説明

遮水層の構造

【課題】 廃棄物処分場等の施設における遮水層の安全性と信頼性を確保する。
【解決手段】 廃棄物処分場等の施設における遮水層の構造であって、下層の土質遮水層Aと上層のシート遮水層Bとによる少なくとも二重の遮水層を有する。下層の土質遮水層Aは火山灰質粘性土と生石灰との混合土により形成される不透水土層を有する。上層のシート遮水層Bは、遮水シート1とその上下に積層された不織布シート2a、2bからなる。土質遮水層Aの表層部に集水溝3を設けるとともに、その集水溝3に通じる漏水検知ピットを設け、遮水シート1の破損により生じる漏水をその下層側の不織布シート2bを通して集水溝3に導き、集水溝3から漏水検知ピットに導いて漏水検知を行う構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は廃棄物処分場等の施設における遮水層の構造に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の施設においては、廃棄物からの滲出水や廃棄物に汚染された汚染水が施設外に漏出することを確実に防止し得る十分な遮水性能が要求されることから、従来一般にはモルタルやコンクリートにより遮水層を形成するか、合成ゴムや合成樹脂製の遮水シートを場内に隙間無く敷き詰めることで遮水層を形成することが一般的である。また、現地土あるいは客土にセメント等の固化材や各種の混合材を混合して遮水性や強度を高めた改良土を調製し、それを遮水材として土質遮水層を形成することも提案されており、たとえば特許文献1には粘性土とゼオライト粒子と生石灰との混合土を遮水材として使用することで十分な強度を有するばかりでなく重金属類に対する吸着機能も有する多機能な土質遮水層についての提案がある。
【特許文献1】特開平10−34103号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、上述したような従来一般の構造の遮水層では必ずしも十分な安全性と信頼性を確保できるものではなく、より一層の安全性と信頼性が得られる有効適切な遮水層の構造が未だ模索されているのが実情である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記事情に鑑み、請求項1記載の発明は、廃棄物処分場等の施設における遮水層の構造であって、下層の土質遮水層と上層のシート遮水層とによる二重の遮水層を有し、下層の土質遮水層は火山灰質粘性土と生石灰との混合土により形成される不透水土層を有し、上層のシート遮水層は遮水シートとその上下に積層された不織布シートからなることを特徴とする。
【0005】
また、請求項2記載の発明は、土質遮水層の表層部に集水溝を設けるとともにその集水溝に通じる漏水検知ピットを設け、遮水シートの破損により生じる漏水をその下層側の不織布シートを通して集水溝に導き、集水溝から漏水検知ピットに導く構成としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
請求項1記載の発明によれば、少なくとも土質遮水層とシート遮水層とによる二重の遮水層により十分な遮水性能が得られてこの種の施設の安全性と信頼性を十分に確保できることはもとより、特に土質遮水層における不透水性土層の形成に際しては従来の火山灰質粘性土を対象とする地盤改良手法の採用により優れた強度と遮水性能を有する土質遮水層を効率的に施工することが可能である。
【0007】
請求項2記載の発明によれば、上記に加え、遮水シートが万一損傷した際には損傷部からの漏水がその下層側の不織布シートを通って集水溝に集水されて漏水検知ピットに流入するので、漏水検知ピットを監視することで漏水の有無や程度を早期に検知して早期対策が可能となり、したがって施設の安全性と信頼性をより一層向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1は本発明の実施形態である遮水層の構造を模式的に示す図である。これはたとえば山間部等に設置される産業廃棄物最終処分場等の施設に適用されるもので、下層の土質遮水層Aと、その上層のシート遮水層Bとによる二重の遮水層からなり、さらにその上層には50cm程度の厚さの保護土層Cが形成されたものである。
【0009】
2層の遮水層のうち、下層側の土質遮水層Aは、現地土あるいは客土としての火山灰質粘性土を母材としてそれに生石灰を添加混合することで混合土を調製し、それを遮水材として撒出して転圧することで形成される不透水土層からなるものである。母材としての火山灰質粘性土は、適量の生石灰を添加して混合することで十分な強度と遮水性能が発現して遮水材として有効に利用できるものである。なお、土質遮水層Aの層厚は適宜であるが、50〜60cmとすることが好ましく、さらにその下層にバックアップ層として粘性土層を40cm程度の厚さで形成することがより好ましい。
【0010】
図2は、自然含水比が70%程度、土粒子密度2.7g/cm程度の火山灰質粘性土を母材としてそれに生石灰を添加した場合の圧縮強度の増強効果を試験した結果を示すものであり、生石灰添加量を80kg/m以上とすれば十分な増強効果が得られ、構造の安定に必要とされる169kN/m以上の圧縮強度が若齢期から得られることが確認された。
【0011】
図3は土質遮水層Aの試験施工例(2例)と施工結果を示す。(a)に示すように、試験番号1は火山灰質粘性土に対する生石灰添加量を70kg/mとして汎用の混合土製造機により混合し、水平面に対して撒出し厚を20cm、撒出し層数を4層として、汎用の転圧機により6〜10回の転圧を行ったものである。試験番号2は生石灰添加量を40kg/mとし、斜面に対して撒出し厚を15cm、撒出し層数を5層として、8〜12回の転圧を行ったものである。そのようにして形成した土質遮水層Aは、(b)に示すようにこの種の施設における遮水材に要求される1.0×10-6cm/sec以下の透水係数が得られており、いずれも十分な遮水性能を確保できることが確認された。
