説明

選別装置、選別方法及び土壌浄化設備

【課題】土壌と重金属を正確に選別することができる。
【解決手段】重金属を含有する土壌から重金属を沈降速度差を利用して選別する選別装置であって、水槽1と、水槽1の水中に没して設けられるベッドスクリーン2と、水槽1の水中に没して設けられ、ベッドスクリーン2の網目より粒径の大きいベッド粒子がベッドスクリーン2上に層状に設けられると共に、重金属を含有する土壌6が上側に供給されるベッド5と、水槽1に水を供給する給水弁8と、水槽1中の水及びベッド5上の土壌を排出する分離土壌排出口14と、ベッド5及びベッド5上の土壌6を揺動するダイヤフラム10とを備え、土壌6の粒子と重金属の粒子の中間の比重を有し、比重と粒径で規定される沈降速度について、土壌6の粒子より速く且つ重金属の粒子より遅いベッド粒子でベッド5を構成し、土壌6中の重金属をベッド5及びベッドスクリーン2を通過させ水槽1内に沈降させることにより選別する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鉛、カドミウム、クロム等の重金属で汚染された土壌から沈降速度差を利用して重金属を選別する選別装置、選別方法及び土壌浄化設備に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の産業活動により、市街地や工場跡地における油分、有機溶剤、重金属等による土壌や地下水の汚染が顕在化してきており、土地や地下水の利用に支障をきたし社会問題となっている。
現在、このような汚染に対して、各種の浄化対策が行われており、特に重金属汚染土壌の対策としては、不溶化処理による方法が従来から多用されてきた。しかし、原土に重金属が残留するこの種の方法を用いて土地の再利用を図る場合には、法改正によって制限を受けることとなり、今後制限を受けずに土地を再利用するためには、汚染土壌から重金属を分離させて除去することが求められる。
【0003】
このように汚染土壌から重金属を分離させる技術としては、特許文献1,2に記載されているような土壌と重金属の沈降速度差を利用して汚染土壌から重金属を分離させるものが知られている。
特許文献1には、水槽にスクリーンプレートを配置し、その上方を、投入される汚染土壌から重金属を分離するための分離室とすると共に、スクリーンプレートの下方に気室を設け、さらにこの気室に空気を送排気することによってスクリーンプレート上の水と汚染土壌を揺動し、比重差による沈降速度差によって土壌と重金属を層状に分離する装置が記載されている。
また、特許文献2には、鉛と砂を含む液体を鉛分離槽に流入して上昇流を生じさせ、上昇流の上昇速度を鉛の沈降速度より小さく、砂の沈降速度以上となるようにし、鉛と砂の比重差によって生じる沈降速度差を利用することで双方を分離する装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2003−39060号公報
【特許文献2】特開2004−216204号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、沈降速度差を利用して土壌と重金属とを分離する技術を用いることにより、省エネルギーで処理ができ、しかも乾式処理においては不可欠である発塵による環境汚染への対策が不要となるという効果が得られる。
しかしながら、流体中の固形物の沈降速度は、固形物の粒径が大きい場合に速く、粒径が小さい場合に遅くなる傾向があるため、土壌の粒径を考慮せずに単に土壌と重金属の比重差だけを用いている特許文献1,2の装置では、土壌と重金属を正確に選別することは困難である。
即ち、特許文献1の装置では、沈降速度の遅い小粒径の重金属が土壌の上層に沈積して土壌と重金属との境界が曖昧になり、それぞれの分離産物に相互混入する虞がある。また、特許文献2の装置では、大粒径の土壌を上部に排出しようとすると小粒径の鉛が共に排出されることになり、清浄土壌に鉛が混入する虞がある。
そのため、土壌と重金属の沈降速度差を利用しつつ、土壌と重金属を正確に選別することができる技術が求められている。
【0006】
