説明

選別装置

【課題】異物と穀粒の混合物から異物を選別する。
【解決手段】選別装置(100)は、第1のローラー(110)と、軸線が第1のローラー(110)より高い位置にある第2のローラー(120)と、からなる。第1のローラー(110)の外周面と第2のローラー(120)の外周面との間の間隙は異物及び穀粒の何れの外径よりも小さく設定されており、第1のローラー(110)及び第2のローラー(120)は相互に反対方向(上方から見たときに相互に離れ合う方向)に回転する。第1のローラー(110)の表面の摩擦係数は、異物を摩擦力により第1のローラー(110)の表面に付着させたまま、第1のローラー(110)とともに回転させることが可能であるように設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、摩擦力を利用した摩擦選別装置に関し、特に、粒状物(例えば、穀粒)中に混合している種々の微細な異物を除去する摩擦選別装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品や医薬品その他種々の物品の原料となる穀類や植物種子(例えば、ゴマ、栗、玄米、粒胡椒、マスタードなど)には、それらの収穫時においては、一般に、種々の異物が混合する。例えば、小石、土粒、金属片、ガラス片、プラスチック片、茎葉片、毛髪、昆虫、小動物や昆虫の糞などである。
【0003】
従来、これらの異物は、植物種子と異物との物性の相違に基づく選別により除去されてきた。例えば、大きさの相違に基づく粒径選別、比重の相違に基づく比重選別、磁性の有無に基づく磁力選別などである。
【0004】
しかしながら、穀粒や植物種子に混合している異物の大きさが穀粒や植物種子の大きさと大差がなく、さらに、異物の比重が穀粒や植物種子の比重とそれほど変わらず、加えて、異物が磁性を有しないものであるような場合には、上記の粒径選別、比重選別及び磁力選別によっても、異物を除去することは不可能であった。
【0005】
このような問題点を解決するため、本発明者は、そのような異物をも選別可能な選別装置を提案した(特開2002−301437号公報)。
【0006】
図14は同公報に記載された選別装置10を上方から見た場合の平面図、図15は、図14のA方向から見た場合の選別装置10の側面図、図16は、図14のB方向から見た場合の選別装置10の正面図である。
【0007】
選別装置10は、相互に混在している異物と穀粒との混合物から穀粒と異物とを選別する。
【0008】
選別装置10は、第1のローラー12と、軸線が第1のローラー12の軸線と平行であり、かつ、同一高さになるように配置された第2のローラー14と、第1のローラー12及び第2のローラー14の下方に配置された第1の収納容器16と、第1の収納容器16に隣接して、第1のローラー12及び第2のローラー14の下方に配置された第2の収納容器18と、第1のローラー12及び第2のローラー14の上方に配置されているホッパー20と、を備えている。
【0009】
第1のローラー12と第2のローラー14とは同一直径を有している。
【0010】
第1のローラー12及び第2のローラー14にはそれぞれ一条の螺旋状の溝12a、14aが形成されている。図14に示すように、第1のローラー12に形成された螺旋状の溝12aは第2のローラー14の外周面に噛み合い、第2のローラー14に形成された螺旋状の溝14aは第1のローラー12の外周面に噛み合っている。
【0011】
また、第1のローラー12の外周面と第2のローラー14に形成された螺旋状の溝溝14aとの間隙22a及び第2のローラー14の外周面と第1のローラー12に形成された螺旋状の溝12aとの間隙22bは、上述の穀粒及び異物の何れの直径よりも小さく設定されており、穀粒及び異物が間隙22a、22bから下方に落下することはない。
【0012】
ホッパー20の落下口20aは間隙22a、22bの上方に位置するように配置されている。
【0013】
第1のローラー12及び第2のローラー14の両端はそれぞれベアリング24で支持されており、各ベアリング24は側壁26に固定されている。
【0014】
第1のローラー12及び第2のローラー14はモーター(図示せず)からの駆動力を受けて相互に反対方向に回転するようになっている。具体的には、第1のローラー12及び第2のローラー14は、それらを上方から見たときに、相互に離れ合う方向に回転する。すなわち、図16に示すように、図14のB方向から見た場合、第1のローラー12は反時計方向Xに、第2のローラー14は時計方向Yに回転する。
【0015】
第1のローラー12に形成された螺旋状の溝12aの表面の摩擦係数は、異物を摩擦力により溝12aの表面に付着させたまま、第1のローラー12とともに回転させるように設定されている。
【0016】
同様に、第2のローラー14に形成された螺旋状の溝14aの表面の摩擦係数は、異物を摩擦力により溝14aの表面に付着させたまま、第2のローラー14とともに回転させるように設定されている。
【0017】
また、溝12a及び溝14aの表面の摩擦係数は、穀粒が第1のローラー12及び第2のローラー14の何れにも付着することなく、溝12aまたは14aに沿って、第1及び第2のローラー12、14の回転に伴って、第1及び第2のローラー12、14の軸線方向Zにフィードされるように設定されている。
【0018】
選別装置10は以下のように作動する。
【0019】
異物と穀粒とが混合している混合物をホッパー20に投入すると、混合物は落下口20aから下方に落下し、間隙22a及び22bの何れかに乗った状態になる。
【0020】
間隙22a上に落下した混合物のうち、異物は、第2のローラー14に形成された螺旋状の溝14aの表面との間の摩擦力により、溝14aの表面に付着したまま、第2のローラー14とともに時計方向Yに回転し、第2のローラー14の外側から第1の収納容器16の内部に落下する。
【0021】
同様に、間隙22b上に落下した混合物のうち、異物は、第1のローラー12に形成された螺旋状の溝12aの表面との間の摩擦力により、溝12aの表面に付着したまま、第1のローラー12とともに反時計方向Xに回転し、第1のローラー12の外側から第1の収納容器16の内部に落下する。
【0022】
一方、間隙22a及び間隙22b上に落下した混合物のうち、穀粒は、第1のローラー12及び第2のローラー14に付着して第1のローラー12及び第2のローラー14とともに回転することはなく、第1及び第2のローラー12、14の回転に伴って、第1のローラー12または第2のローラー14に形成された螺旋状の溝12aまたは14aに沿って、滑りながら、あるいは、転がりながら、第1及び第2のローラー12、14の軸線方向Z(図14参照)に移動する。
【0023】
穀粒は、螺旋状の溝12aまたは14aが途切れた時点において、下方に落下し、第2の収納容器18の内部に収納される。
【0024】
