説明

遮熱調光機能を有する構成体及び遮熱調光機能を有する合わせガラス

【課題】電圧を印加することにより赤外線の透過率が制御できる遮熱調光機能を有する構成体及び遮熱調光機能を有する構成体を用いた遮熱調光機能を有する合わせガラスを提供する。
【解決手段】透明導電層、エレクトロクロミック層、電解質層及び透明導電層が順次積層された遮熱調光機能を有する構成体であって、前記透明導電層は、導電性繊維を含有し、かつ、前記エレクトロクロミック層は、電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質を含有する遮熱調光機能を有する構成体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧を印加することにより赤外線の透過率が制御できる遮熱調光機能を有する構成体及び遮熱調光機能を有する構成体を用いた遮熱調光機能を有する合わせガラスに関する。
【0002】
電圧を印加することにより光の透過率が変化する調光体は、広く用いられている。調光体を建築物等や、電光板等の表示装置に応用するため、調光体に関する検討が重ねられてきた。
調光体は、液晶材料を用いた調光体と、エレクトロクロミック材料を用いた調光体とに大別される。なかでも、エレクトロクロミック材料を用いた調光体は、液晶材料を用いた調光体に比べて光散乱が少ない。また、エレクトロクロミック材料を用いた調光体は、偏光が少ない。
【0003】
エレクトロクロミック材料は、無機エレクトロクロミック材料と、有機エレクトロクロミック材料とが挙げられる。また、有機エレクトロクロミック材料は、低分子量の有機エレクトロクロミック材料と、高分子量の有機エレクトロクロミック材料とが挙げられる。
【0004】
従来のエレクトロクロミック材料を用いた調光体は、対向する一対の電極基板の間に、エレクトロクロミック層と電解質層とが挟持されていた。例えば、特許文献1及び特許文献2には、無機酸化物を含有するエレクトロクロミック層、イオン伝導層、無機酸化物を含有するエレクトロクロミック層の3層が順次積層された積層体が、2枚の導電性基板間に挟持された構造を有する調光体が開示されている。また、特許文献3及び特許文献4には、対向する一対の電極基板の間に、有機エレクトロクロミック材料を含有するエレクトロクロミック層と電解質層とが挟持された構造を有する調光体が開示されている。
【0005】
近年、自動車等の車内の温度を制御するために、調光体をルーフガラス等の窓ガラスに用いることが提案されている。このような調光体を用いることにより、窓ガラスの光線透過率が制御できる。
しかしながら、従来の調光体は、電極基板の透明導電層として、酸化インジウムスズ(以下、ITOとする)等の赤外線吸収率が高い材料が使用されていた。透明導電層として、ITO等の赤外線吸収率が高い材料が使用されると、電圧の印加の有無に関わらず、透明導電層が赤外線を遮断してしまう。従って、透明導電層が赤外線を遮断してしまうため、赤外線透過率を任意に制御することが困難であった。
【特許文献1】特開2004−062030号公報
【特許文献2】特開2005−062772号公報
【特許文献3】特表2002−526801号公報
【特許文献4】特表2004−531770号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、電圧を印加することにより赤外線の透過率が制御できる遮熱調光機能を有する構成体及び遮熱調光機能を有する構成体を用いた遮熱調光機能を有する合わせガラスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、透明導電層、エレクトロクロミック層、電解質層及び透明導電層が順次積層された遮熱調光機能を有する構成体であって、前記透明導電層は、導電性繊維を含有し、かつ、前記エレクトロクロミック層は、電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質を含有する遮熱調光機能を有する構成体である。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明の遮熱調光機能を有する構成体は、透明導電層、エレクトロクロミック層、電解質層及び透明導電層が順次積層されている。
【0009】
上記透明導電層は、エレクトロクロミック層に電圧を印加するための導電層である。本発明において、上記透明導電層は、導電性繊維を含有する。上記透明導電層はITOを含有しないため、上記構成体は電圧を印加することにより赤外線透過率を制御できる。
なお、本明細書において透明とは、400〜800nmの波長領域における全光線透過率が60%以上であることを意味する。
【0010】
上記透明導電層は、導電性繊維を含有する。上記導電性繊維は、例えば、金、銀、クロム、銅、タングステン、アルミニウム等の金属繊維や、酸化スズ、酸化亜鉛等の金属酸化物繊維等が挙げられる。
【0011】
上記透明導電層中の導電性繊維の含有量の好ましい下限は10重量%、好ましい上限は70重量%である。上記導電性繊維の含有量が10重量%未満であると、充分な導電性が得られず、70重量%を超えると、透明導電層の透明性が低下することがある。
【0012】
上記透明導電層を形成する方法は特に限定されず、例えば、上記導電性繊維をバインダー樹脂中に分散させた組成物を基板に塗工し、乾燥させる方法等が挙げられる。
【0013】
上記バインダー樹脂は、透明な樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。なかでも、接着力が優れることから、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0014】