本発明は、上記課題に鑑み提案するものであって、省エネルギー処理できる、発塵による環境汚染対策が不要である等の有利性を有し、加えて双方の沈降速度差を利用して土壌と重金属とを正確に選別することができる選別装置、選別方法及び土壌浄化設備を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の選別装置は、重金属を含有する土壌から沈降速度差を利用して重金属を選別する選別装置であって、流体槽と、前記流体槽の流体中に没して設けられるベッドスクリーンと、前記流体槽の流体中に没して設けられ、前記ベッドスクリーンの網目より粒径の大きいベッド粒子が前記ベッドスクリーン上に層状に設けられると共に、重金属を含有する土壌が上側に供給されるベッドと、前記流体槽に流体を供給する流体供給部と、前記流体槽中の流体及び前記ベッド上の土壌を排出する排出口と、前記ベッド及び前記ベッド上の前記土壌を揺動する揺動部とを備え、前記土壌の粒子と前記重金属の粒子の中間の比重を有し、比重と粒径で規定される沈降速度について、前記土壌の粒子より速く且つ前記重金属の粒子より遅いベッド粒子で前記ベッドを構成し、前記土壌中の重金属を前記ベッド及び前記ベッドスクリーンを通過させ前記流体槽内に沈降させることにより選別することを特徴とする。前記流体は、水など本発明の趣旨の範囲内で適宜である。
前記構成では、比重と粒径で規定される沈降速度について土壌粒子より速く且つ重金属粒子より遅いベッド粒子を設けることにより、正確に沈降速度差を利用して土壌と重金属を選別することができる。また、ベッド粒子のベッドによって土壌中の固体重金属の多寡に関わらず土壌と重金属を明確に分離し、相互混入を防止することができる。従って、省エネルギーで処理できる、発塵による環境汚染対策が不要である等の有利性を有する土壌と重金属を利用する土壌と重金属の選別において、土壌と重金属を正確に選別することができる。また、ベッド粒子が土壌粒子と重金属粒子の中間の比重を有することから、ベッドスクリーン上にベッド粒子をより安定して層状に設けることができる。
【0008】
また、本発明の選別装置は、前記ベッド粒子を球状粒子とすることを特徴とする。
前記構成により、重金属をよりスムーズに沈降させることができ、重金属をより正確に選別することができる。
【0009】
また、本発明の選別装置は、前記ベッドスクリーンの下側から上側に向かって前記流体を流すと共に、前記揺動部を、前記流体に振動を加えて前記ベッド及び前記土壌を揺動するものとすることを特徴とする。
前記構成により、例えばベッドスクリーンを振動させる機構等を用いずに、水流を利用してベッド及びその上の土壌を揺動することができる。
【0010】
また、本発明の選別装置は、前記ベッドスクリーンの近傍で且つ前記排出口の近傍に設けられる開閉可能なゲートと、前記ベッドスクリーンの近傍で且つ前記ゲートの近傍に設けられるサイトグラス若しくは残留金属検出部とを備え、前記サイトグラスからの目視若しくは前記残留金属検出部の検出により、前記ベッドスクリーン上に滞留する重金属が所定量に達した際に、前記ゲートを開放して排出し、前記滞留する重金属を前記流体槽内に沈降させることを特徴とする。
前記構成により、例えば土壌に混入している重金属が変形してベッドスクリーン下に排出されずにベッドスクリーン上に滞留した場合や、ベッドスクリーンの網目の目開きとベッド粒子、土壌粒子、重金属粒子の整合が十分でなく、僅かな粒径範囲の重金属がベッドスクリーン上に滞留した場合等、ベッドスクリーン上に重金属が滞留した場合に、滞留する重金属をゲートを介して流体槽内に排出し、ベッドスクリーン上に重金属が堆積することを防止することができる。
【0011】
また、本発明の選別方法は、重金属を含有する土壌から重金属を沈降速度差を利用して選別する選別方法であって、流体槽の流体中で、ベッドスクリーンの網目より粒径が大きく且つ比重と粒径で規定される沈降速度について前記土壌の粒子より速く且つ前記重金属の粒子より遅いベッド粒子が前記ベッドスクリーン上に層状に設けられるベッド上に、重金属を含有する土壌を供給する第1工程と、前記流体槽に流体を供給し且つ前記ベッド及び前記土壌を揺動して、前記土壌中の重金属を前記ベッド及び前記ベッドスクリーンを通過させ前記流体槽内に沈降させる共に、前記流体の流れで前記ベッド上の土壌を排出する第2工程とを備えることを特徴とする。
