成すべく混合導入口11に挿入状態で配設される筒状部62、及び、環状のスリット63に全周にわたって連通する状態で混合導入口11の外周部に環状流路64を形成する環状流路形成部65を備えて構成されている。
ミキシング部材61には、粉体排出管45が筒状部62に連通する状態で接続されると共に、溶媒供給管52が環状流路64に対して溶媒Rを接線方向に供給するように接続される。
粉体排出管45、ミキシング部材61の筒状部62及び混合導入口11は、それらの軸心A2を供給方向が下向きとなる傾斜姿勢(水平面に対する角度が45度程度)となるように傾斜させて配置されている。
【0042】
つまり、定量供給機構40の排出口43bから粉体排出管45に排出された粉体Pは、ミキシング部材61の筒状部62を通して軸心A2に沿って混合導入口11に導入される。一方、溶媒Rは、環状流路64に接線方向から供給されるので、環状流路64の内周側に形成される環状のスリット63を介して、切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で混合導入口11に供給される。
従って、円筒状の混合導入口11により、粉体Pと溶媒Rとが均等に予備混合され、その予備混合物Fpが分散装置Yに吸引導入される。
【0043】
図4〜図9に基づいて、分散装置Yについて説明を加える。
尚、図4は、分散装置Yの縦断側面図であり、図5は、図4のV−V矢視図であり、図6は、図4のVI−VI矢視図である。図7は、ケーシング1の前壁部2、ステータ7及び仕切り体15の組み付け構成を示す分解斜視図である。図8は、仕切り体15への掻き出し片9の配設構成を説明する図であり、(a)は前面図、(b)は側面図、(c)は後面図である。図9は、掻き出し片9の斜視図である。
【0044】
図4に示すように、分散装置Yは、両端開口が前壁部2と後壁部3とで閉じられた円筒状の外周壁部4を備えたケーシング1と、そのケーシング1の内部に同心状で回転駆動自在に設けられたロータ5と、そのケーシング1の内部に同心状で固定配設された円筒状のステータ7と、ロータ5を回転駆動するポンプ駆動モータM3等を備えて構成されている。
【0045】
図5にも示すように、ロータ5の径方向の外方側には、複数の回転翼6が、前壁部2側である前方側に突出し且つ周方向に等間隔で並ぶ状態でロータ5と一体的に備えられている。
円筒状のステータ7には、複数の透孔7a,7bが周方向に夫々並べて備えられ、そのステータ7が、ロータ5の前方側で且つ回転翼6の径方向の内側に位置させて固定配設されて、そのステータ7とケーシング1の外周壁部4との間に、回転翼6が周回する環状の翼室8が形成される。
図4、図6及び図7に示すように、ケーシング1の前壁部2の内面に環状溝10が形成されると共に、その前壁部2に対向するロータ5の前方側には、掻き出し片9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設されている。
【0046】
そして、図4〜図7に示すように、粉体Pと溶媒Rとが予備混合された予備混合物Fpを回転翼6の回転によりケーシング1の内部に吸引導入する混合導入口11(導入口に相当する)が、環状溝10と連通する状態で前壁部2に設けられている。
又、図4及び図5に示すように、粉体Pと溶媒Rとが混合されて生成された生成流体としてのペーストFを吐出する円筒状の吐出口12が、翼室8に連通する状態で外周壁部4に設けられている。
【0047】
図1及び図4に示すように、この実施形態では、吐出口12から吐出されたペーストF(生成流体に相当する)は、吐出路18を通して分離装置70に供給され、その分離装置70にて分離された未溶解ペーストFr(生成流体の一部に相当する)を、循環路16を介してケーシング1内に戻す戻し口17がケーシング1の前壁部2に設けられている。
又、図4〜図7に示すように、ステータ7の内周側を前壁部2側の導入室13とロータ5側の戻し室14とに仕切る仕切体15が、ロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けられると共に、仕切体15の前壁部2側に掻き出し片9が設けられている。
そして、図4に示すように、導入室13及び戻し室14が、ステータ7の複数の透孔7a,7bを介して翼室8と連通されるように構成され、混合導入口11が導入室13に連通し、戻し口17が戻し室14に連通するように構成されている。
具体的には、導入室13と翼室8とは、ステータ7における導入室13に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の導入室側透孔7aにて連通され、戻し室14と翼室8とは、ステータ7における戻し室14に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の戻し室側透孔7bにて連通されている。
【0048】
そして、本発明では、図4〜図8に示すように、掻き出し片9が、ロータ5の径方向での位置を異ならせた状態で複数備えられ、環状溝10が、ロータ5の径方向での異なる位置に夫々備えられた掻き出し片9に対応して、同心状に複数(図4では2条)設けられている。
【0049】
この実施形態では、ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9が周方向に複数配設されて、複数の同心状の掻き出し片列Lが形成されている。
又、各掻き出し片列Lを構成する複数の掻き出し片9が、周方向において均等間隔で、且つ、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での並び位相が異なるように配設されている。
具体的には、2列の掻き出し片列Lが同心状に形成され、各掻き出し片列Lには、4個の掻き出し片9が、中心角で90度ずつ間隔を隔てる並び位相で周方向に配設されている。又、内側の掻き出し片列Lの4個の掻き出し片9の並び位相と、外側の掻き出し片列Lの4個の掻き出し片9の並び位相とは、ずれている。
【0050】
尚、以下の説明及び図面においては、2列の掻き出し片列Lの内外の位置を示すために、掻き出し片列を示す符号「L」に、内側を示す添え字「i」を付して、「Li」にて内側の掻き出し片列を示し、外側を示す添え字「o」を付して、「Lo」にて外側の掻き出し片列を示す。
【0051】
分散装置Yの各部について、説明を加える。
図4に示すように、ロータ5は、その前面が概ね円錐台状に膨出する形状に構成されると共に、その外周側に、複数の回転翼6が前方に突出する状態で等間隔に並べて設けられている。
このロータ5が、ケーシング1内においてケーシング1と同心状に位置する状態で、後壁部3を貫通してケーシング1内に挿入されたポンプ駆動モータM3の駆動軸19に連結されて、そのポンプ駆動モータM3により回転駆動される。
【0052】
図4、図7及び図8に示すように、仕切り体15は、後述するステータ7の内径よりも僅かに小さい外径を有する概ね漏斗状に構成されている。この漏斗状の仕切り体15は、具体的には、その中央部に、頂部が円筒状に突出する筒状摺接部15aにて開口された漏斗状部15bを備えると共に、その漏斗状部15bの外周部に、前面及び後面共にケーシング1の軸心A3に直交する状態となる環状平板部15cを備える形状に構成されている。
そして、図4及び図5に示すように、この仕切り体15が、頂部の筒状摺接部15aがケーシング1の前壁部2側を向く姿勢で、周方向に等間隔を隔てた複数箇所(この実施形態では、4箇所)に配設された間隔保持部材20を介して、ロータ5の前面に取り付けられる。
【0053】
図5及び図8(c)に示すように、仕切り体15を複数箇所夫々で間隔保持部材20を介してロータ5に取り付ける際には、攪拌羽根21が、ケーシング1の後壁部3側に向く姿勢で仕切り体15に一体的に組み付けられ、ロータ5が回転駆動されると、4枚の攪拌羽根21がロータ5と一体的に回転するように構成されている。
【0054】
図4及び図7に示すように、この実施形態では、円筒状の戻し口17が、ケーシング1と同心状で、そのケーシング1の前壁部2の中心部に設けられている。
図4〜図7に示すように、混合導入口11は、そのケーシング1内に開口する開口部が、同心状の2条の環状溝10における周方向の一部を内部に含む状態で、ケーシング1内に対する戻し口17の開口部の横側方に位置するように、前壁部2に設けられている。又、混合導入口11は、平面視において軸心A2がケーシング1の軸心A3と平行となり、且つ、ケーシング1の軸心A3に直交する水平方向視において、軸心A2がケーシングの前壁部2に近付くほどケーシング1の軸心A3に近づく下向きの傾斜姿勢で、ケーシング1の前壁部2に設けられている。ちなみに、混合導入口11の水平方向に対する下向きの傾斜角度は、上述したように45度程度である。
【0055】
図4及び図7に示すように、ステータ7は、ケーシング1の前壁部2の内面(ロータ5に対向する面)に取り付けられて、ケーシング1の前壁部2とステータ7とが一体となるように固定されている。
又、図5に示すように、吐出口12は、円筒状の外周壁部4に、その外周壁部4の接線方向に伸びるように設けられている。
【0056】
図6〜図9に示すように、この実施形態では、各掻き出し片9が棒状に形成され、ロータ5の径方向視で、当該棒状の掻き出し片9の先端側ほど前壁部2側に位置し、且つ、ロータ5の軸心方向視で、当該棒状の掻き出し片9の先端側ほどロータ5の径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻き出し片9の基端部9Bがロータ5と一体回転するように固定され、ロータ5が、その軸心方向視において掻き出し片9の先端が前側となる向き(図4〜図6において矢印にて示す向き)に回転駆動される。
【0057】
図5〜図9に基づいて、掻き出し片9について説明を加える。
掻き出し片9は、仕切り体15に固定される基端部9B、導入室13に露呈する状態となる中間部9M、環状溝10に嵌め込まれる(即ち、進入する)状態となる先端部9Tを基端から先端に向けて一連に備えた棒状に構成されている。
【0058】
図5、図7、図8(b)及び図9に示すように、掻き出し片9の基端部9Tは、概ね矩形板状に構成されている。
図5、図7、図8(a)及び(b)、並びに、図9に示すように、掻き出し片9の中間部9Mは、横断面形状が概ね三角形状になる概ね三角柱状に構成されている。そして、掻き出し片9が上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、三角柱状の中間部9Mの三側面のうちのロータ5の回転方向前側を向く一側面9m(以下、放散面と記載する場合がある)は、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)ように構成されている。
【0059】
つまり、棒状の掻き出し片9が、上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、掻き出し片9のうち導入室13に露呈する中間部9Mが環状溝10に嵌め込まれる先端部9Tよりもロータ5の径方向外方に位置し、しかも、その中間部9Mの回転方向前側を向く放散面9mが、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して斜め外向きに傾斜している。これにより、掻き出し片9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻き出し片9の中間部9Mの放散面9mにより、導入室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。
【0060】
図6、図7、図8(a)及び(b)、並びに、図9に示すように、掻き出し片9の先端部9Tは、横断面形状が概ね矩形状になる概ね四角柱状であり、ロータ5の軸心方向視において、四側面のうちのロータ5の径方向外方側に向く外向き側面9oが環状溝10の内面における径方向内方側を向く内向き内面に沿い、且つ、四側面のうちのロータ5の径方向内方側に内向き側面9iが環状溝10の内面における径方向外方側を向く外向き内面に沿う状態となる弧状に構成されている。
又、四角柱状の先端部9Tの四側面のうちの、ロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9fは、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)になるように構成されている。
