説明

遠赤外線放射セラミックス

【課題】希少金属を使用しない遠赤外線放射セラミックスを提供する。
【解決手段】アルミナ(Al2O3を45.82wt%、シリカ(SiO2)を15.2wt%、チタニア(TiO2)
を3.8wt%、酸化第2鉄(Fe2O3)
を1.2wt%、酸化マグネシウム(MgO)を0.02wt%、酸化カルシウム(CaO)を0.2wt%、酸化ナトリウム(Na20)を0.23wt%、5酸化リン(P2O5)を2.35wt%、ジルコニア(ZrO2)を20.5wt%、酸化ランタン(La2O3)を3.45wt%及び水分を7.23wt%の重量比で混合して焼成したことを特徴とする遠赤外線放射セラミックス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠赤外線放射セラミックスに関し、特に植物の育成に応用可能な遠赤外線放射セラミックスに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、遠赤外線放射セラミックスは、その遠赤外線を放射する特性利用して植物の育成や水の活性化などに利用されている。例えば、特許文献1には、アルミナ(Al2O3)、チタニア(TiO2)、ジルコニア(ZrO2)、シリカ(SiO2)等の遠赤外線放射物質のうち少なくとも一種以上を主成分とし、これにプラチナ(Pt)及びパラジウム(Pd)のコロイド液を0.5wt%以下の割合で混合して焼成した遠赤外線放射セラミックスについて記載されている。

これにより、植物の育成、鶏卵のふ化条件を改善する有用性を示すことができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特公平6−4506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の遠赤外線放射セラミックスは、希少金属であるプラチナ(Pt)及びパラジウム(Pd)を使用しており、産出国の輸出規制で入手困難になる場合もあり、また、価格も不安定でコスト高という問題があった。
【0005】
本発明は、かかる実情に鑑み、安価な材料で作製可能な遠赤外線放射セラミックスを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
【0007】
即ち、本発明の遠赤外線放射セラミックスは、
アルミナ(Al2O3)と、シリカ(SiO2)と、チタニア(TiO2)と、酸化第2鉄(Fe2O3)と、酸化マグネシウム(MgO)と、酸化カルシウム(CaO)と、酸化ナトリウム(Na20)と、5酸化リン(P2O5)と、ジルコニア(ZrO2)と、酸化ランタン(La2O3)とを45.82:15.2:3.8:1.2:0.02:0.2:0.23:2.35:20.50:3.45の重量比で混合して焼成したことを主要な特徴にしている。
これにより、高価なプラチナ(Pt)等の稀少金属を使用することなく、低コストで植物の育成促進に有効な遠赤外線放射セラミックスを提供することができる。
【0008】
