説明

遷音速船体および遷音速ハイドロフィールド(III)

遷音速船体が、船首、船尾、その間の縦長さ、船首から船尾の船外部分まで延びる側面表面、および側面表面の間に延びる下側表面を含み、この遷音速船体は、平面図において船首に隣接する頂点および船尾に隣接する底辺を有するほぼ三角形の形状を有する水中体積と、移動中の時に側面図において船首に隣接する底辺および船尾に隣接する頂点を有するほぼ三角形の形状とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、商船、軍艦、潜水艦、ヨット、表面効果の中および外で動作する水上機の船体、およびボート全般など、反対の波での高速でのそのような船舶の動作を含む、水に支持された船舶に関する。
【背景技術】
【0002】
本願に関する技術は、Jane 社の High Speed Marine Craft の技術に関するものとすることができる。さらに、本願に関する技術に、米国特許出願第08/814418号で指定される遷音速船体(TH)および遷音速ハイドロフィールド(TH)と、米国特許出願第08/814417号で指定される遷音速船体の推進、制御および形状を含めることができる。
【0003】
明らかにある点でTHに似た三角形船体平面図形形状を有するある種の船舶が、過去に準備されてきた(たとえば、米国特許出願第08/814418号の審査で米国特許局によって引証されたもの)が、これらは、通常の船の設計と同様に、船首および船尾に隣接してほぼ等しい喫水を有するように設計されてきた。三菱重工業の日本国特許第61−125981A号は、そのすべての実施形態で、この近似的に三角形の船体平面図形の船尾および船首の喫水が、ほぼ等しく、ミッドボディ喫水と同一であることを教示している。この特許で、発明者は、やはり船首、船尾、およびミッドボディでの等しい喫水を示す1859年の米国特許第23626号の設計判断基準ほどに以前のものまで、以前の設計判断基準に従った。船尾における広い船幅を伴う深い船尾喫水は、極端に非効率的である。
【0004】
上で述べた特許の両方で、船体の浮力中心(CB)の位置、したがって重心(CG)の位置は、その平面図形および等しい喫水のゆえに、縦浮面心(longitudinal center of flotation、LCF)とも称する、平面図形面積および水線面の中心またはその非常に近くにあり、これは、船首バルブが使用されない限り、船首から船尾へ水線長の66%のところにある。CG、CB、およびLCFのこの近接は、従来の船体に通例である。さらに、そのような従来技術は、前進運動の下での抗力に対するCB位置およびCG位置の影響を考慮していない。
【0005】
CG、CB、およびLCFの近接に関して、私は、従来の船体での近接が、THに関して実現可能でないことを発見した。というのは、この近接が、このタイプの船体を、小さいピッチ外乱にさらされる時であっても、高速運動の下でピッチにおける不安定傾向を有するようにするからである。そのような悪い挙動は、重心が中立点に近い時の航空機の自立したフゴイド振動に似ている。船では、そのような振動が、抗力を増やすだけではなく、構造、積荷、および乗客に望ましくなく、危険である場合もある。
【0006】
そのような基本的問題は、深刻である。三菱重工業の特許は、船首バルブによるこの問題に対する解決策を教示している。したがって、三菱重工業の特許は、幅広い低速船のために開発され、有用であるバルブ技術を、異なるタイプの船体と混合する。これは、抗力ならびに体積を設計に追加し、抗力の問題は、従来技術について優先事項でない。
【0007】
対照的に、米国特許出願第08/814418号のTHおよびTHは、完全に異なる革新的な解決策を作り、THの水中部分で、前への深い喫水と後ろへの浅い喫水を組み合わせ、これは、通常の構造船舶設計では、船首バルブが使用されない限り固有の潜水可能性を有して危険と考えられるはずである。しかし、模型試験に従えば、この作者は、潜水傾向が三角形の平面図形で測定されないという点でTH理論が正しいことを確認した。TH解決策は、LCFと浮力中心の間の固有の距離を変え、したがって、実質的にLCFの前の重心を有する。さらに、私は、一部継続出願でLCF、CB、CBの間の距離の限度および静的喫水に対する影響に関して行ったように、臨界超過領域および亜臨界領域での流体静力学的船尾条件と船尾の流体力学的条件との間の区別に関して、CB、CG、LCF、および船尾喫水の間の関係の定量的諸態様が依存することを、潜水傾向の欠如に関して発見し、有効積載量に関して確立した。さらに、これらの重要な関係は、さまざまな速度領域での出入りの流れ角の流体力学的抗力結果に関して本研究で確立される。
【発明の開示】
【0008】
本発明は、以前の特許出願の遷音速船体(船殻)TH発明および遷音速ハイドロフィールドTH発明を質的に改善し、その範囲を拡張する新しい独自の設計形状、特徴、および動作の方法を指定する。本発明の範囲を、下に要約する。
【0009】
1.ディスプレースメント(displacement)モードでの以前の亜臨界領域および臨界超過領域を超える新しい流体力学領域すなわち、ハイパークリティカル(hypercritical)領域、トランスプレーナ(transplanar)領域、およびx領域と新しい設計特性とによって、非常に広い速度範囲にわたるTHの動作速度エンベロープの拡張が、増加する。これらの改善を用いると、単一のTH船体が、そうでなければ異なる従来の船体を有する2つまたは3つの船を必要とする広い速度スペクトルにわたってよい効率で動作することができる。たとえば、速度のより低い範囲での従来のディスプレースメント船およびより高い速度に関するV底船体または半滑走船体である。
【0010】
2.本発明のもう1つの重要な特徴は、静かな水の水線面の上下の船体特性および形状に関し、これらは、反対の波での、好ましくはエンジン、燃料、および武器など、船体内の重く大きい構成要素の特殊な縦分布との任意選択の組合せにおいても、広い速度範囲にわたる成功裡の動作を可能にするのにクリティカルである。
【0011】
3.本発明の第3の特徴は、静かな水および反対の波での遷音速船体の性能および操縦性を実現可能にし、機能強化し、改善するのに必要な、特殊な形状、トリム、バランス、重心位置、縦浮面心位置、ならびにさまざまな種類のフラップおよび条板に関する。
【0012】
4.さらに、本発明の他の重要な特徴は、レーダーおよび他のセンサによる固有の低い検出可能性ならびに低い可視性および熱内容の航跡を有する船体形状であり、これは、船体にステルス特性をもたらすが、それでも、効率的な流体力学および反対の波でのよい挙動と互換である。
【0013】
したがって、この新しい発明は、現在はハイパークリティカル領域、トランスプレーナ領域、およびx領域を含む遷音速船体の新しい高速ハイドロフィールド領域で動作することのできる全天候ステルス遷音速船体である。説明を単純にするために、本発明の船体を、ある重要な事例でTH−IIとも称し、その広げられたハイドロフィールドがTH−IIIである。本発明の他の実施形態は、THおよびTH−IIに適用可能な改善である。
【0014】
本発明は、一般的で強力なので、単一の船舶に本発明の特徴および方法ならびに改善のそれぞれすべてを組み込む必要はなく、これらのそれぞれをすべての請求項に組み込む必要もない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の性質および範囲は、静かな水および反対の波である種の深刻な固有の問題を有する従来の船体の重要な特性を再検討することと、本発明によって解決される概念的質問を設定する米国特許出願第08/814418号および米国特許出願第08/814417号の遷音速船体THおよびそのハイドロフィールドの限界および可能性をも調べることによってよりよく理解することができる。
【0016】
1.従来の船体の特性および問題:
この再検討で、動作速度エンベロープに従って船体タイプによって従来の船体設計を分離することが必要である。エンベロープは、船体タイプごとに、対応する容量係数と一緒に最もよく考慮される速度対長さ比(speed-to-length ratio)の関数として重量対抗力比(weight-to-drag ratio)に関して表され、速度対長さ比および容量係数は、速度エンベロープに関する縦の表面分布および体積分布を示す。
【0017】
1a.ディスプレースメント船体:
ディスプレースメント船体は、浮力の揚力によってボートの重さを支える。過去および現在の設計では、ディスプレースメント船体は、「ハルスピード(hull speed)」と称する速度上限を有し、その付近およびその上では、流体力学的抵抗(抗力)が、たとえば図1に示されているように、高い指数関数的な割合で増える。「ハルスピード」は、移動する船体によって生成され、これと共に移動する船首波と船尾波の間の長さが、船体の幾何学的長さと等しくなった時に発生する。この状況は、数値的には、ノット単位のボート速度をフィート単位のボート長の平方根で割った比が1.34と等しい時と表される。
【0018】
ディスプレースメント船体は、ハルスピードの十分下では非常に効率的であり、100を超える重量対抗力比を有する。極端に低い速度では、抗力が0に達するが重量が一定のままなので、この効率比がはるかに大きい値まで増える。しかし、ハルスピード付近またはその上では、重量対抗力比が、すばやく低下し、物理的および経済的に許容できなくなる。したがって、ディスプレースメント船体のより高い速度は、主に船体長を増やすことによって達成可能である。残念ながら、長さの速度利益は、大きくはない。たとえば、50フィート船体の公称「ハルスピード」は9.5ノットであるが、300フィートハルスピードについては、23ノットに過ぎない。
【0019】
「ハルスピード」限度は、ディスプレースメント船体が水中を移動する時の波生成特性すなわち「造波」のゆえに、ディスプレースメント船体に固有である。船体によって生成される波の長さが船体の幾何学的長さを超える時に、図2に示されているように、状況がクリティカルになる。船首波の増えるサイズが、増える速度と共に、ミッドボディ付近のトラフのさらなる低下を誘導し、これが、船体の増分的な沈下および船体の迎角の増加につながる。また、局所的な水位の下での船体の曲率に起因する、速度上昇に伴う追加の沈下がある。迎角の増加は、船首波を越えて上り、滑走領域に入るために非常に高い出力が使用可能でない限り、さらなる速度増加を妨げるが、その限度については後で述べる。
【0020】
造波に起因する高い抗力は、摩擦抗力に加わり、これを超える可能性があり、海運の経済での非常に深刻な問題である。したがって、これを克服するために、かなりの研究がさまざまな形で行われてきたが、残念ながら、ごくわずかな改善しか得られていない。たとえば、球状船首は、ある速度で抗力をわずかに減らすことができる。また、長く細長い船体は、幅広の船体より鈍感であるが、より少ない積荷を運び、後で再検討するように他の問題を有する。
【0021】
ディスプレースメント船体の最大動作速度エンベロープの原因となり、これを決定するディスプレースメント船体の重要な特性は、さまざまな情報源で入手可能であり(たとえば、MITの Philip Mandel 教授による「A Comparative Evaluation of Novel Ship Types」)、図3および4の左側に要約されている。動作速度エンベロープは、商船の場合に0.8から約1.0または1.1までの速度対長さ比を含み、これは、商船の1.34の「ハルスピード」の十分に下である。軍艦は、「ハルスピード」(たとえば、1.35の巡洋艦)および「ハルスピード」の上(たとえば、約1.7の速度対長さ比で動作する細長い駆逐艦)さえも含む速度エンベロープを有する。説明した速度比の上では、従来の原動所の必要なサイズおよび重量と、より低い重量対抗力比での推進の流体力学的問題とが、船の使命に関して許容できなくなる。
【0022】
したがって、少なくとも現在の速度限度内で、好ましくはこれらの限度を超える記録更新で、ディスプレースメント船体の高速効率および範囲を改善する緊急の必要が残されている。特に従来の船体を制限するタイプの造波抗力をなくすことができる場合に、従来の流体力学的滑走に頼らない、実用的な解決策が必要である。
【0023】
1b.滑走船体(planing hull)
滑走船体と称する異なるタイプの船体(重量が、運動量変化からの流体力学的揚力(浮力の揚力とは異なる)によって支持される)が、ディスプレースメント船体の速度限度を克服でき、さらに、これらが高速で効率的であるという広く持たれている意見がある。実際に、滑走は高いボート速度を可能にするが、比較的軽い重量を有し、高い推進推力を備えた、ほぼ平らな水線下部分を有するボートに限ってそれを行う。この船体の制限する特性は、無粘性滑走の制限的な場合に関して図5に示されている、運動量変化に起因する動的抗力の存在である。実際には、これらの船体は、3°から6°の迎角で動作する。最適平板滑走の場合の無粘性重量対抗力比は、それぞれ19および9.5である。
【0024】
粘性抗力が動的抗力に追加される時に、事実は、ボート重量対抵抗の最良の比が、図3および4の右側に示されているように6から9程度なので、滑走が著しく非効率的な流体力学領域であることである。これは、約10倍高速で飛ぶ現代のジェット旅客機の重量対抵抗の最良の比の半分未満であり、ハルスピードに近いがそれ未満の「適度な」長さのディスプレースメント船体の10分の1(またはそれ未満)に過ぎない。滑走船体の動作速度エンベロープは、スキーボートおよび類似するスポーツクラフトによって最もよく例示され、これらは、その滑走速度未満(たとえば、約4の速度対長さ比未満)で、ディスプレースメントモードでの大きい造波抗力を伴うノーズハイ姿勢を必要とし、これは、図2で最も低いがより長い船体について示したものに類似する条件である。
【0025】
