説明

遮煙機能を備えた扉装置

【課題】
危害防止機構及び遮煙機能を備えた扉装置を提供する。
【解決手段】
開口部全閉時に下側に位置する扉体2には、緩衝手段15を介して上下動自在に支持された可動部20を備えており、開口枠には、通常全閉状態から扉体1、2が下動した時に扉体を側方気密部材801側へ押圧する押圧手段16が設けてあり、ガイドレール3、4には、通常全閉状態におけるガイド部材5A、5B、6A、6Bの直下に位置して押圧方向に膨出する膨出部3B、4A、4Bが形成されており、自重降下時には、扉体1、2は、可動部20が上動することで、通常全閉状態からさらに所定量降下すると同時に、押圧手段16により扉体1、2を押圧して扉体1、2の見付面を側方気密部材801に圧接させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吊持部材により吊持された1枚以上の扉体を電動昇降させることで開口部を開閉する扉装置に係り、詳しくは、火災時には当該1枚以上の扉体が自重降下して開口部を密閉する遮煙機能を備えた扉装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
吊持部材により吊持された1枚以上の扉体を電動昇降させることで開口部を開閉する扉装置として、いわゆる2段吊り下げ扉が知られている。2段吊り下げ扉は、例えば、特許文献1、特許文献2に開示されており、具体的な構成として、開口部全閉時において上側、下側にそれぞれ位置する2枚の扉体と、各扉体の幅方向両端部を受け入れて上下方向に案内するガイドレールと、各扉体を吊持する吊持手段と、吊持手段を介して扉体を昇降させる駆動手段と、を備えている。
【0003】
このような2段吊り下げ扉を防火扉として機能させるには、火災時に開閉機のブレーキを解放して扉体を自重降下させて、開口部を閉鎖する必要があるが、防火機能を備えた2段吊り下げ扉には、以下のような問題がある。
【0004】
1つは遮煙機能をどのようにして確保するかである。2段吊り下げ扉に遮煙機能を付与するためには、開口部全閉時において、扉体と開口枠との隙間を、開口枠に設けた遮煙ゴム等の気密部材で塞ぐことが考えられるが、通常の電動開閉時に常に遮煙ゴムに扉体が摺接しながら昇降するとなると、遮煙ゴムの劣化が進み、肝心の火災時に良好な遮煙機能が担保できなくなるおそれがある。また、通常の防煙シャッターを併設するとなれば、装置が大掛かりとなってコストアップを招くと共に開口部の構成が複雑になって意匠上も望ましくない上、防煙シャッターを設置できるスペースを確保しなければならないという問題がある。
【0005】
もう1つは危害防止機構をどのように構成するかである。この種の2段吊り下げ扉の扉体は一般に重量があり、障害物感知時の圧迫荷重をどのようにして軽減するかが問題となる。
【特許文献1】実公昭59−7498号
【特許文献2】実用新案登録第3131602号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、危害防止機構及び遮煙機能を備えた扉装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明が採用した技術手段は、
吊持部材により吊持された1枚以上の扉体を電動昇降させることで開口部を開閉し、火災時には当該1枚以上の扉体が自重降下して開口部を閉鎖する扉装置において、
前記扉体は、幅方向両端面に突設したガイド部材が開口枠に設けたガイドレールに沿って上下に案内されることで昇降し、
開口部全閉時に下端が着床する扉体の当該下端部は、上動位置と下動位置との間で上下動可能なように緩衝手段を介して支持された可動部を備えており、
可動部の下面には障害物検知を行う座板スイッチを設けることで、降下時に座板スイッチに障害物が当たった場合には扉体の降下を停止させるように構成され、
開口枠には、全閉状態の扉体の見付面と対向する部位に位置して高さ方向に延出する側方気密部材が設けてあり、
電動降下時の全閉状態では、座板スイッチの下面が着床した状態で前記可動部は下動位置にあると共に、扉体の見付面と側方気密部材との間には隙間が形成されており、
開口枠には、前記全閉状態から扉体が下動した時に当該扉体に接触して扉体を側方気密部材側へ押圧する押圧手段が設けてあり、
