説明

遮炎性断熱材用コーティングビーズ

【課題】 火災時接炎に対しすぐれた遮炎性と難燃性によって火災の拡大を防止又は遅延する断熱材の製造のためトラブルなく円滑に成形するための成形材料ビーズを提供する。
【解決手段】 発泡した樹脂ビーズ1の表面に難燃剤と硬化剤添加レゾール樹脂とからなる一次コーティング層2を形成し、この一次コーティング層2の表面にその膜厚よりも薄い膜厚で硬化剤添加レゾール樹脂からなる二次コーティング層3を形成してできたことを特徴とする遮炎性断熱材用コーティングビーズである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は火災時接炎に対しすぐれた遮炎性と難燃性によって火災の拡大を防止又は遅延する断熱材の製造のためトラブルなく円滑に成形するための成形材料ビーズに関するものである。
【背景技術】
【0002】
火災時接炎に対しすぐれた遮炎性と難燃性によって火災の拡大を防止又は遅延する断熱材として種々知られている。
【0003】
特許文献1には、発泡したスチレンビーズと、このスチレンビーズの表面に形成されほう酸系無機物を含むコーティング被膜を具備して熱に強い発泡スチロール製品がある。
【0004】
特許文献2には、ポリスチレン発泡性ビーズと発泡性フェノール樹脂と、レゾルシン系化合物とアルデヒドとの縮合物との混合物を型内に入れ加熱発泡硬化させて防炎性、難燃性を有する発泡体である。
【0005】
特許文献3には、樹脂発泡体の耐火性を付与するため、ほう酸、ほう酸の金属塩、珪酸、珪酸の金属塩、酢酸マグネシウムの1種または2種以上を樹脂発泡体に分散混入している耐火断熱材である。
【0006】
【特許文献1】特開平11−349725号公報
【特許文献2】特開昭64−22938号公報
【特許文献3】特開昭51−59963号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1のような発泡スチロール製品では、難燃剤としてほう酸系無機物や熱硬化性樹脂から成るコーティング被膜は断熱材の製造時に種々の問題が発生する。例えば、ほう酸系無機物が水溶性であるため成形金型に取り付けられた多数の蒸気導入孔やスリットからほう酸が蒸気およびドレイン水に大量に溶け込み成形体に有効に留まらないのみならず、水質環境基準を超えた排水となるという問題があり、ほう酸と一緒に熱硬化性樹脂も細孔やスリットに付着し目詰まりをおこし蒸気導入が円滑にいかず、成形に支障をきたすなどの問題がある。
【0008】
さらに特許文献1では、発泡スチロールをはじめ発泡樹脂ビーズに熱硬化性樹脂をコーティングしたビーズは成形金型への充填が円滑に遂行できるものでなければ実用的でない。すなわちビーズが貯槽の中でブロッキングをおこすことなく、また空気送で金型内への充填が可能な非粘着性の乾燥ビーズであることが必要である。
【0009】
前記の非粘着性のコーティングした発泡スチロールをはじめその他の発泡樹脂ビーズであっても金型に充填し蒸気導入加熱したときコーティングされた熱硬化性樹脂が熔融または軟化して個々のビーズ同志の接着(融着)がおこることが必要である。硬化反応した熱硬化性樹脂であってはこの融着が阻害され機械的な強さのない成形体(断熱材)となる。
【0010】
前記の蒸気導入加熱は発泡スチロールをはじめその他の発泡樹脂ビーズであっても、発泡ビーズのガラス転移温度を大幅に超えた高温では発泡樹脂ビーズが体積収縮してしまうため、発泡スチロールにおいての加熱は100□〜130□である。
【0011】
特許文献2の発泡体では、ポリスチレン発泡性ビーズを発泡剤を混入したフェノール樹脂をを混合し加熱発泡成形するものであり、発泡フェノール樹脂を介して発泡スチロールが固定化されるもので構造も製法も異なる。発泡硬化したフェノール樹脂は強度的に脆弱であり、火炎に接触したときに容易に崩壊しすぐれた難燃性の成形体(断熱材)とはいえない。
【0012】
さらに、特許文献3では水溶性のほう酸ほか珪酸などを樹脂発泡体に混入するものであり、可燃性樹脂を難燃化する一般的な方法で本発明とは異なるものであるとともに成形時の難燃剤流出も問題となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
【0014】
発泡した樹脂ビーズの表面に難燃剤と硬化剤添加レゾール樹脂とからなる一次コーティング層を形成し、この一次コーティング層の表面にその膜厚よりも薄い膜厚で硬化剤添加レゾール樹脂からなる二次コ−ティング層を形成してできたことを特徴とする遮炎性断熱材用コーティングビーズである。
