説明

選択されたICH患者亜集団における脳内出血(ICH)後の出血拡大、及び/又は浮腫生成の予防又は減弱のための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用

本発明は、脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症を予防又は減弱させる方法に関し、該方法は、(i)次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者を選択すること;及び(ii)第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有する第1の凝固剤の有効量を、それを必要とする患者に投与することを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択されたICH患者において重度の合併症を予防又は最小化することに関する。さらに本発明は、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を用いた治療に対する、ICH患者の適合性を評価する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
止血は、最終的に出血停止に帰する複合的な生理学的プロセスである。これは、3つの主な要素:血管(特に内膜)、凝固因子、及び血小板の正常な機能に依存する。止血血栓が形成されるとすぐ、線溶系が適時に活性化されることは、さらなる不必要な止血活性化の防止には重要である。(止血成分の数の減少、又は分子の機能不全、又は線溶成分の増加した活性化により)この系に何らかの機能不全があると、臨床的出血、例えば様々な重症度の出血性素因に至るおそれがある。
大抵の生理学的状況において、止血は、組織因子(TF)と循環活性化第VII凝固因子(FVIIa)とが相互作用し、続いて損傷部位でTFに暴露されることにより惹起される。内因性FVIIaは、TFと複合体を形成した後にのみ、タンパク質分解的に活性になる。通常、TFは血管壁の深層で発現され、損傷後に暴露される。これにより、高度に局在化した凝固活性化が確保され、播種性凝固が防止される。またTFは、非活性形態の、いわゆる暗号化TFで存在するようにも思われる。暗号化対活性化TFの調節は今だ知られていない。
【0003】
脳内出血(ICH)は、自発的に生じる神経学的状態であり、実質内脳組織に血液が集まる結果となる。また、血液は、脳室に集まるおそれもある(脳室内出血(IVH))。ICHの結果、かなりの罹患率及び死亡率となることが示されている。近年、ICHは、最初の発作に続いて数時間で容積が増加することが示されている。このことは、ICHを患った患者の約38%(Brottら, 1997)から73%(Davisら, 2006)において生じている。増加の理由は明らかではないが、最初の血腫の連続的滲出、又は再出血の複雑なプロセスのいずれかを介していると考えられる。
【0004】
最初の発作から数日後、浮腫の領域は、血腫中の血液周囲のCTスキャンで同定することができる。浮腫生成のメカニズムはあまり理解されていないが、血餅周囲の組織において炎症反応が組み合わさり、並びに周辺脳組織において血餅が作用する圧力の直接的腫瘤効果のためである可能性がある。単離された浮腫の影響は有意であり;易感染性脳組織、続くICHの容積における浮腫の影響は、血腫の実際の容積の3倍までであると推定されている。影響を受けた組織の全容積の重要性は、ICH後の成績の最も強い予言者の一つであると思われる。よって、出血拡大の減少及び全病変容積(血液及び結果としての浮腫)の低減及び/又は最小化に臨床的関心が存在している。
【0005】
国際公開WO2005/123118及びWO2007/009895は、抗凝固治療を受けた患者を含む患者における、脳内出血(ICH)後の出血拡大及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させるための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用に関する。
さらなる試み及び分析により、特に定義された患者の亜集団が、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を用いた治療から、特に恩恵を受ける可能性があることが明らかになった。よって、ICHの急性処置のための、並びにICHから、またICHを患っているここに定められた患者の亜集団を治療するのに使用されている一般的なモダリティから生じる後期合併症を予防又は減弱させるための改善された方法及び組成物が、当該分野において今なお必要とされている。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択されたICH患者における、ICHの一又は複数の合併症を予防又は減弱させる医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を提供する。
「選択されたICH亜集団患者」なる用語は、本文中において、「次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択されたICH患者」なる用語と、交換可能に使用されうる。
【0007】
また、本発明は、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択されたICH患者における、ICH後の出血拡大及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を提供する。
医薬品が使用される典型的な患者は、限定されるものではないが、自発的又は外傷性のICHを患っている患者を含む、凝固障害性出血を被っている患者である。
【0008】
また本発明は、処置開始後15日、例えば30日、60日、好ましくは90日、選択されたICH亜集団患者の全体的な生存期間を増加させる医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を提供する。他の態様において、本発明は、処置開始(SOT)〜15日、例えば30日、60日、又は処置開始後90日の期間、集中治療室(ICU)、病床拘束、及び/又は欧州の生活の質スケール(EuroQOL)により測定される生活の質、又は同様の手段を含む、選択されたICH亜集団患者の入院日数を低減し、又は選択されたICH亜集団患者の死の危険性を低減する医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を提供する。一実施態様において、(i)20又は80μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物は、ゆっくりとした単一ボーラスとして、治療の開始時に患者に投与されるが、付加的な危険因子の場合は除く(例えば、抗凝固又は抗血小板治療患者にはさらなる投与がなされうる)。
【0009】
また本発明は、有効量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される、選択されたICH亜集団患者における、ICHの一又は複数の合併症を予防又は減弱させる方法を提供する。典型的な患者は、自発的又は外傷性ICHを患っている。
【0010】
本発明の一態様において、最初の投与工程は、ICHの発症の2.5時間以内に実施される。いくつかの実施態様において、本方法は、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の効果が増加する量で、第2の凝固剤を患者に投与することをさらに含む。好ましくは、第2の凝固剤は、凝固因子(限定されるものではないが、第VIII因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XIII因子、及びその任意の組合せを含む)、又は抗線溶剤 (限定されるものではないが、PAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、トラネキサム酸、又はその任意の組合せを含む)である。
【0011】
また本発明は、選択されたICH亜集団患者の、ICH後の入院日数を低減する方法を提供し、該方法は、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成の予防又は減弱を達成するのに有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される。
【0012】
また本発明は、ICH後の浮腫生成が予防又は減弱される量の、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される、選択されたICH亜集団患者における死の危険性を低減する方法を提供する。
【0013】
さらに本発明は:(i)予防又は減弱に有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を、選択されたICH亜集団患者の群に投与し;及び(ii)第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を受容しない患者の同様の群において予期されるであろう合併症の発症頻度に対する、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を受容した患者の群における、ICHの一又は複数の合併症の発症頻度の低下度合いを観察することにより実施される、多くの選択されたICH亜集団患者の一又は複数の合併症を予防又は減弱させる方法を提供する。
【0014】
(発明の詳細な記載)
