説明

遮水シート

【課題】この発明は、確実な遮水性を有するとともに、法面に容易に敷設することのできる遮水シートを提供することを目的とする。
【解決手段】分散配置した高吸水性樹脂11を挟み込み、縫合した2枚の内側長繊維不織布20と、該内側長繊維不織布20の外側表面を被覆する熱可塑性樹脂材製の樹脂層30と、該樹脂層30の外側表面を被覆する外側長繊維不織布40とを積層して遮水シート1を構成し、前記2枚の内側長繊維不織布20(20a,20b)をニードルパンチで縫合し、前記樹脂層30を熱融着によって内側長繊維不織布20の外表面に接着するとともに、前記外側長繊維不織布40を熱融着によって樹脂層30の外表面に接着した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば、土木工事等で用いる遮水性ある遮水性シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば、廃棄物の最終処分場の表面を被覆する防水層を形成する遮水シートが多く提案されている(特許文献1参照)。この特許文献1に記載の遮水シートは、分散配置した粉末状の高吸水性樹脂を挟み込むシート状基材を樹脂層で被覆する構成である。この遮水シートを敷設することにより、廃棄物からでる汚水や雨水に溶け込んだ有害物質の地中への浸透を防止することができる。
また、シート状基材が破れた場合であっても、シート状基材に挟まれた高吸水性樹脂が吸水して膨張するため、遮水性能を確保することができるものである。
【0003】
【特許文献1】特開平9−52323号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記遮水シートは、略水平な面に敷設することを前提しているため、ため池や河川の法面に敷設する場合、遮水シートの表面の樹脂層によって滑動するため、遮水シートの敷設施工及びその上面側の法面防護部材の造成施工における施工性や施工後の法面の斜面安定性において満足できるものではなかった。
この発明は、確実な遮水性を有するとともに、法面に容易に敷設することのできる遮水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、分散配置した高吸水性樹脂を挟み込み、縫合した2枚の内側繊維性シート体と、該内側繊維性シート体の外側表面を被覆する樹脂シートと、該樹脂シートの外側表面を被覆する外側繊維性シート体とを積層して構成した遮水シートであることを特徴とする。
【0006】
上記高吸水性樹脂は、セルロース・アクリルニトリル重合体又はデンプン・アクリルニトリル重合体等の天然系高吸水性樹脂、あるいはアクリル酸・ビニルアルコール共重合体、アクリル酸ソーダ重合体、アクリル酸・アクリルアミド共重合体、ポリエチレンオキサイド変成物又はイソブチレン・無水マレイン酸共重合体等の合成系高吸水性樹脂であることを含む。
【0007】
上記内側繊維性シート体及び外側繊維性シート体を構成する繊維性シート体は、不織布、織物又は編物等など構成されたシート状のものであることを含み、内側繊維性シート体及び外側繊維性シート体を同種又は異種の繊維性シート体で構成することを含む。
【0008】
上記樹脂シートは、ポリエチレン(PE),ポリプロピレン(PP)、ポリ塩化ビニル(PVC)等の熱可塑性樹脂であることを含み、ラミネート、コーティング又は塗布などによって形成された内側繊維性シート体の外側表面を被覆する被覆層であることを含む。
【0009】
これにより、確実な遮水性を有する遮水シートを構成することができる。詳しくは、該内側繊維性シート体の外側表面を樹脂シートで被覆しているため、遮水性及び耐久性のある遮水シートを構成することができる。また、縫合した2枚の内側繊維性シート体で分散配置した高吸水性樹脂を挟み込んでいるため、仮に、樹脂シートで被覆された内側繊維性シート体が破れた場合であっても、高吸水性樹脂が吸水して膨張するため、遮水性能を確保することができる。
【0010】
さらに、該樹脂シートの外側表面を外側繊維性シート体で被覆しているため、遮水シートの遮水性能を向上するとともに、該遮水シートを敷設する施工面との間の摩擦力を向上するため、例えば、法面に本発明の遮水シートを敷設する場合であっても、遮水シートが法表面を滑動することなく、遮水シートの敷設施工及び遮水シート上の法面防護部材の造成施工における施工性を向上するとともに、法面防護施工後の法面の斜面安定性を向上することができる。
