説明

遮断器及びパッファ形ガス遮断器

【課題】 装置の大型化、コスト高を引き起こすことなく、かつ、遮断性能を確保し、高電圧・大電流化が実現できる遮断器及びパッファ形ガス遮断器を得る。
【解決手段】 開極指令があると駆動装置により、可動側接触子と共に駆動する可動側パッファ室と、可動側接触子と固定側接触子を係合させる係合部と、固定側接触子に引張力を付与する引張手段と、閉極状態より開極動作開始時、可動側接触子と固定側接触子は一体に、引張手段の引張力に逆らいながら駆動し、開極動作途中の所望の位置にて、可動側接触子と固定側接触子の係合部の係合を開放する係合開放手段を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遮断器及びパッファ形ガス遮断器に関し、特に絶縁耐力の回復速度の向上が図れる開極駆動構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のパッファ形ガス遮断器は、開極指令があると駆動装置により、パッファシリンダが可動側接触子と一体に駆動され、パッファ室の容積が漸次縮小されることにより、パッファ室内の消弧性ガスがピストンにより圧縮される構造であった。そして、このような構造により、固定側接触子と可動側接触子とが開離する際に発生するアークに対し、パッファ室で圧縮された消弧性ガスを吹き付け、アークを冷却することにより、電流の遮断性能を向上させるものであった。(例えば、特許文献1参照)
【0003】
【特許文献1】特開昭60−212923号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係るパッファ形ガス遮断器は、開極指令後の可動側接触子及びパッファシリンダの駆動力、更にはパッファ室の圧縮反力は駆動装置の駆動力のみに依存していた。従って、遮断器の高電圧・大電流化が求められる中で遮断性能を確保する為には、ガスの吹付け量を増加する為のパッファ室の大形化、遮断器極間の絶縁回復速度の向上を図る為の開離速度の向上が必要となり、駆動装置の性能向上(駆動力アップ)に伴う大型化、延いては、装置本体の大型化、コスト高を引き起こすという課題があった。
【0005】
本発明は、上述のような課題を解決する為になされたもので、装置の大型化、コスト高を引き起こすことなく、かつ、遮断性能を確保し、高電圧・大電流化が実現できる遮断器及びパッファ形ガス遮断器を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る遮断器は、接点を有した固定側接触子、固定側接触子に対し、接離可能に配置され、固定側接触子の接点に対応した接点を有した可動側接触子、
固定側接触子と可動側接触子は、閉極時に互いに係合する係合部を有し、
開極動作持、前記固定側接触子に開極方向と逆方向に引張力を付与する引張手段、閉極状態より開極動作が開始されると、固定側接触子と可動側接触子は共に開極方向に駆動し、開極動作途中の所望の位置にて、固定側接触子と可動側接触子の係合を開放する係合開放手段を具備するものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る遮断器及びパッファ形ガス遮断器においては、駆動装置の駆動力のみだけでなく、引張手段の引張力も利用し、固定側接触子と可動側接触子を開離させることが可能となる。従って、極間の開離速度の増加による絶縁耐力の回復速度向上が図れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1(a)は、本発明を実施するための実施の形態1におけるパッファ形ガス遮断器の遮断部位の閉極状態を示す断面図である。図1(a)においては、1は固定側端子であり、タンク50に対し絶縁された状態に固定側支持台1aにより支持されている。2は可動側端子であり、タンク50に対し絶縁された状態に可動側支持台2aにより支持されている。3は固定側ガイド5を介し固定側端子1と導通状態にある筒状に形成された固定側接触子である。固定側接触子3は円盤状に形成された固定側接触子の支持板4に支持されている。支持板4は筒状に形成された固定側ガイド5に対し、パッファ形ガス遮断器(以下、遮断器という)の駆動軸方向に摺動可能に係合支持されている。
【0009】