以上のように、選別装置10においては、異物と穀粒とが混合している混合物のうち、異物は、摩擦力により、第1のローラー12または第2のローラー14に付着した状態のまま、第1のローラー12または第2のローラー14とともに回転し、第1のローラー12または第2のローラー14の外側に落下し、第1の収納容器16に収納される。
【0025】
一方、穀粒は、第1のローラー12または第2のローラー14に形成された螺旋状の溝12aまたは14aに沿って、第1のローラー12または第2のローラー14の軸線方向Zにフィードされ、最終的には、第2の収納容器18に収納される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0026】
【特許文献1】特開2002−301437号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
上述のように、選別装置10を用いることにより、穀粒と異物との混合物を穀粒と異物とに選別することが可能である。
【0028】
しかしながら、選別装置10には次のような問題点があった。
【0029】
第一の問題点は、異物の中には、そのサイズまたは形状によっては、選別できないものがあるという点である。
【0030】
異物は、理論的には、第1のローラー12または第2のローラー14に付着したまま回転し、第1のローラー12または第2のローラー14の外側に落下し、第1の収納容器16に収納されるが、異物の中には、そのサイズまたは形状によって、間隙22aまたは22bの上に乗ったときに第1のローラー12及び第2のローラー14との間の摩擦力が釣り合ってしまうため、間隙22aまたは22bの上で転がり続けるものがあった。このような異物は第1のローラー12または第2のローラー14に付着することなく、間隙22aまたは22bの上に乗ったまま回転を続け、第1の収納容器16に落下せず、選別が行われない。
【0031】
第二の問題点は、選別装置10では微細な異物に対応することが困難であるという点である。
【0032】
異物が微細なものである場合には、第1のローラー12及び第2のローラー14の直径が大きいと効率的に選別できないことがある。このため、異物が小さいものである場合には、異物の大きさに応じて、第1のローラー12及び第2のローラー14の直径を小さくする必要がある。
【0033】
しかしながら、ローラーやベアリングの製造加工技術には限度があるため、微細な異物に対応する小径のローラーあるいはそのようなローラーを支持するベアリング24を作成することは極めて困難であるか、あるいは、ほぼ不可能である。このため、微細な異物を選別することは理論的には可能であっても、現在の製造加工技術では、そのような微細な異物を選別可能な選別装置を作成することは極めて困難であった。
【0034】
本発明は、以上のような従来の選別装置10における問題点に鑑みてなされたものであり、穀粒と異物との混合物中の全ての異物を選別することができ、さらに、微細な異物であっても選別することを可能にする選別装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0035】
この目的を達成するため、本発明は、第1の物乃至第N(Nは2以上の正の整数)の物が混合している混合物から前記第1の物のみを選別する選別装置であって、第1のローラーと、第2のローラーと、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを回転させる駆動手段と、フィード手段と、を備え、前記第1のローラーは前記第2のローラーと軸線が相互に平行になるように配置されており、前記第1のローラーの外周面と前記第2のローラーの外周面との間の間隙は前記第1の物乃至前記第Nの物の何れの外径よりも小さく設定されており、前記駆動手段は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを相互に反対方向に、かつ、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを上方から見たときに相互に離れ合う方向に回転させ、前記フィード手段は前記第1の物以外の物を前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線方向にフィードするものである選別装置において、前記第2のローラーは前記第1のローラーより軸線が高い位置にあるように配置され、前記第1のローラーの表面の摩擦係数は、前記第1の物を摩擦力により前記第1のローラーの表面に付着させたまま、前記第1のローラーとともに回転させることが可能であるように設定されていることを特徴とする選別装置を提供する。
【0036】
本発明に係る選別装置においては、前記第1のローラーの表面と前記第1の物との間の摩擦係数をM、前記第1のローラーの中心と前記第1の物の中心とを結ぶ線が水平線に対してなす角度をθとすると、
/(1+M)>sinθ
に設定されていることが好ましい。
【0037】
本発明に係る選別装置においては、前記第1のローラーの中心と前記第2のローラーの中心とを結ぶ線が水平方向となす角度は5度以上85度以下、特に、15度以上60度以下であることが好ましい。
【0038】
本発明に係る選別装置においては、前記フィード手段は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの表面に形成された少なくとも一つの螺旋状の凸状体からなることが好ましい。
【0039】
本発明に係る選別装置においては、前記第1のローラーに形成された前記凸状体及び前記第2のローラーに形成された前記凸状体の少なくとも何れか一方は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線に垂直な垂直壁と、前記垂直壁の頂点から前記第1の物以外の物がフィードされる方向に向かって下方に傾斜する傾斜壁と、を有するものであることが好ましい。
【0040】
本発明に係る選別装置においては、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの回転数を制御する回転数制御手段を備えており、前記回転数制御手段は、前記凸状体の捻れ角に応じて、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの回転数を制御するものであることが好ましい。
【0041】
本発明に係る選別装置においては、前記回転数制御手段は、前記捻れ角が小さいほど、前記回転数が大きくなるように制御することが好ましい。
【0042】
本発明に係る選別装置においては、前記フィード手段は前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線の傾斜角度を調節する角度調節機構からなり、前記角度調節機構は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線が、前記第1の物以外の物が進行する方向に向かって鉛直面内において下方に傾斜するように、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを傾斜させるものであることが好ましい。