前記構成では、比重と粒径で規定される沈降速度について土壌粒子より速く且つ重金属粒子より遅いベッド粒子を設けることにより、正確に沈降速度差を利用して土壌と重金属を選別することができる。また、ベッド粒子のベッドで土壌中の固体重金属の多寡に関わらず土壌と重金属を明確に分離し、相互混入を防止することができる。従って、省エネルギーで処理できる、発塵による環境汚染対策が不要である等の有利性を有する土壌と重金属を利用する土壌と重金属の選別において、土壌と重金属を正確に選別することができる。
【0012】
また、本発明の選別方法は、前記第2工程において、前記ベッドスクリーンの下側から上側に向かって前記流体を流すと共に、前記流体に振動を加えて前記ベッド及び前記土壌を揺動することを特徴とする。
前記構成により、例えばベッドスクリーンを振動させる機構等を用いずに、水流を利用してベッド及びその上の土壌を揺動することができる。
【0013】
また、本発明の土壌浄化設備は、重金属を含有する土壌を2段湿式振動篩等の第1の分級部で粗粒と中粒と細粒に分級し、前記中粒に対して本発明によるの中粒用の選別装置を用いて重金属を選別すると共に、前記細粒を湿式振動篩等の第2の分級部で更に分級した細粒に対して本発明による細粒用の選別装置を用いて重金属を選別することを特徴とする。
前記構成では、選別装置の前工程に、分級する粒径範囲や沈降速度が予め選別装置と整合する分級部を設けることで、選別工程での選別量の減量化や草木による選別効率の低下を防止し、選別装置や土壌浄化設備の効率性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明により、省エネルギー処理できる、発塵による環境汚染対策が不要である等の有利性を有する土壌と重金属の沈降速度差を利用する土壌と重金属の選別において、土壌と重金属を正確に選別することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による実施形態の選別装置の構成を示す縦断正面図。
【図2】本発明による実施形態の選別装置の構成を示す縦断側面図。
【図3】実施形態の選別装置を備える土壌浄化設備の浄化処理工程を示すフローチャート。
【図4】ベッド粒子の粒径と土壌粒子の粒径の関係の模式的に示す模式図。
【図5】ベッド粒子の粒径と土壌粒子の粒径の関係の模式的に示す部分模式図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[実施形態の選別装置]
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。図1は実施形態の選別装置の構成を示す縦断正面図、図2は実施形態の選別装置の構成を示す縦断側面図である。
【0017】
本実施形態の選別装置は、重金属を含有する土壌から重金属を沈降速度差を利用して選別するものであり、図1及び図2に示すように、その下部が略円錐状等の錘状であり、選別用水が貯留される流体槽である水槽1を有する。水槽1で上側に突出している突出部1aには多数の網目を有するベッドスクリーン2が略水平に配置され、突出部1aに貯留されている水の水面3から離間した水中に没して設置されている。ベッドスクリーン2の上側は土壌と重金属を選別する選別室4となっており、ベッドスクリーン2の網目の目開きは土壌6層中の重金属の最大粒径より大きく設定されている。ベッドスクリーン2上には、ベッドスクリーン2の網目の目開きより大径であるベッド粒子が層状に敷設され、水面3から離間した水中に没してベッド5層が構成されている。ベッド5層上には、汚染され重金属を含有する土壌6が図2の上部左側に位置する汚染土壌供給口7から供給され、水面3から離間した水中に設けられる。
【0018】
ここで、ベッド5を構成するベッド粒子について詳細に述べると、ベッド粒子は、上述のベッドスクリーン2の網目より粒子径が大径であること、土壌粒子と重金属粒子の中間比重を有することに加え、沈降速度が土壌粒子より大きく重金属粒子より小さい粒子径であることの条件を充足するものであり、好適には球状粒子とすることが好ましい。
【0019】