6は固定側端子1と支持板4の間に介在されている引張手段であり、本実施の形態1では、遮断器の閉極状態において自然長さより所定の長さだけ長くなるように設計され、遮断器の駆動軸方向に伸縮するコイルバネである。即ち、固定側ガイド5の内面側の全周に渡り連続的にリブ状のストッパー5aが設けられており、支持板4がストッパー5aに当接している際、コイルバネ6は自然長さより所定の長さだけ長くなっている為、支持板4には所定の付勢力が付与された状態となる。
【0010】
尚、引張手段6は、コイルバネに限らず、例えば、皿バネ、ゴム部材、或いは、駆動装置(油圧式等)などでも良い。また、ストッパー5aは固定側ガイド5の内面側の全周に渡り連続的に設けられた構成に限らず、例えば、90度間隔で4箇所設けた構成などでも良い。即ち、ストッパー5aは支持板4がコイルバネ6により引き戻された際の止め機能を有すれば足りる。
【0011】
7は筒状に形成された可動側接触子である。8は可動側接触子7の外周面を覆うように筒状に形成され、且つ、可動側接触子7を支持している可動パッファシリンダである。従って、開極或いは閉極指令がなされると、可動ロッド12により、可動側接触子7と可動パッファシリンダ8は一体に遮断器の駆動軸方向に駆動する。2bは筒状に形成された可動側主接触子であり、可動側接触子7は、可動パッファシリンダ8及び可動側主接触子2bを介し可動側端子2と導通状態にある。尚、可動ロッド12は油圧式ポンプ機構により可動側接触子7を開極方向、閉極方向に駆動させている。
【0012】
可動パッファシリンダ8は可動側接触子7、可動側ピストン10と共に可動側パッファ室9を形成している。可動側ピストン10は可動側接触子7の外周面を覆うように筒状に形成され、且つ、遮断器の駆動軸方向に摺動可能に、可動側接触子7及び可動側パッファ室9により支持されている。可動側パッファ室9は内部に消弧性ガスが充填されている。11は可動側接触子7の外周面を覆うように筒状に形成され、可動側パッファ室9に有した消弧性ガスの噴出口9a近傍から可動側接触子7の先端付近に延設され、消弧性ガスの流路13を形成する絶縁ノズルである。
【0013】
尚、噴出口9aは可動側接触子7の外周に複数箇所設けられており、噴出口9aが設けられていない部位は可動側接触子7に接合され、閉極状態における固定側端子1と可動側端子2の間の導通経路の一部を構成している。即ち、閉極状態において、固定側端子1と可動側端子2は、コイルバネ6、支持板4、固定側接触子3、可動側接触子7、可動パッファシリンダ8、可動側主接触子2bを介し導通された状態にある。流路13は可動側接触子7の全外周に渡り形成されている。なお、本実施の形態1においては、固定側端子1と支持板4との導通をコイルバネ6を介し行っているが、これに限られるものではない。例えば、別途、伸縮性のある導通部材を介して導通させた構成でも良い。
【0014】
固定側接触子3は先端に突部3aを有し、同様に可動側接触子7は先端に突部7aを有している。図1(b)は、突起3aの拡大図である。図1(c)は、突起7aの拡大図である。図1(a)に示す通り、閉極状態において、突部3aと突部7aは互いに係合し、導通状態となる。尚、この時、固定側接触子3は支持板4を介しコイルバネ6により所定の付勢力を付与されている為、突起3aと突起7aは所定の接圧を有した状態で係接されている。
【0015】
以下、突部3aと突部7aの形状を、図1(b)及び図1(c)を用いて説明する。図1(b)に示す通り、突部3aは湾曲面状に形成されており、閉極動作時、可動側接触子7の突部7aが係合されていく側の傾斜面31の勾配は小さく設計され、係合時の摩擦抵抗を抑制するように工夫している。他方、開極動作時、可動側接触子7の突部7aが開離されていく側の傾斜面32の勾配は、突部7aが係合されていく側の傾斜面31の勾配より大きく設計され、突部3aと突部7aが所望の係合力を確保しつつ、開離時の誘い部としての機能を有するように工夫されている。
【0016】
図1(c)に示す通り、突部7aも湾曲面状に形成されており、閉極動作時、固定側接触子3の突部3aに係合していく側の傾斜面71の勾配は小さく設計され、係合時の摩擦抵抗を抑制するように工夫している。他方、開極動作時、固定側接触子3の突部3aから開離していく側の傾斜面72の勾配は、突部3aに係合していく側の傾斜面71の勾配より大きく設計され、突部3aと突部7aが所望の係合力を確保しつつ、開離時の誘い部としての機能を有するように工夫されている。
