説明

遮蔽装置

【課題】遮蔽スクリーンを安定かつ迅速に開閉し得る遮蔽装置を提供する。
【解決手段】
一対の第1プーリ48および第3プーリ52に、夫々、第1無端ベルト40,40が巻き掛けられる。また、第2プーリ50および第4プーリ54には、第2無端ベルト42が巻き掛けられる。第1プーリ48,48および第2プーリ50は、巻取りローラ44の回転軸46に固定される。巻取りローラ44には、遮蔽スクリーン56の上端部が取付けられる。一方、遮蔽スクリーン56の下端部に設けたスクリーンバー58は、係合部材60,60を介して第1無端ベルト40,40に固定される。そして、エアシリンダ62により第2無端ベルト42が駆動することで、第1無端ベルト40,40が同期的に駆動して、遮蔽スクリーン56が開閉される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、遮蔽装置に関し、更に詳細には、例えば溶接工場等に配設され、溶接装置と作業者との間をスクリーンにより遮蔽して、スパッタやアーク光等の有害要因から作業者を保護する遮蔽装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば溶接工場では、作業者が溶接現場の適宜位置にワークをセットし、溶接ロボットによりワークを自動で溶接するようになっている。ワークの溶接時には、高温のスパッタが周囲に飛散して、作業者が該スパッタにより火傷をする危険がある。また、溶接時に生ずる閃光(アーク光)は、人体に有害な紫外線を含むため、アーク光から作業者の視界を保護する必要もある。そこで、溶接ロボットと作業者との間にスクリーンを備えた遮蔽装置を配設し、溶接時には遮蔽装置によりスクリーンを閉じて、作業者と溶接ロボットとの間を物理的に遮蔽し、これにより作業者をスパッタやアーク光から保護するようになっている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
図10に示す従来の遮蔽装置10は、一対のサイドフレーム12,12の上部に巻取りローラ14が回転自在に配設され、該巻取りローラ14に遮蔽用スクリーン16の一端部(上端部)が固定されて巻取り可能となっている。前記スクリーン16の他端部(下端部)は、サイドフレーム12,12に対し固定されずフリー状態になっている。前記巻取りローラ14は、一方(図10では左側)のサイドフレーム12の上部に設けたモータ18の回転軸(図示せず)に連結され、該モータ18により巻取りローラ14が回転されるようになっている。巻取りローラ14によってスクリーン16が巻き取られることで、該スクリーン16の下端部が上昇し、サイドフレーム12,12における開口部12aを開放させるようになっている。そして、スクリーン16の下部に設けた被検知部20を、サイドフレーム12の上部に設けたリミットスイッチ22が検知すると、図示しないブレーキによりモータ18が停止されて、巻取りローラ14はスクリーン16を開放させた状態に保持される。
【0004】
一方、巻取りローラ14を逆回転させると、スクリーン16が送り出されてサイドフレーム12,12の開口部12aを閉成する。そして、スクリーン16の被検知部20を、サイドフレーム12の下部に設けたリミットスイッチ23が検知すると、前記モータ18が停止してスクリーン16の送り出しを終了させる。これにより、前記開口部12aはスクリーン16により閉成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平8−60959号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、図10に示す遮蔽装置10では、スクリーン16の下端部がフリー状態になっているため、該スクリーン16が下降時にバタつき易い難点があった。このバタつきが生じると、スクリーン16の下端部が昇降時にサイドフレーム12,12等に引っ掛かって動作不良を起こしたり、モータ18に大きな負荷が掛かって故障したりする要因となっていた。また、スクリーン16の下端部のバタつきで、リミットスイッチ22,23による被検知部20の検知誤差を生じ易くなる。このため、スクリーン16が巻き取られたにも拘わらずモータ18が停止せず、スクリーン16やモータ18が損傷することもあった。更に、スクリーン16を高速で下降させると、該スクリーン16の下端部は更に大きくバタついて、その下端部が引っ掛かり易くなる。そのため、スクリーン16の昇降速度を大きくすることが困難となり、スクリーン16の開閉動作に時間が掛かる難点も指摘される。
