説明

選択を含まない植物形質転換

本発明は、細胞を再生させて分化した組織を得る前に植物細胞を選択条件に付すことなく、得られた再生した形質転換植物および分化した形質転換植物の部分を同定する方法を提供する。特定の形態において、該植物細胞はトウモロコシ植物細胞である。関心のある特定の特性を示す植物を同定することを含む、植物を生育および取り扱う方法も提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、出典明示して本明細書の一部とみなす2006年8月31日に出願した米国仮特許出願60/841,519に基づく優先権を主張する。
【0002】
1.発明の分野
本発明は植物バイオテクノロジーの分野に関する。詳細には、本発明は、再生した植物または植物の部分を得る前に選択可能なマーカー遺伝子の使用を必要としない、トランスジェニック植物を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
2.関連技術の説明
植物細胞の安定な形質転換およびトランスジェニック植物の作製には典型的に選択工程が必要であり、そこでは植物組織を、関心のある遺伝子およびマーカー遺伝子をコードする配列または複数の配列を含むものを含む1またはそれを超える外因性核酸配列と接触した後に選択剤の存在下で選択する。かかる選択につづいて、関心のある遺伝子(GOI)を含む安定に形質転換した植物を再生および同定し得る。しかしながら、GOI、それ自体はGOIでない選択可能もしくはスクリーニング可能なマーカー遺伝子を含む形質転換植物を創製する際、GOIは典型的にはもはや必要でなく、その存在は後の分析および製品開発の努力を複雑にし得る。さらに、選択可能なマーカーを駆動するための強力なプロモーターの必要性が、目的遺伝子の発現を偏倚することが示されている(Yooら,2005)。
【0004】
マーカー遺伝子フリーのトランスジェニック植物を創製する広範囲の方法、例えば、同時形質転換、トランスポーザブルエレメント、部位特異的組換えおよび染色体内組換え、が報告されている(例えば、Darbaniら,2007)。しかしながら、これらのシステムの大部分は時間を要し、非効率的である。Goldsbrough(2001)は、トランスジェニック植物を創製することにおいて選択可能なマーカー遺伝子の使用を避け、または排除する方法を概説している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
De Vettenら(2003;および米国特許出願公開2005/0097641)は、ジャガイモのような栄養繁殖作物のマーカーフリー形質転換の方法を記載しているが、キメラ植物となっている。Palysら(国際公開WO 2004/081184)は選択を含まないトマト、レタスおよびキャベツの形質転換を記載している。FrancisおよびSpiker(2005)は、トランスジーン組み込みにおける選択偏倚を避けるための、PCRに基づくスクリーニングを用いたトランスジェニック・アラビドプシス(Arabidopsis)系統の同定を記載している。それに対して、本発明は、再生したトウモロコシ植物を得る前に視覚マーカー遺伝子のような選択剤またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子の存在を必要としない方法を介して得る、生殖細胞系形質転換したトウモロコシ植物の迅速かつ効率的な作製の方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
1の態様において、本発明は、(a)関心のある核酸配列を含むDNAセグメントで形質転換したトウモロコシ植物細胞を得;(b)該DNAセグメントの存在について第1の選択をすることなく該細胞から複数のトウモロコシ植物または分化したトウモロコシ植物の部分を再生し;ついで、(c)該複数のトウモロコシ植物または分化したトウモロコシ植物の部分から少なくとも第1のトランスジェニック・トウモロコシ植物または分化した植物の部分を同定することを含む、トランスジェニック・トウモロコシ植物を同定する方法を提供する。幾つかの形態において、該DNAセグメントは選択可能なマーカー遺伝子または視覚マーカー遺伝子を含まない。他の形態において、該植物は固形培地、液体培地または固形および液体培地の組み合わせで生育することによって再生する。詳細な形態において、該植物は該細胞とGOIとを接触させた後であって該トランスジェニック・トウモロコシ植物または分化したトランスジェニック植物の部分を同定する前に、液体培地でゆっくりと唯一生育することによって再生する。ある種の形態において、細胞をGOIと接触させた後であってトランスジェニック植物またはトランスジェニック植物の部分を同定する前の液体培地で唯一生育する細胞の形質転換頻度は、細胞をGOIと接触させた後であってトランスジェニック植物またはトランスジェニック植物の部分を同定する前に細胞を固形培地または土壌で生育させた場合に観察される形質転換頻度と比較して向上する。
【0007】
ある種の形態において、該植物細胞は未成熟トウモロコシ胚細胞である。詳細な形態において、未成熟トウモロコシ胚は約1.5mmないし約3.5mm長、または約1.9mmないし約2.3mm長である。
【0008】
ある種の形態において、該方法は、さらに工程(b)と工程(c)の間に、(1)トウモロコシ植物の個々の同一性を維持しながら増殖培地または水を含む培養チューブまたは生育プラグに複数のトウモロコシ植物または分化した植物の部分を入れ;ついで、(2)該植物または植物の部分をDNAセグメントの存在についての少なくとも第1のアッセイに付して、該アッセイからの結果に基づいてトランスジェニックとしての1またはそれを超える植物または植物の部分を同定する、ことを含む。該アッセイは、さらに、サザンハイブリダイゼーション、PCR、DNAシークエンシング、ノザンブロット、ウェスタンブロット、イムノアッセイおよび該DNAセグメントによってコードされた酵素活性についてのアッセイよりなる群から選択し得る。詳細な形態において、該アッセイは、再生した植物を土壌に設置する前に行う。他の形態において、関心のある核酸配列を欠く推定形質転換トウモロコシ植物または分化した植物の部分を同定し、ここに該アッセイは該複数のトウモロコシ植物または分化した植物の部分からの保存したサブセットの核酸を含む植物組織に対して行う。
【0009】
幾つかの形態において、該トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分は、DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後6週間以内に再生する。他の形態において、トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分は、DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後4週間以内に再生する。いまだ他の形態において、トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分は、DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後3週間以内に再生する。いまだなお他の形態において、トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分は、DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後2週間以内に再生する。さらなる形態において、トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分は、DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後1週間以内に再生する。
【0010】
ある種の形態において、DNAセグメントは、細菌媒介形質転換、エレクトロポレーション、PEG-媒介形質転換または粒子ボンバードメントによってトウモロコシ植物細胞に導入する。特定の形態において、細菌媒介形質転換は、アグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞、リゾビウム(Rhizobium)細胞、シノリゾビウム(Sinorhizobium)細胞およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)細胞よりなる群から選択される細菌細胞によって媒介する。
【0011】
方法は、さらに、第1のトウモロコシ植物細胞に由来するトウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分を、植物または植物の部分の再生後に関心のある核酸配列の存在または不存在について選択する、またはスクリーニングする培養条件に付す工程を含み得る。ある種の形態において、生育培地は固形培地である。いまだ他の形態において、生長培地は液体である。いまだ他の形態において、生育培地は土壌である。他の形態において、再生した植物または分化した植物の部分は、該DNAセグメントの存在に関して均一である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
以下の図面は本願明細書の一部を形成し、それを含めて本発明のある種の態様をさらに説明する。本発明は、本明細書に示す特定の形態の詳細な記載と組み合わせてこれらの図面の1またはそれを超えるものに参照することによってより良好に理解し得る。
【0013】
【図1】選択を含まない(「選択を含まない」)および2T形質転換プロトコール(2Tストラテジーに関するさらなる詳細については、Huangら,2004を参照されたい)の概略的な比較。
【図2】代表的な再生系のGUSを用いた組織化学分析。
【図3】植物にグリフォセート溶液を噴霧した後の「選択を含まない」アプローチを介したグリフォセート耐性事象の回復。
【図4】実施例4に記載する選択したR植物からの代表的なサザン分析データ。
【図5】R0花粉および親系統との戻し交雑を用いて確認した次世代へのGUS遺伝子の生殖系列伝達および分離。
【図6】形質転換した配列(CP4遺伝子)の安定な伝達を実証する選択した独立形質転換事象の子孫からのサザン分析データ。
【図7】トランスジェニック配列の存在についてアッセイした後の個々の植物の容易な同定を許容する生長プラグの配置。
【図8】半−固形培地−比較選択および選択なしアプローチを利用した再生プロトコールの概略図。
【図9】再生植物−増殖培地の比較を得る前の液体培地を用いた再生プロトコール。
【発明を実施するための形態】
【0014】
多くの現代の遺伝的に形質転換した植物生成物の開発には、複数のトランスジェニック特性を一緒に積み重ねて農業家に複数の付加特性を提供することが含まれる。このプロセスにおける主な妨害は、当該プロセスは典型的に選択可能なマーカー遺伝子を使用して植物細胞の形質転換を確認することに依存しているため、形質転換の間に関心のある遺伝子(GOI)と一緒に運搬されている選択可能なマーカー遺伝子の存在である。形質転換後に選択可能なマーカー遺伝子を除去するために種々の方法が利用可能であるが、これらの方法は時間がかかり、非常に効率的でない。
【0015】