【0017】
尚、突起3a及び突起7aの表面形状は、上述した本実施の形態1に示す形状に限られるものではない。例えば、突起3aにおいて、突部7aが係合されていく側の傾斜面31の勾配と突部7aが開離されていく側の傾斜面32の勾配を同じにしていても良い。突起7aも同様である。また、突起3a及び突起7aは、閉極動作時の突起3aに対し突起7aが係合されていく際の摩擦抵抗の抑制、開極動作時の突起3aと突起7aが所望の係合力を確保しつつ、開離時の誘い部としての機能を有する面を有しておれば足りる。
【0018】
以上の通り、固定側接触子3と可動側接触子7は、突部3aと7aからなる係合部にて接離可能に係合されており、併せて、突部3aと7aの傾斜面32,72と共に、可動ロッド12は開極動作途中に係合部の係合を開放する係合開放手段としての機能を有している。尚、本実施の形態1では、係合部並びに係合開放手段の一部として、固定側接触子3と可動側接触子7の先端にそれぞれ設けた突部3aと突起7aにて構成しているがこれに限られるものではない。例えば、固定側接触子3と可動側接触子7のどちらか一方に突部、他方に溝部を構成しても良い。また、誘い部である傾斜面も、固定側接触子3、可動側接触子7の先端に設けられた突部(或いは溝部)のどちらか一方にのみ設けた構成でも良い。
【0019】
但し、本実施の形態1に示した通り、固定側接触子3と可動側接触子7の先端に設けられた突部(或いは溝部)の両方に誘い部を設けた構成の方が、固定側接触子3及び可動側接触子7の接離に必要な駆動力の低減効果は大きくなる為、可動ロッド12の大型化を要しないという効果も併せて大きくなる。
【0020】
図2は、本発明を実施するための実施の形態1における遮断器の遮断部位の開離直前の状態の要部を示す断面図である。図3は、本発明を実施するための実施の形態1における遮断器の遮断部位の開離直後のアークが発生した状態の要部を示す断面図である。尚、図2、図3は、遮断器の中心軸Pに対し、上部のみを図示している。
【0021】
以下、本実施の形態1における遮断器の動作について、図1〜図3を用いて説明する。 まず、図1(a)に示す閉極状態における導通経路について説明する。閉極状態において、固定側端子1と可動側端子2は導通状態にある。即ち、固定側接触子3の突起3aと可動側接触子7の突起7aが係合した状態においては、突起3aと突起7aは係接しており、導通経路の一部を構成する。よって、固定側端子1と可動側端子2は、コイルバネ6、支持板4、固定側接触子3、可動側接触子7、可動パッファシリンダ8、可動側主接触子2bを介し導通された状態にある。また、閉極状態において、コイルバネ6は自然長さより所定の長さだけ長くとなるように設計されている為、突起3aと突起7aは所定の接圧を有した状態で係合され、接触信頼性が確保されている。
【0022】
次に、図1(a)に示す閉極状態にて、開極指令がなされた場合、可動ロッド12により、可動側接触子7は矢印Aの方向に駆動する。この時、可動側接触子7の突起7aと固定側接触子3の突起3aは係合されている為、固定側接触子3は可動側接触子7に牽引され、可動側接触子7と同様に矢印Aの方向に駆動する。即ち、可動側接触子7と固定側接触子3は共に、コイルバネ6の引張力に逆らいながら、図1(a)に示す矢印Aの方向に駆動する。
【0023】
尚、この時、可動パッファシリンダ8は可動側接触子7と一体に矢印Aの方向に駆動する為、可動側ピストン10により可動側パッファ室9の容積は漸次縮小され、消弧性ガスは圧縮される。本実施の形態1では、絶縁ノズル11の先端部11aと固定側接触子3との隙間は、開極及び閉極動作において、先端部11aと固定側接触子3との接触が生じない最低限の隙間に設定されている。従って、当該隙間における抵抗により、可動側パッファ室9内に充填された消弧性ガスが噴出口9aより噴出され、流路13を流れる流量は抑制されている。
【0024】
