説明

選択的刺激システムおよび医学的状態の信号パラメータ

様々な状態、特に神経系に関連した状態または神経系によって影響を受ける状態、例えば、痛みなどの標的処置のためのデバイス、システム、および方法が提供される。このような状態の標的処置は、有害な副作用、例えば、望ましくない運動応答または影響を受けていない体の部位の望ましくない刺激が最小限で行われる。これは、状態に関連した標的の解剖学的構造を直接神経調節する一方、他の解剖学的構造の望ましくない神経調節を最小限にする、または排除することによって達成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本願は、合衆国法典第35巻第119条(e)の規定により、参照により本明細書に組み入れられる2008年10月27日出願の「Selective Stimulation System and Signal Parameters for Pain Management」という名称の米国仮特許出願第61/108,836号の優先権を主張するものである。
【0002】
(連邦政府が支援する研究開発の下でなされた本発明の権利に関する陳述)
該当なし。
【0003】
(コンパクトディスクで提出される付属の「配列表」、表、またはコンピュータプログラムのリストの参照)
該当なし。
【背景技術】
【0004】
米国では、あらゆる種類の痛みが、医師の診断を受ける最も一般的な理由であり、1年間に、全アメリカ人の半分が診察を受ける。痛みは、多くの医学的状態の主な症状であり、個人の生活の質および全般的な機能を著しく妨げる。診断は、痛みの期間、痛みの強さ、痛みの種類(鈍い痛み、妬けつく痛み、ズキズキする痛み、または刺すような痛み)、痛みの源、または体の位置によって様々な方法での痛みの特徴付けに基づいている。通常は、痛みが、治療なしで止まる、または休息または鎮痛薬の摂取などの単純な手段に応える場合は、このような痛みは、いわゆる「急性の」痛みと呼ばれる。しかし、痛みは、治りにくくなって、痛みが症状とは呼ばれなくなり、それ自体が病気である慢性痛と呼ばれる状態になることがある。
【0005】
痛みを管理するために脊髄に特定の電気エネルギを加えることが、1960年代から積極的に行われてきた。脊髄神経組織に電場を加えることにより、刺激された神経組織に関連した体の部位から伝達される特定の種類の痛みを効果的に覆い隠すことができることが知られている。このような覆い隠しは、罹患した体の部位における錯感覚、麻痺の自覚的感覚、または刺痛として知られている。このような脊髄の電気刺激は、かつては脊髄後索刺激として知られていたが、現在は、脊髄電気刺激またはSCSと呼ばれている。
【0006】
図1Aおよび図1Bは、SCSシステム10の従来の配置を示している。従来のSCSシステムは、植え込み型電源または植え込み型パルス発生器(IPG)12および植え込み型リード線14を備えている。このようなIPG12は、心臓ペースメーカに大きさおよび重量が類似し、典型的には、患者Pの臀部または腹部に植え込まれる。蛍光透視法を使用して、リード線14が、脊柱の硬膜外腔E内に植え込まれ、図1Bに例示されているように、脊髄Sの硬膜層Dに配置される。リード線14は、硬膜外針(経皮リード線の場合)によって皮膚に通されて植え込まれるか、または小規模椎弓切開術(パドル型リード線または経皮リード線の場合)によって直接外科的に植え込まれる。椎弓切開術は、椎弓板の一部を除去する神経外科処置である。椎弓切開術は、1つ以上のリード線を通すのに十分な大きさの開口を骨に形成する。
【0007】
図2は、従来のパドル型リード線16および経皮リード線18の例を例示している。パドル型リード線16は、典型的には、表面に1つ以上の電極20を備えたシリコンゴムのスラブの形態を有する。パドル型リード線16の寸法の例が図3に例示されている。経皮リード線18は、典型的には、周りに1つ以上の電極20が延在するチューブまたはロッドの形態を有する。経皮リード線18の寸法の例が図4に例示されている。
【0008】
経皮リード線18の植え込みでは、典型的には、腰部の切開(背および脚の傷みの管理の場合)または上背および頚部の切開(腕の痛みの場合)が行われる。硬膜外針は、切開部を介して硬膜外腔内に配置され、リード線は、電気的に刺激されると患者の痛む部位に渡って刺痛感覚(錯感覚)を生成する脊髄の部位に達するまで、脊髄を進められ案内される。この部位の位置を求めるために、患者が刺激の範囲についてフィードバックしている間に、リード線が動かされ、オン・オフされる。患者がこの手術に参加して、術者を脊髄の正しい部位に案内するため、この医療行為は、意識下鎮静で行われる。
【0009】
