説明

遠隔操作システム

【課題】複数の加工装置に対して従来よりも効率的にオペレーションを行うこと。
【解決手段】ワークを保持する保持部36a、保持部36aに保持されたワークを加工する加工部36bと、保持部36aに保持されたワークを撮像する撮像部36cと、これらを制御する制御部31とを有する複数の加工装置3a〜3nを遠隔操作PC4で遠隔操作する遠隔操作システムであって、遠隔操作PC4の表示部42に、複数の加工装置3a〜3nを表示する選択画像と、この選択画像から選択された加工装置3を操作するための操作画像とを表示可能とし、この操作画像によって選択画像に表示される複数の加工装置3a〜3nを選択的に操作することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作システムに関し、特に、半導体ウェーハ等の被加工物に加工処理を施す複数の加工装置を遠隔操作する遠隔操作システムに関する。
【背景技術】
【0002】
IC,LSI等のデバイスが複数形成されたウェーハは、裏面が研削されて所定の厚さに形成された後、ダイシング装置等の加工装置によって個々のデバイスに分割されて携帯電話、パソコン等の電子機器に利用される。
【0003】
例えば、ダイシング装置においては、高速回転する切削ブレードが保持手段に保持された被加工物における加工位置に配置され、切削ブレードと保持手段とを相対的に移動させることで、切削ブレードが切り込んだ量のみ切削加工が施される(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
このようなダイシング装置においては、個々にオペレーションパネルを装備するものが知られている(例えば、特許文献2参照)。このオペレーションパネルは、操作者がダイシング装置への指示を入力する際、或いは、ダイシング装置に搭載される撮像手段で撮像した被加工物の情報を表示する際などに利用される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−334751号公報
【特許文献2】特開2009−117776号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、ダイシング装置などのオペレーションに被加工物の撮像情報を必要とする加工装置は工場内に複数設置されるのが一般的である。このように複数のダイシング装置が設置される環境下において、個々の装置に対してそれぞれのオペレーションパネルで操作を行うことは非効率であった。
【0007】
本発明は、このような実情に鑑みて成されたものであって、複数の加工装置に対して従来よりも効率的にオペレーションを行うことができる遠隔操作システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の遠隔操作システムは、ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークを加工する加工手段と、前記保持手段に保持されたワークを撮像する撮像手段と、前記保持手段、加工手段及び撮像手段を制御する制御手段とを有する加工装置を遠隔操作する遠隔操作システムであって、複数の前記加工装置の前記制御手段に選択的に接続できる表示部を有する端末手段を備え、前記表示部は、複数の前記加工装置を表示する選択画像と、前記選択画像に表示された複数の前記加工装置から選択された加工装置を操作するための操作画像とを表示可能であり、前記操作画像は、前記撮像手段により取得した撮像画像及び前記制御手段に指示を入力する指示入力画像を含み、前記選択画像に表示される複数の加工装置を前記操作画像によって選択的に操作できることを特徴とする。
【0009】
上記遠隔操作システムによれば、端末手段の表示部に、複数の加工装置を表示する選択画像と、選択画像上の複数の加工装置から選択された加工装置を操作するための操作画像とが表示されることから、端末手段で操作画像を介して複数の加工装置を選択的に操作することができるので、個々の加工装置のオペレーションパネルによる個別の操作入力を省略でき、複数の加工装置に対して従来よりも効率的にオペレーションを行うことが可能となる。
【0010】
本発明の遠隔操作システムにおいて、前記加工装置は、前記操作画像を表示する操作手段を有し、前記選択画像から選択された前記加工装置の前記操作手段に表示される前記操作画像に、前記端末手段から操作可能な状態であることを表示させることが好ましい。
【0011】
