選別装置
【課題】重比重物の回収率を低下させることなく、中軽比重物が重比重物に混入するのを防止する。
【解決手段】水槽2内に上昇流を発生させる上昇流発生管8と、この上昇流により水面下に浮遊する中軽比重物Bを上方へ吸引する吸引管9とを設けることにより、沈降速度が遅い中軽比重物Bを上昇流で水面下に浮遊させて吸引管9に吸引排除して、水槽2の底に沈降する重比重物Aに混入するのを防止するとともに、重比重物Aは、上昇流によって吸引管9内に入ったとしても、吸引管9で上方へ吸引されずにその外へ沈降するようにし、重比重物Aの回収率を低下させることなく、中軽比重物Bが重比重物Aに混入するのを防止できる。
【解決手段】水槽2内に上昇流を発生させる上昇流発生管8と、この上昇流により水面下に浮遊する中軽比重物Bを上方へ吸引する吸引管9とを設けることにより、沈降速度が遅い中軽比重物Bを上昇流で水面下に浮遊させて吸引管9に吸引排除して、水槽2の底に沈降する重比重物Aに混入するのを防止するとともに、重比重物Aは、上昇流によって吸引管9内に入ったとしても、吸引管9で上方へ吸引されずにその外へ沈降するようにし、重比重物Aの回収率を低下させることなく、中軽比重物Bが重比重物Aに混入するのを防止できる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物を水槽内で比重差によって選別する湿式の選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比重差を利用した混合物の選別装置として、混合物を水槽内で比重差によって浮上、沈降させる湿式の選別装置が様々な分野で使用されている。
この湿式選別装置は、例えば、製紙原料の木材チップを得る場合、砂利、鉄片等の重比重物が混じった混合物からその重比重物を異物として分離する分野で使用され、比重が1より大きい中軽比重物の木材チップも有効に回収するために水槽中に掬い上げコンベアを設け、このコンベアの背後部より水槽中の水を吸引して、重比重物が沈降する水槽の鉛直筒の下部に供給し、鉛直筒中に上昇流を生じさせて、鉛直筒中を沈降する中軽比重物の木材チップを上昇流で押し戻し、コンベアで掬い上げるようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−79858号公報
【0003】
また、廃棄物の処理分野では、建築廃材であるコンクリートから、比重が2.5以上の重比重物である骨材を回収して再利用することが行なわれている。この回収された骨材にはプラスチック片、木片等が混じっている。このような混合物中のプラスチック片には、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等の比重が1より小さい軽比重物と、塩化ビニル樹脂等の比重が1より大きい中軽比重物とが混じっている。また、湿った木片は比重が1より大きくなって中軽比重物としてその中に混じることがある。このような中軽比重物が混じる混合物から、湿式選別装置を用いて骨材を選別すると、沈降する中軽比重物が骨材に混入し、骨材の選別精度が悪くなる問題がある。
【0004】
さらに、クレー射撃場では、土のフィールドに散在する鉛の散弾を回収しており、土と散弾を一緒に回収した混合物から、散弾を重比重物、土を中軽比重物として、散弾を精度よく選別することが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した廃棄物の処理分野やクレー射撃場等で、湿式選別装置を用いて混合物から重比重物を選別する際に、比重が1より大きい中軽比重物が重比重物に混入するのを防止するためには、特許文献1に記載されたもののように、沈降する中軽比重物を上昇水流で押し戻して、コンベアで掬い上げる方法を採用することが考えられるが、上昇水流で押し戻される重比重物もコンベアに掬い上げられる可能性があり、一旦コンベアに掬い上げられた重比重物は水槽中に戻らないので、重比重物の回収率が低下する問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、重比重物の回収率を低下させることなく、中軽比重物が重比重物に混入するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、上昇流で浮上させた中軽比重物を吸引管により吸引して除去分離するとともに、吸引管に入り込んだ重比重物は自重により沈下させて水槽内に戻すようにしたのである。
このようにすれば、重比重物は吸引されること無く水槽内に戻るため、その水槽内に沈降した重比重物を従来と同様にして回収すればよい。
【0008】
この発明の構成としては、選別される混合物を水槽内に投入し、その比重差によって水槽底に沈降する前記混合物中の重比重物を選別する選別装置において、前記水槽内に、上昇流を発生させる上昇流発生管と、その上昇流で水中に浮遊する浮遊物を下向き開口から上方へ吸引する吸引管とを設け、その吸引管の吸引力を前記重比重物が吸引管内に入り込んでも自重沈下するように設定したのである。
【0009】
その吸引管の吸引力は、吸引管の流通断面積、吸引流速、吸引ポンプの能力等によって決定されるため、実験、実操業等によってそれらを適宜に設定して、重比重物が吸引管内に入り込んでも自重沈下するようにする。
例えば、上昇流の流速に比べて、吸引管の吸引流速を遅くすれば、上昇流により重比重物を含む混合物が上昇し、その混合物が吸引管に吸い込まれても、吸引管内の流速が遅いので、混合物の内、重比重物は自重により吸引管の下方へと沈下する。すなわち、上昇流の流速より吸引流速が遅いため、強い上昇流で持ち上げられた重比重物は弱い吸引流では吸い込まれずに自重により吸引管の下方に沈下して精度のよい選別が行なわれる。
【0010】
その上昇流の流速より吸引流速を遅くする手段として、例えば、前記上昇流発生管の開口面積を、前記吸引管の開口から上記上方へ吸引する吸引管の入口部分の流通断面積よりも小さくすること等が考えられる。このように開口面積(流通断面積)を異ならすと、通常、上昇流発生管の開口から勢い良く上昇流が出るため、重比重物を含む混合物がその上昇流とともに上昇して吸引管内に入り込む場合があるが、その吸引途中で、上昇流速より吸引流速が遅いため、重比重物は吸引管内にさらに吸い込まれることなく自重により吸引管の下方に沈下する。この流通断面積差は、上昇流発生管と吸引管に同じ流量を流す場合に有効である。
吸引管の入口部分の長さ(図2のL参照)は、この入口部分に入った重比重物が自重により円滑に沈下するように実験等によって、流速等を考慮して適宜に設定する。
【0011】
上昇流発生管の開口は、水槽内に上昇流を生じさせる位置であれば、水槽内の何れでもよいが、実験、実操業等により、上昇流により水槽に投入された混合物を円滑に浮遊させる位置を適宜に設定する。
上昇流発生管の開口と吸引管の開口の位置関係は、上昇流で水中に浮遊された浮遊物を円滑に吸引できるように、実験、実操業等により、両開口を適宜な距離、角度を持って対向するように設定する。この場合、重比重物を除く混合物の全てと重比重物の一部のみが吸引されるような位置関係とすることが望ましい。
【0012】
これらの構成において、前記水槽内を、前記混合物の流れ方向に沿う、例えば垂直な仕切板で複数列に仕切り、これらの仕切られた各列に前記吸引管をそれぞれ設けたものとすることができる。
このようにすれば、仕切板によって上昇流が整流されるため、中軽比重物を安定して浮遊させることができる。
【0013】
このとき、前記水槽内に投入される混合物を予め篩によりサイズ分けし、これらのサイズ分けされた混合物を前記仕切られた各列へ別々に投入することにより、所定の比重を分岐点とした選別精度を高めることができる。すなわち、混合物のサイズが同じであれば、その混合物が上昇流により受ける浮力はほぼ等しく、比重差による自重沈下力の差により、中軽比重物は上昇しやすく、重比重物は沈降し易くなる。
なお、小さなサイズの物ほど、受ける浮力は小さいが、自重による沈降力が大きく低下するので、サイズ分けを行わない場合には、小サイズの重比重物は、それよりサイズが大きくて、比重の小さな混合物とともに吸引管に吸引されて外部に排出される恐れがある。
したがって、サイズ分けを行なえば、各列での上昇流の強さを変えて、各サイズ毎の重比重物と中軽比重物を比重の違いのみで沈降側と上昇側に分離させ、上記サイズの違いによる影響を少なくして、選別精度を高めることができる。
【0014】
なお、上昇流は一つの上昇流発生管で生じさせても良いが、前記仕切られた各列毎に上昇流発生管を設けたり、又は、2以上の列ごとに上昇流発生管を設けたりすることができる。後者の場合は、一の上昇流発生管の開口が2以上の列に臨むこととなる。
【0015】
吸引管は、前記混合物の流れ方向に向かって複数を順々に設けることができる。このようにすれば、吸引管の吸引力を混合物の流れ方向に向かって段階的に高く(強く)すること、すなわち混合物の流れの上流側より下流側の吸引管の吸引力を高くすることにより、各吸引管から吸引される(捕捉される)物の比重を変えることができて、比重の異なるものを選別して捕捉できる。吸引管の数は、捕捉する比重差の物の数によって適宜に設定する。
【0016】