パドル型リード線16の植え込みでは、典型的には、リード線を植え込むために小規模椎弓切開術が行われる。切開は、刺激される脊髄セグメントのやや下または上で行われる。骨の開口を介して硬膜外腔に直接挿入され、パドル型リード線16が、脊髄を刺激する部位に渡って配置される。刺激の標的部位は、通常は、この医療行為の前に、経皮リード線18での脊髄刺激の試験の間に位置が決定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このようなSCSシステムは、一部の患者では効果的に痛みを緩和するが、これらのシステムには、多数の問題がある。まず、図5に例示されているように、リード線14が、電極20が脊髄の幅広い部分および関連する脊髄神経組織(境界線21によって示されている)を刺激するように、脊髄硬膜層Dに配置されている。脊髄は、連続体であり、脊髄の3つの脊髄レベルが例示されている。例示目的で、脊髄レベルは、後根DRおよび前根VRが脊髄Sにつながっている部分を示す脊髄Sの小区分である。脊髄神経Nは、後根DR、後根神経節DRG、および前神経根VRに分かれていて、それぞれが脊髄Sまで延びている。一般に、後根DRは、脊髄Sの後側に延びており、前根VRは、脊髄Sの前側に延びている。単純にするために、示されている各レベルは、一側のみの神経を例示し、正常な解剖学的構造は、脊髄の反対側にも同様の神経を有し得る。
【0011】
図6は、ある脊髄レベルにおける図5のリード線14の断面図を例示している。したがって、図示されているように、リード線14は、脊髄Sの正中線近傍の硬膜層Dに配置されている。電極20が、脊髄の広い部分を刺激する。この例では、リード線14は、一方向パドル型リード線であるため、刺激エネルギ15(境界線21によって示されている)がリード線14の一側に延びている。硬膜層Dおよび脳脊髄液CSFを透過して、後根に対してシナプスの後側である脊髄Sの後側の範囲内に延在する脊柱の線維を活性化するために、大きなエネルギ15が使用される。そして、全方向リード線の場合には、標的から離れる方向のエネルギの喪失によってさらに多くのエネルギが必要であろう。脊髄感覚神経組織、または後神経根からの神経組織が、痛みの信号を伝達する。したがって、このような刺激は、患者の痛みの感覚を覆い隠す刺痛感覚(錯感覚)の生成によって、痛みの信号の脳への伝達を遮断すること意図している。しかし、過度の刺痛は、望ましくないと見なされ得る。さらに、エネルギ15はまた、典型的には、脊髄Sの前側を透過し、前角を刺激し、最終的に脊髄Sの前側の範囲内に延在する前根を刺激する。脊髄運動神経組織、または前神経根からの神経組織が、筋肉/運動制御信号を伝達する。したがって、リード線14による電気刺激は、脊髄感覚神経組織に加えて、運動神経の望ましくない刺激をもたらす場合が多い。その結果が、望ましくない筋収縮である。
【0012】
電極がいくつかのレベルに跨り、電極が内側から脊髄神経根の入口を刺激するため、生成された刺激エネルギ15は、2つ以上のレベルにおける2種類以上の神経組織を刺激する、またはこれらの神経組織に加えられる。さらに、これらおよび他の従来の非特異的刺激システムも、脊髄および意図する刺激標的の先の他の神経組織に刺激エネルギを加える。本明細書で使用される非特異的刺激は、刺激エネルギが、神経および脊髄を含む複数の脊髄レベルに全体的かつ無差別に供給されるという事実を意味する。これは、電極のサブセットのみが刺激に使用されるプログラム可能な電極構造を使用する場合も当てはまる。実際、たとえ硬膜外電極が1つのレベルのみを単純に刺激するために大きさが縮小されたとしても、電極は、加えられるエネルギの範囲内で非特異的かつ無差別に(すなわち、多くまたはすべての神経線維および他の組織に)刺激エネルギを加えることになる。
【0013】
したがって、刺激エネルギのより正確かつ効果的な送達を可能にする改善された刺激システム、デバイス、および方法が要望されている。これらの目的の少なくとも一部は、本発明によって達成される。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、様々な状態、特に神経系に関連した状態または神経系によって影響を受ける状態の標的処置のためのデバイス、システム、および方法を提供する。このような状態の例には、例えば、痛み、かゆみ、パーキンソン病、多発性硬化症、脱髄性(demylenating)運動障害、脊髄傷害、喘息、慢性心疾患、肥満、および発作(特に急性虚血)が含まれる。本発明は、有害な副作用、例えば、望ましくない運動応答または影響を受けていない体の部位の望ましくない刺激が最小限で、このような状態の標的処置を提供する。これは、状態に関連した標的の解剖学的構造を直接神経調節する一方、他の解剖学的構造の望ましくない神経調節を最小限にする、または排除することによって達成される。殆どの実施形態では、神経調節は刺激を含むが、神経調節が、標的部位に電気または医薬品を送達することによって神経活動を変更または調節する様々な形態を含み得ることを理解できよう。単なる例示目的として、本明細書の説明は、刺激および刺激パラメータについて行われるが、このような説明は、そのように限定されるものではなく、任意の形態の神経調節および神経調節パラメータを含み得ることを理解できよう。
【0015】