本発明は、選択可能なマーカー遺伝子の使用を必要としない効率的な形質転換法の開発、ならびに選択を含まないで生成したトランスジェニック事象を進める効率的な植物ハンドリングおよびスクリーニング方法を介して前記の妨害を排除する。詳細には、本発明は、選択を用いないで植物形質転換効率およびその後の再生を改善する方法に関し、マーカーフリーのトランスジェニック事象の生成に通じる。このことは、マーカーレス形質転換(ならびに選択剤不存在下の植物のその後の再生)がマーカー除去と関連する複雑性を回避し、選択可能なマーカー遺伝子の初期発現の必要に起因する得られる形質転換事象の遺伝構造を偏倚することを回避し、および、(例えば、選択可能なマーカーをコードするものに対するGOIに対応するトランスジーンの分離に起因する)子孫発達プロセスの間の潜在的な困難をも回避するため、トランスジェニック作物植物の生産における極めて重要なブレークスルーである。方法は、選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子のさらなる発現カセットの使用の必要性も排除し、それによって形質転換ベクターのサイズを減少し、反復カセット配列、プロモーター干渉および形質転換ベクターの単純化された構造に起因するサイレンシングの機会を減少することのような関連する利点を提供する。
【0016】
選択可能なマーカーフリーのトランスジェニック植物のハイスループット作製には、形質転換体の効率的な作製が必要である。選択を含まない形質転換、より詳細には再生したシュートまたは全苗木(シュートおよび根を含む)を得る前の選択を含まない形質転換は、選択剤の不存在下で行うことが好ましい。ある種の形態において、標的植物細胞に形質転換した核酸配列は、選択可能なマーカー遺伝子を含まないものとし得る。他の形態において、選択可能なマーカー遺伝子または視覚マーカー遺伝子は存在してもよいが、それにもかかわらず、形質転換した細胞および再生する組織は、それに対して選択可能なマーカー遺伝子が耐性、抵抗性または他のアッセイ可能な表現型を示す選択剤に付さない。
【0017】
さらに、GOIの存在に関して不均一であるキメラ植物組織の存在はGOIを含む子孫植物のさらなる分析、生産および同定を複雑にするため、これらの形質転換体は好ましくはGOIの存在に関して非−キメラ(すなわち、均一)である。したがって、非−キメラトランスジェニック植物を日常的に作製するための選択を含まない続く再生工程を含む形質転換は、大きなトランスジェニック・セクターの効率的な生成およびシュート原基の迅速な生成を必要とすることが判明した。
【0018】
さらに、選択圧の不存在下では、多数の植物が再生し得、そのうちの多数または大部分がGOIを欠いている。したがって、植物を再生し、生育しおよび同定する効率的な方法には潜在的にGOIを含む。ある種の形態において、植物の再生は、候補形質転換体を土壌に移植する前に半固形培地で行う。他の形態において、培地は液体とし得る。いまだ他の形態において、半固形および液体培地の組み合わせを再生プロセスの間に利用して、植物の取扱いを促進し、スクリーニングの間の時間、費用および出費を抑え、組織培養プロセスの間に利用する異なる生育条件に移すことができる。いまだなお他の形態において、再生プロセスの間には、液体培地のみを用いる。特定の形態において、液体培地上の再生は、関心のある遺伝子と接触させた細胞の形質転換頻度を向上し得る。
【0019】
再生した形質転換植物に通じる組織培養工程の全体を通しての選択剤の存在は、特に組織を選択圧を生存させるために選択可能なマーカーのある種のレベルの発現を要求することによって、選択した組織の特性を偏倚し得る。例えば、このことは、外因性の核酸配列の複数または複雑な挿入を含むトランスジェニック事象を得ることに向けた偏倚を生じ得る。したがって、本発明は、カルス増殖、前−再生および再生のような組織培養の相の間に植物をかかる選択圧に付すことなく、推定形質転換植物の集団または系列を得る方法を提供し、その植物はGOIの有利な発現特性、および/または所定の事象において見出されるトランスジーン挿入部位(または複数の部位)の分子構造および遺伝子分離に関する有利な特徴を示し得る。詳細には、かかる有利な特徴には、例えば、顕著な比率の形質転換事象がGOIの有利なレベルの発現を示すこと、または顕著な比率の形質転換事象が低コピー数(すなわち、1-2コピー)の挿入を示すことが含まれ得る。詳細な形態において、低コピー数の形質転換事象は、oriVまたは他のベクター骨格配列が形質転換プロセスの開始時に植物細胞と最初に接触した元の形質転換構築物に存在する場合にはかかる配列を欠く。
【0020】
本発明の方法に係るかかる選択を含まない形質転換および再生は、再現可能であり有効である。ある種の形態において、例えば、外因性核酸構築物と接触した細胞を含む未成熟胚または他の外植片あたりの得られた安定して形質転換された均一な(すなわち、非−キメラ)植物の数に基づいて表される形質転換頻度(TF)は、少なくとも3%であり、胚の大きさおよび再生方法の型を含む培養条件に依存して約3%ないし約60%の範囲となり得る。特定の形態において、TFは約10%ないし約15%の範囲となり得る。あるいは、TFは、他の方法、例えばかかる未成熟胚または他の外植片から再生および生育した植物の数あたりの得られた形質転換植物の数に基づいて計算することもできる。
【0021】
ある種の形態において、選択を含まないで形質転換する作物植物は、トウモロコシ、イネ、サトウモロコシ、コムギ、ライムギ、キビ、サトウキビ、エンバク、ライコムギ、シバおよびキビ属植物のようなイネ科植物を含む、単子葉作物植物の中から選択する。特定の形態において、作物植物はトウモロコシ(maize)植物である。ある種の形態において、形質転換標的組織、例えば外植片は、胚またはシュート分裂組織のような分裂組織を含む外因性核酸配列と接触する。ある種の形態において、外植片は胚である。いまださらなる形態において、未成熟胚は未成熟トウモロコシ胚であり、約1.9ないし3.5mmの大きさまたは約1.6ないし1.8mmの大きさである。特定の形態において、未成熟トウモロコシ胚は約1.9ないし2.5mm、好ましくは約2.3mmの大きさである。他の形態において、未成熟トウモロコシ胚は約2.5ないし3.2mmの大きさ、または約2.8ないし4.0mmの大きさである。未成熟胚は、その発達段階、またはその単離のタイミング、授粉後日数(DAP)、例えば約9ないし14日DAP、または約10ないし12日DAPに基づく形質転換標的としても選択することができる。
【0022】
本発明にかかる形質転換プロセスを開始するためには、植物細胞または組織に挿入すべき遺伝子コンポーネントを最初に選択することが必要である。遺伝子コンポーネントは、本発明に係る方法を用いて植物細胞または組織に導入するいずれの核酸も含むことができる。遺伝子コンポーネントは、非−植物DNA、植物DNAまたは合成DNAを含むことができる。
【0023】
好ましい形態において、遺伝子コンポーネントは、以下の型の遺伝子コンポーネント:(a)植物細胞中で機能してRNA配列の生成を引き起こすプロモーター、(b)作物学的に有用な産物をコードするRNA配列の生成を引き起こす構造DNA配列、および(c)植物細胞中で機能してRNA配列の3'末端へのポリアデニル化ヌクレオチドの付加を引き起こす3'非−翻訳DNA配列、の少なくとも1またはそれを超えるものを含む組換え、二本鎖プラスミドまたはベクター分子のようなDNA組成物に取り込ませる。
【0024】
ベクターは、植物細胞または組織の形質転換を促進するおよび望ましい遺伝子(または複数の遺伝子)の発現を調整する多数の遺伝子コンポーネントを含み得る。1の好ましい形態において、遺伝子コンポーネントはmRNAを発現するように方向付けられ、それは1の形態においてタンパク質に翻訳され得る。二本鎖形態で存在する植物構造コード配列(遺伝子、cDNA、合成DNAまたは他のDNA)の発現には、RNAポリメラーゼ酵素によるDNAの1の鎖からのメッセンジャーRNA(mRNA)の転写につづく核内でのmRNA一次転写物のプロセシングが含まれる。このプロセシングには、ポリアデニル化ヌクレオチドをmRNAの3'末端に付加する3'非−翻訳領域が含まれる。
【0025】
望ましい遺伝子コンポーネントを含むプラスミドまたはベクターを調製する方法は当該技術分野でよく知られている。ベクターは典型的に多数の遺伝子コンポーネントからなり、それには限定されるものではないが、プロモーター、リーダー、イントロンおよびターミネーター配列のような調節要素が含まれる。調節因子は、それらが制御する配列または遺伝子(または複数の遺伝子)に対する因子の近接度に依存して、シス−またはトランス−調節要素とも呼ばれる。
【0026】
DNAからmRNAへの転写は、通常「プロモーター」と呼ばれるDNAの領域によって調節される。プロモーター領域は、RNAポリメラーゼにDNAと会合しおよび鋳型としてDNA鎖の1を用いてmRNAへの転写を開始してRNAの対応する相補鎖を生成するよう信号を与える塩基の配列を含む。
【0027】
植物細胞中で活性である多数のプロモーターが文献に記載されている。かかるプロモーターには、限定されるものではないが、アグロバクテリウム・ツメファシエンスの腫瘍誘導プラスミド上に運搬されているノパリンシンターゼ(NOS)およびオクトピンシンターゼ(OCS)プロモーター、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sおよび35Sプロモーターのようなカリモウイルス・プロモーターおよびゴマノハグサ科植物モザイクウイルス(FMV)35Sプロモーター、強化CaMV35Sプロモーター(e35S)、リブロース二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO、非常に豊富な植物ポリペプチド)からの光誘導性プロモーターが含まれる。これらのすべてのプロモーターは、植物において発現されている種々の型のDNA構築物を創製するために使用されている。
【0028】
転写活性を高めるために(米国特許第5,106,739号)、または望ましい転写活性、誘導性および組織特異性または発達特異性を結合するために、プロモーターハイブリッドも構築することができる。植物中で機能するプロモーターには、限定するものではないが、記載したような誘導性の、ウイルスの、合成、構造的である、ならびに特定の時期に調節される、空間的に調節される、および空間的−特定の時期に調節されるプロモーターが含まれる。組織で高められた、組織特異的なまたは発達的に調節される他のプロモーターは当該技術分野でも知られており、本発明の実施において有用性が想定される。
【0029】
プロモーターは、植物および植物DNAウイルスのような種々の供給源から得ることができ、それには限定されるものではないが、CaMV35SおよびFMV35SプロモーターならびにssRUBISCO遺伝子のような植物遺伝子から単離されたプロモーターが含まれる。下記するように、選択する特定のプロモーターは、十分な量の関心のある遺伝子産物の生成を生じる十分な発現を引き起こすことができなければならないことが好ましい。
【0030】
望ましい場合には、本発明のDNA構築物に用いるプロモーターは修飾してその制御特性に影響を及ぼすことができる。プロモーターは、オペレーター領域との連結、ランダムまたは制御された突然変異導入ほかによって誘導することができる。さらに、プロモーターを改変して複数の「エンハンサー配列」を含ませ、遺伝子発現の上昇を補助することができる。
【0031】
本発明のDNA構築物によって生成されるmRNAは、5'非−翻訳リーダー配列も含むことができる。この配列は、遺伝子を発現するために選択したプロモーターから誘導することができ、mRNAの翻訳を増大するように特異的に修飾することができる。5'非−翻訳領域は、ウイルスRNA、好適な真核生物遺伝子、または合成遺伝子配列からも得ることができる。かかる「エンハンサー」配列は、得られたmRNAの翻訳効率を増大または変化させるのに望ましいものとなり得る。本発明は、非−翻訳領域がプロモーター配列を伴う両方の5'非−翻訳配列から誘導された構築物に限定されない。むしろ、非−翻訳リーダー配列は、無関係なプロモーターまたは遺伝子から誘導することができる(例えば、米国特許第5,362,865号を参照されたい)。発現を高め、または遺伝子の転写もしくは翻訳に影響するように作用する他の遺伝子コンポーネントも、遺伝子コンポーネントとして想像される。