本発明は、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させるのに有利に使用可能な方法及び組成物を提供し、ここで患者は、最初の損傷の後、及び/又はそれらの損傷を処置するのに使用され得る医療行為の結果として、受ける可能性がある。本方法は、出血拡大、浮腫形成、並びにICHに関連する一又は複数の合併症を予防又は減弱させるのに有効な方式で、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を、選択されたICH亜集団患者に投与することにより実施される。出血拡大、浮腫形成、及び後続する合併症を予防又は減弱させるのに有効な方式には、所定量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の投与、及び/又は特定の投与計画の利用、処方、投与方式、他の処置との併用等が含まれる。出血拡大、浮腫形成の低減、又はICHの合併症予防における本発明の方法の有効性は、一又は複数の従来からの画像検査法(例えば、CT、MRIスキャニング)の使用、又は合併症を評価するパラメーターの使用(以下参照)により評価されてよい。本発明の方法により予防され得る、又はその重症度が減弱する合併症には、限定されるものではないが、出血拡大、浮腫生成、及び一又は複数のこれらの症候群に起因する死を含む生活の質の低下が含まれる。
【0015】
患者の選択:
本発明者は、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を用いた処置から、特に利益を受ける可能性のある、ICHを患った患者の亜集団を同定した。同定される亜集団の選択基準には、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数が含まれる。「ベースライン」容積とは、診断時に(例えば、以下に記載するようなCT又はMRスキャンによる画像を使用することにより)測定される容積を意味する。よって、「ベースラインICH容積」及び「ベースラインIVH容積」は、それぞれ、診断時に測定された脳内出血(実質内脳組織に集まった血液)の容積と、診断時に測定された脳室内出血(脳室に集まった血液)の容積を意味する。臨床診療において、ベースライン容積は、通常はスキャン時に測定された容積である(賢明ならば、処置はついで可能な限り素早く開始される)。
よって、一態様では、本発明はこのような亜集団患者の選択に関する。
【0016】
本発明の方法を使用することにより恩恵を受ける可能性のある患者には、限定されるものではないが、自発的又は外傷性ICHを患った患者が含まれる。自発的ICHには、通常、高齢での発症に関連した脳内出血、高血圧、又は脳血管系へのアミロイドの沈着を被った患者が含まれる。通常、ICHは、損傷を受けた血管に隣接した周囲脳組織への広範囲の損傷の原因である単一血管の破裂に起因する。外傷性ICHは、自動車事故又は高所からの落下等に起因する事故に関連している。結果としての頭部への挫傷は、一又は複数の脳内又は脳外(但し頭蓋内)血管の破裂に至るおそれがある。多くの頭蓋内(又は脳外)出血は、既に急性期に外科的に排除されるが、多くの場合、脳内破壊では、排除それ自体、脳内組織においてかなりのダメージの原因となるため、直接排除にはアクセスしづらい。
【0017】
出血は、循環系の任意のコンポーネントからの血液の血管外漏出を称し、ICHに関連した任意の出血(限定されるものではないが、過剰な制御できない出血、すなわち出血(haemorrhaging))が含まれる。一連の実施態様において、過度の出血は、自発的ICHに原因があり;他においては、外傷性ICHに原因がある。
【0018】
本発明の方法は、未処置のままならば、かなりの出血拡大に至り、浮腫及び合併症にも関連する、自発的又は外傷性ICHを患った、任意の亜集団患者に有利に適用することが可能である。
【0019】
一連の実施態様において、本発明で処置される患者は、例えば血友病A、B又はC等、先天性又は獲得性のどちらであろうとも、出血性疾患を患っていない。
本発明の異なる実施態様において、患者が、先天性出血性疾患であると診されている場合、処置からは排除される場合もある。
【0020】
第VIIa因子及び第VIIa因子等価物:
本発明の実施において、任意の第VIIa因子又は等価物は、選択されたICH亜集団患者に投与される場合、合併症を予防するのに効果的に使用されてよい。いくつかの実施態様において、第VIIa因子は、例えば米国特許第4784950号に開示されているもののような(野生型第VII因子)、ヒト第VIIa因子である。「第VII因子」なる用語は、それらの未切断(チモーゲン)形態にある第VII因子ポリペプチド、並びに第VIIa因子と命名される、タンパク質分解的にプロセシングされて、それぞれの生物活性形態を生じるものを含むことを意図している。典型的には、第VII因子は、残基152と153の間で切断されて、第VIIa因子が生じる。
【0021】
第VIIa因子等価物には、限定されるものではないが、ヒト第VIIa因子に対して化学的に修飾された、及び/又はヒト第VIIa因子に対して一又は複数のアミノ酸配列変更を有する、第VIIa因子ポリペプチドが含まれる。このような等価物は、安定性、リン脂質結合性、特異的な活性変化を含む、ヒト第VIIa因子に対して、他の異なる特性を示す場合もある。第VIIa因子等価物の非限定的例には、ペグ化されたヒト第VIIa因子、システイン-ペグ化されたヒト第VIIa因子、及びそれらの配列変異体が含まれる。ペグ化された第VIIa因子には、限定されるものではないが、グリコペグ化されたFVII誘導体で、WO03/31464及び米国特許出願US20040043446、US20040063911、US20040142856、US20040137557、US20040132640、WO2007022512及びUS20070105755(Neose Technologies, Inc.)に開示されているもの;FVIIコンジュゲートで、WO01/04287、米国特許出願20030165996、WO01/58935、WO03/93465 (Maxygen ApS)及びWO02/02764、米国特許出願US20030211094(ミネソタ大学)に開示されているものが含まれる。
【0022】
一連の実施態様において、第VIIa因子等価物は、ヒト第VIIa因子に特異的な生物活性の、少なくとも約10%、好ましくは少なくとも約30%、より好ましくは少なくとも約50%、最も好ましくは少なくとも約70%を示すポリペプチドが含まれる。本発明の目的のために、第VIIa因子の生物活性は、米国特許5,997,864に記載されているように、第VII因子-欠損血漿とトロンボプタスチンを使用し、血液凝固を促進させる調製物の能力を測定することにより定量されてもよい。このアッセイにおいて、生物活性は、対照サンプルに対する、凝固時間の低減度合いとして表され、1ユニット/mlの第VII因子活性を含有する、プールされたヒト血清標準体と比較することにより、「第VII因子ユニット」に換算される。また、第VIIa因子の生物活性は、(i)第X因子及び脂質膜に包埋されたTFを含有するシステムにおいて、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の、第Xa因子を生成する能力を測定し(Perssonら, J. Biol. Chem. 272:19919-19924, 1997);(ii)水系における第X因子の加水分解度合いを測定し(以下実施例5を参照);(iii)表面プラスモン共鳴をベースにした機器を使用し、TFに対する、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の物理的結合性を測定し(Persson, FEBS Letts. 413:359-363, 1997);(iv)第VIIa因子及び/又は第VIIa因子等価物による、合成基質の加水分解度合いを測定することによって定量されてもよい。
【0023】
第VIIa因子等価物の例には、限定されるものではないが、野生型第VII因子、L305V-FVII、L305V/M306D/D309S-FVII、L305I-FVII、L305T-FVII、F374P-FVII、V158T/M298Q-FVII、V158D/E296V/M298Q-FVII、K337A-FVII、M298Q-FVII、V158D/M298Q-FVII、L305V/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V-FVII、V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、V158D/E296V/M298Q/L305V/K337A-FVII、K157A-FVII、E296V-FVII、E296V/M298Q-FVII、V158D/E296V-FVII、V158D/M298K-FVII、及びS336G-FVII、L305V/K337A-FVII、L305V/V158D-FVII、L305V/E296V-FVII、L305V/M298Q-FVII、L305V/V158T-FVII、L305V/K337A/V158T-FVII、L305V/K337A/M298Q-FVII、L305V/K337A/E296V-FVII、L305V/K337A/V158D-FVII、L305V/V158D/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V-FVII、L305V/V158T/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V-FVII、L305V/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/K316H-FVII、S314E/K316Q-FVII、S314E/L305V-FVII、S314E/K337A-FVII、S314E/V158D-FVII、S314E/E296V-FVII、S314E/M298Q-FVII、S314E/V158T-FVII、K316H/L305V-FVII、K316H/K337A-FVII、K316H/V158D-FVII、K316H/E296V-FVII、K316H/M298Q-FVII、K316H/V158