このとき、前記各吸引管に対して上昇流発生管をそれぞれ設け、混合物の流れ方向に向かってその各上昇流発生管による上昇流を順々に強くなるように(上昇流速が順々に速くなるように)設定することにより、捕捉するものの比重に合わせて円滑な浮遊と吸引を行い得るようにすることができる。
例えば、2つの上昇流発生管を設けた場合、前側(混合物の流れの上流側)の吸引管で、比重が1より大きいプラスチック等の中軽比重物を吸引し、つぎに、後側の吸引管では、前側の吸引管では吸引されなかった重比重物の内、骨材等の比較的比重が小さい重比重物を吸引することにより、前後の吸引管で吸引されなかった鉄、銅、鉛等の金属で比重が非常に大きい重比重物と、後側の吸引管で吸引された骨材等の比較的比重が小さい重比重物と、前側の吸引管で吸引された中軽比重物の3種類に選別することができる。
また、各吸引管の吸引力を変えなくても、前側の吸引管では吸引されない浮遊物を後側の吸引管により吸引させることができるため、前記選別精度を高めることができる。
さらに、前記各吸引管に対して上昇流発生管をそれぞれ設ければ、各吸引管に対して、混合物を円滑に浮遊させて送り込むことができ、選別精度をさらに高めることができる。
これらの場合も、上昇流発生管の開口と吸引管の開口の位置関係は、所要の比重の物をできるだけ吸引することなく、上昇流で水中に浮遊された所要の比重の浮遊物を円滑に吸引できるように、実験、実操業等により、両開口を適宜な距離、角度を持って対向するように設定する。
【0017】
前記上昇流発生管と吸引管の開口のそれぞれを前記混合物の流れ方向に対して横方向に長い長孔形状(楕円形状のみならず、矩形状も含む。図14参照)とすれば、上昇流が水槽内において幅の狭いものとなって明確な流れが生じるとともに、吸引流もその混合物の流れ方向に幅の狭いものとなるため、その吸引作用も確実になる。
その長孔の長さは、混合物の流れ方向に対する横方向の長さと水槽の広さによって適宜に設定する。また、長孔の幅も、上昇流の形成度合、吸引度合を考慮して適宜に設定する。
【0018】
これらの構成において、前記水槽内の前記上昇流発生管と吸引管の間に、下端側が排出端として開放された傾斜スクリーンを前記混合物の流れ方向に向かって下向きに傾斜させて設け、この傾斜スクリーンの上端側に前記混合物を投入して、前記下端側の排出端から前記重比重物を前記水槽底へ沈下させるようにすることができる。
このようにすれば、傾斜スクリーン上において、集団状態で沈下した混合物が上昇流を受けて掻き回されつつ浮上するため、中軽比重物が円滑に分離されるとともに、重比重物がそのスクリーン上をそのまま降下して水槽底に沈下する。すなわち、中軽比重物と重比重物の分離が円滑になるとともに、その集団状態で沈下した混合物に上昇流を当てればよいため、その上昇流の量(水量)を少なくできる(少ない上昇流で効率よく混合物を浮上させることができる)。
このとき、上昇流発生管の開口をこの傾斜スクリーンの下方で、その傾斜方向の所定の位置、例えば、排出端側に設ければ、水槽の一部の領域で上昇流を発生させるのみで、中軽比重物を水面下に浮遊させることができ、上昇流の水量を少なくすることができる。この場合、傾斜スクリーンの下方の他の位置にも上昇流発生管を開口させてもよい。
【0019】
前記傾斜スクリーンに振動を付与する手段を設けることにより、スクリーン上に沈降する中軽比重物を上昇流で確実に浮遊させて吸引管へ選択的に吸引し、選別精度をより高めることができる。また、スクリーンの目詰まりも防止することができる。
【0020】
前記傾斜スクリーンの上端側に投入される混合物の貯留部を設けることにより、この貯留部に至る間に自重差により、混合物は、重比重物を下側へ、中軽比重物を上側へ偏在させたのち、傾斜スクリーンの上端側に移動することとなるため、上側に偏在する中軽比重物を上昇流により円滑に浮遊させて吸引管に吸引されやすくすることができる。
このとき、貯留部が傾斜スクリーンに連続しておれば、その傾斜スクリーンの振動につれて貯留部も振動するため、その貯留部に至った混合物は、その振動により、前記重比重物を下側へ、中軽比重物を上側へ偏在させる作用が促進される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のようにして、重比重物は吸引されること無く水槽の底部に沈下するようにしたので、重比重物の回収率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1の実施形態を示す。この選別装置1は、建築廃材のコンクリートに含まれる骨材の回収設備に用いられ、骨材に混じる木片やプラスチック片を除去するものである。
【0023】
図1に示すように、前記コンクリートは、破砕機21で破砕されて、大型異物が手選別で除去されたのち篩22にかけられ、サイズが2mm程度以下の微小異物が除去されるとともに、40mmを超える大破砕物は破砕機21に戻されて再破砕される。40mm以下のサイズとされた破砕物は、磁選機23で鉄類を除去されたのち、磨砕機24で擦り合わされて、骨材に付着するセメントモルタル分が除去され、篩25で5種類のサイズに篩い分けられる。
この実施形態では、7mm未満、7〜13mm、13〜20mm、20〜28mm、28〜40mmのサイズに篩い分けられ、湿式選別装置1に投入されるようになっている。この湿式選別装置1に投入される処理物は、骨材に木片やプラスチック片が混入した混合物Dである。
【0024】
図2および図3に示すように、前記湿式選別装置1は、横長の平面視矩形状の水槽2内に横長の上面開口の平面視矩形状バスケット3が上下動自在に吊り下げられており、このバスケット3内は垂直な仕切板4でその幅方向(図3の左右方向)に5列に仕切られて、これらの各列に前記篩25で5種類のサイズに篩い分けられた混合物Dがシュート5から投入されるようになっている。
【0025】
なお、各仕切板4の仕切り位置は可変とされ、混合物Dの各サイズでの処理量に応じて、各列の幅を調整できるようになっている。
また、バスケット3の底には、混合物Dが投入される供給端3aから他端側の排出端3bへ下向きに傾斜する傾斜スクリーン6が設けられ、この傾斜スクリーン6には、バスケット3を介して振動発生手段7で振動が付与される。この振動発生手段7は、振動伝達板7aが円運動(図2矢印参照)してバスケット3との当接位置を変化させることにより、バスケット3を上下させて振動を付与する。
【0026】
前記仕切板4で仕切られたバスケット3の各列には、傾斜スクリーン6の傾斜途中で下方から上昇流を発生させる上向きに開口した上昇流発生管8と、上昇流で水中に浮遊する水中浮遊物を吸引する下向きに開口した吸引管9とが設けられている。上昇流発生管8と吸引管9は斜め方向で対向しており、両者の開口8a、9a間の距離は、上昇流が衰えない距離に設定されている。また、バスケット3の排出端3bで傾斜スクリーン6の下端側は開放されており、その外側の水面近くに、水面上の浮上物を掬い上げるコンベア10が設けられるとともに、排出端3b側の水槽2の底には、沈下物を排出する排出スクリュー11が設けられている。
【0027】
前記シュート5からバスケット3の各列に投入される混合物Dのうち、骨材等の重比重物Aは、速やかに傾斜スクリーン6上に沈降し、傾斜スクリーン6上を排出端3b側へ下降移動したのち、下端側の開放された排出端3bから水槽2の底へ沈下して、回転する排出スクリュー11で選別回収される。一部の重比重物Aは、傾斜スクリーン6上を下降移動中に上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊するが、吸引管9に向かう斜め上方への上昇流に乗れず、傾斜スクリーン6上へ沈降する。
また、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、吸引管9は下向きに開口してその開口9aから上方へ傾斜しているので、自重による沈降力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下する。
【0028】
なお、吸引管9の上方への傾斜角度は調節可能となっており、吸引管9に吸引されるか否かの比重の境界を調整することができる。吸引管9の上方への傾斜角度を緩傾斜にするほど、大きな比重のものまで吸引管9に吸引される。
また、上昇流の流速と吸引管9内の流速は、混合物のサイズが大きい程、大きく設定されている。
さらに、上昇流発生管8からの上昇流と吸引管9の吸引流は一つのポンプにより形成したり(図5参照)、それぞれ別のポンプにより形成したりする。その際、その吸引管9の吸引力(吸引流速)が重比重物Aが吸引管9内に入り込んでも自重沈下するように、吸引管9の流通断面積、ポンプの能力等を適宜に設定し、それに併せて、上昇流発生管8の流通断面積等も適宜に設定する。
【0029】
前記投入される混合物Dに含まれる木片やプラスチック片のうちの比重が1よりも大きい中軽比重物Bは、緩やかに沈降して傾斜スクリーン6上を下降移動し、その途中で上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出される。また、比重が1よりも小さい軽比重物Cは、水面上へ浮上して排出端3b側へ移動し、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。
なお、傾斜スクリーン6には振動が付与されているので、中軽比重物Bは、比重の大きい重比重物Aの下側となっても振動により自然に上側となり、上昇流によって確実に浮遊させることができる。また、傾斜スクリーン6が目詰まりすることもない。