【0007】
そこで、本発明は、従来の技術に係る遮蔽装置に内在している前記課題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、遮蔽スクリーンを安定かつ高速で開閉し得る遮蔽装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決し、所期の目的を達成するため、本発明に係る遮蔽装置は、
回転軸に同軸的に固定した巻取りローラと、
前記巻取りローラの両端において前記回転軸に夫々固定した一対の第1回転体と、
前記一対の第1回転体の一方の外側において、前記回転軸に固定した第2回転体と、
前記一対の第1回転体と離間して対応的に配置され、前記回転軸と平行にフレームに回転自在に軸支した一対の第3回転体と、
前記第2回転体と離間して配置され、前記回転軸と平行にフレームに回転自在に軸支した第4回転体と、
前記一対の第1回転体および第3回転体に対応的に巻き掛けた一対の第1無端索体と、
前記第2回転体および第4回転体に巻き掛けた第2無端索体と、
前記巻取りローラに一端部が固定されると共に、他端部が前記一対の第1無端索体に夫々固定されて、巻取りローラおよび第1無端索体の駆動により開閉される遮蔽スクリーンと、
前記第2無端索体に隣接して配置され、この第2無端索体に固定された状態で直線的に進退移動するリニアランナを備えるリニアアクチュエータとからなり、
前記第1回転体の直径が前記第2回転体の直径よりも大径に設定されていることを特徴とする。
請求項1の発明によれば、遮蔽スクリーンの他端部が一対の第1無端索体に固定されるので、開閉時に遮蔽スクリーンの他端部が第1無端索体に保持されて、該他端部がバタつくのを防止することができる。従って、遮蔽スクリーンを安定に開閉することができ、遮蔽装置が動作不良を起こすのを抑制し得る。また、一対の第1無端索体が同期して駆動するので、遮蔽スクリーンをより安定に開閉することが可能となる。しかも、第2回転体より大径の第1回転体を採用することで、第1無端索体の駆動速度(周速)を第2無端索体より大きくすることができ、遮蔽スクリーンの迅速な開閉を実現し得る。
【0009】
請求項2に係る遮蔽装置では、前記遮蔽スクリーンの他端部にスクリーンバーが設けられ、該スクリーンバーは、前記一対の第1無端索体に設けられた係合部材を介して該第1無端索体に係脱自在に固定される。
請求項2の発明によれば、遮蔽スクリーンを係合部材を介して第1無端ベルトに固定し得るので、遮蔽スクリーンの下端部がバタつくのを防止し得る。
【0010】
請求項3に係る遮蔽装置では、係合部材は、該係合部材に前記スクリーンバーが係合した際に前記遮蔽スクリーンにテンションを付与する弾性部材を備えている。
請求項3の発明によれば、弾性部材が遮蔽スクリーンにテンションを付与するので、開閉時に遮蔽スクリーンが撓むのを抑制して、遮蔽スクリーンを安定して開閉することができる。
【0011】
請求項4に係る遮蔽装置では、係合部材は、前記スクリーンバーと係合する係合姿勢から該スクリーンバーとの係合が解除される解除姿勢に回動可能な係合片と、該係合片および前記第1無端索体に連結され、閉成時の遮蔽スクリーンのスクリーンバーが障害物に接触して停止した際に、該第1無端索体と共に移動して該係合片を解除姿勢まで回動させる解除手段とを備えている。
請求項4の発明によれば、スクリーンバーが障害物に接触した際に、解除手段が係合片を回動させて係合片とスクリーンバーとの係合を解除させるので、作業者等が誤って遮蔽スクリーンに接触した場合に怪我をするのを防止し得る。また、スクリーンバーが障害物に接触した際に、スクリーンバーや第1無端索体に大きな負荷が加わって、これらの部材が損傷するのを回避することができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明に係る遮蔽装置によれば、遮蔽スクリーンを安定かつ高速で開閉させることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例に係る遮蔽装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】実施例に係る遮蔽装置をサイドフレームおよびトップフレームを取り外した状態で示す概略斜視図である。