T-FVII、K316Q/L305V-FVII、K316Q/K337A-FVII、K316Q/V158D-FVII、K316Q/E296V-FVII、K316Q/M298Q-FVII、K316Q/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D-FVII、S314E/L305V/E296V-FVII、S314E/L305V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/V158T-FVII、S314E/L305V/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/K337A/E296V-FVII、S314E/L305V/K337A/V158D-FVII、S314E/L305V/V158D/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V-FVII、S314E/L305V/V158T/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V-FVII、S314E/L305V/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、S314E/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、S314E/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D-FVII、K316H/L305V/E296V-FVII、K316H/L305V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/V158T-FVII、K316H/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/K337A/E296V-FVII、K316H/L305V/K337A/V158D-FVII、K316H/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V-FVII、K316H/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V-FVII、K316H/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316H/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316H/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVII、K316Q/L305V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D-FVII、K316Q/L305V/E296V-FVII、K316Q/L305V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158T-FVII、K316Q/L305V/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/K337A/E296V-FVII、K316Q/L305V/K337A/V158D-FVII、K316Q/L305V/V158D/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V-FVII、K316Q/L305V/V158T/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V-FVII、K316Q/L305V/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158T/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/K337A/M298Q-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/K337A-FVII、K316Q/L305V/V158D/E296V/M298Q/K337A-FVII、及びK316Q/L305V/V158T/E296V/M298Q/K337A-FVIIが含まれる。
【0024】
調製物及び製剤:
本発明は、第VIIa因子調製物を含む製剤を使用して達成される、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の治療的投与を包含する。ここで使用される場合、「第VII因子調製物」とは、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を合成するようプログラムされた組換え細胞又は起始細胞であろうとなかろうと、それらが合成される細胞から分離された変異体及び化学的に修飾された形態を含む、多くの第VIIa因子ポリペプチド又は第VIIa因子等価物ポリペプチドを称する。
【0025】
起始細胞からのポリペプチドの分離は、限定されるものではないが、接着細胞培養からの所望する生成物を含有する細胞培養培地の除去;非接着細胞を取り除くための遠心分離又は濾過等を含む、当該技術で公知の任意の方法により達成され得る。
【0026】
場合によっては、第VII因子ポリペプチドは、さらに精製されてよい。精製は、限定されるものではないが、例えば、抗-第VII因子抗体カラムにおけるアフィニティークロマトグラフィー(例えば、Wakabayashiら, J. Biol. Chem. 261:11097, 1986; 及びThimら, Biochem. 27:7785, 1988を参照);疎水性相互作用クロマトグラフィー;イオン交換クロマトグラフィー;サイズ排除クロマトグラフィー;電気泳動手順(例えば調製用の電点電気泳動(IEF)、微分溶解度(例えば、硫酸アンモニウム沈降)、又抽出等を含む、当該技術で公知の任意の方法を使用して達成され得る。一般的には、Scopes, Protein Purification、Springer-Verlag, New York, 1982; 及びProtein Purification, J.-C. Janson及びLars Ryden、Editors、VCH Publishers, New York, 1989を参照。精製後、調製物は、好ましくは約10重量%未満、さらに好ましくは約5重量%未満、最も好ましくは約1重量%未満の、宿主細胞から誘導された非-第VII因子タンパク質を含有する。
【0027】
第VII因子及び第VII因子-関連ポリペプチドは、第XIIa因子、又はトリプシン様特異性を有する他のプロテアーゼ、例えば第IXa因子、カリクレイン、第Xa因子、及びトロンビンを使用し、タンパク質分解的切断により活性化させてもよい。例えば、Osterudら, Biochem. 11:2853 (1972); Thomas, 米国特許4,456,591;及びHednerら, J. Clin. Invest. 71:1836 (1983)を参照。また、第VII因子は、イオン交換クロマトグラフィーカラム、例えばMono Q(登録商標)(Pharmacia)等に通すことによって、活性化されてもよい。ついで、得られた活性化第VII因子は処方されて、以下に記載するようにして投与されてよい。
【0028】
本発明で使用される製薬用組成物又は製剤は、好ましくは製薬的に許容可能な担体、特に水性担体又は希釈液に溶解され、組み合わされて、第VIIa因子調製物を含有する。多様な水性担体、例えば水、緩衝水、0.4%の生理食塩水、0.3%のグリシン等を使用してもよい。また、本発明の調製物は、損傷部位に送達する又は標的とするリポソーム調製物に処方することができる。リポソーム調製物は、一般的に、例えば米国特許4,837,028、4,501,728、及び4,975,282に記載されている。組成物は、従来から、よく知られている滅菌技術により滅菌されてもよい。得られた水溶液は、無菌条件下で濾過されるか、又は使用のために包装され、凍結乾燥されてよく、凍結乾燥された調製物は、投与の前に滅菌水溶液と組合せられる。
【0029】
組成物は、製薬的に許容可能な補助物質又はアジュバントを含有していてもよく、限定されるものではないが、pH調節及び緩衝剤及び/又は浸透圧調節剤、例えば酢酸ナトリウム、乳酸ナトリウム、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム等が含まれる。
【0030】
治療計画:
本発明の実施において、 第VIIa因子又は第VIIa因子等価物は、出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防し、及び/又は合併症を処置するのに単一用量で有効な量を含有する単一用量、又は合併症の予防又は処置に有効な量を共に含有する一連の段階的用量で、選択されたICH亜集団患者に投与されてよい。 第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の有効量(以下参照)は、単一用量又は複数用量の集合で投与される、又は任意の他の種類の定められた治療計画の一環としてなされる場合、ICH及び/又はその合併症(以下参照)に関連した少なくとも一の臨床的パラメーターにより証明されるように、予後に測定可能な程度の統計的改善が生じる、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の量を称する。 第VIIa因子等価物が投与された場合、有効量は、第VIIa因子のものと、第VIIa因子等価物の凝固活性を比較することにより決定され、第VIIa因子の予め定められた有効量と比例させて投与されるように、該量は調節される。
【0031】
本発明の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の投与は、ICHの発症後、約3時間以内、好ましくは約2.5時間以内、例えば約2時間以内、又は約1時間以内に開始される。