可動側接触子7と固定側接触子3が共に矢印Aの方向に駆動するにつれて、コイルバネ6が伸長して引張力、即ち、バネ反力は増大していく為、突部3aの傾斜面32と突部7aの傾斜面72が相対的な位置ズレを生じ始め、図2に示す通り、可動側接触子7が撓みながら突起7aが浮上する。尚、可動側接触子7は筒状に形成されているが、固定側接触子3と係合する側にはスリット(図示せず)が設けられている。これにより、可動側接触子7における固定側接触子3との係合部に弾性を持たせることが可能となり、撓みやすくなるように工夫されている。なお、スリット(図示せず)は最低限の隙間となる切り込みであり、可動側パッファ室9内に充填された消弧性ガスの漏れを抑制している。
【0025】
可動側接触子7が撓みながら突起7aが浮上した後、更に矢印Aの方向に駆動されると、突起7aは突起3aを乗り越え、図3に示す通り、突起3aと突起7aの係合は開放される。即ち、コイルバネ6の引張力、即ち、バネ反力と突起3aと突起7aの係合力を合わせた力が、可動ロッド12の駆動力を上回った時に突起3aと突起7aの係合は開放される。
【0026】
固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間、極間の電流は、固定側接触子3と可動側接触子7との間で点弧し、アーク14が発生する。この時、図3に示す通り、遮断器の開離直後、絶縁ノズル11の先端11aの下側は開放された状態となる為、可動側ピストン10により圧縮され高圧となっていた可動側パッファ室9内の消弧性ガスは、所望の流速にて、噴出口9aから流路13を流れ、アーク14に吹き付けられ、アーク14を冷却する。また、固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間、固定側接触子3はコイルバネ6により矢印Aと逆方向に引き戻され、図1(a)に示す位置、即ち、支持板4がストッパー5aに当接する位置まで戻る。
【0027】
尚、本実施の形態1においては、突部3aと突起7aの係合の開放に際し、可動側接触子7が撓み、突起7aを突起3aとの係合が開放される方向に浮上させる構成としたが、これに限らず、固定側接触子3にスリットを設けることにより、固定側接触子3が撓み、突起3aを突起7aとの係合が開放される方向に沈下させる構成でも良く、また、可動側接触子7と固定側接触子3の両方にスリットを設け、共に撓む複合的な構成でも良い。
【0028】
尚、本実施の形態1においては、コイルバネ6の引張力、即ち、バネ反力と突起3aと突起7aの係合力を合わせた力が、可動ロッド12の駆動力を上回った時に突起3aと突起7aの係合は開放される構成としたが、これに限られるものではない。例えば、突起3aと突起7aの係合力とは別に、別途、係合力を付与する機械的係合手段をも有し、コイルバネ6の引張力、突起3aと突起7aの係合力、当該機械的係合手段による係合力の総和力が、可動ロッド12の駆動力を上回った時に突起3aと突起7aの係合は開放される構成としても良い。また、コイルバネ6の引張力と可動ロッド12の駆動力の差分が所定の値になった際に、突起3aと突起7aの係合を開放させる機械的係合開放手段を別途備えた構成でも良い。
【0029】
以上に示す構成及び動作により、固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間に発生するアーク14は、消弧性ガスにより冷却される。また、同時に、固定側接触子3がコイルバネ6により矢印Aと逆方向に引き戻される。従って、開離直後の固定側接触子3と可動側接触子7の開離速度、即ち、遮断器の開離速度は、可動ロッド12の駆動力のみだけでなく、コイルバネ6の引張力、即ち、バネ反力も加えて利用される為、増大する。その結果、絶縁耐力の回復速度向上が図れ、延いては、可動側パッファ室9や可動ロッド12の大型化を引き起こすことなく、遮断性能を確保し、高電圧・大電流化が実現できる。
【0030】
また、本実施の形態1においては、可動側パッファ室9の大きさや可動ロッド12の駆動力に応じ、コイルバネ6のバネ定数、突起3a及び突起7aの形状を設計することにより、固定側接触子3と可動側接触子7の開離位置を最適に設定できる。
【0031】
なお、本実施の形態1においては、パッファ形ガス遮断器としたが、これに限らず、例えば、比較的、小電圧、小電流の遮断器においては、可動側パッファ室9、噴出口9a、可動側ピストン10、絶縁ノズル11等の構成部品を設けなくとも、固定側接触子3がコイルバネ6により矢印Aと逆方向に引き戻されることより、開離直後の固定側接触子3と可動側接触子7の開離速度の増大が図れ、絶縁耐体力の確保が出来る。
【0032】
実施の形態2.
