説明

遷移金属含有異物の検出方法

【課題】遷移金属含有異物をセパレータに付着した状態のままで短時間かつ高感度で検出する方法を提供する。
【解決手段】遷移金属含有異物が付着されたセパレータを酸蒸気に曝露して異物表面に遷移金属の塩を生成させる工程と、
前記セパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬する工程と、
前記セパレータを乾燥させる工程と
を含むことを特徴とする遷移金属含有異物の検出方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セパレータに付着した遷移金属含有異物の検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年電源に対する高容量化の要求が高く、電池またはコンデンサなどの蓄電デバイスにおいて、容量向上に直接寄与しないセパレータは薄膜化が要求されている。一方、蓄電デバイス内部に原材料や製造工程から導電性異物が混入した場合、正極および負極が内部短絡する可能性がある。また、セパレータの薄膜化が進んでいるため、最大長10μm程度の大きさでも短絡する可能性がある。特に金属粉が混入した場合、短絡時の抵抗値が小さいために大電流が流れ、温度が大きく上昇する可能性がある。そのため、原材料、特にセパレータに付着した金属粉の検出は重要な課題となっている。混入する可能性が高い金属粉としては、製造工程の各種治具の素材である、銅、鉄、ニッケルなどの遷移金属類が挙げられる。すなわち、前記金属粉としては特に遷移金属含有異物の検出が重要である。
【0003】
セパレータに付着した遷移金属含有異物の検出にはいくつかの方法がある。セパレータを溶解し、かつ異物を溶解しない溶媒があれば、セパレータを溶解して不溶物を回収することが可能である。しかし、セパレータを溶解してしまうと異物の付着位置が不明となり、異物の混入経路の解明が困難になる。また、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリイミド、セルロースなどセパレータに適した素材については適当な溶媒がない。
【0004】
遷移金属含有異物をセパレータに付着したままで観察する方法として、例えば走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDX)による高感度分析が挙げられる。しかしながら、前記分析方法は視野角が狭く、大面積のセパレータの検査には適していない。
【0005】
一方、大面積のセパレータを一度に観察する方法としては、X線コンピューター断層撮影(X線CT)や磁気による検出法などが挙げられる。しかし、前記分析方法は分解能に乏しく、最大長10μm程度の金属粉は検出することができない。
【0006】
さらに、高周波誘導結合プラズマ発光分光分析法(ICP)、原子吸光、呈色反応(特許文献1参照)などを利用した測定方法は、高感度で精度も高いが、試料を一旦溶解して均一な溶液とする必要がある。そのため、セパレータ中に含まれる遷移金属の含有率は正確に求めることができるが、サイズ・形状・存在場所などの情報を得ることができず、遷移金属含有異物の混入経路を解明することができない。
【特許文献1】特開平7−265097号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、遷移金属含有異物をセパレータに付着した状態のままで短時間かつ高感度で検出する方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によると、遷移金属含有異物が付着されたセパレータを酸蒸気に曝露して異物表面に遷移金属の塩を生成させる工程と、
前記セパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬する工程と、
前記セパレータを乾燥させる工程と
を含むことを特徴とする遷移金属含有異物の検出方法を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、遷移金属含有異物をセパレータに付着した状態のままで短時間かつ高感度で検出する方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る遷移金属含有異物の検出方法を詳細に説明する。
【0011】
まず、セパレータを酸蒸気に曝露する。このとき、セパレータに遷移金属含有異物が付着していると、その異物表面に遷移金属の塩が生成される。つづいて、セパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬し、乾燥させることによって、セパレータに付着した遷移金属含有異物を着色し、光学的に検出する。