【図3】図7のIII−III線横断面図であって、一方のサイドフレームの内部構造を示している。
【図4】実施例に係る遮蔽装置の要部である第1プーリと第2プーリの直径差を示す拡大斜視図である。
【図5】実施例に係る遮蔽装置をサイドフレームおよびトップフレームを取り外した状態で示す側面図である。
【図6】実施例に係る遮蔽装置のガイド機構を示す分解斜視図である。
【図7】実施例に係る遮蔽装置の側面図である。
【図8】実施例に係る遮蔽装置の係合部材を示す斜視図である。
【図9】係合部材が作動する様子を段階的に示す拡大図で、(a)はスクリーンバーが障害物に引っ掛かった状態、(b)は係合片が回動する状態、(c)はスクリーンバーが係合片から外れた状態を夫々示している。
【図10】従来の遮蔽装置の一例を示す概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、本発明に係る遮蔽装置につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。なお、以下の説明において「上」、「下」、「左」、「右」とは、図1を基準とした場合の各方向性を意味する。
【実施例】
【0015】
図1は、実施例に係る遮蔽装置30の全体構成を示す斜視図、図2は、装置フレームから遮蔽装置30を取り外した状態で示す斜視図である。遮蔽装置30は、一対のサイドフレーム32,32と、両サイドフレーム32,32間に架設されたトップフレーム34とを備えている。これらサイドフレーム32,32およびトップフレーム34により、前後方向に開口する矩形開口部38が画成されている。前記トップフレーム34およびサイドフレーム32,32の内部には、後述する第1,第2無端ベルト40,42や巻取りローラ44等を収容可能な空間が画成されている(図3参照)。
【0016】
前記トップフレーム34の内部には、図4に示すように、左右方向へ水平に延在する回転軸46が正逆方向に回転自在に配設され、該回転軸46に巻取りローラ44が同軸的に固定されている。前記巻取りローラ44は、左右方向に所定長さで延在する筒状体で、前記回転軸46と共に正逆方向へ回転するようになっている。図2に示すように、前記巻取りローラ44の左右両端には、前記回転軸46に夫々固定された第1プーリ(第1回転体)48,48が設けられている。この第1プーリ48は、前記巻取りローラ44と略同径に設定されている。また、前記回転軸46における左側(一方)の第1プーリ48の外側に、第2プーリ(第2回転体)50が設けられている。図4に示すように、この第2プーリ50は、前記第1プーリ48より小径のものが採用される。すなわち、第1プーリ48の直径は、第2プーリ50の直径より大径に設定されている。
【0017】
図2に示すように、両サイドフレーム32,32の下側内部には、前記第1プーリ48と同径の第3プーリ(第3回転体)52,52が該第1プーリ48,48と離間して対応的に設けられている。この第3プーリ52は、前記サイドフレーム32の内部において前記回転軸46と平行に軸支されており、正逆方向へ回転し得るよう構成されている。また、左側(一方)のサイドフレーム(フレーム)32における略中央内部には、前記第2プーリ50と同径の第4プーリ(第4回転体)54が該第2プーリ50と離間して対応的に設けられている。この第4プーリ54も、サイドフレーム32に対し回転軸46と平行に軸支されて、正逆方向へ回転し得るようになっている。
【0018】
第1プーリ48および第3プーリ52の夫々には、上下方向に延在する第1無端ベルト(第1無端索体)40,40が対応的に巻き掛けられている。この第1無端ベルト40は、前記サイドフレーム32の内部において上下方向の略全体に亘って延在しており、第1および第3プーリ48,52が回転することで駆動するよう構成される。ここで、両第1プーリ48,48は、共通の回転軸46に固定されているので、2つの第1無端ベルト40,40は同期して駆動するようになっている。前記第2プーリ50および第4プーリ54には、上下方向に延在する第2無端ベルト(第2無端索体)42が巻き掛けられており、第2プーリ50および第4プーリ54の回転により、第2無端ベルト42が駆動するようになっている。この第2無端ベルト42は、上下方向の延在長さが前記第1無端ベルト40より短く(略半分)設定されている。
【0019】