【0030】
図4は、第2の実施形態を示す。この選別装置1も骨材を主とした前記混合物Dから骨材を選別するものであり、第1の実施形態のものと同様に、横長の水槽2内に吊り下げられた横長のバスケット3の底に傾斜スクリーン6が設けられ、傾斜スクリーン6の傾斜途中で下方から上昇流を発生させる上昇流発生管8と、上昇流で水面下に浮遊する浮遊物を吸引する吸引管9とが設けられている。
【0031】
このバスケット3は仕切板で仕切られておらず、シュート5から供給端3aに投入される混合物はサイズ別に分けられることなく、重比重物Aは傾斜スクリーン6上に沈降して下降移動したのち、下端側の排出端3bから水槽2の底へ沈下して、排出スクリュー11で選別回収される。また、中軽比重物Bは傾斜スクリーン6上に沈降して下降移動し、その途中で上昇流発生管8からの上昇流によって水面下に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出され、軽比重物Cは水面上へ浮上して排出端3b側へ移動し、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。
また、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下する。
この実施形態にも振動発生手段7を適宜に採用できる。
【0032】
図5は、第3の実施形態を示す。この選別装置1は、前記バスケット3がなく、横長の水槽2の供給端2a側から排出端2b側へ下向きに傾斜する底に沿って、複数の上昇流発生管8が底のほぼ全面を覆うように配列されている。水面下には第2の実施形態と同様の吸引管9が下向きに開口しており、ポンプ12で水槽2の水が吸引管9へ吸引され、吸引された水はフィルタ13を通して中軽比重物Bを除去されたのち循環使用され、再び、各上昇流発生管8から水槽2内に上昇流を発生させるように吐出されるようになっている。また、排出端2b側の水面近くには、水面上の浮上物を掬い上げるコンベア10が設けられ、排出端2b側の底には排出スクリュー11が設けられている。
【0033】
この実施形態では、シュート5から水槽2の供給端2aに投入される混合物Dのうち、沈降する重比重物Aが、排出端2b側へ下向きに傾斜する水槽2の底を下降移動して、排出スクリュー11で選別回収され、緩やかに沈降する中軽比重物Bは、各上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出される。また、水面上に浮上する軽比重物Cは、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。さらに、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び水槽2の底面上へ沈下し、その傾斜により排出スクリュー11の方に移動する。
【0034】
図6は、第4の実施形態を示し、この選別装置1は、水槽2の平面視における混合物Dの流れ方向に沿って吸引管9の複数を順々に設けるとともに、各吸引管91、92・・に対して上昇流発生管81、82・・をそれぞれ設け、その各吸引管91、92・・の吸引力及び上昇流発生管8の上昇力を前記流れ方向に向かって順々に強くしたものである。
この実施形態では、各吸引管91、92・・の流通断面積を同じにするとともに、各上昇流発生管81、82・・の流通断面積(開口面積)を同じにしたため、吸引力、上昇力の変化は、その吸引流速、上昇(吐出)流速を変化させることにより行なった。
【0035】
この実施形態は、上昇流発生管81からの上昇流によって水中に浮遊する中軽比重物Bが吸引管91で吸引排出されるとともに、骨材等の比較的比重の小さい重比重物A’が、第2の上昇流発生管82からの強い上昇流によって水中に浮遊して、強い吸引力の第2の吸引管92で吸引排出され、さらに、その重比重物A’より少し重い重比重物A''が、第3の上昇流発生管83からの強い上昇流によって水中に浮遊して、強い吸引力の第3の吸引管93で吸引排出される。このとき、重比重物A、A’、A''が流れに乗って吸引管91、92・・に吸引されても、その吸引管91、92・・の吸引力に応じてそのまま吸引されたり、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下したりして、さらに水槽2の下端側排出端2bに沈下する。
このように、3段階の吸引選別が行われて、重比重物Aが比重別に選別(A’、A'')されると共に、水槽2の下端側の排出端2bからは、鉄鋼、銅、鉛等の金属の比重が非常に大きい重比重物Aのみが排出スクリュー11の中へ沈下して選別される。
【0036】
この実施形態において、バスケット3、傾斜スクリーン6、振動発生手段7等を適宜に採用できる。また、混合物Dの選別数に応じて吸引管9及び上昇流発生管8の数を適宜に設定する。さらに、同図鎖線のように、傾斜スクリーン6を設ければ、図4に示すように、その上を混合物Dが移動するため、前記選別作用が確実になる。
【0037】
図7は、第5の実施形態を示す。この選別装置1は、水槽2が縦長の深いものとされ、中ほどの深さの水中に挿入されたシュート5から混合物Dが投入されるようになっている。シュート5の下方には水槽2のほぼ全断面を覆うように複数の上昇流発生管8が設けられ、シュート5の上方には下向きに開口した吸引管9が設けられており、第3の実施形態のものと同様に、ポンプ12で水槽2の水が吸引管9へ吸引され、吸引された水はフィルタ13を通して中軽比重物Bを除去されたのち循環使用され、再び、各上昇流発生管8から水槽2内に上昇流を発生させるように吐出されるようになっている。また、水面近くには水面上の浮上物を掬い上げるコンベア10が設けられ、底には排出スクリュー11が設けられている。
【0038】
この実施形態では、シュート5から水中に投入される混合物Dのうち、水槽2の底に沈降する重比重物Aが排出スクリュー11で選別回収され、中軽比重物Bは各上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出される。水面上に浮上する軽比重物Cは、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。また、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方に沈下する。
【0039】
図8および図9は、第6の実施形態を示す。この選別装置1は、第1の実施形態のものと同様に、横長の水槽2内に吊り下げられた横長のバスケット3が仕切板4で5列に仕切られて、これらの各列に5種類のサイズに篩い分けられた混合物Dがシュート5から投入されるようになっている。
混合物Dが投入されるバスケット3の供給端3a側に、有底の貯留部14が設けられ、この貯留部14の底に、第1の実施形態のものと同様に排出端3b側へ下向きに傾斜する傾斜スクリーン6が接続されており(連続しており)、バスケット3に取り付けられた振動発生手段7によって、貯留部14の底と傾斜スクリーン6とに振動が付与される。
【0040】
前記貯留部14の底は傾斜スクリーン6側へわずかに下降傾斜しており、その下降傾斜端側に、水槽2とバスケット3の側壁および各列の仕切板4を水面部分で貫通する排出スクリュー15が設けられ、各列内で開けられたその開口15aから、各列の水面上に浮上する軽比重物Cが外部に排出されるようになっている。排出スクリュー15の後面側には、水面上に浮上する軽比重物Cを堰き止める堰16が設けられている。
なお、前記振動発生手段7は排出スクリュー15の上方でバスケット3の側壁に取り付けられており、排出スクリュー15が貫通する水槽2の側壁部分は、バスケット3の側壁と排出スクリュー15を介して伝わる振動を吸収するために、フレキシブルカバー17で周囲の側壁に接続されている。
【0041】
また、前記傾斜スクリーン6の傾斜途中には、バスケット3の各列毎に、下方から上昇流を発生させる上昇流発生管8と、上昇流で水中に浮遊する水中浮遊物を吸引する吸引管9とが、それぞれの開口8a、9aが傾斜スクリーン6の幅方向略全域に亘るように、上下に対向させて設けられている。各上昇流発生管8と各吸引管9は各列毎に分割して配置され、各列毎のそれぞれの開口8a、9aは矩形断面の長孔形状とされ、各吸引管9の開口9aとその入口部分の断面積は、各上昇流発生管8の開口8aの面積よりも大きく形成されている。
なお、排出端3b側の水槽2の底には、第1の実施形態のものと同様に、沈下物を排出する排出スクリュー11が設けられている。
【0042】
この実施形態は、シュート5から各列の貯留部14に投入されるサイズ分けされた各混合物Dが、貯留部14の底に付与される振動によって、重比重物Aが下側へ、中軽比重物Bが上側へ偏在する。
そして、その状態を保ったまま、堰16の下側を通過して傾斜スクリーン6の上端側へ移動し、傾斜スクリーン6上でも上側に偏在する中軽比重物Bが、各上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、各吸引管9に吸引されて外部に排出される。