自重降下時には、扉体は、前記可動部が上動位置に移動することで、電動降下時の全閉状態からさらに所定量降下すると同時に、前記押圧手段により扉体を側方気密部材側へ押圧して扉体の見付面を側方気密部材に圧接させる、遮煙機能を備えた扉装置、である。
1つの態様では、前記ガイドレールには、電動降下時の全閉状態におけるガイド部材の直下に位置して押圧手段による押圧方向に膨出する膨出部が形成されており、自重降下時には、前記押圧手段により扉体を側方気密部材側へ押圧してガイド部材を前記膨出部に移動させることで扉体の見付面を側方気密部材に圧接させる。
また、前記膨出部(例えば、各扉体の各ガイドレールの下端に膨出部が位置する場合において、当該下端の膨出部)に代えて、ガイド部材を受け入れる開口をガイドレールに形成し、ガイド部材が当該開口に入り込むことで押圧方向に移動させてもよい。また、ガイドレールとガイド部材との間のクリアランスが比較的大きい場合には、このクリアランス内でガイド部材を押圧方向に移動させてもよい。
【0008】
1つの態様では、
前記1枚以上の扉体は、全閉状態で上側に位置する第1扉体と、下側に位置する第2扉体からなり、前記可動部は、前記第2扉体の下端部に設けてあり、前記第1扉体と前記第2扉体は連動して昇降するように構成されており、
前記ガイドレールは、前記第1扉体の幅方向両端部を案内する第1ガイドレールと、前記第2扉体の幅方向両端部を案内する第2ガイドレールと、からなり、
前記側方気密部材は、全閉状態の第1扉体の見付面と対向する第1側方気密部材と、全閉状態の第2扉体の見付面と対向する第2側方気密部材と、からなり、
全閉状態において、前記第1扉体の下端部と前記第2扉体の上端部とは対向すると共に、対向間の隙間は前記第1扉体の下端部及び/あるいは前記第2扉体の上端部に設けた閉塞部材によって塞がれている。
【0009】
1つの態様では、
開口部全閉時に上端部が開口枠の上枠より上方に位置する扉体の当該上端部には当接部が形成されており、
上枠には開口部の幅方向に延出する上方気密部材が延設されており、
電動降下時の全閉状態では、前記当接部が、前記上方気密部材の上方に位置しており、
自重降下時には、扉体が電動降下時の全閉状態から所定量降下することで、前記当接部が前記上方気密部材に圧接する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、火災時にのみ開口枠の気密部材と扉体が圧接して遮煙機能を発揮するように構成してあり、通常の昇降時および閉鎖状態では、気密部材と扉体とは隙間を存して対向しているので、昇降時に気密部材が擦れて劣化することが防止される。したがって、本発明に係る扉装置のみで防煙区画を形成できるので、防煙シャッターを併設した場合に生じ得るコストアップ、意匠、スペースについての問題が解決される。
【0011】
本発明では、座板スイッチは、緩衝部材を介して上下動可能に支持された可動部に連結されているので、降下時の扉体下面の座板スイッチに障害物が当たった場合には、可動部がクッションとして働き、扉体の重量や降下速度に応じて適切な緩衝部材を選択することで、障害物感知時の圧迫荷重を所定荷重以下に低減させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、扉装置の全体正面図、図2は、開口部全閉時の扉装置の側面図、図3は、開口部全開時の扉装置の側面図、図4Aは、扉装置の横断面図、図4Bは図4Aの部分拡大図を示しており、扉装置は、2枚の扉体1、2が昇降することによって、開口部を開閉するように構成されている。扉体1、2の幅方向両端部は、各扉体1、2の移動経路に沿って上下方向に延設されたガイドレール3、4内に受け入れられて案内される。
【0013】
扉体1,2は、開口部全幅に対応する寸法を備えたパネル体であり、上フレーム1A、2A、下フレーム1B、2B、左右の縦フレーム1C、1D、2C、2Dから横長方形状に組み立てられ、内部に、経緯方向に延出する複数の中間フレーム1E、2E、板状部材(例えば、強化ガラス)1F、2Fを装着することで形成されている。
【0014】
扉体1の幅方向両端面(縦フレーム1C、1Dの端面)には、上下2つのガイドローラ5A、5Bがそれぞれ突設されており、扉体2の幅方向両端面(縦フレーム2C、2Dの端面)には、上下2つのガイドローラ6A、6Bがそれぞれ設けてある。ガイドローラ5A、5B、6A、6Bがガイドレール3、4内を摺動ないし転動することで、扉体1、2が上下動するようになっている。扉体1,2の幅方向両端面には、さらに、ガイドローラ5A、5B、6A、6Bの回転方向と直交する方向に回転して、ガイドレール3,4の底部に摺接するガイドローラ5C、6Cが設けてあり、扉体1,2の幅方向の振れを防止している。図4Aにおいて、便宜上、扉体1,2の左側の端面ではガイドローラ5A、6Aのみ示し、右側の端面ではガイドローラ5C、6Cのみ示している。