【0012】
すなわち、セパレータを酸蒸気(蒸気状の酸)に曝露することによって、遷移金属含有異物の“遷移金属の表面”を一部溶解して呈色試薬との反応を可能にする遷移金属塩、つまり遷移金属のイオン種に変換する。詳述すると、蒸気状の酸の使用により異物の遷移金属の溶解を“表面”に限定し、遷移金属含有異物の形状を保持する。また、蒸気状の酸を用いることによって、生成した遷移金属塩が遷移金属含有異物から流出することなく、遷移金属含有異物表面に留めることが可能になる。
【0013】
このような酸蒸気曝露で遷移金属塩を生成したセパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬することにより、遷移金属含有異物表面の遷移金属塩と呈色試薬とが反応して遷移金属イオンが呈色する。呈色後の金属イオンは有機溶媒に対する溶解性が低いために、呈色試薬を有機溶剤で溶解することによって、呈色試薬と反応した遷移金属塩が溶媒中に溶解して拡散するのを抑制または防止できる。この後、セパレータを乾燥して有機溶媒を除去し、目視またはCCDカメラで光学的に観察することによりセパレータに付着した状態のままで遷移金属含有異物が呈色しているため、遷移金属含有異物の存在を容易かつ正確に視認(検出)することができる。
【0014】
検出対象であるセパレータは、所望の長さの試験片の形態、または巻物のような長尺の形態で前述した方法に供することができる。特に、後者の長尺の形態では長尺セパレータを酸蒸気雰囲気のトンネル炉内を通過させ、呈色試薬の有機溶媒溶液が収容された浴槽内を通過させ、最後に乾燥炉を通過させる、連続処理が可能である。また、セパレータは1枚または2枚以上を重ねた形態で前述した方法に供することができる。セパレータを複数枚重ねた形態では、乾燥後に1枚1枚剥がし、各セパレータを目視またはCCDカメラで観察する。
【0015】
セパレータに付着された遷移金属含有異物としては、例えば鉄粉、SUS粉、ニッケル粉、銅粉のような遷移金属粉、例えば酸化鉄、酸化銅のような遷移金属酸化物、例えばマイカのような複合金属酸化物が挙げられる。これらの異物はセパレータに単独で存在するか、あるいは遷移金属粉と金属酸化物の混合物、遷移金属粉と複合金属酸化物の混合物、遷移金属粉と金属酸化物と複合金属酸化物の混合物、などのように混在する。
【0016】
酸蒸気として用いる酸は、揮発性の酸であれば用いることができる。例えば酢酸などの弱酸類は溶解能力が低く、遷移金属の溶解には用いることができない。また、硝酸などの酸化力の強い酸を用いると、遷移金属含有異物表面のみを溶解させるための制御が困難となる。遷移金属が例えば鉄、コバルト、ニッケルである場合は塩酸が好ましい。銅など塩酸に不溶な金属の場合は硝酸が好ましい。ただし、微粒子状の銅は表面が酸化されて酸化銅となっている場合が多く、塩酸を用いても銅の塩を生成することが可能である。
【0017】
酸蒸気源が液体状の酸である場合、酸の濃度は1モル/L以上、12モル/L以下にすることが好ましい。酸濃度を1モル/L未満にすると、反応性が低下するために反応に必要な酸曝露時間が長くなる。その結果、セパレータの水分含有量が増加し、呈色後の解像度が低下する虞がある。酸濃度が12モル/Lを超えると、エステル結合やエーテル結合を含む高分子からなるセパレータの場合、セパレータ上で結露した酸によりエステル結合やエーテル結合が加水分解する虞がある。
【0018】
酸蒸気源がガス状の酸である場合、酸濃度は5体積%以上、80体積%以下にすることが好ましい。酸濃度を5体積%未満にすると、反応性が低下して反応に必要な酸曝露時間が長くなって効率が低下する虞がある。一方、酸濃度が80体積%を超えると、酸曝露環境の湿度が低下して、やはり反応性が低下する虞がある。
【0019】
酸曝露時間は、10秒間〜5分間が好ましい。酸曝露時間が5分間を超えると、セパレータの水分含有量が増加し、遷移金属含有異物の遷移金属の表面に生成した遷移金属塩が水分の影響で一部溶解する。このため、後の呈色工程で遷移金属含有異物の解像度が低下する虞がある。
【0020】
前述したようにセパレータが1枚の場合は、酸曝露時間は10〜60秒間が適当である。セパレータを30枚程度重ねる場合は30秒間〜2分間、50枚程度重ねる場合は3〜5分間程度が好ましい。セパレータを50枚超えて積層する場合は、酸蒸気が内部まで浸透する前に表面部分の水分含有量が増加し、前述したように呈色後の解像度が低下する虞がある。このため、セパレータを多数積層している場合またはセパレータの積層数が少なく幅が広い場合は、真空置換法による酸蒸気曝露が好ましい。例えば、ガラス製耐真空容器にセパレータを密閉し、容器内を一旦真空にした後、酸蒸気を容器内へ導入する。その後、容器内を再度真空にして容器内の塩酸蒸気を除去する。このような真空置換法を採用することによって、セパレータが多数積層している場合でも酸との反応により遷移金属含有異物の遷移金属の表面に遷移金属の塩を生成することが可能になる。