【0015】
前記一次コーティング層においてはレゾール樹脂100重量部に硬化剤3重量部〜6重量部および難燃剤50重量部〜150重量部とから成る遮炎性断熱材用コーティングビーズである。硬化剤の添加量を上記範囲に調整することによって蒸気導入加熱によりレゾール樹脂が熔融軟化しビーズ相互の融着が達成される。また難燃剤の混入はレゾール樹脂が火炎に接したとき炭化する性質を増強することに効果的である。
【0016】
前記二次コーティング層においてはレゾール樹脂100重量部に硬化剤15重量部〜30重量部から成る遮炎性断熱利用コーティングビーズである。レゾール樹脂に添加する硬化剤量を上記範囲に調整することにより二次コーティング層は室温で硬化反応が速やかに進行し非粘着性の層を形成する。
【0017】
前記発泡した樹脂ビーズは直径2mm〜7mmが製造的、性能的、価格的な面から好ましい。ポリスチレン樹脂またはポリアクリル樹脂またはポリエチレン樹脂でできたもののいずれでも使用することができる。
【0018】
前記難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐、蛭石、膨張性グラファイト、カーボン、低融点ケイ酸ガラス、シリコーン樹脂、フェノール樹脂硬化物、ノボラック樹脂未硬化物、メラミン樹脂硬化物、燐酸メラミン、硫酸メラミンで粒径が10μm〜100μmの非水溶性の難燃剤粉体の単独または混合したものを使用する。
【発明の効果】
【0019】
本発明の遮炎性断熱材用コーティングビーズは、発泡した樹脂ビーズの表面に難燃剤と硬化剤添加レゾール樹脂とからなる一次コーティング層を形成し、この一次コーティング層の表面にその膜厚よりも薄い膜厚で硬化剤添加レゾール樹脂からなる二次コーティング層を形成することにより、このコーティングビーズを蒸気加熱自動成形機で任意の形状に成形する場合、成形排水への有害物質の流出もなく、金型への付着トラブルのない、かつビーズ相互が密に接合(融着)した成形体を製造することができる。この成形体は高温の火炎に接しても燃焼せずかつ炭化して熔融、亀裂の発生もなくすぐれた遮炎防火性を示す断熱材といえる。住宅の断熱材として極めて有効なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の遮炎性断熱材用コーティングビーズの実施形態について図面に基づいて以下説明する。ビーズは多数個から成るが、図面では1個のビーズを示す。
【0021】
図1において、発泡した樹脂ビーズ1は発泡ガスを内蔵した小径の樹脂原粒を発泡機にて所定の大きさに発泡したものである。
【0022】
図2において、発泡した樹脂ビーズ1の表面に難燃剤および調整された量の硬化剤が混入されたレゾール樹脂から成る一次コーティング層2である。
【0023】
図3において、一次コーティング層2の表面にレゾール樹脂の硬化薄膜から成る二次コーティング層3を表し、4は遮炎性断熱材用コーティングビーズである。
【0024】
次に、本発明の遮炎性断熱材用コーティングビーズの製造方法について詳細に説明する。
【0025】
(1)一次コーティング層のためのレゾール樹脂はフェノールとホルムアルデヒド水溶液をアルカリ触媒下で反応させた比較的低分子量の樹脂を水またはメチルアルコールに溶解して使用する。
【0026】
(2)このレゾール樹脂溶液に添加する硬化剤はパラトルエンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸などの有機酸を使用することが硬化反応を調節する上で好ましいものである。これらの有機酸を水またはメチルアルコールに溶解したものを前記レゾール樹脂溶液に所定量添加し攪拌容器で均一に混合する。所定量はレゾール樹脂溶液の樹脂分100重量部に有機酸分にして3重量部〜6重量部である。
【0027】
(3)次いで酸硬化剤が混合されたレゾール樹脂溶液に難燃剤粉末の所定量を加え攪拌混合機を用いて均一に分散混合する。難燃剤粉末は水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐、蛭石、膨張性グラファイト、カーボン、低融点ケイ酸ガラス、シリコーン、フェノール樹脂硬化物、ノボラック樹脂未硬化物、メラミン樹脂硬化物、燐酸メラミン、硫酸メラミンなど非水溶性の難燃剤粉体の単独または混合したものを使用する。この場合難燃剤粉末の粒径は10μm〜100μmのものが分散混合し易く、一次コーティング層が均一に形成される。難燃剤粉末の所定量はレゾール樹脂溶液の樹脂分100重量部に対して50重量部〜150重量部である。