単一用量の投与とは、約5分未満の期間で、ゆっくりとしたボーラスとして、 第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を、全用量投与することを称する。いくつかの実施態様においては、約2.5分未満の期間、いくつかでは約1分未満の期間で投与が行われる。典型的には、単一用量の有効量には、少なくとも約15μg/kgのヒト 第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量、例えば少なくとも約20μg/kg、40μg/kg、50μg/kg、75μg/kg、80μg/kg、90μg/kg、又は少なくとも約160μg/kgが含まれる。
【0032】
第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の有効量、並びに全体的な投与計画は、患者の止血状態に応じて変えてよく、例えば循環凝固因子の相対レベル;失血量;出血速度;ヘマトクリット等を含む、一又は複数の臨床的パラメーターを反映するものであってよいと理解されるであろう。有効量は、マトリックス値及びマトリックスにおける種々のテストポイントを構築することにより、常套的な実験方法で、当業者により決定されてよいことも、さらに理解されるであろう。
【0033】
例えば、一連の実施態様において、本発明は、(i) 第1の用量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を投与し、(ii)予定時間後、患者の凝固状態を評価し;及び(iii)評価に基づき、必要であるならば、さらなる用量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を投与することを含む。工程(ii)及び(iii)は、満足のいく止血が達成されるまで繰り返してよい。
【0034】
本発明において、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物は、限定されるものではないが、静脈内、筋肉内、皮下、粘膜、及び肺への投与経路を含む、任意の有効な経路により投与されてよい。一実施態様において、投与は静脈内経路になされる。好ましくは、投与は静脈内経路になされる。
【0035】
併用治療:
本発明は、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物と共に、付加的な薬剤の併用投与を含む。いくつかの実施態様において、付加的な薬剤には、限定されるものではないが、血液凝固剤、特に凝固因子、例えば第VIII因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、又は第XIII因子、線維素溶解系のインヒビター、例えばPAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、又はトラネキサム酸が含まれる。一実施態様において、付加的な血液凝固剤には、ヒト第VIIa因子に対して異なる特性を示す第VIIa因子等価物、例えば変化した特異的活性及び/又はインビボ半減期を示す第VIIa因子の変異体又は誘導体であってよい(例えば、確実に止血するための「維持」用量として)。
【0036】
他の薬剤と第VIIa因子との組合せ投与を含む実施態様において、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の用量は、それ自体が、有効量を含むものであってよいし、付加的な薬剤(類)は、患者への治療的利点をさらに増大させるものであってもよい。また、第VIIa因子又は等価物と第2の薬剤との組合せを、ICHに関連した合併症を予防するのに有効な量、共に含有していてもよい。また、有効量は、投与のタイミング及び数、投与方式、処方等を含む、特定の治療計画において定められるとも理解されるであろう。
【0037】
治療結果:
本発明は、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させるための、並びにICHの一又は複数の合併症を予防及び/又は減弱させるための方法及び組成物を提供する。合併症には、限定されるものではないが、脳浮腫、一又は複数のこれらの症候群に起因する死を含む生活の質の低下が含まれる。
本発明の実施において、ICH及びその合併症の重傷度は、従来からの方法、例えばCT又はMRスキャンによる画像化、又はここに記載される臨床的評価スコア(スコア)を使用して評価されてよい。評価は、本発明の処置の開始から、少なくとも約15日、例えば少なくとも約30日、少なくとも約40日、又は少なくとも約90日で実施されてよい。
【0038】
臓器障害又は臓器不全には、限定されるものではないが、臓器、すなわち大脳、小脳、脳橋、髄質、脳幹、脳室、脊髄、又は周辺組織に限定されない脳の構造におけるダメージ又は機能におけるダメージが含まれる。臓器障害の例には、限定されるものではないが、形態上/構造的ダメージ、及び/又は臓器の機能におけるダメージ、例えば過度の流体又はタンパク質の蓄積が含まれる。
「臓器損傷」、「臓器障害」及び「臓器不全」なる用語は、交換可能に使用されてよい。通常、臓器障害は臓器不全に帰する。臓器不全とは、正常で健康なヒトの対応する臓器の平均的正常な機能と比較して、臓器機能が低下していることを意味する。臓器不全は機能が少し低下(例えば80-90%は正常)するか、又は機能がかなり低下(例えば10-20%が正常)するおそれがあり;低下は、臓器機能の完全な不全である可能性がある。臓器不全には、限定されるものではないが、組織壊死、フィブリン沈着、出血、浮腫、又は炎症による、生物機能の低下、及び/又は脳ヘルニアのようなこれらの不全に応じて生じる合併症が含まれる。臓器障害には、限定されるものではないが、組織壊死、フィブリン沈着、出血、浮腫、又は炎症が含まれる。
【0039】
臓器機能及び効率を試験する方法、及びこのような試験に適した生化学的又は臨床的パラメーターは、熟練した臨床医によく知られている。臓器機能のこのようなマーカー又は生化学的パラメーターは、例えば以下のものである:
脳かん流:脳血流の測定
脳代謝:脳酸素摂取率の測定、又は酸素の脳代謝率の直接測定(例えば、MRS、PET又はSPECTスキャンによる)。また、グルコース等、酸素以外の他の基質の測定も含む。
脳完全性:MRI(任意及び全ての標準化されたプロトコルシーケンス)、CT、CTA、MRA
EEGにより測定される脳細胞の電気的機能
十分に確立された神経診断研究による脳機能(例えば、微小透析、経頭蓋ドプラ法)
凝固障害及び炎症を試験するための方法は、熟練した臨床医にはよく知られている。凝固障害状態のこのようなマーカーは、例えばPTT、フィブリノーゲン欠乏、TAT複合体における上昇度、ATIII活性、IL-6、IL-8、又はTNFR-1である。
【0040】
本文脈において、予防には、限定されるものではないが、ICH及び/又はその合併症に関連した一又は複数の症状又は病状の減弱、除去、最小化、軽減又は寛解が含まれ、限定されるものではないが、既にある程度の臓器不全及び/又は障害を被っている、影響を受けた臓器のさらなる障害及び/又は不全の予防、並びにまだ臓器不全及び/又は障害を被っていないさらなる臓器の障害及び/又は不全の予防が含まれる。このような症状又は病状の例には、限定されるものではないが、形態上/構造的ダメージ、及び/又は臓器の機能におけるダメージが含まれ、これは脳及び周辺臓器に限定されるものではない。このような症状又は病状の例には、限定されるものではないが、形態上/構造的ダメージ、及び/又は臓器(類)の機能におけるダメージ、例えば血腫の質量効果、又は周辺組織における炎症反応に起因する流体又はタンパク質の蓄積、組織壊死、フィブリン沈着、出血、浮腫、又は炎症が含まれる。
【0041】
臓器不全又は障害の減弱には、本発明で処置されない選択されたICH亜集団患者で見出される対応する値(類)と比較して、該臓器(以下参照)の機能のよく知られているマーカーの少なくとも一により測定される場合の、臓器機能における何らかの改善が含まれる。
種々の実施態様において、本発明の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物で処置されない患者の血腫成長と比較して、少なくとも5%、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は少なくとも70%、血腫成長が低減している。種々の実施態様において、本発明の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物で処置されない患者の浮腫生成と比較して、少なくとも5%、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は少なくとも70%、浮腫生成が低減している。他の実施態様において、本発明の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物で処置されない患者の全出血容積と比較して、少なくとも5%、例えば10%、20%、30%、40%、50%、60%、又は少なくとも70%、全出血容積(ICH+IVH)が低減している。
【0042】
ICHの重傷度及び/又は合併症の測定
以下は、患者におけるICHの合併症の重傷度及び発生率を評価するのに使用され得る機器及び方法の非限定的例である。
グラスゴー昏睡尺度(GCS;Teasdale及びJennett, The Lancet 13; 2(7872):81-84, 1974)。
修正ランキンスケール(mRS;Bonita及びBeaglehole, Stroke 1988 Dec; 19(12): 1497-1500)。
バルテル(Barthel)指標(BI;Mahoney及びBarthel, Maryland State Medical Journal1965; 14:56-61)。