【0043】
本発明に係る選別装置においては、前記第1のローラー及び前記第2のローラーは相互に異なる直径を有するものであることが好ましい。
【0044】
本発明に係る選別装置においては、前記第2のローラーは前記第1のローラーの中心を中心として前記第1のローラーの回りに回転可能に形成されており、本発明に係る選別装置は前記第2のローラーの回転方向及び回転量を制御するローラー回転制御装置をさらに備えていることが好ましい。
【0045】
本発明に係る選別装置においては、前記第1のローラー及び前記第2のローラーのうち少なくとも前記第2のローラーはそれらの軸線方向において複数の領域からなり、前記領域の各々において表面の摩擦係数が異なるものであることが好ましい。
【発明の効果】
【0046】
本発明に係る選別装置によれば、次の効果を得ることができる。
【0047】
第一に、異物が二つのローラーの中間において転がり続けることを防止することが可能である。
【0048】
従来の選別装置10においては、異物が間隙22aまたは22bの上に乗ったときに第1のローラー12及び第2のローラー14との間の摩擦力が釣り合ってしまうため、間隙22aまたは22bの上で転がり続け、このために、選別が行われないものがあった。
【0049】
これに対して、本発明に係る選別装置によれば、第2のローラーは第1のローラーよりも上方に配置されているため、異物と第1のローラーの表面との間の摩擦力は異物と第2のローラーの表面との間の摩擦力よりも常に大きい。従って、異物と二つのローラーとの間の摩擦力が釣り合うことはなく、ひいては、異物が二つのローラーの中間において転がり続けることもない。異物は常に第1のローラーに付着して第1のローラーとともに回転し、下方に落下する。すなわち、確実に異物を選別することができる。
【0050】
第二に、微細な異物にも対応することが可能である。
【0051】
従来の選別装置10においては、異物が小さいものである場合には、異物の大きさに応じて、第1のローラー12及び第2のローラー14の直径を小さくする必要があったが、加工技術上の問題により、ローラーの小径化には限度があった。
【0052】
これに対して、本発明に係る選別装置によれば、ローラー(特に、第1のローラー)の直径にかかわりなく、微細な異物をも選別することが可能である。すなわち、異物の大きさに応じてローラーを小径化する必要はなく、任意の直径のローラーを使用することが可能である。
【0053】
第三に、第1のローラーの表面の摩擦係数のみを設定すれば足りる。
【0054】
従来の選別装置10においては、第1のローラー12及び第2のローラー14の双方の表面の摩擦係数を所定値に設定することが必要であった。
【0055】
これに対して、本発明に係る選別装置においては、第1のローラーの表面の摩擦係数のみを所定値に設定すればよく、第2のローラーの表面の摩擦係数を所定値に設定することは不要である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の第一の実施形態に係る選別装置を上方から見た場合の平面図である。
【図2】図1のA方向から見た場合の本発明の第一の実施形態に係る選別装置の側面図である。
【図3】図1のB方向から見た場合の本発明の第一の実施形態に係る選別装置の正面図である。
【図4】本発明の第一の実施形態に係る選別装置の作動原理を説明するための概略図である。
【図5】本発明の第一の実施形態に係る選別装置の作動原理を説明するための概略図である。
【図6】本発明の第二の実施形態に係る選別装置の正面図(図3と同様の図)である。
【図7】本発明の第二の実施形態に係る選別装置の正面図(図3と同様の図)である。
【図8】本発明の第三の実施形態に係る選別装置の正面図(図3と同様の図)である。
【図9】本発明の第四の実施形態に係る選別装置の側面図である。
【図10】本発明の第五の実施形態に係る選別装置の概略図である。
【図11】螺旋状の凸状体の種々の断面形状を示す断面図である。
【図12】本発明の第六の実施形態に係る選別装置において用いられる螺旋状の凸状体の断面図である。
【図13】本発明の第七の実施形態に係る選別装置において使用する第2のローラーの平面図である。
【図14】従来の選別装置を上方から見た場合の平面図である。
【図15】図14のA方向から見た場合の選別装置の側面図である。
【図16】図14のB方向から見た場合の選別装置の正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0057】
(第一の実施形態)
図1は本発明の第一の実施形態に係る選別装置100を上方から見た場合の平面図、図2は図1のA方向から見た場合の選別装置100の側面図、図3は図1のB方向から見た場合の選別装置100の正面図である。
【0058】
本実施形態に係る選別装置100は、穀粒と穀粒中に混在している異物との混合物から穀粒と異物とを選別する、換言すれば、異物を除去するものである。
【0059】
本実施形態に係る選別装置100は、第1のローラー110と、第2のローラー120と、第1のローラー110及び第2のローラー120を回転させる駆動手段としてのモーター130と、から構成されている。
【0060】
第1のローラー110及び第2のローラー120は、例えば、金属、プラスチック、ゴムなどの材質からつくることができる。
【0061】
第1のローラー110及び第2のローラー120の下方には第1の収納容器141が配置されており、穀粒の進行方向すなわち穀粒がフィードされる方向(図1のZ方向)の下流側には、第1のローラー110及び第2のローラー120の下方において、第1の収納容器141に隣接して第2の収納容器142が配置されている。
【0062】
さらに、第1のローラー110及び第2のローラー120の上方には、ホッパー143が配置されている(図2及び図3参照)
第1のローラー110及び第2のローラー120はそれらの軸線が相互に平行になるように配置されているとともに、第2のローラー120は第1のローラー110より軸線が高い位置にあるように配置されている。
【0063】
第1のローラー110及び第2のローラー120の表面にはそれぞれ一個の螺旋状の凸状体111、121が形成されている。
【0064】
第1のローラー110と第2のローラー120とは同一直径を有している。
【0065】
さらに、第1のローラー110に形成された螺旋状の凸状体111の高さ(第1のローラー110の直径方向における第1のローラー110の表面からの長さ)と第2のローラー120に形成された螺旋状の凸状体121の高さとは相互に等しく設定されている。
【0066】