図3での速度に伴う重力対抗力比の減少は、増加する速度対長さ比と連続しているように見えるが、図3の左側と右側は、連続しているのではなく、船体の形状およびタイプ(ディスプレースメントおよび滑走)に関して不連続であり、これらは、図4に明瞭に示されているように、不連続で大きく異なる容量係数を有する。したがって、図3および4の左側では、駆逐艦を含む場合に、ディスプレースメント船体が、約0.8から1.8までの動作速度対長さエンベロープを含み、ここで、重力対抗力比は、120超(低速タンカについてはより高い)から約25まで滑らかに減少し、これに対応する容量係数は、駆逐艦について約80(低速タンカについてはより高い)から約55まで滑らかに減少する。対照的に、図3および4の右側では、滑走船体が、3から4をかなり超える程度の動作速度対長さ比を有する(図3)が、約6〜8の重量対抗力比および約100の容量係数(図4)を有し、これは、ディスプレースメント船体の方がはるかに長いというだけの理由で、ディスプレースメント船体より明らかにはるかに高い。より高い容量係数は、滑走設計が「ハルスピード」付近またはそれ未満での持続動作を意図されていないかそれが不可能であるという事実を反映し、ハルスピードでは、滑走設計の低い重量対抗力比が、ディスプレースメント船体と比較して禁止的になるはずである。
【0026】
上で再検討したように、ディスプレースメント船体は、おおむね速度の2乗に伴って増加する、ほぼ一定の濡れ面積によって生成される摩擦抗力に加えて、ハルスピード付近およびその上で速度に強く伴って増加する造波抗力成分を有する。これらの抗力源が、図1に示された、「ハルスピード」付近およびそれを超える速度での高い総指数関数的抗力増加に組み合わされる。その結果、動作速度対長さ比は、商船について約1であり、軍艦については2を多少下回る。
【0027】
摩擦抵抗と造波抵抗のパーセント分布は、他の些細な抵抗成分を含む場合があるのでしばしば剰余抵抗と呼ばれるが、これを図6に示す。図6は、1.34の「ハルスピード」を超える速度で、抵抗の60%が剰余抵抗であり、ほとんどが造波抗力であることを示す。
【0028】
流体力学的対比で、重量とおおむね等しい動的揚力を、垂直平衡状態に必要な大きい迎角に依存する高い動的抗力成分と、望むらくは速度に伴って減少する摩擦抗力比率とを有する純滑走船体は、3.5以上程度の速度対長さで、8以下程度の低い重量対抗力比で動作し、より低い速度対長さ比での動作は、非効率的過渡条件であり、これは、非常に悪い重量対抗力比も有する。
【0029】
単船体船のディスプレースメント船体特性と滑走船体特性を混合することを試みるさまざまなハイブリッド船舶が、速度エンベロープにわたって効率的に動作できる単一船タイプに達することを試みて過去に提案されてきたが、残念ながら、下で再検討するように、多くの成功はなかった。
【0030】
1c.半滑走船体(semi-planing hull):
前進速度に伴って重心を沈める吸込(みかけの重量を増やす)を引き起こす上に曲がった船尾と船首の曲率とを有するディスプレースメント船体と異なり、また、ほとんど平らな下面と前進速度に伴って高まる傾向があるCGとを有する滑走船体と異なって、半滑走船体は、通常、V底を有し、実用的な理由から、純滑走船体より重い。半滑走船体は、高速で「平らな」航跡の出現を生成することができるが、その揚力は、浮力と動的な力の組合せによって生成され、これは本来非効率的である。これらのハイブリッドは、滑走船体と比較して、より長く、より低い容量係数を有するが、それでも、たとえば図4の中央に示されているように、ディスプレースメント船体の容量係数よりはるかに高い。
【0031】
半滑走船体の航跡の境界は、俯瞰図から見た時に、平らで、船尾からある距離で一緒につながるように見え、水の表面上の、後に続く「へこみ」を生成し、これは、流体力学を学んだ魚の観点から、動作する半滑走船体の動的水線面の長さより長い長さの仮想ディスプレースメント船体として解釈することができる。従来の半滑走船体は、非効率的なハイブリッドであり、低速で、よいディスプレースメント船体と比較して、過度の抗力を有する。従来の半滑走船体は、半滑走速度に達するのに非常に大きい出力を必要とし、その領域では、純滑走船体ほど高速ではなく、純滑走船体より非効率的である。その一方で、深V半滑走船体は、荒れた海でのより多い有効積載量でのより滑らかな乗り心地をもたらし、滑走船体より耐航性がある。しかし、深V半滑走船体は、ディスプレースメント船体より荒い乗り心地を有し、より望ましくない凌波特性を有し、ほとんどの大規模海運応用例について商業的に実現不能である。
【0032】
1d.半ディスプレースメント船体:
長さ対船幅比が細長い船体で増やされる時に、造波抗力が減る。Saundersによれば、細長いディスプレースメントパワーボートが、1910年代に一般的であった。その後、丸底船体を有するドイツ魚雷艇(German Schnell Boote)(高速ボート)が、第2次大戦用のS−boatとして成功裡に開発され、荒れた北海で高速で良好に動作した。しかし、半ディスプレースメントボートの長さ−船幅細長比がさらに増やされる時に、横安定性および有効積載容量が、さらに減る。極端では、8人ローイングシェル(rowing shell)は、横安定性に関してオールに頼る。約30の長さ対船幅比では、造波抵抗が、10ノットでの総抵抗の5%に過ぎないが、重量対抗力比は、約20に過ぎない。航空機での適当な比較が、25の翼幅対翼弦比を有する現代のグライダである。これは、6倍の速度で40の重量対抗力比で動作することができる。
【0033】
限度内で、細長い船体の船幅が0に近付く時に、造波抗力は0に向かう傾向があるが、粘性抗力は存在し、有効積載容量はなくなる。したがって、高速半ディスプレースメントボートの最近の開発は、より高い速度で流体力学的揚力成分を生成し、浮力の揚力成分およびその造波抵抗を減らし、たとえば横不安定性および/または揚力に起因するノーズハイ姿勢および高い抗力の傾向などの高速での細長い船体の他の短所を補正するために、細長い船体への複雑な横のまたは他の追加を使用して、混合揚力モードを提案してきた。半滑走船体の場合と同様に、その速度潜在能力は、滑走船体より低く、その重量対抗力の比は、非常に満足ではなく、また、結果として、有効積載量は多くない。これらは、「ハルスピード」の付近およびそれを超える速度で半滑走を上回る性能利益を有するように見え、ピッチにより鈍感であるが、その複雑な形状は、固有のサイズ限界ならびにより低い速度潜在能力を有するように見える。
【0034】
1e.悪い海面状態に起因する単船体船の追加の抵抗:
上で再検討したさまざまなタイプの単船体船は、海面状態に対する異なる応答を有し、この応答が、ほとんどの実用的動作での効率に対する重大な追加の制限を設定する。これは重要な問題である。というのは、これが、動作速度エンベロープの重要な限度を設定し、構造的な重量および出力のペナルティを課すことができ、実際にそれを行い、これらのペナルティが、静かな水についてのみ動作する同一の船体の設計の場合と異なり、それより悪いからである。
【0035】
この作者の観点では、ディスプレースメント船体および半ディスプレースメント船体の反対の波での抗力ペナルティおよび構造ペナルティは、体積および浮力の予備のその固有の望ましくない縦分布から生じ、これは、伝統的であり、多分、波を登るように設計された船(海洋波の伝搬速度に関して不適切な速度マージンを有する)のより低速の速度エンベロープに適用可能である。さらに、従来の船の慣性値は、より高い速度が他の形で従来のディスプレースメント船体および半ディスプレースメント船体を用いて達成可能である場合に、そのようなより高い速度エンベロープに関してその性能にペナルティを与えるはずである。明らかに、波中のディスプレースメント関連船体の追加の抗力ペナルティおよび重量ペナルティを減らすためのブレークスルーが、特に対抗する波での周知の「船首底衝撃」など、滑走関連船体が反対の波で出会うさらに悪いペナルティをこうむらない場合に、非常に望ましい。船首底衝撃は、やってくる波に関する迎角の準瞬間的な大きい増加に出会い、設計範囲外の非常に大きい過渡的角度に達する時に発生し、この過渡的角度は、速度を鈍らせ、船体の構造的負荷および重量を非常に大きく増加させる。
【0036】
1f.多胴船:
上で再検討したさまざまなタイプの単船体船の造波抗力および他の悪い抗力の問題(波中の追加の抵抗を含む)は、非常に深刻なので、かなりの最近の努力が、新しい多胴船の開発に振り向けられてきた。この分野は、単船体船に関する本文書の範囲外であるが、多少の所見がふさわしい。安定性のために横に広く離隔された、カタマランの非常に狭く細長いディスプレースメント船体の対が、成功裡に開発され、さまざまな商業応用例について、特にアジアで、高速で使用されている。その容量係数の計算は、2つの船体があり、そのそれぞれが半分の重量を有するが全長を有するので、あてにならないものである可能性がある。したがって、各船体は、単船体船より望ましい容量係数を有するが、そのような船体を2つ有する。現代のカタマランの揚抗比に関する公表された情報は、たやすく入手可能ではない。それでも、据え付けられた出力および動作重量に基づく抗力推定値は、10程度の重量/抗力比が、50ノットの速度で大型半滑走軽量カタマランについて実現可能であり、25ノットで16の比が実現可能であるが、その全長および総重量に関して非常に少ない有効積載量を有することが示される。これらの重量/抗力比は、高くはなく、滑走船体の重量/抗力比に近いが、従来の単船体船ディスプレースメント船体より高い速度で達成される。
【0037】
トライマランは、ある構造的利益と共に類似する特性を有する場合があり、大きい伝統的な前向きの浮力予備をも有するが、これは中央船体だけに関する。最近の多胴船の傾向は、中央船体の低い速度対長さ比を維持するための非常に長いディスプレースメント中央船体と、ロール安定性のためおよび幅広い甲板を支持するための高い速度対長さ比の小さく狭い横船体とを有するトリマランを探査している。波浪貫通型(wave-piercing)多胴船は、うねりの中でのみ水との接触を有する中央本体を有する場合があり、これは、反対の波での通常の大きい浮力予備をもたらすが、中間の波での波浪貫通を可能にする。SWATHSも、滑らかな乗り心地に関して完全水没主ディスプレースメントに頼り、濡れ面積および速度のペナルティを有する多胴船である。
【0038】
これらの多胴船開発および他の高速船体開発(たとえば、Jane社のHigh Speed Marine Craft を参照)は、これまでに、特殊な商用応用または軍事応用に制限され、新しい単船体船設計に関する船製造業者の必要を強調してきた。そのような設計は、静かな条件での水位が示された図面と共に、米国特許出願第08/814418号および米国特許出願第08/814417号の、その出願書で定義された亜臨界速度および臨界超加速度での効率的な動作が可能である私の遷音速ハイドロフィールドTHおよび遷音速船体THで指定されている。
【0039】
2.遷音速船体の特性、米国特許出願第814418号および米国特許出願第814417号:
前に述べたように、本発明の性質および範囲を理解するためには、従来の船体の問題のほかに、出願日において本願に先行する、曳航水槽試験の結果の再検討を含む、米国特許出願第08/814418号および米国特許出願第08/814417号の遷音速船体THおよびそのハイドロフィールドTHの限度および潜在能力の再検討も必要である。
【0040】
2a.THおよびTHの特性および特徴:
THは、静的条件および動的条件で頂点が前の三角形の水線面形状、最大喫水が前にあり最小喫水が後にある、側面図で三角形の縦断面または変更された三角形の縦断面、および水に対して大きい傾きまたは垂直の平らな横表面を有する水中部分を有することを特徴とする。したがって、水中部分は、平面図で細く狭い入口角および側面図で後ろの細い出口角を有する二重くさび体積配分を有する。したがって、THおよびそれに関連するハイドロフィールドTHの形状は、平面図での肩、ミッドボディ、またはクォーター曲率などの表面造波源がないことを特徴とし、これらは、狭い前の入口を有し、この入口は、単位時間あたりに移動される水の体積を最小にし、特殊な船内水線下部分流れを誘導し、ディスプレースメント船体の従来の造波パターンを除去する流れサブダクション(subduction)に味方し、非常に減らされたサイズおよびミッドボディトラフの不在という新しいタイプの流体力学的レイ現象(hydrodynamic ray phenomenon)を可能にする。THは、その下面の望ましい滑走防止推進圧力構成要素と、側面の望ましい収縮する流線と、船体の下側表面の望ましい重力圧力傾度と、ピッチアップを防ぎ、船尾波を除去する幅広い船尾潜流とを有し、水線下部分エネルギの回復ならびに追い波からのエネルギの回復に味方する。
【0041】
したがって、私の以前の米国特許出願第08/814418号で指定されるTHおよびTHの非常に重要な特徴は、そのディスプレースメントモード内の静かな水での高速動作のために水の下の造波源を除去し、したがって、「ハルスピード」付近およびそれを超える速度での従来の船体を特徴付ける造波抗力の高い指数関数的増加を防ぐか減らすことである。前に説明したように、公称「ハルスピード」は、ノット単位の速度をフィート単位のボート長の2乗で割ったものを用いて表される時に、1.34である。この速度範囲で、たとえば図1に示されているように、従来の船体の総抗力の造波抗力成分は、大きく増え、したがって、総抗力が、船体形状、ビームローディング(beam loading)、およびフルード数範囲(フルード数は、フィート/秒単位の速度を重力加速度とフィート単位の水に引き込まれた水線長との積の平方根で割ったものと定義される)に依存して、通常は3以上程度のべきによって、大きい指数関数的な形で増える。
【0042】
したがって、私の以前の米国特許出願第08/814418号のTHおよびTHの原型形状の場合のように、速度に伴う造波抗力増加の主要な源が除去される場合に、THの、速度に伴う抗力増加の主要な残りの源は、摩擦に起因し、(a)THが、きれいなウォーターエグジット(water exit)を有するので船尾での圧力抗力問題を有しておらず、(b)THが、その浸水表面に沿った局所的動圧を、したがって平均動圧を大きく増やす曲がった表面を有しないので多く減らされた形状抗力を有することに留意されたい。
【0043】
要約すると、THの原型の目的および特徴は、ディスプレースメントモードである間のその「ハルスピード」付近およびそれを超える速度で、その総抗力が速度の2乗べきのみに伴って増えることである。ディスプレースメント動作モードは、米国特許出願第08/814418号および米国特許出願第08/814417号で、臨界超過速度および亜臨界速度に関連する図面で特徴を表されている。たとえば、THでは、