これにより、掻き出し片9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻き出し片9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて導入室13内に放出されることになる。
更に、掻き出し片9の先端部9Tの先端面9tは、その先端部9Tが環状溝10に嵌め込まれた状態で環状溝10の底面と平行になるように構成されている。
【0061】
上述のような形状に構成された4個の掻き出し片9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90度ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを仕切り体15の環状平板部15cに固定して設けられて、内側の掻き出し片列Liが構成され、その内側の掻き出し片列Liの外側に、4個の掻き出し片9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90度ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを仕切り体15の環状平板部15cに固定して設けられて、外側の掻き出し片列Loが構成されている。
又、このように8個の掻き出し片9が、4個ずつ外側と内側の掻き出し片列Lo,Liiに分けて周方向に並べて設けられるに当たって、基端部9Bを仕切り体15に固定する位置の周方向での位相が、外側の列Loの基端部9Bに対して内側の列Liの基端部9Bをロータ5の回転方向に中心角で30度程度ずらすことにより、内側の掻き出し片列Liの4個の掻き出し片9の並び位相と、外側の掻き出し片列Loの4個の掻き出し片9の並び位相とがずらされている。
【0062】
上記のように8個の掻き出し片9が4個ずつ外側と内側の掻き出し片列Lo,Liに分けて周方向に並べて設けられることにより、図6、図7、並びに、図8(a)及び(b)に示すように、隣接する掻き出し片列Lo,Liを構成する4個の掻き出し片9が、ロータ5の軸心方向視において、内側の列Liの掻き出し片9の基端側の部分(即ち、基端部9B及び中間部9Mの基端側の一部)と、当該掻き出し片9に対応する外側の列Loの掻き出し片9の先端側の部分(即ち、先端部9T)とが重なる形態で、周方向に配設されている。
【0063】
図4に示すように、上述のように2列の掻き出し片列Lo,Liが設けられた仕切り体15が、間隔保持部材20によりロータ5の前面と間隔を隔てた状態でロータ5の前面に取り付けられ、そのように仕切り体15が取り付けられたロータ5が、仕切り体15の筒状摺接部15aが戻し口17に摺接回転可能に嵌めこまれた状態で、ケーシング1内に配設される。
すると、ロータ5の膨出状の前面と仕切り体15の後面との間に、ケーシング1の前壁部2側ほど小径となる先細り状の戻し室14が形成され、戻し口17が仕切り体15の筒状摺接部15aを介して戻し室14に連通するように構成されている。
又、ケーシング1の前壁部2と仕切り体15の前面との間に、混合導入口11に連通する環状の導入室13が形成される。
【0064】
そして、ロータ5が回転駆動されると、筒状摺接部15aが戻し口17に摺接する状態で、仕切り体15がロータ5と一体的に回転することになり、ロータ5及び仕切り体15が回転する状態でも、戻し口17が仕切り体15の筒状摺接部15aを介して戻し室14に連通する状態が維持されるように構成されている。
【0065】
分離装置70は、円筒状容器71内において比重によって溶解液を分離するように構成され、図1に示すように、分散装置Yの吐出口12から吐出路18を通して供給されるペーストFから、完全に溶解していない粉体Pを含む状態の未溶解ペーストFrを循環路16に、粉体Pが略完全に溶解した状態のペーストFを排出路22にそれぞれ分離するように構成されている。吐出路18及び循環路16は、夫々、円筒状容器71の下部に接続され、排出路22は、円筒状容器71の上部とペーストF(製品)の供給先80とに接続される。
なお、分離装置70は、図示しないが、吐出路18が接続される導入パイプを円筒状容器71の底面から内部に突出して配設し、円筒状容器71の上部に排出路22に接続される排出部を備えるとともに、下部に循環路16に接続される循環部を備え、導入パイプの吐出上端に、導入パイプから吐出される溶解液の流れを旋回させる捻り板を配設して構成されている。
【0066】
次に、この粉体溶解システムの動作について説明する。
まず、定量供給装置Xを停止し、シャッタバルブ46を閉止して粉体排出管45を介する粉体Pの吸引を停止した状態で、溶媒供給装置50から溶媒Rのみを供給しながらロータ5を回転させ、分散装置Yの運転を開始する。所定の運転時間が経過して、分散装置Y内が、負圧状態(例えば、−0.06MPa程度の真空状態)となると、シャッタバルブ46を開放する。これによって、定量供給機構Xの膨張室47を負圧状態(−0.06MPa程度)とし、導入部41の内部及びホッパ31の下部開口部31b近傍を当該負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態にする。
【0067】
そして、定量供給装置Xを作動させ、ホッパ31内に貯留された粉体Pを、攪拌羽根32Aの攪拌作用及び分散装置Yの負圧吸引力により、ホッパ31の下部開口部31bから定量供給機構40の膨張室47を介してミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。並行して、溶媒供給機構50を作動させ、分散装置Yの負圧吸引力により、溶媒Rをミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。
ミキシング機構60のミキシング部材61からは、粉体Pがミキシング部材61の筒状部62を通して混合導入口11に供給されると共に、溶媒Rが、環状のスリット63を通して切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で混合導入口11に供給され、混合導入口11により、粉体Pと溶媒Rとが予備混合され、その予備混合物Fpが2条の環状溝10に導入される。
【0068】
ロータ5が高速で回転駆動されて、そのロータ5と一体的に仕切り体15が高速回転すると、その仕切り体15に同心状に設けられた2列の掻き出し片列Lo,Li夫々の4個の掻き出し片9が、各列に対応する環状溝10夫々に先端部9Tが嵌め込まれた状態で高速で周回する。
すると、図4及び図5において実線矢印にて示すように、混合導入口11を流動して2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpは、環状溝10に嵌め込まれて周回する掻き出し片9の先端部9Tにより掻き出され、その掻き出された予備混合物Fpは、概略的には、導入室13内を仕切り体15における漏斗状部15bの前面と環状平板部15cの前面とに沿いながらロータ5の回転方向に流動し、更に、ステータ7の導入室側透孔7aを通過して翼室8に流入し、その翼室8内をロータ5の回転方向に流動して、吐出口12から吐出される。
【0069】
2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpは、掻き出し片9の先端部9Tにより掻き出されるときに、せん断作用を受ける。この場合、内側の掻き出し片列Liにおける掻き出し片9の先端部9Tの外向き側面9oと内側の環状溝10の内向き内面との間、及び、内側の掻き出し片列Liにおける掻き出し片9の先端部9Tの内向き側面9iと内側の環状溝10の外向き内面との間においてせん断作用が働き、並びに、外側の掻き出し片列Loにおける掻き出し片9の先端部9Tの外向き側面9oと外側の環状溝10の内向き内面との間、及び、外側の掻き出し片列Loにおける掻き出し片9の先端部9Tの内向き側面9iと外側の環状溝10の外向き内面との間においてせん断作用が働く。
つまり、ロータ5の径方向における異なる4領域でせん断力を作用させることができるので、予備混合物Fpを十分に細かく解砕すると共に、予備混合物Fpの流動に十分乱れを生じさせて、粉体Pを溶媒Rに均一に溶解混合させることができる。
【0070】
しかも、ロータ5の径方向の同じ位置に4個の掻き出し片9が周方向に配設されているので、ロータ5が一回転する間に、ロータ5の径方向の同じ位置において4回せん断力を作用させることができ、更には、内外2列の掻き出し片列Li,Loで各列を構成する4個の掻き出し片9の周方向での並び位相が異なるので、混合導入口11から2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpに対して、ロータ5が一回転する間に8回せん断力を作用させることができる。
つまり、導入室13内の予備混合物Fpに対して高い周波数で圧力脈動を起こさせることができるので、予備混合物Fpをより一層細かく解砕すると共に、予備混合物Fpの流動により一層の乱れを生じさせることができる。
【0071】
更に、掻き出し片9の先端部9Tのロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9f、及び、掻き出し片9の中間部9Mのロータ5の回転方向前側を向く放散面9mは、いずれも、前下がり状で、しかも、斜め外向き状になっている。
これにより、掻き出し片9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻き出し片9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて導入室13内に放出され、そのように放出された予備混合物Fpは、更に、掻き出し片9の中間部9Mの放散面9mにより、導入室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。更に、予備混合物Fpは、導入室側透孔7aを通過して、その導入室側透孔7aの通過の際にもせん断作用を受けて解砕され、更に、高速で回転する回転翼6によりせん断作用を受けて解砕されて、粉体Pが十分に溶解したペーストFが生成され、そのペーストFが吐出口12から吐出される。
つまり、混合導入口11から導入室13内に導入された予備混合物Fpを滞留を抑制しながら良好に混合して、ペーストFとして吐出口12から吐出することができる。
【0072】
更に、ロータ5の軸心方向視において、内側の列Liの各掻き出し片9の基端部9Bと、当該各掻き出し片9に対応する外側の列Loの各掻き出し片9の先端部9Tとが重なっているので、内側の列Liの掻き出し片9により掻き出されてロータ5の径方向外方側に移動された予備混合物Fpが、内側の列Liの掻き出し片9の基端部9Bと外側の列Loの掻き出し片9の先端部9Tとの間に押し込められて圧縮作用を受けるので、予備混合物Fpの解砕並びに溶解混合を促進させることができる。
【0073】
要するに、混合導入口11から2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpに対して、ロータ5の径方向における異なる4領域でせん断力を作用させると共に、導入室13内において予備混合物Fpに高い周波数で圧力脈動を起こさせることができるので、予備混合物Fpが細かく解砕されて溶解混合され、ダマが極めて少ないペーストFが生成され、そのペーストFが、後述する戻し室14からのペーストFと混合されて吐出口12から吐出される。
【0074】
吐出口12から吐出されたペーストFは、吐出路18を通して分離装置70に供給され、分離装置70において、完全に溶解していない粉体Pを含む状態の未溶解ペーストFrと、粉体Pが略完全に溶解した状態のペーストFとに分離されて、未溶解ペーストFrは循環路16を通して再び分散装置Yに供給され、ペーストFは排出路22を通して供給先80に供給される。
【0075】
未溶解ペーストFrは、戻し口17から戻し室14に導入され、その戻し室14内において、高速で回転する複数の攪拌羽根21によりせん断作用を受けて、更に細かく解砕され、更に、戻し室側透孔7bの通過の際にもせん断作用を受けて解砕され、更に、高速で回転する回転翼6によりせん断作用を受けて解砕され、ダマが更に少なくなったペーストFが導入室13からのペーストFと混合されて吐出口12から吐出される。