このため、図1に示すように、第1のローラー110に形成された螺旋状の凸状体111と第2のローラー120に形成された螺旋状の凸状体121とは相互に噛み合っている状態にある。すなわち、図1に示すように、第1のローラー110に形成された螺旋状の凸状体111は第2のローラー120の外周面に噛み合い、第2のローラー120に形成された螺旋状の凸状体121は第1のローラー110の外周面に噛み合っている。
【0067】
後述するように、これら一組の螺旋状の凸状体111、121が穀粒をZ方向にフィードするフィード手段を構成している。
【0068】
第1のローラー110に形成された螺旋状の凸状体111と第2のローラー120の外周面との間隙122a及び第2のローラー120に形成された螺旋状の凸状体121と第1のローラー110の外周面との間隙122bは穀粒及び異物の何れの直径よりも小さく設定されている。すなわち、穀粒及び異物が間隙122a、122bから下方に落下することはない。
【0069】
ホッパー143の落下口143aは間隙122a、122bの上方に位置するように配置されている。
【0070】
第1のローラー110及び第2のローラー120の両端はそれぞれベアリング144で支持されており、各ベアリング144は、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸線に直交し、かつ、相互に平行な一対の側壁145の各々に固定されている。
【0071】
モーター130は、第1のローラー110及び第2のローラー120を相互に反対方向に回転させる。具体的には、第1のローラー110及び第2のローラー120は、それらを上方から見たときに、相互に離れ合う方向に回転する。すなわち、図3に示すように、図1のB方向から見た場合、モーター130は、第1のローラー110を反時計方向Xに、第2のローラー120を時計方向Yに回転させる。
【0072】
第1のローラー110の表面の摩擦係数は、異物を摩擦力により第1のローラー110の表面に付着させたまま、第1のローラー110とともに回転させることが可能であるように設定されている。
【0073】
また、第1のローラー110の表面の摩擦係数は、穀粒が第1のローラー110の表面に付着することなく、一対の螺旋状の凸状体111、121の作用によって、第1のローラー110及び第2のローラー120の回転に伴って、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸線方向Zにフィードされるように設定されている。
【0074】
以下、第1のローラー110の表面の摩擦係数の設定方法について説明する。
【0075】
図4は、第1のローラー110の表面と第2のローラー120に形成されている凸状体121との間に形成されている間隙122b上に異物150が載っている状態を示す概略図である。
【0076】
第1のローラー110の中心と第2のローラー120の中心とを結ぶ線が水平方向となす角度をθ、第1のローラー110の中心と異物150の中心とを結ぶ線が水平方向となす角度をθ(θ>θ)、第2のローラー120の中心と異物150の中心とを結ぶ線が水平方向となす角度をθとする。
【0077】
第1のローラー110の半径及び第2のローラー120の半径をR、異物150の半径をRaとする。異物150の半径Raとしては、例えば、異物150の平均半径を選択する。
【0078】
図4に示すように、異物150には次の5つの力が作用している。
(1)異物150それ自体の重力W
(2)第1のローラー110から異物150に作用する垂直抗力N
(3)第1のローラー110の表面と異物150との間に作用する摩擦力F
(4)第2のローラー120から異物150に作用する垂直抗力N
(5)第2のローラー120の表面と異物150との間に作用する摩擦力F
【0079】
図5は、異物150が第1のローラー110の表面に付着したまま第1のローラー110とともに回転を開始し、第2のローラー120の表面から離れた瞬間の状態を示す。
【0080】
この状態においては、異物150が第2のローラー120から離れてしまったため、垂直抗力N及び摩擦力Fはもはや異物150には作用しない。従って、図5に示すように、異物150に作用する力は次の3つとなる。
(1)異物150それ自体の重力W
(2)第1のローラー110から異物150に作用する垂直抗力N
(3)第1のローラー110の表面と異物150との間に作用する摩擦力F
【0081】
摩擦力Fが作用する方向における垂直抗力Nの成分はゼロであるので、摩擦力Fが作用する方向において異物150に作用している力は、反時計方向X向きの摩擦力Fと時計方向Y向きのWsinθの2つである。
【0082】
従って、異物150が第1のローラー110に付着して第1のローラー110とともに反時計方向Xに回転するための条件は次のようになる。
【0083】
>Wsinθ (1)
【0084】
ここで、第1のローラー110と異物150との間の摩擦係数をM、第1のローラー110と穀粒(図4及び図5には図示せず)との間の摩擦係数をLとすると、摩擦力Fは次のように表される。
【0085】
=M×N (2)
【0086】
また、図5に示した状態の鉛直方向における力のつりあいから次の式が成り立つ。
【0087】
(R+N)sinθ=W (3)
【0088】
式(2)及び(3)を(1)の条件式に代入すると、次式を得る。
【0089】
/(1+M)>sinθ (4)
【0090】
この(4)式が、異物150が第1のローラー110に付着し、第1のローラー110とともに回転する条件を示す。
【0091】
なお、角度θ、θ及びθの相互間の関係は次のようになる。
【0092】
第1のローラー110の中心、第2のローラー120の中心及び異物150の中心を結ぶことにより画定される三角形は二等辺三角形であるので、
θ−θ=θ+θ
となる。すなわち、
(θ−θ)/2=θ
【0093】
なお、異物150の各々の大きさにそれほど大きな差異はないので、角度θ及びθは、第1のローラー110及び第2のローラー120の直径及び角度θが決まれば、ほぼ一義的に決まる。すなわち、定数として扱うことが可能である。
【0094】
一方、穀粒は、第1のローラー110に付着する必要はないので、上式(4)を導き出した過程と同様に考えて、以下の条件を満たせばよい。
【0095】
/(1+L)<sinθ (5)
【0096】
以上のように、式(4)及び(5)が成り立つように、角度θに対して摩擦係数M及びLを設定することにより、異物150のみが第1のローラー110に付着した状態で第1のローラー110とともに回転し、第1のローラー110の外側に落下する。
【0097】
一方、穀粒は第1のローラー110及び第2のローラー120の何れにも付着することなく、第1及び第2のローラー110、120の回転に伴って、フィード手段としての一対の凸状体111、121によって、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸線方向Zにフィードされる。
【0098】
上述のような構造を有する本実施形態に係る選別装置100は以下のように動作する。