NIH脳卒中スケール(NIHSS;Brottら, 1989)。
グラスゴー転帰尺度拡張版(GOSe、Lindsayら, Journal of Neurotrauma; 15 (8): 573-580, 1998)。
5つの上述したよく知られている機器を含む、スケール及び評価道具の情報は、The Internet Stroke Center Washington, University School of Medicine, Department of Neurology (www.strokecenter.org)に見出される。
【0043】
治療の他の指標:
また、本発明の方法の効率は、限定されるものではないが、本発明の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物が投与されていない同様の患者に対して、次のパラメーター:上述したNIHSS、mRS、E-GOS、GCS又はBIスケールにより測定された神経学的アウトカムにおける改善性;患者が集中治療室(ICU)で過ごした日数の低減度合い、及びある種の治療介入(例えば、人工呼吸器)が必要な日数の低減度合いを含む、ICHに罹患した後の入院日数の低減度合い;の任意の一つ又は複数の低減を含む、他の臨床的パラメーターを使用して評価されてもよい。アウトカムの非限定的例には、(i)NIHSSのスコアにおける、少なくとも1、2、4、8、10、又は20ポイントスケールの改善性;(ii)mRSスケールにおける、少なくとも1、2、3、又は4ポイントスケールの改善性;(iii)BIスケールにおける、少なくとも5、10、15、20又は30ポイントスケールの改善性;(iv)8ポイントGOSにおける、少なくとも1、2、3、5、又は7ポイントスケールの改善性;(v)ICUでの日数の、1日、2日又は4日の低減;(vi)人工呼吸器での日数の、1日、2日、又は4日の低減;(vii)全入院日数の、2日、4日、又は8日の低減が含まれる。
【0044】
本発明の種々の実施態様
本発明は、選択されたICH亜集団患者における、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる、並びにICHの一又は複数の合併症を予防又は減弱させる医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を含む。合併症の非限定的例には:脳浮腫、及びICH後の神経学的アウトカムの不足、及び死が含まれる。患者は、いくつかの実施態様においては自発的ICH、及びいくつかの実施態様においては外傷的ICHを患っている。
【0045】
いくつかの実施態様において、医薬品は、少なくとも約20μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量を含有する。いくつかの実施態様において、医薬品は、少なくとも約20μg/kgを含有する第1の用量で投与される。いくつかの実施態様において、医薬品は、少なくとも約80μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量を含有する。いくつかの実施態様において、医薬品は、少なくとも約80μg/kgを含有する第1の用量で投与される。
【0046】
他の態様において、本発明は、発症又は損傷発生後の、選択されたICH亜集団患者の入院日数を低減する医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を含む。いくつかの実施態様において、医薬品は、損傷又は発症後、患者が集中治療室(ICU)で過ごす日数を低減させるためのものである。
他の態様において、本発明は、選択されたICH亜集団患者の脳機能を改善する医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を含む。いくつかの実施態様において、医薬品は、脳浮腫の量、及び選択されたICH亜集団患者におけるこのような浮腫に関連したさらなる神経学的悪化に関連した危険性を低減させるためのものである。いくつかの実施態様において、医薬品は、脳損傷が進行する危険性を低減させるためのものである。
【0047】
他の態様において、本発明は、選択されたICH亜集団患者における死の危険性を低減する医薬品を製造するための、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の使用を含む。
いくつかの実施態様において、医薬品は、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物による予防又は減弱度合いが増加する量で、第2の凝固剤をさらに含有する。いくつかの実施態様において、第2の凝固剤は、凝固因子及び抗線溶剤からなる群から選択される。凝固因子の非限定的例には、第VIII因子、第IX因子、第V因子、第XI因子、第XIII因子、及び上述したものの任意の組合せが含まれ、抗線溶剤の非限定的例には、PAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、及びトラネキサム酸が含まれる。
【0048】
他の態様において、本発明は、
(i)第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有する医薬品;及び
(ii)a.ICHを患っている患者が、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を用いた処置に適していると評価された、すなわち次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者として選択されるべきであること;
b.第1の用量が、少なくとも約20、好ましくは少なくとも約80μg/kg、又は160μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有するしており、処置開始時に投与されるべきであること;
c.第2の用量を必要としてもよく、処置開始後1時間に投与すべき第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量が、20、40、80又は160μg/kgの量であってよいこと;
が記載された使用説明書;
を含む、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる、並びにICHの一又は複数の合併症を予防又は減弱させる、パーツのキットを提供する。
【0049】
他の態様において,本発明は、選択されたICH亜集団患者における、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる、並びにICHの一又は複数の合併症を予防又は減弱させる方法を提供し、該方法は、予防又は減弱に有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を、該予防又は減弱が必要な患者に投与することを含む。合併症の非限定的例には:脳死、脳ヘルニア、脳ヘルニアに二次的な呼吸困難、及び脳機能障害に二次的な任意の他の関連した合併症が含まれる。患者は、いくつかの実施態様においては自発的ICH、他では外傷性ICHを患っている。
【0050】
いくつかの実施態様において、有効量は、少なくとも約20μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量を含む。いくつかの実施態様において、少なくとも約80μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量の第1の量が、処置開始時に投与され、約20、40、80又は160μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の相当量の第2の量が、処置開始の1時間後に、患者に投与される。いくつかの実施態様において、本方法は、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物における予防及び減弱度合いを増加させる量の第2の凝固剤を、患者に投与することをさらに含む。いくつかの実施態様において、第2の凝固剤は、凝固因子及び抗線溶剤である。凝固因子の非限定的例には、第VIII因子、第IX因子、第XIII因子、及び上述したものの任意の組合せが含まれ;抗線溶剤の非限定的例には、PAI-1、アプロチニン、ε-アミノカプロン酸、及びトラネキサム酸が含まれる。
【0051】
他の態様において、本発明は、選択されたICH亜集団患者の、自発的ICH又は外傷性ICH後の入院日数を低減する方法を提供し、該方法は、低減するのに有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される。
他の態様において、本発明は、損傷又は発症後の、選択されたICH亜集団患者が集中治療室(ICU)で過ごす日数を低減する方法を提供し、該方法は、低減するのに有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される。
【0052】
他の態様において、本発明は、選択されたICH亜集団患者における脳機能を改善する方法を提供し、該方法は、改善するのに有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される。
他の態様において、本発明は、限定されるものではないが、選択されたICH亜集団患者における、脳ヘルニア、脳梗塞を含む、脳機能障害の合併症発症の危険性を低減する方法を提供し、該方法は、低減するのに有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される。いくつかの実施態様において、本発明は、脳損傷から脳死への進行の危険性を低減する方法を提供する。
【0053】
他の態様において、本発明は、選択されたICH亜集団患者における死の危険性を低減する方法を提供し、該方法は、低減するのに有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を患者に投与することにより実施される。