・浸水表面が、所与の重量についてほぼ一定のままになり、
・原出願第08/814418号の図13および14に示されているように、船体の側面での水流が、小さいレイとして継続し、横の浸水表面が、ほぼ一定のままになり、
・船体の下面が、水面に対するほぼ一定の負の迎角を有し、前向きの推進圧力成分に実際に寄与し、この前向きの推進圧力成分は、原出願第08/814418号の図13および本願の図7に示されているように、THの水中側面に作用する水の阻止する圧力成分に対向する。
【0044】
2b.THおよびTHの水槽試験データ:
TH原型模型(付加物なし)の曳航水槽試験からの曲線を、本願の図8に示すが、これは、従来のディスプレースメント船体の臨界ハルスピードに対応する速度で始まる臨界超過領域で、THの総抗力が、試験の速度限界内で「ハルスピード」を超える速度の2乗べきに実質的に伴って増加することを示し、その間に、船体のピッチ角は大きくは変化せず、底面および側面の浸水表面が実質的に変化しないことが観察された。2乗べきまでの抗力増加は、その速度範囲内で造波抗力の増加がない場合に限って発生し得る。従来の船体の臨界速度は、船首波とそれに対応する船尾波との間の長さが船体の水線長と等しい時に発生し、これは、フィート単位の長さの平方根に対するノット単位の速度の比が1.35の時に発生する。
【0045】
比較として、同一の水槽でTHと等しい長さ、船幅および重量で試験された、洗練された International America's Cup Class 船体(カヌーのみ、付加物なし)の抗力挙動も図8に示されており、従来の船体の臨界「ハルスピード」でTHと実質的に等しい抗力が示されているが、その「ハルスピード」を超える速度で、2乗べきより大きく、THよりはるかに大きい抗力増加が示され、IACC船体は、速度に伴う迎角のかなりの増加も経験した。
【0046】
図8の試験データは、IACC船体が約1.55の速度対長さ比でTH原型より40%高い抗力を有し、約1.75の速度対長さ比で28%高い抗力を有することを示す。台車の速度限度に起因して、TH模型の試験では、約1.8を超える速度/長さ比でのハイドロフィールドを調査することができなかった。
【0047】
THの総抗力の2乗速度増加について選択される初期設計速度は、THの形状と、船体長の3乗に対するボート重量の比とに依存し、たとえばTHの側面の平面図で角度を変更するかまたは重量を変更することによって、図7に示された1.35より少なくすることができる。たとえば、20%の重量削減が、THの臨界超過速度領域の開始速度/長さ比を1.1まで下げ、この上では、抗力増加が、速度の2乗べきのみに従う。
【0048】
2c.形状および推進に関するTHの特性:
最初の出願時の米国特許出願第08/814417号に、米国特許出願第08/814418号に示されなかった、THの水面下の下側表面のクリティカルな代替形状およびTHの水面上の形状の複数の図面が含まれ、これらは、本発明のステルス特性に関して重要であり、反対の波を乗り越え、その中で成功裡に動作するTHの能力に関する本発明の船体形状について重要である。これらの以前の特徴と本発明の下でのその拡張および改善の再検討を、本明細書の後の部分で行う。
【0049】
3.本発明につながる従来の船体に関する概念的質問:
本願のセクション1〜6に含まれるさまざまなタイプの従来の船体およびセクション7に含まれる遷音速船体の速度エンベロープ特性および速度限度特性に関する上の再検討は、次の概念的質問につながり、本発明はこれに答えるものである。
【0050】
3a.図3および4を検討すると、これらの図は、ディスプレースメント、半ディスプレースメント、および滑走などの周知の流体力学的領域を有する最適化された従来の船体の3つの異なるタイプが、1未満から5を超える速度対長さエンベロープで静かな水で動作することを要求されることを示すが、その広い速度エンベロープで動作できる単一の船体を設計することは可能であるか?
3b.3aへの回答が肯定である場合に、別々に効率的に最適化され、図3の速度対長さ比の広さ全体をセグメントによってカバーする3つのタイプの船体タイプの重量対抗力比を、同一の広い速度範囲全体をカバーする単一の船体タイプを用いて等しいものを作ることができるか、または少なくとも速度範囲全体の主要なセグメントにわたって達することができるか、あるいは、少なくとも広い速度範囲の一部で、新しい船体の重量対抗力比を減らすか改善することができるか?
3c.たとえば本願のTH−IIIおよびTH−III発明のように、それぞれが100年にわたる開発で最適化された2つまたは3つの異なる船体タイプを現在は必要とする広い速度範囲にわたって動作できる単一の新しい船体タイプが確立される場合に、その新しい船体タイプが、めいめいの速度エンベロープで反対の波についても最適化された船体の3つのタイプがこうむるペナルティより大きい、反対の波での速度および重量におけるペナルティを有することができるか、あるいは、新しい船体のペナルティをより深刻でなくし、または多分ほとんど除去することができるか?
3d.革新的な新しい船体タイプが上の3aおよび/または3bあるいは3cまでで説明した望ましい特性を達成すると仮定して、これをどのようにトリムし、制御しなければならず、静かな海および反対の波でどの方法によって駆動し、操舵しなければならないのか?
上の概念的質問は、曖昧であり、下で再検討するように、開始の基準点として米国特許出願第08/814418号の遷音速船体THを用いて焦点を合わせ、調査された。
【0051】
3aから3cまでの概念的質問の再定式化に、より具体的な言葉で下で焦点を合わせる。
【0052】
3e.ディスプレースメントモードでのTH米国特許出願第08/814418号の実用動作が減少する効率回復に出会う上側速度範囲があるか?
3f.3eが成り立つ場合に、米国特許出願第08/814418号のTHおよびTHについて、必要であり、実現可能な質的変更、改善、方法、または発見。
【0053】
3eに関して、作者は、まず、速度に伴う造波抗力増加なしの臨界超過領域を検討する。不完全に摩擦抗力と呼ばれる、粘性に由来する速度に伴う抗力増加が残らなければならないが、これは、所与の船体サイズに関して、必ず速度の2乗べきに伴って増える。したがって、原動所サイズ要件、重量、およびコストに起因する実用的限度に出会う可能性があり、これが発生するのは、THの抗力増加が速度の2乗べきの場合であっても、出力が抗力と速度の積と等しくなければならないので、出力が速度増加の3次関数であるからである。
【0054】
さらに、船体の重量が実質的に一定なので、図7aに示されたTH原型のその下側表面の推進圧力成分が実質的に一定なので、速度が高まる際に性能限度がある可能性がある。したがって、速度の2乗べきに応答する摩擦抗力増加に対向しなければならない全体的な推進の必要と比較して、図7aに示された推進圧力の減少するパーセンテージ寄与−Nsinβがある。
【0055】
3g.速度増加に伴うTHの推進圧力の減少する利益:
THの推進圧力成分の準一定の大きさは、THの全体的な出力要件の大きさに関して重要な問題であり、これを、具体的な例を用いて下で示す。
【0056】
・ディスプレースメントモードで1.2の速度対長さ比で30000トンの重量を有する700フィート長TH船について適度な100の重量対抗力比を仮定する。図72によれば、米国特許出願第08/814418号のTH船体は、この領域で、その下面の推進圧力成分−Nsinβを経験する。高い重量対抗力比は、低い総出力が必要であることを示す。
【0057】
・上の例の総抗力は、明らかに、1.2 ルート700=31.75ノットの基準速度で30000/100=300トンである。リモートスピード(remote speed)に基づく動圧は、2879lb/ft2である。下面の正味推進圧力GPFは、図7aによれば−Nsinβであり、ここで、βは、離れた水への下面の負数である。βが−4°の場合に、GPF=2097トンであり、図7bに示されたTHの側面の圧力の対向する後ろ向き成分によって大部分が打ち消される。したがって、下面の正味の推進力NPFは、定義により、GPFよりはるかに少なく、300トンの総抗力よりはるかに小さい。NPFが、総抗力の20%すなわち60トンに対向すると仮定する。
【0058】
・この例では、TH原型の速度に伴う総抗力増加が、最適THハイドロフィールドの総抗力増加に対応する、すなわち、抗力増加が、「ハルスピード」を超える摩擦に起因する抗力増加だけであり、速度の2乗に伴ってのみ増加すると仮定する。この仮定は、2の速度対長さ比まで図8に示されている試験データによって検証され、THの重量対摩擦抗力比に対する推進圧力の相対的無力における速度の増加の影響を判定するために、この例ではその比を超えて外挿される。
・初期速度を63.5ノットに倍増した場合に、抗力は4倍すなわち1200トンになり、推進圧力の変化を考慮に入れなければ重量−抗力比は50に減り、速度対長さ比は63.5 ルート700=63.5/26.45=2.40に増える。対応する動圧は、11516lb/ft2である。しかし、船体の一定の迎角で重量の定数関数のままであるNPFは、総抗力の20%から5%に減る。
・速度を3倍の92.25ノットにした場合に、抗力は、(92.25/31.75)2=9倍だけ増え、2700トンに達し、重量−抗力比は、実質的に11.1まで下がり、速度対長さ比は92.25/26.45=3.48になる。対応するリモート動圧は、25911lb/ft2であり、NPFの寄与は、必要な総推進力のうちの無視できる比率になる。
・速度を4倍の127ノットにした場合に、抗力は(127/31.75)2倍すなわち16倍大きくなり、4800トンをもたらし、重量対抗力比は、127/ ルート700=4.80の速度対長さ比で30000/4800=6.25に減る。リモート動圧は、46064lb/ft2であり、パーセンタイルNPF寄与は、事実上0である。
【0059】
上の分析は、米国特許出願第08/814418号のTH原型の次の制限する特性の判定を可能にし、本願の3aおよび3eの概念的質問の一部に答える。
【0060】
3h.より高い速度対長さ比での重量対総抗力比の摩擦抗力項Dは、膨大なリモート動圧qの下で非常に大きい値に達する。粘性抗力Dfは、式Df=KCfqAによって支配され、ここで、Aは、濡れ面積であり、Cfは、レイノルズ数に依存する粘性の係数(viscous coefficient)であり、Kは、形状抗力および圧力抗力を考慮に入れるための係数である。「ハルスピード」の2倍から4倍程度高い速度対長さ比で、仮定されたTH原型の重量対抗力比は、減り、滑走船体程度の低さ、分析された例では約8以下とすることができる。
【0061】
3i.THの下面の推進圧力は、「ハルスピード」付近のディスプレースメントモードで重要であり、必ずTHの見掛け重量およびTHの下面の負角βの正弦の関数であるが、速度が増えるにつれて抗力に打ち勝つのに必要な総推進推力のパーセンテージとしてますます重要でなくなる。というのは、総推力が打ち勝たなければならない粘性抗力が、一定の濡れ面積で速度の二乗に伴って増加し続けるが、速度に伴う重量の変化は、高い動圧でのサブダクション流れの下での見掛け重量増加を考慮に入れても、明らかにそれほど大きくはなく、したがって正味推進水線下部分圧力の変化も、明らかにそれほど大きくはない。
【0062】
3j.船体の下面の負迎角の結果のサブダクション流れ(たとえば、米国特許出願第08/814418号の図14cの流れf)は、船体の見掛け重量を増やし、推進圧力成分を増やす可能性があるが、船体の側面の濡れ面積を増やすはずであり、これは望ましくない。
【0063】
3k.減少するパーセンタイル推進圧力を有するTHの利益:
上のセクション3Gで再検討したように、増加する速度に伴って減る推進圧力のパーセントにもかかわらず、適度な原動所コストおよび重量を用いてディスプレースメントモードの下でTHに関する高い速度に達することが可能である場合に、THは、THの重量対抗力が高速で滑走船体の重量対抗力比ほど望ましくない場合であっても、THが、滑走船体と異なって、「ハルスピード」範囲を含むより低い速度で非常に望ましい重量対抗力比を有し、
・トリムおよび制御がTHの場合について適当であり、反対の波での挙動が許容できるならば、2つまたは3つのタイプの従来の船体ではなく、単一のTH船体を用いて、匹敵する効率を有する広い速度エンベロープを達成することもできる
という非常に重要な利益を有するはずである。
【0064】
3l.上の概念的質問の結果の要約:
セクション3eの概念的質問に対する回答は、イエスであり、速度に伴って増える粘性抗力(推進圧力成分の減少する結果を引き起こす)の問題を克服するために、米国特許出願第08/814418号のTHおよびTHに必要な改善がある。また、質問3dに関して、トリム、制御、および反対の波の影響に関して、回答はやはりイエスである。これらの問題に対する解決策は、極端にむずかしいが、理論的および経験的に達成されており、次のセクションで説明する本発明の教示および実施形態に含まれる。
【0065】
4.本発明の目的:
TH−IIIおよびTH−III発明の目的は、概念的質問の解決の必要から生じる、すなわち、
4a.2を超える増える速度対長さ比に関する重量対抗力比が改善された効率を有する、THの新しい流体力学的条件および速度領域を確立すること。
【0066】
4b.2未満の速度対長さ比で米国特許出願第08/814418号の下のTHに関して既に達成されている望ましい結果を劣化させない形で目的5aを達成すること。
【0067】
4c.5aおよび5bの結果として、特殊な形状、特徴、動力付き推進手段、およびさまざまな設計デバイスと共に必要になる可能性がある単一の遷音速船体TH−IIIの動作の速度領域を拡張して、許容できる効率と共に、通常は複数のタイプの従来の船体を必要とする広い速度範囲を含めること。たとえば、1.35未満の従来の効率的なディスプレースメント船体の速度対長さ範囲と、3を超える従来の滑走船体の速度対長さ範囲。
【0068】
4d.従来の船体を超えず、好ましくはそれ未満の、反対の波の存在で劣化しない形でそのような設計特性を伴って、望ましい目的5a、5b、および5cを達成すること。