典型的には、本システムおよびデバイスは、中枢神経系の神経組織の一部を刺激するために使用され、中枢神経系は、脊髄、および脊髄神経として知られている脊髄に沿った神経対を含む。この脊髄神経は、脊椎椎間孔で融合して末梢神経系の一部である混合神経を形成する後根および前根の両方を含む。少なくとも1つの後根神経節(DRG)は、混合点の前に各後根に沿って位置している。したがって、中枢神経系の神経組織は、後根神経節を含み、後根神経節の先の神経系の部分、例えば、末梢神経系の混合神経を含まないと見なされる。典型的には、本発明のシステムおよびデバイスは、1つ以上の後根神経節、後根、後根進入部、またはそれらの一部を刺激する一方で、他の組織、例えば、周囲または近傍組織、前根、および処置の標的ではない体の部位に関連した解剖学的構造の部分の望ましくない刺激を最小限にする、または排除するために使用される。しかし、他の組織の刺激も企図されることを理解できよう。
【0016】
本発明の第1の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激するシステムが提供される。一部の実施形態では、このシステムは、少なくとも1つの電極を有するリード線であって、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、このリード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、リード線がそのように配置されたときに標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギを有する刺激信号をリード線に供給する、パルス発生器と、を備えている。一部の実施形態では、標的後根の少なくとも一部は、後根神経節を含む。
【0017】
一部の実施形態では、刺激信号は、約4mA以下の電流振幅を有する。任意選択で、電流振幅は、約800μA以下とすることができる。一部の実施形態では、少なくとも1つの電極の少なくとも1つは、約6mm以下の平均電極表面積を有する。任意選択で、平均電極表面積が、約4mm以下である。
【0018】
一部の実施形態では、このシステムは、少なくとも1つの電極を有する第2のリード線をさらに備え、この第2のリード線は、その電極の少なくとも1つが第2の標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されており、第2のリード線は、刺激信号を第2のリード線に供給する植え込み型パルス発生器に接続可能であり、第2のリード線に対する刺激信号が、第2のリード線がそのように配置されたときに第2の標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギを有する。一部の実施形態では、標的後根と第2の標的後根は、異なる脊髄レベルにある。任意選択で、リード線に対する刺激信号と第2のリード線に対する刺激信号が異なる。
【0019】
本発明の第2の態様では、中枢神経系の標的神経組織を刺激するためのシステムが提供される。一部の実施形態では、このシステムは、少なくとも1つの電極を有するリード線であって、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、標的神経組織を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、このリード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、100μA未満の電流振幅を有する刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備えている。典型的には、標的脊髄神経組織は、後根神経節を含む。
【0020】
本発明の第3の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムが提供され、このシステムは、少なくとも1つの電極を有するリード線を備え、このリード線は、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、刺激信号が供給されたときに標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されている。このシステムは、リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器も含み、このパルス発生器は、約100nJ/パルス未満のエネルギを有する刺激信号を供給する。一部の実施形態では、刺激信号は、約50nJ/パルス未満のエネルギを有する。任意選択で、刺激信号は、約10nJ/パルス未満のエネルギを有することができる。典型的には、標的後根の少なくとも一部は、後根神経節を含む。
【0021】
本発明の第4の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムが提供され、このシステムは、少なくとも1つの電極を有するリード線を備え、このリード線は、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、刺激信号が供給されたときに標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されている。このシステムは、リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器も備え、このパルス発生器は、4mA未満の電流振幅を有する刺激信号を供給する。