また、本発明の活水器は、中空のパイプと、前記パイプに充填された前記遠赤外線放射セラミックスと、前記パイプの両端に設置された、前記遠赤外線放射セラミックスが外部に流出するのを防止するための一対のストッパと、前記パイプの両端に前記ストッパを両側から挟み込むように設置された、前記ストッパを固定するための一対の取付部材と、を備え、前記一対のストッパと、前記一対の取付部材とには、外部から前記パイプ内部に水を流入または前記パイプの内部から外部に水を流出させるための穴が形成されていることを主要な特徴にしている。
本発明にかかる遠赤外線放射セラミックスを使用しているので、植物の生育に効果を有する水を製造することができる。
【発明の効果】
【0009】
低コストで植物の育成促進に有効な遠赤外線放射セラミックスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】遠赤外線放射セラミックスを用いた活水器の概略図である。
【図2】活水器の施工例を示す概略説明図である。
【図3】活水器の施工例を示す概略説明図である。
【図4】サンプルAの赤外線放射特性を示す図である。
【図5】サンプルBの赤外線放射特性を示す図である。
【図6】サンプルCの赤外線放射特性を示す図である。
【図7】従来の遠赤外線放射セラミックスの赤外線放射特性を示す図である。
【図8】実施例、比較例の苺の根の写真である。
【図9】実施例、比較例の苺の根の写真である。
【図10】実施例、比較例の苺の根の写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。ここで、図中、同一の記号で示される部分は、同様の機能を有する同様の要素である。また、本明細書中で、数値範囲を“ 〜 ”を用いて表す場合は、“ 〜 ”で示される上限、下限の数値も数値範囲に含むものとする。
【0012】
<構成>
本発明に係る遠赤外線放射セラミックスは、アルミナ(Al2O3)と、シリカ(SiO2)と、チタニア(TiO2)と、酸化第2鉄(Fe2O3)と、酸化マグネシウム(MgO)と、酸化カルシウム(CaO)と、酸化ナトリウム(Na20)と、5酸化リン(P2O5)と、ジルコニア(ZrO2)と、酸化ランタン(La2O3)とを45.82:15.2:3.8:1.2:0.02:0.2:0.23:2.35:20.50:3.45の重量比で混合して焼成されている。
【0013】
本発明者は、プラチナ(Pt)やパラジウム(Pd)等の高価な稀少金属を使用することなく、同等以上の遠赤外線放射性能を有する遠赤外線放射セラミックスを開発するため、様々な組成の遠赤外線放射セラミックスを作製して評価した。その結果、本組成比で材料を混合し焼成することにより、良好な遠赤外線放射性能を有する遠赤外線放射セラミックスを得られることを発見した。
また、本発明の遠赤外線放射セラミックスを植物育成に使用することにより、植物の育成を著しく向上させることができることも判明した。
【0014】
<製造方法>
次に、本発明に係る遠赤外線放射セラミックスの製造方法について説明する。説明するのは、事前評価の結果、良好な遠赤外線放射特性を得ることができた遠赤外線放射セラミックスの3種類サンプルA、B、Cについての製造方法である。この3種類サンプルA、B、Cの組成を表1に示す。表1は、3種類のサンプルA、B、Cの原料の組成を示す表である。
【表1】