また、本発明の遠隔操作システムにおいて、前記選択画像には、表示された複数の前記加工装置の稼動状態が表示されることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、複数の加工装置に対して従来よりも効率的にオペレーションを行うことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施の形態に係る遠隔操作システムのネットワーク構成図である。
【図2】上記実施の形態に係る遠隔操作システムが有する遠隔操作PC及び加工装置の機能ブロック図である。
【図3】上記実施の形態に係る遠隔操作PCの表示部に表示される選択画像の一例を示す図である。
【図4】上記実施の形態に係る加工装置のオペレーションパネルに表示される操作画像の一例を示す図である。
【図5】上記実施の形態に係る加工装置のオペレーションパネルに表示される撮像画像の一例を示す図である。
【図6】上記実施の形態に係る遠隔操作システムにおいて、遠隔操作PCで加工装置の遠隔操作を行う場合の動作を説明するためのシーケンス図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。本発明の一実施の形態に係る遠隔操作システムは、被加工物(ワーク)に加工処理を施す複数の加工装置を、これらの複数の加工装置の遠隔地に配備された遠隔操作装置を構成するパーソナルコンピュータ(以下、「PC」という)で遠隔操作するものである。
【0015】
なお、本実施の形態に係る遠隔操作システムにおける被加工物(ワーク)は、特に限定されるものではないが、例えば、シリコンウェーハ(Si)やガリウムヒソ(GaAs)、シリコンカーバイド(SiC)等の半導体ウェーハや、チップ実装用としてウェーハの裏面に設けられるDAF(Die Attach Film)等の粘着部材、あるいは半導体製品のパッケージ、セラミック、ガラス、サファイア(Al)系の無機材料基板、液晶ディスプレイドライバー等の各種電子部品などが含まれる。
【0016】
また、本実施の形態に係る遠隔操作システムにおける遠隔操作対象となる加工装置は、特に限定されるものではないが、例えば、ワークに対して切削加工を施すダイシング装置、ワークに対して研磨研削加工を施す研磨研削装置、ウェーハの裏面に設けられたDAF等の粘着部材を伸長するエキスパンド装置、ワークに対してレーザ加工を施すレーザ加工装置(例えば、レーザ孔開け装置)などが含まれる。
【0017】
図1は、本発明の一実施の形態に係る遠隔操作システム1のネットワーク構成図である。図1に示すように、遠隔操作システム1は、例えば、工場2に配備された複数の加工装置3a〜3nと、工場2の遠隔地に配備された遠隔操作PC4とがネットワーク接続されて構成される。なお、遠隔操作PC4は、端末手段を構成するものであり、複数の加工装置3a〜3nは、遠隔操作PC4により遠隔操作される装置(被遠隔操作装置)を構成するものである。ここでは、遠隔操作PC4が工場2の遠隔地に配備される場合について示すが、工場2内に配備することも可能である。
【0018】
遠隔操作PC4は、例えば、イーサネット(登録商標)によって構築されたLAN(Local Area Network)5により複数の加工装置3a〜3nに接続されている。なお、遠隔操作PC4と複数の加工装置3a〜3nとを接続するネットワークについては、LAN5に限定されるものではなく、WAN(Wide Area Network)やインターネットを採用することも可能である。また、これらのネットワークの接続形態については、有線接続であるか、無線接続であるかは問わない。遠隔操作PC4は、これらのネットワークを介して複数の加工装置3a〜3nの後述する制御部31に接続可能に構成されている。
【0019】
本実施の形態に係る遠隔操作システム1においては、VNC(Virtual Network Computing)を利用し、遠隔操作PC4による加工装置3a〜3nの遠隔操作を実現している。すなわち、遠隔操作PC4は、加工装置3a〜3nの表示部を構成するオペレーションパネルに表示された画像を確認しながら、これらの加工装置3a〜3nを遠隔操作することができるものとなっている。
【0020】
図2は、本実施の形態に係る遠隔操作システム1が有する遠隔操作PC4及び加工装置3a〜3nの機能ブロック図である。なお、図2に示す遠隔操作PC4及び加工装置3a〜3nにおいては、説明の便宜上、本発明に関連する構成要素のみを示している。また、加工装置3a〜3nは、同様の構成を有することから、加工装置3aを代表してその構成について説明し、加工装置3b〜3nの構成の説明は省略する。