前記条件の粒子の沈降速度に関し、Re:レイノルズ数、μ:流体粘性係数(Pa・s)、V:沈降速度(終末速度m/s)、D:粒径(m)、ρf:流体密度(kg/m3)、ρs:粒子密度(kg/m3)、CR:抵抗係数とすると、レイノルズ数Reは下記式(1)で示される。
Re=VDρf/μ …(1)
そして、抵抗係数は下記式(2)、(3)、沈降速度は下記式(4)で示され、上記ベッド粒子の沈降速度の条件は下記式(4)を充足するものとなる。
CR=24/Re Re<1 …(2)
CR=(0.55+4.8/√Re) 1<Re<104 …(3)
V=(4gD(ρs−ρf)/3ρfCR)1/2 …(4)
【0020】
例えば重金属を鉛、ベッド粒子をアルミ球またはアルミナ球、流体を水とすると各緒元は、水の粒子密度:ρf=1000、水の流体粘性係数:μ=0.001、土壌の粒子密度:ρs=2600、鉛の粒子密度:ρs=11300、アルミの粒子密度:ρs=2700、アルミナの粒子密度:ρs=3600となる。実際の沈降速度は粒子の流体中の揺動や静止中の粒子間の粗密度合によって計算値より遅くなるが、単一の夫々の粒径について沈降速度を(4)式で計算すると表1のようになる。下記表1により、必要な粒子径のベッド粒子を用いることが可能である。
【0021】
【表1】

【0022】
なお、図4、図5はベッド粒子の粒径と土壌粒子の粒径の関係を模式的に表したもので、大径の円がベッド粒子5a、小径の円が土壌粒子6aを表している。
図4は水流によって上昇したベッド粒子5a及び土壌粒子6aが沈降速度の差によって下降し、ベッド粒子5aより重く沈降速度の速い重金属の粒子がベッド粒子5aの間に保持された状態を示す。この粒子は断続水流によってベッド5及び土壌6を揺動する度に下部に移動し、最終的にはベッドスクリーン2からハッチに排出される。
図5は土壌粒子6aの粒子径とベッド粒子5aの粒子径の関係式を表したもので、土壌粒子6aの粒子径(半径)rはベッド粒子5aの粒子径(半径)r0の0.15倍となるが、実際の装置ではベッド5の層圧を適当に選定し、0.3倍程度に設定される。
【0023】
また、選別装置では、水槽1には流体供給部である給水弁8が設けられ、給水弁8を介して水槽1内に給水を常時または間欠的に供給するようになっている。また、水槽1の突出部1aが設けられている箇所以外の箇所に、駆動シャフト9で昇降可能に揺動部であるダイヤフラム10が設けられている。図示省略する駆動源で駆動シャフト9を介してダイヤフラム10を往復運動すると、ダイヤフラム10に接触して振動を加えられる水槽1内の水が図示太線の2点鎖線矢印方向に揺動し、その揺動する水が選別室4のベッドスクリーン2の網目を通してベッド5及び土壌6を揺動するようになっている。
【0024】
水槽1の底部には、その底部に堆積する分離重金属11を装置外に排出する排出弁12が設けられており、水槽1の下端近傍には、水槽1の下端に堆積した重金属が一定量になったことを検出する検出器13が設けられている。
【0025】
図2の上部右側には、水槽1から水と共に清浄土壌を排出するための分離土壌排出口14が形成され、分離土壌排出口14は層状の土壌6の高さに対応する或いは層状の土壌6の上部に対応する高さに形成されている。16は分離土壌排出口から排出された土壌6を更に搬送して排出するための分離土壌排出路である。また、ベッドスクリーン2の近傍で且つ分離土壌排出口14の近傍である分離土壌排出口14の下側には、ベッドスクリーン2上に残留した重金属を水槽1内に排出するための開閉可能なゲート15が設けられている。ゲート15の開閉では、ベッドスクリーン2の近傍でゲート15の近傍にベッドスクリーン2上の状態を目視観察するためのサイトグラス17を設け、サイトグラス17による観察結果に応じてゲート15を開閉する構成、或いはゲート15とベッドスクリーン2の近傍に残留する重金属を検出する残留金属検出器18を設け、残留金属検出器18の検出結果に連動させてゲート12を開閉する構成とする。
【0026】