【0011】
この発明の態様として、前記内側繊維性シート体及び前記外側繊維性シート体を、長繊維不織布で構成することができる。
上記長繊維不織布は、ポリエステル長繊維不織布であることを含む。
【0012】
これにより、前記内側繊維性シート体及び前記外側繊維性シート体を短繊維織布で構成した場合と比較して、遮水シートの厚みを薄く形成できる。したがって、遮水シートの取り扱いが容易となり、遮水シートの敷設施工における施工性を向上することができる。
【0013】
また、この発明の態様として、前記樹脂シートを、熱可塑性樹脂材で構成し、前記2枚の内側繊維性シート体を、ニードルパンチで縫合し、前記樹脂シートを、熱融着によって内側繊維性シート体の外表面に接着するとともに、前記外側繊維性シート体を、熱融着によって樹脂シートの外表面に接着することができる。
【0014】
これにより、確実に積層状態を確保できる遮水性シートを構成することができる。詳しくは、分散配置した高吸水性樹脂を挟み込んだ2枚の内側繊維性シート体を、ニードルパンチで縫合するため、内側に高吸水性樹脂を挟み込んだ状態で2枚の内側繊維性シート体を確実に縫合することができる。殊に、内側繊維性シート体を長繊維不織布で構成した場合において、相手側の内側繊維性シート体に引き出される繊維本数が多くなり、さらには長い繊維で縫合できるため縫合強度を増加することができる。
【0015】
また、前記樹脂シートを熱可塑性樹脂材で構成したことによって、容易且つ確実に前記樹脂シートを熱融着によって内側繊維性シート体の外表面に接着するとともに、前記外側繊維性シート体を、熱融着によって樹脂シートの外表面に接着することができる。
【0016】
また、該内側繊維性シート体の外側表面を樹脂シートで被覆しているため、殊に、内側繊維性シート体を長繊維不織布で構成した場合において、内側繊維性シート体の表面付近に引き出された長繊維を熱可塑性樹脂材で構成された樹脂シートで固着することができ、ニードルパンチによる縫合強度をさらに向上することができる。
【0017】
また、この発明の態様として、前記2枚の内側繊維性シート体のうち表面側となる表面内側繊維性シート体の目付け量を、底面側となる底面内側繊維性シート体の目付け量以下で構成するとともに、外側繊維性シート体の目付け量を、前記表面内側繊維性シート体の目付け量以下で構成することができる。
【0018】
上記の構成で構成したため、遮水性及び耐久性を確保しながら、遮水シートの厚みや重量、さらにはコスト増加を抑制し、施工性の高い遮水シートを構成することができる。
【0019】
また、この発明は、上記の遮水シートを法面に敷設し、該法面に敷設した前記遮水シートの表面側に法面防護部材を造成する法面防護工法であることを特徴とする。
【0020】
これにより、遮水シートの敷設施工及び遮水シート上の法面防護部材の造成施工における施工性が向上するとともに、法面防護施工後の法面の斜面安定性が向上する法面防護工法を実現することができる。
【0021】
また、遮水シートで確実な遮水性を確保できるため、地山表面に防水層としての刃金土を敷き均した刃金土層を造成する必要がなくなるため、刄金土層造成工程を削減できるため、法面防護工における施工期間短縮を実現することができる。
【0022】
この発明の態様として、前記法面防護部材を、前記遮水シートの表面側に敷設した布製型枠材に硬化性充填材を充填して構成することができる。
上記布製型枠材は、透水性のある織布を袋状に形成し、袋状部分に硬化性充填材を注入する型枠材である。
上記硬化性充填材は、モルタル、セメントミルク等の硬化性材料であることを含む。
【0023】
これにより、布製型枠材を敷設し、敷設した布製型枠材にモルタル等の硬化性充填材を注入することで法面防護部材を造成できる。したがって、高さ調整や空練りモルタルの敷き均しが必要な張ブロック等の二次製品による法面防護部材を敷設する場合と比較して、簡便に法面防護部材を造成することができる。
【0024】
また、この発明の態様として、前記遮水シートの表面側に敷設する前記布製型枠材の遮水シート側面に不織布層を備えることができる。