【0021】
図2に示すように、遠隔操作PC4は、装置全体の制御を行う制御部41を備える。制御部41は、例えば、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)等を備え、ROMに格納されたプログラムをRAMに展開してCPUに実行させることにより、各加工装置3a〜3nの遠隔操作処理などを実行する。この制御部41に表示部42、記憶部43、操作部44、通信部45及びVNC処理部46が接続され、制御部41の制御の下で動作可能に構成されている。
【0022】
表示部42は、遠隔操作PC4で用いられる各種の情報を表示する。例えば、表示部41は、遠隔操作される加工装置3a〜3nを選択するための選択画像や、遠隔操作する加工装置3a〜3nから送信される操作画像などを表示する。なお、これらの選択画像や操作画像の構成については後述する。
【0023】
記憶部43は、遠隔操作PC4で用いられる各種の情報を記憶する。例えば、記憶部43は、表示部43に選択画像を表示するための情報や、加工装置3a〜3nから送信される装置に関する情報(以下、「装置情報」という)及び操作画像を表示するための情報などを記憶する。なお、記憶部43は、制御部41のROMやRAMとして利用することも可能である。
【0024】
操作部44は、例えば、キーボードやポインティングデバイスなどで構成され、操作者からの遠隔操作PC4に対する指示を受け付ける。例えば、操作部44は、本遠隔操作システムのためのプログラム(以下、「遠隔操作プログラム」という)の起動指示や、表示部42に表示された選択画像から、遠隔操作対象となる加工装置3a〜3nの選択指示を受け付ける。
【0025】
通信部45は、LAN5を介して加工装置3a〜3nとの間の通信を制御する。例えば、通信部45は、LAN5を介して加工装置3a〜3nに対して装置情報を要求する制御信号(装置情報要求信号)を送信する一方、この装置情報要求信号に対して応答される装置情報を加工装置3a〜3nから受信する。
【0026】
VNC処理部46は、加工装置3a〜3nとの画像共有に関する構成要素である、画像データ受信部46a及び画像データ表示部46bを備える。画像データ受信部46aは、加工装置3a〜3nから送信された画像データを受信する。画像データ表示部46bは、画像データ受信部46aで受信した画像データを表示部42に表示する。
【0027】
また、VNC処理部46は、加工装置3a〜3nに対する操作入力に関する構成要素である、入力イベント取得部46c及び入力イベント送信部46dを備える。入力イベント取得部46cは、操作部44に対する操作入力により生成される入力イベント信号を取得する。入力イベント送信部46dは、入力イベント取得部46cにより取得された入力イベント信号を加工装置3a〜3nに送信する。
【0028】
一方、加工装置3aは、装置全体の制御を行う制御手段としての制御部31を備える。制御部31は、例えば、CPU、RAM及びROM等を備え、ROMに格納されたプログラムをRAMに展開してCPUに実行させることにより、加工装置3aにおける加工処理などを実行する。この制御部31にオペレーションパネル32、記憶部33、通信部34、VNC処理部35及び加工機構36が接続され、制御部31の制御の下で動作可能に構成されている。
【0029】
オペレーションパネル32は、表示部及び操作部として機能するものであり、例えば、タッチパネルで構成される。オペレーションパネル32は、加工装置3aで用いられる各種の情報を表示すると共に、操作者からの加工装置3aに対する指示を受け付ける。例えば、オペレーションパネル32は、加工装置3aを操作するための操作画像や、後述する加工機構36の撮像部36cで撮像された撮像画像などを表示する。また、オペレーションパネル32は、操作画像から後述する加工機構36への加工指示を受け付ける。
【0030】
記憶部33は、加工装置3aで用いられる各種の情報を記憶する。例えば、記憶部33は、加工装置3aにおけるステータス情報を含む装置情報や、操作画像をオペレーションパネル32に表示するための情報などを記憶する。なお、記憶部33は、制御部31のROMやRAMとして利用することも可能である。
【0031】
