説明

遮光織布

【課題】 屋外が透視できて、しかも従来ブラインドのような遮光性能を有するカーテン用の柔軟な織布を提供することにある。
【解決手段】 複数本のタテ糸を織布の厚み方向に配列して帯状の遮光フラップを形成すると共に、織布の織り方向に所定の間隔を設けて無数の遮光フラップを積層して配置し、これらのタテ糸に透視ができるように隙間を設けてヨコ糸を織り込ませて連続した織布としたもので、遮光フラップが従来ブラインドにおけるスラットと同様の作用をして直射光を遮光したり、覗き見を阻止するもので、遮光性能の高いカーテン用の遮光織布が可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガラス窓の内側等に吊り下げて用いる日除けや目隠しを目的とするカーテン用の遮光織布に関するものである。
【背景技術】
【0002】
太陽直射光から日除けしたり、屋外からの覗き見を阻止するために、細長い帯状のスラットを所定の間隔を保って上下に吊り下げる方法のブラインドや、レースと称される比較的に目の粗い薄手のカーテンで直射光を和らげる方法が広く実用されている。しかし、スラットを組み合わせた従来ブラインドは、機構的な雰囲気が強いためにビル窓など事務的な部屋の窓には適していても、和室など居住部屋の窓には不向きな傾向があった。一方、カーテンでは屋外を透視できるように織り目を粗くすると、目隠しや日除けの性能が低下する不都合があり、厚手のカーテンや遮光専用のカーテンと組み合わせて使用するのが一般的であった。目隠しや日除けの機能を有し、かつ透視できるカーテン用の織物として次のような方法が提案されている。
【特許文献1】特開2001−295154
【特許文献2】特開平09−000425 しかし、これらの方法はタテ糸やヨコ糸を多重に重ねる方法であるため、全体としての織布は平面的であり、織り方も複雑で透視度を確保することが難しいのではないかと考えられる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は上記の事由に鑑みて、ブラインドのような遮光性能を有し、しかもカーテンのように柔軟に折りたたむことのできる遮光を目的とする織布を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の遮光織布はタテ糸とヨコ糸から形成される織布に、ブラインドのスラットに相当する無数の遮光フラップを一体に織り込むことで前記課題を解決するものである。
【発明の効果】
【0005】
従来ブラインドと同様に広い範囲での遮光が可能である上に、全体が一体の織物として形成できるので、従来カーテンと変わらない柔軟さを確保でき、柔らかな室内雰囲気を演出することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明の遮光織布は、複数本のタテ糸を織布の厚み方向に配列して帯状の遮光フラップを形成すると共に、織布の織り方向に所定の間隔を設けて無数の遮光フラップを積層して配置し、これらのタテ糸に透視ができるように所定の間隔を設けてヨコ糸を織り込ませて連続した織布としたもので、この遮光織布を吊り紐を介して窓の内側などに吊り下げてカーテンとして使用するものである。
【実施例】
【0007】
図1は本発明の遮光織布1の断面図である。2a、2b、2c、2dは織布のタテ糸で、織布の厚み方向に複数本が1列に配列されて遮光フラップ3を形成している。さらに、織布の織り方向に所定の間隔pを確保して無数の遮光フラップ3を積層して配置した構成にある。4aはこれらのタテ糸を連結するために織り込まれるヨコ糸で、遮光フラップ3のタテ糸を縫うようにして最端のタテ糸2dまたは2aから、上下に隣接する遮光フラップ3の最端のタテ糸2dまたは2aに渡るように連続して織り込まれている。
【0008】
4bはヨコ糸4aに対して所定の間隔sで配置されたヨコ糸で、織布の耳5で折り返してヨコ糸4aとは逆の方向にタテ糸を縫うように織り込まれるもので、ヨコ糸4aとヨコ糸4bは、図2の上方端から下方に向かって所定の布幅まで交互に繰り返して織り込まれて織布1を形成している。なお、遮光フラップの織りが崩れて透視のための隙間p、sが減少しないように、隣接する遮光フラップをつなぐ部分に緩み止めのために別のヨコ糸を織り込むことが望ましい。例えば、隣接する遮光フラップの両端に位置するタテ糸2aあるいは2dをだけを平織にする方法などが考えられる。
【0009】
以上の如く本発明の遮光織布1はタテ糸とヨコ糸からなる1枚の織布で構成されるが、従来カーテンと構成を対比すると、本発明の遮光織布は複数のタテ糸が2a〜2dのように並んで遮光フラップ3を形成しているのに対して、従来カーテンではタテ糸が2aだけの状態と等しいから、厚み方向の遮光フラップがない平らな織布と言える。図3は、遮光フラップ3を図1の矢印uの方向に見た平面図で、タテ糸2a、2b、2c、2dの間にはヨコ糸4a、4bを通すための隙間gがある。
【0010】
図4は遮光織布をカーテンに使用した場合の遮光作用を説明するもので、機能に関係するタテ糸だけを示している。吊り下げたカーテンの遮光フラップ3が図のように水平に保たれた状態では、遮光フラップ3と遮光フラップの隙間p1から水平方向に矢印α1の方向に織布を透過して屋内外が透視できる。透視できる割合は、p1÷pでタテ糸の太さ(p−p1)に対して遮光フラップの間隔pが広いほど高くなる。