【0021】
酸曝露環境の湿度は、20%以上70%以下にすることが好ましい。環境湿度を20%未満にすると、異物と酸蒸気との反応性が著しく低下して後の呈色反応の感度が低下する虞がある。環境湿度が70%を超えると、セパレータの吸湿量が増大し、前述したように呈色後の解像度が低下する虞がある。
【0022】
酸曝露環境温度は、5℃以上40℃以下にすることが好ましい。環境温度を5℃未満にすると、酸の蒸気圧が低下して異物と酸蒸気との反応性が低下し、後の呈色反応の感度が低下する虞がある。環境温度が40℃を超えると、酸から発生する水蒸気圧が上昇してセパレータの吸湿量が増大し、呈色後の解像度が低下する虞がある。
【0023】
酸蒸気に曝露する工程の前において、セパレータを加熱ないし冷却し、酸曝露工程の環境温度よりも1〜10℃高温にすることが好ましい。セパレータの温度が酸蒸気に暴露する工程温度よりも高温であると、一度に大量のセパレータを酸蒸気に暴露する工程に投入した際、または長尺のセパレータを連続して酸蒸気に暴露する工程に投入した際に工程温度が上昇して再現性が低下する可能性がある。一方、セパレータの温度が酸蒸気に曝露する工程温度よりも低温である場合、酸蒸気に暴露する工程で結露により前述したように呈色後の解像度が低下する虞がある。また、吸湿して水分含有量が増大したセパレータを酸蒸気に暴露する工程に投入した場合も、前述したように呈色後の解像度が低下する虞がある。そのため、セパレータの温度や水分含有量が明らかでない場合は、酸蒸気に暴露する工程の前にセパレータを予め加熱ないし冷却して温度を制御することが好ましい。セパレータの温度が酸蒸気に暴露する工程温度よりも低い場合は、セパレータを予熱することにより、結露を抑制し、また水分含有量を低下させることが可能となる。一方、セパレータ温度が酸蒸気に暴露する工程温度よりも高い場合は、セパレータを予め冷却することにより、工程温度の上昇を抑制することができる。したがって、加熱・冷却後のセパレータ温度は酸蒸気に暴露する工程温度よりも1〜10℃高温であることが好ましい。温度差を1℃未満にすると、温度制御の効果が十分に得られない。一方、温度差が10℃を超えると、前述したように工程温度が上昇する可能性がある。
【0024】
呈色試薬は、遷移金属イオンと錯形成することで発色する化合物、例えば脂肪族アミン類、芳香族アミン類、ヘキサシアノ鉄(III)類、チオシアン酸類を用いることができる。中でも有機溶媒に対して容易に溶解する脂肪族アミン類、芳香族アミン類が好ましい。これら有機化合物は、有機溶媒に溶解し易く、かつ呈色反応後の遷移金属錯体はイオン性で、有機溶媒に対する溶解性の差が大きいために呈色反応後の金属錯体が有機溶媒に溶解・拡散するのを抑制できる。呈色試薬は、ビピリジン類、フェナントロリン類、ターピリジン類などの鎖状キレート配位子が好ましく、中でもビピリジン類は溶媒に対する溶解性が高く、特に2,2’−ビピリジンは鉄イオンに対する優れた呈色試薬で、かつ呈色反応により鮮やかな呈色をもたらすために好ましい。
【0025】
有機溶媒は、呈色試薬と反応した化合物に対する溶解性の低いものを用いることができ、特に非プトロン性溶媒が好ましい。具体的には、クロロホルム、ジクロロメタン、ジクロロエタン、トリクロロエタンなどのハロゲン系有機溶媒、アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン系有機溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系有機溶媒、アセトニトリルなどのニトリル系有機溶媒等を挙げることができる。中でも、ハロゲン系有機溶媒は呈色試薬と反応した化合物に対する溶解性が低く、呈色試薬の溶解性が高く、かつ吸湿性が低いために好ましい。特に、クロロホルム、ジクロロメタン、1,2−ジクロロエタンは、沸点が低いために溶媒の除去が容易であるため好ましい。なお、ハロゲン系有機溶媒を用いる場合は、適切な除外・回収装置によって溶媒蒸気の環境への放出を防ぐ必要がある。
【0026】
有機溶媒中における呈色試薬の濃度は、予めICPなどによりセパレータ中に付着した遷移金属含有異物の遷移金属の含有率を測定し、その含有率に見合って決定すればよい。絶対濃度は、10mモル/L以上、0.5モル/L以下であることが好ましい。濃度が10mモル/L未満にすると、1回の呈色工程でセパレータに吸収される呈色試薬量を考慮した場合、呈色試薬濃度の低下により呈色反応の発色性が低下する虞がある。一方、濃度が0.5モル/Lを超えると、有機溶媒の乾燥後にセパレータ上で再結晶した呈色試薬が吸湿して解像度が低下する虞がある。呈色反応後に溶媒で洗浄することにより解像度の低下は抑制することが可能ではあるが、検出操作は煩雑となってしまう。