【0032】
キメラ構築物の3'非−翻訳領域は、転写ターミネーターまたは同等の機能を有するエレメント、およびRNAの3'末端にポリアデニル化ヌクレオチドの付加を引き起こすように植物中で機能するポリアデニル化シグナルを含まなければならない。好適な3'領域の例は、(1)ノパリンシンターゼ(NOS)遺伝子のようなアグロバクテリウム癌腫誘導(Ti)プラスミド遺伝子のポリアデニル化シグナルを含む3'転写、非−翻訳領域、および(2)ダイズ貯蔵タンパク質遺伝子およびリブロース−1,5−二リン酸カルボキシラーゼの小サブユニット(ssRUBISCO)遺伝子のような植物遺伝子である。好ましい3'領域の例は、エンドウからのssRUBISCO E9遺伝子からのものである(欧州特許出願0385 962)。
【0033】
典型的に、ポリアデニル化部位の数百塩基対下流に位置するDNA配列が転写を終結するように作用する。該DNA配列は、本明細書中において転写−終結遺伝子という。該領域は、転写されたメッセンジャーRNA(mRNA)の効率的なポリアデニル化に必要であり、3'非−翻訳領域として知られている。RNAポリメラーゼはポリアデニル化が起こる部位を通ってコーディングDNA配列を転写する。
【0034】
1の形態において、T-DNAは選択可能、スクリーニング可能または評点付け可能なマーカー遺伝子を含まない。別法として、移行すべきDNAは選択可能、スクリーニング可能または評点付け可能なマーカー遺伝子を含み得るが、本発明のある種の形態において、植物組織は再生が起こった後にマーカーの存在について選択またはスクリーニングするのみである。これらの遺伝子コンポーネントは、本明細書中において機能遺伝子コンポーネントともいう。それらが、形質転換植物の同定における機能を作用する生成物、または作物学的有用性の生成物を生成するからである。選択デバイスとして作用するDNAは再生可能な植物組織、特に再生した組織中で機能して、他の毒性化合物に対する抵抗性を植物組織に付与する化合物を生成する。選択可能、スクリーニング可能または評点付け可能なマーカーとして使用する関心のある遺伝子には、限定されるものではないが、uidAコードするもの、GUS、gfp、緑色蛍光タンパク質(GFP)、アントシアニン生合成関連遺伝子(C1、B-peru)、ルシフェラーゼ(LUX)およびカナマイシンのような抗生物質に対する抵抗性を示す遺伝子(Dekeyserら,1989)およびグリフォセートのような除草剤(Della-Cioppaら,1987)が含まれる。限定されるものではないが、ホスフィノトリシン、ビアラフォスおよび陽性選択機構に対する耐性を含む他の選択方法も実行し得、これらはいまだ本発明の範囲に入る。
【0035】
本発明は、特定の特性を付与するのに十分なように発現する1またはそれを超える核酸と一緒に、記載したような選択可能またはスクリーニング可能なマーカーおよび関連する調節要素を含むいずれの好適な植物形質転換プラスミドまたはベクターと一緒に使用し得る。本発明によって想像される作物学的関心のある好適な構造遺伝子の例には、限定されるものではないが、昆虫または害虫耐性、除草剤耐性の遺伝子、収量、栄養向上、環境もしくはストレス耐性、または植物生理、生長、発達、形態または植物産物(または複数の産物)におけるいずれかの望ましい変化のような品質改善の遺伝子が含まれる。
【0036】
別法として、DNAコーディング配列は、例えばアンチセンス−もしくは相互抑制効果−媒介機構を介して、内因性遺伝子の発現の標的化した阻害を引き起こす非−翻訳RNA分子をコードすることによってこれらの表現型に影響し得る(例えば、Birdら,1991を参照されたい)RNAは、望ましい内因性mRNA産物を切断するよう設計された触媒性RNA分子(例えば、リボザイム)とすることもできる(例えば、GibsonおよびShillitoe,1997)。より詳細には、植物細胞における遺伝子発現のアンチセンス調節の説明については米国特許第5,107,065号を、dsRNAの転写による植物における遺伝子抑制の説明については米国特許第6,506,559号、米国特許出願公開2002/0168707 A1および米国特許出願09/423,143(WO 98/53083参照)、09/127,735(WO 99/53050参照)および09/084,942(WO 99/61631参照)を参照されたい。これらの刊行物は、ここに出典明示して本明細書の一部とみなす。したがって、関心のある表現型または形態の変化を発現するタンパク質またはmRNAを生成するいずれの遺伝子も本発明の実施に有用である。
【0037】
本発明に含まれる方法によって導入し得る核酸の例には、例えば他の種からのDNA配列または遺伝子、または同一種に起源を有するまたは存在する遺伝子または配列でさえも含まれるが、それらは、古典的な生殖または育種技術によってよりも遺伝子工学法によって受容細胞に取り込まれる。しかしながら、外因性なる語は、形質転換する細胞に通常存在しない、あるいは、おそらくは例えば過剰発現することが望まれる通常存在するDNAセグメントまたは遺伝子もしくは複数の遺伝子に見出される形態、構造ほかで単純に存在しない遺伝子をいうことも意図される。したがって、「外因性」遺伝子またはDNAなる語は、受容細胞に同様の遺伝子がすでに存在し得るか否かにかかわりなく、受容細胞に導入されるいずれの遺伝子またはDNAセグメントをもいう。外因性DNAに含まれるDNAの型には、植物細胞にすでに存在するDNA、他の植物からのDNA、異なる生物からのDNA、または遺伝子のアンチメッセンジャーを含むDNA配列のような外部的に発生したDNA、または合成もしくは修飾版の遺伝子をコードするDNA配列が含まれ得る。
【0038】
DNAを細胞に導入する技術は当業者によく知られており、限定されるものではないが、(1)化学法;(2)マイクロインジェクション、エレクトロポレーションおよびマイクロプロジェクタイル・ボンバードメントのような物理学法;(3)ウイルスベクター;(4)レセプター媒介機構;および(5)リゾビア(Rhizobia)−媒介(例えば、アグロバクテリウム−媒介)植物形質転換法(例えば、Broothaertsら,2005)を含むカテゴリーに分けることができる。
【0039】
アグロバクテリウム−媒介形質転換については、植物形質転換ベクターまたは構築物を構築した後に、イン・ビトロ(in vitro)でDNA組成物として調製した該核酸分子をイー・コリ(E. coli)のような好適な宿主に導入し、アグロバクテリウムのような他の好適な宿主に接合させ、またはコンピーテント・アグロバクテリウムに直接的に形質転換する。これらの技術は当業者によく知られており、ダイズ、ワタおよびコムギを含む多数の植物系について記載されている(例えば、出典明示して本明細書の一部とみなす、米国特許第5,569,834号および5,159,135号ならびにWO 97/48814を参照されたい)。
【0040】
本発明は、細菌株を使用して1またはそれを超える遺伝子コンポーネントを植物に導入することを包含する。当業者であれば、かかるプロセスにおけるアグロバクテリウム−媒介形質転換法の利用を理解するであろう。TiまたはRiプラスミドを保有するアグロバクテリウム・ツメファシエンスおよびアグロバクテリウム・リゾゲネスの多数の野生型および非病原株を、植物への遺伝子移入に使用することができる。好ましくは、アグロバクテリウム宿主は、各々、癌腫形成または発根を引き起こす腫瘍遺伝子を含まない非病原化したTiおよびRiプラスミドを含み、それらはベクターとして使用し、つづいて植物に導入する関心のある遺伝子を含む。好ましい菌株には、限定されるものではないが、C58株由来のアグロバクテリウム・ツメファシエンス、DNAの植物細胞への移入を媒介するために使用するノパリン型菌株、LBA4404のようなオクトピン型菌株またはスクシンアモピン型菌株、例えばEHA101またはEHA105が含まれる。自然で植物と相互作用するシノリゾビウム、リゾビウムおよびメソリゾビウムのような他の細菌を修飾して、多数の多様な植物に対する遺伝子トランスファーを媒介することができる。これらの植物に関連する共生細菌は、非病原化したTiプラスミドおよび好適なバイナリーベクターの両方を獲得することによって遺伝子トランスファーにコンピーテントとすることができる(Broothaertsら,2005)。植物形質転換へのこれらの菌株の使用は報告されており、該方法は当業者によく知られている。
【0041】
外植片は単一の遺伝子型からまたは複数の遺伝子型の組み合わせからとすることができる。発芽し得るいずれのトウモロコシ種子も生存能力のある出発材料である。好ましい形態において、植物雑種からの優れた外植片を外植片として使用し得る。例えば、高い培養応答を有する早期生長細胞系統(高い頻度の胚形成カルス形成、生長速度、植物再生頻度ほか)は、幾つかの遺伝子型を含むハイブリッド胚を用いて創製し得る。1の形態において、交配のF1雑種または第一世代子孫はドナー植物として使用することができ、他の遺伝子型と交配することができる。当業者であれば、2の同系繁殖体を交配した場合に本明細書中では「雑種強勢」ともいうヘテローシスが起こることを知っている。かくして、本発明は、少なくとも1またはそれを超える同系繁殖体が非常に再生可能および形質転換可能であって、3元交配外植片の形質転換頻度および再生頻度が個々に同系繁殖体の頻度を超える三元交配から生じた外植片の使用を包含する。他の組織が、本発明の実施における有用性を有することも想定される。外植片には、成熟胚、未成熟胚、分裂組織、カルス組織または形質転換可能であって再生可能であるいずれの他の組織も含まれ得る。
【0042】
いずれの好適な植物培養培地も、形質転換プロセスの間に潜在的に使用することができる。かかる培地の例には、限定されるものではないが、MurashigeおよびSkoog(1962)、N6(Chuら,1975);LinsmaierおよびSkoog(1965);UchimiyaおよびMurashige(1962);Gamborg培地(1968)、D培地(Duncanら,1985)、McCown's Woody plant培地(McCownおよびLloyd,1981)、NitschおよびNitsch(1969)、ならびにSchenkおよびHildebrandt(1972)またはそれに応じて補充されたこれらの誘導体、ならびに以下に記載する膨大な培地が含まれる。当業者であれば、培地、形質転換および再生のための栄養分および生長調整物質のような培地補充物質、およびインキュベーションの間の光強度、pHおよびインキュベーション温度のような他の培養条件を関心のある特定の品種について最適化し得ることを知っている。
【0043】
シュート、またはシュートおよび根を含む小植物の再生後、例えば選択可能なマーカー遺伝子がGOIと一緒に初期の標的植物細胞に形質転換されている場合、あるいは別法として、そのGOI自体が選択可能なマーカーをコードしている場合には、選択剤を該小植物または小植物の部分に適用し得る。したがって、本発明の方法によって植物を作製した後に、有用な特徴を示す形質転換植物をアッセイそのほか同定するのを援助するために、本発明に従って選択剤を適用し得る。
【0044】
本発明は、GOIを含む形質転換植物の同定を許容する、再生した植物の効率的な取扱い方法も含む。これらの方法は、推定される形質転換植物の集団を再生および生育する方法を単純化し、合理化し、当該方法によって必要になる時間、空間および出費を減じ、プロセスを実行可能なものとする。