【0069】
4e.レーダーおよび他の感知方法に関してステルスであるTH−III構成で上の目的のほとんどまたはすべてを達成すること。
【0070】
4f.全天候動作能力を達成するために、反対の波および風を含むさまざまな海面状態の下でのTH−IIIの好ましい動作および操縦を可能にする船体形状、トリム特徴、制御デバイス、および出力配置を用いて上の目的またはこれらの目的の組合せを達成すること。
【0071】
5.本発明の実質および詳細:
この作者のR&D作業によって開発された、THハイドロフィールドをTH−IIIに拡張する新しい速度領域と、革新的改善、洗練、およびTH−IIIのある種の非常に重要な特性を指定するために、まず、米国特許出願第08/814418号の範囲内の、本願の図10および11に示された米国特許出願第08/814418号のTHの流体力学的領域および速度領域を再検討する。
【0072】
5a.TH米国特許出願第08/814418号内の臨界超過領域の再検討:
これは、米国特許出願第08/814418号の下のハルスピード付近およびその上の速度対長さ比に関する水中遷音速ハイドロフィールドの好ましい流体力学的設計条件である。その表面の外見を、図10に示す。航跡領域の表面流れは、ほぼ平らであり、船尾の後の領域で重力的な意味で等ポテンシャルになる傾向があるが、船尾の後で生じるTHの下面の下の摩擦のゆえに、分子攪拌(molecular agitation)を含む。それでも、領域1は、THの最適性能に関する成功裡のアンチウェーブ(anti-wave)サブダクションを示す、非常に方向的に安定した運動量のゆえに、独自の形で広がり続ける。移動するTHによって排除される主要な体積に起因する流れは、主に領域1で発生し、最小限の表面変更が、下流の航跡カット(wake cut)9のハンプ7によって示される最小限の高さを有する左右の3次元レイ3および5として現れる。これは、水槽速度限度である2の速度対長さ比までの曳航水槽試験で観察された。
【0073】
5b.米国特許出願第08/814418号の範囲内の亜臨界領域の再検討:
この速度領域を、図11に示すが、図11では、THの表面流れの場が、領域11でほぼ平らである。しかし、亜臨界速度での流れの運動量内容に関する下面粘性力が、11での航跡の形状および区域を、船尾境界11を有するゴシックアーチタイプに制限する。レイ13および15は、より大きいハンプを有する。平らな航跡11の下流に、多少の渦およびハンプ形成17と中央ハンプ21がある。この亜臨界領域には、たとえTHについて従来のディスプレースメント船体のタイプのトラバース船尾波および船首波がないにせよ、渦および高さのゆえに、いくつかの場合に、速度の2乗べきより高い、速度に伴う抗力増加がある場合がある。
【0074】
臨界超過速度と亜臨界速度の両方で、米国特許出願第08/814418号のTHの下面は、リモート流れに対して実質的に負の角度であり、かなりの推進力を経験する。
【0075】
5c.TH−IIIおよびTH−IIIのハイパークリティカル領域の開発:
試験された臨界超過範囲を超えるTHの動作能力を達成するために、新しい流体力学的特性を生成するために表面に対する最初の大きい負の角度をはるかに小さい負の角度に向かって変更するようにTHの水線下部分角度を調整しなければならないという理論的考察を検証するために、2の速度/長さ比を超える新しい試験が必要であったが、ここで、一定の重量で、それでも、THの横浸水面積を、減らされた流れサブダクションの存在の下で大幅に減らさなければならないことが推定された。これは、減らされた横濡れ面積と共に、
・肩、ミッドボディ、またはクォーター曲率なしのハイドロフィールドおよび船体と、
・横の外向きの流れおよびしぶきの欠如と
が維持されたので、増える速度および動圧に伴うより効率的で異なる3D流れ挙動につながる。
【0076】
これらの特性は、減らされた横浸水表面からの大きく減らされた抗力に関して推進水線下部分圧力の減るパーセンテージをトレードオフし、2を超え3程度の速度対長さ比に関するものより高い重量対抗力比をもたらす、曳航水槽での新しい改善された流体力学的特性を用いて達成された。この特殊な異なる領域は、(a)THの下面が大きく減らされているがまだ負の角度のままであるので動的揚力が可能でなく、(b)それでも横浸水表面の減少が発生するという事実を示すために、ハイパークリティカルと呼ばれる。この領域は、独自に効率的であり、図13の助けを得て後で詳細に説明するように、ハイパークリティカル領域でのより高い動圧を達成するためのより高いレベルの効果の下で、クリティカルな程度までTHの特殊な三角形平面図形およびその縦断面図の独自の特性である。
【0077】
5d.TH−IIIおよびTH−IIIのトランスプレーナ領域の開発:
新しい模型試験で、速度がハイパークリティカルを超えてさらに増やされ、非常に大きい濡れた平面図形に作用する非常に高い動圧に起因する大きい動的揚力をそれでももたらす非常に小さくクリティカルな正の角度すなわち低い平面図形負荷を達成するために水線下部分が制御される時に、第4の流体力学的条件および速度領域がもたらされ、これは、それでも、ハイパークリティカルの場合と比較してTH−III船体の下側表面の濡れた長さの実質的な減少を有する。この領域が遷音速船体の臨界超過領域のある横インフロー(in-flow)特性を保つすなわち、流れの方向が、図14fに示されている滑走に通常の主に外向きの流れを生成しないという点で、私は、この領域を「トランスプレーナ」と呼ぶ。
【0078】
要約すると、この作者の遷音速船体に関するR&Dで、亜臨界の場合および臨界超過の場合を含めるために米国特許出願第08/814418号で確立された動作領域が、ハイパークリティカルおよびトランスプレーナと命名されたより高い速度範囲まで拡張され、指定され、ハイパークリティカルおよびトランスプレーナは、米国特許出願第08/814418号のTHが、ディスプレースメントモードで同一の速度/長さ比範囲を達成するために動力を与えられた場合より実質的に好ましい重量対抗力比を有し、それより低い出力を必要とする。
【0079】
5e.ハイパークリティカルの場合に対する序文としての臨界超過領域:
図12aに、紹介として、流体静力学(V/ ルートL=O)、4.25の長さ/船幅比(船幅は図示せず)を有するTHを表す水線面24、および60程度の重量/長さ比(トン/[フィート単位の長さ/100]3について約0.015の喫水対船幅比を有する船尾喫水23を示す。下面は、船尾よりはるかに大きい船首の喫水を確立する負の角度βを有する。
【0080】
「ハルスピード」を超える動的条件で、臨界超過領域のTHのリモート水線面に関する側面図は、図12bに示されたものに変化する。動的船尾喫水25が0であるが、下面角度βおよび船尾での喫水ならびに甲板角度が実質的に変化しないままであり、しかし推進圧27が大きいことに留意されたい。ハイドロフィールドの対応する表面は、既に図10に示した。
【0081】
5f.ハイパークリティカル領域でのTH−III本体およびTH−III流れの指定:
2の速度/長さ比を超えて速度を高めるために、この作者は、TH−IIIの航跡のより高い運動量内容が、図13aに示された、約0.02の喫水対船幅比を有する流体静力学(V/ ルートL=O)喫水29の増加としての重心の後ろ向きのシフトを許容し、正当化し、なおかつ船首での深い喫水を維持したと理論付けた。しかし、動的条件では、船尾の航跡に関する流体力学的喫水が、図12bと同様に、図13bで実質的に0になり、下面角度は、図13bでは、図12bのβより実質的に小さいβ1に減る。β1は、負ではあるが、0に達する可能性がある。迎角のこの変更は、TH−IIIにショルダウェーブ(shoulder wave)がなく、その船首波が最小限なので、従来の船体の船首波およびショルダウェーブを用いて予測可能ではない(図2を参照されたい)。小さい角度βは、総推進力を減らすが、新しい模型試験で、この小さい角度βが、THの側面の粘性抗力または摩擦抗力も減らすことが確認された。対応する流れの表面の外見は、図10に示されたように現れるが、滑走に関係することのできない異なる3次元流れの場の成分を有する。というのは、船体の表面成分が、リモート流れに関して正の迎角を有しておらず、それでも、THの側面の濡れ面積を減らすからである。この条件(流体力学的重量を排除される水と実質的に等しくしなければならない)の達成は、大きく減らされたサブダクションと、ハイドロフィールドの表面または航跡内の大きい劣化なしの推進圧力の減少とに起因する見掛け重量の減少によって、図12bに関して変更される。この新しい領域は、「ハイパークリティカル」と命名され、約0.5単位(0.007% LOA)の腕37を用いてTH−IIIの抗力に関してノーズアップピッチアップカップル(nose up pitch up couple)をもたらすためにプロペラ軸33内として置かれた、下面にほぼ平行で下面の下の推進推力を用いて達成された。代替案では、スラスト線がプロペラ軸35内として上向きに傾けられる場合に、推力と角度39の正弦との積と等しい持ち上げる力をもたらすことができる。たとえば、重量対抗力比が75の場合に、抗力はW/75になり、39での10°の角度が0.0024Wの持ち上げる力をもたらすはずである。
【0082】
図13bの仕様は、次のように図12bと異なり、図12bに関して改善されている。βからβ1への下面の角度の大きい変更と、ほぼ長さ26からはるかに小さい値38への船首喫水の大きい減少と、この場合にはプロペラからであるがウォータージェットとすることもできるスラスト線のある効果と組み合わされた、横濡れ面積および下面の推進圧の実質的な減少、航跡での動圧および運動量内容の増加、および重心の船尾シフトと。上の変更の複雑な組み合わされた作用が、ハイパークリティカル領域を作り、3程度またはそれ以上の速度/長さ比に関する、すなわち、通常はより大きいV底半滑走ボートに割り当てられる範囲での、大きく改善された重量対抗力比をもたらす。しかし、ハイパークリティカル領域での性能が、図10の航跡の表面外見を損なっておらず、TH−IIIが、3つの領域すなわち、亜臨界、臨界超過、およびハイパークリティカルで動作し、大きく押し下げられた表面を有する航跡を防ぐことに留意されたい。
【0083】
図13bの上の説明がTH構成に関して実現可能であり、TH構成に独自なのは、その平らな側面に、通常は造波源である肩、ミッドボディ、およびクォーター曲率がないからであり、また、THの最大船幅が、船尾に隣接し、したがって、水線下部分運動量流れ全体を集め、トラバース船尾波形成を防ぐために継続する高い運動量内容を有する平らな出る航跡に排出するからである。
【0084】
図13bに関する注意は、後ろへの重心シフトが、臨界超過領域とハイパークリティカル領域の両方を満足しなければならないので、後ろへの重心シフトの限度である。誤った選択は、不安定で発散性になる可能性がある、航空機の「フゴイド振動」モードに似た自立したピッチ振動の傾向を作る可能性がある。図13bのCG位置は、後で再検討する、ある限度を必要とする。
【0085】
5g.TH−IIIおよびTH−IIIのトランスプレーナ領域でのTH本体および流れの指定。
【0086】
THの速度が、図13bのハイパークリティカル領域を超えてさらに高められる時に、完全に新しい流体力学が理論付けられ、これが、従来の半滑走または滑走にペナルティを与えるタイプの外向きの横の流れなしで独自に効率的な部分的動的揚力状態を可能にすると同時に、臨界超過領域およびハイパークリティカル領域をも作り、可能にする遷音速船体特徴を維持するという点で、本明細書で「トランスプレーナ」と命名される。この流体力学および船体の条件を、図14の助けを得て説明する。しかし、図14を説明する前に、たとえば図14fの、進歩した設計の従来の滑走ボート設計について再検討を行い、その結果、トランスプレーナ領域の質的相違を諒解できるようにする。従来の滑走は、次のように特徴を表される。
・滑走速度未満の滑走船体は、船尾で沈み、図2の最下部に示されているように、大きい船首波およびショルダウェーブに起因して迎角が増える。
・ボートの水線下部分が適当な表面を有し、十分な出力がある場合に、滑走ボートは、その船首波およびショルダウェーブを越えて上り、図14fの滑走領域に入る。
・図14fの横しぶきを伴う外向きの流れ41は、従来の滑走形状の運動量変化による揚力要件の結果である。
・水との接触の、図14fで43として図示された最小滑走面積Apは、最小限の濡れ面積を用いて揚力をもたらし、高い面積負荷すなわち、ボート重量Wを滑走面積Apで割ることによる商をもたらす。
・小さい面積Apによって引き起こされる比較的大きい滑走迎角は、図5の助けを得て既に説明したように、揚力に起因する大きい運動量抗力成分をもたらす。
・船体の平面図形の全体的な面積43+45と比較して小さい滑走面積Ap、43は、反対の波の中で区域45で大きい船首底衝撃負荷をもたらし、区域45の上の大きい船体体積によって増幅される大きいピッチ振動を引き起こす。
・船尾での大きいビームローディングすなわち、重量Wを船幅47で割ることによって得られる商が、深い航跡および大きい迎角をもたらす。
・断面図でへこみ49および突起51を含む乱された航跡は、横流れ損失に加えて大きい運動量抗力の現れである。
・プロペラ後流によって乱されない限り、抗力の現れである大きいハンプ53と共に船尾の下流で通常は閉じるへこみを有する航跡平面図形。
・前に説明したように、静かな水の中でのみ乾いており、波の中では繰り返して引き込まれる、大面積の部分45およびその上の関連する体積は、大きい船首底衝撃負荷と浮力の大きい変化を引き起こし、過度の周期的構造的負荷、激しいピッチ、および上下加速度につながり、これらは、乗員および積荷が耐えられないものになり、反対の波の中での従来の滑走船体の動作速度を下げることを必要とする可能性がある。
【0087】
従来の滑走船体の上記の問題のすべてを克服する、図14のTH−IIIが、図14bで側面図で、図14aで平面図で、そのトランスプレーナ領域で図示されている。TH−IIIのトランスプレーナ領域の相違および大きな利益は、次の説明で明白である。
・THがトランスプレーナ領域に入るために上らなければならない、THのショルダウェーブがない。