従って、ダマが殆どなく粉体Pが均等に溶解されたペーストFを、分散装置Y内における滞留を効果的に抑制して効率良く生成することができる。
【0076】
次に、掻き出し片9の配設構成として本発明に係る配設構成を採用することにより、粉体Pと溶媒Rとの溶解混合を促進することができることを検証した結果を、図10〜図12、及び、図13に基づいて説明する。
尚、図10〜図12は、導入室13内における予備混合物Fpの流動状態をシミュレーションしたものであり、環状溝10の開口部近くを通りケーシング1の軸心A3に直交する断面での、回転翼6の回転速度ベクトルに対する予備混合物Fpの相対流動速度ベクトルを示す。但し、図10〜図12には、戻し室14内における予備混合物Fpの相対流動速度ベクトルも示されている。
又、図13は、導入室13内における予備混合物Fpの圧力分布をシミュレーションしたものであり、混合導入口11の開口部の略中心を通りケーシング1の軸心A3を含む断面における、導入室13及び戻し室14内の圧力分布を色の濃淡で示す。つまり、色が薄くなるほど圧力が低くなる。
【0077】
図10及び図13(a)は、2列の掻き出し片列Li,Loを同心状に形成し、各掻き出し片列Li,Loで4個の掻き出し片9を周方向に等間隔で配設すると共に、内外の掻き出し片列Li,Loで掻き出し片9の並び位相を異ならせた配設形態(以下、2列異位相配設形態と略記する場合がある)、即ち、本実施形態の配設形態でのシミュレーション結果を示す。又、図11及び図13(b)は、2列の掻き出し片列Lを同心状に形成する場合に、内外の掻き出し片列Li,Loで掻き出し片9の並び位相を同一にした配設形態(以下、2列同位相配設形態と略記する場合がある)でのシミュレーション結果を示す。又、図12及び図13(c)は、複数の掻き出し片9を、ロータ5の径方向における同位置に位置する状態(一列)で周方向に並べて配設した配設形態(以下、1列配設形態と略記する場合がある)、即ち、従来の配設形態でのシミュレーション結果を示す。
【0078】
図10〜図12において丸印で囲った領域に注目すると、2列異位相配設形態及び2列同位相配設形態共に、1列配設形態に比べて、ロータ5の径方向内方に向かう成分が大きい速度ベクトルが多くなっており、掻き出し片9を2列異位相配設形態や2列同位相配設形態で配設することにより、導入室13内における予備混合物Fpの流動状態の乱れを促進できることが分かる。
【0079】
図13において丸印で囲った領域に注目すると、導入室13に対する混合導入口11の開口部付近においては、2列異位相配設形態及び2列同位相配設形態共に、1列配設形態に比べて、圧力のバラツキが大きい分布となり、導入室13内における予備混合物Fpの圧力脈動を大きくできることが分かる。即ち、導入室13内がより低圧となっていることが分かる。
又、図13(a)は、(b)に比べると、2列異位相配設形態の方が2列同位相配設形態よりも圧力脈動の発生回数(周波数)が大きくなり、丸印で囲った領域の圧力のバラツキが細かく生じるので、予備混合物Fpの流動状態の乱れがより一層促進されることが分かる。
【0080】
上述の検証により、本発明のように、掻き出し片9がロータ5の径方向での位置を異ならせて複数備えられ、環状溝10が、ロータ5の径方向での異なる位置に夫々備えられた掻き出し片9に対応して同心状に複数設けられることにより、予備混合物Fpを解砕する作用、及び、予備混合物Fpの流れに乱れを生じさせる作用を促進させることができて、分散質と液相分散媒との混合能力を向上できることが分かる。
又、複数の掻き出し片9を周方向において均等間隔で配設して、各掻き出し片列Lを形成する場合に、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での掻き出し片9の並び位相を異ならせる方が、同一にするよりも、予備混合物Fpを解砕する作用、及び、予備混合物Fpの流れに乱れを生じさせる作用を強くすることができて、分散質と液相分散媒との混合能力を向上できることが分かる。
【0081】
〔別実施形態〕
(A)ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9を周方向に複数配設して、複数の同心状の掻き出し片列Lを形成するに当たって、掻き出し片9の配置形態は、上記の実施形態において例示した配設形態、即ち、各列で同数の掻き出し片9を等間隔で周方向に配設すると共に、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での並び位相が異なるように配設する形態に限定されるものではない。
【0082】
(A−1)例えば、掻き出し片列Lの列数は、上記の実施形態において説明した2列に限定されるものではなく、3列以上でも良い。但し、列数が多くなるほど、各掻き出し片9におけるロータ5の径方向に沿う方向での太さが細くなって、掻き出し片9の強度が低くなるので、掻き出し片列Lの列数は極力少なくするのが好ましい。
又、各掻き出し片列Lを構成する複数の掻き出し片9の個数も、上記の実施形態の如き4個に限定されるものではなく、2個や3個でもよく、又、5個以上でも良い。
【0083】
(A−2)各掻き出し片列Lで同数の掻き出し片9を等間隔で周方向に配設すると共に、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での並び位相を同一にしても良い。
【0084】
(A−3)各掻き出し片列Lで複数の掻き出し片9を異なる間隔で周方向に配設しても良い。この場合、掻き出し片列Lを構成する掻き出し片9の個数を、各列で同一にしても良いし、異ならせても良い。
【0085】
(B)上記の実施形態では、ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9を周方向に複数配設したが、ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9を1個ずつ設けても良い。
この場合、複数の掻き出し片9をロータ5の径方向に沿って並べても良いし、並べなくても良い。
【0086】
(C)上記の実施形態では、仕切体15をロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けて、掻き出し片9を仕切体15に設けたが、吐出口12から吐出されるペーストFの一部を循環させなくても、粉体Pを溶媒Rに適切に溶解混合させることができる場合は、分離装置70を省略すると共に、仕切体15を省略して、掻き出し片9をロータ5に直接設けても良い。
【0087】
(D)上記の実施形態では、粉体Pとして単一種類のCMC粉体を用いたが、必要に応じて、複数種類の粉体を混合した混合粉体を粉体Pとして用いることができる。また、同様に、溶媒Rとして単一種類の水を用いたが、必要に応じて、複数種類の液体を混合した混合液体を溶媒Rとして用いることができる。
又、上記の実施形態では、分散質として粉体Pを用い、液相分散媒として溶媒Rを用いて、分散質を液相分散媒に溶解させる場合に本発明を適用したが、分散質を液相分散媒に溶解させずに分散させる場合にも、本発明を適用することができる。
又、分散質としては、上記の実施形態において例示した粉体Pに限定されるものではなく、例えば、液状のものでも良い。例えば、分散質としての油を液相分散媒としての水に分散させる場合にも、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を向上し得る遠心式の分散装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ケーシング
2 前壁部
3 後壁部
4 外周壁部
5 ロータ
6 回転翼
7 ステータ
7a 導入室側透孔(透孔)
7b 戻し室側透孔(透孔)
8 翼室
9 掻き出し片
9B 基端部
9T 先端部
10 環状溝
11 混合導入口(導入口)
12 吐出口
13 導入室
14 戻し室
15 仕切り体
16 循環路
17 戻し口
F ペースト(生成流体)
Fp 予備混合物
L 掻き出し片列
P 粉体(分散質)
R 溶媒(液相分散媒)
【技術分野】
【0001】
本発明は、両端開口が前壁部と後壁部とで閉じられた円筒状の外周壁部を備えたケーシングの内部に、径方向外方側に回転翼を備えたロータが回転駆動自在な状態で同心状に配設され、複数の透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータが前記ロータにおける前記前壁部側である前方側で且つ前記回転翼の内側に位置させて同心状に固定配設され、前記ステータと前記ケーシングの外周壁部との間に、前記回転翼が周回する環状の翼室が形成され、前記前壁部の内面に環状溝が形成されると共に、前記前壁部に対向する前記ロータの前方側には、掻き出し片がその先端部を前記環状溝内に進入した状態で前記ロータと一体的に周回可能に配設され、分散質と液相分散媒とが予備混合された予備混合物を前記回転翼の回転により前記ケーシングの内部に吸引導入する導入口が、前記環状溝と連通する状態で前記前壁部に設けられ、分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体を吐出する吐出口が、前記翼室に連通する状態で前記外周壁部に設けられた遠心式の分散装置に関する。
【背景技術】
【0002】
かかる遠心式の分散装置(以下、単に分散装置と記載する場合がある)は、回転翼の回転による吸引作用により、分散質と液相分散媒との予備混合物を導入口から吸引導入して、分散質と液相分散媒とを更に混合し、その混合により生成された生成流体を回転翼の回転により生じる遠心力により吐出口から吐出するものである。
つまり、掻き出し片をその先端部を環状溝内に進入させた状態でロータと一体的に周回させて、導入口から環状溝に導入される予備混合物を掻き出し片の先端部により掻き出すことにより、予備混合物をせん断して細かく解砕すると共に予備混合物の流動を乱して、分散質と液相分散媒とを混合するように構成されている。
【0003】
以下、掻き出し片の先端部における側面のうち、ロータの径方向外方側に向く側面を外向き側面と記載し、ロータの径方向内方側に向く側面を内向き側面と記載し、並びに、環状溝の内面のうち、ロータの径方向外方側に位置して径方向内方側を向く内面を内向き内面と記載し、ロータの径方向内方側に位置して径方向外方側を向く内面を外向き内面と記載して、掻き出し片による予備混合物のせん断作用について説明を加える。
つまり、掻き出し片の先端部が環状溝に進入した状態では、掻き出し片の先端部の外向き側面と環状溝の内向き内面とが互いに対向し、掻き出し片の先端部の内向き側面と環状溝の外向き内面とが互いに対向することになる。
【0004】
そして、掻き出し片がその先端部が環状溝内に進入した状態で周回すると、導入口から環状溝に導入される予備混合物に対して、主として、掻き出し片の先端部の外向き側面と環状溝の内向き内面との間、及び、掻き出し片の先端部の内向き側面と環状溝の外向き内面との間の2領域においてせん断作用が働く。そして、そのせん断作用により、予備混合物が細かく解砕されると共に、せん断作用が働くことにより予備混合物の流動が乱されて、分散質と液相分散媒とが混合される。
【0005】
ちなみに、分散質として例えば粉体が挙げられ、液相分散媒として例えば溶媒が挙げられ、生成流体としては、例えば、粉体を溶媒に溶解させてペーストが生成される。
粉体としては、粉体であれば特に除外されるものではないが、例えば、電池電極材料等の化学原料、脱脂粉乳や小麦粉等の食品原料、医薬原料等であって、顆粒、粉体、細粒等の粉体(これら粉体の混合物を含む)を例示することができる。粉体には、粉粒体も含まれる。また、溶媒としては、粉体を良好に溶解することができる溶媒であれば特に除外されるものではないが、例えば水を例示することができる。
【0006】
このような分散装置において、従来は、掻き出し片が、ロータの径方向において一箇所に存在する状態で設けられ、環状溝が、ロータの径方向での一箇所に存在する掻き出し片に対応して、一条設けられていた(例えば、特許文献1参照。)。