これにより、法面に敷設した遮水性シート表面に敷設した布製型枠と、遮水性シートの対向面に生じる摩擦力を増大することができる。したがって、布製型枠が傾斜する遮水シート表面を滑動することなく、布製型枠の敷設施工の施工性を向上するとともに、法面防護施工後の法面の斜面安定性を向上することができる。
【0025】
また、この発明は、可撓性のあるシートで、内部に硬化性充填材の充填を許容する充填空間を形成する布製型枠材であって、少なくとも敷設状態において敷設側となる底面に、分散配置した高吸水性樹脂を挟み込む内側繊維性シート体と、該内側繊維性シート体の底面を被覆する樹脂シートと、該樹脂シートの底面を被覆する外側繊維性シート体とを積層して構成した遮水層を備えたことを特徴とする。
【0026】
これにより、底面に確実な遮水性を有する遮水層を備えた布製型枠材を構成することができる。したがって、本発明の布製型枠材を敷設し、敷設した布製型枠材にモルタル等の硬化性充填材を注入することで法面防護部材を造成できることができる。
【0027】
また、遮水層で確実な遮水性を確保できるため、地山表面に防水層としての刃金土を敷き均した刃金土層を造成する必要がなくなるため、刄金土層造成工程を削減でき、法面防護工における施工期間短縮を実現することができる。
【0028】
詳しくは、該内側繊維性シート体の底面を樹脂シートで被覆しているため、遮水性及び耐久性のある遮水層を構成している。また、布製型枠材の底面と内側繊維性シート体とで分散配置した高吸水性樹脂を挟み込んでいるため、仮に、遮水層が破れた場合であっても、高吸水性樹脂が吸水することで膨張し、遮水性能を確保することができる。
【0029】
また、該樹脂シートの底面を外側繊維性シート体で被覆しているため、該布製型枠材を敷設する施工面との間の摩擦を確保できる。したがって、例えば、法面に本発明の布製型枠材を敷設する場合であっても、布製型枠材が法表面を滑動することなく、布製型枠材の敷設施工の施工性を向上するとともに、法面防護施工後の法面の斜面安定性を向上することができる。
【0030】
この発明の態様として、前記繊維性シート体を、長繊維不織布で構成し、前記樹脂シートを、熱可塑性樹脂材で構成することができる。
これにより、前記内側繊維性シート体及び前記外側繊維性シート体を短繊維織布で構成した場合と比較して、遮水層の厚みを薄く形成できる。したがって、布製型枠材の取り扱いが容易となり、布製型枠材の敷設施工における施工性を向上することができる。
【0031】
また、前記樹脂シートを熱可塑性樹脂材で構成したことによって、容易且つ確実に前記樹脂シートを熱融着によって内側繊維性シート体の外表面に接着するとともに、前記外側繊維性シート体を、熱融着によって樹脂シートの外表面に接着することができる。
【発明の効果】
【0032】
この発明によれば、確実な遮水性を有するとともに、法面に容易に敷設することのできる遮水シートを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下、本発明の一実施例について説明する。
遮水シート1の構成について説明する斜視図を示す図1と、遮水シート1の縦断面図を示す図2とともに遮水シート1について説明する。
【0034】
遮水シート1は、土木構造物等において防水層を構成するための遮水シートであり、適宜の幅の長尺状に形成されている。
遮水シート1は、厚さ方向内側から、粉末状の高吸水性樹脂11を分散配置した高吸水性樹脂層10と、該高吸水性樹脂層10を間に挟み、内部に包含して被覆する2枚の内側長繊維不織布20と、該内側長繊維不織布20の外表面を熱可塑性樹脂で被膜する樹脂層30と、さらに該樹脂層30の外側を被覆する外側長繊維不織布40とを、内側からこの順で積層して構成している。
【0035】
高吸水性樹脂層10は、粒径分布150〜650μmのアクリル酸系の高吸水性樹脂11を300g/mの量で分散配置して構成している。しかし、これに限定されず、例えば、セルロース・アクリルニトリル重合体、デンプン・アクリルニトリル重合体などの天然系の高吸水性樹脂、ポリエチレンオキサイド変成物、イソブチレン・無水マレイン酸共重合体などの合成系の高吸水性樹脂も使用することができ、さらには湿潤した土中で使用する場合には、合成系の高吸水性樹脂がより好ましい。また、分散配置量は300g/mの量に限定されず、200〜500g/mの量で分散配置されればよい。