上記透明導電層の表面抵抗の好ましい下限が0.5Ω/□、好ましい上限が200Ω/□である。上記表面抵抗が0.5Ω/□未満であると、エレクトロクロミック層が劣化することがあり、上記表面抵抗が200Ω/□を超えると、調光体の調光機能が発現しないことがある。
【0015】
上記エレクトロクロミック層は、上記透明導電層が電圧を印加することにより、赤外線透過率が変化する物質を含有する。
【0016】
上記エレクトロクロミック層は、上記電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質のみで構成されるエレクトロクロミック層であってもよく、上記電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質と、バインダー樹脂とを含有する組成物で構成されるエレクトロクロミック層でもよい。
上記バインダー樹脂は、透明な樹脂であれば特に限定されないが、例えば、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン等が挙げられる。なかでも、接着力が優れることから、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0017】
上記電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質は、例えば、酸化タングステン、酸化イリジウム、酸化チタン、酸化インジウム、酸化バナジウム、酸化モリブデン等の金属酸化物や、ポリピロール化合物、ポリアニリン化合物、ポリアセチレン化合物、ポリチオフェン化合物、ポリアセン化合物等の導電性高分子等が挙げられる。なかでも、物質の安定性が優れることから、酸化タングステン、ポリアセチレン化合物が好ましい。さらに、ポリアセチレン化合物は、芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物であることが好ましい。
【0018】
上記芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物は、エレクトロクロミック性と、導電性とを有する。更に、上記芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物は容易にフィルム等に成形できる。従って、芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物を用いれば、優れた調光性能を有するエレクトロクロミック層が形成できる。また、芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物は、構造が変化することにより、吸収特性の変化を示す。その結果、吸収スペクトルが近赤外線の波長領域にも及ぶため、調光体は広い波長領域について優れた調光性能を有する。
【0019】
上記芳香族側鎖を有するポリアセチレン化合物は特に限定はされないが、例えば、一置換又は二置換の芳香族を側鎖に有するポリアセチレン等が好適である。
上記芳香族側鎖を構成する置換基は特に限定はされないが、例えば、フェニル、p−フルオロフェニル、p−クロロフェニル、p−ブロモフェニル、p−ヨードフェニル、p−ヘキシルフェニル、p−オクチルフェニル、p−シアノフェニル、p−アセトキシフェニル、p−アセトフェニル、ビフェニル、o−(ジメチルフェニルシリル)フェニル、p−(ジメチルフェニルシリル)フェニル、o−(ジフェニルメチルシリル)、p−(ジフェニルメチルシリル)フェニル、o−(トリフェニルシリル)フェニル、p−(トリフェニルシリル)フェニル、o−(トリルジメチルシリル)フェニル、p−(トリルジメチルシリル)フェニル、o−(ベンジルジメチルシリル)フェニル、p−(ベンジルジメチルシリル)フェニル、o−(フェネチルジメチルシリル)フェニル、p−(フェネチルジメチルシリル)フェニル等のフェニル基や、ビフェニル基や、1−ナフチル、2−ナフチル、1−(4−フルオロ)ナフチル、1−(4−クロロ)ナフチル、1−(4−ブロモ)ナフチル、1−(4−ヘキシル)ナフチル、1−(4−オクチル)ナフチル等のナフチル基や、ナフタレン基や、1−アントラセン、1−(4−クロロ)アントラセン、1−(4−オクチル)アントラセン等のアントラセン基や、1−フェナントレン等のフェナントレン基や、1−フルオレン等のフルオレン基や、1−ペリレン等のペリレン基等が挙げられる。
【0020】
上記電解質層は、イオンを伝導する。
上記電解質層は特に限定されず、例えば、酸化タンタル、酸化ニオブ、酸化チタン等の無機誘電体薄膜が挙げられる。
また、上記電解質として、支持電解質を有機溶媒に溶解した液層電解質を用いて、上記電解質層を形成してもよい。また、支持電解質を高分子化合物に分散させた高分子電解質を用いて、上記電解質層を形成してもよい。
上記支持電解質は特に限定されず、例えば、無機イオン塩、4級アンモニウム塩、環状4級アンモニウム塩等が挙げられる。上記無機イオン塩は特に限定されず、例えば、アルカリ(土類)金属塩等が挙げられる。また、上記アルカリ(土類)金属塩は特に限定されず、例えば、テトラフルオロ硼酸塩、ヘキサフルオロリン酸塩、過塩素酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩、ヘキサフルオロ砒酸塩、トリフルオロスルホン酸イミド塩、ハロゲン化塩等が挙げられる。