【0012】
一方、上層側のシート遮水層Bは、遮水シート1とその上下にそれぞれ積層された不織布シート2(2a、2b)からなる3層構造のものである。遮水シート1の素材や厚さは特に限定されないが、たとえば厚さ1.5mmの熱可塑製ゴムシートを採用し、遮水シート1どうしの継目は隙間無く完全に熱融着する。不織布シート2も特に限定されないが、鋭利物による遮水シート1の損傷を防止し得るようにたとえば厚さ10〜20mm程度のものが好適であり、特に上層側の不織布シート2aの紫外線を受ける部分については耐候性を有しかつ遮水シート1の紫外線による劣化を防止するべく遮光性を有するものが好適である。加えて、後述のように本例では万一の漏水を下層側の不織布シート2bを通して集水して漏水検知を行うようにしていることから、少なくとも下層側の不織布シート2bには通水性を有するものであることも必要である。
【0013】
なお、必要であれば遮水シート1を2重としてそれらの間にさらに他の不織布シート2を積層することにより、全体として2層の遮水シート1と3層の不織布シート2による5層構造のシート遮水層Bとすることでも良い。特に急斜面部には上記のように遮水シート1を二重に敷設することが好ましく、さらにその場合には下層側に上記の土質遮水層Aに代えて、あるいはそれに加えて、モルタル吹き付け層を形成することがより好ましい場合がある。
【0014】
本実施形態の構造の遮水層によれば土質遮水層Aとシート遮水層Bの二重の遮水層により十分な遮水性能が得られ、遮水シート1が万一損傷を受けた場合であっても土質遮水層Aによって施設外への漏出は未然にかつ確実に防止できるが、さらに本実施形態では遮水層の健全性を確認するべく遮水シート1が万一損傷した際にはそのことを早期に検知するための漏水検知システムを設けてある。
【0015】
すなわち、図1に示すように土質遮水層Aの表層部にはたとえば幅10cm程度、深さ5cm程度の集水溝3を設けるとともに、土質遮水層Aの表面には集水溝3に向かうように若干の水勾配を形成しておく。そして、集水溝3の内部に25φ程度の有孔管からなる集水管4を敷設するとともに砕石や礫材等の充填材5を充填し、それら集水溝3および集水管4を適所に設けた漏水検知ピット(図示略)まで接続しておく。これにより、遮水シート1が何らかの原因により万一損傷を受けて損傷部から漏水が生じた際には、その漏水が下層側の不織布シート2bを通って集水溝3に集水され、集水管4を通って漏水検知ピットまで達するので、漏水検知ピットを監視することで漏水の有無や程度を早期に検知することが可能であってそれに対する早期対策が可能であり、この種の施設の漏水に対する安全性と信頼性を十分に確保することができる。
【0016】
このような漏水検知システムにおいては、施設全体を複数のブロックに区画しておいて、各ブロックからの漏水を漏水検知ピットまで独立に導くことによりブロック単位で漏水発生箇所を特定することも可能である。また、漏水検知ピットに漏水を自動的かつ機械的に検知するための各種のセンサを設ければ、漏水を常時連続的に監視することも可能である。なお、上記のような集水溝3のみで十分な通水性を確保できる場合には集水管4は省略することも可能である。
【0017】
以上で本発明の実施形態を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものでは勿論なく、火山灰質粘性土と生石灰との混合土により形成される不透水土層を有する土質遮水層Aと、遮水シート1とその上下に積層された不織布シート2からなるシート遮水層Bとによる少なくとも二重の遮水層を有する構造とする限りにおいて、各部の具体的な構成やこれを適用する施設の用途その他については、本発明の要旨を逸脱しない範囲で様々に変更可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態である遮水層の構造を示す図である。
【図2】同、土質遮水層の強度試験結果を示す図である。
【図3】同、土質遮水層の試験施工例と施工結果を示す図である。
【符号の説明】
【0019】
A 土質遮水層
B シート遮水層
C 保護土層
1 遮水シート
2(2a、2b) 不織布シート
3 集水溝
4 集水管
5 充填材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
廃棄物処分場等の施設における遮水層の構造であって、下層の土質遮水層と上層のシート遮水層とによる二重の遮水層を有し、下層の土質遮水層は火山灰質粘性土と生石灰との混合土により形成される不透水土層を有し、上層のシート遮水層は遮水シートとその上下に積層された不織布シートからなることを特徴とする遮水層の構造。
【請求項2】
請求項1記載の遮水層の構造であって、土質遮水層の表層部に集水溝を設けるとともにその集水溝に通じる漏水検知ピットを設け、遮水シートの破損により生じる漏水をその下層側の不織布シートを通して集水溝に導き、集水溝から漏水検知ピットに導く構成としたことを特徴とする遮水層の構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2006−198586(P2006−198586A)
【公開日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−15865(P2005−15865)
【出願日】平成17年1月24日(2005.1.24)
【出願人】(000002299)清水建設株式会社 (2,433)
【出願人】(000224798)同和鉱業株式会社 (550)
【出願人】(303025168)同和工営株式会社 (7)
【Fターム(参考)】