【0036】
内側長繊維不織布20は、ポリエステル長繊維不織布で構成されている。詳しくは、高吸水性樹脂層10の上面側を被覆する表面内側長繊維不織布20aを目付け量100g/mのポリエステル長繊維不織布で構成し、高吸水性樹脂層10の底面側を被覆する底面内側長繊維不織布20bを目付け量200g/mのポリエステル長繊維不織布で構成している。そして、表面内側長繊維不織布20aと底面内側長繊維不織布20bとを80本/cmの密度のニードルパンチで縫合している。
【0037】
なお、表面内側長繊維不織布20a及び底面内側長繊維不織布20bは、上記目付け量に限定されず、目付け量100〜300g/mの範囲のポリエステル長繊維不織布を用いればよい。
【0038】
樹脂層30は、厚み80〜100μm、且つ50g/mの熱融着性のポリエチレンシートで構成され、ニードルパンチで縫合された内側長繊維不織布20(20a,20b)の両表面に熱圧着ロールによって押し付けられて形成された被膜である。
【0039】
この樹脂層30は、熱融着性のポリエチレンシートを熱圧着ロールによって押し付けて構成しているため、ニードルパンチによって他方側の内側長繊維不織布20の表面付近に達した一方側の内側長繊維不織布20の縫合繊維を固着し、内側長繊維不織布20同士のニードルパンチによる縫合強度を向上している。
なお、樹脂層30は、上記比重に限定されず、比重20〜150g/mの範囲の熱融着性のポリエチレンシートを用いればよい。
【0040】
外側長繊維不織布40は、目付け量50g/mのポリエステル長繊維不織布で構成されている。なお、内側長繊維不織布20の外表面に熱融着された樹脂層30に対して、外側長繊維不織布40を熱圧着ロールによって押し付けることによって、樹脂層30と外側長繊維不織布40とを熱融着している。
なお、外側長繊維不織布40は、上記目付け量に限定されず、目付け量50〜300g/mの範囲のポリエステル長繊維不織布を用いればよい。
【0041】
このように構成した遮水シート1は確実な遮水性を備えることができる。詳しくは、内側長繊維不織布20の外側表面を樹脂層30で被覆しているため、遮水性及び耐久性のある遮水シート1を構成している。また、縫合した2枚の内側長繊維不織布20で分散配置した高吸水性樹脂11で構成する高吸水性樹脂層10を挟み込み、内側に包含しているため、仮に、樹脂層30で被覆された内側長繊維不織布20が破れた場合であっても、高吸水性樹脂11が吸水して膨張するため、遮水性能を確保することができる。
【0042】
また、内側長繊維不織布20及び外側長繊維不織布40をポリエステル長繊維不織布で構成しているため、内側長繊維不織布20及び外側長繊維不織布40を短繊維織布で構成した場合と比較して、遮水シート1の厚みを薄く形成できる。したがって、遮水シート1の取り扱いが容易となり、遮水シート1の敷設施工における施工性を向上することができる。
【0043】
また、樹脂層30を熱可塑性樹脂材で構成し、2枚の内側長繊維不織布20(20a,20b)を、ニードルパンチで縫合し、樹脂層30を熱融着によって内側長繊維不織布20の外表面に接着するとともに、外側長繊維不織布40を熱融着によって樹脂層30の外表面に接着しているため一体化された積層状態を保持することができる。
【0044】
詳しくは、分散配置した高吸水性樹脂11で構成する高吸水性樹脂層10を挟み込んだ2枚の内側長繊維不織布20を、ニードルパンチで縫合するため、確実に内側に分散配置した高吸水性樹脂11を挟み込んだ状態で2枚の内側長繊維不織布20を縫合することができる。また、内側長繊維不織布20をポリエステル長繊維不織布で構成しているため、相手側の内側長繊維不織布20に引き出される繊維本数が多くなり、さらには長い繊維で縫合できるためニードルパンチによる縫合強度を増強することができる。
【0045】
また、内側長繊維不織布20の外側表面を樹脂層30で被覆するとともに、内側長繊維不織布20をポリエステル長繊維不織布で構成しているため、内側長繊維不織布20の表面付近に引き出されたポリエステル長繊維を熱可塑性樹脂材で構成された樹脂層30で固着することができ、ニードルパンチによる縫合強度をさらに向上することができる。