【0027】
セパレータは、呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬する前に、加熱あるいは真空処理することにより乾燥させることが好ましい。酸蒸気に曝露する工程において、セパレータは吸湿する。そのため、呈色試薬の有機溶媒溶液を長期間使用していると、有機溶媒の水分濃度が上昇し、呈色試薬と遷移金属イオンの反応生成物の溶解性が上昇する。その結果、呈色が滲んで解像度が低下する虞がある。セパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬する前に乾燥させることにより、呈色反応後の解像度を維持することができる。
【0028】
乾燥は、呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬した後に溶媒を除去するために行われる。乾燥時は有機溶媒の気化熱によってセパレータの温度が低下するため、雰囲気中の水分がセパレータの異物に結露して解像度が低下する可能性がある。そのため、乾燥は湿度50%以下の雰囲気、真空中、もしくは水分が結露しない100℃以上の温度、のいずれかで実施することが好ましい。
【0029】
以上、実施形態によれば遷移金属含有異物が付着したセパレータを酸蒸気に曝露して異物の遷移金属表面に塩を生成させ、さらにセパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬した後、セパレータを乾燥させることによって、前述したように遷移金属塩の呈色、遷移金属塩の溶媒中への溶解・拡散の抑制できるため、遷移金属含有異物をセパレータに付着した状態のままで容易かつ高感度で検出することができる。なお、遷移金属含有異物は遷移金属粉、遷移金属酸化物、複合金属酸化物のいずれの形態であっても、酸蒸気曝露、呈色試薬の反応で呈色するため、光学的に検出できる。
【0030】
また、遷移金属含有異物の形状はセパレータに付着したままの状態に維持できるため、セパレータへの遷移金属含有異物の混入経路などを解明でき、セパレータへの遷移金属含有異物の混入防止を適切に行うことができる。
【0031】
さらに、酸蒸気曝露、呈色試薬による呈色反応、乾燥後においてセパレータに付着された遷移金属含有異物の周辺は呈色され、その存在がマーキングされるため、走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDX)の視野内に遷移金属含有異物を簡単に合わせることが可能になる。つまり、視野角が狭い走査電子顕微鏡(SEM)およびエネルギー分散型X線分析装置(EDX)への分析、適用が可能になる。このようなSEM/EDXの分析によって、セパレータに付着した遷移金属含有異物の寸法および遷移金属含有異物の遷移金属含有率を計測することも可能になる。遷移金属含有率の計測によって、遷移金属含有異物が遷移金属単体の導電体であるか、複合金属酸化物のような絶縁体であるかを判定することが可能になる。
【0032】
以下、本発明の実施例を詳細に説明する。
【0033】
(実施例1)
まず、ガラス製密閉瓶に12モル/Lの塩酸を入れたシャーレを静置、密閉して1時間放置した。つづいて、ガラス製密閉瓶内にセパレータをシャーレの脇に位置するように設置して1分間密閉した。つまり、セパレータを1分間塩酸蒸気に曝露した。セパレータは粒径25μmの鉄粉を散布したポリエチレン製セパレータを用いた。酸曝露の環境温度、セパレータの温度は共に25℃で、湿度は75%であった。次いで、セパレータを2,2’−ビピリジンのクロロホルム溶液(濃度0.1モル/L)に浸漬した後、速やかに乾燥した。
【0034】
セパレータに散布された鉄粉は、目視検査で鮮やかな赤色に呈色することを確認した。また、SEM/EDXの分析により鉄粉の寸法が5μm、鉄粉中のFe含有率が100重量%であることを確認した。
【0035】
(実施例2)
鉄粉の代わりにSUS304粉を用いた以外、実施例1と同様の方法によりSUS粉の検出を行った。
【0036】
セパレータに散布されたSUS粉は、目視検査で赤色に呈色することを確認した。また、SEM/EDXの分析によりSUS粉の寸法が5μm、SUS粉中に含まれるFe、Cr、Niの含有率が、それぞれ70、20、10重量%であり、元のSUS粉の組成と同一であることを確認した。
【0037】
(実施例3)
鉄粉の代わりにハイス鋼粉末を用いた以外、実施例1と同様の方法により検出を行った。
【0038】