傾斜スクリーン6上を下側に偏在しながら移動する重比重物Aは、上昇流で吸引管9の中に入っても再び傾斜スクリーン6上へ沈下し、傾斜スクリーン6の下端側の排出端3bから水槽2の底の排出スクリュー11の中へ沈下して、その排出口11bから選別回収される。上昇流の流速と吸引管9内の流速は、例えば、一番小さいサイズの列では秒速0.7m、一番大きいサイズの列では秒速1.8mに設定されている。
このように、混合物Dのサイズに応じて、吸引速度が設定されているので、各吸引管9により重比重物Aが吸引されても、所定の比重よりも上回り、再び下方のスクリーン6上に沈下する。
なお、サイズ分けされた各列の混合物中の軽比重物Cは水面上に浮上し、回転する排出スクリュー15の各開口15aに入って、その排出口15bからまとめて外部に排出される。
【0043】
図10は、第6の実施形態の第1変形例を示す。この第1変形例は、前記傾斜スクリーン6の傾斜途中に設けられた上昇流発生管8と吸引管9よりもバスケット3の排出端3b側に、上昇流発生管8よりも強い上昇流を発生する第2の上昇流発生管82と、吸引管91よりも強い吸引力の第2の吸引管92とが、傾斜スクリーン6の下側と上側とで開口8a、9a同士が対向するように設けられている。
この第1変形例では、上昇流発生管81からの上昇流によって水中に浮遊する中軽比重物Bが吸引管91で吸引排出されるとともに、骨材等の比較的比重の小さい重比重物A’が、第2の上昇流発生管82からの強い上昇流によって水中に浮遊して、強い吸引力の第2の吸引管92で吸引排出される。このとき、重比重物A、A’が流れに乗って吸引管91、92に吸引されると、前側の吸引管91では両重比重物A、A’ともに自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下し、後側の吸引管92では鉄、銅、鉛等の重比重物Aは自重による沈下力が吸引による浮力よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下し、骨材等の比較的比重の小さい重比重物A’はそのまま吸引されて外部に導き出される。
したがって、2段階の吸引選別が行われて、重比重物Aが比重別に選別(AとA’)されると共に、傾斜スクリーン6の下端側の排出端3bからは、鉄、銅、鉛等の金属の比重が非常に大きい重比重物Aのみが排出スクリュー11の中へ沈下して選別される。
【0044】
図11は、第6の実施形態の第2変形例を示す。この第2変形例は、前記水槽2の排出端側の底に設けられた排出スクリュー11の手前側に第2の排出スクリュー11aが設けられ、水槽2の排出端側から前方へ向けた水平流を発生させるノズル18が設けられている。
したがって、傾斜スクリーン6の下端側の排出端3bから沈下する重比重物Aのうちの、骨材等の比較的比重が小さい重比重物A’は、ノズル18からの水平流の影響を受けて前方の第2の排出スクリュー11aに沈下し、鉄、銅、鉛等の金属の比重が非常に大きい重比重物Aのみが、そのまま排出スクリュー11の中へ沈下して選別される。
図10、図11の変形例において、上昇流発生管8と吸引管9の数は任意である。
【0045】
図12、図13には、第7、第8の実施形態を示し、この両実施形態は、図7に示した第5の実施形態の第1、第2変形例であり、図12の実施形態は、吸引管9を2本91、92設けたものであり、図13の実施形態は、さらに上昇流発生管8も2本81、82設けたものである。両吸引管91、92の吸引力は上流側の吸引管91を下流側の吸引管92より弱くし、両上昇流発生管81、82もその吐出力を上流側の上昇流発生管81を下流側の上昇流発生管82より弱くすることにより、図10の実施形態と同様にして、重比重物A、A’の選別を行うことができる。このとき、重比重物A、A’が流れに乗って吸引管91、92に吸引されても、その吸引管91、92の吸引力に応じてそのまま吸引されたり、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方へ沈下したりする。
前記各実施形態も含めて、吸引管9の入り口部分の形状を図14に示す態様等とすることができ、さらに、上昇流発生管8の入り口形状も同様とし得る。この実施形態においても、上昇流発生管8と吸引管9の数は任意である。
【0046】
上記各実施形態において、傾斜スクリーン6の目から重比重物Aを沈下させても良く、また、各実施形態にない部材をその部材のない実施形態に適宜に採用することができる。例えば、貯留部14を図2、図4、図6の各実施形態に適宜に採用することができる。
各実施形態は、建築廃材のコンクリート骨材の選別の場合であったが、上記の製紙用木材チップから砂利等を分離除去する場合や、クレー射撃場での散弾の選別等にもこの各実施形態を採用することができて、その選別精度が高い効果を得ることができる。それらの場合、上昇流発生管8及び吸引管9の数、傾斜スクリーン6の有無等は対象選別物に応じて適宜に設定する。例えば、散弾等の場合、対象選別物が一つのため、上昇流発生管8及び吸引管9の数は一つで十分である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態の選別装置に投入される混合物が建築廃材から分別される工程を示す工程図
【図2】第1の実施形態の選別装置を示す縦断面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】第2の実施形態を示す縦断面図
【図5】第3の実施形態を示す縦断面図
【図6】第4の実施形態を示す縦断面図
【図7】第5の実施形態を示す縦断面図
【図8】第6の実施形態を示す縦断面図
【図9】図8の平面図
【図10】第6の実施形態の第1変形例を示す一部省略縦断面図
【図11】第6の実施形態の第2変形例を示す一部省略縦断面図
【図12】第7の実施形態を示す縦断面図
【図13】第8の実施形態を示す縦断面図
【図14】吸引管の一例の部分斜視図
【符号の説明】
【0048】
A、A’、A'' 重比重物
B 中軽比重物
C 軽比重物
D 混合物
1 湿式選別装置
2 水槽
2a 供給端
2b 排出端
3 バスケット
3a 供給端
3b 排出端
4 仕切板
5 シュート
6 傾斜スクリーン
7 振動発生手段
8、81、82・・ 上昇流発生管
8a 上昇流発生管の開口
9、91、92・・ 吸引管
9a 吸引管の開口
10 コンベア
11、11a 排出スクリュー
11b 排出口
12 ポンプ
13 フィルタ
14 貯留部
15 排出スクリュー
15a 開口
15b 排出口
16 堰
17 フレキシブルカバー
18 ノズル
21 破砕機
22 篩
23 磁選機
24 磨砕機
25 篩
【技術分野】
【0001】
本発明は、混合物を水槽内で比重差によって選別する湿式の選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
比重差を利用した混合物の選別装置として、混合物を水槽内で比重差によって浮上、沈降させる湿式の選別装置が様々な分野で使用されている。
この湿式選別装置は、例えば、製紙原料の木材チップを得る場合、砂利、鉄片等の重比重物が混じった混合物からその重比重物を異物として分離する分野で使用され、比重が1より大きい中軽比重物の木材チップも有効に回収するために水槽中に掬い上げコンベアを設け、このコンベアの背後部より水槽中の水を吸引して、重比重物が沈降する水槽の鉛直筒の下部に供給し、鉛直筒中に上昇流を生じさせて、鉛直筒中を沈降する中軽比重物の木材チップを上昇流で押し戻し、コンベアで掬い上げるようにしている(特許文献1参照)。
【特許文献1】特開昭62−79858号公報
【0003】
また、廃棄物の処理分野では、建築廃材であるコンクリートから、比重が2.5以上の重比重物である骨材を回収して再利用することが行なわれている。この回収された骨材にはプラスチック片、木片等が混じっている。このような混合物中のプラスチック片には、ポリプロピレン樹脂やポリエチレン樹脂等の比重が1より小さい軽比重物と、塩化ビニル樹脂等の比重が1より大きい中軽比重物とが混じっている。また、湿った木片は比重が1より大きくなって中軽比重物としてその中に混じることがある。このような中軽比重物が混じる混合物から、湿式選別装置を用いて骨材を選別すると、沈降する中軽比重物が骨材に混入し、骨材の選別精度が悪くなる問題がある。
【0004】
さらに、クレー射撃場では、土のフィールドに散在する鉛の散弾を回収しており、土と散弾を一緒に回収した混合物から、散弾を重比重物、土を中軽比重物として、散弾を精度よく選別することが望まれている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した廃棄物の処理分野やクレー射撃場等で、湿式選別装置を用いて混合物から重比重物を選別する際に、比重が1より大きい中軽比重物が重比重物に混入するのを防止するためには、特許文献1に記載されたもののように、沈降する中軽比重物を上昇水流で押し戻して、コンベアで掬い上げる方法を採用することが考えられるが、上昇水流で押し戻される重比重物もコンベアに掬い上げられる可能性があり、一旦コンベアに掬い上げられた重比重物は水槽中に戻らないので、重比重物の回収率が低下する問題がある。
【0006】
そこで、本発明の課題は、重比重物の回収率を低下させることなく、中軽比重物が重比重物に混入するのを防止することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明は、上昇流で浮上させた中軽比重物を吸引管により吸引して除去分離するとともに、吸引管に入り込んだ重比重物は自重により沈下させて水槽内に戻すようにしたのである。