【0046】
また、2枚の内側長繊維不織布20のうち底面側となる底面内側長繊維不織布20bを目付け量200g/mのポリエステル長繊維不織布で構成するとともに、表面側となる表面内側長繊維不織布20aを目付け量100g/mのポリエステル長繊維不織布で構成し、外側長繊維不織布40を目付け量50g/mのポリエステル長繊維不織布で構成しているため、遮水性及び耐久性を確保しながら、遮水シート1の厚みや重量、さらにはコスト増加を抑制し、施工性の高い遮水シートを構成することができる。
【0047】
なお、高吸水性樹脂11の使用量を200〜500g/mの範囲の量で構成したため十分な遮水効果を確保できるとともに、経済性を確保することができる。詳しくは、高吸水性樹脂11の使用量が200g/m以下では十分な遮水効果が得られず、500g/m以上では不経済となる。
【0048】
また、内側長繊維不織布20全面をニードルパンチで縫合しているため、高吸水性樹脂11が吸水して膨潤した際の膨潤圧による高吸水性樹脂11の押出を防止することができる。さらに詳しくは、高吸水性樹脂11の膨潤圧をロスすることなく、内側長繊維不織布20の破れ部分に作用することができるため、確実な遮水性能を得ることができる。
【0049】
さらに、内側長繊維不織布20の表面を樹脂層30で被覆し、さらにその外表面を外側長繊維不織布40で被覆しているため、膨潤した高吸水性樹脂11を内側長繊維不織布20間の狭い領域に閉じ込めることができ、高密度な高吸水性樹脂層10による遮水能を得ることができる。また、内側長繊維不織布20、樹脂層30及び外側長繊維不織布40によって三層構造を構成しているため水分の浸透を防止でき、破れ以外の水の吸収、例えば地山などに含まれる水分によって、高吸水性樹脂11が吸水して膨潤状態となることを防止できる。
【0050】
次に、このように構成した遮水シート1を用いた法面防護工法について、ため池100の法面防護についての説明図を示す図3とともに説明する。
この遮水シート1を用いた法面防護工法は、図3(a)に示すように、もともとの地山110の成形された地山法面111に遮水シート1を敷設し、法尻部分111aに地盤改良層120を造成し、法尻部分111a以外の遮水シート1の表面部分に盛土層130を造成し、ため池100側の盛土層130の法面表面に張りブロック141を敷き詰めて法面防護部材140を造成する。
【0051】
これにより、ため池100の水が遮水シート1によって地山110に浸み込むことを防止できるため、耐久性のある法面防護部材140で法面を防護したため池100を構築することができる。
【0052】
なお、図3(b)に示す従来の法面防護工法において、ため池100の水の地山110側への浸み込みを防止するため、地山法面111に刃金土と呼ばれるベントナイトを締め固めて形成する遮水層150を造成していたが、遮水シート1を用いることにより、刃金土による遮水層150を造成することなく、ため池100の水の地山110への浸み込みを防止できる。したがって、遮水層150を造成する施工手間や法面防護工における工期短縮を図れるとともに、遮水層150の層厚分の地山110表面の切土量を低減することができ、経済性の高い法面防護工を実現することができる。
【0053】
また、上記構成で構成した遮水シート1を用いているため、遮水シート1が破れた場合であっても吸水した高吸水性樹脂11の膨潤圧によって遮水性能を確保することができるとともに、遮水シート1を敷設する地山110表面や表面側の盛土と遮水シート1の外側長繊維不織布40との間の摩擦力が増大するため、遮水シート1の敷設施工及び遮水シート1表面への盛土施工において施工性が向上する。
さらには、地山110表面及び盛土と遮水シート1との境界面の増大した摩擦力によって、法面防護施工後の法面の斜面安定性を向上することができる。
【0054】
なお、遮水シート1を用いた法面防護工法において、張りブロック141を用いずとも、図4に示すように、遮水シート1表面に布製型枠220を敷設して、該布製型枠220内部にモルタル210を充填して法面防護部材200を造成してもよい。図4は遮水シート1及び布製型枠220を用いた法面防護工法についての説明図を示している。
【0055】