尚、上記特許文献1では、複数の掻き出し片が、ロータの径方向における同位置に位置する状態で周方向に一列に並べて配設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−216172号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の分散装置では、掻き出し片がロータの径方向においては一箇所にしか存在しないため、導入口から導入される予備混合物に対して、ロータの径方向における異なる2領域でしかせん断力を作用させることができず、又、予備混合物の流動に乱れを十分に生じさせることができない。特に、分散質(例えば、粉体)の割合が高くなるほど流動性は低くなり、分散質が凝集した塊(いわゆるダマ)が発生し易く、しかも、発生するダマが大きくなり易いので、分散質と液相分散媒との混合を十分に行うことができず、改善が望まれていた。
【0009】
即ち、分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体の用途として、例えば、対象物に分散質を主成分とする膜や部材を形成する用途がある。この用途では、例えば、生成流体を対象物に塗布した後に加熱する等の処理を実行することにより、液相分散媒を蒸発させて、分散質を主成分とする膜や部材を形成する。このような用途においては、予備混合物中の液相分散媒の比率を低くして、処理の効率化を図ることが望まれる。
しかしながら、処理の効率化を図るために、予備混合物中の液相分散媒の比率を低くすると、予備混合物の流動性が低くなるので、従来の分散装置では、ダマ発生の問題が特に顕著となり、分散質と液相分散媒とを十分に混合することができなかった。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を向上し得る遠心式の分散装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するための本発明に係る遠心式の分散装置は、
両端開口が前壁部と後壁部とで閉じられた円筒状の外周壁部を備えたケーシングの内部に、径方向外方側に回転翼を備えたロータが回転駆動自在な状態で同心状に配設され、複数の透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータが前記ロータにおける前記前壁部側である前方側で且つ前記回転翼の内側に位置させて同心状に固定配設され、前記ステータと前記ケーシングの外周壁部との間に、前記回転翼が周回する環状の翼室が形成され、前記前壁部の内面に環状溝が形成されると共に、前記前壁部に対向する前記ロータの前方側には、掻き出し片がその先端部を前記環状溝内に進入した状態で前記ロータと一体的に周回可能に配設され、分散質と液相分散媒とが予備混合された予備混合物を前記回転翼の回転により前記ケーシングの内部に吸引導入する導入口が、前記環状溝と連通する状態で前記前壁部に設けられ、分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体を吐出する吐出口が、前記翼室に連通する状態で前記外周壁部に設けられた遠心式の分散装置であって、
その特徴構成は、前記掻き出し片が、前記ロータの径方向での位置を異ならせて複数備えられ、
前記環状溝が、前記ロータの径方向での異なる位置に夫々備えられた前記掻き出し片に対応して、同心状に複数設けられている点にある。
【0012】
上記特徴構成によれば、ロータの径方向での異なる位置に夫々位置する複数の掻き出し片が、夫々に対応する環状溝に先端部が進入した状態でロータと一体的に周回するので、導入口から導入される予備混合物に対して、ロータの径方向における掻き出し片が通過する複数の異なる位置(以下、掻き出し片通過位置と記載する場合がある)夫々で2領域ずつせん断力を作用させることができるようになり、導入口から導入される予備混合物に対して、ロータの径方向においてせん断力を作用させる箇所を多くすることができる。
又、ロータの径方向において掻き出し片が通過する間の領域においても、掻き出し片の先端部により掻き出された予備混合物がぶつかり合って混合される。
これらのことにより、予備混合物を十分に細かく解砕することができると共に、予備混合物の流動に十分に乱れを生じさせることができるようになり、ダマを極力少なくすると共に、ダマが発生したとしてもそのダマを細かく解砕して大きさを小さくすることができる。
【0013】
ちなみに、従来のように、掻き出し片をロータの径方向において一箇所に存在する状態で設ける場合に、その掻き出し片におけるロータの径方向に沿う方向での幅を、本特徴構成のようにロータの径方向での異なる位置に備えられた複数の掻き出し片の合計幅と同等の幅にすることが想定される。
しかしながら、このように掻き出し片の幅を広くしても、導入口から導入される予備混合物に対してせん断力を作用させることができるのは、ロータの径方向において2領域のままであるので、予備混合物を細かく解砕する作用、並びに、予備混合物の流動に乱れを生じさせる作用を向上させることができるものではない。
従って、ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力(分散性)を向上し得る遠心式の分散装置を提供することができる。
【0014】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、前記ロータの径方向での異なる位置の夫々において、前記掻き出し片が周方向に複数配設されて、複数の同心状の掻き出し片列が形成されている点にある。
【0015】
上記特徴構成によれば、ロータの径方向における複数の掻き出し片通過位置の夫々において、ロータが一回転する間に、導入口から導入される予備混合物に対して、周方向に並ぶ掻き出し片の個数と同じ回数せん断力を作用させることができるので、予備混合物をより一層細かく解砕すると共に、予備混合物の流動をより一層乱して、ダマの発生をより一層少なくすることができる。
従って、ダマの発生をより一層抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力をより一層向上することができる。
【0016】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、前記各掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、周方向において均等間隔で、且つ、互いに隣接する掻き出し片列同士で周方向での並び位相が異なるように配設されている点にある。
【0017】
上記特徴構成によれば、ロータの径方向において互いに隣接する掻き出し片通過位置では、交互に掻き出し片が通過して、導入口から導入される予備混合物に対して交互にせん断力を作用させることができるので、各掻き出し片列を構成する掻き出し片の個数を少なくしながらも、ロータが一回転する間に、導入口から導入される予備混合物に対してより多くの回数せん断力を作用させることができる。
つまり、導入室内の予備混合物に対して高い周波数で圧力脈動を起こさせることができるので、予備混合物を細かく解砕する作用、並びに、予備混合物の流動に乱れを生じさせる作用を更に向上させることができるようになり、ダマの発生を更に抑制することができる。
従って、ダマの発生を更に抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を更に向上することができる。
【0018】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、各掻き出し片が棒状に形成され、前記ロータの径方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記前壁部側に位置し、前記ロータの軸心方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記ロータの径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻き出し片の基端部が前記ロータと一体回転するように固定され、
前記ロータが、その軸心方向視において前記掻き出し片の先端が前側となる向きに回転駆動される点にある。
【0019】
上記特徴構成によれば、掻き出し片のうち環状溝の外部に位置する部分は、ロータの軸心方向視で、ロータの径方向に対して径方向外方側を向くように傾斜しているので、環状溝に進入して周回する掻き出し片の先端部により環状溝から掻き出された予備混合物は、掻き出し片のうち環状溝の外部に位置する部分により、ロータの径方向外方に流動するように案内される。
つまり、ロータの径方向における複数の異なる位置を周回する複数の掻き出し片により、導入口から環状溝に導入された予備混合物が掻き出されると共に、その掻き出された予備混合がロータの径方向外方に流動するように案内されるので、導入口からケーシング内に導入された予備混合物を滞留を抑制しながら良好に混合して、生成流体として吐出口から吐出することができる。
従って、分散質と液相分散媒とが良好に混合された生成流体を効率良く生成することができる。
【0020】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、隣接する掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、前記ロータの軸心方向視において、内側の列の掻き出し片の基端側の部分と、当該掻き出し片に対応する外側の列の掻き出し片の先端側の部分とが重なる形態で、周方向に配設されている点にある。
【0021】
上記特徴構成によれば、隣接する掻き出し片列のうちの内側の掻き出し片列の掻き出し片により掻き出されると共にロータの径方向外方側に移動案内される予備混合物は、内側の掻き出し片列の掻き出し片の基端部と外側の掻き出し片列の掻き出し片の先端部との間に押し込められて圧縮作用を受けるので、更に解砕されることになり、予備混合物の解砕並びに混合を促進させることができる。
従って、分散質と液相分散媒との混合能力を更に向上することができる。
【0022】
本発明に係る遠心式の分散装置の更なる特徴構成は、前記吐出口から吐出された生成流体の一部を、循環路を介して前記ケーシング内に戻す戻し口が前記前壁部に設けられ、
前記ステータの内周側を前記前壁部側の導入室と前記ロータ側の戻し室とに仕切る仕切体が、前記ロータの前方側に当該ロータと一体回転する状態で設けられると共に、前記仕切体の前壁部側に前記掻き出し片が設けられ、
前記導入室及び前記戻し室が、前記ステータの複数の透孔を介して前記翼室と連通されるように構成され、
前記導入口が前記導入室に連通し、前記戻し口が前記戻し室に連通するように構成されている点にある。
【0023】
上記特徴構成によれば、予備混合物は、導入口から導入室に導入されて、その導入室において掻き出し片のせん断作用を受けて混合され、更に、透孔を通過するときにせん断作用を受けて混合されて、翼室に流入する。一方、吐出口から吐出された生成流体の一部は循環路を通して戻し口から戻し室に導入されて、その戻し室において更に混合され、更に、透孔を通過するときにせん断作用を受けて混合されて、翼室に流入する。
そして、導入室から透孔を通過して翼室に流入した生成流体と、戻し室から透孔を通過して翼室に流入した生成流体とは、翼室を周回する回転翼により混合されて吐出口から吐出される。
つまり、吐出口から吐出された生成流体の一部を戻し室に戻してその戻し室で更に混合した後、導入室にて予備混合物が混合されて生成された生成流体と混合して吐出口から吐出する形態で、導入室から導入される予備混合物を混合するので、ダマの発生を極力抑制して、分散質と液相分散媒とを適切に混合することができる。
従って、分散質と液相分散媒とが適切に混合された生成流体を生成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】遠心式の分散装置を備えた粉体溶解システムの概略構成図
【図2】定量供給装置の要部を示す縦断面図
【図3】図2のIII−III方向視での断面図
【図4】遠心式の分散装置の縦断側面図
【図5】図4のV−V方向視での断面図
【図6】図4のVI−VI方向視での断面図
【図7】ケーシングの前壁部、ステータ及び仕切り体の組み付け構成を示す分解斜視図
【図8】仕切り体への掻き出し片の配設構成を説明する図
【図9】掻き出し片の斜視図
【図10】掻き出し片が2列異位相配設形態で配設された場合の導入室内における予備混合物の流動状態のシミュレーション結果を示す図
【図11】掻き出し片が2列同位相配設形態で配設された場合の導入室内における予備混合物の流動状態のシミュレーション結果を示す図
【図12】掻き出し片が1列配設形態で配設された場合の導入室内における予備混合物の流動状態のシミュレーション結果を示す図