図4(a)は、本発明を実施するための実施の形態2における遮断器の遮断部の閉極状態の要部を示す断面図である。図(b)は、図4(a)に示す突起3cの拡大図である。図4(c)は、図4(a)に示す突起7cの拡大図である。図5は、本発明を実施するための実施の形態2における遮断器の遮断部の開離直前の状態の要部を示す断面図である。図6は、本発明を実施するための実施の形態2における遮断器の遮断部の開離直後のアークが発生した状態の要部を示す断面図である。図4〜図6は、遮断器の中心軸Pに対し、上部のみを図示している。図4〜図6において、実施の形態1における図1〜図3と同一の構成部品には同一の符号を付しており、構成及び機能の説明を省略する。
【0033】
まず、実施の形態2における突起3c及び突起7cについて、実施の形態1における突起3a及び突起7aとの一致点及び相違点を説明する。突起3c及び突起7cは、実施の形態1における突起3a及び突起7aと同様に、固定側接触子3と可動側接触子7との係合部としての機能を有するが、形状において差異がある。以下、突部3cと突部7cの形状を、図4(b)及び図4(c)を用いて説明する。図4(b)に示す通り、突部3cは略湾曲面状に形成されており、閉極動作時、可動側接触子7の突部7cが係合されていく側の傾斜面33の勾配は小さく設計され、係合時の摩擦抵抗を抑制するように工夫している。他方、開極動作時、可動側接触子7の突部7cが開離されていく側の傾斜面34の勾配は逆勾配に設計され、突部3cと突部7cが、実施の形態1における突起3a及び突起7aより大きな係合力を確保するように工夫されている。
【0034】
図4(c)に示す通り、突部7cは湾曲面状に形成されており、閉極動作時、固定側接触子3の突部3cに係合していく側の傾斜面73の勾配は小さく設計され、係合時の摩擦抵抗を抑制するように工夫している。他方、開極動作時、固定側接触子3の突部3cから開離していく側の傾斜面74の勾配は、突部3cに係合していく側の傾斜面73の勾配より大きく設計され、突部3cと突部7cが所望の係合力を確保しつつ、併せて、開離時の誘い部としての機能を有するように工夫されている。
【0035】
15は可動側接触子7の駆動をガイドする筒状に形成されたガイド部材である。可動側接触子7は、ガイド部材15と摺接する面にテーパ形状に形成されたテーパ部7bを有する。テーパ部7bは、可動側接触子7の所望の位置から突起7cが設けられた位置に向けて、中心軸Pの方向に傾斜している。尚、本実施の形態2においては、ガイド部材15とテーパ部7bの間にベアリング(図示せず)を介在させることにより、開極及び閉極動作時の当該摺接面の摩擦抵抗を低減している。もっとも、ベアリングがなくても成り立つことは言うまでもない。
【0036】
図4に示す閉極状態にて、開極指令がなされると、実施の形態1と同様に可動ロッド(図示せず)により、可動側接触子7が固定側接触子3と共に矢印Aの方向に駆動される。この時、可動側接触子7のテーパ部7bを有する面は、ガイド部材15に対し摺動される為、駆動するにつれて、ガイド部材15と摺接するテーパ部7bにより、可動側接触子7は、突起7cと突起3cとの係合が開放する方向に撓んでいく。尚、実施の形態1と同様に、可動側接触子7は筒状に形成されているが、固定側接触子3と係合する側にはスリット(図示せず)が設けられている。これにより、可動側接触子7における固定側接触子3との係合部に弾性を持たせることが可能となり、撓みやすくなるように工夫されている。即ち、テーパ部7b及び可動ロッド12は突起3cと突起7cからなる係合部の係合を開放する係合開放手段として機能する。
【0037】
16は固定側接触子3の外周面を覆うように筒状に形成された固定側パッファ室であり、固定側接触子3にて内輪側の面を形成し、他の側面を固定パッファシリンダ17、固定側ピストン18にて形成している。固定側パッファ室16は、固定側接触子3にて形成された面に消弧性ガスの吸い込み口16a、その対向面に消弧性ガスの吹き出し口16bを有し、吸い込み口16aには、固定側パッファ室16の外部から内部への方向にのみ流路を形成する第一の逆止弁19a、吹き出し口16bには、固定側パッファ室16の内部から外部への方向にのみ流路を形成する第二の逆止弁19bが設けられている。尚、固定側ピストン18は固定側接触子3を支持すると共に、固定側端子1との間にコイルバネ6を介在させている。尚、固定側ピストン18は、固定パッファシリンダ17に対し、遮断器の駆動軸方向に摺動可能に支持されている。
【0038】
本実施の形態2においては、図4(a)に示す閉極状態の通り、固定側端子(図示せず)と可動側端子(図示せず)は、固定パッファシリンダ17、固定側ピストン18、固定側接触子3、可動側接触子7、可動パッファシリンダ8、可動側主接触子(図示せず)を介し導通された状態にある。