【0022】
本発明の第5の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムが提供され、このシステムは、少なくとも1つの電極を有するリード線を備え、このリード線は、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に配置可能であるように構成されている。このシステムは、リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器も備え、このパルス発生器は、少なくとも1つの信号パラメータにより標的後根の少なくとも一部を選択的に刺激する少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給する。一部の実施形態では、少なくとも1つの信号パラメータは、電流振幅を含む。これらの実施形態では、電流振幅は、約4mA以下とすることができる。同様に、一部の実施形態では、この少なくとも1つの信号パラメータは、パルス幅を含み、このパルス幅は、500μs未満である。典型的には、標的後根の少なくとも一部は、後根神経節を含む。
【0023】
本発明の第6の態様では、少なくとも1つの電極を有するリード線を備えた標的後根神経節を刺激するためのシステムが提供され、このリード線は、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、標的後根神経節の表面または近傍に配置可能であるように構成されている。このシステムは、リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器も備え、このパルス発生器は、標的後根神経節への近接により標的後根神経節を選択的に刺激する少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給する。
【0024】
本発明の第7の態様では、中枢神経系の標的神経組織を刺激するためのシステムにおいて、少なくとも1つの電極を有するリード線であって、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、標的神経組織を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、このリード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、50μA以下の増分で調整可能な電流振幅を有する刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システムが提供される。一部の実施形態では、電流振幅は、25μA以下の増分で調整可能である。
【0025】
本発明の別の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に位置するように配置するステップと、リード線がそのように配置されたときに標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギレベルで少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法が提供される。一部の実施形態では、エネルギを供給するステップは、約4mA以下の電流振幅を有する刺激信号を供給することを含む。任意選択で、電流振幅は、約1.0mA以下である。一部の実施形態では、リード線を配置するステップは、硬膜外アプローチを用いてリード線を前進させることを含む。これらの実施形態では、リード線を配置するステップは、順行性アプローチまたは逆行性アプローチを用いてリード線を前進させることを含む。リード線は、脊柱の外側から経椎間孔アプローチ(transforamenal approach)を用いてリード線を前進させることによって配置できることを理解できよう。典型的には、後根の少なくとも一部が、後根神経節を含む。一部の実施形態では、平均電極表面積は、約4mm以下である。
【0026】
一部の実施形態では、この方法は、少なくとも1つの電極を有する第2のリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、第2の標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に位置するように配置するステップと、第2のリード線がそのように配置されたときに第2の標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギレベルで第2のリード線の少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、をさらに含む。一部の実施形態では、標的後根と第2の標的後根は、異なる脊髄レベルにある。同様に、一部の実施形態では、リード線のエネルギレベルと第2のリード線のエネルギレベルは異なる。
【0027】