【図13】導入室内における導入口近傍の圧力分布をシミュレーションした結果を示す図
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、図面に基づいて、本発明の実施形態を説明する。
図1は本発明に係る遠心式の分散装置(以下、単に分散装置と記載する場合がある)Yを備えた粉体溶解システムを示す。
この粉体溶解システムは、分散質として粉体Pを用い、液相分散媒として溶媒Rを用いて、粉体Pを溶媒Rに溶解させて生成流体としてペーストFを生成するものである。
本実施形態においては、例えば、粉体PとしてCMC(カルボキシルメチルセルロース)を用い、溶媒Rとして水を用いた。
【0026】
図1に示すように、粉体溶解システムは、粉体Pを定量供給する定量供給装置Xと、溶媒Rを定量供給する溶媒供給装置50と、定量供給装置Xから定量供給される粉体Pと溶媒供給装置50から定量供給される溶媒Rとを負圧吸引して溶解混合する分散装置Yと、分散装置Yから吐出されたペーストFから、完全に溶解していない粉体Pを含む溶媒R(以下、未溶解ペーストFr)を分離する分離装置70等を備えて構成されている。
【0027】
図1に示すように、定量供給装置Xは、上部開口部31aから受け入れた粉体Pを下部開口部31bから排出させるホッパ31と、ホッパ31内の粉体Pを攪拌する攪拌機構32と、ホッパ31の上部開口部31aが大気開放された状態で、下部開口部31bの下流側に接続された分散装置Yの吸引により下部開口部31bに作用する負圧吸引力によって、下部開口部31bから排出された粉体Pを分散装置Yに定量供給する容積式の定量供給機構40とを備えて構成されている。
【0028】
ホッパ31は、上部から下部へ向かうに連れて縮径する逆円錐形状に構成され、その中心軸A1が鉛直方向に沿う姿勢で配設されている。そのホッパ31の上部開口部31a及び下部開口部31b夫々の横断面形状(上面視)は、中心軸A1を中心とする円形状とされ、又、ホッパ31における逆円錐形状の内側壁面の傾斜角度は、水平面に対して略60度とされる。
【0029】
攪拌機構32は、ホッパ31内に配設されて、ホッパ31内の粉体Pを攪拌する攪拌羽根32Aと、当該攪拌羽根32Aをホッパ31の中心軸A1周りに回転させる羽根駆動モータM1と、羽根駆動モータM1をホッパ31の上部開口部31aの上方に位置させて支持する取付部材32Bと、羽根駆動モータM1の回転駆動力を攪拌羽根32Aに伝動させる伝動部材32Cとを備えて構成される。
【0030】
攪拌羽根32Aは、棒状部材を概略V字形状に屈曲して構成され、その一方の辺部がホッパ31の内側壁面に沿う状態で、他方の辺部の端部がホッパ31の中心軸A1と同軸で回転自在に枢支されて配設されている。また、当該攪拌羽根32Aは、横断面形状が三角形に形成されており、三角形の一辺を形成する面がホッパ31の内側壁面と略平行となるように配設されている。これにより、攪拌羽根32Aは、ホッパ31の内側壁面に沿って中心軸A1周りに回転可能に配設されている。
【0031】
図1〜図3に示すように、容積式の定量供給機構40は、ホッパ31の下部開口部31bから供給される粉体Pを下流側の分散装置Yに所定量ずつ定量供給する機構である。
具体的には、ホッパ31の下部開口部31bに接続される導入部41と、供給口43a及び排出口43bを備えたケーシング43と、ケーシング43内に回転可能に配設された計量回転体44と、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2とを備えて構成される。
【0032】
導入部41は、ホッパ31の下部開口部31bとケーシング43の上部に形成された供給口43aとを連通する筒状に形成され、最下端には、ケーシング43の供給口43aと同形状のスリット状の開口が形成されている。この導入部41は、ケーシング43の供給口43a側ほど細くなる先細り状に形成されている。当該スリット状の開口の形状は、ホッパ31の大きさ、粉体Pの供給量、粉体Pの特性等に応じて適宜設定することができるが、例えば、スリット状の開口の長さ方向の寸法を20〜100mm程度、幅方向の寸法を1〜5mm程度に設定するようにする。
【0033】
ケーシング43は、概略直方体形状に形成され、水平方向に対して45度傾斜した姿勢で、導入部41を介してホッパ31に接続されている。
図2及び図3に示すように、ケーシング43の上面には、導入部41のスリット状の開口に対応したスリット状の供給口43aが設けられ、ホッパ31の下部開口部31bからの粉体Pをケーシング43内に供給可能に構成されている。傾斜状に配置されたケーシング43の下方側の側面(図2において右側面)の下部には、計量回転体44にて定量供給された粉体Pを膨張室47を介して下流側の分散装置Yに排出する排出口43bが設けられ、その排出口43bには、粉体排出管45が接続されている。当該膨張室47は、供給口43aから計量回転体44の粉体収容室44bに供給された粉体Pが定量供給されるケーシング43内の位置に設けられ、排出口43bから作用する負圧吸引力によって、供給口43aよりも低圧に維持される(例えば、−0、06MPa程度)。すなわち、排出口43bは、分散装置Yの一次側に接続されることによって、負圧吸引力が膨張室47に作用し供給口43bよりも低圧状態に維持されるようにしている。計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bの状態が負圧状態(例えば、−0、06MPa程度)と当該負圧状態よりも高圧の状態に変化するように構成されている。
【0034】
計量回転体44は、計量回転体駆動モータM2の駆動軸48に配設した円盤部材49に、複数(例えば、8枚)の板状隔壁44aを円盤部材49の中心部を除いて放射状に等間隔に取り付けて構成され、周方向で等間隔に粉体収容室44bを複数区画(例えば、8室)形成するように構成されている。粉体収容室44bは、計量回転体44の外周面及び中心部において開口するように構成されている。計量回転体44の中心部には、開口閉鎖部材42が周方向に偏在して固定状に配設され、各粉体収容室44bの中心部側の開口をその回転位相に応じて閉塞或いは開放可能に構成されている。なお、粉体Pの供給量は、計量回転体44を回転駆動する計量回転体駆動モータM2による計量回転体44の回転数を変化させることで、調整できる。
【0035】
計量回転体44の回転に伴って、各粉体収容室44bが、膨張室47に開放される膨張室開放状態、膨張室47及び供給口43aと連通しない第1密閉状態、供給口43aに開放される供給口開放状態、供給口43a及び膨張室47と連通しない第2密閉状態の順で、その状態が繰り返して変化するように構成されている。なお、計量回転体44の外周面側の開口が第1密閉状態及び第2密閉状態において閉鎖されるようにケーシング43が形成されるとともに、計量回転体44の中心部側の開口が第1密閉状態、供給口開放状態及び第2密閉状態において閉鎖されるように、開口閉鎖部材42がケーシング43に固定して配設される。
【0036】
従って、定量供給装置Xにおいては、ホッパ31内に貯留された粉体Pが攪拌羽根32Aにより攪拌されながら定量供給機構40に供給され、定量供給機構40により、粉体Pが排出口43bから粉体排出管45を通して分散装置Yに定量供給される。
【0037】
具体的に説明すると、定量供給機構40の排出口43bの下流側に接続された分散装置Yからの負圧吸引力により、ケーシング43内における膨張室47の圧力が負圧状態(例えば、−0、06MPa程度)となる。一方で、ホッパ31の上部開口部31aは大気開放されているので、ホッパ31内は大気圧程度の状態となる。膨張室47と計量回転体44の隙間を介して連通する導入部41の内部及び下部開口部31bの近傍は、上記負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態となる。
【0038】
この状態で、ホッパ31の内壁面及び下部開口部31bの近傍の粉体Pが、攪拌機構32の攪拌羽根32Aにより攪拌されることで、攪拌羽根32Aによるせん断作用によりホッパ31内の粉体Pが解砕され、一方、計量回転体44は計量回転体駆動モータM2により回転させられることで、空の粉体収容室44bが次々と供給口43aに連通する状態となる。そして、ホッパ31内の粉体Pは下部開口部31bから導入部41を流下し、次々と供給口43aに連通する状態となる計量回転体44の粉体収容室44bに所定量ずつ収容されて、その粉体収容室44bに収容された粉体Pは膨張室47に流下し、排出口43bから排出される。従って、定量供給装置Xにより、粉体Pを粉体排出管45を通して所定量ずつ連続して分散装置Yの混合導入口11に定量供給することができる。
【0039】
図1に示すように、粉体排出管45には、分散装置Yの混合導入口11への粉体Pの供給を停止可能なシャッタバルブ46が配設されている。
【0040】
図1に示すように、溶媒供給装置50は、溶媒源51からの溶媒Rを、設定流量で分散装置Yの混合導入口11に連続的に供給するように構成されている。
具体的には、溶媒供給装置50は、溶媒Rを送出する溶媒源51と、溶媒源51から溶媒Rが送出される溶媒供給管52と、溶媒源51から溶媒供給管52に送出される溶媒Rの流量を設定流量に調整する流量調整バルブ(図示せず)と、設定流量に調整された溶媒Rを定量供給機構40から定量供給される粉体Pに混合して混合導入口11に供給するミキシング機構60とを備えて構成されている。
【0041】
図4に示すように、ミキシング機構60は、粉体排出管45と溶媒供給管52とを混合導入口11に連通接続するミキシング部材61を備えて構成されている。
このミキシング部材61は、円筒状の混合導入口11よりも小径に構成されて、混合導入口11との間に環状のスリット63を形成すべく混合導入口11に挿入状態で配設される筒状部62、及び、環状のスリット63に全周にわたって連通する状態で混合導入口11の外周部に環状流路64を形成する環状流路形成部65を備えて構成されている。
ミキシング部材61には、粉体排出管45が筒状部62に連通する状態で接続されると共に、溶媒供給管52が環状流路64に対して溶媒Rを接線方向に供給するように接続される。
粉体排出管45、ミキシング部材61の筒状部62及び混合導入口11は、それらの軸心A2を供給方向が下向きとなる傾斜姿勢(水平面に対する角度が45度程度)となるように傾斜させて配置されている。
【0042】
つまり、定量供給機構40の排出口43bから粉体排出管45に排出された粉体Pは、ミキシング部材61の筒状部62を通して軸心A2に沿って混合導入口11に導入される。一方、溶媒Rは、環状流路64に接線方向から供給されるので、環状流路64の内周側に形成される環状のスリット63を介して、切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で混合導入口11に供給される。
従って、円筒状の混合導入口11により、粉体Pと溶媒Rとが均等に予備混合され、その予備混合物Fpが分散装置Yに吸引導入される。
【0043】
図4〜図9に基づいて、分散装置Yについて説明を加える。
尚、図4は、分散装置Yの縦断側面図であり、図5は、図4のV−V矢視図であり、図6は、図4のVI−VI矢視図である。図7は、ケーシング1の前壁部2、ステータ7及び仕切り体15の組み付け構成を示す分解斜視図である。図8は、仕切り体15への掻き出し片9の配設構成を説明する図であり、(a)は前面図、(b)は側面図、(c)は後面図である。図9は、掻き出し片9の斜視図である。
【0044】
図4に示すように、分散装置Yは、両端開口が前壁部2と後壁部3とで閉じられた円筒状の外周壁部4を備えたケーシング1と、そのケーシング1の内部に同心状で回転駆動自在に設けられたロータ5と、そのケーシング1の内部に同心状で固定配設された円筒状のステータ7と、ロータ5を回転駆動するポンプ駆動モータM3等を備えて構成されている。
【0045】
図5にも示すように、ロータ5の径方向の外方側には、複数の回転翼6が、前壁部2側である前方側に突出し且つ周方向に等間隔で並ぶ状態でロータ5と一体的に備えられている。
円筒状のステータ7には、複数の透孔7a,7bが周方向に夫々並べて備えられ、そのステータ7が、ロータ5の前方側で且つ回転翼6の径方向の内側に位置させて固定配設されて、そのステータ7とケーシング1の外周壁部4との間に、回転翼6が周回する環状の翼室8が形成される。