本実施形態の選別装置の動作について説明する。先ず、図示省略する汚染土壌供給手段により汚染土壌供給口7から選別室4に於けるベッド5の上に、鉛散弾で汚染された土壌など重金属で汚染された土壌6を供給する。他方において、図示省略する制御プラグラムに従って動作する制御部の制御により、給水弁8を連続的または間欠的に開放して水槽1内に連続的または間欠的に給水し、駆動シャフト9を介してダイヤフラム10を往復運動して振動を加え、これにより水槽1内の水を図示の太線二点鎖線の矢印方向に揺動する。この水の揺動は、選別室4のベッドスクリーン2の網目を通してベッド5とその上の土壌6を揺動する。また、給水された水はベッドスクリーン2の下側から上側に向かって流れて分離土壌排出口14からオーバーフローするように流れ、供給された土壌6は水流と水の揺動により、図2の左側の汚染土壌供給口7から図2の右側の分離土壌排出口14に向かって移動する。
【0027】
給水しながら連続的に水を揺動すると、土壌6中の重金属は、漸次土壌6と共に分離土壌排出口14に移動しながら土壌粒子と重金属粒子の沈降速度差によって土壌6中を下降し、次第にベッド5に達してベッド粒子中を下降し、ベッド5を通過してベッドスクリーン2に達する。ベッドスクリーン2の網目の目開きは、土壌6中の重金属の最大粒径より大きく設定されていることから、重金属はベッドスクリーン2を通過して水槽1内を沈降し、水槽1の底部に分離重金属11として堆積する。また、重金属を分離された土壌6はベッド4の上を移動し、分離土壌排出口14を通って分離土壌排出路16からオーバーフローする水と共に排出される。
【0028】
検出器13は、水槽1の底部に堆積した分離重金属11の量を連続的または間欠的に検出しており、その検出値は図示省略する制御プログラムに従って動作する制御部に出力される。前記制御部は、その記憶部に設定されている基準値と検出部13から取得する検出値とを随時対比し、検出値が所定量である設定基準値に達した場合に、前記汚染土壌供給手段を一時停止して汚染された土壌6の供給を停止し、給水弁8の給水とダイヤフラム10の動作を停止し、排出弁12を開放して堆積した分離重金属11を装置外に排出する。分離重金属11の排出後には、前記制御部は、汚染土壌供給手段、給水弁8、ダイヤフラム10を再度動作させ、土壌6からの重金属の選別処理を再開する。なお、検出器13には、例えばX線を照射して蛍光X線を計測する蛍光X線検出器など重金属を検出可能な適宜の検出器を用いることが可能である。
【0029】
また、変形等によって、ベッドスクリーン2を通過しなかった残留重金属は、ベッドスクリーン2上を分離土壌排出口14或いはゲート15の方向に移動する。残留する重金属に対しては、サイトグラス17でベッドスクリーン2上の重金属を目視観察し、必要に応じてゲート15を開放して残留する重金属を水槽1内に排出する構成、或いはベッドスクリーン2上の重金属の残留金属検出器18による検出と連動させてゲート15を開放して残留する重金属を水槽1内に排出する構成とし、ベッドスクリーン2上に重金属を滞留させないようにする。
【0030】
なお、残留金属検出器18とゲート15の連動には、検出器13の制御部と同一或いは同種の構成を用いることが可能であり、例えば図示省略する制御プログラムに従って動作する制御部が、その記憶部に設定されている基準値と残留検出部18から取得する検出値とを随時対比し、検出値が所定量である設定基準値に達した場合に、ゲート15を開放してベッドスクリーン2上に残留する重金属を水槽1内に排出する。また、ゲート15の開閉は、選別装置を稼動中の適宜の時点で行うことが可能である。
【0031】
次に、本実施形態の選別装置を土壌浄化設備に設ける例について説明する。図3は実施形態の選別装置を備える土壌浄化設備の浄化処理工程を示すフローチャートである。
【0032】
図3の土壌浄化設備は、受入れホッパー101と、切り出しフィーダー102と、ドラムウオッシャー103と、2段湿式振動篩104と、中粒選別装置105と、湿式振動篩106と、脱水装置107と、脱水装置108と、水処理装置109と、細粒選別装置110と、微粒選別装置111と、分級装置112と、脱水装置113とを備え、本実施形態の選別装置を中粒選別装置105と細粒選別装置110として2台有する。
【0033】
この土壌浄化設備では、受入れホッパー101に投入される汚染土壌が一時貯留され、切り出しフィーダー102により汚染土壌が切り出されて供給される。ドラムウオッシャー103は、供給される汚染土壌に洗浄水を注水し、攪拌して汚染土壌を解砕・混錬し、重金属と土壌に分離して洗浄する。