【0011】
また、上方からの太陽直射光は矢印α2のように、遮光フラップ3と遮光フラップの隙間p2の分しか射し込まないことになり、より高い角度になるほど直射光は遮断される。一方、従来レースのカーテンでは遮光フラップ3のタテ糸が最左端の2aだけの状態と同じであるから、高度が同じ方角α2の直射光でもp3の幅で屋内側に射し込むことになる。つまり、遮光織布を使ったカーテンでは方角α2の直射光は、p2÷pの割合で射し込むのに対して、従来カーテンでは、p3÷pの割合で射し込むことになり遮光の割合が低い。また、遮光織布では遮光フラップのタテ糸の本数が多いほど遮光の割合を高められることになる。なお、遮光フラップ3のタテ糸相互の隙間gから矢印α3のように光線が漏れる可能性があるが、漏れても複数段の遮光フラップに遮られることになるので、屋内側まで透過する光線は少なく実用的な支障はない。
【0012】
遮光織布は屋内外が透視できて、しかも日除けや覗き見を阻止することを目的とする織布であるから、広い角度で遮光できるだけでなく透視度が高いことも重要である。透視度を織布の表面積に対する隙間面積の割合とすると、透視度は図2における(p1×s1)÷(p×s)×100(%)となる。仮にタテ糸とヨコ糸の太さが同じで、隙間p1、s1が糸の太さと同じ場合の透視度は、(1×1)÷(2×2)×100=25%となる。しかし、水平方向にも25%の日除けができる程であるから遮光フラップを設ける必要がない上、この程度に透視できても視認性が低く、自然光の採光も十分にできないから実用性が低い。視覚の特性も考慮すると実用的な透視度は50%以上が必要であり、そのためには隙間p1、s1は少なくともタテ糸2本分以上が必要となる。
【0013】
直射光の投影面積に対してカーテン糸が占める投影面積の分だけしか直射光を遮ることができないから、従来カーテンでは直射光の射し込む割合が極めて高い。また、同様の理由で屋外の広い角度から覗き見されることにもなる。このため、カーテンに深いひだを設けて遮光性を高める方法が実用されているが、同時に屋内外に透視できる性能も低下してしまう不都合がある。遮光織布では、上述のように十分に遮光できるので遮光のために別にひだを設ける必要がなく、すっきりとした雰囲気で窓周りを整えることができる。
【0014】
遮光織布をカーテンとして吊り紐(図示せず)で吊り下げる場合に、織布の裏あるいは表側だけを吊るすようにすると、図4の破線eのように遮光フラップ3が自重で垂れ下がり傾斜する。このため直射光がより遮られるようになり、また、破線eの方角により透視しやすい状態となる。遮光フラップのタテ糸が多いほどこの傾向が強くなる。このように、吊り加減を調節することで遮光フラップの傾きが変わり遮光や透視の範囲を調節することもできるものである。
【0015】
以上のごとく本発明の遮光織布は、積層された遮光フラップで構成されており、遮光フラップと遮光フラップの隙間から屋内外を透視したり自然光の採光ができるが、フラップとフラップが重なる方角にはタテ糸で光線が遮られるから、直射光の日除けや覗き見を阻止することができる。また、遮光フラップの傾きを加減することで透視範囲や遮光範囲を調節することができる。従来ブラインドと同様に広い範囲での遮光が可能である上に、全体が一体の織物として形成できるので、従来カーテンと変わらない柔軟さを確保でき、柔らかな室内雰囲気を演出することができるなどの特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】遮光織布の断面図である。
【図2】遮光織布の平面図である。
【図3】矢印u方向に見た遮光フラップの平面図である。
【図4】遮光作用の説明図である。
【符号の説明】
【0017】
1 遮光織布
2a タテ糸
2b タテ糸
2c タテ糸
2d タテ糸
3 遮光フラップ
4a ヨコ糸
4b ヨコ糸
5 織布の耳
α1 光線の方角
α2 光線の方角
α3 光線の方角
e 遮光フラップの傾斜角
g タテ糸相互の隙間
p 遮光フラップの間隔
s ヨコ糸の間隔

【特許請求の範囲】
【請求項1】
織布の厚み方向に複数本のタテ糸を配列して帯状の遮光フラップを形成すると共に、織布の織り方向に所定の間隔を設けて無数の遮光フラップを積層して配置し、これらのタテ糸に所定の間隔を設けてヨコ糸を織り込ませて連続した織布を形成したことを特徴とする遮光織布。
【請求項2】
請求項1に記載の遮光織布において、遮光フラップ相互とヨコ糸相互の間に形成される隙間の面積が織布表面積の50%を超える透過度で形成されたことを特徴とする遮光織布。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−141824(P2006−141824A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−338241(P2004−338241)
【出願日】平成16年11月24日(2004.11.24)
【出願人】(593007073)ブラウン株式会社 (3)
【Fターム(参考)】