前記巻取りローラ44には、前記矩形開口部38を開閉可能な遮蔽スクリーン56の上端部(一端部)が固定されている。遮蔽スクリーン56の下端部(他端部)には、左右方向に延在する丸棒状のスクリーンバー58が取付けられている。このスクリーンバー58の左右方向の延在長さは、両第1無端ベルト40,40の離間間隔より僅かに大きく設定されており、スクリーンバー58の左右両端部が後述する係合部材60,60に係合することで、前記遮蔽スクリーン56の下端部が両第1無端ベルト40,40に固定されるようになっている。
【0020】
左側のサイドフレーム32の内部には、前記第2無端ベルト42の後側に隣接してエアシリンダ(リニアアクチュエータ)62が設けられている。図5に示すように、前記エアシリンダ62は、上下方向に延在するシリンダ部64と、該シリンダ部64に対し上下方向にスライド可能に配設されたロッド部66と、該ロッド部66の上端に設けられて上下方向に直線的に進退移動するリニアランナ68とを備えている。前記シリンダ部64は、前記サイドフレーム32に対し上下に離間する固定部材64a,64aを介して固定されている。前記ロッド部66は、シリンダ部64の内部に収容された下限位置(ストロークエンド)から、該ロッド部66の略全体が外部に露出した上限位置(ストロークエンド)までスライドし得るよう構成されている。なお、前記シリンダ部64の外側面には、上下に離間して一対の上限リードスイッチ32aおよび下限リードスイッチ32bが設けられている。上限リードスイッチ32aは、上限位置に到達したロッド部66を検知して、遮蔽装置30の作動を制御する制御装置(図示せず)に検知信号を送信するようになっている。同様に、前記下限リードスイッチ32bは、下限位置に到達したロッド部66を検知して、前記制御装置に検知信号を送信する。上限リードスイッチ32aおよび下限リードスイッチ32bとしては、有接点スイッチ、無接点スイッチの何れも採用することができる。前記リニアランナ68は、前記第2無端ベルト42における後側の直線部に固定されている。そして、前記ロッド部66が上下にスライド移動することでリニアランナ68が進退移動し、これにより第2無端ベルト42を駆動させるようになっている(図5参照)。
【0021】
ここで、エアシリンダ62により第2無端ベルト42が駆動されると、前記第2プーリ50を介して回転軸46が回転される。そして、この回転軸46に設けられた両第1プーリ48,48および第3プーリ52,52が回転し、左右の第1無端ベルト40,40が同期的に駆動するよう構成される。このとき、前記第1プーリ48の直径は第2プーリ50の直径より大径に設定されていることから、第1無端ベルト40の駆動量は、第2無端ベルト42の駆動量(リニアランナ68の移動距離)より大きくなると共に、第1無端ベルト40の周速は、第2無端ベルト42の周速より大きくなる。
【0022】
左側のサイドフレーム32の内部には、リニアランナ68の進退移動を案内するガイド機構70が設けられている。このガイド機構70は、図6に示すように、回転自在に構成されたガイドローラ72を複数備えると共にリニアランナ68に固定される可動ガイド部74と、図3および図7に示すように、サイドフレーム32における内側面に設けられ、上下方向に延在するガイドレール76とから構成される。前記可動ガイド部74のガイドローラ72は、ガイドレール76を挟持するようになっており、ガイドレール76に沿って可動ガイド部74が上下動することで、リニアランナ68を案内するようになっている。
【0023】
夫々の第1無端ベルト40には、スクリーンバー58と着脱自在に係合可能で、安全機構として作動する係合部材60が対応的に設けられている。すなわち、図8に示すように、前記係合部材60は、前記第1無端ベルト40の前側の直線部に固定された固定金具78と、前記固定金具78に下端が固定されたバネ部(弾性部材)80と、該バネ部80の上端に連結された係合片82と、固定金具78と係合片82とに連結された連結ワイヤ(解除手段)84とを備えている。前記固定金具78は、金属板等を折曲形成したものであって、前記第1無端ベルト40と共に上下に移動するよう構成されている。
【0024】
前記係合片82は、図9に示すように、開口部86と、該開口部86に連通する円形状の係合凹部88とを備えている。前記係合片82は、第1連結孔82aおよび第2連結孔82bを備え、第1,第2連結孔82a,82bを介して係合片82が前記バネ部80および連結ワイヤ84に回動自在に連結されている。前記係合片82は、前記開口部86を介して係合凹部88に臨ませた前記スクリーンバー58を係脱自在に係合するよう構成されている。また、係合片82は、開口部86を後方に指向させてスクリーンバー58に係合した係合姿勢から、開口部86を上方に指向させて該スクリーンバー58との係合が解除される解除姿勢に回動可能に構成されている(図9(a)〜(c)参照)。