・小さい乾いた平面図形面積63と比較して大きい滑走面積Ap 61が、小さい正の角度αを用いる適当な運動量揚力の生成を可能にし、このαは、TH−IIIの船尾での最大船幅の位置のゆえに大きくなることができない。
・Ap 61が大きいので、小さいトランスプレーナ面積負荷W/Ap。
・低い面積負荷W/Apを伴う適度な揚力を実現可能にする、船体の固有の小さい迎角α。
・αの固有の小さい値に起因する、適度な運動量揚力を伴う小さい運動量抗力。
・トランスプレーナ流れでのTH−III平面図形の独自の利益である、適度な運動量揚力に抵抗しえない、通常のTHの側面レイに味方する、トランスプレーナ領域でのTH−IIIからの横へのエネルギを散逸する流れの欠如。
・船尾に大きい最大船幅を置くことによって達成される、低い面積負荷をも可能にする、船尾での小さいビームローディング。
・関係するトランスプレーナ請求項で指摘されるように、小さいαおよび小さいW/Apと、小さいW/B1、外向き流れの欠如、その代わりの低エネルギレイ、および外向き横しぶき流れの不在を用いて達成される優れた低エネルギ航跡。
・関係するトランスプレーナ請求項で指摘されるように、濡れた滑走面積61に対するおよび総面積63+61に対する乾いた平面図形面積63の比率が滑らかな波で小さく、それゆえに面積61に対応する乾いた体積も小さく、これによって、反対の波での船首底衝撃負荷および追加の浮力の揚力がピッチに対する最小限の影響を生じ、これによって高い構造的負荷および加速度が回避されるので、反対の波での優れた挙動。
【0088】
具体的に言うと、図14aに、図10および11に似た、その原型の三角形形状を有する遷音速船体が平面図形で示されている。しかし、図14aの流体力学的領域は、図12と完全に異なり、従来の滑走船体とも異なる。図14bでは、トランスプレーナ領域で、船体が、符号65に示されている非常に小さい正の角度β11であり、濡れた長さ61および乾いた長さ69を有する。従来の高速滑走船体と反対に、乾いた面積63が、面積61よりかなり小さく、これによって、反対の波での船首底衝撃負荷が大きく減ることは明白である。また、長さ69の上の体積は、長さ67の上の体積よりはるかに小さく、反対の波での追加の浮力が減る。静かな波では、航跡の表面が、横しぶきの独自の欠如を示し、実際に、図10のタイプの横レイが保たれ、これは、従来の滑走船体と反対であり、従来の滑走船体では不可能である。TH−IIIのこれらの独自の特徴が、関連するトランスプレーナ請求項の対象である。
【0089】
ハイパークリティカル領域、トランスプレーナ領域、およびx領域(後を参照されたい)に適用される、TH−IIIの独自の流体力学および優れた凌波性につながるあるクリティカルな幾何学的関係を、限定として指定されるのではない次の例で示す。この例では、符号が、図14に関係し、単位として識別される数は、フィート、10フィート、メートル、または他の単位とすることができる。
【0090】
・LWL=LOA=符号67+69=70単位
・B、船幅、符号62=16単位
・LWL/B=4.375
・入口平面図形角度60=13°
・滑走長さ、符号67=35単位
・図14の乾いた長さ、符号69=35単位
・船体の総平面図形面積=560単位の2乗
・濡れ水線面面積、亜臨界、臨界超過、ハイパークリティカル=560単位の2乗
・乾いた平面図形前トランスプレーナ、静かな水=140単位の2乗
・濡れた平面図形トランスプレーナ、静かな水、560−140=420単位の2乗
・%水線面面積、負荷ありハイパークリティカル=100%
・反対の波での追加負荷を有する%水線面面積=0%
・%水線面面積、負荷あり、静かな水、トランスプレーナ、420/560=75%、トランスプレーナ
・反対の波でトランスプレーナの過渡追加負荷を有する%面積=140/560=25%
・ボートの重量=W
・平面図形負荷=W/420、静かな水、トランスプレーナ
・平面図形負荷=W/560、ハイパークリティカル
・ビームローディング、全条件、W/16
・平均自由ボート高さ、符号64=5単位
・水線面の上の体積、トランスプレーナ=2100単位の3乗
・前向きの乾いた平面図形の上の体積、トランスプレーナ=700単位の3乗、荒れた水でのみ部分的に引き込まれる
・水線面の上の体積に対する前の体積の比率700/2100=0.33。
【0091】
THの上の設計判断基準および特性は、限定的ではないが、独自である。さらに、これらは、安全なトランスプレーナ動作のために、静かな波および反対の波での挙動が適当になるように重心(GC)、縦浮面心(LCF)、およびスラスト線の正しい位置を必要とする。トランスプレーナ流れで必要な条件を満足するのに必要な重心は、縦断面図での平面図形における船体形状およびスラスト線位置に依存する。上の例でのCG位置のよい値は、船尾から前向きに測定して28単位すなわち、LWLの40%であり、スラスト線は、下面にほぼ平行でその下に1.25単位すなわちその下に1.78% LOAである。上の独自の特徴は、請求項に関する特性である。
【0092】
さらに、安定したCGを有するTH−IIIでハイパークリティカル領域からトランスプレーナ領域への遷移を達成するために、対応する船尾縦断面形状を、角度−αによって示される約−5°で上に傾けなければならないLWLの2.5〜3.5%の長さを有する、73として示された下面の長さの最後の約2.0単位について、図14cに71として示す。これは、高速滑走ボートの縦断面形状と質的に異なり、これと反対の実践であり、高速滑走ボートでは、過度の迎角なしでの滑走を容易にし、たとえば図2の最下部でのノーズアップ傾向を軽減するために、滑走前のハンプ抗力をも減らすために、船尾で反対の下向きの反りが推奨される。
【0093】
次のセクションで指定される船体形状、CG、および制御フラップのクリティカルな重要性は、0速度から静かな水および波の中でのトランスプレーナへ流体力学領域が変化する時のピッチ平衡に含まれる変数を認識することによって、よりよく理解することができる。流体静力学的浮力中心、船体移動中の流体力学的浮力中心、トランスプレーナ領域で劇的に変化する縦浮面心(LCF、水線面の面積図心)、運動量変化に起因する動圧力の中心、流体力学的サブダクションに対する船体の迎角変化の影響、静かな水および反対の波での上記のすべてのめいめいの相互作用を考慮しなければならない。
【0094】
たとえば、CGが船尾から28単位すなわち40% LWLである、上で再検討した例では、縦浮面心(水線面面積図心)が、臨界超過領域での船尾から23.3単位(LWLの33%)から、トランスプレーナ領域での船尾から約15単位(LWLの21%)まで変化する。したがって、CGとLCFの間の臨界距離は、臨界超過領域およびハイパークリティカル領域について(28−23.3)単位=4.7単位(6.7% LOA)からトランスプレーナ領域での(28−15)単位=13単位(LOAの18.5%)まで変化する。近似位置を、図14aの符号70として示す。
【0095】
縦トリム、安定性、および制御に関連するこれらの重要なパラメータおよび関係は、後で説明する図14dに示されたタイプのトレーリングフラップを備え、船尾の船幅の6.25%である半径1単位の側面表面と底表面との間の丸められた角を有する船体を有する、再検討されたプロポーションの遷音速船体について例証された。
【0096】
上の例の船体の幾何形状の変形形態は、縦トリム、安定性、および制御のパラメータおよび関係を多少変更する。これらは、体積に対する重量の比、たとえば、フィート/100単位の長さの3乗に対するトン単位の重量にも依存する。与えられる例は、50から85程度の比に関するガイドである。参照として、30000トンで750フィートLWLの船は、71.1の重量対体積比を有する。これに関して、船尾よりはるかに大きい船首での流体静力学的喫水を引き起こすように遷音速船体の負荷を分配することが重要である。
【0097】
静的水線面での浮上が、従来の船で通常そうであるようにTHの下面が水線面と平行になるようにされる場合のTHおよびTH−IIIの普通でない特徴を実現するために、浮力中心は、約33% LOAに含まれ、同一位置のCGを必要とし、これはディスプレースメント臨界超過領域での過度の抗力を引き起こし、さまざまな領域での遷音速船体のCGとLCFの間の大きい距離を無効にし、高速での不安定なピッチ挙動を引き起こすはずである。また、臨界超過領域でのTHの船尾の航跡が、破壊されるはずである。そのような平行浮上では、ピッチ安定性のためにCGを前に移動する救済策が、遷音速船体の水中ノーズバルブを必要とし、これは、抗力を損ない、反対の波で望ましくなく、船首底衝撃負荷およびミッドボディでの構造的曲げモーメントの大きい変動をもたらすはずである。
【0098】
5h.単一THをさまざまな速度領域で動作させるための船尾デバイス。
【0099】
広い速度範囲全体すなわち、亜臨界領域、臨界超過領域、ハイパークリティカル領域、およびトランスプレーナ領域での単一の遷音速船体THの柔軟で効率的な使用を実現可能にするために、たとえば、従来の滑走ボートまたは半滑走ボートの船尾タブと質的に異なるクリティカルで反対の形で使用される船尾のトレーリングエッジフラップを有するなど、さまざまな幾何形状の船尾縦断面が、重要であり、最適の結果である。
【0100】
図14dに、表面77および75の角に滑らかに取り付けられた、約−6°の上向きフラップ角度Sfと2.5% LWLの船尾フラップ弦とを有する船尾フラップ76を有する、船尾77に隣接する平らな船尾縦断面75を有するTHの下面を示す。この負の角度は、安定した40% CGを有するトランスプレーナ領域と、亜臨界領域のいくつかの場合とで図14bのクリティカルな小さい角度65を生成し、制御するのに必要であるが、臨界超過領域およびハイパークリティカル領域では望まれない。
【0101】
図14eに、最適化された船体船尾縦断面を受け入れるように変更されたタイプの図14cの船尾に据え付けられた図14dの船尾フラップを示す。具体的に言うと、4.2% LOAのセクタ79で後部にゆるやかに曲がる船体の平らな縦断面船尾78があり、この屈曲によって、船尾の喫水が約0.18に減り、これによって、過度の局所船尾喫水なしで、TH−IIIの後部の浸水体積寄与が増える。角83に、腕85とブラケット84の間の接続ロッドによってトルクチューブ86から操作される約2.1%弦の船尾フラップ82がヒンジで固定されている。このフラップは、トランスプレーナ流れ用の約−5°の角度と、任意選択として約−8°までの亜臨界流れ用の角度を有する。しかし、このフラップは、臨界超過領域およびハイパークリティカル領域について船尾フラップ位置88で約0の出口角まで上向き曲率79の効果を逆転し、特殊なブレーキ位置89を有し、このブレーキ位置は、船首と船尾の両方のソースからの抗力増分のためにTHの船首を沈め、船尾を持ち上げ、ハイパークリティカル速度領域およびトランスプレーナ速度領域での制動に特に有益である。
【0102】
私は、図12、13、および14の助けを得て、形状、臨界超過領域、ハイパークリティカル領域、およびトランスプレーナ領域でのTHの流体静力学および流体力学、重心位置、LCF位置、スラスト線位置、平面図形、ビームローディング、THの後部縦断面形状、THの船尾フラップおよびその組合せ、乾いたおよび濡れた下面面積および対応する体積の分布に関する仕様と、反対の波での船体挙動に対するそれらの影響とを再検討した。後者の場合に、重量の増加が、より船尾寄りのCG位置を可能にし、たとえば、76の重量対長さ比について、CGを0.40から0.39まで後ろに移動することができ、より軽い重量対長さ比でも、トランスプレーナ領域へのより簡単な進入を可能にするためにこれを行うことができる。
【0103】
5i.THの追加のX速度領域:
図15に、この作者の遷音速船体に関するR&Dによって開発された新しい領域を示す。これは非常に独特の性質を有するので、遷音速ハイドロフィールドの前提および理解に対する関係さえ完全に探査されてはいないが、THの肩、ミッドボディ、およびクォーター曲率の不在は、クリティカルであり、最も有益なままである。しかし、この水面条件は、完全な理解を拒むように思われ、したがって、速度のより高い範囲で出会う、X領域として識別され、その証拠は、TH本体90の船尾91、その周囲、およびその後ろの、図15で指定された表面条件を示す写真である。航跡は、本体90の平らな側面の水延長として後ろに突き出す滑らかな左縁93および滑らかな右縁97を有する平らで均等なくぼみを有する。96および95での航跡断面は、97のくぼみの船外の乱されていない平らな水面区域92およびくぼみ95の船外の乱されていない平らな水面区域94の水準の下の航跡の平らな表面を示す。押し下げられた航跡ゾーンの境界を除いて、トランサム91の後ろに突き出すレイの航跡の証拠はない。このx領域について、THが、図15に破線で輪郭を示されているように、前側でより深い喫水を有することに留意されたい。航跡の範囲の外側ならびに航跡の内部の流れの場の全面的に平らな表面は、特別な流体力学的領域の証拠であり、ここで、V sin 4の航跡内の完全に横向きの流れ成分を仮定することが可能であり、Vはボート速度、4は平面図形の船首角度の半分である。
【0104】
5j.船尾フラップ、横フラップ、および底条板を有するTHのロール制御:
図16に、ハイパークリティカルモードおよびトランスプレーナモードでのTHの旋回に関する特殊な値のTHのトリムデバイスおよび制御デバイスを示す。TH 13に、同一直線上の軸107にヒンジで固定された3つの船尾フラップセグメントをその下縁に有する幅広の船尾100がある。中央フラップセグメント103は、主に旋回中のノーズアップトリムをもたらすように働き、したがって、平らな下側TH表面112の突出に関して角度102だけ持ち上げられる。これらのフラップは、右旋回に関して図示されている。右フラップ101は、102より大きい角度104だけ持ち上げられて、船体113の右側を沈め、左フラップ105は、角度104と反対の方向に角度106だけ下げられて、TH113の左側を持ち上げる。したがって、THは、右に傾き、THの底表面は、従来の舵の作用の下で右に船首を振られた時に、右への求心力成分を経験し、これが、ニュートンの第2法則の下で右に曲がった経路を生成する(舵は図16に図示されていない)。
【0105】