【0015】
開口部の左右端部にはガイドレール3、4が支持される左右の縦枠8が立設されている。開口部は、上枠7と左右の側枠とからなる三方枠に囲まれている。図4Aに示すように、側枠は、建物壁面Wから内側に奥まった位置に立設された左右の縦枠8から建物壁面Wに向かって平面視拡開状に延出する左右の傾斜壁80を備えている。傾斜壁80の外側端部は建物壁面Wに連結されており、傾斜壁80の内側端部には見込壁800が一体形成されている。このように開口枠は、上枠7、縦枠8、側枠(見込壁800を備えた傾斜壁80)から構成されている。図2、図3、図5A、図5Bに示すように、開口部全閉時の扉体1に対応する見込壁800は幅狭、扉体2に対応する見込壁800は幅広に形成されており、見込壁800の端面800A、800Bは段部状に形成されている。
【0016】
左右の縦枠8及びガイドレール3、4は、傾斜壁80の見込壁800よりも開口部幅方向において外方に位置しており、扉体1、2の幅方向両端部のガイドローラ5A、5B、6A、6B、5C、6Cが、縦枠8に支持されたガイドレール3、4内に受け入れられた状態において、扉体1の幅方向端部側(縦フレーム1C、1D)の見付面が傾斜壁80の見込壁800の端面800Aに対向近接している(図2、図4B、図5A)。扉体2(縦フレーム2C、2D)の見付面は傾斜壁80の見込壁800の端面800Bに対向近接している(図2、図5A)。
【0017】
図5Aに示すように、電動降下による開口部全閉時には、端面800Aが上側の扉体1の見付面、端面800Bが下側の扉体2の見付面にそれぞれ隙間を存して対向している。見込壁800には、端面800A、800Bに隣接して、気密部材としてのゴム部材801(端面800Aのゴム部材のみ図4Bに図示する)が設けてあり、ゴム部材801は、外力が作用しない状態において、端面800A、800Bより対向する見付面側に突出している。ゴム部材801は、電動降下時の全閉状態において、扉体1,2の見付面の高さ方向全体に亘って対向し、自重降下時の防煙全閉状態において、扉体1,2の見付面の高さ方向全体に亘って密着できるように、高さ方向に延出する長尺部材から形成されている。こうすることで、三方枠の左右の側部の遮煙機能を確保している。
【0018】
上枠7の上方には、開口部全開時に扉体1、2を収納する収納部70が形成されている。上枠7の上面には、開口幅方向に延出するゴム部材701が設けてあり、自重降下時の防煙全閉状態において、扉体1の見付面の上方部位(上フレーム1Aの見付面)に開口部の幅方向に亘って設けた当接部702がゴム部材701に密着して、三方枠の上側の遮煙機能を確保している。
【0019】
ガイドレール3、4は、平行状に垂直に延出しており、扉体2の幅方向両端部を案内するガイドレール4は、開口部の高さ方向全体に亘って延出しており、扉体1の幅方向両端部を案内するガイドレール3は、開口部全閉時における扉体1の位置に対応する開口部上半部の高さに亘って延出している。ガイドレール3、4の上端は、開口部上方の収納部70内にまで延出しており、開口部を開閉する際に扉体1、2を円滑に昇降案内するようになっている。
【0020】
図3に示すように、開口部全開時では、扉体1、2は収納部70内で平行状に収納されている。図2に示すように、開口部全閉時では、扉体1は上側に位置し、扉体2は下側に位置しており、扉体2の下端が着床すると共に、扉体2の上フレーム2Aの見付面(外側)と扉体1の下フレーム1Bの見付面(内側)とは隙間を存して対向している。扉体2の上フレーム2Aの見付面に開口幅方向に亘って設けた当接部20Aと、扉体1の下フレーム1Bの見付面に開口幅方向に亘って設けた当接部10Aとが接触して前記隙間を塞ぐことで、気密を保持している。
【0021】
扉体1、2は、昇降駆動機構によって上下動する。昇降駆動機構は、扉体1、2を吊持するチェーン90、91等の吊持部材、チェーン90を巻き取り・繰り出すための開閉機92、扉体1、2に設けられ、チェーン90、91が巻き掛けされるスプロケット93、94を備えている。
【0022】