【0025】
前記バネ部80は、前記スクリーンバー58を係合片82に係合させた際に所要長さだけ伸長して、遮蔽スクリーン56に対し所要のテンションを下向きに付与するようになっている。また、前記連結ワイヤ84は、伸縮不能な材質で構成されており、図9に示すように、係合片82に対しバネ部80の前方で連結している。すなわち連結ワイヤ84は、固定金具78を介して係合片82を第1無端ベルト40に連結している。ここで、バネ部80および連結ワイヤ84は、スクリーンバー58が係合している状態において前記係合片82が係合姿勢となるよう該係合片82の引っ張りバランスが設定されている(図9(a)参照)。一方、閉成時の遮蔽スクリーン56のスクリーンバー58に、例えば作業者の体(以下、障害物Aという)が接触して該スクリーンバー58が停止した際には、連結ワイヤ84が係合片82を引っ張って解除姿勢まで回動させるよう構成される(図9(b),(c)参照)。すなわち、実施例に係る係合部材60,60は、安全装置としての機能も有している。
【0026】
(実施例の作用)
次に、実施例に係る遮蔽装置30の作用について以下説明する。遮蔽装置30は、溶接工場等において、溶接現場に配設した図示しない溶接ロボットと作業者との間に位置するよう設置される。遮蔽装置30の使用に際しては、予めスクリーンバー58を係合部材60の係合片82に係合させて、遮蔽スクリーン56を第1無端ベルト40,40に固定する。
【0027】
溶接ロボットによるワークの溶接が行なわれていない場合には、前記遮蔽スクリーン56は矩形開口部38を開放させており、作業者は矩形開口部38を介して溶接現場へのアクセスが許容される。そして、作業者は、ワークを適正位置に位置決めしたり、溶接状態等を確認したりすることができる。このとき、前記ロッド部66はシリンダ部64内に収容されて、リニアランナ68は最下位に位置している(図5の2点鎖線参照)。
【0028】
次に、ワークの溶接時には、前記遮蔽装置30は遮蔽スクリーン56を閉成させる。すなわち、前記エアシリンダ62が作動してロッド部66を上方へスライドさせ、リニアランナ68を上昇させる。このとき、前記ガイドレール76を挟持するガイドローラ72が回転して、可動ガイド部74がガイドレール76に沿って上昇するので、リニアランナ68は真っ直ぐ上方へ移動することができる。リニアランナ68が上昇移動すると、該リニアランナ68に連結する第2無端ベルト42が駆動して、前記第2プーリ50および第4プーリ54を回転させる。第2プーリ50の回転に伴って回転軸46が回転し、これにより両第1プーリ48,48が回転する。これと同時に前記第3プーリ52,52が回転し、前記第1無端ベルト40,40は同期的に駆動を開始する。
【0029】
すると、各第1無端ベルト40に取付けられた固定金具78が下降を始め、遮蔽スクリーン56が下降する。このとき、遮蔽スクリーン56は、スクリーンバー58の両端が係合部材60,60によって固定されているので、遮蔽スクリーン56の下端部がバタつくことがなく、該遮蔽スクリーン56はサイドフレーム32,32等に引っ掛かることなく安定に下降することができる。しかも、遮蔽スクリーン56は、前記バネ部80によって常に下向きのテンションが付与されているので、遮蔽スクリーン56が撓むのを防止して、より安定な下降を実現し得る。しかも、両第1無端ベルト40,40は、同期して駆動するため、スクリーンバー58を水平のまま下降させることができ、より確実に遮蔽スクリーン56を下降させることができる。
【0030】
ここで、前記第1プーリ48の直径は、第2プーリ50の直径より大径に設定されているので、第1無端ベルト40の駆動速度(周速)は第2無端ベルト42より大きくなる。従って、遮蔽スクリーン56の下降速度を大きくすることができ、遮蔽スクリーン56の迅速な閉成が可能となる。また、第1プーリ48が第2プーリ50より大径であることから、第1無端ベルト40の駆動量は第2無端ベルト42より大きくなる。すなわち、リニアランナ68の移動量に比し、遮蔽スクリーン56の移動量を大きくし得るので、ロッド部66のストローク量を相対的に小さくすることができ、エアシリンダ62のコンパクト化を図り得る。
【0031】