第1の分級部に相当する2段湿式振動篩104は、ドラムウオッシャー103から投入される汚染土壌に洗浄水のスプレー洗浄を施しながら、汚染土壌を粗粒と中粒及び細粒に分級し、次いで中粒及び細粒を中粒と細粒にそれぞれ分級して2段階で分級するものであり、本例では2段湿式振動篩104の上段篩の網目の目開きを10mm、下段篩の網目の目開きを2.2mmとし、土壌を粒径10mm以上を粗粒、粒径2.2mm以上10mm未満を中粒、粒径2.2mm未満を細粒に篩い分けて分級する。ここで上段篩上の粗粒に分級されたものは回収される。
【0034】
2段湿式振動篩104で下段篩上の中粒に分級されたものは、中粒選別装置105に送られる。中粒選別装置105は、沈降速度差を利用して中粒の土壌と重金属とを選別し、ここで選別された中粒重金属は脱水装置107に送られて脱水され、回収される。
また、中粒選別装置105で選別された中粒の土壌は、脱水装置108に送られて脱水され、回収される。脱水装置108で発生する水は水処理装置109に送られて処理され、排水される。
【0035】
本例における中粒選別装置105では、ベッド5のベッド粒子として粒径10mmのアルミ粒子を用い、ベッドスクリーン2の網目の目開きを9mmとし、給水弁8から水を供給しながら揺動する。この場合、表1から2.2mm≦D(粒径)<10mmの重金属である鉛は、表1よりベッド粒子である粒径10mmのアルミ粒子より沈降速度が速いため、揺動を繰り返すうちに鉛は次第にベッド5の下に沈降していき、9mmより小粒径の鉛はベッドスクリーン2を通過して水槽1の底部に沈降堆積する。この時、9mm≦D(粒径)<10mmの鉛が存在すると、揺動に伴ってベッドスクリーン2上をゲート15側に移動していき、サイトグラス17による所定量の滞留或いは残留金属検出部18による所定量の検出により、ゲート15を開いて水槽1内に排出し、水槽1の底部に沈降させる。また、選別室4の2.2mm≦D(粒径)<10mmの土壌は、表1よりベッド粒子である粒径10mmのアルミ粒子より沈降速度が遅いためベッド5上に沈積し、給水しながら土壌6を供給して揺動すると次第に図2の右側に移動して分離土壌排出口14から排出される。
【0036】
また、2段湿式振動篩104で細粒に分級されたものは更に第2の分級部に相当する湿式振動篩106に送られ、湿式振動篩106で細粒と微粒に分級される。本例における湿式振動篩106の篩の網目の目開きは0.6mmであり、2段湿式振動104を通過し且つ湿式振動篩106の篩上に残った粒径0.6mm以上2.2mm未満のものを細粒に、2段湿式振動104を通過し且つ湿式振動篩106の篩を通過した粒径0.6mm未満のものを微粒に分級している。湿式振動篩106で分級された0.6mm≦D(粒径)<2.2mmの細粒は、細粒選別装置110に送られ、細粒選別装置110は、沈降速度差を利用して細粒の土壌と重金属とを選別し、ここで選別された細粒重金属は回収される。また、細粒選別装置110で選別された細粒の土壌は、後述する微粒選別装置111で選別された微粒の土壌と共に分級装置112に送られて分級され、所定粒径以上のものを脱水装置113に送って脱水し、土壌として回収される。分級装置112で生じたスラリーや水は水処理装置109に送られて処理され、排水される。
【0037】
本例における細粒選別装置110では、ベッド5のベッド粒子として粒径2.3mmのアルミ粒子を用い、ベッドスクリーン2の網目の目開きを2mmとし、給水弁8から水を供給しながら揺動する。この場合、表1から0.6mm≦D(粒径)<2.2mmの重金属である鉛は、表1よりベッド粒子である粒径2.3mmのアルミ粒子より沈降速度が速いため、揺動を繰り返すうちに鉛は次第にベッド5の下に沈降していき、2mmより小粒径の鉛はベッドスクリーン2を通過して水槽1の底部に沈降堆積する。この時、2mm≦D(粒径)<2.2mmの鉛が存在すると、揺動に伴ってベッドスクリーン2上をゲート15側に移動していき、サイトグラス17による所定量の滞留或いは残留金属検出部18による所定量の検出により、ゲート15を開いて水槽1内に排出し、水槽1の底部に沈降させる。また、選別室4の0.6mm≦D(粒径)<2.2mmの土壌は、表1よりベッド粒子である粒径10mmのアルミ粒子より沈降速度が遅いためベッド5上に沈積し、給水しながら土壌6を供給して揺動すると次第に図2の右側に移動して分離土壌排出口14から排出される。