【0045】
1の形態において、未成熟トウモロコシ胚(IE)のような植物標的組織は、GOIを含むアグロバクテリウム株と、例えば23℃にて1-3日につづく同一の同時培養培地またはカルス増殖培地のいずれかで30℃にてさらに〜7-10日同時培養する。どの胚が「応答する」、すなわち再生して小植物を形成し得る胚形成カルスを生成するかを同定するために、胚を観察することができる。ついで、カルスと応答する胚、典型的には胚盤カルスを、カルスのさらなる生育ならびに分化および再生を許容する温度、光および栄養素の適当な培養条件を伴う第1の前再生培地、または第1の再生培地に同時培養から移す。カルスは半固形再生培地上または中に設置することができる。別法として、それは、カルスが生育および分化し得るように液体再生培地と接触した、培養プレート中のフェルトおよび/または濾紙のような支持体に設置することもできる。
【0046】
必要であれば、接種した胚は、例えば新鮮な栄養培地への移行を含んで30℃にて1-2週間暗所下で培養することができる。暗所下でのインキュベーション後に、培養物は明所および暗所の交互の時間で、例えば問題の植物種または品種に基づいて適当に、約100μEの光強度、約27℃にて16/8の明所/暗所のサイクルでの1-3週間の増殖、および植物組織培養の当業者の知識下、再生培地中で生育することができる。典型的に、植物再生の開始は、生育のカルス期が存在する場合は特に、同時培養の開始1-3週間以内に開始する。方法は、カルス増殖培地で使用したよりも低いレベルのオーキシン(または複数のオーキシン)を補充した基本植物組織培養培地の使用を含む、前再生段階も含み得る。
【0047】
半固形または液体培地上での約2-3週間の培養および再生の後に、単一の外植片、例えば未成熟胚(IE)からの再生植物は、単一の生長培地容器に移すことができる。かかる例の1つは、半固形または液体のいずれかの植物組織培養再生培地および得られた植物を、土壌中の生育プラグのような植物を寒気に曝して強くするための生育培地に移す前の約4週間の生育を含むPHYTATRAY(Sigma-Aldrich,St. Louis,MO)である。土壌への移植は時間および労働集約的プロセスであるため、移植の前にまたはPHYTATRAYに置く前に、GOIまたは関心のある他の特性の存在について個々の植物をスクリーニングすることが好ましい場合もある。選択圧の不存在下で再生する小植物の数は、カルス生育および植物再生の間に選択剤を用いた同様の実験で見出されるようりも20-50倍高い場合がある。したがって、多数の植物を取り扱う方法、例えばそれらを組織培養期から非−無菌条件下の生育に移す方法を提供する。小植物の生育および分析を許容する非−無菌条件下での園芸プラグまたは個々の培養試験管もしくは培養トレイの使用は、本発明のさらなる形態である。これらの小植物は、所定の植物とGOIを含む形質転換植物を同定するために1またはそれを超えるアッセイまたはスクリーンに付したその組織との間での簡単な相関を許容する生育植物の適当なグループ分けによって、すべての個々の植物を標識する必要なしにさらに生育することができる。
【0048】
1の形態において、PCRに基づくスクリーニングを用いて、液体生育培地、例えばPHYTATRAYを含む生育培地にそれを移す前に非−形質転換植物を排除することができる。したがって、例えば、約5000の未成熟トウモロコシ胚を細菌菌株を用いた形質転換に使用する場合、約25,000の植物を生成することができ、それには約5,000のPHYTATRAYが必要となる。10%の形質転換頻度が達成される場合、PHYTATRAY生育段階における再生植物の初期スクリーニングは約2,500の推定形質転換植物を生じ、これは500の反応胚に相当し、または土壌における生育プラグに移植される約500のPHYTATRAYを必要とする。スクリーニング法には、個々のPHYTATRAYまたはプラグのようないずれか他の生育容器からの再生植物からの組織のプールが含まれ得る。該プールは複数のプールの分析を通して集団の各メンバーの個々の分析を必要とすることなく集団の単一のメンバーを同定し得るように設計されている。1のプールする方法は、PHYTATRAYまたは同様の容器中の外植片、好ましくはIEに由来する全ての植物をグループ分けし、陰性の容器を破棄し、それによって植物の取扱いおよびアッセイに関連する労力を大幅に減少することである。一緒にプールする植物の数をさらに増加して、PCRアッセイの検出限界をさらに上昇することができよう。
【0049】
生育プラグを取扱いまたはグループ分けしてさらなるスクリーニング工程の効率を最大化し、再生植物を個々に標識する必要性を回避することができる。例えば、プラグをグループ分けし、方向付けて、マイクロタイタープレート、例えば96のプラググループで植物を生育することによって96穴プレートを使用する規格としたアッセイに対応させることができる。これにより、アッセイの結果とそれからアッセイ組織を単離した植物との間に迅速かつ正確な相関が許容される。ある種の形態において、推定形質転換再生のマーカーフリーの植物におけるGOIの存在または不存在を決定するアッセイは、PCRに基づくアッセイ、サザンハイブリダイゼーション、DNAシークエンシング、ノザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、免役アッセイおよびアグロバクテリウムとの同時培養の間に標的組織と接触したトランスジェニックDNAセグメントによってコードされる酵素活性のアッセイよりなる群から選択し得る。詳細な形態において、アッセイはPCRに基づくアッセイである。ある種の形態において、PCRに基づくアッセイまたは他のアッセイは、土壌に基づく生育培地への移植の前に、PHYTATRAYまたは同等のもので生育した再生した植物から単離した植物組織に対して行う。
【0050】
本発明の方法は、マーカーフリーのトランスジェニック植物を得る他の典型的な方法、例えばGOIおよび選択可能またはスクリーニング可能なマーカーを含む1またはそれを超えるT-DNAを用いるアグロバクテリウム−媒介アプローチ、よりもより効率的である(図1)。本発明の種々の形態によって提供される利点には以下のものが含まれる:
1.形質転換構築物がより小さく、クローニング手続を単純化する。
2.マーカーカセットに必要であった発現要素を空けたマーカー遺伝子発現かセットを排除して、反復エレメントの存在に起因する組換え安定性に関する関心を減少する。マーカーカセットからの反復調節要素の排除は、遺伝子サイレンシングの可能性も最小限化する。
3.R0植物のスクリーニング法が単純である。以前の方法では、少なくとも2の要素をGOIおよび選択可能なマーカー遺伝子についてスクリーニングしなければならなかった。本発明の方法においては、マーカーについてスクリーニングする必要はない。さらに、マーカー遺伝子インサートがGOIインサートに連結しているかを決定するためにスクリーニングする必要のあるGOIについて陽性である植物および連鎖がしばしば見出される場合があり、それは次世代で選択可能なマーカーを欠く植物を同定する能力を妨害する。それに対して、連鎖は本発明の方法における収穫ではない。
4.子孫世代における改善された効率も見出される。2−T形質転換法のような従前の方法については、F1またはR1植物の大きな集団をスクリーニングしてGOI陽性の、マーカーフリー植物を同定しなければならなかった。本発明によって作製される植物については、マーカー遺伝子の分離は必要でない。
5.選択可能なマーカー遺伝子の存在なしに最良のGOIを含有する事象のより迅速な選択が許容され、それによって、例えば選択可能なマーカー遺伝子が関心のある作物学的特性をコードする場合に、複数のGOIの効率的な積重ねが促進される。
【0051】
本発明は、初期標的外植片を外因性核酸によって接触させた後7-10週以内に、一般的に土壌に基づく培地で生育し得るマーカーフリーのトランスジェニック植物を効率的に作製する方法を提供する。本発明のハイスループット法により、選択を含まない効率的な形質転換系の開発が許容される。詳細には、再生する組織および再生した植物の取扱いの単純化により多くの工程の機械化が許容され、時間、金銭および人間工学的負荷が節約される。系は、約100の胚を用いる形質転換実験当たり約4-6の使用できるマーカーフリー形質転換事象(すなわち、単一コピー事象およびベクター骨格フリーの事象)を作製し得、したがって形質転換した植物製品の商品ルートを促進する。
【実施例】
【0052】
以下の実施例を含めて本発明の形態を説明する。本発明者らにより発見された代表的な技術を補う実施例に開示した技術が本発明の実施においてよく機能することは当業者に理解されるべきである。しかしながら、本明細書の開示に鑑みて、当業者であれば、本発明の趣旨、意図および範囲を逸脱することなく、開示した特定の形態に多くの変化を作り得ること、類似または同様の結果をいまだ得ることができることは理解しなければならない。より詳細には、化学的および生理学的に関連したある種の剤を同一または同様の結果を達成しつつ本明細書に記載した剤に置き換え得ることは明らかであろう。すべてのかかる同様の置換物および修飾は当業者に明らかであり、添付する特許請求の範囲によって定義される発明の意図、範囲および概念内に存在するとみなされる。
【実施例1】
【0053】
マーカーフリー形質転換
再生可能な未成熟トウモロコシ胚の形質転換は、例えばCaiら(米国特許出願公開20040244075)によって一般的に記載されているように、リゾビア−媒介プロトコールを介して行い得る。詳細には、修飾アグロバクテリウム−媒介方法を用いる。1.9-2.5mm、例えば約2.3mmの大きさの範囲の未成熟胚をトウモロコシの穂から選択し、ABIアグロバクテリウムC58株と同時培養してDNAの関心のある組換え構築物、例えばアクチンプロモーターの発現制御下にGUSおよびCP4EPSPSの両方を含むpMON93040を含む植物細胞への移行を媒介して、形質転換した細胞および領域の両方の視覚分析を許容し、形質転換した植物について後の再生後スクリーニングにつづくPCRベースのスクリーニングによる確認試験のための代理としてのWeathermax(商標)グリフォセート噴霧の使用を許容する。より大きな胚、例えば、約2.5mmまたは約3.2mmまでのサイズの胚も使用することができ、組織培養の前再生および再生期の前のカルス増殖を減少することによって胚当たりほとんど植物が生成されない場合には好ましい場合がある。以下に使用する培地の組成を表1に示す。アグロバクテリウムを接種した後、23℃にて1-3日につづいて同様のプレートまたはカルス増殖培地(例えば、Lynx 1316)上、30℃にてさらに7-14日の同時培養につづく、前再生培地(Lynx 1844;2232;2197)または再生培地(Lynx 1344,2282,2379ほか)上での培養のために、胚をLynx1947またはLynx1898に移した。植物の最終生長は2の方法によって達成し得る:1)各胚由来のカルスからの植物をLynx1607を含有するPhytatray(商標)に移し、または2)液体Lynx2168を含有するPhytatray(商標)に各胚由来のカルスから植物を移す。植物はそれをプラグ(International Horticultural Technologies,Hollister,CAによるQ Plug)に移行する前に約4週間Phytatray(商標)で生育させた。植物をプラグに移す一週間前に、植物をなおPhytatray(商標)の内側に維持しながら植物からの試料を採取して、GOIを含まない植物を除去するアッセイを行った。プラグしたほぼ10日後に、各植物からの試料をDNA分析用に採取し、GOI陽性植物を同定し、さらなる生育および発達のために保持した。
【0054】
【表1】