【0099】
先ず、異物150と穀粒とが混合している混合物をホッパー143に投入する。ホッパー143に投入された混合物は落下口143aから下方に落下する。
【0100】
落下口143aは、第1のローラー110と第2のローラー120との間に形成されている間隙122a及び122bに向けられているため、落下口143aから落下した混合物は間隙122a及び122bに乗った状態になる。
【0101】
第1のローラー110と異物150との間の摩擦係数M、第1のローラー110と穀粒との間の摩擦係数Lは上述の式(4)及び(5)が成り立つように設定されている。
【0102】
このため、間隙122b上に落下した混合物のうち、異物150は、第1のローラー110の表面との間の摩擦力により、第1のローラー110の表面に付着したまま、第1のローラー110とともに反時計方向Xに回転し、第1のローラー110の外側から第1の収納容器141の内部に落下する。
【0103】
間隙122a上に落下した混合物のうち、異物150は、フィード手段としての一対の凸状体111、121により、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸方向(Z方向)にフィードされ、間隙122aに隣接する間隙122bに到達する。以後、間隙122b上に落下した異物150と同様に第1のローラー110の外側から第1の収納容器141の内部に落下する。
【0104】
一方、間隙122a及び間隙122b上に落下した混合物のうち、穀粒は、第1のローラー110及び第2のローラー120に付着して第1のローラー110及び第2のローラー120とともに回転することはなく、第1及び第2のローラー110、120の回転に伴って、フィード手段としての一対の凸状体111、121により、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸方向(Z方向)にフィードされる。
【0105】
穀粒は、一対の凸状体111、121が途切れた時点において、下方に落下し、第2の収納容器142の内部に収納される。
【0106】
以上のように、本実施形態に係る選別装置100においては、異物150と穀粒とが混合している混合物のうち、異物150は、摩擦力により、第1のローラー110に付着した状態のまま、第1のローラー110とともに回転し、第1のローラー110の外側に落下し、第1の収納容器141に収納される。
【0107】
一方、穀粒は、第1のローラー110及び第2のローラー120に形成された一対の凸状体111、121に沿って、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸線方向Zにフィードされ、最終的には、第2の収納容器142に収納される。
【0108】
このように、本実施形態に係る選別装置100によれば、以下の効果を奏する。
【0109】
第一に、異物が二つのローラーの中間において転がり続けることを防止することが可能である。
【0110】
従来の選別装置10においては、異物が間隙22aまたは22bの上に乗ったときに第1のローラー12及び第2のローラー14との間の摩擦力が釣り合ってしまうため、間隙22aまたは22bの上で転がり続けるものがあった。このような異物は第1のローラー12または第2のローラー14に付着することがないため、第1の収納容器16に落下せず、選別が行われない。
【0111】
これに対して、本実施形態に係る選別装置100によれば、第2のローラー120は第1のローラー110よりも上方に配置されているため、異物150と第1のローラー110の表面との間の摩擦力は異物150と第2のローラー120の表面との間の摩擦力よりも常に大きい。従って、異物と二つのローラーとの間の摩擦力が釣り合うことはなく、ひいては、異物が二つのローラーの中間において転がり続けることもない。異物は常に第1のローラー110に付着して第1のローラー110とともに回転し、第一の収容容器141内に落下する。
【0112】
第二に、微細な異物にも対応することが可能である。
【0113】
従来の選別装置10においては、異物が小さいものである場合には、異物の大きさに応じて、第1のローラー12及び第2のローラー14の直径を小さくする必要があったが、加工技術上の問題により、ローラーの小径化には限度があった。
【0114】
これに対して、本実施形態に係る選別装置100によれば、ローラー(特に、第1のローラー110)の直径にかかわりなく、微細な異物をも選別することが可能である。すなわち、異物の大きさに応じてローラーを小径化する必要はなく、任意の直径のローラーを使用することが可能である。
【0115】
第三に、第1のローラー110の表面の摩擦係数のみを設定すれば足りる。
【0116】
従来の選別装置10においては、第1のローラー12及び第2のローラー14の双方の表面の摩擦係数を所定値に設定することが必要であった。
【0117】
これに対して、本実施形態に係る選別装置100においては、第1のローラー110の表面の摩擦係数のみを所定値に設定すればよく、第2のローラー120の表面の摩擦係数を所定値に設定することは不要である。
【0118】
本実施形態に係る選別装置100は上記の構造に限定されるものではなく、種々の改変が可能である。
【0119】
本実施形態に係る選別装置100においては、第1のローラー110及び第2のローラー120には1個の螺旋状の凸状体111、121が形成されているが、凸状体の数は1には限定されない。2または3個以上の螺旋状の凸状体を第1のローラー110及び第2のローラー120の表面に形成することが可能である。
【0120】
1個の螺旋状の凸状体111、121は第1のローラー110及び第2のローラー120が1回転する毎に1個の異物150を1リード(第1のローラー110及び第2のローラー120の軸方向における隣接する凸状体111、121間の距離)の距離を移動させる。例えば、3個の凸状体111、121を設けた場合には、第1のローラー110及び第2のローラー120が1回転する毎に3個の異物150を1リードの距離を移動させることが可能になる。
【0121】
第1のローラー110と第2のローラー120とを結ぶ線が水平方向となす角度θとしては任意の角度を選定することができるが、好ましい範囲は5度以上かつ85度以下、特に好ましい範囲は15度以上かつ60度以下である。
【0122】
本実施形態に係る選別装置100においては、異物150と穀粒との混合物から異物150を第1の収容容器141に、穀粒を第2の収容容器142に収容しているが、第1の物乃至第N(Nは2以上の正の整数)の物が混合している混合物から第1の物(例えば、異物150)を第1の収容容器141に、第2乃至第Nの物を第2の収容容器142に収容することも可能である。数種類の異物が穀粒とともに混合している場合には、第1のローラー110の表面との間の摩擦係数が最も大きいものを対象として第1のローラー110の表面の摩擦係数を式(4)に従って設定することにより、その異物は第1の収容容器141内に落下し、他の異物は穀粒とともに第2の収容容器142内に落下するようにすることができる。