扉体1はチェーン90によって吊持されており、開閉機92によってチェーン90を巻き取り、あるいは、繰り出すことで、扉体1を上下動させるようになっている。より具体的には、扉体1の幅方向の上面には左右のスプロケット93が設けてあり、扉体1を吊持するチェーン90がスプロケット93に巻回されている。スプロケット93に巻回されて上側に延出する平行状のチェーン90A、90Bにおいて、一方のチェーン90Aの端部は、開閉機92に連結されており、他方のチェーン90Bの端部(上端)は、収納部70の天井に固定されている。したがって、開閉機92により一方のチェーン90Aを引くことで、スプロケット93が上方に移動し、開閉機92により一方のチェーン90Bを繰り出すことで、扉体1の自重を助けにスプロケット93が下方に移動することで、扉体1が昇降する。
【0023】
扉体2は、チェーン91によって扉体1に連結されており、扉体1の上下動に連動して扉体2が上下動するようになっている。より具体的には、扉体1の幅方向の上面(上フレーム1A)には、スプロケット93より端部側に位置して、左右のスプロケット94が設けてあり、扉体2を吊持するチェーン91がスプロケット94に巻回されている。スプロケット94に巻回されて下側に延出する平行状のチェーン91A、91Bにおいて、一方のチェーン91Aの端部(下端)は、扉体2に連結されており、他方のチェーン91Bの端部(下端)は、上枠7のフレーム部材700に固定されている。したがって、扉体1の上下動に連動して、スプロケット94が動滑車として昇降することで、扉体2が扉体1に比べて2倍の速度で上下動する。いわば、扉体1が低速パネル、扉体2が高速パネルである。
【0024】
通常開閉時には、開閉機92の電動駆動によって、扉体1、2が上下動するようになっている。一方、本発明に係る扉装置は、防火扉として機能する。すなわち、扉装置は、図示しない煙感知器、制御部、自動閉鎖装置を備えている。開口部全開時において、煙感知器から防災信号が制御部に入力されると、制御部からの作動信号で自動閉鎖装置が通電されてチェーン90の繰り出しを規制している開閉機92のブレーキが解放されて、扉体1、2が自重でチェーンを繰り出しながら降下して、開口部を全閉する。
【0025】
扉体2の下端には、危害防止用の座板スイッチが設けてある。図6A、図6Bに示すように、座板スイッチは、上座板10と、上座板10に対して上下動自在に設けた下座板11と、を備え、上座板10に対して下座板11が上動することで上座板10と下座板11との間に設けたスイッチ12が入力されるように構成されている。座板スイッチに電気的に接続される信号線13は、開口部上端に位置して取り付けられたコードリール14内に巻き取り方向への付勢力を保持して巻装されており、扉体2の昇降駆動に伴って、信号線13がコードリール14に巻き取られ、あるいは、繰り出されるようになっている(図1参照)。信号線13は制御部に電気的に接続されており、座板スイッチからの検知信号を受信した制御部が開閉機92のブレーキを復帰させて扉体1、2の下降を停止させる。
【0026】
扉体2の下端部は、緩衝手段として例示するオイルダンパー15を介して上下動可能に支持された可動部20を備えており、座板スイッチ、すなわち、上座板10は、可動部20に固定されている。緩衝手段はオイルダンパーに限定されるものではなく、他のダンパーやバネ部材から緩衝手段を構成してもよい。
【0027】
図6A、図6Bに示すように、可動部20は、扉体2の下端部の下向き凹状の支持部21に吊持されている。より具体的には、可動部20は断面視において水平状の底片200と、対向状の立ち上がり片201と、立ち上がり片201の上端に形成された頂片202と、頂片202から垂下する垂下片203と、を備えており、立ち上がり片201、頂片202、垂下片203から下側が開放状の掛止部が形成されている。
【0028】
下向き凹状の支持部21は、断面視において水平状の頂片210と、対向状の垂下片211と、垂下片211の下端に形成された底片212と、底片212から立ち上がり形成された立ち上がり片213と、を備えており、垂下片211、底片212、立ち上がり片213から上側が開放状の被掛止部が形成されている。
【0029】