布製型枠220は、透水性のある織布221を袋状に形成し、袋状部分に硬化性充填材であるモルタル210を図示省略する注入口から注入する型枠材であり、図4のa部拡大図に示すように、布製型枠220の底面に不織布層222を備えている。不織布層222は、布製型枠220の底面側の織布221に対して熱融着によって接着されたポリエステル長繊維不織布で構成している。
【0056】
この遮水シート1及び布製型枠220を用いた法面防護工法は、上記遮水シート1を用いた法面防護工法と同様に、もともとの地山110の成形された地山法面111に遮水シート1を敷設し、その遮水シート1の表面に布製型枠220を敷設する。そして、布製型枠220に備えた注入口からモルタル210を注入し、モルタル210が硬化することによって法面防護部材200を造成することができる。なお、法尻部分111aに地盤改良層120を造成してもよい。
【0057】
これにより、容易に遮水性のある法面防護部材200を造成することができる。詳しくは張りブロック141を敷き詰めて法面防護部材140を造成する場合と比較して、張りブロック141を敷き詰めるための高さ調整を兼ねた空練りモルタルの敷き均し等の手間を省くことができるため、法面防護部材200を造成する施工手間や工期短縮を図ることができる。
【0058】
また、ポリエステル長繊維不織布で構成された不織布層222を布製型枠220の底面側の織布221に備えているため、遮水シート1表面と布製型枠220の底面との間に生じる摩擦力を増大させ、布製型枠220の敷設施工における施工性がさらに向上することができる。さらには、遮水シート1表面と布製型枠220の底面との間の増大した摩擦力によって、法面防護施工後の法面の斜面安定性をさらに向上することができる。
【0059】
さらには、図5に示すように、上記遮水シート1と布製型枠220と一体構成した遮水性布製型枠300を用いて法面防護部材を造成してもよい。図5は遮水性布製型枠300の縦断面図による説明図を示している。
【0060】
遮水性布製型枠300は、透水性のある織布301を袋状に形成し、袋状部分に硬化性充填材であるモルタル210を図示省略する注入口から注入する型枠材であり、図5のb部拡大図に示すように、織布301の底面側に遮水層310を備えている。
【0061】
遮水層310は、遮水性布製型枠300の底面側の織布301の底面に分散配置した粉末状の高吸水性樹脂で形成する高吸水性樹脂層311と、底面側の織布301との間に挟み高吸水性樹脂層311を内側に包含して被覆する内側長繊維不織布312と、該内側長繊維不織布312の外表面を熱可塑性樹脂で被膜する樹脂層313と、さらに該樹脂層313の外側を被覆する外側長繊維不織布314とをこの順で積層して構成している。
【0062】
高吸水性樹脂層311は、遮水シート1のアクリル酸系の高吸水性樹脂11と同様に、粒径分布150〜650μm、且つ300g/mの量の分散量で配置して構成している。
内側長繊維不織布312は、遮水シート1の底面内側長繊維不織布20bと同様に、目付け量200g/mのポリエステル長繊維不織布で構成され、底面側の織布301に対して80本/cmのニードルパンチで縫合されている。
【0063】
樹脂層313は、遮水シート1の樹脂層30と同様に、厚み80〜100μm、且つ50g/mの熱融着性のポリエチレンシートで構成され、熱圧着ロールによる押し付けによって内側長繊維不織布312の表面に形成された被膜である。なお、この熱融着性のポリエチレンシートを熱圧着ロールによって押し付けているため、ニードルパンチによって内側長繊維不織布312の表面付近に達した織布301の縫合繊維を固着し、織布301と内側長繊維不織布312とのニードルパンチによる縫合強度を向上している。
【0064】
外側長繊維不織布314は、上記遮水シート1の外側長繊維不織布40と同様の目付け量50g/mのポリエステル長繊維不織布で構成され、内側長繊維不織布312の表面に熱融着された樹脂層313に対して、熱圧着ロールによって押し付けられて、樹脂層313に熱融着している。
【0065】