【0123】
本実施形態に係る選別装置100においては、各摩擦係数M1及びL1が上式(4)及び(5)を満足するものである限りは、第1のローラー110及び第2のローラー120の材質は任意である。
【0124】
例えば、第1のローラー110及び第2のローラー120としては、熱処理を施した鉄製のローラーの表面にメッキを施したもの、あるいは、熱処理を施した鉄製のローラーの表面にゴムまたは樹脂をコーティングしたものを用いることができる。
【0125】
また、本実施形態に係る選別装置100においては、異物150を第1の収納容器141に、穀粒を第2の収納容器142に収納するようにしたが、これとは逆に、穀粒を第1の収納容器141に、異物150を第2の収納容器142に収納するようにすることも可能である。
【0126】
この場合には、上式の(4)及び(5)に代えて、次式が成り立つように、各摩擦係数M1及びL1を設定する。
【0127】
/(1+L)>sinθ
/(1+M)<sinθ
【0128】
(第二の実施形態)
第一の実施形態に係る選別装置100においては、第1のローラー110の直径と第2のローラー120の直径は相互に等しく設定されているが、第1のローラー110の直径と第2のローラー120の直径を相互に異なる直径にすることも可能である。
【0129】
図6は本発明の第二の実施形態に係る選別装置200の正面図(図3と同様の図)である。
【0130】
図6に示すように、第1のローラー110の直径を第2のローラー120の直径よりも大きく設定することができる。
【0131】
あるいは、図7に示すように、第1のローラー110の直径を第2のローラー120の直径よりも小さく設定することができる。
【0132】
本実施形態における角度θ、θ及びθの相互間の関係は次のようになる。
【0133】
(R+R)sin(θ−θ)=(R+R)sin(θ+θ
:第1のローラー110の半径
:第2のローラー120の半径
:異物150の半径
【0134】
第1のローラー110の直径と第2のローラー120の直径を相互に異なる直径にすることによって、選別装置200の設計の自由度を上げることができる。
【0135】
(第三の実施形態)
図8は本発明の第三の実施形態に係る選別装置300の正面図(図3と同様の図)である。
【0136】
本実施形態に係る選別装置300は、第一の実施形態に係る選別装置100と比較して、回転数制御器131を追加的に備えている。この点を除いて、本実施形態に係る選別装置300は第一の実施形態に係る選別装置100と同様の構造を有している。
【0137】
回転数制御器131は、螺旋状の凸状体111または121における螺旋の捻れ角に応じて、第1のローラー110及び第2のローラー120の回転数を制御する。
【0138】
具体的には、回転数制御器131は螺旋状の凸状体111または121における螺旋の捻れ角が小さいほど、第1のローラー110及び第2のローラー120の回転数が大きくなるように制御し、あるいは、螺旋状の凸状体111または121における螺旋の捻れ角が大きいほど、第1のローラー110及び第2のローラー120の回転数が小さくなるように、制御を行う。
【0139】
発明者が行った実験によると、異物150と第1のローラー110の表面との間の摩擦係数が比較的大きい場合には、凸状体111の捻れ角は比較的小さい角度とすることができる。さらに、この場合、第1のローラー110の回転数も比較的大きくすることが可能である。
【0140】
逆に、異物150と第1のローラー110の表面との間の摩擦係数が比較的小さい場合には、凸状体111の捻れ角は比較的大きい角度とすることが望ましい。さらに、この場合、第1のローラー110の回転数も比較的小さくすることが好ましい。
【0141】
このような実験結果に基づいて、回転数制御器131は、凸状体111、121の捻れ角が小さいほど、第1のローラー110または第2のローラー120の回転数が大きくなるような制御を行い、逆に、凸状体111、121の捻れ角が大きい場合には、第1のローラー110または第2のローラー120の回転数が小さくなるような制御を行う。
【0142】
(第四の実施形態)
図9は、本発明の第四の実施形態に係る選別装置400の側面図である。
【0143】
本実施形態に係る選別装置400は、次の2つの点において、第一の実施形態に係る選別装置100と構造的に相違している。
【0144】
第1の相違点は、第一の実施形態に係る選別装置100とは異なり、第1のローラー110及び第2のローラー120に螺旋状の凸状体が形成されていない点である。
【0145】
第2の相違点は、本実施形態に係る選別装置400には、第1のローラー110及び第2のローラー120を任意の角度に傾斜させる角度調節機構410が設けられている点である。
【0146】
すなわち、第一の実施形態に係る選別装置100においては、一対の螺旋状の凸状体111、121が穀粒をフィードするフィード手段として機能していたのに対して、本実施形態に係る選別装置400においては、角度調節機構410がフィード手段として機能する。
【0147】
図9に示すように、角度調節機構410は、モーター411と、一端がモーター411の駆動軸に回動自在に連結されているリンク部材412と、からなる。
【0148】
リンク412の他端は、ピボット413を介して、側壁板145Aと回動自在に連結されている。
【0149】
また、他方の側壁板145Bもピボット414を介して回動自在にリンク部材415の一端に連結されており、リンク部材415の他端はピボット416を介して回動自在に床面に固定されている。
【0150】
第1のローラー110及び第2のローラー120は、角度調節機構410により、側壁板145Bが下方になるように、傾斜した状態に維持されている。モーター411がリンク部材412を時計方向Sに回転させると、第1のローラー110及び第2のローラー120の傾斜角度は大きくなり、逆に、モーター411がリンク部材412を反時計方向Rに回転させると、第1のローラー110及び第2のローラー120の傾斜角度は小さくなる。
【0151】
第一の実施形態に係る選別装置100においては、一対の螺旋状の凸状体111、121が穀粒を軸線方向Zにフィードするフィード手段を構成していたのに対して、本実施形態に係る選別装置400においては、第1のローラー110及び第2のローラー120には凸状体111、121が形成されていないため、角度調節機構410がフィード手段を構成している。
【0152】
角度調節機構410により、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸線の傾斜角度を調節することにより、穀粒がフィードされる速度を任意に調節することができる。すなわち、異物150と穀粒との選別速度を任意の値に調節することが可能である。
【0153】