図4、図6及び図7に示すように、ケーシング1の前壁部2の内面に環状溝10が形成されると共に、その前壁部2に対向するロータ5の前方側には、掻き出し片9がその先端部9Tを環状溝10内に進入した状態でロータ5と一体的に周回可能に配設されている。
【0046】
そして、図4〜図7に示すように、粉体Pと溶媒Rとが予備混合された予備混合物Fpを回転翼6の回転によりケーシング1の内部に吸引導入する混合導入口11(導入口に相当する)が、環状溝10と連通する状態で前壁部2に設けられている。
又、図4及び図5に示すように、粉体Pと溶媒Rとが混合されて生成された生成流体としてのペーストFを吐出する円筒状の吐出口12が、翼室8に連通する状態で外周壁部4に設けられている。
【0047】
図1及び図4に示すように、この実施形態では、吐出口12から吐出されたペーストF(生成流体に相当する)は、吐出路18を通して分離装置70に供給され、その分離装置70にて分離された未溶解ペーストFr(生成流体の一部に相当する)を、循環路16を介してケーシング1内に戻す戻し口17がケーシング1の前壁部2に設けられている。
又、図4〜図7に示すように、ステータ7の内周側を前壁部2側の導入室13とロータ5側の戻し室14とに仕切る仕切体15が、ロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けられると共に、仕切体15の前壁部2側に掻き出し片9が設けられている。
そして、図4に示すように、導入室13及び戻し室14が、ステータ7の複数の透孔7a,7bを介して翼室8と連通されるように構成され、混合導入口11が導入室13に連通し、戻し口17が戻し室14に連通するように構成されている。
具体的には、導入室13と翼室8とは、ステータ7における導入室13に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の導入室側透孔7aにて連通され、戻し室14と翼室8とは、ステータ7における戻し室14に臨む部分に周方向に等間隔で配設された複数の戻し室側透孔7bにて連通されている。
【0048】
そして、本発明では、図4〜図8に示すように、掻き出し片9が、ロータ5の径方向での位置を異ならせた状態で複数備えられ、環状溝10が、ロータ5の径方向での異なる位置に夫々備えられた掻き出し片9に対応して、同心状に複数(図4では2条)設けられている。
【0049】
この実施形態では、ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9が周方向に複数配設されて、複数の同心状の掻き出し片列Lが形成されている。
又、各掻き出し片列Lを構成する複数の掻き出し片9が、周方向において均等間隔で、且つ、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での並び位相が異なるように配設されている。
具体的には、2列の掻き出し片列Lが同心状に形成され、各掻き出し片列Lには、4個の掻き出し片9が、中心角で90度ずつ間隔を隔てる並び位相で周方向に配設されている。又、内側の掻き出し片列Lの4個の掻き出し片9の並び位相と、外側の掻き出し片列Lの4個の掻き出し片9の並び位相とは、ずれている。
【0050】
尚、以下の説明及び図面においては、2列の掻き出し片列Lの内外の位置を示すために、掻き出し片列を示す符号「L」に、内側を示す添え字「i」を付して、「Li」にて内側の掻き出し片列を示し、外側を示す添え字「o」を付して、「Lo」にて外側の掻き出し片列を示す。
【0051】
分散装置Yの各部について、説明を加える。
図4に示すように、ロータ5は、その前面が概ね円錐台状に膨出する形状に構成されると共に、その外周側に、複数の回転翼6が前方に突出する状態で等間隔に並べて設けられている。
このロータ5が、ケーシング1内においてケーシング1と同心状に位置する状態で、後壁部3を貫通してケーシング1内に挿入されたポンプ駆動モータM3の駆動軸19に連結されて、そのポンプ駆動モータM3により回転駆動される。
【0052】
図4、図7及び図8に示すように、仕切り体15は、後述するステータ7の内径よりも僅かに小さい外径を有する概ね漏斗状に構成されている。この漏斗状の仕切り体15は、具体的には、その中央部に、頂部が円筒状に突出する筒状摺接部15aにて開口された漏斗状部15bを備えると共に、その漏斗状部15bの外周部に、前面及び後面共にケーシング1の軸心A3に直交する状態となる環状平板部15cを備える形状に構成されている。
そして、図4及び図5に示すように、この仕切り体15が、頂部の筒状摺接部15aがケーシング1の前壁部2側を向く姿勢で、周方向に等間隔を隔てた複数箇所(この実施形態では、4箇所)に配設された間隔保持部材20を介して、ロータ5の前面に取り付けられる。
【0053】
図5及び図8(c)に示すように、仕切り体15を複数箇所夫々で間隔保持部材20を介してロータ5に取り付ける際には、攪拌羽根21が、ケーシング1の後壁部3側に向く姿勢で仕切り体15に一体的に組み付けられ、ロータ5が回転駆動されると、4枚の攪拌羽根21がロータ5と一体的に回転するように構成されている。
【0054】
図4及び図7に示すように、この実施形態では、円筒状の戻し口17が、ケーシング1と同心状で、そのケーシング1の前壁部2の中心部に設けられている。
図4〜図7に示すように、混合導入口11は、そのケーシング1内に開口する開口部が、同心状の2条の環状溝10における周方向の一部を内部に含む状態で、ケーシング1内に対する戻し口17の開口部の横側方に位置するように、前壁部2に設けられている。又、混合導入口11は、平面視において軸心A2がケーシング1の軸心A3と平行となり、且つ、ケーシング1の軸心A3に直交する水平方向視において、軸心A2がケーシングの前壁部2に近付くほどケーシング1の軸心A3に近づく下向きの傾斜姿勢で、ケーシング1の前壁部2に設けられている。ちなみに、混合導入口11の水平方向に対する下向きの傾斜角度は、上述したように45度程度である。
【0055】
図4及び図7に示すように、ステータ7は、ケーシング1の前壁部2の内面(ロータ5に対向する面)に取り付けられて、ケーシング1の前壁部2とステータ7とが一体となるように固定されている。
又、図5に示すように、吐出口12は、円筒状の外周壁部4に、その外周壁部4の接線方向に伸びるように設けられている。
【0056】
図6〜図9に示すように、この実施形態では、各掻き出し片9が棒状に形成され、ロータ5の径方向視で、当該棒状の掻き出し片9の先端側ほど前壁部2側に位置し、且つ、ロータ5の軸心方向視で、当該棒状の掻き出し片9の先端側ほどロータ5の径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻き出し片9の基端部9Bがロータ5と一体回転するように固定され、ロータ5が、その軸心方向視において掻き出し片9の先端が前側となる向き(図4〜図6において矢印にて示す向き)に回転駆動される。
【0057】
図5〜図9に基づいて、掻き出し片9について説明を加える。
掻き出し片9は、仕切り体15に固定される基端部9B、導入室13に露呈する状態となる中間部9M、環状溝10に嵌め込まれる(即ち、進入する)状態となる先端部9Tを基端から先端に向けて一連に備えた棒状に構成されている。
【0058】
図5、図7、図8(b)及び図9に示すように、掻き出し片9の基端部9Tは、概ね矩形板状に構成されている。
図5、図7、図8(a)及び(b)、並びに、図9に示すように、掻き出し片9の中間部9Mは、横断面形状が概ね三角形状になる概ね三角柱状に構成されている。そして、掻き出し片9が上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、三角柱状の中間部9Mの三側面のうちのロータ5の回転方向前側を向く一側面9m(以下、放散面と記載する場合がある)は、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)ように構成されている。
【0059】
つまり、棒状の掻き出し片9が、上述の如き傾斜姿勢で設けられることにより、掻き出し片9のうち導入室13に露呈する中間部9Mが環状溝10に嵌め込まれる先端部9Tよりもロータ5の径方向外方に位置し、しかも、その中間部9Mの回転方向前側を向く放散面9mが、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して斜め外向きに傾斜している。これにより、掻き出し片9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻き出し片9の中間部9Mの放散面9mにより、導入室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。
【0060】
図6、図7、図8(a)及び(b)、並びに、図9に示すように、掻き出し片9の先端部9Tは、横断面形状が概ね矩形状になる概ね四角柱状であり、ロータ5の軸心方向視において、四側面のうちのロータ5の径方向外方側に向く外向き側面9oが環状溝10の内面における径方向内方側を向く内向き内面に沿い、且つ、四側面のうちのロータ5の径方向内方側に内向き側面9iが環状溝10の内面における径方向外方側を向く外向き内面に沿う状態となる弧状に構成されている。
又、四角柱状の先端部9Tの四側面のうちの、ロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9fは、ロータ5の回転方向前側に向けて傾斜する前下がり状で、しかも、ロータ5の径方向に対して径方向外方側に向く(以下、斜め外向きと記載する場合がある)になるように構成されている。
これにより、掻き出し片9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻き出し片9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて導入室13内に放出されることになる。
更に、掻き出し片9の先端部9Tの先端面9tは、その先端部9Tが環状溝10に嵌め込まれた状態で環状溝10の底面と平行になるように構成されている。
【0061】
上述のような形状に構成された4個の掻き出し片9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90度ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを仕切り体15の環状平板部15cに固定して設けられて、内側の掻き出し片列Liが構成され、その内側の掻き出し片列Liの外側に、4個の掻き出し片9が、上述の如き傾斜姿勢で、中心角で90度ずつ間隔を隔てて周方向に並べた形態で、夫々、基端部9Bを仕切り体15の環状平板部15cに固定して設けられて、外側の掻き出し片列Loが構成されている。
又、このように8個の掻き出し片9が、4個ずつ外側と内側の掻き出し片列Lo,Liiに分けて周方向に並べて設けられるに当たって、基端部9Bを仕切り体15に固定する位置の周方向での位相が、外側の列Loの基端部9Bに対して内側の列Liの基端部9Bをロータ5の回転方向に中心角で30度程度ずらすことにより、内側の掻き出し片列Liの4個の掻き出し片9の並び位相と、外側の掻き出し片列Loの4個の掻き出し片9の並び位相とがずらされている。
【0062】
上記のように8個の掻き出し片9が4個ずつ外側と内側の掻き出し片列Lo,Liに分けて周方向に並べて設けられることにより、図6、図7、並びに、図8(a)及び(b)に示すように、隣接する掻き出し片列Lo,Liを構成する4個の掻き出し片9が、ロータ5の軸心方向視において、内側の列Liの掻き出し片9の基端側の部分(即ち、基端部9B及び中間部9Mの基端側の一部)と、当該掻き出し片9に対応する外側の列Loの掻き出し片9の先端側の部分(即ち、先端部9T)とが重なる形態で、周方向に配設されている。
【0063】
図4に示すように、上述のように2列の掻き出し片列Lo,Liが設けられた仕切り体15が、間隔保持部材20によりロータ5の前面と間隔を隔てた状態でロータ5の前面に取り付けられ、そのように仕切り体15が取り付けられたロータ5が、仕切り体15の筒状摺接部15aが戻し口17に摺接回転可能に嵌めこまれた状態で、ケーシング1内に配設される。