このようにすれば、重比重物は吸引されること無く水槽内に戻るため、その水槽内に沈降した重比重物を従来と同様にして回収すればよい。
【0008】
この発明の構成としては、選別される混合物を水槽内に投入し、その比重差によって水槽底に沈降する前記混合物中の重比重物を選別する選別装置において、前記水槽内に、上昇流を発生させる上昇流発生管と、その上昇流で水中に浮遊する浮遊物を下向き開口から上方へ吸引する吸引管とを設け、その吸引管の吸引力を前記重比重物が吸引管内に入り込んでも自重沈下するように設定したのである。
【0009】
その吸引管の吸引力は、吸引管の流通断面積、吸引流速、吸引ポンプの能力等によって決定されるため、実験、実操業等によってそれらを適宜に設定して、重比重物が吸引管内に入り込んでも自重沈下するようにする。
例えば、上昇流の流速に比べて、吸引管の吸引流速を遅くすれば、上昇流により重比重物を含む混合物が上昇し、その混合物が吸引管に吸い込まれても、吸引管内の流速が遅いので、混合物の内、重比重物は自重により吸引管の下方へと沈下する。すなわち、上昇流の流速より吸引流速が遅いため、強い上昇流で持ち上げられた重比重物は弱い吸引流では吸い込まれずに自重により吸引管の下方に沈下して精度のよい選別が行なわれる。
【0010】
その上昇流の流速より吸引流速を遅くする手段として、例えば、前記上昇流発生管の開口面積を、前記吸引管の開口から上記上方へ吸引する吸引管の入口部分の流通断面積よりも小さくすること等が考えられる。このように開口面積(流通断面積)を異ならすと、通常、上昇流発生管の開口から勢い良く上昇流が出るため、重比重物を含む混合物がその上昇流とともに上昇して吸引管内に入り込む場合があるが、その吸引途中で、上昇流速より吸引流速が遅いため、重比重物は吸引管内にさらに吸い込まれることなく自重により吸引管の下方に沈下する。この流通断面積差は、上昇流発生管と吸引管に同じ流量を流す場合に有効である。
吸引管の入口部分の長さ(図2のL参照)は、この入口部分に入った重比重物が自重により円滑に沈下するように実験等によって、流速等を考慮して適宜に設定する。
【0011】
上昇流発生管の開口は、水槽内に上昇流を生じさせる位置であれば、水槽内の何れでもよいが、実験、実操業等により、上昇流により水槽に投入された混合物を円滑に浮遊させる位置を適宜に設定する。
上昇流発生管の開口と吸引管の開口の位置関係は、上昇流で水中に浮遊された浮遊物を円滑に吸引できるように、実験、実操業等により、両開口を適宜な距離、角度を持って対向するように設定する。この場合、重比重物を除く混合物の全てと重比重物の一部のみが吸引されるような位置関係とすることが望ましい。
【0012】
これらの構成において、前記水槽内を、前記混合物の流れ方向に沿う、例えば垂直な仕切板で複数列に仕切り、これらの仕切られた各列に前記吸引管をそれぞれ設けたものとすることができる。
このようにすれば、仕切板によって上昇流が整流されるため、中軽比重物を安定して浮遊させることができる。
【0013】
このとき、前記水槽内に投入される混合物を予め篩によりサイズ分けし、これらのサイズ分けされた混合物を前記仕切られた各列へ別々に投入することにより、所定の比重を分岐点とした選別精度を高めることができる。すなわち、混合物のサイズが同じであれば、その混合物が上昇流により受ける浮力はほぼ等しく、比重差による自重沈下力の差により、中軽比重物は上昇しやすく、重比重物は沈降し易くなる。
なお、小さなサイズの物ほど、受ける浮力は小さいが、自重による沈降力が大きく低下するので、サイズ分けを行わない場合には、小サイズの重比重物は、それよりサイズが大きくて、比重の小さな混合物とともに吸引管に吸引されて外部に排出される恐れがある。
したがって、サイズ分けを行なえば、各列での上昇流の強さを変えて、各サイズ毎の重比重物と中軽比重物を比重の違いのみで沈降側と上昇側に分離させ、上記サイズの違いによる影響を少なくして、選別精度を高めることができる。
【0014】
なお、上昇流は一つの上昇流発生管で生じさせても良いが、前記仕切られた各列毎に上昇流発生管を設けたり、又は、2以上の列ごとに上昇流発生管を設けたりすることができる。後者の場合は、一の上昇流発生管の開口が2以上の列に臨むこととなる。
【0015】
吸引管は、前記混合物の流れ方向に向かって複数を順々に設けることができる。このようにすれば、吸引管の吸引力を混合物の流れ方向に向かって段階的に高く(強く)すること、すなわち混合物の流れの上流側より下流側の吸引管の吸引力を高くすることにより、各吸引管から吸引される(捕捉される)物の比重を変えることができて、比重の異なるものを選別して捕捉できる。吸引管の数は、捕捉する比重差の物の数によって適宜に設定する。
【0016】
このとき、前記各吸引管に対して上昇流発生管をそれぞれ設け、混合物の流れ方向に向かってその各上昇流発生管による上昇流を順々に強くなるように(上昇流速が順々に速くなるように)設定することにより、捕捉するものの比重に合わせて円滑な浮遊と吸引を行い得るようにすることができる。
例えば、2つの上昇流発生管を設けた場合、前側(混合物の流れの上流側)の吸引管で、比重が1より大きいプラスチック等の中軽比重物を吸引し、つぎに、後側の吸引管では、前側の吸引管では吸引されなかった重比重物の内、骨材等の比較的比重が小さい重比重物を吸引することにより、前後の吸引管で吸引されなかった鉄、銅、鉛等の金属で比重が非常に大きい重比重物と、後側の吸引管で吸引された骨材等の比較的比重が小さい重比重物と、前側の吸引管で吸引された中軽比重物の3種類に選別することができる。
また、各吸引管の吸引力を変えなくても、前側の吸引管では吸引されない浮遊物を後側の吸引管により吸引させることができるため、前記選別精度を高めることができる。
さらに、前記各吸引管に対して上昇流発生管をそれぞれ設ければ、各吸引管に対して、混合物を円滑に浮遊させて送り込むことができ、選別精度をさらに高めることができる。
これらの場合も、上昇流発生管の開口と吸引管の開口の位置関係は、所要の比重の物をできるだけ吸引することなく、上昇流で水中に浮遊された所要の比重の浮遊物を円滑に吸引できるように、実験、実操業等により、両開口を適宜な距離、角度を持って対向するように設定する。
【0017】
前記上昇流発生管と吸引管の開口のそれぞれを前記混合物の流れ方向に対して横方向に長い長孔形状(楕円形状のみならず、矩形状も含む。図14参照)とすれば、上昇流が水槽内において幅の狭いものとなって明確な流れが生じるとともに、吸引流もその混合物の流れ方向に幅の狭いものとなるため、その吸引作用も確実になる。
その長孔の長さは、混合物の流れ方向に対する横方向の長さと水槽の広さによって適宜に設定する。また、長孔の幅も、上昇流の形成度合、吸引度合を考慮して適宜に設定する。
【0018】
これらの構成において、前記水槽内の前記上昇流発生管と吸引管の間に、下端側が排出端として開放された傾斜スクリーンを前記混合物の流れ方向に向かって下向きに傾斜させて設け、この傾斜スクリーンの上端側に前記混合物を投入して、前記下端側の排出端から前記重比重物を前記水槽底へ沈下させるようにすることができる。
このようにすれば、傾斜スクリーン上において、集団状態で沈下した混合物が上昇流を受けて掻き回されつつ浮上するため、中軽比重物が円滑に分離されるとともに、重比重物がそのスクリーン上をそのまま降下して水槽底に沈下する。すなわち、中軽比重物と重比重物の分離が円滑になるとともに、その集団状態で沈下した混合物に上昇流を当てればよいため、その上昇流の量(水量)を少なくできる(少ない上昇流で効率よく混合物を浮上させることができる)。
このとき、上昇流発生管の開口をこの傾斜スクリーンの下方で、その傾斜方向の所定の位置、例えば、排出端側に設ければ、水槽の一部の領域で上昇流を発生させるのみで、中軽比重物を水面下に浮遊させることができ、上昇流の水量を少なくすることができる。この場合、傾斜スクリーンの下方の他の位置にも上昇流発生管を開口させてもよい。
【0019】
前記傾斜スクリーンに振動を付与する手段を設けることにより、スクリーン上に沈降する中軽比重物を上昇流で確実に浮遊させて吸引管へ選択的に吸引し、選別精度をより高めることができる。また、スクリーンの目詰まりも防止することができる。
【0020】
前記傾斜スクリーンの上端側に投入される混合物の貯留部を設けることにより、この貯留部に至る間に自重差により、混合物は、重比重物を下側へ、中軽比重物を上側へ偏在させたのち、傾斜スクリーンの上端側に移動することとなるため、上側に偏在する中軽比重物を上昇流により円滑に浮遊させて吸引管に吸引されやすくすることができる。
このとき、貯留部が傾斜スクリーンに連続しておれば、その傾斜スクリーンの振動につれて貯留部も振動するため、その貯留部に至った混合物は、その振動により、前記重比重物を下側へ、中軽比重物を上側へ偏在させる作用が促進される。
【発明の効果】
【0021】
本発明は、以上のようにして、重比重物は吸引されること無く水槽の底部に沈下するようにしたので、重比重物の回収率が向上する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、図面に基づき、本発明の実施形態を説明する。図1乃至図3は、第1の実施形態を示す。この選別装置1は、建築廃材のコンクリートに含まれる骨材の回収設備に用いられ、骨材に混じる木片やプラスチック片を除去するものである。