【0039】
尚、実施の形態1と同様に、閉極状態において、コイルバネ6は自然長さより所定の長さだけ長くとなるように設計されている為、突起3cと突起7cは所定の接圧を有した状態で係合され、接触信頼性が確保されている。従って、固定側接触子3と可動側接触子7は、互いに突起3cと突起7cの係合により、所定の接圧を有した状態にて導通されている。
【0040】
以下、本実施の形態2における遮断器の動作について、図4〜図6を用いて説明する。
図4(a)に示す閉極状態にて、開極指令がなされた場合、実施の形態1と同様に可動ロッド(図示せず)により、可動側接触子7は突部3cと突起7cにて係合されている固定側接触子3と共に、コイルバネ6の引張力に逆らいながら、図4(a)に示す矢印Aの方向に駆動する。
【0041】
尚、この時、可動パッファシリンダ8も可動側接触子7と一体に矢印Aの方向に駆動する為、可動側ピストン10により可動側パッファ室9の容積は漸次縮小され、消弧性ガスは圧縮される。同様に、固定側接触子3と一体に矢印Aの方向に駆動する固定側ピストン18により、固定側パッファ室16の容積は漸次縮小される。この時、固定側パッファ室16内の気体は第二の逆止弁19bから吹き出される為、固定パッファ室16の内圧は上昇することなく、可動ロッド(図示せず)の駆動力を妨げることもない。
【0042】
可動側接触子7と固定側接触子3が共に矢印Aの方向に駆動するにつれて、コイルバネ6が伸長して引張力、即ち、バネ反力は増大していく為、図5に示す通り、ガイド部材15とテーパ部7bの摺接により、可動側接触子7は、突起7cと突起3cとの係合が開放する方向に撓んでいく。即ち、突部3cと7cの係合が開放される方向に、突起7cが浮上する。その後、図6に示す通り、開極動作途中の所望の位置にて、突起3cと7cは開放される。固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間、極間に流れていた電流は、固定側接触子3と可動側接触子7との間で点弧し、アーク14が発生する。
【0043】
図6に示す通り、固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間、絶縁ノズル11の先端11aの下側は開放された状態となる為、可動側ピストン10により圧縮され高圧となっていた可動側パッファ室9内の消弧性ガスは、所望の流速を得て、噴出口9aから流路13を流れ、アーク14に吹き付けられ、アーク14を冷却する。また、固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間、固定側接触子3はコイルバネ6により矢印Aと逆方向に引き戻され、図4(a)に示す位置、即ち、支持板4がストッパー17aに当接する位置まで戻る。尚、ストッパー17aは、実施の形態1におけるストーパー5aと機能、形状等は同じである。
【0044】
更に、固定側接触子3と可動側接触子7が開離された瞬間、固定側接触子3はコイルバネ6により瞬時に引き戻される為、固定側パッファ室16内が負圧となり、その結果、アーク14に吹き付けられ、アーク14の熱を吸収し高温となった消弧性ガスは、図6に示す通り、筒状に形成された固定側接触子3の間を通り、矢印Bに示す通り、第一の逆止弁19aより固定側パッファ室16内に吸い込まれる。
【0045】
以上に示す構成及び動作により、実施の形態1に示す効果に加え、アーク14の熱を吸収し高温となった消弧性ガスを固定側パッファ室16内に吸い込ませることにより、高温となった消弧性ガスが極間に滞留してしまうことを抑制できる為、アーク14が消弧するまでの時間を短縮できる。従って、絶縁耐力の回復速度の向上が図れる。また、ガイド部材15とテーパ部7bの摺動により、突起7cを浮上させている為、実施の形態1と比して、突起3c及び突起7cの摩耗が抑制され、遮断器の信頼性が向上する。
【0046】
更に、本実施の形態2においては、可動側パッファ室9の大きさや可動ロッド12の駆動力に応じ、コイルバネ6のバネ定数、突起3c及び突起7cの形状、テーパ部7bの形状を設計することにより、固定側接触子3と可動側接触子7の開離位置を最適に設定できる。特に、実施の形態1と比較して、係合開放手段の一部をテーパ部7bにて構成している為、突起3cと突起7cの係合力を大きくすることができ、閉極時の信頼性が向上する。また、突起3c及び突起7cの表面形状に依拠せず、突起3cと突起7cの掛かり代及びテーパ部の形状(勾配高さ)にて、固定側接触子3と可動側接触子7の開離位置を設定することが可能であり、設計の簡単化が図れる。
【0047】
実施の形態3.