前記ロッド部66が更に上昇して上側のストロークエンドに到達すると、該ロッド部66が上方へ延出した状態で停止する(図5参照)。このとき、スクリーンバー58が係合部材60,60によって固定されているので、該スクリーンバー58がバタつくことはなく、遮蔽スクリーン56を確実に閉成させることができる。こうして、遮蔽スクリーン56が矩形開口部38を閉成し、溶接ロボットと作業者との間を遮蔽スクリーン56によって遮蔽する。これにより、溶接時に生ずるスパッタやアーク光等の有害要因から作業者を保護することが可能となる。
【0032】
次に、遮蔽スクリーン56を開放させる場合には、前述と反対の動作が行なわれる。すなわち、前記エアシリンダ62が作動して、前記ロッド部66を下方へスライドさせる。すると、前記リニアランナ68によって第2無端ベルト42が反対方向へ駆動されて、第2プーリ50および第4プーリ54を逆方向へ回転させる。すると、前記回転軸46を介して第1,第3プーリ48,52が回転し、両第1無端ベルト40,40が同期的に反対方向へ駆動する。そして、前記係合部材60,60が上昇し、遮蔽スクリーン56が巻取りローラ44によって巻き取られ、遮蔽スクリーン56が矩形開口部38を開放させる。
【0033】
この場合においても、第1プーリ48は第2プーリ50に対して大径であるので、第1無端ベルト40の駆動速度(周速)を第2無端ベルト42に対して大きくすることができ、遮蔽スクリーン56の迅速な開放が可能となる。しかも、遮蔽スクリーン56の下端部(スクリーンバー58)が係合部材60,60により固定されているので、該遮蔽スクリーン56の下端部がバタつくことがなく、安定に開放させることができる。なお、ロッド部66が下側のストロークエンドに到達すると、遮蔽スクリーン56の開放が終了する。
【0034】
次に、遮蔽スクリーン56の下降時に、何等かの原因で作業者の体(障害物A)がスクリーンバー58に接触した場合、前記係合部材60は、以下の如く安全装置としても作用する。図9(a)に示すように、スクリーンバー58に障害物Aが接触すると、該スクリーンバー58の下降が妨げられ、固定金具78のみが下降を続ける。すると、連結ワイヤ84により係合片82の第2連結孔82bが下方へ引っ張られる。一方、バネ部80は、弾性変形して伸長するので、該バネ部80が第1連結孔82aを引っ張る量は、連結ワイヤ84に比べて少なくなる。従って、図9(b)に示すように、係合片82は、スクリーンバー58を軸として開口部86を上方に向けるように (図9では時計回り方向)回動する。
【0035】
更に、固定金具78が下降すると、係合片82は更に回動して、該係合片82の開口部86が上方を指向した解除姿勢となる。すると、図9(c)に示すように、スクリーンバー58が係合片82の開口部86を介して係合凹部88から離脱し、スクリーンバー58と係合部材60との係合が解除される。すなわち、障害物Aにスクリーンバー58が接触すると、連結ワイヤ84が係合片82を係合姿勢から解除姿勢まで回動させて、係合片82とスクリーンバー58との係合を解除する。従って、以降の遮蔽スクリーン56の下降が阻止されて、作業者が遮蔽スクリーン56に挟まって怪我をするのを防止することができる。また、スクリーンバー58と係合部材60との係合が解除されるので、係合部材60やスクリーンバー58に大きな負荷が加わって、これらの部材が破損するのを防止し得る。
【0036】
このように、実施例に係る遮蔽装置30によれば、遮蔽スクリーン56のスクリーンバー58が係合部材60,60により固定されているので、遮蔽スクリーン56の下端部がバタつくのを防止することができる。従って、遮蔽スクリーン56を安定に開閉させることができ、遮蔽スクリーン56が途中で引っ掛かってしまうのを防止し得る。しかも、第1プーリ48を第2プーリ50より大径としたので、第1無端ベルト40,40の駆動速度を高速にすることができ、遮蔽スクリーン56の迅速な開閉を実現し得る。
【0037】