可動部20の掛止部を、支持部21の被掛止部に掛止させることで、可動部20は支持部21に対して吊持される。可動部20の掛止部と支持部21の被掛止部との高さ寸法は同じであり、可動部20を支持部21から吊持させた状態では、図6Aに示すように、可動部20の垂下片203の下端が支持部21の底片の上面212に当接しており、支持部21の立ち上がり片213の上端が可動部20の頂片202の下面に当接している。
【0030】
図5Aは、通常の電動降下による全閉時の扉体1、2を示す図であり、図6Aは、通常の電動降下による全閉時の扉体2の下端部を拡大して示す図である。電動降下する扉体1、2において、扉体2の下端の座板スイッチの下座板11が着床すると座板スイッチが入って扉体1、2の電動降下が停止して全閉状態となる。電動降下時には、扉体1、2は吊持されながら安全性等を考慮して比較的ゆっくりと降下するので、座板スイッチが入力されてからの扉体1、2の降下距離は極めて小さい。より具体的な態様例では、電動降下時に、扉体1、2が所定高さまで降下したことをリミットスイッチで検出し、検出後に扉体1、2の降下速度を低減して扉体1、2を低速で降下させる。したがって、電動降下による通常の全閉状態では、特に図6Aに示すように、扉体2の下端面から座板スイッチ(上座板10、下座板11、スイッチ12)が下方に突出した状態となる。
【0031】
座板スイッチは扉体2の下端から下方に突出した状態で、緩衝部材(オイルダンパー15)を介して支持されている。オイルダンパー15のピストンロッド150は、その下端に可動部20を吊持させた状態で下方に突出している。オイルダンパー15は、可動部20、座板スイッチ(上座板10、下座板11、スイッチ12)の重量を負担しながら下方に突出しており、外力が作用しない状態ではオイルダンパー15によってこの状態が維持される。座板スイッチに上方に向かう力が作用すると、オイルダンパー15の力と可動部20、座板スイッチ(上座板10、下座板11、スイッチ12)の重量との均衡が崩れて、オイルダンパー15のピストンロッド150は伸縮しながら上方に移動する。
【0032】
図5Aには、通常の全閉状態における扉体1、2のガイドローラ5A、5B、6A、6Bの位置が示してある。また、図4Bに示すように、通常の全閉状態では、扉体1(縦フレーム1C、1D)の見付面と開口枠側のゴム部材801との間には隙間が形成されている。扉体2(縦フレーム2C、2D)の見付面と開口枠側のゴム部材(図示せず)との間にも隙間が形成されている。
【0033】
図6A、図6Bに示すように、支持部21の垂下片211の高さ寸法は、被掛止部の立ち上がり片213の寸法よりも大きく設定されており、可動部20の水平状の底面200の下面に装着された座板スイッチに上向きの力が作用すると、可動部20が下向き凹状の支持部21内を上動できる空間が確保されている。したがって、扉体1、2の電動降下中、あるいは、防災信号の入力に基づく扉体1、2の自重降下中に、扉体2の下端の座板スイッチに障害物(人を含む)が当った場合には、可動部20がオイルダンパー15の力によって上動することで、クッションとして機能し、人や物への衝撃を緩和することができる。1つの態様では、可動部20は、30mmのストローク分移動が可能である。オイルダンパーのスプリング力は、自重降下時の扉体2の下端に障害物が接触した時の圧迫荷重を150N以下とするように設定されている。
【0034】
自重降下時には、扉体1、2が自重降下して行き、扉体2の下端の座板スイッチが作動した後も、可動部20を上動させながら扉体1、2が所定量降下するように構成されている。1つの態様では、自重降下時に座板スイッチが着床した場合には、遅延回路(例えば1秒)を介して扉体1,2の降下を停止させることで、電動降下時の全閉状態から、可動部20を上動させながら扉体1、2が所定量降下することを可能としている。
【0035】
図2、図3、図4A、図4B、図5A、図5Bに示すように、縦枠8の所定高さ部位には、押圧手段として例示する扉体押圧ローラ16が設けてある。押圧ローラ16は、縦枠8の所定高さ位置に固定されたプレート160に対して回転自在に設けてある。押圧手段は押圧ローラに限定されるものではなく、降下する扉体1、2の部分に接触して、扉体1、2を室外側に押し出すことができる部材であれば、他の部材、例えば接触のための湾曲面を備えた部材、でもよい。一方、図4A、図4B、図5A、図5Bに示すように、扉体1、2には、扉体1、2が通常の全閉位置(図2、図5A)からさらに降下しようとした時に押圧ローラ16に当接する被当接部17が設けてある。すなわち、押圧ローラ16が設けられる高さ位置と扉体1,2に設けられた被当接部17との相対的位置関係は、通常の全閉状態において、被当接部17の直ぐ下方に押圧ローラ16が位置するような位置関係であり、通常の全閉状態から可動部20を上動させながら扉体1、2が降下すると直ぐに押圧ローラ16に被当接部17が当接するような位置関係である。
