説明

遮光用織編物および繊維製品

【課題】外観を損なうことなく遮光性に優れた遮光用織編物および繊維製品を提供する。
【解決手段】表層、中間層、および裏層の三層構造を有する織編物であって、黒原着ポリエステル系繊維Aが前記中間層に配され、黒原着ポリエステル系繊維以外の繊維Bが前記表層および裏層に配されてなることを特徴とする遮光用織編物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、外観を損なうことなく遮光性に優れた遮光用織編物および繊維製品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、黒原着ポリエステル系繊維を用いて遮光用織編物を構成することは、例えば特許文献1などにより提案されている。
しかしながら、黒原着ポリエステル系繊維を用いて織編物を構成すると、織編物の表面または裏面に黒色の繊維が露出するため外観が損われるという問題があった。
なお、三層構造を有する織編物は従来より知られている(例えば特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2007−92189号公報
【特許文献2】特開2006−225790号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、上記の背景に鑑みなされたものであり、その目的は、外観を損なうことなく遮光性に優れた遮光用織編物および繊維製品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、三層構造を有する織編物の中間層に黒原着ポリエステル系繊維を配することにより、所望の、外観を損なうことなく遮光性に優れた遮光用織編物および繊維製品が得られることを見出し、さらに鋭意検討を重ねることにより本発明に想到した。
【0006】
かくして、本発明によれば「表層、中間層、および裏層の三層構造を有する織編物であって、黒原着ポリエステル系繊維Aが前記中間層に配され、黒原着ポリエステル系繊維以外の繊維Bが前記表層および裏層に配されてなることを特徴とする遮光用織編物。」が提供される。
【0007】
その際、織編物の表面および裏面において、下記式により求めた、織編物表面積に対する前記黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度が10%以下であることが好ましい。
黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度=(SA/(SA+SB))×100
ただし、SAは表面(裏面)に露出した黒原着ポリエステル系繊維Aの総面積(mm)であり、SBは表面(裏面)に露出した繊維Bの総面積(mm)である。
【0008】
また、前記黒原着ポリエステル系繊維Aが、ポリエステル系ポリマー中にカーボンブラックが練りこまれた黒原着ポリエステル系ポリマーからなる繊維であることが好ましい。一方、前記繊維Bがポリエステル系繊維であることが好ましい。また、前記黒原着ポリエステル系繊維Aが、織編物の全重量に対し20〜80重量%含まれることが好ましい。
【0009】
また、本発明によれば、前記の遮光用織編物を用いてなる、カーテン、衣服、椅子被覆材、カーシート、および傘地からなる群より選択される繊維製品が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、外観を損なうことなく遮光性に優れた遮光用織編物および繊維製品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
まず、本発明の織編物は、表層、中間層、および裏層の三層構造を有する。ここで、織編物は、各層を別々に織編成した後に貼り合せまたは縫製により積層されたものでもよいが、軽量性という点で1枚物の織編物であることが好ましい。特に傘地として用いる場合は、軽量性が要求されるので1枚物の織編物であることが好ましい。なお、表層とは最も外気側に位置する層であり、裏層とは最も人体側に位置する層である。
【0012】
本発明の織編物において、黒原着ポリエステル系繊維Aが前記中間層に配され、黒原着ポリエステル系繊維以外の繊維Bが前記表層および裏層に配されている。
【0013】
前記黒原着ポリエステル系繊維Aを形成するポリエステルとしては、ポリエステル系ポリマーであれば特に限定されず、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、第3成分を共重合させたポリエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルや、ポリ乳酸、ステレオコンプレックスポリ乳酸でもよい。該ポリマー中には、黒色の着色剤が含有されており、かかる着色剤としては、カーボンブラックが特に好ましい。その際、着色剤の含有量としては、ポリマー重量対比0.5〜5.0重量%(好ましくは1.0〜3.0重量%)の範囲内であることが好ましい。さらには、本発明の目的を損なわない範囲内で必要に応じて、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0014】
前記黒原着ポリエステル系繊維Aの繊維形態は特に限定されず、長繊維(マルチフィラメント糸条)でもよいし、短繊維でもよい。さらには、仮撚捲縮加工や空気加工が施されていてもよい。
【0015】
前記黒原着ポリエステル系繊維Aの繊度は特に限定されないが、布帛強度や風合いの点や、総繊度で33〜500dtex、単糸繊度で0.3〜6dtex、フィラメント数で20〜200本の範囲が適当である。また、単糸繊維の横断面形状も特に限定されるものではなく、通常の丸型だけでなく、扁平、三角、Y型、T型、U型、特開2007−92189号公報に開示されたくびれ付扁平などの異型であってもよい。
【0016】