代替の旋回方法が図16に示されており、これには、THの側面の流れに対する正の迎角αを有するように側面図で傾いた軸109にヒンジで固定された格納式の横フラップ108が含まれる。図16に示された、フラップ108の展開された位置は、TH 113の右側に追加の揚力を生じ、左フラップ114が引っ込まれたままなので、THの右側が持ち上げられ、左への旋回を引き起こす。直線運動に関して、右フラップ108が、そのアクチュエーションピストン111によって引っ込められ、THの側面のくぼみ109に滑らかにおさめられる。
【0106】
図16のもう1つの詳細は、船体の横下角で使用される横断面曲率である。右側曲率は、サブダクションの沈める効果を最小にするために図14aのある速度領域で使用される垂直の主軸および2:1の比を有する局所楕円セクタに対応する。図15のx領域に最もよく使用される、ほぼ鋭い角116を有する異なる実施形態が、左側に図示されている。その結果、左横フラップ114を、TH 113の側面でより低い位置に置くことができ、より強力な効果を有する。
【0107】
図16の船尾フラップの使用のモードを、下で表形式で説明するが、この表では、βが、度単位の、船体の下面112の後ろ向きの突出に関する角度を表す。
【0108】
【表1】

右旋回に関する船尾フラップのトランスプレーナ使用および臨界超過使用は、ハイパークリティカルに似ている。
【0109】
図16の横フラップの使用の領域は、臨界超過領域、ハイパークリティカル領域、およびトランスプレーナ領域であり、たとえば下で概要を示すように、好ましい速度領域について、望まれる場合に最適化できる縦長さを有する。
【0110】
5k.流体力学的機能に関する横フラップ:
図17に、次のようなさまざまな応用例を有する横デバイスを示す。
【0111】
a.ドライデッキ機能。TH 120の横フラップは、静かな水位121と比較して悪い水面で動作する時、たとえば波122が存在する時に展開される。これらの条件の下で、正しく設計されたTHは、最小限の速度損失でうねりを貫通するが、うねりからの水の一部が貫通中に乾舷の上に達する場合がある。この状況は、前123、ミッドボディ124、および船尾125の左右の横フラップによって最小にされる。これらのフラップは、図16のフラップ18に似たものとすることができる。
【0112】
b.ピッチ制御機能。高速領域で、チョップドウォーター(chopped water)またはうねりの中あるいは静かな水の中であっても、横フラップの選択的使用を、ピッチ制御に使用することができ、たとえば、ピッチアップの場合に限って前の横フラップ対123を、船体のノーズダウンピッチのために船尾横フラップ対125を展開する。
【0113】
c.横制御機能。ミッドボディフラップ対124の1つのフラップだけを、ピッチ効果なしの船体のロールに使用することができ、あるいは、対125の1つのフラップだけを、フラップを展開されない反対側に向かうロールと、ノーズダウンピッチのために展開することができる。
【0114】
d.上下浮動制御。高速範囲で、フラップセット全体の展開が、ある上下浮動を生成し、あるいは、ミッドボディフラップ対124の展開が、最小限のピッチ効果を伴うCGに隣接するミッドボディ上下浮動を生成する。
【0115】
e.歩行経路としての固定された横フラップ。代替案(より低いコストの)として、静かな水での性能の多少の損失を伴って、永久的な横フラップを、通常の波および反対の波での動作に使用することができ、前錨操作前(forward anchor manipulations forward)などのためのウィンドウシールの検査のために船首方向および船尾方向に乗組員を歩かせる経路としても働かせることができる。
【0116】
5l.垂直下面フェンスを用いるロール制御:
図17には、垂直のフェンスに似た表面127も示されており、これは、直進運動での最小の抗力のための格納式底フラップに適合させることができる。舵126が回転された時に、舵は、船尾で、たとえば紙の外向きの、遠心力を生成する。これが、船尾を右に振る。外向きの動きが展開される時に、フェンス127に向かう内向きの横水流成分が展開され、これが、フェンス127の右側の圧力を高め、したがって、右側が上になるようにTHをロールさせる。舵によるヨーとフェンス127によるロールの組み合わされた作用が、左に向かう船体の求心力の生成を引き起こし、ニュートンの第2法則に従う左旋回経路を引き起こす。求心力は、2つの部分を有し、一方は、船体の下の内向き成分、他方は、船体の右側の内向きの力である。組み合わされて、この2つの力が、旋回の非常に小さい半径を生成することができる。
【0117】
5m.フルサイズTH船舶の効率に対する独自のサイズ効果:
私のテストの私の分析で、私は、さらに、模型試験で判定された、THのある流体力学的領域に適用可能なTH船の重量対抗力比の推定における非常に微妙だが非常に重要な利益を発見した。この利益は、従来の船体のサイズの増加に存在しない、THの船体のサイズ増加の独自の関数である。ディスプレースメント臨界超過領域、ハイパークリティカル領域、およびハイドロフィールド領域でのTHの速度に伴う抗力増加は、主に粘性に由来し、運動量変化の造波現象または造波抗力は、同一の速度範囲での従来のディスプレースメント船体または滑走船体と比較してこれらの速度範囲ではるかに重要でないので、THの重量対抗力比は、さまざまな理由から、増加するサイズに伴って向上する。1つの重要な理由は、サイズが一定のフルード数で増えるので、粘性抗力がレイノルズ数に強く伴って減少することである。たとえば、模型から船への増加するスケールに伴う抗力係数が50%減り、説明を単純にするために、粘性抗力がスケールの3乗を用いて推定される場合に、粘性抗力は、50%だけ減るが、造波抗力および重量は、スケールの3乗を用いて計算されるはずである。さらに、濡れ面積はスケールの2乗に伴って増加するので、粘性抗力のさらなる減少があるはずである。模型試験でのディスプレースメントモードでの造波抗力のTHの減少の実用的な結果は、模型試験から予測されたTH船の重量対船幅比を、同一の速度、サイズ、および重量の従来のディスプレースメント船の模型試験から予測される値の20%以上になると推定できることである。
【0118】
5n.反対の波での全般的な問題を解決するためのTH形状:
船およびディスプレースメントボートは、過去および現在に実質的な浮力予備を備えて設計され、この浮力予備は、ミッドボディ付近から船首までにかけてより大きく、この予備は、反対の波に一時的に引き込まれて、波に出会った時に船の船首を持ち上げる。水線面水準での船首での鋭い入口および狭い水線面を有する駆逐艦などのディスプレースメント船であっても、水線面の上で外向きおよび前向きにフレアされて、浮力予備を提供すると同時に、甲板水準の上のフェンスによって反対の波から保護される前方のオープンデッキを可能にする。
【0119】
V底を有する単船体船および滑走ボートも、同一の理由から、実質的な浮力予備と、ミッドボディから船首までの滑走タイプ表面予備を有する。
【0120】
ピッチ慣性を減らすために、重い構成要素を船の中央に置くことも、従来の船およびボートの実践であった。
【0121】
TH設計は、反対の波のための形状および体積に関するこれらの伝統的な単船体船手法から逸脱し、これらと反対であり、図18a〜18gに例示された複数の重要な逸脱するTH設計特徴を有する。
【0122】
図18aに、70単位の長さおよび16単位の最大船幅船尾を有するTHの平面図130を示す。図18bに、静止した水134の上の側面輪郭線132と、水中縦断面図136を示す。図18cから18gにTHの断面を示す。次の独自の特徴に留意されたい。
−−図18aに示され、断面図18c、18d、および18eによって確認されるように、水線面の上下のすべての水準での平面図形における波への非常に鋭い総入口角。
−−図18bに示されているように、船体の前1/3での静的水線面の上の減らされた乾舷および側面図高さ。
−−トラバース断面図18cから18fで明白な、静的水線面の上の船体の前領域での大きく減らされた体積。
−−図18cから18fに示されているように、貫通される波からの垂直負荷を散逸するための落ちる肩または逆V形状を有する船体の前領域での静的水線面の上のトラバース断面形状分布。
−−オープンフォワードデッキの上に水を入れる従来の設計ではなく、図18cから18fに示されているように、波の貫通を可能にするための船体の前部分での閉じた居住可能体積。
【0123】
反対の波で成功裡に試験されたTHの特定の形状は、上で再検討した図18に示されており、さらに、次の特徴を有する。
−−図18aで、船体の全長にわたって、約13°の総角度138での水線面の上下の船体の側面に延びる入口角。
−−図18bおよび18dの、船尾から80%断面での船体の長さの約4.2%の前方垂直乾舷を有する低い断面。
−−全長の約7%の水線面の上の最大高さを有する滑らかな低い全体的な縦断面を有する、図18dおよびeの逆Vまたは図18fの逆Uを有する水線面の上の船体の断面。
【0124】
クリティカルなパラメータは、過渡条件、たとえば図18bの波131などの大きい波への過渡ダイビング遭遇中に排除することができる静かな水線面134の上の船体の前領域の浮力予備の結果の体積である。この追加体積は、静かな水で船の重量によって排除される水体積に関係しなければならない。THの成功裡の試験が、図18bの80%断面と船首との間の追加体積に関する13%程度の体積比および断面57%と断面80%との間の追加体積に関する32%程度の体積比と、約40%断面での船体の重心を用いて行われた。これらの比は、性質において必ず粗いグラフ推定によって得られたものであり、波シミュレーションを有するソフトウェアを用いるコンピュータ化された計算によって洗練することができるが、後者の判断基準は、水線面の前向き船尾区域の非対称性の故に不完全である。これらの比は、最小限の上下浮動攪乱およびピッチ攪乱をもたらす。
【0125】
図18のTH−III平面図形および縦断面を参照すると、たとえば波131の作用の下での、船体の高速での動的負荷が、次の理由から、1994年11月のSea Horse 刊行物で示されたものなどの従来の非常に細長いボートよりかなり小さいことを明らかにすることが非常に重要であり、クリティカルである。
・高速で、THは、図13および14に示されたものなどの0に近いか非常に小さい迎角を有し、したがって、THの垂直運動量変化は、動的揚力支援を有する非常に細長い船体よりはるかに小さく、これは、高速で船体のドライエリアおよび波の衝撃にさらされる体積の大きい部分を有してノーズハイになる傾向があり、したがって、非常に大きい負荷を生成することができる。
・さらに、THの平面図は、他の米国特許に示されているように船体中央付近で最大船幅を有するレンズ状の側面を有するのではなく、船尾で最大船幅を有する三角形なので、所与の船体船幅についてはるかに鋭い。したがって、所与の縦断面について、THの浮力予備の体積は、前領域でより少ない。
・前横断面は、逆Vを有するのではなく逆カップである場合にそうなるように波を貫通する時の動的な水の衝撃の下での極端に高い局所負荷または船体の上で波がくだけることを防ぐために逆V形状を有する。
【0126】
TH幾何形状特性を用いると、縦慣性モーメントすなわち、図18bの40%断面での重心を通るトラバース軸と図18aおよびbの断面の33%での縦浮面心を通る代替軸との回りの慣性モーメントを最大にするために船の重い構成要素を分配することが特に有利になるが、後者の判断基準は、水線面の船首区域および船尾区域の非対称性のゆえに不完全である。原動所、重い武器、燃料タンク、および他の重い区域を船首および船尾に隣接して置くことが、重要である。模型試験は、総ボート重量の40%程度を船体の端の付近に割り当てることによって非常に望ましい結果を示した。これは、ある場合に、図19に示された普通でない原動所配置を必要とする場合がある。
【0127】
5o.THの重量分布。
【0128】
図19aに、従来のシャフトを介して駆動されるミッドボディプロペラ154を駆動する、前に置かれたエンジン152を有するTH 150を側面図で示すが、このシャフトおよびプロペラの両方が、ヨーでのよい追従および求心力をももたらすことのできる垂直フィン156によって保護される。後部に、1対の左右のエンジンがあり、そのうちの1つだけが、エンジン156として図示されている。このエンジンは、垂直シャフト158を駆動し、垂直シャフト158は、舵に取り付けられるか舵と別々で舵の前にあるプロペラ168を駆動するために舵160内で水没する。したがって、原動所システムに3つのエンジンを含めることができる。燃料タンク151および153も、船体の両端に置かれ、その結果、重い構成要素が、船体のピッチ慣性を最大化するようになる。船体150の上部161は、前半分は図18の上部に似ているが、船尾半分に、幅広い船尾船幅と独自に組み合わされる2つの追加の特徴を有するオープンデッキがあり、この特徴のうちの1つは、甲板の上のヘリコプタ着陸パッド164である。もう1つの特徴は、TH船の移動中に補助パワーボート172を発進させ、回収する、図19bの船尾ガレージ170である。図19bには、右エンジン156およびガレージの右側のタンク151を、ガレージの左側の左タンク176を伴う左エンジン174およびガレージから出る階段178と共にどのようにおさめるかも示されている。これらのすべてが、おそらくは船尾の最大船幅によって独自に可能である。
【0129】
5p.THのステルス特性および低観察可能特性:
図18を参照して、これから、水線面134の上のThのステルスアンチレーダー表面配置を説明する。具体的には、船体のエンベロープは、低いレーダーシグネチャの小面を刻まれた判断基準に従い、この判断基準は、船体の右側で再検討するが、断面図18cから18gに示された平らなパネルを有し、このパネルには、水線面に対して約45°傾いた平らなパネル138、水線面に対して約90°傾いた平らなパネル139、および最上部の平らなパネル140が含まれる。したがって、船体の上から直接に、3つのパネルすなわち、両方が45°傾いた左の138および右の138と、ほぼ水平の平らなパネル140だけが存在する。右側の上からの斜めの側面図では、3つの大きいパネルすなわち右の138、139、および140だけがある。正面図からは、その性質により、TH形状は極端にステルス的である。後ろからは、その検出可能性は、4つの散乱する斜めの面すなわち、右側の141および142と、符号なしの左側の対応する対に制限される。