【実施例2】
【0055】
カルス増殖の間に選択圧がない場合のトランスジェニック・セクターの効率的な開発
選択剤の不存在下でのトランスジェニック植物の効率的な再生のためのシステムを開発した。外植片とアグロバクテリウムとの同時培養(Lynx1898培地(表1)で4日間)後に、選択しないでカルス増殖をLynx1316(表1)で10-14日間開始した。ついで、カルス組織の前再生をLynx1844培地(表1)上で10日間行い、つついでLynx1344(表1)上で10日間およびLynx1471(表1)で3週間再生させた。Lynx1471上の培養を除くすべての工程は選択剤を使用しないで行い;したがって、同時培養後約4週間は選択剤を使用しないでカルスの増殖および植物の再生を行った。最終工程におけるLynx1471上での再生植物の生育は、低レベルのグリフォセート(0.02mM、v/v)存在下で行って可能な最大形質転換頻度を調べた。Lynx1471培地に組織を移す前に、24の独立した胚由来のカルスおよび関連組織を、形質転換4週間後にGUS活性について染色した。4のGUS陽性シュートが同定され、したがって〜16%の形質転換効率が実証された。
【0056】
さらなる植物の生育は組織をPhytatray中のLynx1471に移すことによって行い、合計43のトランスジェニック事象を再生し、そのすべてが土壌に移す際に生存していた。形質転換およびコピー数分析を表2に示す。生存した全植物の約14%は回避したが、植物の約45%は1-2のインサートで形質転換されていた。形質転換5週間後の代表的な再生カルス系統の組織化学的分析を図2に示す。
【0057】
【表2】