他の態様において、本発明は、選択されたICH亜集団患者における、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる方法を提供し、該方法は、出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる目的で、予防又は減弱に有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を、予防又は減弱が必要な患者に意図的に投与することにより実施される。
【0054】
他の態様において、本発明は、多くの自発的ICH又は外傷性ICHの、選択されたICH亜集団患者における、ICH後の出血拡大、及び/又は浮腫生成を予防又は減弱させる方法を提供し、該方法は、(i)予防又は減弱に有効な量の第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を、選択されたICH亜集団患者の群に投与し;(ii)第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を受容しない同様の群において予期されるであろう合併症の発症頻度に対する、患者の群における、ICHの一又は複数の合併症の発症頻度の低下度合いを観察することにより実施される。
【0055】
本発明の種々の実施態様を以下に記載する:
1.脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症を予防又は減弱させる方法であって、該方法が:
(i)次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者を選択し;
(ii)第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有する第1の凝固剤を有効量、それを必要とする患者に投与する;
ことを含む方法。
2.前記ICH患者が、次の表示:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の2又はそれ以上を示す、実施態様1の方法。
【0056】
3.前記ICH患者が、次の表示:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の3又はそれ以上を示す、実施態様2の方法。
4.前記ICH患者が、次の表示:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の全てを示す、実施態様3の方法。
【0057】
5.前記ICH患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている、実施態様1の方法。
6.前記有効量が、少なくとも約20μg/kgの前記第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む、実施態様1の方法。
7.有効量が、少なくとも約80μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む、実施態様6の方法。
【0058】
8.第2の凝固剤を患者に投与することをさらに含み、該第1及び第2の凝固剤の量が、共に、前記予防又は減弱に有効な量である、実施態様1の方法。
9.前記第2の凝固剤が凝固因子である、実施態様8の方法。
10.前記第2の凝固剤が抗線溶剤である、実施態様8の方法。
11.前記投与により、ICH患者のICH後の入院日数の低減、及びICH患者における死の危険性の低減:の一又は複数に帰する、実施態様1の方法。
【0059】
12.第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を用いた処置に対するICH患者の適合性を評価する方法であって、該方法が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者を選択することを含む方法。
13.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の2又はそれ以上を示す、実施態様12の方法。
14.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の3又はそれ以上を示す、実施態様13の方法。
15.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の全てを示す、実施態様14の方法。
16.前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている、実施態様12の方法。
【0060】
17.脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症を予防又は減弱させる医薬品を製造するための第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む第1の凝固剤の使用であって、該医薬品が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択されたICH患者に投与される使用。
18.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の2又はそれ以上を示す、実施態様17の使用。
19.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の3又はそれ以上を示す、実施態様18の使用。
20.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の全てを示す、実施態様19の使用。
21.前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている、実施態様17の方法。
【0061】
22.第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の投与量が、少なくとも約20μg/kg含む、実施態様17の使用。
23.第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の投与量が、少なくとも約80μg/kg含む、実施態様22の使用。
24.第2の凝固剤を患者に投与することをさらに含み、該第1及び第2の凝固剤の量が、共に、前記予防又は減弱に有効な量である、実施態様17の使用。
25.前記第2の凝固剤が凝固因子である、実施態様24の使用。
26.前記第2の凝固剤が抗線溶剤である、実施態様24の使用。
27.前記予防又は減弱により、ICH患者のICH後の入院日数の低減、及びICH患者における死の危険性の低減:の一又は複数に帰する、実施態様17の使用。
【0062】
28.脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症の予防又は減弱に使用される、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む第1の凝固剤であって、該凝固剤が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択されたICH患者に投与される凝固剤。
29.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の2又はそれ以上を示す、実施態様28の凝固剤。
30.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の3又はそれ以上を示す、実施態様29の凝固剤。
31.前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症してからの経過時間が約2.5時間未満の全てを示す、実施態様30の凝固剤。
32.前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている、実施態様28の凝固剤。
【0063】
33.第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の投与量が、少なくとも約20μg/kg含む、実施態様28の凝固剤。
34.第VIIa因子又は第VIIa因子等価物の投与量が、少なくとも約80μg/kg含む、実施態様33の凝固剤。
35.第2の凝固剤をさらに含み、該第1及び第2の凝固剤の量が、共に、前記予防又は減弱に有効な量である、実施態様28の凝固剤。
36.前記第2の凝固剤が凝固因子である、実施態様35の凝固剤。
37.前記第2の凝固剤が抗線溶剤である、実施態様35の凝固剤。
38.前記予防又は減弱により、ICH患者のICH後の入院日数の低減、及びICH患者における死の危険性の低減:の一又は複数に帰する、実施態様28の凝固剤。
次の実施例は、本発明の非限定的例証を意図している。
【実施例】
【0064】
一般的方法
測定方法
血腫、脳室内出血(IVH)及び浮腫の容積(mm)を、ROI(対象領域)モジュールを具備するAnalyzeTMソフトウエア(Mayo FoundationのBiomedical Imaging Resource)を使用し、コンピュータ断層撮影スキャン(CTスキャン)により測定した。
血腫、脳室内出血(IVH)及び浮腫の容積(mm)は、コンピュータ処理画像システムを使用し、それぞれの関連する断面画像(「スライス」)における適切な高-又は低-減衰ゾーンの周囲長をトレースすることにより、中心位置での処置割り当てに対して盲検の神経放射線科医により算出された。全ての測定はAnalyzeTMソフトウエア内の対象領域(ROI)モジュールを使用して実施した。調査者は、半自動の分解及び/又はフリーハンドツールを使用し、それぞれの標的領域を定めるであろう。それぞれ定められた領域は、画像上のROIとして表される対象領域のみを含むように、調査者により編集されるであろう(図1a及び1bを参照)。この手順は各スライスについて再生され、調査者が決定する各分離標的領域が必要となる。