通信部34は、LAN5を介して遠隔操作PC4との間の通信を制御する。例えば、通信部34は、LAN5を介して遠隔操作PC4から装置情報要求信号を受信する一方、この装置情報要求信号に対して装置情報を遠隔操作PC4に送信する。
【0032】
VNC処理部35は、遠隔操作PC4との画像共有に関する構成要素である、画像データ取得部35a及び画像データ送信部35bを備える。画像データ取得部35aは、オペレーションパネル32に表示される画像データを記憶部33から取得する。画像データ送信部35bは、画像データ取得部35aで取得した画像データを遠隔操作PC4に送信する。
【0033】
また、VNC処理部35は、遠隔操作PC4からの操作入力に関する構成要素である、入力イベント受信部35c及び入力イベント実行部35dを備える。入力イベント受信部35cは、遠隔操作PC4から送信された入力イベント信号を受信する。入力イベント実行部35dは、入力イベント受信部35cで受信した入力イベント信号に対する入力イベントを加工装置3a上で実行させる。
【0034】
加工機構36は、ワークを保持する保持手段としての保持部36aと、この保持部36aに保持されたワークを加工する加工手段としての加工部36bと、保持部36aに保持されたワークを撮像する撮像手段としての撮像部36cとを備える。例えば、加工装置3aがダイシング装置で構成される場合、加工部36bは、高速回転可能に構成される切削ブレードを備え、この切削ブレードとワークを保持した保持部36aとを相対的に移動させてワークの切削加工を行う。また、撮像部36cは、保持部36aに保持されたワークの切削位置の調整工程や、切削加工結果の確認工程などでワークの一部又は全部を撮像する。
【0035】
なお、加工装置3aがダイシング装置以外の加工装置で構成される場合、主に加工部36bの構成において相違する。例えば、加工装置3aが研削研磨装置で構成される場合、加工部36bは、高速回転可能に構成される研削砥石を備え、この研削砥石とワークを保持した保持部36aとを相対的に回転させてワークの研削研磨加工を行う。
【0036】
本実施の形態に係る遠隔操作システム1において、加工装置3a〜3nにおけるVNC処理部35は、画像共有サーバとして機能し、遠隔操作PC4におけるVNC処理部46は、画像共有クライアントとして機能する。遠隔操作システム1においては、遠隔操作PC4からの画像要求に応じて、加工装置3a〜3nのVNC処理部35がオペレーションパネル32に表示される操作画像の画像データを送信することで、遠隔操作PC4の表示部42でも同一の操作画像を表示することができる。また、この操作画像を確認しながら操作者が操作部44を介して操作入力を行うことにより、遠隔操作PC4のVNC処理部46が操作入力に応じた入力イベント信号を加工装置3a〜3nに送信することで、加工装置3a〜3nで入力イベント信号に応じた処理を実行することができる。このようにして遠隔操作PC4で加工装置3a〜3nの遠隔操作が実現されるものとなっている。
【0037】
ここで、遠隔操作PC4の表示部42に表示される選択画像の構成例、並びに、加工装置3a〜3nのオペレーションパネル32に表示される操作画像の構成例について説明する。図3は、本実施の形態に係る遠隔操作PC4の表示部42に表示される選択画像の一例を示す図である。図4は、本実施の形態に係る加工装置3のオペレーションパネル32に表示される操作画像の一例を示す図である。なお、図4においては、加工装置3a〜3nがダイシング装置で構成される場合の操作画像の一例を示している。なお、以下においては、説明の便宜上、特に必要とする場合を除き、複数の加工装置3a〜3nを加工装置3と呼ぶものとする。
【0038】
遠隔操作PC4の表示部42に表示される選択画像においては、図3に示すように、複数の加工装置3の状態が一括的に表示される装置状態表示領域301が含まれている。この装置状態表示領域301には、遠隔操作システム1で遠隔操作可能な複数の加工装置3に対応する装置選択キー302が配列されている。これらの装置選択キー302は、遠隔操作PC4の操作者が遠隔操作を行う加工装置3を選択する際に利用される。すなわち、遠隔操作PC4の操作者は、図3に示す選択画像から特定の装置選択キー302を選択することにより、遠隔操作する加工装置3を選択することができるものとなっている。
【0039】