【実施例3】
【0058】
さらなるトウモロコシの形質転換および再生実験、ならびに推定形質転換植物のスクリーニング
3のさらなる実験を行って、トランスジェニック・セクターの効率的な再生がいずれかの工程で選択を適用することなく日常的に可能かを確認した。使用したプラスミドは前記したpMON93040であった。Lynx1898上での1日の同時培養後に、カルス増殖をLynx1316上で10日間行い、Lynx1344上で3日間再生させ、つづいてLynx1607上で生育させた。単一のトウモロコシ穂を用いて各実験について胚を単離し、その胚は2.8−3.2mmのサイズの範囲であった。2の実験においてはOD660=1.0のアグロバクテリウム懸濁液に単離した胚を直接的に用いて胚接種を行う一方、他の実験においては1mlの液体Lynx1013培地(1リットル;MS基本塩(Phytotech):2.165g;MSビタミン(100x;Phytotech):10ml;スクロース(Phytotech):68.5g;プロライン(Fisher):0.115g;グルコース(Phytotech)36g)で最初に単離した。培地をKOHでpH5.4に調整し、濾過滅菌した。つづいて、OD660=1.0のアグロバクテリウム懸濁液を用いて注射した。実験の結果を表3に掲載する。
【0059】
【表3】

【0060】
再生サイクルの終期に、各実験からの植物をプラグに移し、95%を超える植物が移行を生存し、これはプラグを繁殖することが多数の植物を取り扱う改善された方法を提供することを示している。移植約10日後に、個々の植物からの葉パンチを組織化学的染色を用いてGUS活性についてアッセイし、GUS陽性植物をさらなる増殖および組織化学的分析のために移植した。形質転換頻度をさらに実証するため、およびプロトコールの全体効率を改善するために、PCRベースのスクリーニングの代用を開発し、それによって1% WetherMax(商標)(グリフォセート)をGUS陰性植物に加えた。さらなる5のグリフォセート耐性植物を同定した(実験6700-2から3、6698-2から1および実験6688-2から1)(代表的な植物については図3を参照されたい)。プラグ中の723の植物から合計37の植物を得、植物当たりのベースで概算5%の成功率を得た(表3)。未成熟胚を用いた選択を含まない形質転換の結果は、スクリーニングした植物の数に基づいて平均5%の形質転換頻度でもって、当該プロセスが有効であることを示した。
【0061】
選択を含まない形質転換プロトコールの再現性をさらに示すために、および、プロトコールの全体効率を改善するために、PCRベースのスクリーニングの代用を開発した。それによって、1%のWeatherMax(商標)(グリフォセート)をPhytatrayにおける選択を含まないで行う再生期の終期以後に適用した。結果を表4および表5に示す。
【0062】
【表4】

【0063】
【表5】

【0064】
結果は、関心のある遺伝子の低コピー数(1-2コピー)を有する100を含み、合計900の胚から141のグリフォセート耐性植物が生成したこと、すなわち接種した未成熟胚の数に基づいて約15%の平均を示した。
【0065】
さらなるスクリーニング(表6)は、表5に示した100の低コピー数事象のうちサザンブロッティング分析によってスクリーニングした90の事象のうちに79の独立した統合事象が存在することを示した。姉妹事象は、同一のバンドパターンを有し、同一の外植片から生じた事象である。より高い形質転換頻度は、姉妹事象を含むより高いパーセンテージのトランスジェニック事象に通じる。それにもかかわらず、頻度は非常に低く、サザン分析は、特にTFが>30%である場合に〜5%のクローン性を示すことを明らかにした(表5および6)。
【0066】
【表6】