図7は、本発明を実施するための実施の形態3における遮断器の遮断部の閉極状態の要部を示す断面図である。図7は、遮断器の中心軸Pに対し、上部のみを図示している。図7において、実施の形態1を示す図1〜図3、実施の形態2を示す図4〜図6と同一の構成部品には同一の符号を付しており、構成及び機能の説明を省略する。実施の形態2との相違点は、コイルバネ6の設置位置が異なる点である。
【0048】
即ち、実施の形態1では、固定側端子1と固定側ピストン18の間にコイルバネ6を介在させている。従って、コイルバネ6は引張バネとして機能している。これに対し、実施の形態1では、固定パッファシリンダ17と固定側ピストン18の間にコイルバネ6を介在させている。従って、コイルバネ6は圧縮バネとして機能している。尚、実施の形態3においても、実施の形態1及び実施の形態2と同様に、閉極状態において、コイルバネ6は自然長さより所定の量だけ長くとなるように設計されている。従って、上述の通り、突起3cと突起7cは所定の接圧を有した状態で係合されている為、接触信頼性が確保されている。また、本実施の形態3では、開極動作時、コイルバネ6が圧縮されていく過程において、コイルバネ6であるコイルバネが座屈を防止する為のガイド部(図示せず)が設けられている。尚、引張手段6を皿バネとすれば、ガイド部を設けない構成でも、座屈を防止することができる。
【0049】
以上に示す構成及び動作により、実施の形態2に示す効果と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】(a)は本発明を実施するための実施の形態1におけるパッファ形ガス遮断器の遮断部位の閉極状態を示す断面図である。(b)は突起3aの拡大図である。(c)は突起7aの拡大図である。
【図2】本発明を実施するための実施の形態1における遮断器の遮断部位の開離直前の状態の要部を示す断面図である。
【図3】本発明を実施するための実施の形態1における遮断器の遮断部位の開離直後のアークが発生した状態の要部を示す断面図である。
【図4】本発明を実施するための実施の形態2における遮断器の遮断部の閉極状態の要部を示す断面図である。
【図5】本発明を実施するための実施の形態2における遮断器の遮断部の開離直前の状態の要部を示す断面図である。
【図6】本発明を実施するための実施の形態2における遮断器の遮断部位の開離直後のアークが発生した状態の要部を示す断面図である。
【図7】本発明を実施するための実施の形態3における遮断器の遮断部の閉極状態の要部を示す断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 固定側端子
2 可動側端子
3 固定側接触子
3a、3c 突部
6 コイルバネ(引張手段)
7 可動側接触子
7a、7c 突部
7b テーパ部
9 可動側パッファ室
9a 噴出口
10 可動側ピストン
11 絶縁ノズル
13 流路
15 ガイド部材
16 固定側パッファ室
18 固定側ピストン
19a 第一の逆止弁
19b 第二の逆止弁
31、32、33 誘い部(傾斜面)
71、72、73、74 誘い部(傾斜面)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接点を有した固定側接触子、
前記固定側接触子に対し、接離可能に配置され、前記固定側接触子の接点に対応した接点を有し、閉極状態より開極駆動が開始されると、前記固定側接触子と共に開極方向に駆動される可動側接触子、
閉極時、前記固定側接触子と前記可動側接触子を互いに係合させる係合部、
閉極状態より開極駆動が開始されると、前記固定側接触子に開極方向と逆方向に、開極駆動距離が増すにつれて増大する引張力を付与する引張手段、
開極駆動の途中に、前記係合部の係合を前記可動側接触子に付与する駆動力及び前記引張手段の引張力により開放する係合開放手段
を備えた遮断器。
【請求項2】
係合部は、固定側接触子と可動側接触子における互いに対応した位置にそれぞれ設けられた突部或いは溝部から構成され、