装置選択キー302は、表示態様によりそれぞれの加工装置3の状態が識別可能に構成されている。例えば、装置選択キー302は、外枠の有無及び配色により加工装置3の状態を識別可能に構成される。例えば、遠隔操作システム1に接続されている加工装置3には、外枠の有る装置選択キー302が割り当てられ、接続されていない加工装置3には、外枠の無い装置選択キー302が割り当てられる。また、待機中(非稼働中)である加工装置3には、薄灰色の装置選択キー302が割り当てられ、加工処理中(稼働中)である加工装置3には、緑色の装置選択キー302が割り当てられ、エラー状態にある加工装置3には、赤色の装置選択キー302が割り当てられる。
【0040】
遠隔操作PC4で表示される選択画像の装置状態表示領域301においては、このように外枠の有無及び配色により加工装置3の状態が表示されるので、操作者は、複数の加工装置3の状態を一括的に判断することができ、遠隔操作を行う加工装置3をスムーズに選択することができる。特に、装置状態表示領域301においては、複数の加工装置3の稼働状態が表示されることから、遠隔操作PC4の操作者において、遠隔操作を行うことができる加工装置3を効率的に選択することができる。さらに、装置状態表示領域301においては、加工装置3のエラー状態が表示されることから、該当する加工装置3を選択することで、エラー要因を調査することや、エラー要因を排除する対応を取ることができる。
【0041】
なお、ここでは、選択画像に複数の加工装置3の状態として、各加工装置3の稼働状態やエラー状態が装置選択キー302の表示態様によって一括的に表示される場合について説明している。しかしながら、選択画像に表示される複数の加工装置3の状態については、これらの限定されるものではなく適宜変更が可能である。例えば、加工装置3における加工履歴(加工実績や加工精度など)やメンテナンス履歴を、表示態様又は文字情報により表示することも可能である。このように加工履歴やメンテナンス履歴を選択画像に含める場合には、これらの情報に基づいて操作者において、所望の加工装置3(例えば、加工精度の高い加工装置3)を選択することが可能となる。
【0042】
加工装置3のオペレーションパネル32に表示される操作画像においては、図4に示すように、加工装置3に対する複数の操作入力メニューを含むトップメニュー領域401と、利用頻度が高い操作入力メニューへのショートカットメニューを含むショートカットメニュー領域402と、現在の加工装置3の状態を表示する状態表示領域403と、後述するセンサーキー404aやアラーム/クリアキー404bなどの含む操作入力領域404とが含まれている。
【0043】
トップメニュー領域401においては、加工装置3の稼働指示時に選択されるフルオートメーションキー401aやマニュアルオペレーションキー401b、ワーク固有の情報の入力/確認時に選択されるデバイスデータキー401c、切削ブレードに関する情報の入力/確認時に選択されるブレードメンテナンスキー401d、加工装置3に対する各種の設定情報の入力/確認時に選択されるオペレータメンテナンスキー401e、マシンメンテナンスキー401fやエンジニアリングメンテナンスキー401gなどの操作入力キー(以下、適宜「トップメニューキー」という)が表示されている。加工装置3の操作者は、これらのトップメニューキーを選択することで加工装置3に対する所望の操作を指示することができる。なお、これらのトップメニューキーは、加工装置3の制御部31に指示を入力する指示入力画像の一部を構成する。
【0044】
ショートカットメニュー領域402においては、切削ブレードの交換時又はメンテナンス時に選択されるブレード・セットアップキー402a、複数のワークを収納したカセットの入れ替え時に選択されるニュー・カセットキー402b、保持部36bを構成するチャックテーブル(C/T)におけるバキューム圧情報の設定/確認時に選択されるC/Tバキュームキー402c、英字や数字などの入力時に選択される入力キー402dなどの操作入力キー(以下、適宜「ショートカットメニューキー」という)が表示されている。トップメニューキーは、階層構造を有しており、所望の操作を指示するまで複数の選択動作が必要となる。これに対し、ショートカットメニューキーによれば、加工装置3の操作者は、トップメニューキーを用いる場合と比べて操作入力キーの選択動作を低減しながら加工装置3に対する所望の操作を指示することができる。なお、これらのショートカットメニューキーは、加工装置3の制御部31に指示を入力する指示入力画像の一部を構成する。
【0045】