【0023】
図1に示すように、前記コンクリートは、破砕機21で破砕されて、大型異物が手選別で除去されたのち篩22にかけられ、サイズが2mm程度以下の微小異物が除去されるとともに、40mmを超える大破砕物は破砕機21に戻されて再破砕される。40mm以下のサイズとされた破砕物は、磁選機23で鉄類を除去されたのち、磨砕機24で擦り合わされて、骨材に付着するセメントモルタル分が除去され、篩25で5種類のサイズに篩い分けられる。
この実施形態では、7mm未満、7〜13mm、13〜20mm、20〜28mm、28〜40mmのサイズに篩い分けられ、湿式選別装置1に投入されるようになっている。この湿式選別装置1に投入される処理物は、骨材に木片やプラスチック片が混入した混合物Dである。
【0024】
図2および図3に示すように、前記湿式選別装置1は、横長の平面視矩形状の水槽2内に横長の上面開口の平面視矩形状バスケット3が上下動自在に吊り下げられており、このバスケット3内は垂直な仕切板4でその幅方向(図3の左右方向)に5列に仕切られて、これらの各列に前記篩25で5種類のサイズに篩い分けられた混合物Dがシュート5から投入されるようになっている。
【0025】
なお、各仕切板4の仕切り位置は可変とされ、混合物Dの各サイズでの処理量に応じて、各列の幅を調整できるようになっている。
また、バスケット3の底には、混合物Dが投入される供給端3aから他端側の排出端3bへ下向きに傾斜する傾斜スクリーン6が設けられ、この傾斜スクリーン6には、バスケット3を介して振動発生手段7で振動が付与される。この振動発生手段7は、振動伝達板7aが円運動(図2矢印参照)してバスケット3との当接位置を変化させることにより、バスケット3を上下させて振動を付与する。
【0026】
前記仕切板4で仕切られたバスケット3の各列には、傾斜スクリーン6の傾斜途中で下方から上昇流を発生させる上向きに開口した上昇流発生管8と、上昇流で水中に浮遊する水中浮遊物を吸引する下向きに開口した吸引管9とが設けられている。上昇流発生管8と吸引管9は斜め方向で対向しており、両者の開口8a、9a間の距離は、上昇流が衰えない距離に設定されている。また、バスケット3の排出端3bで傾斜スクリーン6の下端側は開放されており、その外側の水面近くに、水面上の浮上物を掬い上げるコンベア10が設けられるとともに、排出端3b側の水槽2の底には、沈下物を排出する排出スクリュー11が設けられている。
【0027】
前記シュート5からバスケット3の各列に投入される混合物Dのうち、骨材等の重比重物Aは、速やかに傾斜スクリーン6上に沈降し、傾斜スクリーン6上を排出端3b側へ下降移動したのち、下端側の開放された排出端3bから水槽2の底へ沈下して、回転する排出スクリュー11で選別回収される。一部の重比重物Aは、傾斜スクリーン6上を下降移動中に上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊するが、吸引管9に向かう斜め上方への上昇流に乗れず、傾斜スクリーン6上へ沈降する。
また、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、吸引管9は下向きに開口してその開口9aから上方へ傾斜しているので、自重による沈降力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下する。
【0028】
なお、吸引管9の上方への傾斜角度は調節可能となっており、吸引管9に吸引されるか否かの比重の境界を調整することができる。吸引管9の上方への傾斜角度を緩傾斜にするほど、大きな比重のものまで吸引管9に吸引される。
また、上昇流の流速と吸引管9内の流速は、混合物のサイズが大きい程、大きく設定されている。
さらに、上昇流発生管8からの上昇流と吸引管9の吸引流は一つのポンプにより形成したり(図5参照)、それぞれ別のポンプにより形成したりする。その際、その吸引管9の吸引力(吸引流速)が重比重物Aが吸引管9内に入り込んでも自重沈下するように、吸引管9の流通断面積、ポンプの能力等を適宜に設定し、それに併せて、上昇流発生管8の流通断面積等も適宜に設定する。
【0029】
前記投入される混合物Dに含まれる木片やプラスチック片のうちの比重が1よりも大きい中軽比重物Bは、緩やかに沈降して傾斜スクリーン6上を下降移動し、その途中で上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出される。また、比重が1よりも小さい軽比重物Cは、水面上へ浮上して排出端3b側へ移動し、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。
なお、傾斜スクリーン6には振動が付与されているので、中軽比重物Bは、比重の大きい重比重物Aの下側となっても振動により自然に上側となり、上昇流によって確実に浮遊させることができる。また、傾斜スクリーン6が目詰まりすることもない。
【0030】
図4は、第2の実施形態を示す。この選別装置1も骨材を主とした前記混合物Dから骨材を選別するものであり、第1の実施形態のものと同様に、横長の水槽2内に吊り下げられた横長のバスケット3の底に傾斜スクリーン6が設けられ、傾斜スクリーン6の傾斜途中で下方から上昇流を発生させる上昇流発生管8と、上昇流で水面下に浮遊する浮遊物を吸引する吸引管9とが設けられている。
【0031】
このバスケット3は仕切板で仕切られておらず、シュート5から供給端3aに投入される混合物はサイズ別に分けられることなく、重比重物Aは傾斜スクリーン6上に沈降して下降移動したのち、下端側の排出端3bから水槽2の底へ沈下して、排出スクリュー11で選別回収される。また、中軽比重物Bは傾斜スクリーン6上に沈降して下降移動し、その途中で上昇流発生管8からの上昇流によって水面下に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出され、軽比重物Cは水面上へ浮上して排出端3b側へ移動し、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。
また、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下する。
この実施形態にも振動発生手段7を適宜に採用できる。
【0032】
図5は、第3の実施形態を示す。この選別装置1は、前記バスケット3がなく、横長の水槽2の供給端2a側から排出端2b側へ下向きに傾斜する底に沿って、複数の上昇流発生管8が底のほぼ全面を覆うように配列されている。水面下には第2の実施形態と同様の吸引管9が下向きに開口しており、ポンプ12で水槽2の水が吸引管9へ吸引され、吸引された水はフィルタ13を通して中軽比重物Bを除去されたのち循環使用され、再び、各上昇流発生管8から水槽2内に上昇流を発生させるように吐出されるようになっている。また、排出端2b側の水面近くには、水面上の浮上物を掬い上げるコンベア10が設けられ、排出端2b側の底には排出スクリュー11が設けられている。
【0033】
この実施形態では、シュート5から水槽2の供給端2aに投入される混合物Dのうち、沈降する重比重物Aが、排出端2b側へ下向きに傾斜する水槽2の底を下降移動して、排出スクリュー11で選別回収され、緩やかに沈降する中軽比重物Bは、各上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出される。また、水面上に浮上する軽比重物Cは、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。さらに、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び水槽2の底面上へ沈下し、その傾斜により排出スクリュー11の方に移動する。
【0034】
図6は、第4の実施形態を示し、この選別装置1は、水槽2の平面視における混合物Dの流れ方向に沿って吸引管9の複数を順々に設けるとともに、各吸引管91、92・・に対して上昇流発生管81、82・・をそれぞれ設け、その各吸引管91、92・・の吸引力及び上昇流発生管8の上昇力を前記流れ方向に向かって順々に強くしたものである。
この実施形態では、各吸引管91、92・・の流通断面積を同じにするとともに、各上昇流発生管81、82・・の流通断面積(開口面積)を同じにしたため、吸引力、上昇力の変化は、その吸引流速、上昇(吐出)流速を変化させることにより行なった。
【0035】
この実施形態は、上昇流発生管81からの上昇流によって水中に浮遊する中軽比重物Bが吸引管91で吸引排出されるとともに、骨材等の比較的比重の小さい重比重物A’が、第2の上昇流発生管82からの強い上昇流によって水中に浮遊して、強い吸引力の第2の吸引管92で吸引排出され、さらに、その重比重物A’より少し重い重比重物A''が、第3の上昇流発生管83からの強い上昇流によって水中に浮遊して、強い吸引力の第3の吸引管93で吸引排出される。このとき、重比重物A、A’、A''が流れに乗って吸引管91、92・・に吸引されても、その吸引管91、92・・の吸引力に応じてそのまま吸引されたり、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下したりして、さらに水槽2の下端側排出端2bに沈下する。