このように構成された遮水性布製型枠300を法面防護工に用いることによって、上記遮水シート1及び布製型枠220を用いた法面防護工法と比べて、同様の効果を得ることができるとともに、遮水性布製型枠300の敷設によって、遮水シート1及び布製型枠220を用いた法面防護工法における遮水シート1と布製型枠220の2つの敷設工程を1工程にまとめることができる。したがって、法面防護部材200を造成する施工手間や工期短縮を図ることができる。
【0066】
この発明の構成と、上述の実施形態との対応において、
この発明の内側繊維性シート体は、内側長繊維不織布20,312に対応し、
以下同様に、
底面内側繊維性シート体は、底面内側長繊維不織布20bに対応し、
表面内側繊維性シート体は、表面内側長繊維不織布20aに対応し、
樹脂シートは、樹脂層30,313に対応し、
外側繊維性シート体は、外側長繊維不織布40,314に対応し、
法面は、地山法面111に対応し、
布製型枠材は、布製型枠220又は遮水性布製型枠300に対応し、
硬化性充填材は、モルタル210に対応するも、
この発明は、上述の実施形態の構成のみに限定されるものではなく、多くの実施の形態を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】遮水シートの構成について説明する斜視図。
【図2】遮水シートの縦断面図。
【図3】ため池の法面防護についての説明図。
【図4】遮水シート及び布製型枠を用いた法面防護工法についての説明図。
【図5】遮水性布製型枠の縦断面図。
【符号の説明】
【0068】
1…遮水シート
10,311…高吸水性樹脂層
11…高吸水性樹脂
20,312…内側長繊維不織布
20a…表面内側長繊維不織布
20b…底面内側長繊維不織布
30,313…樹脂層
40,314…外側長繊維不織布
111…地山法面
140,200…法面防護部材
210…モルタル
220…布製型枠
222…不織布層
300…遮水性布製型枠
310…遮水層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分散配置した高吸水性樹脂を挟み込み、縫合した2枚の内側繊維性シート体と、
該内側繊維性シート体の外側表面を被覆する樹脂シートと、
該樹脂シートの外側表面を被覆する外側繊維性シート体とを積層して構成した
遮水シート。
【請求項2】
前記内側繊維性シート体及び前記外側繊維性シート体を、長繊維不織布で構成した
請求項1に記載の遮水シート。
【請求項3】
前記樹脂シートを、熱可塑性樹脂材で構成し、
前記2枚の内側繊維性シート体を、ニードルパンチで縫合し、
前記樹脂シートを、熱融着によって内側繊維性シート体の外表面に接着するとともに、
前記外側繊維性シート体を、熱融着によって樹脂シートの外表面に接着した
請求項1又は2に記載の遮水シート。
【請求項4】
前記2枚の内側繊維性シート体のうち表面側となる表面内側繊維性シート体の目付け量を、底面側となる底面内側繊維性シート体の目付け量以下で構成するとともに、
外側繊維性シート体の目付け量を、前記表面内側繊維性シート体の目付け量以下で構成した
請求項1、2又は3に記載の遮水シート。
【請求項5】
請求項1から4のうちいずれかに記載の遮水シートを法面に敷設し、
該法面に敷設した前記遮水シートの表面側に法面防護部材を造成する
法面防護工法。
【請求項6】
前記法面防護部材を、
前記遮水シートの表面側に敷設した布製型枠材に硬化性充填材を充填して構成した
請求項5に記載の法面防護工法。
【請求項7】
前記遮水シートの表面側に敷設する前記布製型枠材の遮水シート側面に不織布層を備えた
請求項6に記載の法面防護工法。
【請求項8】
可撓性のあるシートで、内部に硬化性充填材の充填を許容する充填空間を形成する布製型枠材であって、
少なくとも敷設状態において敷設側となる底面に、
分散配置した高吸水性樹脂を挟み込む内側繊維性シート体と、該内側繊維性シート体の底面を被覆する樹脂シートと、該樹脂シートの底面を被覆する外側繊維性シート体とを積層して構成した遮水層を備えた
布製型枠材。
【請求項9】
前記繊維性シート体を、長繊維不織布で構成し、
前記樹脂シートを、熱可塑性樹脂材で構成した
請求項8に記載の布製型枠材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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