【0036】
図4Bに示すように、被当接部17は、扉体1、2の幅方向の端面(縦フレーム1C、1D、2C、2Dの端面)に突設されており、垂直面とその下端側の傾斜面とからなるガイド面170を備えている。ガイド面170は、押圧ローラ16の上方に位置して、平面視において押圧ローラ16の室外側(開口枠のゴム部材801側)に寄っており、自重降下する扉体1、2の被当接部17のガイド面170の下方部位の傾斜面が押圧ローラ16に接触すると、扉体1、2は、ガイド面170の垂直面によって室外側に押し出されながら所定量(30mm)降下する。
【0037】
図5A、図5Bに示すように、ガイドレール3、4には、通常の全閉状態において、ガイドローラ5A、5B、6A、6Bが位置する高さの直ぐ下に位置して、室内側(押圧ローラ16により扉体1,2が押し出される方向)に膨出する膨出部3B、4A、4Bを備えている。扉体1,2の下方側のガイドローラ5B、6Bに対応する膨出部3B、4Bは、ガイドレール3、4のガイド溝を形成する対向状の側片の両方が押圧方向に膨出している。扉体2の上方側のガイドローラ6Aに対応する膨出部4Aは、ガイドレール4のガイド溝を形成する対向状の側片のうち室外側に位置する片のみが押圧方向に膨出している。図では、ガイドローラ5Aに対応する膨出部は図示されていないが、ガイドレール3にはガイドローラ6Aに対応する膨出部4Aと同様の膨出部が形成されている。
【0038】
したがって、ガイド面170によって扉体1、2が室外側に押し出される時には、扉体1、2の幅方向両端面に突設されたガイドローラ5A、5B、6A、6Bも、ガイドレール3、4の膨出部3B、4A、4Bに沿って室外側に移動するので、扉体1、2の室外側(ゴム部材801側)への変位及び所定量(1つの例では、30mm)の降下が円滑に行われる。扉体1、2が通常閉鎖位置からさらに降下することで、扉体1、2は防災閉鎖状態となる。
【0039】
防災閉鎖状態では、扉体1、2が室外側(ゴム部材801側)へ変位することで、扉体1、2の見付面が三方枠の見込壁800に設けたゴム部材801(扉体2の見付面に対応するゴム部材は図示せず)に圧接され、通常の全閉状態で形成されている扉体1、2の見付面と三方枠の見込壁800のゴム部材801との間の隙間が塞がれて、三方枠の左右の側部において、良好な遮煙性能を得ることができる。
【0040】
自重降下時に、扉体1、2が通常の全閉状態から可動部20を上動させながら所定量降下することで、扉体1の見付面に設けた当接部702が、上枠7に設けたゴム部材701に上方から圧接して、三方枠の上部において、良好な遮煙性能を得ることができる。
【0041】
自重降下時に、扉体1、2が通常の全閉状態から可動部20を上動させながら所定量降下する時には、図6Bに示すように、降下した扉体2がオイルダンパー15のピストンロッド150を上方に押し込むようにして縮小させ、座板スイッチの下座板11のみならず、支持部21の被掛止部の水平状の底片212が着床する。この時、可動部20の掛止部の水平状の頂片202は、支持部21の被掛止部の頂片210に当接している。防災閉鎖位置では、扉体2の下端は下座板11とその両側の底片212の3箇所で着床するので、扉体2の下部において、良好な遮煙性能を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
本発明は、防火機能を備えた扉装置に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】扉装置の全体正面図である。
【図2】開口部全閉時の扉装置の側面図である。
【図3】開口部全開時の扉装置の側面図である。
【図4A】扉装置の横断面図である。
【図4B】図4Aの部分拡大図である。
【図5A】電動降下時の全閉状態(通常の全閉状態)の扉体の側面図である。
【図5B】自重降下時の全閉状態(防災全閉状態)の扉体の側面図である。
【図6A】電動降下時の全閉状態(通常の全閉状態)の扉体の下方部位の部分図である。
【図6B】自重降下時の全閉状態(防災全閉状態)の扉体の下方部位の部分図である。