状態表示領域403においては、現在の加工装置3の状態が、遠隔操作PC4による遠隔操作状態であるかが表示される。具体的には、図4に示すように、遠隔操作PC4により遠隔操作状態が開始された日付及び時刻情報と、遠隔操作状態を示す報知情報(Remote Ctl)とが表示される。このように操作画像の状態表示領域403においては、加工装置3が遠隔操作状態であるかが表示されるので、加工装置3の操作者は、加工装置3を操作可能であるかを即時に判断することができる。
【0046】
なお、この状態表示領域403は、遠隔操作PC4から遠隔操作可能な状態を表示する領域として機能する。すなわち、状態表示領域403に遠隔操作状態を示す報知情報(Remote Ctl)が表示されていない場合には、加工装置3が遠隔操作PC4により遠隔操作可能な状態であることを示す。このように状態表示領域403に加工装置3が遠隔操作可能な状態であるかが示されることから、操作者においては、加工装置3が遠隔操作PC4により遠隔操作される可能性があることを認識することができる。
【0047】
操作入力領域404においては、チャックテーブルにおけるバキューム圧情報などを検知するセンサーの出力値の確認時に選択されるセンサーキー404aや、緊急事態の発生又は回避に伴って警報の出力時又は停止時に選択されるアラーム/クリアキー404bなどの操作入力キーが表示される。加工装置3の操作者は、操作入力領域404に表示された、これらの操作入力キーを選択することで、緊急時等に必要となる処理を迅速に加工装置3に指示することができる。
【0048】
このような構成を有する操作画像において、トップメニューキー又はショートカットメニューキーを介して特定の操作入力キーが選択されると、加工機構36における撮像部36cに対して、保持部36aに保持されたワークの一部の撮像が指示され、その撮像画像が操作画像の一部又は全部に表示される。
【0049】
例えば、操作画像上からティーチモードを指示する操作入力キーが選択された場合に撮像部36cに撮像指示が与えられる。ここで、ティーチモードとは、加工装置3に対して、アラインメント処理を行うのに必要な基準となるアラインメントパターン(画像)及び切断予定ライン(ストリート)の情報を登録するモードである(図5参照)。ティーチモードにより、加工装置3にターゲット(目印)Tの形状と、ターゲットTから切断予定ラインまでの距離とを記憶させることが可能となる。なお、このティーチモードにおける具体的な作業は、撮像部36cで撮像された画面を操作者が確認しながら手動で行われる。アライメント処理とは、加工装置3において自動で加工処理を開始するさいに、ティーチモードで記憶されたターゲットTの形状及びターゲットTから切断予定ラインまでの距離によって自動的にワーク上から切断ラインを検出する処理である。
【0050】
図5は、加工装置3のオペレーションパネル32に表示される撮像画像の一例を示す図である。図5においては、操作画像上からティーチモードを指示する操作入力キーが選択された場合の撮像画像の一例を示している。図5に示す撮像画像においては、保持部36aに保持されたワークの表面を拡大した撮像画像が表示される。上述したように、ティーチモードにおいては、図5に示す撮像画像から操作者による手動作業によりターゲットTの形状と、ターゲットTから切断予定ラインL1、L2までの距離D1、D2とが加工装置3に登録される。操作画像には、このように操作画像上からの操作入力に応じて図5に示すような撮像画像が表示される。
【0051】
遠隔操作PC4により加工装置3の遠隔操作が行われた場合、このような操作画像(撮像画像が一部又は全部に表示された操作画像を含む)は、遠隔操作PC4の表示部42にも表示される。このように遠隔操作PC4の表示部42に図4に示す操作画像又は図5に示す撮像画像が表示されることから、遠隔操作PC4の操作者は、遠隔操作対象となる加工装置3のオペレーションパネル302に表示される操作画像を確認するのと同様の要領で、この加工装置3の遠隔操作を行うことができるものとなっている。
【0052】
以下、本実施の形態に係る遠隔操作システム1において、遠隔操作PC4で加工装置3の遠隔操作を行う場合の動作について説明する。図6は、本実施の形態に係る遠隔操作システム1において、遠隔操作PC4で加工装置3の遠隔操作を行う場合の動作を説明するためのシーケンス図である。なお、図6においては、説明の便宜上、遠隔操作が行われる単一の加工装置3のみを示している。
【0053】