【0065】
全ての領域が調査者により定められたらすぐ、AnalyzeTMソフトウエアを使用し、各ROIの統計を算出する。これは、mmで定められるROIの面積、及びmmで定められるROIの容積を含むことである。ROIの容積は、面積を獲得されたスライス厚に掛けることにより算出される。対象物は1以上のスライスを含んでよいため、各スライスのROI容積は「対象領域のスタットログ(Stat Log)」ウインドウに示される。このウインドウにおけるこの情報は、ASCIIファイルとして保存され、ブラインド・リード・データベースに直接インポートされる。全ての容積がブラインド・リード・データベースにインポートされると、調査者により定められた領域を、対象マップとして保管し、保存する。対象マップは、単に、定められた面積/構造体を有する、容積のコピーである。
【0066】
調査者は、AnalyzeTMソフトウエアからの対象領域(ROI)モジュールを使用し、以下のものを測定するであろう:
・ICHの容積
・脳室内出血(IVH)の容積
・血腫周囲浮腫(Perihematoma oedema)の全容積
【0067】
上述した測定に基づき、以下のものを算出する:
・mm及びパーセントで表される、スクリーニングから24時間CTスキャンまでのICH容積の変化
パーセントにおける変化として算出=[(24時間のICH容積−スクリーニング時のICH容積)/スクリーニング時のICH容積]100
ミリメートルにおける変化として算出=24時間のICH容積−スクリーニング時のICH容積
・各CTスキャンにおける浮腫/ICH容積の比率
比率=浮腫の容積/ICH容積
・各CTスキャンにおける全出血
全出血として算出=ICH+IVH
【0068】
次の計算は、マルチ-スライス厚技術を使用して提示されたCTスキャンで使用されるであろう。(小さなスライス厚を後頭蓋窩を通して使用し、大きなスライス厚への転換を頭頂を通してなす)。
1=小さなスライス厚獲得
2=大きなスライス厚獲得
スライス厚(mm)/スライススペーシング(mm)=X/[テーブル位置1(mm)+1/2スライススペーシング1(mm)]−[テーブル位置2(mm)−1/2スライススペーシング2(mm)]として算出
ミリメートルでの間隙/重複の容積=X(ミリメートルでの1における最終スライスの面積)
【0069】
ICH容積の合理的推定を提供可能な他の単純な方法は、ABC/2法であり、Aは最も大きな出血スライドにおける最も大きな直径であり、BはAに対して垂直な直径であり、Cはスライス厚を掛けた、出血を有する軸スライドの適切な数である(Kotharin, RU., Brott, T., Broderick, JP., Barsan, WG, Sauerbeck, LR. Zuccarello, M and Khoury, J. The ABCs of measuring intracerebral haemorrhage volumes. Stroke, 1966; 27:1304_1305)。ICHの存在又は不在は、ベースラインCTスキャンに基づき、記すことができる。
【0070】
実施例
実施例1:組換え活性化第VII因子を用いた、ICH患者の亜集団の処置
目的:
組換え活性化第VII因子(rFVIIa)が、血腫成長を低減し、生存性及び機能的アウトカムを改善することを、第2b相試験で確認。
試験設計:
試験は、3つの処置アームを具備する、任意抽出された、マルチセンター、二重盲式で、プラシーボ-コントロールされた試験とした:用量は、プラシーボに対して20及び80μg/kg。
我々は、CTスキャンにより発症から3時間以内であると診断された841の自発的ICH患者をランダムに割り当て、プラシーボ(N=268)、20μg/kg(N=276)、又は80μg/kg(N=297)のrFVIIaを受容させた。ベースラインCTスキャンの4時間以内に、処置をした。一次エンドポイントを、90日での重度の身体障害又は死(修正ランキンスケール[mRS]スコアで5又は6)とした。
【0071】
研究に登録された患者:
発症3時間以内に、CTスキャンにより記録された自発的ICHを患っている≧18歳の患者が、登録に適していた。排除基準には:GCSスコア≦5;入院の24時間以内に、外科的血腫排除が計画されているもの;動脈瘤、動静脈奇形、外傷、又は他の原因による二次的ICH;公知の経口用抗凝固剤の使用又は血小板減少症;凝固障害の病歴;急性敗血症、挫滅、又は播種性血管内凝固;妊娠;先行能力障害(プレ-ICH 修正ランキンスケールスコア≧2);及び公知の近年の血栓性又は血管閉塞疾患(すなわち、アンギナ、跛行、深部静脈血栓症[DVT]、又は脳又は心筋梗塞[MI])が含まれる。
【0072】
研究介入:
静脈内単一用量のプラシーボ、20μg/kg、又は80μg/kgのrFVIIa(NovoSeven(登録商標), Novo Nordisk A/S, Bagsvaerd, Denmark)を受容させるため、連続的に番号が付された容器を使用し、患者を部位によりランダムにブロックした。ベースラインCTの1時間以内、及び発症後4時間以内に処置をした。凍結乾燥パウダーとして、研究用薬剤を供給し、1〜2分以上、静脈内に投与する前に、滅菌水で再構成させる。測定体重に基づき、投与量を算出した。医学的管理の全ての態様が、ICHについての1999米国心臓協会脳卒中部門のガイドラインと一致していることが推奨される。
【0073】
CT画像分析:
追跡CTスキャンを、薬剤の投与後、24±3及び72±6時間に実施した。24時間スキャンが特定の期間内に利用できない場合は、48時間以内に実施された最初の追跡スキャンを、利用する場合は分析する。デジタルのCTデータを画像現像所(Bio-Imaging Technologies Inc, Newtown, PA)に送信し、処置に対して盲検の2人の神経放射線科医により、AnalyzeTMソフトウエア(Mayo Clinic, Rochester, MN)を使用して評価した。ICH、脳室内出血(IVH)、及び浮腫の容積を、コンピュータ化された面積測定技術を使用して算出し、二次エンドポイントとして評価した。この方法の観察者間信頼度は優れており、クラス内相関係数は、ICHで0.96、IVHで0.95である。
【0074】
臨床的評価:
臨床的評価を、登録時、薬剤投与の1及び24時間後、入院中の2、3及び15日(より早いならば退院時)、及び90日に実施した。GCS及び国立衛生研究所の脳卒中スケール(NIHSS)を使用し、入院中の神経障害を評価した。主要アウトカムの測定は、90日での、修正ランキンスケール(mRS)であった。mRSは、包括的な機能的アウトカムを評価し:スコアは、完全に回復したことを示す0から、死の6までの範囲とした。バルテル指標(BI)、拡張型のグラスゴー転帰尺度(E-GOS)、NIHSS、欧州の生活の質スケール(EuroQOL)、及び改訂ハミルトン鬱病尺度を含む、二次エンドポイントを、90日に評価した。
【0075】
統計的解析:
全ての分析は、包括解析(ITT)に基づいた。一次有効性エンドポイントを、90日目での5又は6のmRSスコアとして定めた、重度の身体障害又は死とした。我々はこの研究に力を注ぎ、ベータ0.90及びアルファ0.025を有する片側カイ二乗検定に基づく、プラシーボと比較した活性治療で、0.53又はそれ未満のアウトカム不良のオッズ比を検出した(プラシーボで45%、処置で30%の頻度を仮定)。プールされたプラシーボ、90日目で5又は6のmRSスコアを有する80μg/kg群における患者の割合を評価する計画された暫定的サンプルサイズのレビューに基づき、研究の途中、該研究の個体数を123患者に増やし、90%の力を維持した。第1のアウトカムの測定を、プレ特異的な統計的分析計画によるところの共変数として、処置、年齢、性別、ベースラインICH容積、プレ脳卒中のmRS、及び位置(テント上対テント下)を用いたロジスティック回帰を使用して分析した。アウトカムデータのない生存患者については、最後の観察を進展させた。ベースラインGCSをmRSの代わりに使用したことを除けば、同様の共変数を用いたANOVAモデルを使用し、BI及びNIHSSのランクを分析した。
【0076】
CT病変容積を、一般化線形混合モデルを称して分析し、平均値を測定した。被験者及び読み手(2人の神経放射線科医)を変量効果に含め、処置、ベースラインICH容積、開始からCTまでの間隔(onset-to-interval)、及びCTから針までの間隔(CT-to-needle interval)を、母数効果共変数として含めた。パーセントの変化を、負の値を除去するために100を加えた後、対数変換をし、正規性を得た。X2テストを使用し、90日での3つの処置群における、動脈、静脈、及び全ての血栓塞栓性SAE(登録商標)の頻度と比較した。全ての分析を、UNIXプラットフォーム(version 8.2, SAS Institute, Cary, NC)において、SAS(登録商標)を使用して実施した。
【0077】
試験生成物(類):
注射用に水で再構成される、凍結乾燥パウダーとして、活性化した組換えヒト第VII因子(rFVIIa/NovoSeven(登録商標))及びプラシーボを、Novo Nordisk A/S, Denmarkより得た。
導入:活性化した組換え第VII因子(rFVIIa)FASTを、発症後、≦3時間のコンピュータ断層撮影(CT)スキャンにより診断され、CTの≦1時間後、プラシーボ、20又は80μg/kgのrFVIIaで処置された821の自発的脳内出血(ICH)患者の、任意抽出され、二重盲式のプラシーボ-コントロールされた研究とした。FASTは、ICH発症後、≦4時間で付与されるrFVIIa(80μg/kg)が、血腫成長をかなり制限することを示した。
方法:ICH後のアウトカムについてのいくつかの予測因子の任意の組合せを、種々の臨床的に有意なカットオフで分析し、候補となるサブグループを同定した。このグループにおける容積変化及びアウトカムでの処置効果を、ロジスティック回帰(mRS)及び一般化線形混合モデル(ICH容積)により分析した。ついで、同様の基準を第2b相に適用し、仮定した応答グループの我々の仮説を検査した。