係合開放手段は、前記固定側接触子と前記可動側接触子の少なくとも一方の突部或いは溝部に形成された、前記固定側接触子と前記可動側接触子の開離時の誘い部を有し、前記可動側接触子に付与する駆動力により前記係合部の係合が開放される構成である
ことを特徴とする請求項1に記載の遮断器。
【請求項3】
係合部は、固定側接触子と可動側接触子における互いに対応した位置にそれぞれ設けられた突部或いは溝部から構成され、
係合開放手段は、前記可動側接触子と摺接し、前記可動側接触子の駆動をガイドするガイド部材と、開極駆動距離が増すにつれて、前記ガイド部材との摺接により、係合部の係合が開放される方向に、前記可動側接触子が浮上するように、前記ガイド部材と摺接する前記可動側接触子の面の一部に形成されたテーパ部を有し、前記可動側接触子に付与する駆動力により前記係合部の係合が開放される構成である
ことを特徴とする請求項1に記載の遮断器。
【請求項4】
引張手段は、閉極時、固定側接触子に開極方向と逆方向に所定の引張力を付与する
ことを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の遮断器。
【請求項5】
接点を有した固定側接触子、
前記固定側接触子に対し、接離可能に配置され、前記固定側接触子の接点に対応した接点を有し、閉極状態より開極駆動が開始されると、前記固定側接触子と共に開極方向に駆動される可動側接触子、
開極駆動時、前記可動側接触子と一体に駆動する、消弧性ガスの噴出口を有した可動側パッファ室、
前記可動側パッファ室に摺動可能に支持された可動側ピストン、
前記可動側パッファ室の噴出口から可動側接触子における固定側接触子との接点に延在し、前記消弧性ガスの流路を形成する絶縁ノズル、
閉極時、前記固定側接触子と前記可動側接触子を互いに係合させる係合部、
閉極状態より開極駆動が開始されると、前記固定側接触子に開極方向と逆方向に、開極駆動距離が増すにつれて増大する引張力を付与する引張手段、
開極駆動の途中に、前記係合部の係合を前記可動側接触子に付与する駆動力及び前記引張手段の引張力により開放する係合開放手段
を備えたパッファ形ガス遮断器。
【請求項6】
係合部は、固定側接触子と可動側接触子における互いに対応した位置にそれぞれ設けられた突部或いは溝部から構成され、
係合開放手段は、前記固定側接触子と前記可動側接触子の少なくとも一方の突部或いは溝部に形成された、前記固定側接触子と前記可動側接触子の開離時の誘い部を有し、前記可動側接触子に付与する駆動力により前記係合部の係合が開放される構成である
ことを特徴とする請求項5に記載のパッファ形ガス遮断器。
【請求項7】
係合部は、固定側接触子と可動側接触子における互いに対応した位置にそれぞれ設けられた突部或いは溝部から構成され、
係合開放手段は、前記可動側接触子と摺接し、前記可動側接触子の駆動をガイドするガイド部材と、開極駆動距離が増すにつれて、前記ガイド部材との摺接により、係合部の係合が開放される方向に、前記可動側接触子が浮上するように、前記ガイド部材と摺接する前記可動側接触子の面の一部に形成されたテーパ部を有し、前記可動側接触子に付与する駆動力により前記係合部の係合が開放される構成である
ことを特徴とする請求項5に記載のパッファ形ガス遮断器。
【請求項8】
固定側接触子をひとつの面として形成された固定側パッファ室、一端が引張手段に接合され、前記固定側パッファ室に摺動可能に支持された固定側ピストン、
前記固定側パッファ室の前記固定側接触子にて形成された面に配置され、前記固定パッファ室の内部に気体を吸い込むための第一の逆止弁、
前記固定側パッファ室における前記第一の逆止弁が形成された面以外の面に配置され、前記固定パッファ室の外部に気体を吹き出すための第二の逆止弁を備えた
ことを特徴とする請求項5乃至請求項7のいずれかに記載のパッファ形ガス遮断器。
【請求項9】
引張手段は、閉極時、固定側接触子に開極方向と逆方向に所定の引張力を付与する
ことを特徴とする請求項5乃至請求項8のいずれかに記載のパッファ形ガス遮断器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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