【0015】
製造は、サンプルA、B、Cごとに行った。まず、サンプルA、B、Cごとに、表1に示される原料を、表1に示される重量比で混合した。混合物を焼成炉に投入して、100℃〜150℃/hの昇温速度で、室温から580℃まで昇温し、30分間保持した。次に、100℃〜150℃/hの昇温速度で、更に800℃まで昇温させて30分間保持した。その後、100℃〜150℃/hの昇温速度で1100℃まで昇温させて30分間保持し、常温まで自然冷却した。
【0016】
ここで、使用目的に応じて更に他の無機鉱物と混合し、例えば、ペレット状、ボール状、粒状等の形状に成形した後に上記条件で焼成しても良い。
また、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、アクリル、ポリエスエル、FRP樹脂などといった高分子化合物にも配合することが可能であり、これらの高分子化合物に遠赤外線放射という機能を持たせ、新たな付加価値を付与することができる。
【0017】
[高分子化合物樹脂成形品との混合]
本発明の遠赤外線放射セラミックスを高分子化合物の樹脂(単に樹脂とも称する)の成形品と混合する方法について説明する。樹脂と本発明の遠赤外線放射セラミックスとを200℃〜250℃で加熱混練させ、樹脂専用の射出機を用いて直径1mm程度の線状に成形すると同時に冷却水で急冷し固化させる。
【0018】
固化した樹脂を適当な長さに裁断(例えば0.5mm〜1mmの長さ)し、それを濃縮用原料として更に射出成形用樹脂に配合し、射出成形機を用いて目的とする形状に成形する。これにより、樹脂成形によって製造される製品に本発明の遠赤外線放射セラミックスを混合させて、遠赤外線放射という新たな機能を付加し、製品自身の付加価値も高めることができる。
【0019】
<活水器の構成>
次に、本発明の遠赤外線放射セラミックスを用いた活水器の構成について図1を参照して説明する。図1は、遠赤外線放射セラミックスを用いた活水器の概略図である。
【0020】
図1に示すように活水器10は、取付部材20と、パイプ30と、ストッパ40と、セラミックボール50とを主に備えて構成される。セラミックボールは、サンプルA〜Cの遠赤外線放射セラミックスをボール状に成形し、焼成したものである。サイズ、形状としては、直径1mm、4mm、6mm、10mm、18mmの球形状のもの、ペレット状のもの等を好適に製造することができる。
【0021】
セラミックボール50は、パイプ30内に充填され、パイプ30の両端をストッパ40によって閉じられている。これにより、セラミックボール50がパイプの外に出ることを防ぐことができる。また、パイプ30の両端には、ストッパ40を両側から挟み込んで取付部材20が固定されている。これにより、パイプ30を両端から確実に固定し、ストッパ40が外れてセラミックボール50が外部に流出することを防止できる。
【0022】
ストッパ40と、取付部材20には、パイプ30内に水を流通させるための穴が形成されており、この穴と通して外部から水が流入し、流入した水はセラミックボール50に接触して反対側の穴から外部に流出する。
【0023】
図2、図3に活水器の施工例を示す。図2、図3は活水器の施工例を示す概略説明図である。図2の施工例を説明すると、図2に示すように、活水器10の片端はポンプ60に接続されている。ポンプから供給された水は、活水器10を通って、活水器10の反対端から流出し外部に放水される。ここで、図3に示すように活水器10を地中に埋設して施工することもできる。
【0024】
<評価>
(1)遠赤外線放射評価
サンプルA、B、Cと従来の遠赤外線放射セラミックスの遠赤外線の放射特性評価を行った。従来の遠赤外線放射セラミックスは、以下の原料を以下の組成で混合して焼成したものである。
アルミナ及びチタニア 25wt%
コーディエライト 16wt%
(コウジュライト:2MgO、2Al2O3、5SiO2
ムライト 17wt%
(ムライト:3MgO、2Al2O3
凝固剤 25wt%
【0025】
図4〜図6は、それぞれサンプルA、B、Cの赤外線放射特性を示す図である。図7は、従来の遠赤外線放射セラミックスの赤外線放射特性を示す図である。これらの図は、横軸が放射波長(μm)を示し、縦軸が放射率(%)を示す。
【0026】
これらの図から明らかなように、本発明の遠赤外線放射セラミックスであるサンプルA、B、Cは、人体に良くないとされる近赤外線(緑内障や白内障等の原因とされる)の波長領域である3μm以下の波長の放射が低く、それより長波長の赤外線の放射が高くなっている。
【0027】
これに対して、従来の遠赤外線放射セラミックスは、3μm以下の近赤外線の放射も高くなっている。このように、本発明の遠赤外線放射セラミックスは、人体に良くないとされる3μm以下の波長の放射を低く抑えることができる。
【0028】
(2)照彩小松菜、モロヘイヤ栽培評価
実施例として、サンプルCをポリプロピレン樹脂に混合したもの(サンプルC(PP)と称する)を作製し、それを発泡スチロール製のトレイに載せ、その上にティッシュペーパーを置いて照彩小松菜の種を蒔いたものを準備した。同様に、発泡スチロール製のトレイにサンプルC(PP)を載せ、その上にティッシュペーパーを置いてモロヘイヤの種を蒔いたものを準備した。
【0029】
比較例として、発泡スチロール製のトレイにティッシュペーパーを置いて、照彩小松菜の種を蒔いたものと、モロヘイヤの種を蒔いたものとを準備した。準備した実施例と比較例とで栽培を行い成長度合いを評価した。
評価結果を表2、表3に示す。表2は照菜小松菜の栽培評価結果を表して表であり、表3はモロヘイヤの栽培評価結果を表した図である。
【表2】