【0078】
結果:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症からrFVIIa処置までの時間≦2.5時間の患者を含む、候補となる応答サブグループ(n=160)を同定した。このグループにおけるrFVIIa処置のアウトカム不良について調節されたオッズ比(OR)は、0.28(95% CI 0.08〜1.06)であった。プラシーボに対する出血拡大の低減度は、発症から処置までを2.5時間に限定すると、ほぼ2倍となった(−7.3±3.2ml[P=0.03]対−3.8±1.5ml、80μg/kgのグループ全体)。ついで、観察された処置効果を、初期の第2b相研究において、同様の患者サブグループ(n=56)の分析で確認した。
結論:この予備的分析により、年齢、ベースラインICH及びIVH、及び90日アウトカムにおける処置までのタイミングの予測効果についての証拠が提供され、ICH患者の亜集団は、rFVIIaを用いた止血処置から利益を得ていることが示唆される。
【0079】
実施例2:ICH亜集団患者への第VIIa因子の投与
事後解析、試験F7ICH-1641
患者の亜集団を事後解析により同定し、ベースラインでの予後不良のために、試験薬剤インターベンションが、成功する見込みの少ない患者を除外した。亜集団を同定する選択基準には、年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び発症から試験薬剤投与までの時間≦2.5時間が含まれる。アウトカム不良の推定オッズ比は、プラシーボに対して、80μg/kgのrFVIIaグループにおいては、0.28まで低下していた(P=0.0309;片側試験)。表5-5を参照。

【0080】
患者の亜集団における改善された臨床的アウトカムは、臨床的エンドポイントを調査し、より明確な止血効果に相当する結果に表されている。表5-6を参照。血腫は、発症後、早い時間でほとんどが拡大しており、これらの患者に見られるより明確な止血効果は、おそらく、発症後2.5時間以内に、試験薬剤を受容した結果である。患者のrFVIIaの受容が初期であればある程、rFVIIaによる血腫拡大を限定する機会が、より大きくなると思われる。

【0081】
ここで参照される全ての特許、特許出願、及び参考文献は、それらの全てが出典明示によりここに援用される。
本発明の多くの変形例が、上述した詳細な記載に鑑み、当業者により示唆されるであろう。このような明らかな変形例は、添付の特許請求の範囲の完全な意図する範囲にある。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症を予防又は減弱させる方法において、
(i)次の特徴:(i)年齢≦70、(ii)ベースラインICH容積≦60mL、(iii)ベースラインIVH容積≦5mL、及び(iv)約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者を選択し;
(ii)第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有する第1の凝固剤の有効量を、それを必要とする前記患者に投与する
ことを含む方法。
【請求項2】
前記ICH患者が、次の表示:(i)年齢≦70、(ii)ベースラインICH容積≦60mL、(iii)ベースラインIVH容積≦5mL、及び(iv)約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の2又はそれ以上を示す請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ICH患者が、次の表示:(i)年齢≦70、(ii)ベースラインICH容積≦60mL、(iii)ベースラインIVH容積≦5mL、及び(iv)約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の3又はそれ以上を示す請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ICH患者が、次の表示:(i)年齢≦70、(ii)ベースラインICH容積≦60mL、(iii)ベースラインIVH容積≦5mL、及び(iv)約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の全てを示す請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記有効量が、少なくとも約20μg/kgの前記第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む請求項1に記載の方法。
【請求項7】
有効量が、少なくとも約80μg/kgの第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む請求項6に記載の方法。
【請求項8】
第2の凝固剤を患者に投与することをさらに含み、該第1及び第2の凝固剤の量が共同して前記予防又は減弱に有効な量である請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記第2の凝固剤が凝固因子である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記第2の凝固剤が抗線溶剤である請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記投与により、ICH患者のICH後の入院日数の低減、及びICH患者における死の危険性の低減、の一又は複数の結果が得られる請求項1に記載の方法。
【請求項12】
第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を用いた治療に対するICH患者の適合性を評価する方法であって、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者を選択することを含む方法。
【請求項13】
前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の2又はそれ以上を示す請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の3又はそれ以上を示す請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記患者が、次の特徴:年齢≦70、ベースラインICH容積≦60mL、ベースラインIVH容積≦5mL、及び約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の全てを示す請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている請求項12に記載の方法。
【請求項17】
次の特徴(i)-(iv):(i)年齢≦70、(ii)ベースラインICH容積≦60mL、(iii)ベースラインIVH容積≦5mL、及び(iv)約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示すICH患者における、脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症を予防又は減弱させる医薬品を製造するための第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む第1の凝固剤の使用。
【請求項18】
前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている請求項17に記載の使用。
【請求項19】
第2の凝固剤を患者に投与することをさらに含み、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有する凝固剤及び該第1及び第2の凝固剤の量が、共同して前記予防又は減弱に有効な量である請求項17に記載の使用。
【請求項20】
前記第2の凝固剤が凝固因子である請求項19に記載の使用。
【請求項21】
前記第2の凝固剤が抗線溶剤である請求項20に記載の方法。
【請求項22】
脳内出血(ICH)の一又は複数の合併症の予防又は減弱に使用される、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含む第1の凝固剤であって、次の特徴:(i)年齢≦70、(ii)ベースラインICH容積≦60mL、(iii)ベースラインIVH容積≦5mL、及び(iv)約2.5時間未満の発症してからの経過時間、の一又は複数を示す、選択された患者に投与される凝固剤。
【請求項23】
前記患者が、自発性又は外傷性ICHを被っている請求項22の凝固剤。
【請求項24】
第2の凝固剤をさらに含み、第VIIa因子又は第VIIa因子等価物を含有する凝固剤及び該第2の凝固剤が、共同して前記予防又は減弱に有効である請求項22に記載の凝固剤。
【請求項25】
前記第2の凝固剤が凝固因子である請求項24に記載の凝固剤。
【請求項26】
前記第2の凝固剤が抗線溶剤である請求項25に記載の凝固剤。

【公表番号】特表2011−509978(P2011−509978A)
【公表日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−542638(P2010−542638)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【国際出願番号】PCT/EP2009/050488
【国際公開番号】WO2009/090240
【国際公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【出願人】(507383862)ノボ ノルディスク ヘルス ケア アーゲー (42)
【Fターム(参考)】