上記有機溶媒は特に限定されず、例えば、アセトニトリル、ニトロメタン、炭酸プロピレン、炭酸エチレン、炭酸ブチレン、炭酸ジエチル、炭酸ジメチル、炭酸メチルエチル、γ-ブチロラクトン等のエステル類や、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン等の置換テトラヒドロフラン類や、1,3−ジオキソラン、4,4−ジメチル−1,3−ジオキソラン、t−ブチルエーテル、イソブチルエーテル、1,2−ジメトキシエタン、1,2−エトキシメトキシエタン等のエーテル類や、エチレングリコール、ポリエチレングリコールスルホラン、3−メチルスルホラン、アセトニトリル、蟻酸メチル、酢酸メチル、N−メチルピロリドン、ジメチルホルムアミド等が挙げられる。
上記高分子化合物は特に限定されず、例えば、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフロロエチレン、フッ化ビニリデン−六フッ化プロピレン共重合体、ポリ三フッ化エチレン、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、エチレン−酢酸ビニル共重合体、ポリエチレンオキサイド、ポリスチレンスルホン酸、ポリグリコール骨格を有する高分子等が挙げられる。
なかでも、柔軟な構成体が得られることから、上記電解質層は高分子電解質を用いて形成することが好ましい。特に、接着力が優れることから、上記高分子化合物は、ポリビニルアセタール、又は、エチレン−酢酸ビニル共重合体が好ましい。
【0021】
本発明の遮熱調光機能を有する構成体は、ポリビニルアセタール樹脂層、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層等の最外層を有していてもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂層、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層等の最外層を有することで、例えば、中間膜として用いた場合にガラスへの接着性が向上する。
【0022】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化して得られるポリビニルアセタール樹脂であれば特に限定されないが、ポリビニルブチラール樹脂が好適である。また、必要に応じて2種以上のポリビニルアセタール樹脂を併用してもよい。
上記ポリビニルアセタール樹脂のアセタール化度の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は85モル%であり、より好ましい下限は60モル%、より好ましい上限は75モル%である。
【0023】
上記ポリビニルアセタール樹脂は、ポリビニルアルコールをアルデヒドでアセタール化することにより製造できる。
また、上記ポリビニルアルコールの重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は3000である。上記重合度が200未満であると、合わせガラスの耐貫通性が低下することがある。上記重合度が3000を超えると、ポリビニルアセタール樹脂層の成形が困難となることがある。上記重合度のより好ましい下限は500、より好ましい上限は2000である。
【0024】
上記アルデヒドは特に限定されないが、一般には、炭素数が1〜10のアルデヒドが好適に用いられる。上記炭素数が1〜10のアルデヒドは特に限定されず、例えば、n−ブチルアルデヒド、イソブチルアルデヒド、n−バレルアルデヒド、2−エチルブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−オクチルアルデヒド、n−ノニルアルデヒド、n−デシルアルデヒド、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、ベンズアルデヒド等が挙げられる。なかでも、n−ブチルアルデヒド、n−ヘキシルアルデヒド、n−バレルアルデヒドが好ましく、炭素数が4のn−ブチルアルデヒドがより好ましい。これらのアルデヒドは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0025】
上記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂は、酢酸ビニル成分を18〜35重量%含有することが好ましい。上記酢酸ビニル成分の含有量が18重量%未満であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層の透明性が低下することがある。上記酢酸ビニル成分の含有量が35重量%を超えると、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層の引っ張り強度が低下することがある。
【0026】
また、上記エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂のメルトインデックス(MI)は、1〜200であることが好ましい。上記メルトインデックスが1未満であると、エチレン−酢酸ビニル共重合体樹脂層の流動性が低下することがある。上記メルトインデックスが200を超えると、合わせガラスの耐衝撃性が低下することがある。
【0027】