【0038】
湿式振動篩106で篩下に分級された微粒(本例では粒径0.6mm未満の微粒)は、図示省略する遠心式選別装置である微粒選別装置111に投入して選別され、選別された微粒重金属は廃棄または回収される。また、微粒選別装置111で選別された重金属を含まない土壌は、分級装置112に送られて分級され、所定粒径以上のものを脱水装置113に送って脱水し、土壌として回収され、また、分級装置112で使用した水は水処理装置109に送られて処理され、排水される。また、微粒選別装置111で使用した水も、そのまま水処理装置109に送られて処理され、排水される。
【0039】
上記実施形態では、比重と粒径で規定される沈降速度について土壌粒子より速く且つ重金属粒子より遅いベッド粒子を設けることにより、正確に沈降速度差を利用して土壌と重金属を選別することができる。また、ベッド粒子のベッド5で土壌と重金属との分離境界を明確にして、相互混入を防止することができる。また、中間比重のベッド粒子により、ベッドスクリーン2上にベッド粒子をより安定して層状に設けられると共に、沈降速度差で選別可能な粒径範囲を確実且つ広範囲に確保することができる。また、ベッド粒子を球状粒子とする場合には、重金属をよりスムーズに沈降させることができ、重金属をより正確に選別することができる。また、ダイヤフラムにより、水流を利用してベッド及びその上の土壌を揺動することができる。また、ゲートにより、ベッドスクリーン上に重金属が堆積することを防止することができる。また、選別装置の前工程に、分級する粒径範囲や沈降速度が予め選別装置と整合する分級部を設けることで、選別工程での選別量の減量化や草木による選別効率の低下を防止し、選別装置や土壌浄化設備の効率性の向上を図ることができる。
【0040】
なお、本明細書開示の発明は、各発明や実施形態の構成の他に、適用可能な範囲で、これらの部分的な構成を本明細書開示の他の構成に変更して特定したもの、或いはこれらの構成に本明細書開示の他の構成を付加して特定したもの、或いはこれらの部分的な構成を部分的な作用効果が得られる限度で削除して特定した上位概念化したものも包含する。
【実施例】
【0041】
下記表2の鉛散弾で汚染された土壌を選別装置で選別する例について説明する。表2には、各粒径の土壌と、その各粒径の土壌の分布・割合(粒度分布)と、各粒径の土壌に含まれる鉛含有量が示されている。また、選別装置におけるベッド粒子には粒径7mmのアルミナ球を用いてベッド5を形成し、ベッドスクリーン2の目開きを6mmに選定して、土壌粒子径2.2mm≦D(粒径)<10mmの土壌を選別する中粒選別装置を構成した。そして、この中粒選別装置に、前記汚染土壌を中粒に分級して投入し選別した結果、2.2mm≦D(粒径)<10mmの回収土壌における含有鉛は、150mg/kg未満、溶出量は0.01mg/L未満であった。
【0042】
また、選別装置におけるベッド粒子に粒径2.3mmのアルミ球を用いてベッド5を形成し、ベッドスクリーン2の目開きを2mmに選定して、土壌粒子径0.6mm≦D(粒径)<2.3mmの土壌を選別する細粒選別装置を構成した。そして、この細粒選別装置に、前記汚染土壌を細粒に分級して投入し選別した結果、0.6mm≦D(粒径)<2.3mmの回収土壌における含有鉛は、150mg/kg未満、溶出量は0.01mg/L未満であった。
【0043】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、例えば鉛、カドミウム、クロム等の重金属で汚染された土壌を浄化する際に利用することができる。
【符号の説明】
【0045】