【0028】
(4)次に発泡樹脂ビーズの表面の一次コーティングにおいては発泡樹脂ビーズに難燃剤および硬化剤混入レゾール樹脂混合液を所定の割合で秤量したものを、リボンブレンダーなどの装置を用いて混練し混合液を発泡樹脂ビーズの表面に付着させ、その後、攪拌しながら装置内に温風を送り一次コーディング層を乾燥させる。所定の割合とは発泡樹脂ビーズ100重量部に難燃剤および硬化剤混入レゾール樹脂混合液の固形分換算で70重量部〜140重量部である。
【0029】
(5)最後に一次コーティング層が形成されたビーズに二次コーティング層を形成させる。二次コーティング層の形成に使用されるレゾール樹脂と硬化剤は一次コーティングに用いたものと同じものが使用できる。二次コーティングではレゾール樹脂100重量部に有機酸硬化剤15重量部〜30重量部である。レゾール樹脂と有機酸硬化剤は水またはメチルアルコールに溶解したものを均一に混合して用いる。一次コーティング層が形成されたビーズ100重量部に有機酸硬化剤混合レゾール樹脂液の固形分換算で10重量部〜20重量部を一次コーティングと同様の装置を使用して混練する。二次コーティング層はレゾール樹脂に対する硬化剤の量が多く室温程度でも硬化反応が進行し、コーティング膜も薄いため混練中に非粘着性のコーティングビーズをすることができる。
【実施例】
【0030】
(実施例1)
ブタンガスを内蔵した発泡性ポリスチレンビーズ原粒(直径0.8〜1.2mm)を予備発泡機で30倍の倍率に発泡させ平均直径約3mmの予備発泡ポリスチレンビーズとする。レゾール樹脂水溶液100重量部に硬化剤2.5重量部 難燃剤混合物60重量部を均一に混合した一次コーティング材とし予備発泡ポリスチレンビーズ150重量部とをリボンブレンダーで混練し、均一コーティング後攪拌しながら50℃〜60℃の温風を送り乾燥し約270重量部の難燃剤混入レゾール樹脂の皮膜が形成された一次コーティングビーズとした。この一次コーティングビーズにフェノール樹脂水溶液40重量部と硬化剤15部の混合溶液を添加、攪拌混練しながら二次コーティング即ちレゾール樹脂のみの硬化膜を形成しブレンダーから排出し非粘着性の遮炎性断熱材用コーティングビーズを得た。一次および二次コーティングに使用する材料は次のものである。
イ)水溶性レゾール樹脂は樹脂分濃度50%
ロ)硬化剤はパラトルエンスルホン酸水溶液 濃度65%
ハ)難燃剤混合物は水酸化アルミニウム粉末と無機燐粉末をそれぞれ100重量部5重量部の混合粉体
【0031】
(比較例1)
難燃剤混合物を下記の混合粉体としたほかは実施例1と同様な条件でコーティングを行なった。
ニ)難燃剤混合物をほう酸粉末と無機燐粉末をそれぞれ100重量部と5重量部の混合粉体とした
【0032】
実施例1および比較例1のコーティング済みビーズを通常のビーズ法発泡スチロールの成形に使用される蒸気加熱自動成形機で厚さ30mmたて300mm×よこ300mmの板状物を成形した。その結果は表1のごとくであった。
【0033】
【表1】

【0034】
その結果、実施例1では、有害物の流出は無く、金型目詰まりもなく融着良好な成形板ができた。その成形板は800℃の火炎に接触させても燃焼せず炭化して形状が維持された。ほう酸を使用した比較例1では排水中にほう酸が流出し、排水1リットル中にほう素換算で150〜250mgであり排水環境基準を大幅に超える。また金型目詰まりと金型への成形板の付着し、脱型が困難であった。
【0035】
(実施例2)
平均直径約4mmの発泡ポリスチレンビーズを用いて、次のコーティング条件でコーティングビーズをつくり成形をおこなった。
コーティング条件・レゾール樹脂メタノール溶液200重量部に硬化剤液2.0重量部、難燃剤混合物60重量部を均一に混合した一次コーティング液とし、発泡ポリスチレンビーズ150重量部とをリボンブレンダーで混練し、均一コーティング後、攪拌しながら55℃温風乾燥し難燃剤混入レゾール樹脂皮膜が形成された一次コーティングビーズ約270重量部を得た。この一次コーティングビーズに一次コーティングと同じフェノール樹脂メタノール溶液45重量部と硬化剤液15部の混合溶液を添加、攪拌混練しながら二次コーティング液としたものを添加混練して二次コーティング膜を形成、ブレンダーから排出する。一次および二次コーティングに使用する材料は次のものである。