すると、ロータ5の膨出状の前面と仕切り体15の後面との間に、ケーシング1の前壁部2側ほど小径となる先細り状の戻し室14が形成され、戻し口17が仕切り体15の筒状摺接部15aを介して戻し室14に連通するように構成されている。
又、ケーシング1の前壁部2と仕切り体15の前面との間に、混合導入口11に連通する環状の導入室13が形成される。
【0064】
そして、ロータ5が回転駆動されると、筒状摺接部15aが戻し口17に摺接する状態で、仕切り体15がロータ5と一体的に回転することになり、ロータ5及び仕切り体15が回転する状態でも、戻し口17が仕切り体15の筒状摺接部15aを介して戻し室14に連通する状態が維持されるように構成されている。
【0065】
分離装置70は、円筒状容器71内において比重によって溶解液を分離するように構成され、図1に示すように、分散装置Yの吐出口12から吐出路18を通して供給されるペーストFから、完全に溶解していない粉体Pを含む状態の未溶解ペーストFrを循環路16に、粉体Pが略完全に溶解した状態のペーストFを排出路22にそれぞれ分離するように構成されている。吐出路18及び循環路16は、夫々、円筒状容器71の下部に接続され、排出路22は、円筒状容器71の上部とペーストF(製品)の供給先80とに接続される。
なお、分離装置70は、図示しないが、吐出路18が接続される導入パイプを円筒状容器71の底面から内部に突出して配設し、円筒状容器71の上部に排出路22に接続される排出部を備えるとともに、下部に循環路16に接続される循環部を備え、導入パイプの吐出上端に、導入パイプから吐出される溶解液の流れを旋回させる捻り板を配設して構成されている。
【0066】
次に、この粉体溶解システムの動作について説明する。
まず、定量供給装置Xを停止し、シャッタバルブ46を閉止して粉体排出管45を介する粉体Pの吸引を停止した状態で、溶媒供給装置50から溶媒Rのみを供給しながらロータ5を回転させ、分散装置Yの運転を開始する。所定の運転時間が経過して、分散装置Y内が、負圧状態(例えば、−0.06MPa程度の真空状態)となると、シャッタバルブ46を開放する。これによって、定量供給機構Xの膨張室47を負圧状態(−0.06MPa程度)とし、導入部41の内部及びホッパ31の下部開口部31b近傍を当該負圧状態と大気圧状態との間の圧力状態にする。
【0067】
そして、定量供給装置Xを作動させ、ホッパ31内に貯留された粉体Pを、攪拌羽根32Aの攪拌作用及び分散装置Yの負圧吸引力により、ホッパ31の下部開口部31bから定量供給機構40の膨張室47を介してミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。並行して、溶媒供給機構50を作動させ、分散装置Yの負圧吸引力により、溶媒Rをミキシング機構60のミキシング部材61に所定量ずつ連続的に定量供給する。
ミキシング機構60のミキシング部材61からは、粉体Pがミキシング部材61の筒状部62を通して混合導入口11に供給されると共に、溶媒Rが、環状のスリット63を通して切れ目のない中空円筒状の渦流の状態で混合導入口11に供給され、混合導入口11により、粉体Pと溶媒Rとが予備混合され、その予備混合物Fpが2条の環状溝10に導入される。
【0068】
ロータ5が高速で回転駆動されて、そのロータ5と一体的に仕切り体15が高速回転すると、その仕切り体15に同心状に設けられた2列の掻き出し片列Lo,Li夫々の4個の掻き出し片9が、各列に対応する環状溝10夫々に先端部9Tが嵌め込まれた状態で高速で周回する。
すると、図4及び図5において実線矢印にて示すように、混合導入口11を流動して2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpは、環状溝10に嵌め込まれて周回する掻き出し片9の先端部9Tにより掻き出され、その掻き出された予備混合物Fpは、概略的には、導入室13内を仕切り体15における漏斗状部15bの前面と環状平板部15cの前面とに沿いながらロータ5の回転方向に流動し、更に、ステータ7の導入室側透孔7aを通過して翼室8に流入し、その翼室8内をロータ5の回転方向に流動して、吐出口12から吐出される。
【0069】
2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpは、掻き出し片9の先端部9Tにより掻き出されるときに、せん断作用を受ける。この場合、内側の掻き出し片列Liにおける掻き出し片9の先端部9Tの外向き側面9oと内側の環状溝10の内向き内面との間、及び、内側の掻き出し片列Liにおける掻き出し片9の先端部9Tの内向き側面9iと内側の環状溝10の外向き内面との間においてせん断作用が働き、並びに、外側の掻き出し片列Loにおける掻き出し片9の先端部9Tの外向き側面9oと外側の環状溝10の内向き内面との間、及び、外側の掻き出し片列Loにおける掻き出し片9の先端部9Tの内向き側面9iと外側の環状溝10の外向き内面との間においてせん断作用が働く。
つまり、ロータ5の径方向における異なる4領域でせん断力を作用させることができるので、予備混合物Fpを十分に細かく解砕すると共に、予備混合物Fpの流動に十分乱れを生じさせて、粉体Pを溶媒Rに均一に溶解混合させることができる。
【0070】
しかも、ロータ5の径方向の同じ位置に4個の掻き出し片9が周方向に配設されているので、ロータ5が一回転する間に、ロータ5の径方向の同じ位置において4回せん断力を作用させることができ、更には、内外2列の掻き出し片列Li,Loで各列を構成する4個の掻き出し片9の周方向での並び位相が異なるので、混合導入口11から2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpに対して、ロータ5が一回転する間に8回せん断力を作用させることができる。
つまり、導入室13内の予備混合物Fpに対して高い周波数で圧力脈動を起こさせることができるので、予備混合物Fpをより一層細かく解砕すると共に、予備混合物Fpの流動により一層の乱れを生じさせることができる。
【0071】
更に、掻き出し片9の先端部9Tのロータ5の回転方向前側を向く掻き出し面9f、及び、掻き出し片9の中間部9Mのロータ5の回転方向前側を向く放散面9mは、いずれも、前下がり状で、しかも、斜め外向き状になっている。
これにより、掻き出し片9の先端部9Tにより環状溝10から掻き出された予備混合物Fpは、掻き出し片9の先端部9Tの掻き出し面9fにより、ロータ5の径方向外方側に向けて導入室13内に放出され、そのように放出された予備混合物Fpは、更に、掻き出し片9の中間部9Mの放散面9mにより、導入室13内においてロータ5の径方向外方側に向けて流動するように案内される。更に、予備混合物Fpは、導入室側透孔7aを通過して、その導入室側透孔7aの通過の際にもせん断作用を受けて解砕され、更に、高速で回転する回転翼6によりせん断作用を受けて解砕されて、粉体Pが十分に溶解したペーストFが生成され、そのペーストFが吐出口12から吐出される。
つまり、混合導入口11から導入室13内に導入された予備混合物Fpを滞留を抑制しながら良好に混合して、ペーストFとして吐出口12から吐出することができる。
【0072】
更に、ロータ5の軸心方向視において、内側の列Liの各掻き出し片9の基端部9Bと、当該各掻き出し片9に対応する外側の列Loの各掻き出し片9の先端部9Tとが重なっているので、内側の列Liの掻き出し片9により掻き出されてロータ5の径方向外方側に移動された予備混合物Fpが、内側の列Liの掻き出し片9の基端部9Bと外側の列Loの掻き出し片9の先端部9Tとの間に押し込められて圧縮作用を受けるので、予備混合物Fpの解砕並びに溶解混合を促進させることができる。
【0073】
要するに、混合導入口11から2条の環状溝10に導入された予備混合物Fpに対して、ロータ5の径方向における異なる4領域でせん断力を作用させると共に、導入室13内において予備混合物Fpに高い周波数で圧力脈動を起こさせることができるので、予備混合物Fpが細かく解砕されて溶解混合され、ダマが極めて少ないペーストFが生成され、そのペーストFが、後述する戻し室14からのペーストFと混合されて吐出口12から吐出される。
【0074】
吐出口12から吐出されたペーストFは、吐出路18を通して分離装置70に供給され、分離装置70において、完全に溶解していない粉体Pを含む状態の未溶解ペーストFrと、粉体Pが略完全に溶解した状態のペーストFとに分離されて、未溶解ペーストFrは循環路16を通して再び分散装置Yに供給され、ペーストFは排出路22を通して供給先80に供給される。
【0075】
未溶解ペーストFrは、戻し口17から戻し室14に導入され、その戻し室14内において、高速で回転する複数の攪拌羽根21によりせん断作用を受けて、更に細かく解砕され、更に、戻し室側透孔7bの通過の際にもせん断作用を受けて解砕され、更に、高速で回転する回転翼6によりせん断作用を受けて解砕され、ダマが更に少なくなったペーストFが導入室13からのペーストFと混合されて吐出口12から吐出される。
従って、ダマが殆どなく粉体Pが均等に溶解されたペーストFを、分散装置Y内における滞留を効果的に抑制して効率良く生成することができる。
【0076】
次に、掻き出し片9の配設構成として本発明に係る配設構成を採用することにより、粉体Pと溶媒Rとの溶解混合を促進することができることを検証した結果を、図10〜図12、及び、図13に基づいて説明する。
尚、図10〜図12は、導入室13内における予備混合物Fpの流動状態をシミュレーションしたものであり、環状溝10の開口部近くを通りケーシング1の軸心A3に直交する断面での、回転翼6の回転速度ベクトルに対する予備混合物Fpの相対流動速度ベクトルを示す。但し、図10〜図12には、戻し室14内における予備混合物Fpの相対流動速度ベクトルも示されている。
又、図13は、導入室13内における予備混合物Fpの圧力分布をシミュレーションしたものであり、混合導入口11の開口部の略中心を通りケーシング1の軸心A3を含む断面における、導入室13及び戻し室14内の圧力分布を色の濃淡で示す。つまり、色が薄くなるほど圧力が低くなる。
【0077】
図10及び図13(a)は、2列の掻き出し片列Li,Loを同心状に形成し、各掻き出し片列Li,Loで4個の掻き出し片9を周方向に等間隔で配設すると共に、内外の掻き出し片列Li,Loで掻き出し片9の並び位相を異ならせた配設形態(以下、2列異位相配設形態と略記する場合がある)、即ち、本実施形態の配設形態でのシミュレーション結果を示す。又、図11及び図13(b)は、2列の掻き出し片列Lを同心状に形成する場合に、内外の掻き出し片列Li,Loで掻き出し片9の並び位相を同一にした配設形態(以下、2列同位相配設形態と略記する場合がある)でのシミュレーション結果を示す。又、図12及び図13(c)は、複数の掻き出し片9を、ロータ5の径方向における同位置に位置する状態(一列)で周方向に並べて配設した配設形態(以下、1列配設形態と略記する場合がある)、即ち、従来の配設形態でのシミュレーション結果を示す。
【0078】
図10〜図12において丸印で囲った領域に注目すると、2列異位相配設形態及び2列同位相配設形態共に、1列配設形態に比べて、ロータ5の径方向内方に向かう成分が大きい速度ベクトルが多くなっており、掻き出し片9を2列異位相配設形態や2列同位相配設形態で配設することにより、導入室13内における予備混合物Fpの流動状態の乱れを促進できることが分かる。
【0079】
図13において丸印で囲った領域に注目すると、導入室13に対する混合導入口11の開口部付近においては、2列異位相配設形態及び2列同位相配設形態共に、1列配設形態に比べて、圧力のバラツキが大きい分布となり、導入室13内における予備混合物Fpの圧力脈動を大きくできることが分かる。即ち、導入室13内がより低圧となっていることが分かる。
又、図13(a)は、(b)に比べると、2列異位相配設形態の方が2列同位相配設形態よりも圧力脈動の発生回数(周波数)が大きくなり、丸印で囲った領域の圧力のバラツキが細かく生じるので、予備混合物Fpの流動状態の乱れがより一層促進されることが分かる。
【0080】
上述の検証により、本発明のように、掻き出し片9がロータ5の径方向での位置を異ならせて複数備えられ、環状溝10が、ロータ5の径方向での異なる位置に夫々備えられた掻き出し片9に対応して同心状に複数設けられることにより、予備混合物Fpを解砕する作用、及び、予備混合物Fpの流れに乱れを生じさせる作用を促進させることができて、分散質と液相分散媒との混合能力を向上できることが分かる。