このように、本実施形態に係る選別装置400によっても、第1の実施形態に係る選別装置100と同様の効果を得ることができる。
【0154】
(第五の実施形態)
図10は本発明の第五の実施形態に係る選別装置500の概略図である。
【0155】
本実施形態に係る選別装置500は、第一の実施形態に係る選別装置100と比較して、第2のローラー120に代えて、第2のローラー520を用いるとともに、ローラー回転制御装置530を追加的に備えている。
【0156】
第一の実施形態における第2のローラー120は固定式のローラー(すなわち、一定位置に固定されているローラー)であるのに対して、本実施形態における第2のローラー520は第1のローラー110の中心111を中心として第1のローラー110の回りに回転可能に形成されている。
【0157】
ローラー回転制御装置530は第2のローラー520が第1のローラー110の回りに回転する際の回転方向及び回転量(回転角度)を制御する。すなわち、選別装置500の運転者は、異物150の種類、第1のローラー110の表面と異物150との間の摩擦力の大小その他の要因に応じて、ローラー回転制御装置530を介して、第1のローラー110の中心111と第2のローラー520の中心とを結ぶ線が水平方向となす角度θを任意の角度に設定することが可能である。
【0158】
なお、例えば、角度θを5度以上かつ85度以下に設定する場合には、角度θが5°≦θ≦85°の範囲内にあるように、第2のローラー520の回転方向及び回転量を制限することも可能である。
【0159】
(第六の実施形態)
図11は螺旋状の凸状体111、121の種々の断面形状を示す断面図である。
【0160】
螺旋状の凸状体111、121は、例えば、図11(A1)に示すように、三角形形状(特に、二等辺三角形)の断面、または、図11(A2)に示すように、半円形状の断面とすることができる。あるいは、図11(A3)に示すように、一定間隔毎に形成された矩形形状、または、図11(A4)に示すように、一定間隔毎に形成された台形形状の断面とすることができる。
【0161】
しかしながら、これらの断面形状の凸状体111、121には次のような欠点がある。
【0162】
図11(A1)に示す三角形形状の凸状体111、121、または、図11(A2)に示す半円形状の凸状体111、121に関しては、穀粒(異物150以外の物)をZ方向に移動させる際に、図11(B1)及び図11(B2)に示すように、穀粒が凸状体111、121を乗り越えて隣接する谷に移動することがあった。
【0163】
また、図11(A3)に示す矩形形状、または、図11(A4)に示す台形形状の凸状体111、121に関しては、穀粒をZ方向に移動させる際に、図11(B3)及び図11(B4)に示すように、穀粒が谷底の中で動いてしまうことがあった。
【0164】
このように、図11(A1)乃至図11(A4)に示す断面を有する凸状体111、121では、穀粒を安定的にZ方向に移動させることがかなり困難であった。
【0165】
このため、本発明の第六の実施形態に係る選別装置においては、図12に示す断面形状を有する螺旋状の凸状体111、121を採用する。
【0166】
図12に示す断面形状を有する螺旋状の凸状体111、121は、第1のローラー110及び第2のローラー120の軸線に垂直な垂直壁601と、垂直壁601の頂点から穀粒がフィードされる方向Zに向かって下方に傾斜する傾斜壁602と、を有している。
【0167】
図12に示すように、傾斜壁602と垂直壁601とで構成される谷底に入った穀粒は垂直壁601を登ることは不可能であるので、図11(A1)及び図11(A2)に示す断面形状を有する凸状体111、121の場合とは異なり、穀粒が隣の谷底に移動することはない。さらに、傾斜壁602と垂直壁601とで構成される谷底に入った穀粒は、傾斜壁602と垂直壁601とで挟み込まれた状態になるため、図11(A3)及び図11(A4)に示す断面形状を有する凸状体111、121の場合とは異なり、穀粒が谷の中で動いてしまうこともない。
【0168】
このように、垂直壁601と傾斜壁602とからなる凸状体111、121を採用することにより、穀粒を安定的にZ方向に移動させることが可能である。
【0169】
なお、垂直壁601と傾斜壁602とからなる凸状体111、121は第1のローラー110及び第2のローラー120の双方に採用しても良く、あるいは、第1のローラー110及び第2のローラー120の何れか一方のみに採用してもよい。
【0170】
(第七の実施形態)
図13は本発明の第七の実施形態に係る選別装置において使用する第2のローラー220の平面図である。
【0171】
本実施形態に係る選別装置は、第2のローラー120に代えて第2のローラー220及びこの第2のローラー220に対応する第1のローラー(図示せず)を使用する点を除いて、第四の実施形態に係る選別装置400と同一の構造を有している。
【0172】
本実施形態における第2のローラー220は形状的には第四の実施形態における第2のローラー120と同一である。ただし、第四の実施形態における第2のローラー120とは異なり、本実施形態における第2のローラー220においては、長さ方向に均等に分割された6個の領域211、212、213、214、215、216の各表面の摩擦係数は相互に異なる値に設定されている。
【0173】
第2のローラー220に対応する第1のローラー(図示せず)も同様である。具体的には、第1のローラーも、第2のローラー220と同様に、長さ方向において均等に分割された6個の領域を備えており、第2のローラー220の6個の領域211、212、213、214、215、216の各々に対応する第1のローラーの各領域は第2のローラー220の各領域と同一の摩擦係数を有している。
【0174】
図13に示すように、第2のローラー220が、軸線方向Zにおいて、第一領域211、第二領域212、第三領域213、第四領域214、第五領域215及び第六領域216を有しているものとした場合、各領域の表面の摩擦係数は軸線方向Zに沿って順に高くなるように設定されている。
【0175】
すなわち、第一領域211乃至第六領域216の各表面の摩擦係数をそれぞれF1乃至F6とすると、次式の関係が成り立つ。
【0176】
F1<F2<F3<F4<F5<F6
【0177】
本実施形態における第2のローラー220及び第2のローラー220に対応する第1のローラーを使用することにより、複数種類の異物を同時に選別することが可能になる。
【0178】
すなわち、第2のローラー220または第1のローラーとの間の摩擦力が大きい異物から順に各領域において選別される。具体的には、第2のローラー220または第1のローラーとの間の摩擦力が最も大きい異物は最初の第一領域211において選別される。第2のローラー220または第1のローラーとの間の摩擦力が次に大きい異物は第二領域212において選別される。以下、同様に選別が行われ、第2のローラー220または第1のローラーとの間の摩擦力が最も小さい異物は最後の第六領域216において選別される。