【0130】
5q.THの重心および水線面図心:
図18の他の重要な詳細は、船尾から船体長の40%にある重心145 CG位置および船尾から長さの33%にある縦浮面心143 LCF、実際には水線面図示であり、これらは、他の図について既に述べたように、ディスプレースメントモードでのボート長の40%−33%=7%のCGとLCFの間の動的安定化腕をもたらし、これは、従来のディスプレースメント船で可能なものより根本的に大きい数字であり、THを用いて独自に実現可能であり、THに有利である。トランスプレーナモードでは、このマージンが、実質的に7%超に増え、トランスプレーナLCF 143TPに関して14%程度に達する可能性がある。
【0131】
5r.THの下面形状および構成方法:
原出願である米国特許出願第08/814417号で指定されているように、複合材料あるいはプレス加工された金属シートおよび/または溶接された板を使用する現代の構成方法をTHに使用することができ、木を利用することもできる。
【0132】
しかし、THは、その形状の独自の単純さを利用し、特に事前に製造された複合材料シート、マリンベニヤ板(marine plywood)、または薄板(平らな要素に使用することができる)の使用を用いる、および/または流体力学的に滑らかな表面を得るためのゆるやかな単一曲率パネルを用いる、低コスト製造方法用に設計することができる。
【0133】
原出願である米国特許出願第08/814417号で、変更なしで(連続した符号および些細な文法的訂正を除く)図20a、20b、21、22、23、24、25、26、および27も指定された。
【0134】
図20aは、三角形の平面図形で船首204で収束する平らな長方形の横側面200および203と、中心線202を有する平らな三角形の底205と、平らな船尾領域206とを含むTHの等角底面図が示されている。この形状は、以前に再検討した濡れた三角形縦断面と共に、従来の船体の造波抵抗を超越するが、過度な濡れ面積および粘性抗力を有する可能性がある。
【0135】
図20bに、船体の下面に追加の三角形の平らなパネルを導入し、船首224で収束する平らな不等辺四角形の側面221および223を有する船体を有するように変更することによって粘性抗力を減らすための単純な構成方法を用いて洗練されたTHを示す。下面は、3つの三角形の左側の平坦部229、中心線222を有する中央の三角形の平坦部225、および右側の三角形の平坦部227を含む。これらの三角形は、平らな船尾領域226で終わる。
【0136】
図21に、船体の側面および下面が、船首237で収束し船尾領域238で終わる三角形の平らな平面要素231、232、233、234、235、および236によって定義される、THの純三角形表面展開を示す。
【0137】
図22に、図21から開発されたが、粘性抗力をさらに減らすようにより洗練された形状を示す。その下面および側面表面に、主準三角形表面241、243、245、および247が含まれ、これらの一部の間に、不等辺四角形または三角形のフェアリングストリップ242、244、および246があり、これらのすべてが、船首248で融合し、船首248は、喫水の関数としての単位時間あたりのボリュームエンゲージメント(volume engagement)の割合を減らすために、垂直に対して角度250で延びる。表面242、243、244、245、および246は、図を明瞭にするだけのために垂直に図示されている小さい深さの平らなトランサム249に向かって後ろに延びる。トランサムに隣接する上甲板表面は、前甲板表面に対して角度240であり、側面表面241に対する後ろ向きの部分的に三角形の終端を画定する。構成を簡単にするために、図22では、要素242〜246を、および244さえも、非常に高い縦横比の長方形とすることができ、主な利益は、製造のより低いコストである。
【0138】
図23に、船体長および/または船体船幅に対する実用的制約(設計ルール、ドック入れに使用可能なドック長、またはトレーラ運搬のための最大船幅など。これらのすべてが、所与の排水量に関するウォーターレングス(water length)および/または復原モーメントに影響する可能性がある)がある時のTHの変形形態を示す。図19のTH原型を変更する必要がある場合がある。たとえば、図20に示された船体形状は、所与の最大船幅に関する変更された準三角形配置を用いて、所与の最大船幅に関するより大きい排水量を満足する。
【0139】
具体的に言うと、図23では、船体の主要な構成要素に、前の図に示した形で船首251と三角形の底辺断面252の間に延びる長さ254の主三角形本体が含まれる。しかし、図23では、船体が、三角形の底辺断面252と船尾領域253の間に延びる長さ255の船尾本体を用いて船尾に延長されている。この延長は、255に沿って甲板水準の平面図形で準長方形であり、水中の下面が平らなままであり、主三角形表面構成要素256および257と、平らなほぼ三角形の表面構成要素258および259がトランサム260まで延びることに留意されたい。
【0140】
図23に示されたTHの特殊な特徴は、表面258および259に沿ったファン様の水中流れの場からエネルギを抽出し、これによって、垂直ウイングレットの場合の船体の幾何学的にトレーラで移動できる船幅を増やさずにトランサム260での船体の有効船幅を増やす、船体の後ろのおよび船体の垂直のまたは下反角を有するウイングレット261および262の使用である。これらのウイングレットは、図23の左側のように下反角によって傾けられる場合に、そうでなければ船体延長255によって支持される重量の後部ハイドロフォイル支持部分として働き始めることができ、方向制御としても働くことができる。
【0141】
図20から23で、水中の下面が、平らまたはほぼ平らであり、三角形の特徴を有する表面要素および流体力学的水線面によって案内され、水が後ろに向かって移動する際に減る喫水および増える船幅を有し、流体力学的条件でアクティブなままになる流れに関する好ましい重力流体静力学圧力勾配がセットされることに留意されたい。
【0142】
平らな表面構成要素を使用する形状の開発は、製造コストを減らし、設計特徴を明らかにするのを助ける。ペナルティは、適度に滑らかな二重くさびTH本体を得るための平らなおよび/または単一曲率の要素の使用を可能にするTH原型の単純な形状の間の独自の協力のゆえに小さい。
【0143】
図28Aに、船内レイパターン309および311からわかるように、臨界超過速度以上で船舶の付近の伴流干渉を有しない2つの平行TH船体301および303を使用する多胴船を示す。船外レイは、313および315である。この船体は、プロペラ305および307によって駆動される。したがって、流体力学的TH利益が、十分に保たれる。
【0144】
図28Bに、TH船体を用いて例示されるが他の船体に適用される根本的に異なる多胴船手法を示す。具体的に言うと、左右の船体310および312は、対称の全体的な軸に関してトーアウト角度で外に向けられた縦対称軸を有する。その結果、船外レイ320および322は、減らされたサイズおよび抗力効果を、より少ない濡れ側面表面と共に有するが、船内レイ324および326は、干渉する傾向があり、水位および抗力を高め、船内の浸水表面を増やす傾向がある。これは、船体310および312の後端での望ましい干渉によって回復することができる。しかし、図28の多胴船は、船体の間の一連の5つのウォータージェットとして図示された水を加速する推進手段330を備え、推進手段330は、動作時にレイ324および326のあるエネルギ内容を回復し、水位を増やす傾向を減らし、抗力寄与を減らし、船内横浸水表面を減らし、さらに、船体からの境界層が原動所に入らないという点で推力生成の効率を高める。このきれいな加速流れは、332として示されている。
【0145】
図28Cは、3つのTH船体340、342、および344を有するトリマランであるが、トーアウトなしの従来の船体とすることもできる。というのは、どちらの場合でも、それぞれ図28Bのタイプの2つの推進セット346および348が、抗力を減らし、推力を増やすという独自の相互作用的利益をもたらすからである。より小さい多胴船の場合に、動力グループを、船外舶用機関の組を用いて作ることができる。
【0146】
上で述べた設計判断基準の数値は、再検討された船体特性に関する代表的な数値であり、フルサイズ重量、対応するスラスト線位置、ならびに本発明の趣旨および本発明の特許請求の範囲に含まれる他の設計特徴を有する特定のTH船体形状について調整することができる。
【0147】
本明細書および図面は、流体力学およびTH形状に関係し、機構の構造的詳細を含まず、模型試験は未知の重量のフルサイズ有人THの安定性または他の安全関連問題を判定するのに不十分なので、これらの問題は、そのような問題に関する全責任を有する、実施許諾を与えられた製造業者のみによって調査され、判定されなければならない。
【0148】
本発明の特許請求の範囲に含まれるものとして、この教示から逸脱せずに、図面および本明細書に対して変更を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0149】
【図1】本発明に関する従来技術の例、THおよび本発明のTHの平面図である。
【図2】本発明に関する従来技術の例、THおよび本発明のTHの平面図である。
【図3】本発明に関する従来技術の例、THおよび本発明のTHの平面図である。
【図4】本発明に関する従来技術の例、THおよび本発明のTHの平面図である。
【図5】追加の例を含む図である。
【図6】1.34の「ハルスピード」を超える速度で、抵抗の60%が剰余抵抗であり、ほとんどが造波抗力であることを示す。
【図7a】追加の例を含む図である。
【図7b】追加の例を含む図である。
【図8】THおよびIACC船体の抗力とV/ルートLの間の関係を指定する図である。
【図9】追加の例を含む図である。
【図10】追加の例を含む図である。
【図11】追加の例を含む図である。
【図12a】追加の例を含む図である。
【図12b】追加の例を含む図である。
【図13a】ハイパークリティカル領域でのTH−IIIおよびTH−IIIを開示する図である。
【図13b】ハイパークリティカル領域でのTH−IIIおよびTH−IIIを開示する図である。
【図14a】トランスプレーナ領域でのTH−IIIおよびTH−IIIを開示する図である。
【図14b】トランスプレーナ領域でのTH−IIIよびTH−IIIを開示する図である。
【図14c】船尾縦断面図およびフラップを開示する図である。
【図14d】船尾縦断面図およびフラップを開示する図である。
【図14e】船尾フラップおよびその側面図の組合せを開示する図である。
【図14f】追加の例を含む図である。
【図15】X領域でのTH−IIIおよびTH−IIIを開示する図である。
【図16】制御用の船尾および側面のフラップを開示する図である。
【図17】制御用の横フラップと共に海波中のTHおよびTHを開示する図である。
【図18】a〜gは、反対の波での動作およびステルス動作に関するTH 3−D形状を開示する図である。
【図19】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図20】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図21】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図22】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図23】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図24】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図25】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図26】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図27】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。
【図28】本発明のTHおよびTHに関連するさらなる実施形態および構造を開示する図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
船首、船尾、その間の縦長さ、前記船首から前記船尾の船外部分まで延びる側面表面、および前記側面表面の間に延びる下側表面を有する遷音速船体であって、前記遷音速船体は、平面側の面において前記船首に隣接する頂点および前記船尾に隣接する底辺を有するほぼ三角形の形状を有する水中体積と、移動中の時に側面側の面において前記船首に隣接する底辺および前記船尾に隣接する頂点を有するほぼ三角形の形状とを有する遷音速船体。
【請求項2】
前記移動中の流体力学的領域が、約1.35を超える速度対長さ比を有する臨界超過領域と、約2.0を超える速度対長さ比を有するハイパークリティカル領域と、約3.0を超える速度対長さ比を有するトランスプレーナ領域とを含むことをさらに特徴とする請求項1に記載の遷音速船体。
【請求項3】
重量対排水量比が、約100の上側値および約50の下側値を有する範囲内である請求項1に記載の遷音速船体。
【請求項4】
前記下側表面が、側面側の面において、前記船首に隣接する第1断面から前記船尾の上流の第2断面まで延びる主長さと、前記第2断面から後ろに前記船尾の底に向かって延びるトリム誘導セグメント長とを有し、前記セグメント長が、前記船尾に隣接する基部の船幅とほぼ等しい局所船幅を有し、前記トリム誘導セグメント長の下側表面が、小さい負の角度だけ上に前記主長さの後部に対して傾けられ、これによって、前記船尾に隣接する下向きの力が、ハイパークリティカル流体力学領域およびトランスプレーナ流体力学領域での移動時に前記船体の船首を持ち上げる傾向を有することをさらに特徴とする請求項1に記載の遷音速船体。
【請求項5】
前記小さい角度が、約5°である請求項4に記載の遷音速船体。