又、複数の掻き出し片9を周方向において均等間隔で配設して、各掻き出し片列Lを形成する場合に、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での掻き出し片9の並び位相を異ならせる方が、同一にするよりも、予備混合物Fpを解砕する作用、及び、予備混合物Fpの流れに乱れを生じさせる作用を強くすることができて、分散質と液相分散媒との混合能力を向上できることが分かる。
【0081】
〔別実施形態〕
(A)ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9を周方向に複数配設して、複数の同心状の掻き出し片列Lを形成するに当たって、掻き出し片9の配置形態は、上記の実施形態において例示した配設形態、即ち、各列で同数の掻き出し片9を等間隔で周方向に配設すると共に、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での並び位相が異なるように配設する形態に限定されるものではない。
【0082】
(A−1)例えば、掻き出し片列Lの列数は、上記の実施形態において説明した2列に限定されるものではなく、3列以上でも良い。但し、列数が多くなるほど、各掻き出し片9におけるロータ5の径方向に沿う方向での太さが細くなって、掻き出し片9の強度が低くなるので、掻き出し片列Lの列数は極力少なくするのが好ましい。
又、各掻き出し片列Lを構成する複数の掻き出し片9の個数も、上記の実施形態の如き4個に限定されるものではなく、2個や3個でもよく、又、5個以上でも良い。
【0083】
(A−2)各掻き出し片列Lで同数の掻き出し片9を等間隔で周方向に配設すると共に、互いに隣接する掻き出し片列L同士で周方向での並び位相を同一にしても良い。
【0084】
(A−3)各掻き出し片列Lで複数の掻き出し片9を異なる間隔で周方向に配設しても良い。この場合、掻き出し片列Lを構成する掻き出し片9の個数を、各列で同一にしても良いし、異ならせても良い。
【0085】
(B)上記の実施形態では、ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9を周方向に複数配設したが、ロータ5の径方向での異なる位置の夫々において、掻き出し片9を1個ずつ設けても良い。
この場合、複数の掻き出し片9をロータ5の径方向に沿って並べても良いし、並べなくても良い。
【0086】
(C)上記の実施形態では、仕切体15をロータ5の前方側に当該ロータ5と一体回転する状態で設けて、掻き出し片9を仕切体15に設けたが、吐出口12から吐出されるペーストFの一部を循環させなくても、粉体Pを溶媒Rに適切に溶解混合させることができる場合は、分離装置70を省略すると共に、仕切体15を省略して、掻き出し片9をロータ5に直接設けても良い。
【0087】
(D)上記の実施形態では、粉体Pとして単一種類のCMC粉体を用いたが、必要に応じて、複数種類の粉体を混合した混合粉体を粉体Pとして用いることができる。また、同様に、溶媒Rとして単一種類の水を用いたが、必要に応じて、複数種類の液体を混合した混合液体を溶媒Rとして用いることができる。
又、上記の実施形態では、分散質として粉体Pを用い、液相分散媒として溶媒Rを用いて、分散質を液相分散媒に溶解させる場合に本発明を適用したが、分散質を液相分散媒に溶解させずに分散させる場合にも、本発明を適用することができる。
又、分散質としては、上記の実施形態において例示した粉体Pに限定されるものではなく、例えば、液状のものでも良い。例えば、分散質としての油を液相分散媒としての水に分散させる場合にも、本発明を適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0088】
以上説明したように、ダマの発生を抑制して、分散質と液相分散媒との混合能力を向上し得る遠心式の分散装置を提供することができる。
【符号の説明】
【0089】
1 ケーシング
2 前壁部
3 後壁部
4 外周壁部
5 ロータ
6 回転翼
7 ステータ
7a 導入室側透孔(透孔)
7b 戻し室側透孔(透孔)
8 翼室
9 掻き出し片
9B 基端部
9T 先端部
10 環状溝
11 混合導入口(導入口)
12 吐出口
13 導入室
14 戻し室
15 仕切り体
16 循環路
17 戻し口
F ペースト(生成流体)
Fp 予備混合物
L 掻き出し片列
P 粉体(分散質)
R 溶媒(液相分散媒)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
両端開口が前壁部と後壁部とで閉じられた円筒状の外周壁部を備えたケーシングの内部に、径方向外方側に回転翼を備えたロータが回転駆動自在な状態で同心状に配設され、複数の透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータが前記ロータにおける前記前壁部側である前方側で且つ前記回転翼の内側に位置させて同心状に固定配設され、
前記ステータと前記ケーシングの外周壁部との間に、前記回転翼が周回する環状の翼室が形成され、
前記前壁部の内面に環状溝が形成されると共に、前記前壁部に対向する前記ロータの前方側には、掻き出し片がその先端部を前記環状溝内に進入した状態で前記ロータと一体的に周回可能に配設され、
分散質と液相分散媒とが予備混合された予備混合物を前記回転翼の回転により前記ケーシングの内部に吸引導入する導入口が、前記環状溝と連通する状態で前記前壁部に設けられ、
分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体を吐出する吐出口が、前記翼室に連通する状態で前記外周壁部に設けられた遠心式の分散装置であって、
前記掻き出し片が、前記ロータの径方向での位置を異ならせて複数備えられ、
前記環状溝が、前記ロータの径方向での異なる位置に夫々備えられた前記掻き出し片に対応して、同心状に複数設けられている遠心式の分散装置。
【請求項2】
前記ロータの径方向での異なる位置の夫々において、前記掻き出し片が周方向に複数配設されて、複数の同心状の掻き出し片列が形成されている請求項1に記載の遠心式の分散装置。
【請求項3】
前記各掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、周方向において均等間隔で、且つ、互いに隣接する掻き出し片列同士で周方向での並び位相が異なるように配設されている請求項2に記載の遠心式の分散装置。
【請求項4】
各掻き出し片が棒状に形成され、前記ロータの径方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記前壁部側に位置し、前記ロータの軸心方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記ロータの径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻き出し片の基端部が前記ロータと一体回転するように固定され、
前記ロータが、その軸心方向視において前記掻き出し片の先端が前側となる向きに回転駆動される請求項3に記載の遠心式の分散装置。
【請求項5】
隣接する掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、前記ロータの軸心方向視において、内側の列の掻き出し片の基端側の部分と、当該掻き出し片に対応する外側の列の掻き出し片の先端側の部分とが重なる形態で、周方向に配設されている請求項4に記載の遠心式の分散装置。
【請求項6】
前記吐出口から吐出された生成流体の一部を、循環路を介して前記ケーシング内に戻す戻し口が前記前壁部に設けられ、
前記ステータの内周側を前記前壁部側の導入室と前記ロータ側の戻し室とに仕切る仕切体が、前記ロータの前方側に当該ロータと一体回転する状態で設けられると共に、前記仕切体の前壁部側に前記掻き出し片が設けられ、
前記導入室及び前記戻し室が、前記ステータの複数の透孔を介して前記翼室と連通されるように構成され、
前記導入口が前記導入室に連通し、前記戻し口が前記戻し室に連通するように構成されている請求項5に記載の遠心式の分散装置。
【請求項1】
両端開口が前壁部と後壁部とで閉じられた円筒状の外周壁部を備えたケーシングの内部に、径方向外方側に回転翼を備えたロータが回転駆動自在な状態で同心状に配設され、複数の透孔を周方向に並べて備えた円筒状のステータが前記ロータにおける前記前壁部側である前方側で且つ前記回転翼の内側に位置させて同心状に固定配設され、
前記ステータと前記ケーシングの外周壁部との間に、前記回転翼が周回する環状の翼室が形成され、
前記前壁部の内面に環状溝が形成されると共に、前記前壁部に対向する前記ロータの前方側には、掻き出し片がその先端部を前記環状溝内に進入した状態で前記ロータと一体的に周回可能に配設され、
分散質と液相分散媒とが予備混合された予備混合物を前記回転翼の回転により前記ケーシングの内部に吸引導入する導入口が、前記環状溝と連通する状態で前記前壁部に設けられ、
分散質と液相分散媒とが混合されて生成された生成流体を吐出する吐出口が、前記翼室に連通する状態で前記外周壁部に設けられた遠心式の分散装置であって、
前記掻き出し片が、前記ロータの径方向での位置を異ならせて複数備えられ、
前記環状溝が、前記ロータの径方向での異なる位置に夫々備えられた前記掻き出し片に対応して、同心状に複数設けられている遠心式の分散装置。
【請求項2】
前記ロータの径方向での異なる位置の夫々において、前記掻き出し片が周方向に複数配設されて、複数の同心状の掻き出し片列が形成されている請求項1に記載の遠心式の分散装置。
【請求項3】
前記各掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、周方向において均等間隔で、且つ、互いに隣接する掻き出し片列同士で周方向での並び位相が異なるように配設されている請求項2に記載の遠心式の分散装置。
【請求項4】
各掻き出し片が棒状に形成され、前記ロータの径方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記前壁部側に位置し、前記ロータの軸心方向視で、当該棒状の掻き出し片の先端側ほど前記ロータの径方向内方側に位置する傾斜姿勢で、当該棒状の掻き出し片の基端部が前記ロータと一体回転するように固定され、
前記ロータが、その軸心方向視において前記掻き出し片の先端が前側となる向きに回転駆動される請求項3に記載の遠心式の分散装置。
【請求項5】
隣接する掻き出し片列を構成する複数の掻き出し片が、前記ロータの軸心方向視において、内側の列の掻き出し片の基端側の部分と、当該掻き出し片に対応する外側の列の掻き出し片の先端側の部分とが重なる形態で、周方向に配設されている請求項4に記載の遠心式の分散装置。
【請求項6】
前記吐出口から吐出された生成流体の一部を、循環路を介して前記ケーシング内に戻す戻し口が前記前壁部に設けられ、
前記ステータの内周側を前記前壁部側の導入室と前記ロータ側の戻し室とに仕切る仕切体が、前記ロータの前方側に当該ロータと一体回転する状態で設けられると共に、前記仕切体の前壁部側に前記掻き出し片が設けられ、
前記導入室及び前記戻し室が、前記ステータの複数の透孔を介して前記翼室と連通されるように構成され、
前記導入口が前記導入室に連通し、前記戻し口が前記戻し室に連通するように構成されている請求項5に記載の遠心式の分散装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−232278(P2012−232278A)
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−104596(P2011−104596)
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月29日(2012.11.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年5月9日(2011.5.9)
【出願人】(000127237)株式会社イズミフードマシナリ (53)
【出願人】(000229047)日本スピンドル製造株式会社 (328)
【Fターム(参考)】
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