【表3】

【0030】
表2、表3ともに栽培後の経過日数ごとに伸びた芽の長さを測定した結果である。これらの表から明らかに、本発明にかかる遠赤外線放射セラミックスを栽培に用いることにより、そうで無いものと比較して植物の生育を促進していることが分かる。
【0031】
(3)稲作評価
実施例として、サンプルCをポリプロピレン樹脂に混合し、網状に形成した遠赤外線放射セラミックス含有ポリプロピレン樹脂(200mm×300mm×厚み3mm)を作製し、それを圃場に設置して稲作を行った。
【0032】
比較例としては、遠赤外線放射セラミックス含有ポリプロピレン樹脂を圃場に設置することなく稲作を行った。稲作は、コシヒカリを栽培した。評価内容として、一房あたりの稲穂の粒数と味覚測定器によりスコアを測定することにより行った。
【0033】
評価結果を表4、表5に示す。表4は実施例と比較例ごとに一房の稲穂の粒数を表した表であり、表5は実施例と比較例とで栽培された米(玄米)を味覚測定器で測定し、その結果のスコアを示した表である。
【表4】


【表5】

【0034】
表4に示すように、明らかに実施例の方が一房の稲穂の粒の数が多いことが分かる。これより、本発明の遠赤外線放射セラミックスを使用することにより、稲の生育を高めることができ、収穫量の増加が可能になる。
【0035】
また、表5に示すように、実施例は比較例よりも2点もスコアが高くなっている。農業従事者にとって味覚の向上は、1点上げるだけでも大変な努力が必要である。ところが、本発明の遠赤外線放射セラミックスを圃場に設置するだけで、大がかりな施工も不要で、従来通りの栽培を行うだけで容易に味覚の向上が可能になる。
【0036】
(4)活水器評価
図2に示される施工例の通り活水器を施工し、この活水器を通して水を使用して苺の栽培評価を行った。苺は通常通り2月に親苗を100mm×高さ100mm程度の大きさのポットで育て、9月中旬にハウスの中に植え替え作業を行った。
【0037】
2月から9月までの間、通常の水を与えた比較例と、活水器を通した水を与えた実施例とで苺の根の成長度合いを比較した。その結果を図8〜図10に示す。図8〜図10は実施例、比較例の苺の根の写真である。
【0038】
図8〜図9はいずれも左側が比較例であり、右側が実施例である。図10は左側が実施例であり、右側が比較例である。図8〜図10より分かるように、実施例の方が毛根の量が数倍多く、根張りに格段の差が生じた。
【0039】
また、最初の収穫時期は、実施例、比較例ともに11月上旬であり、収穫時期には差は無かった。しかしながら、5月までの収穫量は、比較例が反収[畑一反(10アール)あたりの収穫高]約5トンであったのに対して、実施例では反収約8トン近い収穫があった。更に、収穫された実施例の苺は、比較例の苺と比べて味覚も良く(糖度が1〜2度高い)、劣化や腐敗の程度も著しく異なって実施例の方が良かった。
以上より、活水器の使用により植物の栽培に大きな効果があることが判明した。
【符号の説明】
【0040】
10 活水器
20 取付部材
30 パイプ
40 ストッパ
50 セラミックボール
60 ポンプ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミナ(Al2O3)と、シリカ(SiO2)と、チタニア(TiO2)と、酸化第2鉄(Fe2O3)と、酸化マグネシウム(MgO)と、酸化カルシウム(CaO)と、酸化ナトリウム(Na20)と、5酸化リン(P2O5)と、ジルコニア(ZrO2)と、酸化ランタン(La2O3)とを
45.82:15.2:3.8:1.2:0.02:0.2:0.23:2.35:20.50:3.45の重量比で混合して焼成したことを特徴とする遠赤外線放射セラミックス。
【請求項2】
請求項1に記載の遠赤外線放射セラミックスを用いた活水器であって、
中空のパイプと、
前記パイプに充填された前記遠赤外線放射セラミックスと、
前記パイプの両端に設置された、前記遠赤外線放射セラミックスが外部に流出するのを防止するための一対のストッパと、
前記パイプの両端に前記ストッパを両側から挟み込むように設置された、前記ストッパを固定するための一対の取付部材と、
を備え、
前記一対のストッパと、前記一対の取付部材とには、外部から前記パイプ内部に水を流入または前記パイプの内部から外部に水を流出させるための穴が形成されている活水器。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−71853(P2013−71853A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210041(P2011−210041)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【特許番号】特許第4959039号(P4959039)
【特許公報発行日】平成24年6月20日(2012.6.20)
【出願人】(501098706)
【Fターム(参考)】