【0179】
以上のように、本実施形態に係る選別装置のように、各領域毎に摩擦係数が異なる第2のローラー220及びそれに対応する第1のローラーを使用することにより、それぞれ摩擦係数が異なる複数の異物を一度に選別することが可能になる。
【0180】
なお、第一領域211乃至第六領域216の各表面の摩擦係数を異なるものにするためには、例えば、次のような手段を用いることができる。
【0181】
(1)第一領域211乃至第六領域216の表面に摩擦係数の異なる塗料を塗布する
(2)第一領域211乃至第六領域216の表面に摩擦係数の異なる素材をコーティングする
(3)第一領域211乃至第六領域216の表面に形成する摩擦係数向上用の凸状体または凹状体の配置密度を変える
(4)第一領域211乃至第六領域216の材質を変える
【0182】
なお、本実施形態における第一領域211乃至第六領域216の摩擦係数の設定の仕方は一例であり、他の設定の仕方を採用することも可能である。
【0183】
また、本実施形態における摩擦係数の設定は少なくとも高い位置にある第2のローラー220に対してのみ行えばよく、第1のローラーに対して行うことは必ずしも必要ではない。
【符号の説明】
【0184】
100 本発明の第一の実施形態に係る選別装置
110 第1のローラー
111 凸状体
120 第2のローラー
121 凸状体
130 モーター
131 回転数制御器
141 第1の収納容器
142 第2の収納容器
143 ホッパー
144 ベアリング
145 側壁
150 異物
200 本発明の第二の実施形態に係る選別装置
300 本発明の第三の実施形態に係る選別装置
400 本発明の第四の実施形態に係る選別装置
410 角度調節機構
411 モーター
412 リンク部材
500 本発明の第五の実施形態に係る選別装置
520 第2のローラー
530 ローラー回転制御装置
601 垂直壁
602 傾斜壁
220 第2のローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の物乃至第N(Nは2以上の正の整数)の物が混合している混合物から前記第1の物のみを選別する選別装置であって、
第1のローラーと、
第2のローラーと、
前記第1のローラー及び前記第2のローラーを回転させる駆動手段と、
フィード手段と、
を備え、
前記第1のローラーは前記第2のローラーと軸線が相互に平行になるように配置されており、
前記第1のローラーの外周面と前記第2のローラーの外周面との間の間隙は前記第1の物乃至前記第Nの物の何れの外径よりも小さく設定されており、
前記駆動手段は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを相互に反対方向に、かつ、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを上方から見たときに相互に離れ合う方向に回転させ、
前記フィード手段は前記第1の物以外の物を前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線方向にフィードするものである選別装置において、
前記第2のローラーは前記第1のローラーより軸線が高い位置にあるように配置され、
前記第1のローラーの表面の摩擦係数は、前記第1の物を摩擦力により前記第1のローラーの表面に付着させたまま、前記第1のローラーとともに回転させることが可能であるように設定されていることを特徴とする選別装置。
【請求項2】
前記第1のローラーの表面と前記第1の物との間の摩擦係数をM、前記第1のローラーの中心と前記第1の物の中心とを結ぶ線が水平線に対してなす角度をθとすると、
/(1+M)>sinθ
に設定されていることを特徴とする請求項1に記載の選別装置。
【請求項3】
前記第1のローラーの中心と前記第2のローラーの中心とを結ぶ線が水平方向となす角度は5度以上85度以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の選別装置。
【請求項4】
前記フィード手段は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの表面に形成された少なくとも一つの螺旋状の凸状体からなることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の選別装置。
【請求項5】
前記第1のローラーに形成された前記凸状体及び前記第2のローラーに形成された前記凸状体の少なくとも何れか一方は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線に垂直な垂直壁と、前記垂直壁の頂点から前記第1の物以外の物がフィードされる方向に向かって下方に傾斜する傾斜壁と、を有するものであることを特徴とする請求項4に記載の選別装置。
【請求項6】
前記第1のローラー及び前記第2のローラーの回転数を制御する回転数制御手段を備えており、
前記回転数制御手段は、前記凸状体の捻れ角に応じて、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの回転数を制御するものであることを特徴とする請求項4または5に記載の選別装置。
【請求項7】
前記回転数制御手段は、前記捻れ角が小さいほど、前記回転数が大きくなるように制御することを特徴とする請求項6に記載の選別装置。
【請求項8】
前記フィード手段は前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線の傾斜角度を調節する角度調節機構からなり、
前記角度調節機構は、前記第1のローラー及び前記第2のローラーの軸線が、前記第1の物以外の物が進行する方向に向かって鉛直面内において下方に傾斜するように、前記第1のローラー及び前記第2のローラーを傾斜させるものであることを特徴とする請求項1に記載の選別装置。
【請求項9】
前記第1のローラー及び前記第2のローラーは相互に異なる直径を有するものであることを特徴とする請求項1乃至8の何れか一項に記載の選別装置。
【請求項10】
前記第2のローラーは前記第1のローラーの中心を中心として前記第1のローラーの回りに回転可能に形成されており、
前記第2のローラーの回転方向及び回転量を制御するローラー回転制御装置を備えていることを特徴とする請求項1乃至9の何れか一項に記載の選別装置。
【請求項11】
前記第1のローラー及び前記第2のローラーのうち少なくとも前記第2のローラーはそれらの軸線方向において複数の領域からなり、前記領域の各々において表面の摩擦係数が異なるものであることを特徴とする請求項1乃至10の何れか一項に記載の選別装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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