【請求項6】
前記主長さと水面との間の角度が、約2°であり、前記ハイパークリティカル流体力学領域で動作する時に前記船首が前記船尾より深く、前記セグメント長の前記小さい負の角度が、前記主長さに関して約4°である請求項4に記載の遷音速船体。
【請求項7】
前記船尾に隣接する前記基部の前記船幅とほぼ等しい総アスワーシップ(athwarship)フラップ船幅および前記船体の前記縦長さの2.5%とほぼ等しいフラップ舷を有するトレーリングフラップが、前記船尾の底に設けられる請求項1に記載の遷音速船体。
【請求項8】
前記トレーリングフラップが、前記臨界超過領域で前記下側表面とほぼ平行の第1角度にセットされ、前記ハイパークリティカル領域である時に前記第1角度に関して上に傾けられた第2角度にリセットされ、前記トランスプレーナ領域で前記第2角度に関して上に傾けられた第3角度にリセットされる請求項7に記載の遷音速船体。
【請求項9】
前記船体が、移動なしで水に浮いている時に、前記船尾から測定して水線面の長さの約40%の位置に置かれた重心を有する水線面面積を有し、水線面面積の中心が、前記船尾から測定して前記水線面の前記長さの約33%の位置に置かれている請求項1に記載の遷音速船体。
【請求項10】
トレーリングフラップが、前記トランサムの下側縁に設けられ、前記臨界超過速度で前記トリム誘導セグメント長に関して少ない量だけ下向きに傾けられた第1角度にセットされ、前記ハイパークリティカル領域で前記セグメントにほぼ平行にリセットされ、前記トランスプレーナ領域で前記セグメントに関して小さい負の角度に傾けられるようにリセットされる請求項6に記載の遷音速船体。
【請求項11】
静的条件で浅い船尾喫水を有し、少なくとも2つの速度領域で前記船体に前進運動を生成し、これによって、臨界超過領域を含む、流体力学的効率の対応する異なるレベルを有する異なるタイプのハイドロフィールドを動的条件で展開するために、推進力を与えることのできる推進手段を有することを特徴とし、
前記推進手段が、前記船体がそれによって臨界超過速度に達する第1推進力を与え、
前記速度によって、前記船尾の下の臨界超過動的水位に関する前記船尾での前記喫水が、実質的に除去され、
隣接する臨界超過動的水位に関する前記船首の深い喫水が、前記静的条件での前記深い喫水とほぼ同一であり、
前記船体の臨界超過動的水線面が、ほぼ三角形の形状を有するままであり、
前記臨界超過領域での濡れた側面表面面積および下側の浸水表面面積が、前記静的条件とほぼ同一のままであり、
前記下側表面の実質的な部分が、前記静的条件での前記臨界超過動的水位に関してほぼ同一の負の角度に保たれ、
前記下側表面の前記実質的な部分が、前記動的条件で、第1レベルの流体力学的効率をもたらす前記臨界超過領域での前記前進運動を与える上で前記推進手段と協力して前記船体を前に押す前に向けられた力成分を有する実質的に上向きの圧力を経験する請求項1に記載の遷音速船体。
【請求項12】
前記ハイドロフィールドが、前記臨界超過領域より高速のハイパークリティカル領域を含むことをさらに特徴とし、
前記推進手段が、前記第1推進力より高い第2推進力を与え、
前記船首に隣接する前記ハイパークリティカル領域での前記船体の喫水および前記船体の前記側面表面の濡れ面積が、前記臨界超過領域のそれらに関して実質的に減らされ、
前記ハイパークリティカル領域での前記船体の動的水線面形状が、前記臨界超過領域と実質的に同一のままであり、
前記ハイパークリティカル領域での前記下側表面の前記船尾喫水が、前記臨界超過領域の時と実質的に変更されないままであり、
前記ハイパークリティカル領域での前記下側表面の前記実質的な部分と前記動的水線面との間の角度が、負のままであるが、前記臨界超過条件での前記負の角度に関して実質的に減らされ、
前記底表面での前向きの圧力成分が、実質的に減らされ、
上で指定された条件の組み合わされた効果が、前記臨界超過領域より高速の効率的なハイパークリティカル領域を作る請求項11に記載の遷音速船体。
【請求項13】
前記船体が、効率的なトランスプレーナ領域を達成することをさらに特徴とし、
前記推進手段が、前記第2推進力より高い第3推進力を与え、
前記トランスプレーナ領域で、前記船首に隣接する前記船体の喫水が、除去され、前記船首の下側部分が、前記動的水位より上に持ち上げられ、
前記船体の動的水線面が、前記トランスプレーナ領域で、実質的に対称の左右の側面と、前記船尾に隣接して置かれるアスワーシップ側面と、前記船首に隣接するより短い側面とを有する少なくとも4つの側面を有するほぼ多角形の形状に変更され、
前記下側表面の前記後部の船尾喫水が、前記トランスプレーナ領域で、前記ハイパークリティカル領域と実質的に同一のままになり、
前記濡れ側面表面が、前記トランスプレーナ領域で、前記ハイパークリティカル領域に関して減らされ、
前記船体の前記下側表面の前記濡れ面積が、前記トランスプレーナ領域で、前記ハイパークリティカル領域でのそれに関して実質的に減らされ、
前記下側表面の主要部分と前記動的水位との間の角度が、前記トランスプレーナ領域で、前記負の角度より小さい、小さい正の角度であり、
前記濡れた下側表面の圧力成分が、後ろ向きであり、
上で指定された組み合わされた効果が、前記ハイパークリティカル領域より高速のトランスプレーナ領域を作る請求項12に記載の遷音速船体。
【請求項14】
船首、船尾、およびその間の長さを有する水中部分を有する遷音速船体であって、前記水中部分が、
前記船首に隣接する頂点および前記船尾に隣接する底辺を有する水位でのほぼ三角形の水線面と、
前記船尾に隣接する頂点および前記船首に隣接する深い喫水を有する、移動中の時の側面側の面でのほぼ三角形の縦断面と、
底辺が前記船尾に隣接し、頂点が前記船首に隣接する、左右の三角形縦表面要素を有する下に面する表面と
を有することを特徴とする遷音速船体。
【請求項15】
前記船尾に隣接する底辺を有する第3中央三角形縦表面要素を有することをさらに特徴とし、前記第3要素が、前記右要素と前記左要素との間に置かれる請求項14に記載の遷音速船体。
【請求項16】
縦の左右の側面表面要素を有することと、前記側面表面要素と前記船体の前記水中部分の前記下に面する表面の対応する左右の全般的に三角形の要素との間に延び、これらを接続する左右の細長い多角形縦要素を有することとをさらに特徴とする請求項15に記載の遷音速船体。
【請求項17】
船首、船尾、その間の長さ、および静かな水で移動なしで浮いている時の水位での静的水線面を有する全天候遷音速船体であって、前記船体が、
前記船首に隣接する頂点および前記船尾に隣接する底辺を有する前記静的水線面内のほぼ三角形の形状と、
前記船首から前記船尾の外側部分まで延びる側面表面と、
前記側面表面の下側領域の間に延びる下側表面と、
前記側面表面の上側領域の少なくとも前部分の間に延びる上側表面部分と
を有し、前記上側表面部分、前記底表面のうちで前記上側表面部分の下の部分、および前記側面表面のその間の部分が、前船体体積をその中に囲い込み、
前記前体積が、前記静的水線面の上の上側体積部分と、前記静的水線面の下の下側体積部分とを有し、
前記船首に隣接する前記静的水線面の入口角が、約13°であり、乾舷が、前記船尾から測定して船体の80%断面の前の船体の長さの約4.2%を超えない全天候遷音速船体。
【請求項18】
船首、船尾、その間の長さ、および静かな水で移動なしで浮いている時の水位の静的水線面を有する全天候遷音速船体であって、前記船体が、
前記船首に隣接する頂点および前記船尾に隣接する底辺を有する前記静的水線面内のほぼ三角形の形状と、
前記船首から前記船尾の外側部分まで延びる側面表面と、
前記側面表面の下側領域の間に延びる下側表面と、
前記側面表面の上側領域の少なくとも前部分の間に延びる上側表面部分と
を有し、前記上側表面部分、前記底表面のうちで前記上側表面部分の下の部分、および前記側面表面のその間の部分が、前船体体積をその中に囲い込み、
前記前体積が、前記静的水線面の上の上側体積部分と、前記静的水線面の下の下側体積部分とを有し、
前記下側体積部分に対する前記上側体積部分の体積の比が、約2.8を超えない全天候遷音速船体。
【請求項19】
前記下側体積部分に対する前記上側体積部分の比が、前記船尾から測定した80%断面の前で減少することをさらに特徴とする請求項18に記載の構造。
【請求項20】
前記船尾から前に測定した50%縦断面と80%縦断面との間の前記水線面の上の前記船体によって囲まれる体積が、静的水線面の下の前記船体の体積の約40%を超えず、これによって、反対の波での前記船体のピッチ特性および上下浮動特性が、さらに高められることをさらに特徴とする請求項17に記載の船体。
【請求項21】
前記船体のうちで前記静的水線面の下の部分が、排除される水の第1体積を含むことと、
前記船尾から前に測定して80%縦断面の前の前記水線面の上の前記船体によって囲まれる体積が、前記第1体積の約20%を超えず、これによって、海波に対する貫通および反対の波での前記船体のピッチ特性が好ましいことと
をさらに特徴とする請求項17に記載の船体。
【請求項22】
前記船体を移動させる動力付き推進エンジン手段と燃料タンク手段とを含む前記船体の重い構成要素が、前記船尾および前記船首のうちの1つに隣接して前記船体のミッドボディ領域から離れて置かれ、これによって、前記船体のピッチ慣性およびヨー慣性が増やされ、反対の波での前記船体のピッチ特性および制御特性が高められることをさらに特徴とする請求項17に記載の船体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12a】
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【図12b】
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【図13a】
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【図13b】
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【図14a】
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【図14b】
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【図14c】
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【図14d】
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【図14e】
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【図14f】
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【図15】
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【図16】
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【図16】
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【図17】
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【図18a】
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【図18b】
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【図18c】
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【図18d】
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【図18e】
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【図18f】
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【図19】
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【図19a】
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【図19b】
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【図20a】
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【図20b】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25a】
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【図25b】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図28a】
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【図28b】
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【図28c】
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【公表番号】特表2007−522032(P2007−522032A)
【公表日】平成19年8月9日(2007.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−554063(P2006−554063)
【出願日】平成16年2月17日(2004.2.17)
【国際出願番号】PCT/US2004/004485
【国際公開番号】WO2005/090150
【国際公開日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(506280731)
【氏名又は名称原語表記】ALVAREZ−CALDERON, ALBERTO