イ)メタノール溶性レゾール樹脂は濃度50%
ロ)硬化剤はパラトルエンスルホン酸水溶液 濃度65%
ハ)難燃剤混合物は水酸化アルミニウム粉末と無機燐粉末をそれぞれ100重量部5重量部の混合粉体
【0036】
(比較例2)
実施例2の一次コーティングの硬化剤条件のみを次のような条件としたほかは同条件でコーティングビーズを製造した。
ニ)レゾール樹脂メタノール溶液(樹脂濃度50%)100重量部に硬化剤液10重量部
【0037】
(比較例3)
下記の条件で一次コーティングのみをしてコーティングビーズを製造した。
レゾール樹脂メタノール溶液(樹脂濃度50%)200重量部に硬化剤3重量部、難燃剤混合物60重量部を均一に混合し一次コーティング液とし予備発泡ポリスチレンビーズ150重量部とをリボンブレンダーで混練し、均一コーティング後、攪拌しながら55℃温風乾燥し約270重量部の難燃剤混入レゾール樹脂の皮膜が形成されたコーティングビーズとした。
【0038】
実施例2、比較例2及び比較例3のコーティングビーズを蒸気加熱自動成形機で成形して表2の結果を得た。
【0039】
【表2】

【0040】
その結果、実施例2では金型への充填性は良好であり、金型への負荷もなく良好な成形板が得られ、燃焼試験においても炭化するのみで形状は維持された。比較例2では金型充填性は良好であり、蒸気導入口の目詰りはないものの二次コーティングビーズ相互の融着性が悪く、成形板の強度も小さく内部に空隙も見られた、、比較例3では金型充填性は不良であり、蒸気導入口の目詰りも発生し、且つ、成形板に空隙があり強度は不充分であった。燃焼試験では炭化はするものの亀裂が発生し形状維持性も良くなかった。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の発泡した樹脂ビーズを示す図である。
【図2】本発明の発泡した樹脂ビーズに一次コーティング層を形成した断面図である。
【図3】本発明の一次コーディング層に二次コーティング層を形成した断面図である。
【符号の説明】
【0042】
1 発泡した樹脂ビーズ
2 一次コーティング層
3 二次コーティング層
4 遮炎性断熱材用コーディングビーズ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
発泡した樹脂ビーズの表面に難燃剤と硬化剤添加レゾール樹脂とからなる一次コーティング層を形成し、この一次コーティング層の表面にその膜厚よりも薄い膜厚で硬化剤添加レゾール樹脂からなる二次コーディング層を形成してできたことを特徴とする遮炎性断熱材用コーティングビーズ。
【請求項2】
前記一次コーティング層においてはレゾール樹脂100重量部に硬化剤3重量部〜6重量部および難燃剤50重量部〜150重量部とから成ることを特徴とする請求項1記載の遮炎性断熱材用コーティングビーズ。
【請求項3】
前記二次コーティング層においてはレゾール樹脂100重量部に硬化剤15重量部〜30重量部から成ることを特徴とする請求項1または2記載の遮炎性断熱材用コーティングビーズ。
【請求項4】
前記発泡した樹脂ビーズは直径2mm〜7mmでポリスチレン樹脂またはポリアクリル樹脂またはポリエチレン樹脂でできたことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項記載の遮炎性断熱材用コーティングビーズ。
【請求項5】
前記難燃剤は、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、赤燐、蛭石、膨張性グラファイト、カーボン、低融点ケイ酸ガラス、シリコーン樹脂、フェノール樹脂硬化物、ノボラック樹脂未硬化物、メラミン樹脂硬化物、メラミンモノマ、燐酸メラミン、硫酸メラミンで粒径が10μm〜100μmの非水溶性の難燃剤粉体の単独または混合したものからなることを特徴とする請求項1または請求項2乃至4の何れか1項記載の遮炎性断熱材用コーティングビーズ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−120984(P2008−120984A)
【公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−332589(P2006−332589)
【出願日】平成18年11月9日(2006.11.9)
【出願人】(505352666)株式会社永和マテックス (2)
【Fターム(参考)】