一方、繊維Bは、前記黒原着ポリエステル系繊維A以外の繊維であれば制限はなく、例えば、ポリエステル系ポリマーからなるポリエステル繊維、ウレタン繊維、ナイロン6、ナイロン66等のポリアミドからなるポリアミド繊維、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンからなるポリオレフィン繊維、アクリル繊維、パラ型もしくはメタ型アラミドからなるアラミド繊維、およびそれらの変性合成繊維、さらには、天然繊維、再生繊維、半合成繊維など衣料に適した繊維であれば自由に選択できる。なかでもポリエステル系繊維が好ましく、かかるポリエステル系繊維を形成するポリマーとしては、ポリエチレンテレフタレートやポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、第3成分を共重合させたポリエステル、ポリエーテルエステルなどが好ましく例示される。かかるポリエステルとしては、マテリアルリサイクルまたはケミカルリサイクルされたポリエステルであってもよい。さらには、特開2004−270097号公報や特開2004−211268号公報に記載されているような、特定のリン化合物およびチタン化合物を含む触媒を用いて得られたポリエステルでもよい。該ポリマー中には、着色剤さえ含有していなければ、微細孔形成剤、カチオン染料可染剤、熱安定剤、蛍光増白剤、艶消し剤、吸湿剤、無機微粒子が1種または2種以上含まれていてもよい。
【0017】
繊維Bの繊維は特に限定されず、長繊維(マルチフィラメント糸条)でもよいし、短繊維でもよい。さらには、仮撚捲縮加工や空気加工が施されていてもよい。
【0018】
前記繊維Bの繊度は特に限定されないが、布帛強度や風合いの点や、総繊度で33〜500dtex、単糸繊度で0.3〜6dtex、フィラメント数で20〜200本の範囲が適当である。また、単糸繊維の横断面形状も特に限定されるものではなく、通常の丸型だけでなく、扁平、三角、Y型、T型、U型、特開2007−92189号公報に開示されたくびれ付扁平などの異型であってもよい。
【0019】
本発明の織編物は、例えば以下の製造方法1または製造方法2により製造することができる。まず、製造方法1は、中間層用繊維として黒原着ポリエステル系繊維Aを用い、表層用繊維および裏層用繊維として繊維Bを用いて、図1に織組織図が示されたダブルサテン組織に従い製織したダブルサテン組織織物、完全三重組織織物、表裏面の結接糸条として黒原着ポリエステル系繊維Aが配された三層構造編物などを織編成する方法である。
【0020】
また、製造方法2は、黒原着ポリエステル系繊維Aが芯部に位置し、一方繊維Bが鞘部に位置する芯鞘型複合糸を用いて、通常の織編組織(平織物などの単層組織でよい。)で製編織した織編物があげられる。
【0021】
その際、芯鞘型複合糸としては、黒原着ポリエステル系繊維Aが芯部に位置し、繊維Bが鞘部に位置する、インターレース加工糸やタスラン加工糸などの空気加工糸、複合仮撚加工糸、カバリング加工糸、合撚糸、意匠撚糸などが例示される。
【0022】
かくして得られた織編物において、前記黒原着ポリエステル系繊維Aが、織編物の全重量に対し20〜80重量%含まれることが好ましい。黒原着ポリエステル系繊維Aの含有量が20重量%よりも小さいと十分な遮光性が得られないおそれがある。逆に、黒原着ポリエステル系繊維Aの含有量が80重量%よりも大きいと、黒原着ポリエステル系繊維Aが織編物の表面または裏面に沢山露出して外観が損われるおそれがある。
【0023】
また、本発明の織編物の表面および裏面において、下記式により求めた、織編物表面積に対する前記黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度が10%以下であると、外観が損われず好ましい。
黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度=(SA/(SA+SB))×100
ただし、SAは表面(裏面)に露出した黒原着ポリエステル系繊維Aの総面積(mm)であり、SBは表面(裏面)に露出した繊維Bの総面積(mm)である。
【0024】
また、本発明の織編物が織物組織を有する場合、優れた遮光性を得る上で下記式で定義するカバーファクター(CF)が3000以上(好ましくは3500〜4000)であることが好ましい。また、遮光性としては、JIS−L1055−A法により測定した遮光率で99.99%以上であることが好ましい。
CF=(DWp/1.1)1/2×MWp+(DWf/1.1)1/2×MWf
ただし、DWpは経糸総繊度(dtex)、MWpは経糸織密度(本/2.54cm)、DWfは緯糸総繊度(dtex)、MWfは緯糸織密度(本/2.54cm)である。
【0025】
なお、本発明の織編物には、常法の染色加工、アルカリ減量加工が施されてもよい。さらには、常法の吸水加工、撥水加工、起毛加工、紫外線遮蔽あるいは制電剤、抗菌剤、消臭剤、防虫剤、蓄光剤、再帰反射剤、マイナスイオン発生剤等の機能を付与する各種加工を付加適用してもよい。
【0026】
次に、本発明の繊維製品は、前記の織編物を用いて縫製された、カーテン、衣服、椅子被覆材、カーシート、傘地などの繊維製品である。かかる繊維製品は、前記の織編物を含んでいるので外観を損なうことなく遮光性に優れる。特に、傘地が好適であり、優れた遮光性を呈しながら、任意の色に着色可能である。
【実施例】
【0027】
以下、実施例をあげて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらによって何ら限定されるものではない。なお、実施例中の各物性は下記の方法により測定したものである。
(1)糸条Aの露出度(%)
織編物から織編物と経緯が同じ方向に10cm×10cmの試料を切り取り、その表面および裏面を写真撮影し、下記式により繊維Aの露出度を算出した。なお、n数は5で平均値を算出した。
黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度=(SA/(SA+SB))×100
ただし、SAは表面(裏面)に露出した黒原着ポリエステル系繊維Aの総面積(mm)であり、SBは表面(裏面)に露出した繊維Bの総面積(mm)である。
(2)外観
試験者3人が目視判定により、3級:外観が優れている、2級:普通、1級:外観が劣る、の3段階に評価した。
(3)遮光率
JIS−L1055−A法により遮光率(%)を測定した。
【0028】
[実施例1]
まず、カーボンブラックを1.5重量%含むポリエチレンテレフタレートからなる、黒原着ポリエステル仮撚捲縮加工糸84dtex/30fil(帝人ファイバー(株)製、黒原着ポリエステル系繊維A)とT/C混45/−番手糸(日清紡(株)製、繊維B)とを緯糸用として用意した。
一方、通常のポリエチレンテレフタレート(着色剤を含有しない。)からなる糸条44dtex/36fil(帝人ファイバー(株)製、繊維B)に撚糸300t/mを施し互応化学製の糊剤を付与したものを経糸用として用意した。
【0029】
次いで、経糸密度124本/cm、緯密度74本/cmで、図1に示す織組織に従い三層構造の織物を製織した後、該織物に常法により染色加工を施すことにより、黒原着ポリエステル系繊維Aが前記中間層に配され、黒原着ポリエステル系繊維以外の繊維Bが表層および裏層に配された織物(遮光用織物)を得た。
得られた織物において、黒原着ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(黒原着ポリエステル系繊維A)が32重量%含まれていた。また、表面において、黒原着ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の露出度が3%であり、裏面において黒原着ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の露出度が4%であり、裏表面とも外観が損なわれることがなかった。また、得られた織物の遮光率を測定したところ99.99%と良好であった。織物のカバーファクターは3600であった。
次いで、前記織物を用いて傘地を得たところ、遮光性に優れるだけでなく自在な色に着色可能であった。
【0030】
[比較例1]
まず、カーボンブラックを1.5重量%含むポリエチレンテレフタレートからなる、黒原着ポリエステル仮撚捲縮加工糸84dtex/30fil(帝人ファイバー(株)製、黒原着ポリエステル系繊維A)とT/C混45/−番手糸(日清紡(株)製、繊維B)とを緯糸用として用意した。
一方、通常のポリエチレンテレフタレート(着色剤を含有しない。)からなる糸条44dtex/36fil(帝人ファイバー(株)製、繊維B)に撚糸300t/mを施し互応化学製の糊剤を付与したものを経糸用として用意した。
【0031】
次いで、経糸密度124本/cm、緯密度74本/cmで、通常のサテン織組織に従い織物を製織した後、該織物に常法により染色加工を施すことにより、織物(遮光用織物)を得た。
得られた織物において、黒原着ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸(黒原着ポリエステル系繊維A)が42重量%含まれていた。また、表面において、黒原着ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の露出度が3%であり、裏面において黒原着ポリエチレンテレフタレート仮撚捲縮加工糸の露出度が90%であり、裏の外観が損なわれていた。また、得られた織物の遮光率を測定したところ99.97%と良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明によれば、外観を損なうことなく遮光性に優れた遮光用織編物および繊維製品が提供され、その工業的価値は極めて大である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明の遮光用織編物において、採用することのできる織物組織図の1例である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表層、中間層、および裏層の三層構造を有する織編物であって、黒原着ポリエステル系繊維Aが前記中間層に配され、黒原着ポリエステル系繊維以外の繊維Bが前記表層および裏層に配されてなることを特徴とする遮光用織編物。
【請求項2】
織編物の表面および裏面において、下記式により求めた、織編物表面積に対する前記黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度が10%以下である、請求項1に記載の遮光用織編物。
黒原着ポリエステル系繊維Aの露出度=(SA/(SA+SB))×100
ただし、SAは表面(裏面)に露出した黒原着ポリエステル系繊維Aの総面積(mm)であり、SBは表面(裏面)に露出した繊維Bの総面積(mm)である。
【請求項3】
前記黒原着ポリエステル系繊維Aが、ポリエステル系ポリマー中にカーボンブラックが練りこまれた黒原着ポリエステル系ポリマーからなる繊維である、請求項1または請求項2に記載の遮光用織編物。
【請求項4】
前記繊維Bがポリエステル系繊維である、請求項1〜3のいずれかに記載の遮光用織編物。
【請求項5】
前記黒原着ポリエステル系繊維Aが、織編物の全重量に対し20〜80重量%含まれる、請求項1〜4のいずれかに記載の遮光用織編物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の遮光用織編物を用いてなる、カーテン、衣服、椅子被覆材、カーシート、および傘地からなる群より選択される繊維製品。

【図1】
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