【実施例4】
【0067】
選択圧を含まない形質転換および再生後の移行したDNAの染色体組み込みの確認
例えばDellaporta(1983)によって記載された方法を用いて、ゲノムDNAをR0植物の葉から単離した。ゲノムDNA(20-30μg)をHindIIIで消化し、0.7%(w/v)アガロースゲル上で分離し、プラスに帯電したナイロンメンブレン(Roche Molecular Biochemicals,Indianapolis,IN)に移した。メンブレンのプレハイブリダイゼーション、ハイブリダイゼーション、洗浄および検出は、製造業者の説明書に従って非放射性DIG-based system(Roche Molecular Biochemicals)を用いて行った。CP4遺伝子からのDNA配列をPCRによって標識してプローブを作製した。HindIII酵素はCP4発現カセットの5'末端付近でベクターを1箇所切断し、したがってサザンブロットによるバンドの数はCP4遺伝子コピーの数に対応する。サザン分析は表3に記載した選択した植物に対して行った(すなわち、22の低コピー事象を選択した)。R0植物の代表的なサザン分析データを図4に示す。分析は、8の(単一コピー、oriV陰性)事象が320の胚から生成した37の事象の集団から生じたことを明らかにした(表3)。次世代への生殖系列伝達をさらに確認するために、R0植物を親非−形質転換同系繁殖体トウモロコシ系統と交配した。この実験においては、3の独立した系統からのR1植物を用いた;ZM 187694(4コピー−CP4);ZM 189983(0コピー、cp-4−可能なcp4切頭事象);ZM 187738(3コピー−CP4)。発達する穂のgus発現の組織化学的分析は、1:1の比の非−発現穀粒に対する陽性な穀粒を示し、これは、トランスジーンおよび連鎖の生殖系列伝搬(図5)を示す。この結果は、選択を含まないで生成したトランスジェニック事象を用いたトランスジーンの生殖系列伝達を確認する。3のさらなる独立した事象ZM 187692、ZM 18997およびZM 18998からの子孫も、プローブとしてCP4を用いるサザンブロット分析によって分析し(図6)、3の異なるR0植物に由来するすべての子孫が予想したパターン、すなわちトランスジェニック事象の次世代への安定な伝達を示したことを示した。
【実施例5】
【0068】
効率的な植物の取扱い
複数の植物を効率よく取り扱う方法は、再生した植物を得る前に選択剤を使用しない効率的な植物形質転換系の重要なコンポーネントである。このことは、適当なコピー数およびインサートの複雑度を含む形質転換植物ならびにGOIの発現を同定するために多数の植物をスクリーニングしなければならない場合があるからである。この「取扱い」(例えば、さらなる生育のための培地または土壌への移動または移植;およびスクリーニング工程の間の同定の維持)は、個々の植物を標識することなく植物の個々の同一性を維持し、データ獲得も促進しつつ、個々のプラグまたは培養チューブを保持する容器内部に処理すべき複数の小植物を許容する。個々の植物の「園芸用プラグ」、個々の植物の標識の跳び越しにおける生育する植物の組み合わせ、および望ましい事象を同定および前進して動かすためのアッセイデータを獲得するプロトコールを開発することは、遺伝子トランスファーおよび再生の間の非選択に基づく形質転換パイプラインを促進する。要約すると、本発明は、選択、植物取扱いおよびデータ獲得を含まない効率的な植物形質転換系の開発に関する。
【0069】
関心のある遺伝子を含むアグロバクテリウム菌株と一緒に同時培養したカルスから再生した推定形質転換植物は、例えばPhytatray(商標)から生育プラグ中の土壌に移植することができる。これらのプラグの使用により、植物のサンプリングおよび分析を合理化することができ、生育空間を減少することができる。例えば、プラグは、植物からの試料のアッセイをかかるマイクロタイタープレートで行うべき場合には、96ウェルマイクロタイター・プレートのウェルに対応するパターンで配置することができる(例えば、図7)。これにより、個々の植物を標識する必要なしに関心のあるアッセイ表現型を示す植物を容易に同定することができる。
【0070】
GOIを含まない植物の早期の排除は、半固形または液体培地上、PHYTATRAY中で植物を再生する間であって生育プラグもしくは土壌に植物を移植する前にPCRベースまたは他の分子クリーニングによって行う。
【実施例6】
【0071】
形質転換植物の再生の間の培養のための半固形培地
カルスの生育、前−再生、および形質転換および組織培養プロセスの再生期の間の培養用の半固形培地は、効率的な組織操作を許容する。図8は、植物組織を選択剤の存在下で生育させた平行実験(上パネル)と比較した、選択剤を使用しないで行った形質転換実験(下パネル)を要約する。培地成分については表1および7を参照されたい。カルス増殖、前−再生および再生期は示した半固形培地で行った。第2再生期の後に、植物を生育プラグに移植し、GOIの存在についてアッセイした。
【0072】
【表7】

【実施例7】
【0073】
形質転換植物の再生の間の液体培養
形質転換および組織培養プロセスのカルス生育、前−再生および再生期の間の液体培養は、効率的な組織操作を可能にする。図9は再生前に選択剤を含まないで行った形質転換および再生実験を示す。カルス生育、前−再生および再生期は、示すように、液体、グリフォセートを含まない培地で行った。半固形培地で交互に生じ得る第2の再生期の後に、植物を生育プラグに移した。GUS組織化学アッセイは、PCRベースの、または例えば再生した植物組織におけるグリフォセート耐性の発現を検出するために、例えばグリフォセートを用いた代用スクリーニングのような他のスクリーニングと組み合わせ得る。これらの実験は、マーカー遺伝子を含まないベクター(すなわち、pMON97372)またはマーカー遺伝子を含むベクター(pMON93040)のいずれかを用いて行った。
【0074】
図9に示した実験のためのプラスミドは、cp4およびgus遺伝子を含むpMON93040であった。各穂からの胚を1mlの液体Lynx1013培地を含むペトリ皿に単離し、Lynx1947上で同時培養した。下記表8に示すような種々の処理の中で胚を分割し、選択を含む8週(処理1);PHYTATRAY中の固形培地中の生育を含む選択を含まない8週、液体培養(処理2);およびPHYTATRAY中の液体培地中の生育を含む選択を含まない8週、液体培養中の生育を含む(処理3)を含む。選択を用いない形質転換は、選択を用いて達成されるものと比較して極めて効率的であった(〜1/3X)。「液体プラグ」法の結果の要約を表8に示す。外植片の小試料を液体培養のみを用いて進める場合(すなわち、最終生長培地としてLynx2168を用いた処理番号3)、効率性はより高く、選択を用いて得られたものとほぼ同じ高さであった。液体培養は、表9から明らかなようにトランスジェニック事象のより効率的な再生を促進するようである。継代培養の排除はストレスを減少し、植物再生を促進するようである。
【0075】
【表8】

【0076】
【表9】

【実施例8】
【0077】
カルス増殖期の期間に関する形質転換効率
形質転換頻度に対するカルス増殖期の期間の役割を表10に示す。カルス期の長さの減少はTFを改善し、より迅速に植物を生成した。
【0078】
【表10】

【実施例9】
【0079】
選択を含まない迅速液体培養を用いた形質転換および再生
プロセスをさらに能率的にするために、6週間の期間で、カルス増殖工程(Lynx2133)を省略する迅速液体サイクル(RLC)プロトコールを開発した。形質転換スキーム中の工程には:前−再生(Lynx2197)および再生期(Lynx2168およびLynx1607、例えば図9および表11)が含まれる。Cp4およびgus遺伝子を含むpMON93040をこの実験に使用した。各穂からの胚を液体培地(Lynx1013)を含むペトリ皿に単離し、Lynx1947上で同時培養し、表11に示す処理の中で分けた。処理は、選択を含むまたは含まない胚のTFを比較すること、およびLynx2197増殖培地上で1または2週間のいずれかの効果を比較することを含んだ。表11に示すように、Lynx2197増殖培地上の期間の短縮はTFに影響しなかった。しかしながら、選択を含まない形質転換は、前−再生培地上での増殖の最適期間を使用した場合の選択を用いて達成されたTFに匹敵するTFを生じた。
【0080】
【表11】

【0081】
これらの実験においては、カルス増殖の期間、前−再生および再生期をさらに短縮し、選択の使用を非−選択培地上での増殖と比較した。要求される組織取扱い工程の短縮は、さらに、この方法を自動化に従順にする(表15も参照されたい)。
【0082】
前記したように得られる選択した植物の発現レベルの比較は、pinII3'転写終結シグナルについてのPCRベースのアッセイ後の発現の匹敵するレベル(表12)を明らかにした。
【0083】
【表12】

【0084】
選択を含まない迅速液体培養プロトコールの概要スケジュールを表13に掲載する。
【0085】
【表13】

【0086】
表13に記載したプロトコールに基づいて上記の結果を確認するために、pMON93040を用いた形質転換を用いて3の実験を行った。胚を表14に示した種々の処理の中で分けた。これらの実験においては、GUSアッセイを小植物に対して行い;グリフォセートは噴霧しなかった。各穂からの胚を1mlの液体Lynx1013培地を含むペトリ皿に単離し、Lynx1947上で同時培養した。結果から明らかなように、選択を用いない形質転換は、選択を用いて達成されたものと比較しいて極めて(>60%)有効である。
【0087】
【表14】

【0088】
細胞増殖の性質および選択を含まない形質転換に対するその影響をより良好に理解するために、2の異なる同時培養培地(0.5mg/l 2,4-Dを含むLynx 1947およびLynx 2232(0.2mg/l 2,4-Dを含む))を用いてさらなる実験を行った。各同時培養培地からの胚を2の群に等しく分け、前−再生培地(0.2mg/l 2,4-D-Lynx 2197)または再生培地(生長調整剤を含まない-Lynx 2282)のいずれかに移した。uidA遺伝子のみを含むマーカーレス形質転換ベクター(pMON97372)を用いて5の実験(8415-8419)を行った。実験アプローチの概要を図9に示す。プラグに植物を確立した後に、各胚由来系統からの植物を保存し、GUSについて染色して陽性系統を同定した。その後、陽性クローンからの個々の系統のさらなるGUS染色を行ってGUS陽性事象を同定した。各穂からの約1/5の胚に、対照uidA+cp4ベクター(pMON97367)およびRLCプロトコール(例えば、表13)を別々に接種し、つづいて選択を含むおよび含まない(実験8420)形質転換結果を比較した。これらの実験からの結果を表15および16に要約する。
【0089】
【表15】