本発明の遮熱調光機能を有する構成体を製造する方法は特に限定されない。例えば、酸化タングステン粒子や導電性高分子等を適当な溶媒に分散又は溶解させ、溶液を作製する。次いで、得られた溶液と、バインダー樹脂とを混合した後、エレクトロクロミック層を形成し、更に電解質層を形成する。その後、導電性繊維を分散させた溶液を、エレクトロクロミック層と電解質層との表面に塗工し、透明導電層を形成する方法等が挙げられる。
上記塗工の方法は特に限定されず、例えば、スピンコート法、キャスト法等の従来公知の方法を用いることができる。
【0028】
本発明の遮熱調光機能を有する構成体の厚みは、0.2〜3.0mmであることが好ましい。
【0029】
また、少なくとも一対のガラス間に、本発明の遮熱調光機能を有する構成体を介在させ、一体化させることにより、遮熱調光機能を有する合わせガラスを製造することができる。本発明の遮熱調光機能を有する構成体を用いてなる遮熱調光機能を有する合わせガラスもまた、本発明の1つである。
【0030】
上記ガラスは特に限定されず、例えば、フロート板ガラス、磨き板ガラス、型板ガラス、網入り板ガラス、線入り板ガラス、熱線吸収板ガラス、着色された板ガラス等の無機ガラス板や、アクリル板、ポリカーボネート板等の有機ガラス板等が挙げられる。これらは単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。
【0031】
本発明の遮熱調光機能を有する合わせガラスの製造方法は特に限定されず、既知の方法を用いることができる。例えば、本発明の遮熱調光機能を有する構成体の両側を、ガラス板で挟み込み、熱圧着し、遮熱調光機能を有する合わせガラスを製造する方法等が挙げられる。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、電圧を印加することにより赤外線の透過率が制御できる遮熱調光機能を有する構成体及び遮熱調光機能を有する構成体を用いた遮熱調光機能を有する合わせガラスを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0033】
以下に本発明の実施例を挙げて更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0034】
(実施例1)
金属タングステン1gを過剰の過酸化水素水中に分散させ、酸化タングステン溶液とした。得られた酸化タングステン溶液に白金黒付き白金箔を浸し、過剰の過酸化水素水を分解した。さらに蒸留水を加えて、100mlの酸化タングステン溶液を作製し、酸化タングステン溶液を窒素置換した。
次いで、ガラス板(5cm×5cm)上に、導電性繊維として、銀ワイヤーで透明導電層を形成した透明導電ガラスに電極を付けて、酸化タングステン溶液に浸し、電析反応(電流密度:1.5mA/cm、5min、北斗電工社製「ガルバノスタット(HABF5001)」)させた。透明導電層上に酸化タングステン層を形成し、エレクトロクロミック層が形成されたガラス板を得た。
次いで、過塩素酸リチウム0.2mol/lを含むプロピレンカーボネート溶液50mlと、ポリエチレングリコール(分子量30万)2gとを混合して電解質を調製した。そして、エレクトロクロミック層が形成されたガラス板と、銀ワイヤーで透明導電層を形成した透明導電ガラスとの周囲をシール剤(ヘンケル社製「ロックタイト3106」)で貼り合わせ、更に真空充填法にて電解質を注入することにより、エレクトロクロミックセルを得た。
【0035】
(比較例1)
ITO(10Ω/□)で形成された透明導電層を有する透明導電ガラスを使用した以外は、実施例1と同様にして、エレクトロクロミックセルを得た。
【0036】
(評価)
実施例及び比較例で製造したエレクトロクロミックセルについて、以下の方法により評価を行った。結果を表1に示した。
【0037】
(1)透過率測定
得られたエレクトロクロミックセルについて、各波長(800nm、1000nm、1200nm、1500nm、2000nm)の光の透過率を、分光光度計(島津製作所社製「UV−3101PC」)を用いて測定した。
なお、測定は、電圧を印加せずエレクトロクロミックセルが着色している場合(着色時)と、2.0Vの電圧を印加してエレクトロクロミックセルが消色している場合(消色時)について行った。
【0038】
表1に示すように、比較例1で得られたエレクトロクロミックセルでは、着色時、消色時とも1000nm以上の光の透過はほとんど確認されなかった。実施例1で得られたエレクトロクロミックセルでは、消色時には光が透過するが、着色時には光が透過しないという遮熱調光機能を示した。
【0039】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明によれば、電圧を印加することにより赤外線の透過率が制御できる遮熱調光機能を有する構成体及び遮熱調光機能を有する構成体を用いた遮熱調光機能を有する合わせガラスを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明導電層、エレクトロクロミック層、電解質層及び透明導電層が順次積層された遮熱調光機能を有する構成体であって、
前記透明導電層は、導電性繊維を含有し、かつ、
前記エレクトロクロミック層は、電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質を含有する
ことを特徴とする遮熱調光機能を有する構成体。
【請求項2】
電圧を印加することにより赤外線透過率が変化する物質は、酸化タングステン、又は、ポリアセチレン化合物であることを特徴とする請求項1記載の遮熱調光機能を有する構成体。
【請求項3】
請求項1又は2記載の遮熱調光機能を有する構成体を用いてなることを特徴とする遮熱調光機能を有する合わせガラス。