【符号の説明】
【0044】
1 扉体
10A 当接部(閉塞部材)
2 扉体
20A 当接部(閉塞部材)
20 可動部
21 支持部
10 上座板
11 下座板
12 スイッチ
15 オイルダンパー(緩衝手段)
16 押圧ローラ(押圧手段)
17 被当接部
701 ゴム部材(上方気密部材)
702 当接部
801 ゴム部材(側方気密部材)



【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊持部材により吊持された1枚以上の扉体を電動昇降させることで開口部を開閉し、火災時には当該1枚以上の扉体が自重降下して開口部を閉鎖する扉装置において、
前記扉体は、幅方向両端面に突設したガイド部材が開口枠に設けたガイドレールに沿って上下に案内されることで昇降し、
開口部全閉時に下端が着床する扉体の当該下端部は、上動位置と下動位置との間で上下動可能なように緩衝手段を介して支持された可動部を備えており、
可動部の下面には障害物検知を行う座板スイッチを設けることで、降下時に座板スイッチに障害物が当たった場合には扉体の降下を停止させるように構成され、
開口枠には、全閉状態の扉体の見付面と対向する部位に位置して高さ方向に延出する側方気密部材が設けてあり、
電動降下時の全閉状態では、座板スイッチの下面が着床した状態で前記可動部は下動位置にあると共に、扉体の見付面と側方気密部材との間には隙間が形成されており、
開口枠には、前記全閉状態から扉体が下動した時に当該扉体に接触して扉体を側方気密部材側へ押圧する押圧手段が設けてあり、
自重降下時には、扉体は、前記可動部が上動位置に移動することで、電動降下時の全閉状態からさらに所定量降下すると同時に、前記押圧手段により扉体を側方気密部材側へ押圧して扉体の見付面を側方気密部材に圧接させる、
遮煙機能を備えた扉装置。
【請求項2】
前記ガイドレールには、電動降下時の全閉状態におけるガイド部材の直下に位置して押圧手段による押圧方向に膨出する膨出部が形成されており、自重降下時には、前記押圧手段により扉体を側方気密部材側へ押圧してガイド部材を前記膨出部に移動させることで扉体の見付面を側方気密部材に圧接させる、
請求項1に記載の遮煙機能を備えた扉装置。
【請求項3】
前記1枚以上の扉体は、全閉状態で上側に位置する第1扉体と、下側に位置する第2扉体からなり、前記可動部は、前記第2扉体の下端部に設けてあり、前記第1扉体と前記第2扉体は連動して昇降するように構成されており、
前記ガイドレールは、前記第1扉体の幅方向両端部を案内する第1ガイドレールと、前記第2扉体の幅方向両端部を案内する第2ガイドレールと、からなり、
前記側方気密部材は、全閉状態の第1扉体の見付面と対向する第1側方気密部材と、全閉状態の第2扉体の見付面と対向する第2側方気密部材と、からなり、
全閉状態において、前記第1扉体の下端部と前記第2扉体の上端部とは対向すると共に、対向間の隙間は前記第1扉体の下端部及び/あるいは前記第2扉体の上端部に設けた閉塞部材によって塞がれている、
請求項1、2いずれかに記載の遮煙機能を備えた扉装置。
【請求項4】
開口部全閉時に上端部が開口枠の上枠より上方に位置する扉体の当該上端部には当接部が形成されており、
上枠には開口部の幅方向に延出する上方気密部材が延設されており、
電動降下時の全閉状態では、前記当接部が、前記上方気密部材の上方に位置しており、
自重降下時には、扉体が電動降下時の全閉状態から所定量降下することで、前記当接部が前記上方気密部材に圧接する、
請求項1乃至3いずれかに記載の遮煙機能を備えた扉装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6A】
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【図6B】
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【公開番号】特開2009−270301(P2009−270301A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120517(P2008−120517)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(307038540)三和シヤッター工業株式会社 (273)
【Fターム(参考)】