【0090】
【表16】

【0091】
表15から明らかなように、Lynx2232よりも高濃度の2,4-Dを含む同時培養培地Lynx1947が優れることが判明した。これらの結果は、再生前の細胞増殖が選択を含まない有効な形質転換を得ることに寄与することを示している。さらに、同時培養後の生長調整剤を含まない培地(例えば、Lynx2282)上での外植片の再生は、植物/胚の数を相当に減少しなかった。RLCプロトコールを用いたpMON97367で形質転換した胚と形質転換頻度の比較は、選択を含まない形質転換を示した。さらに、コピー数分析はより少ないコピーのインサートを含む植物のより高いパーセンテージを示した(表17)。
【0092】
【表17】

【0093】
選択の不存在および/またはより短いT-DNAがより高い%の使用可能な事象生成の理由になると考えられる。選択処理を含まない場合、好ましい胚サイズ範囲はRLCについて使用した胚サイズ範囲(1.9-2.2mm)よりもわずかに大きい(2.0-2.3mm)。〜120事象のサザンハイブリダイゼーションによる確認(表17)は、すべての事象が独立であることを示した。このことは、低TF(〜15%)下では生成した事象の大部分が独立した事象であるという早期の知見をさらに強調し、生育プラグに移植する前の保存ストラテジーの適用がプロトコールの効率をさらに改善し得ることを示している。
【実施例10】
【0094】
非−トランスジェニック植物を排除するプラグへの移植前の植物のスクリーニングは効率を改善する
最終生育培地(Lynx1607)を含有する単一容器からの植物を一緒に保存し、組織化学GUSアッセイを用いてgusを、PCRを用いてトランスジーンの存在をアッセイした。GUSおよびPCRアッセイの間に100%の相関が得られた。この実験により陽性事象を含まない生育容器の排除が許容され、それによって植物取扱い負担が大幅に減少し、スループットが改善された。
【0095】
* * * * * *
本明細書において開示および特許請求したすべての組成物および/または方法は、本開示に鑑みれば過度な実験なしに製造および実行することができる。本発明の組成物および方法を好ましい形態の観点から記載したが、当業者であれば、本発明の概念、意図および範囲から逸脱することなく本明細書に記載した組成物および/または方法ならびに方法の工程もしくは工程の順序に変形を加えることができることは明らかであろう。より詳細には、化学的にも物理学的にも関連するある種の剤を同一もしくは同様の結果を達成しながら本明細書に記載した剤の代わりに用い得ることは明らかであろう。当業者に明らかなすべてのかかる同様の置換および修飾は、添付する特許請求の範囲によって規定される発明の意図、範囲および概念の中に入るとみなす。
【0096】
参考資料
以下に掲載する参考資料は、それらが本明細書中で利用する方法、技術および/または組成物を補足し、説明し、それらの背景を提供し、または教示する範囲において出典明示して本明細書の一部とみなす。
米国特許第5,362,865号
米国特許第5,106,739号
米国特許第5,107,065号
米国特許第5,159,135号
米国特許第5,569,834号
米国特許第6,506,559号
米国特許出願番号09/423,143
米国特許出願公開2002/0168707 A1
米国特許出願公開20040244075
米国特許出願公開2005/0097641
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国際公開 WO 09/084,942
国際公開 WO 09/127,735
国際公開 WO 2004/081184
国際公開 WO 97/48814
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国際公開 WO 99/61631
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)関心のある核酸配列を含むDNAセグメントで形質転換したトウモロコシ植物細胞を得;
(b)該DNAの存在について最初の選択なしに、該細胞から複数のトウモロコシ植物または分化したトウモロコシ植物の部分を再生させ;
(c)該複数のトウモロコシ植物または分化したトウモロコシ植物の部分から、少なくとも第1のトランスジェニック・トウモロコシ植物またはトランスジェニック分化植物の部分を同定する
ことを含むトランスジェニック・トウモロコシ植物を同定する方法。
【請求項2】
該DNAセグメントが選択可能なマーカーまたは視覚マーカー遺伝子を含まない請求項1記載の方法。
【請求項3】
該植物を固形培地、液体培地または固形および液体培地の組み合わせによって再生する請求項1記載の方法。
【請求項4】
該植物を該トランスジェニック・トウモロコシ植物またはトランスジェニック分化植物の部分を同定する前に液体培地上で唯一生育することによって再生する請求項3記載の方法。
【請求項5】
該細胞をGOIと接触させた後であって該トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物の部分の同定の前に液体培地中で唯一生育した細胞の形質転換頻度が、細胞をGOIと接触させた後であって該トランスジェニック植物またはトランスジェニック植物の部分の同定の前に、細胞を固形培地、半−固形培地、土壌、または固形培地、半−固形培地、液体培地および/または土壌で生育させた場合に観察される形質転換頻度に対して高められている請求項4記載の方法。
【請求項6】
植物細胞が未成熟トウモロコシ胚細胞である請求項1記載の方法。
【請求項7】
未成熟トウモロコシ胚が約1.5mmないし約3.5mmの長さである請求項6記載の方法。
【請求項8】
未成熟トウモロコシ胚が約1.9mmないし約2.3mmの長さである請求項7記載の方法。
【請求項9】
さらに、工程(b)と(c)との間に、
(1)複数のトウモロコシ植物または分化した植物の部分を、トウモロコシ植物の個々の同一性を維持しながら、生育培地または水を含む培養チューブまたは生育プラグに入れ;ついで
(2)該植物または植物の部分を該DNAセグメントの存在についての少なくとも第1のアッセイに付して、1またはそれを超える植物または植物の部分を当該アッセイからの結果に基づいてトランスジェニックと同定する
ことを含む請求項1記載の方法。
【請求項10】
該アッセイが、サザンハイブリダイゼーション、PCR、DNAシークエンシング、ノザンブロッティング、ウェスタンブロッティング、イムノアッセイ、および該DNAセグメントによってコードされた酵素活性についてのアッセイよりなる群から選択される請求項9記載の方法。
【請求項11】
該アッセイを再生した植物を土壌に入れる前に行う請求項9記載の方法。
【請求項12】
関心のある核酸配列を欠いている推定形質転換トウモロコシ植物または分化した植物の部分を同定し、該アッセイを該複数のトウモロコシ植物または分化した植物の部分からの保存したサブセットの核酸を含む植物組織に対して行う請求項10記載の方法。
【請求項13】
該トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分を、該DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後6週間以内に再生する請求項1記載の方法。
【請求項14】
該トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分を、該DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後4週間以内に再生する請求項1記載の方法。
【請求項15】
該トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分を、該DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後3週間以内に再生する請求項1記載の方法。
【請求項16】
該トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分を、該DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後2週間以内に再生する請求項1記載の方法。
【請求項17】
該トウモロコシ植物またはトウモロコシ植物の部分を、該DNAセグメントをトウモロコシ植物細胞に形質転換した後1週間以内に再生する請求項1記載の方法。
【請求項18】
該DNAセグメントを、細菌−媒介形質転換、エレクトロポレーション、PEG-媒介形質転換または粒子ボンバードメントによってトウモロコシ植物細胞に導入する請求項1記載の方法。
【請求項19】
該細菌−媒介形質転換が、アグロバクテリウム(Agrobacterium)細胞、リゾビウム(Rhizobium)細胞、シノリゾビウム(Sinorhizobium)細胞およびメソリゾビウム(Mesorhizobium)細胞よりなる群から選択される細菌細胞によって媒介される請求項18記載の方法。
【請求項20】
さらに、第1のトウモロコシ植物細胞に由来するトウモロコシ植物または植物の部分を、植物または植物の部分の再生後の関心のある核酸配列の存在または不存在について選択するまたはスクリーニングを許容する培養条件に付す工程を含む請求項1記載の方法。
【請求項21】
生育培地が固形培地である請求項1記載の方法。
【請求項22】
生育培地が土壌である請求項21記載の方法。
【請求項23】
該再生した植物または再生した植物の部分が、DNAセグメントの存在に関して均一である請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2010−502197(P2010−502197A)
【公表日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−526931(P2009−526931)
【出願日】平成19年8月31日(2007.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/077370
【国際公開番号】WO2008/028121
【国際公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【出願人】(501231613)モンサント テクノロジー エルエルシー (71)
【Fターム(参考)】