図6に示すように、遠隔操作PC4において、操作者により操作部44を介して遠隔操作プログラムの起動が指示されると、遠隔操作プログラムが起動され、表示部42に選択画像が表示される(ステップ(以下、「ST」という)601)。なお、ここでは、加工装置3の現在の状態が反映されていない選択画像が表示される。この選択画像が表示されると、遠隔操作PC4から複数の加工装置3に対して装置情報を要求する制御信号(以下、「装置情報要求信号」という)が送信される(ST602)。
【0054】
遠隔操作PC4から装置情報要求信号を受信すると、各加工装置3では記憶部33に保持された装置情報(例えば、加工処理中やエラー状態であることを示すステータス情報)が取得される。そして、取得された装置情報が遠隔操作PC4に送信される(ST603)。なお、加工装置3から遠隔操作PC4に送信される装置情報には、加工履歴やメンテナンス履歴等の情報を含めることも可能である。
【0055】
各加工装置3から装置情報を受信すると、図3に示すように、各加工装置3の状態が反映された選択画像が表示部42に表示される。このように選択画像が表示された状態において、操作者から操作部44を介して遠隔操作を行う特定の加工装置3の選択が行われると(すなわち、装置選択キー302が選択されると)、遠隔操作PC4から特定の加工装置3に対して操作画像を要求する制御信号(以下、「操作画像要求信号」という)が送信される(ST604)。
【0056】
遠隔操作PC4から操作画像要求信号を受信すると、VNC処理部35の画像データ取得部35aにより操作画像の画像データ(以下、適宜「操作画像データ」という)が記憶部33から取得され(ST605)、取得された操作画像データが画像データ送信部35bから遠隔操作PC4に送信される(ST606)。この場合、例えば、図4に示すような操作画像が遠隔操作PC4に送信される。
【0057】
加工装置3から送信された操作画像データは、VNC処理部46の画像データ受信部46aにより受信され(ST607)、画像データ表示部46bにより表示部42に表示される(ST608)。これにより、遠隔操作PC4の表示部42に、遠隔操作対象となる加工装置3のオペレーションパネル32に表示された操作画像と同一の操作画像が表示されることとなる。なお、加工装置3のオペレーションパネル32に表示された操作画像に撮像画像が含まれる場合には、遠隔操作PC4の表示部42にも同様に、撮像画像を含む操作画像が表示される。
【0058】
操作画像が表示されると、遠隔操作PC4においては、操作者からの操作部44を介した操作入力が行われるまで待機する。そして、操作者から操作入力が行われると、VNC処理部46の入力イベント取得部46cにより、その内容が操作画像上の座標点として取得される(ST609)。そして、入力イベント送信部46dにより、その内容が、操作内容を示す制御信号(以下、「操作内容信号」という)とされて加工装置3に送信される(ST610)。
【0059】
遠隔操作PC4から送信された操作内容信号は、VNC処理部35の入力イベント受信部35cにより受信される(ST611)。そして、入力イベント受信部35cにより受信された操作内容信号に対応する処理が入力イベント実行部35dにより実行される(ST612)。このようにして遠隔操作PC4からの操作入力に応じて加工装置3の遠隔操作が行われる。
【0060】
このように本実施の形態に係る遠隔操作システム1においては、遠隔操作PC4の表示部42に、複数の加工装置3を表示する選択画像と、この選択画像から選択された加工装置3を操作するための操作画像とを表示可能とし、操作画像によって複数の加工装置3を選択的に操作するようにしたことから、個々の加工装置3のオペレーションパネル32による個別の操作入力を省略でき、複数の加工装置3に対して従来よりも効率的にオペレーションを行うことが可能となる。この結果、複数の加工装置3を操作する作業員を削減することができ、ワークの加工処理に要するコストを低減することが可能となる。
【0061】
特に、本実施の形態に係る遠隔操作システム1においては、遠隔操作PC4の表示部42に表示される操作画像に、加工装置3の撮像部36cで撮像された撮像画像を表示するようにしたことから、遠隔操作PC4の操作者において、撮像画像を確認しながら加工装置3を操作することができるので、遠隔操作PC4を利用しながらも、加工装置3のオペレーションパネル32を操作しているのと同様の感覚で加工装置3を操作することが可能となる。
【0062】