このように、3段階の吸引選別が行われて、重比重物Aが比重別に選別(A’、A'')されると共に、水槽2の下端側の排出端2bからは、鉄鋼、銅、鉛等の金属の比重が非常に大きい重比重物Aのみが排出スクリュー11の中へ沈下して選別される。
【0036】
この実施形態において、バスケット3、傾斜スクリーン6、振動発生手段7等を適宜に採用できる。また、混合物Dの選別数に応じて吸引管9及び上昇流発生管8の数を適宜に設定する。さらに、同図鎖線のように、傾斜スクリーン6を設ければ、図4に示すように、その上を混合物Dが移動するため、前記選別作用が確実になる。
【0037】
図7は、第5の実施形態を示す。この選別装置1は、水槽2が縦長の深いものとされ、中ほどの深さの水中に挿入されたシュート5から混合物Dが投入されるようになっている。シュート5の下方には水槽2のほぼ全断面を覆うように複数の上昇流発生管8が設けられ、シュート5の上方には下向きに開口した吸引管9が設けられており、第3の実施形態のものと同様に、ポンプ12で水槽2の水が吸引管9へ吸引され、吸引された水はフィルタ13を通して中軽比重物Bを除去されたのち循環使用され、再び、各上昇流発生管8から水槽2内に上昇流を発生させるように吐出されるようになっている。また、水面近くには水面上の浮上物を掬い上げるコンベア10が設けられ、底には排出スクリュー11が設けられている。
【0038】
この実施形態では、シュート5から水中に投入される混合物Dのうち、水槽2の底に沈降する重比重物Aが排出スクリュー11で選別回収され、中軽比重物Bは各上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、吸引管9に吸引されて外部に排出される。水面上に浮上する軽比重物Cは、コンベア10に掬い上げられて外部に排出される。また、重比重物Aが流れに乗って吸引管9に吸引されても、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方に沈下する。
【0039】
図8および図9は、第6の実施形態を示す。この選別装置1は、第1の実施形態のものと同様に、横長の水槽2内に吊り下げられた横長のバスケット3が仕切板4で5列に仕切られて、これらの各列に5種類のサイズに篩い分けられた混合物Dがシュート5から投入されるようになっている。
混合物Dが投入されるバスケット3の供給端3a側に、有底の貯留部14が設けられ、この貯留部14の底に、第1の実施形態のものと同様に排出端3b側へ下向きに傾斜する傾斜スクリーン6が接続されており(連続しており)、バスケット3に取り付けられた振動発生手段7によって、貯留部14の底と傾斜スクリーン6とに振動が付与される。
【0040】
前記貯留部14の底は傾斜スクリーン6側へわずかに下降傾斜しており、その下降傾斜端側に、水槽2とバスケット3の側壁および各列の仕切板4を水面部分で貫通する排出スクリュー15が設けられ、各列内で開けられたその開口15aから、各列の水面上に浮上する軽比重物Cが外部に排出されるようになっている。排出スクリュー15の後面側には、水面上に浮上する軽比重物Cを堰き止める堰16が設けられている。
なお、前記振動発生手段7は排出スクリュー15の上方でバスケット3の側壁に取り付けられており、排出スクリュー15が貫通する水槽2の側壁部分は、バスケット3の側壁と排出スクリュー15を介して伝わる振動を吸収するために、フレキシブルカバー17で周囲の側壁に接続されている。
【0041】
また、前記傾斜スクリーン6の傾斜途中には、バスケット3の各列毎に、下方から上昇流を発生させる上昇流発生管8と、上昇流で水中に浮遊する水中浮遊物を吸引する吸引管9とが、それぞれの開口8a、9aが傾斜スクリーン6の幅方向略全域に亘るように、上下に対向させて設けられている。各上昇流発生管8と各吸引管9は各列毎に分割して配置され、各列毎のそれぞれの開口8a、9aは矩形断面の長孔形状とされ、各吸引管9の開口9aとその入口部分の断面積は、各上昇流発生管8の開口8aの面積よりも大きく形成されている。
なお、排出端3b側の水槽2の底には、第1の実施形態のものと同様に、沈下物を排出する排出スクリュー11が設けられている。
【0042】
この実施形態は、シュート5から各列の貯留部14に投入されるサイズ分けされた各混合物Dが、貯留部14の底に付与される振動によって、重比重物Aが下側へ、中軽比重物Bが上側へ偏在する。
そして、その状態を保ったまま、堰16の下側を通過して傾斜スクリーン6の上端側へ移動し、傾斜スクリーン6上でも上側に偏在する中軽比重物Bが、各上昇流発生管8からの上昇流によって水中に浮遊し、各吸引管9に吸引されて外部に排出される。
傾斜スクリーン6上を下側に偏在しながら移動する重比重物Aは、上昇流で吸引管9の中に入っても再び傾斜スクリーン6上へ沈下し、傾斜スクリーン6の下端側の排出端3bから水槽2の底の排出スクリュー11の中へ沈下して、その排出口11bから選別回収される。上昇流の流速と吸引管9内の流速は、例えば、一番小さいサイズの列では秒速0.7m、一番大きいサイズの列では秒速1.8mに設定されている。
このように、混合物Dのサイズに応じて、吸引速度が設定されているので、各吸引管9により重比重物Aが吸引されても、所定の比重よりも上回り、再び下方のスクリーン6上に沈下する。
なお、サイズ分けされた各列の混合物中の軽比重物Cは水面上に浮上し、回転する排出スクリュー15の各開口15aに入って、その排出口15bからまとめて外部に排出される。
【0043】
図10は、第6の実施形態の第1変形例を示す。この第1変形例は、前記傾斜スクリーン6の傾斜途中に設けられた上昇流発生管8と吸引管9よりもバスケット3の排出端3b側に、上昇流発生管8よりも強い上昇流を発生する第2の上昇流発生管82と、吸引管91よりも強い吸引力の第2の吸引管92とが、傾斜スクリーン6の下側と上側とで開口8a、9a同士が対向するように設けられている。
この第1変形例では、上昇流発生管81からの上昇流によって水中に浮遊する中軽比重物Bが吸引管91で吸引排出されるとともに、骨材等の比較的比重の小さい重比重物A’が、第2の上昇流発生管82からの強い上昇流によって水中に浮遊して、強い吸引力の第2の吸引管92で吸引排出される。このとき、重比重物A、A’が流れに乗って吸引管91、92に吸引されると、前側の吸引管91では両重比重物A、A’ともに自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下し、後側の吸引管92では鉄、銅、鉛等の重比重物Aは自重による沈下力が吸引による浮力よりも上回り、再び下方の傾斜スクリーン6上へ沈下し、骨材等の比較的比重の小さい重比重物A’はそのまま吸引されて外部に導き出される。
したがって、2段階の吸引選別が行われて、重比重物Aが比重別に選別(AとA’)されると共に、傾斜スクリーン6の下端側の排出端3bからは、鉄、銅、鉛等の金属の比重が非常に大きい重比重物Aのみが排出スクリュー11の中へ沈下して選別される。
【0044】
図11は、第6の実施形態の第2変形例を示す。この第2変形例は、前記水槽2の排出端側の底に設けられた排出スクリュー11の手前側に第2の排出スクリュー11aが設けられ、水槽2の排出端側から前方へ向けた水平流を発生させるノズル18が設けられている。
したがって、傾斜スクリーン6の下端側の排出端3bから沈下する重比重物Aのうちの、骨材等の比較的比重が小さい重比重物A’は、ノズル18からの水平流の影響を受けて前方の第2の排出スクリュー11aに沈下し、鉄、銅、鉛等の金属の比重が非常に大きい重比重物Aのみが、そのまま排出スクリュー11の中へ沈下して選別される。
図10、図11の変形例において、上昇流発生管8と吸引管9の数は任意である。
【0045】
図12、図13には、第7、第8の実施形態を示し、この両実施形態は、図7に示した第5の実施形態の第1、第2変形例であり、図12の実施形態は、吸引管9を2本91、92設けたものであり、図13の実施形態は、さらに上昇流発生管8も2本81、82設けたものである。両吸引管91、92の吸引力は上流側の吸引管91を下流側の吸引管92より弱くし、両上昇流発生管81、82もその吐出力を上流側の上昇流発生管81を下流側の上昇流発生管82より弱くすることにより、図10の実施形態と同様にして、重比重物A、A’の選別を行うことができる。このとき、重比重物A、A’が流れに乗って吸引管91、92に吸引されても、その吸引管91、92の吸引力に応じてそのまま吸引されたり、自重による沈下力が吸引による浮力(吸引力)よりも上回り、再び下方へ沈下したりする。
前記各実施形態も含めて、吸引管9の入り口部分の形状を図14に示す態様等とすることができ、さらに、上昇流発生管8の入り口形状も同様とし得る。この実施形態においても、上昇流発生管8と吸引管9の数は任意である。
【0046】
上記各実施形態において、傾斜スクリーン6の目から重比重物Aを沈下させても良く、また、各実施形態にない部材をその部材のない実施形態に適宜に採用することができる。例えば、貯留部14を図2、図4、図6の各実施形態に適宜に採用することができる。