なお、実施例では、第1〜第4プーリおよび第1,第2無端ベルトを使用した場合を例示したが、回転体およびこれに巻き掛けられる無端索体としては、他の機構を採用し得る。例えば、回転体としてスプロケットおよび無端索体として無端チェーンからなる組み合わせを採用することも可能である。実施例では、スクリーンバー58に対して係脱可能な係合部材60,60を介して遮蔽スクリーン56を第1無端ベルト40,40に固定する構成としたが、必ずしも、係合部材60,60を採用する必要はなく、遮蔽スクリーン56を直接第1無端ベルト40,40に固定する構成としてもよい。また、実施例では、第2無端ベルト42を駆動させる構成として、エアシリンダ62を採用した。しかしながら、例えば、ラック・ピニオンや電磁駆動によりリニアランナ68を進退移動させる等、他のリニアアクチュエータを適宜採用することが可能である。なお、遮蔽スクリーン56を上下方向に開閉する構成に限られず、これを左右方向に開閉する構成としてもよい。実施例では、弾性部材としてバネ部80を採用したが、弾性変形して係合片82を引っ張り得るものであれば、例えば、弾性ゴム等を採用してもよい。
【符号の説明】
【0038】
32 サイドフレーム,40 第1無端ベルト(第1無端索体)
42 第2無端ベルト(第2無端索体),44 巻取りローラ,46 回転軸
48 第1プーリ(第1回転体),50 第2プーリ(第2回転体)
52 第3プーリ(第3回転体),54 第4プーリ(第4回転体)
56 遮蔽スクリーン,58 スクリーンバー,60 係合部材
62 エアシリンダ(リニアアクチュエータ),68 リニアランナ
80 バネ部(弾性部材),82 係合片,84 連結ワイヤ(解除手段)
A 障害物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転軸(46)に同軸的に固定した巻取りローラ(44)と、
前記巻取りローラ(44)の両端において前記回転軸(46)に夫々固定した一対の第1回転体(48,48)と、
前記一対の第1回転体(48,48)の一方の外側において、前記回転軸(46)に固定した第2回転体(50)と、
前記一対の第1回転体(48,48)と離間して対応的に配置され、前記回転軸(46)と平行にフレーム(32)に回転自在に軸支した一対の第3回転体(52,52)と、
前記第2回転体(50)と離間して配置され、前記回転軸(46)と平行にフレーム(32)に回転自在に軸支した第4回転体(54)と、
前記一対の第1回転体(48,48)および第3回転体(52,52)に対応的に巻き掛けた一対の第1無端索体(40,40)と、
前記第2回転体(50)および第4回転体(54)に巻き掛けた第2無端索体(42)と、
前記巻取りローラ(44)に一端部が固定されると共に、他端部が前記一対の第1無端索体(40,40)に夫々固定されて、巻取りローラ(44)および第1無端索体(40)の駆動により開閉される遮蔽スクリーン(56)と、
前記第2無端索体(42)に隣接して配置され、この第2無端索体(42)に固定された状態で直線的に進退移動するリニアランナ(68)を備えるリニアアクチュエータ(62)とからなり、
前記第1回転体(48)の直径が前記第2回転体(50)の直径よりも大径に設定されている
ことを特徴とする遮蔽装置。
【請求項2】
前記遮蔽スクリーン(56)の他端部にスクリーンバー(58)が設けられ、該スクリーンバー(58)は、前記一対の第1無端索体(40,40)に設けられた係合部材(60,60)を介して該第1無端索体(40,40)に係脱自在に固定される請求項1記載の遮蔽装置。
【請求項3】
前記係合部材(60,60)は、該係合部材(60,60)に前記スクリーンバー(58)が係合した際に前記遮蔽スクリーン(56)にテンションを付与する弾性部材(80,80)を備えている請求項2記載の遮蔽装置。
【請求項4】
前記係合部材(60,60)は、前記スクリーンバー(58)と係合する係合姿勢から該スクリーンバー(58)との係合が解除される解除姿勢に回動可能な係合片(82,82)と、該係合片(82,82)および前記第1無端索体(40,40)に連結され、閉成時の遮蔽スクリーン(56)のスクリーンバー(58)が障害物(A)に接触して停止した際に、該第1無端索体(40,40)と共に移動して該係合片(82,82)を解除姿勢まで回動させる解除手段(84)とを備えている請求項2または3記載の遮蔽装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−140808(P2011−140808A)
【公開日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−2093(P2010−2093)
【出願日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【出願人】(593222805)アスカ株式会社 (11)
【Fターム(参考)】