セパレータに散布されたハイス鋼粉末は、呈色反応後に目視検査で確認することができた。また、SEM/EDXの分析によりハイス鋼粉末の寸法が20μm、組成がFe:77%、W:18%、Cr:4%、V:1%であることを確認した。
【0039】
(実施例4)
まず、ガラス製密閉瓶に12モル/Lの塩酸を入れたシャーレを静置、密閉して25℃下で1時間放置した。つづいて、ガラス製密閉瓶内に予め30℃に加熱したセパレータをシャーレの脇に位置するように設置して1分間密閉した。つまり、セパレータを1分間塩酸蒸気に曝露した。セパレータは粒径25μmの鉄粉を散布したセルロース製セパレータを用いた。次いで、セパレータを80℃で10分間乾燥した後、2,2’−ビピリジンのクロロホルム溶液(濃度0.5モル/L)に浸漬し、速やかに乾燥した。
【0040】
セパレータに散布された鉄粉は、目視検査で鮮やかな赤色に呈色することを確認した。また、SEM/EDXの分析により鉄粉の寸法が5μm、鉄粉中のFe含有率が100重量%であることを確認した。
【0041】
(実施例5)
まず、ガラス製密閉瓶に12モル/Lの塩酸を入れたシャーレを静置、密閉して1時間放置した。つづいて、ガラス製密閉瓶内にセパレータをシャーレの脇に位置するように設置して1分間密閉した。つまり、セパレータを1分間塩酸蒸気に曝露した。セパレータは粒径25μmの鉄粉を散布したセルロース製セパレータを用いた。酸曝露の環境温度、セパレータの温度は共に25℃で、湿度は75%にした。次いで、セパレータを80℃で10分間乾燥した後、2,2’−ビピリジンのクロロホルム溶液(濃度0.01モル/L)に浸漬し、速やかに乾燥した。
【0042】
セパレータに散布された鉄粉は、目視検査で鮮やかな赤色に呈色することを確認した。また、SEM/EDXの分析により鉄粉の寸法が5μm、鉄粉中のFe含有率が100重量%であることを確認した。
【0043】
(実施例6)
まず、ガラス製密閉瓶に12モル/Lの塩酸を入れたシャーレを静置、密閉して1時間放置した。つづいて、ガラス製密閉瓶内にセパレータをシャーレの脇に位置するように設置して1分間密閉した。つまり、セパレータを1分間塩酸蒸気に曝露した。セパレータは粒径25μmの鉄粉、および鉄雲母を散布したセルロース製セパレータを用いた。酸曝露の環境温度、セパレータの温度は共に25℃で、湿度は75%にした。次いで、セパレータを80℃で10分間乾燥した後、2,2’−ビピリジンのクロロホルム溶液(濃度0.01モル/L)に浸漬し、速やかに乾燥した。
【0044】
セパレータに散布された鉄粉および鉄雲母は、目視検査で赤色に呈色することを確認した。また、SEM/EDXの分析により鉄粉および鉄雲母の寸法および組成(鉄雲母;K:12%、Fe:54%、Al:8%、Si:26%)を確認した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遷移金属含有異物が付着されたセパレータを酸蒸気に曝露して異物表面に遷移金属の塩を生成させる工程と、
前記セパレータを呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬する工程と、
前記セパレータを乾燥させる工程と
を含むことを特徴とする遷移金属含有異物の検出方法。
【請求項2】
さらに検出されたセパレータの異物を走査電子顕微鏡およびエネルギー分散型X線分析装置により分析し、前記異物の寸法および遷移金属の含有率を求めることを特徴とする請求項1記載の遷移金属含有異物の検出方法。
【請求項3】
前記酸が塩酸であることを特徴とする請求項1または2記載の遷移金属含有異物の検出方法。
【請求項4】
前記呈色試薬が2,2’−ビピリジンであることを特徴とする請求項1〜3いずれか記載の遷移金属含有異物の検出方法。
【請求項5】
前記有機溶媒がクロロホルム、1,2−ジクロロエタンまたはジクロロメタンから選ばれるハロゲン系有機溶媒であることを特徴とする請求項1〜4いずれか記載の遷移金属含有異物の検出方法。
【請求項6】
酸蒸気に曝露する工程の前に前記セパレータを加熱して、酸蒸気に曝露する温度より1〜10℃高い温度に制御することを特徴とする請求項1〜5いずれか記載の遷移金属含有異物の検出方法。
【請求項7】
呈色試薬の有機溶媒溶液に浸漬する前に、前記セパレータを加熱処理または真空中での処理を施して乾燥させることを特徴とする請求項1〜6いずれか記載の遷移金属含有異物の検出方法。

【公開番号】特開2009−162656(P2009−162656A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−1428(P2008−1428)
【出願日】平成20年1月8日(2008.1.8)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】