各実施形態は、建築廃材のコンクリート骨材の選別の場合であったが、上記の製紙用木材チップから砂利等を分離除去する場合や、クレー射撃場での散弾の選別等にもこの各実施形態を採用することができて、その選別精度が高い効果を得ることができる。それらの場合、上昇流発生管8及び吸引管9の数、傾斜スクリーン6の有無等は対象選別物に応じて適宜に設定する。例えば、散弾等の場合、対象選別物が一つのため、上昇流発生管8及び吸引管9の数は一つで十分である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】第1の実施形態の選別装置に投入される混合物が建築廃材から分別される工程を示す工程図
【図2】第1の実施形態の選別装置を示す縦断面図
【図3】図2のIII−III線に沿った断面図
【図4】第2の実施形態を示す縦断面図
【図5】第3の実施形態を示す縦断面図
【図6】第4の実施形態を示す縦断面図
【図7】第5の実施形態を示す縦断面図
【図8】第6の実施形態を示す縦断面図
【図9】図8の平面図
【図10】第6の実施形態の第1変形例を示す一部省略縦断面図
【図11】第6の実施形態の第2変形例を示す一部省略縦断面図
【図12】第7の実施形態を示す縦断面図
【図13】第8の実施形態を示す縦断面図
【図14】吸引管の一例の部分斜視図
【符号の説明】
【0048】
A、A’、A'' 重比重物
B 中軽比重物
C 軽比重物
D 混合物
1 湿式選別装置
2 水槽
2a 供給端
2b 排出端
3 バスケット
3a 供給端
3b 排出端
4 仕切板
5 シュート
6 傾斜スクリーン
7 振動発生手段
8、81、82・・ 上昇流発生管
8a 上昇流発生管の開口
9、91、92・・ 吸引管
9a 吸引管の開口
10 コンベア
11、11a 排出スクリュー
11b 排出口
12 ポンプ
13 フィルタ
14 貯留部
15 排出スクリュー
15a 開口
15b 排出口
16 堰
17 フレキシブルカバー
18 ノズル
21 破砕機
22 篩
23 磁選機
24 磨砕機
25 篩
【特許請求の範囲】
【請求項1】
選別される混合物(D)を水槽(2)内に投入し、その比重差によって水槽底に沈降する前記混合物(D)中の重比重物(A)を選別する選別装置(1)において、
前記水槽(2)内に、上昇流を発生させる上昇流発生管(8)と、その上昇流で水中に浮遊する浮遊物を下向き開口(9a)から上方へ吸引する吸引管(9)とを設け、その吸引管(9)の吸引力を前記重比重物(A)が吸引管(9)内に入り込んでも自重沈下するように設定したことを特徴とする選別装置。
【請求項2】
前記上昇流の流速より前記吸引管(9)の吸引流速を遅くして、前記重比重物(A)が吸引管(9)内に入り込んでも自重沈下するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の選別装置。
【請求項3】
前記上昇流発生管(8)の開口面積を、前記吸引管(9)の開口(9a)から前記上方へ吸引する吸引管(9)の入口部分の流通断面積よりも狭くして、前記上昇流の流速より前記吸引管(9)の吸引流速を遅くしたことを特徴とする請求項2に記載の選別装置。
【請求項4】
前記水槽(2)内を、垂直な仕切板(4)で複数列に仕切り、これらの仕切られた各列に前記吸引管(9)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の選別装置。
【請求項5】
前記水槽(2)内に投入される混合物(D)をサイズ分けし、これらのサイズ分けされた混合物(D)を前記仕切られた各列へ別々に投入するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の選別装置。
【請求項6】
前記混合物(D)の流れ方向に向かって前記吸引管(9)の複数を順々に設けて、その各吸引管(91、92・・)の吸引力を前記流れ方向に向かって順々に強くしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の選別装置。
【請求項7】
前記各吸引管(9)に対して上昇流発生管(8)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の選別装置。
【請求項8】
前記各上昇流発生管(8)の上昇流を前記混合物(D)の流れ方向に向かって順々に強くしたことを特徴とする請求項7に記載の選別装置。
【請求項9】
前記上昇流発生管(8)と吸引管(9)の開口(8a、9a)のそれぞれを前記混合物(D)の流れ方向に対して横方向に長い長孔形状としたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の選別装置。
【請求項10】
前記水槽(2)内の前記上昇流発生管(8)と吸引管(9)の間に、下端側が排出端として開放された傾斜スクリーン(6)を前記混合物(D)の流れ方向に向かって下向きに傾斜させて設け、この傾斜スクリーン(6)の上端側に前記混合物(D)を投入して、前記下端側の排出端から前記重比重物(A)を前記水槽底へ沈下させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の選別装置。
【請求項11】
前記傾斜スクリーン(6)に振動を付与する手段を設けたことを特徴とする請求項10に記載の選別装置。
【請求項12】
前記傾斜スクリーン(6)の上端側に、前記投入される混合物(D)の貯留部(14)を連続して設けたことを特徴とする請求項11に記載の選別装置。
【請求項1】
選別される混合物(D)を水槽(2)内に投入し、その比重差によって水槽底に沈降する前記混合物(D)中の重比重物(A)を選別する選別装置(1)において、
前記水槽(2)内に、上昇流を発生させる上昇流発生管(8)と、その上昇流で水中に浮遊する浮遊物を下向き開口(9a)から上方へ吸引する吸引管(9)とを設け、その吸引管(9)の吸引力を前記重比重物(A)が吸引管(9)内に入り込んでも自重沈下するように設定したことを特徴とする選別装置。
【請求項2】
前記上昇流の流速より前記吸引管(9)の吸引流速を遅くして、前記重比重物(A)が吸引管(9)内に入り込んでも自重沈下するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の選別装置。
【請求項3】
前記上昇流発生管(8)の開口面積を、前記吸引管(9)の開口(9a)から前記上方へ吸引する吸引管(9)の入口部分の流通断面積よりも狭くして、前記上昇流の流速より前記吸引管(9)の吸引流速を遅くしたことを特徴とする請求項2に記載の選別装置。
【請求項4】
前記水槽(2)内を、垂直な仕切板(4)で複数列に仕切り、これらの仕切られた各列に前記吸引管(9)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の選別装置。
【請求項5】
前記水槽(2)内に投入される混合物(D)をサイズ分けし、これらのサイズ分けされた混合物(D)を前記仕切られた各列へ別々に投入するようにしたことを特徴とする請求項4に記載の選別装置。
【請求項6】
前記混合物(D)の流れ方向に向かって前記吸引管(9)の複数を順々に設けて、その各吸引管(91、92・・)の吸引力を前記流れ方向に向かって順々に強くしたことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載の選別装置。
【請求項7】
前記各吸引管(9)に対して上昇流発生管(8)をそれぞれ設けたことを特徴とする請求項4乃至6のいずれかに記載の選別装置。
【請求項8】
前記各上昇流発生管(8)の上昇流を前記混合物(D)の流れ方向に向かって順々に強くしたことを特徴とする請求項7に記載の選別装置。
【請求項9】
前記上昇流発生管(8)と吸引管(9)の開口(8a、9a)のそれぞれを前記混合物(D)の流れ方向に対して横方向に長い長孔形状としたことを特徴とする請求項1乃至8のいずれかに記載の選別装置。
【請求項10】
前記水槽(2)内の前記上昇流発生管(8)と吸引管(9)の間に、下端側が排出端として開放された傾斜スクリーン(6)を前記混合物(D)の流れ方向に向かって下向きに傾斜させて設け、この傾斜スクリーン(6)の上端側に前記混合物(D)を投入して、前記下端側の排出端から前記重比重物(A)を前記水槽底へ沈下させるようにしたことを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の選別装置。
【請求項11】
前記傾斜スクリーン(6)に振動を付与する手段を設けたことを特徴とする請求項10に記載の選別装置。
【請求項12】
前記傾斜スクリーン(6)の上端側に、前記投入される混合物(D)の貯留部(14)を連続して設けたことを特徴とする請求項11に記載の選別装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−167835(P2007−167835A)
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280340(P2006−280340)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)
【Fターム(参考)】
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