1…水槽 1a…突出部 2…ベッドスクリーン 3…水面 4…選別室 5…ベッド 5a…ベッド粒子 6…土壌 6a…土壌粒子 7…汚染土壌供給口 8…給水弁 9…駆動シャフト 10…ダイヤフラム 11…分離重金属 12…排出弁 13…検出器 14…分離土壌排出口 15…ゲート 16…分離土壌排出路 17…サイトグラス 18…残留金属検出器 101…受入れホッパー 102…切り出しフィーダー 103…ドラムウオッシャー 104…2段湿式振動篩 105…中粒選別装置 106…湿度振動篩 107…脱水装置 108…脱水装置 109…水処理装置 110…細粒選別装置 111…微粒選別装置 112…分級装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
重金属を含有する土壌から沈降速度差を利用して重金属を選別する選別装置であって、
流体槽と、
前記流体槽の流体中に没して設けられるベッドスクリーンと、
前記流体槽の流体中に没して設けられ、前記ベッドスクリーンの網目より粒径の大きいベッド粒子が前記ベッドスクリーン上に層状に設けられると共に、重金属を含有する土壌が上側に供給されるベッドと、
前記流体槽に流体を供給する流体供給部と、
前記流体槽中の流体及び前記ベッド上の土壌を排出する排出口と、
前記ベッド及び前記ベッド上の前記土壌を揺動する揺動部とを備え、
前記土壌の粒子と前記重金属の粒子の中間の比重を有し、比重と粒径で規定される沈降速度について、前記土壌の粒子より速く且つ前記重金属の粒子より遅いベッド粒子で前記ベッドを構成し、
前記土壌中の重金属を前記ベッド及び前記ベッドスクリーンを通過させ前記流体槽内に沈降させることにより選別することを特徴とする選別装置。
【請求項2】
前記ベッド粒子を球状粒子とすることを特徴とする請求項1記載の選別装置。
【請求項3】
前記ベッドスクリーンの下側から上側に向かって前記流体を流すと共に、
前記揺動部を、前記流体に振動を加えて前記ベッド及び前記土壌を揺動するものとすることを特徴とする請求項1又は2記載の選別装置。
【請求項4】
前記ベッドスクリーンの近傍で且つ前記排出口の近傍に設けられる開閉可能なゲートと、
前記ベッドスクリーンの近傍で且つ前記ゲートの近傍に設けられるサイトグラス若しくは残留金属検出部とを備え、
前記サイトグラスからの目視若しくは前記残留金属検出部の検出により、前記ベッドスクリーン上に滞留する重金属が所定量に達した際に、前記ゲートを開放して排出し、
前記滞留する重金属を前記流体槽内に沈降させることを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載の選別装置。
【請求項5】
重金属を含有する土壌から重金属を沈降速度差を利用して選別する選別方法であって、
流体槽の流体中で、ベッドスクリーンの網目より粒径が大きく且つ比重と粒径で規定される沈降速度について前記土壌の粒子より速く且つ前記重金属の粒子より遅いベッド粒子が前記ベッドスクリーン上に層状に設けられるベッド上に、重金属を含有する土壌を供給する第1工程と、
前記流体槽に流体を供給し且つ前記ベッド及び前記土壌を揺動して、前記土壌中の重金属を前記ベッド及び前記ベッドスクリーンを通過させ前記流体槽内に沈降させる共に、前記流体の流れで前記ベッド上の土壌を排出する第2工程と、
を備えることを特徴とする選別方法。
【請求項6】
前記第2工程において、前記ベッドスクリーンの下側から上側に向かって前記流体を流すと共に、前記流体に振動を加えて前記ベッド及び前記土壌を揺動することを特徴とする請求項5記載の選別方法。
【請求項7】
重金属を含有する土壌を第1の分級部で粗粒と中粒と細粒に分級し、
前記中粒に対して請求項1〜4の何れかに記載の中粒用の選別装置を用いて重金属を選別すると共に、
前記細粒を第2の分級部で更に分級した細粒に対して請求項1〜4の何れかに記載の細粒用の選別装置を用いて重金属を選別することを特徴とする土壌浄化設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−121032(P2011−121032A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−282857(P2009−282857)
【出願日】平成21年12月14日(2009.12.14)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】