また、本実施の形態に係る遠隔操作システム1においては、遠隔操作PC4の表示部42に表示される操作画像が、加工装置3のオペレーションパネル32に表示される操作画像と同一であることから、加工装置3の操作者に新たな操作の習得を要求することがない。このため、加工装置3の操作実績があれば、遠隔操作PC4から容易に加工装置3を操作することが可能である。
【0063】
なお、本発明は上記実施の形態に限定されず、種々変更して実施することが可能である。また、本発明は、その目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更して実施することが可能である。さらに、上記実施の形態においては、本発明を遠隔操作システムに具現化して説明しているが、遠隔操作方法としても成立し、コンピュータに上記実施の形態に係る動作の全部又は一部を実行させるためのプログラム(遠隔操作プログラム)としても成立するものである。
【0064】
また、上記実施の形態においては、選択画像の装置状態表示領域301に、複数の加工装置3に対応する装置選択キー302が配列される場合について説明している。遠隔操作PC4による遠隔操作の効率を向上する観点から、複数種類の加工装置3が遠隔操作対象となる場合に装置選択キー302の配列を変更することや、各加工装置3の種類を識別可能に表示することは実施の形態として好ましい。例えば、同一の種類の加工装置3を共通する領域に配列することや、加工装置3の種類に応じて配色を変更することが考えられる。
【産業上の利用可能性】
【0065】
以上説明したように、本発明は、遠隔操作PC4の表示部42に表示される操作画像を介して複数の加工装置3を選択的に操作することで、複数の加工装置3に対して従来よりも効率的にオペレーションを行うことができるという効果を有し、特に、複数の加工装置が設置される工場に適用される遠隔操作システムに有用である。
【符号の説明】
【0066】
1 遠隔操作システム
2 工場
3、3a〜3n 加工装置
31 制御部
32 オペレーションパネル
33 記憶部
34 通信部
35 VNC処理部
35a 画像データ取得部
35b 画像データ送信部
35c 入力イベント受信部
35d 入力イベント実行部
4 遠隔操作PC
41 制御部
42 表示部
43 記憶部
44 操作部
45 通信部
46 VNC処理部
46a 画像データ受信部
46b 画像データ表示部
46c 入力イベント取得部
46d 入力イベント送信部
301 装置状態表示領域
302 装置選択キー
401 トップメニュー領域
402 ショートカットメニュー領域
403 状態表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワークを保持する保持手段と、前記保持手段に保持されたワークを加工する加工手段と、前記保持手段に保持されたワークを撮像する撮像手段と、前記保持手段、加工手段及び撮像手段を制御する制御手段とを有する加工装置を遠隔操作する遠隔操作システムであって、
複数の前記加工装置の前記制御手段に選択的に接続できる表示部を有する端末手段を備え、前記表示部は、複数の前記加工装置を表示する選択画像と、前記選択画像に表示された複数の前記加工装置から選択された加工装置を操作するための操作画像とを表示可能であり、前記操作画像は、前記撮像手段により取得した撮像画像及び前記制御手段に指示を入力する指示入力画像を含み、前記選択画像に表示される複数の加工装置を前記操作画像によって選択的に操作できることを特徴とする遠隔操作システム。
【請求項2】
前記加工装置は、前記操作画像を表示する操作手段を有し、前記選択画像から選択された前記加工装置の前記操作手段に表示される前記操作画像に、前記端末手段から操作可能な状態であることを表示させることを特徴とする請求項1記載の遠隔操作システム。
【請求項3】
前記選択画像には、表示された複数の前記加工装置の稼動状態が表示されることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の遠隔操作システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−43041(P2012−43041A)
【公開日】平成24年3月1日(2012.3.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−181401(P2010−181401)
【出願日】平成22年8月13日(2010.8.13)
【出願人】(000134051)株式会社ディスコ (2,397)
【Fターム(参考)】