本発明の別の態様では、硬膜外腔内の標的脊髄神経組織を刺激する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが標的脊髄神経組織を刺激できるように配置するステップと、100μA未満である電流振幅を有する刺激信号で少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法が提供される。
【0028】
本発明の別の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置するステップと、約100nJ/パルス未満のエネルギを有する刺激信号で少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法が提供される。
【0029】
本発明の別の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置するステップと、4mA未満の電流振幅を有する刺激信号で少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法が提供される。
【0030】
本発明の別の態様では、標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に位置するように配置するステップと、少なくとも1つの信号パラメータにより標的後根の少なくとも一部を選択的に刺激する刺激信号で少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法が提供される。
【0031】
本発明のさらに別の態様では、中枢神経系の標的神経組織を刺激する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが標的神経組織を刺激できるように配置するステップと、50μA以下の増分で調整可能な電流振幅を有する刺激信号で少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法が提供される。
【0032】
例えば、患者の解剖学的構造、痛みのプロフィール、痛みの知覚、およびリード線の配置などのばらつきにより、信号パラメータの設定が、患者によって、および同じ患者の体内でのリード線によって異なり得る。信号パラメータには、例えば、電圧、電流振幅、パルス幅、および繰り返し数が含まれる。本発明の刺激システムの一部の実施形態では、供給される電圧は、約0〜7Vの範囲である。一部の実施形態では、供給される電流振幅は、約4mA未満、具体的には約0.5〜2.0mAの範囲、より具体的には0.5〜1.0mA、0.1〜1.0mA、または0.01〜1.0mAの範囲である。さらに、一部の実施形態では、供給されるパルス幅は、約2000μs未満、具体的には約1000μs未満、より具体的には約500μs未満、より具体的には10〜120μsである。そして、一部の実施形態では、繰り返し数は、約2〜120Hzの範囲であり、最大200Hzまたは最大1000Hzである。
【0033】
典型的には、刺激パラメータは、満足のいく臨床結果に至るまで調整される。したがって、患者ごとにどのDRGに近接して配置されるどのリード線に対するDRG刺激の閾値と前根刺激の閾値との間にも刺激パラメータ値の組み合わせの包絡線が存在する。患者を正常に処置するために使用できる特定の組み合わせまたは可能な組み合わせは、典型的には、生体内で術中に決定され、生体外で術後に決定され、様々な因子によって決まる。1つの因子は、リード線の配置である。望ましい電極がDRGに近ければ近いほど、DRGを刺激するのに必要なエネルギが少なくなる。他の因子には、例えば、電極の選択、患者の解剖学的構造、処置されている痛みのプロフィール、および患者による痛みの心理的な知覚などが含まれる。時間が経過すると、患者を処置するどのリード線のパラメータ値も、リード線の配置の変化、インピーダンスの変化、または他の身体的もしくは心理的な変化によって変動し得る。いずれの場合も、パラメータ値の包絡線は、患者の痛みの状態を処置するために少なくとも一桁大きいエネルギ供給を必要とする従来の刺激システムの包絡線よりも非常に低い。
【0034】
パラメータ値が低い範囲であることから、制御の粒度が、従来の刺激システムと比較するとより小さい。例えば、従来の刺激システムの電流は、典型的には、0.1mAの増分で調整可能である。本発明の一部の実施形態では、この増分は、患者を処置するために使用できる電流振幅値の全範囲よりも大きい。したがって、信号パラメータ値を循環して状態を処置する適切な値の組み合わせを決定するために、より小さい増分が必要である。一部の実施形態では、本発明のシステムは、特に、例えば、2mAの電流振幅が使用される場合は、約25μAの分解能での電流振幅の制御を実現するが、約10μA、5μA、または1μAなどのより小さい増分も使用できることを理解できよう。他の実施形態では、電流振幅の制御は、特に、例えば、2mA以上の電流振幅が使用される場合は、約50μAの分解能で提供される。このような分解能の変化は、1mAなどの他のレベルでも起こり得ることを理解できよう。同様に、従来の刺激システムの電圧は、典型的には100mVの増分で調整可能である。対照的に、本発明の一部の実施形態は、50mVの分解能で電圧の制御を提供する。同様に、本発明の一部の実施形態は、10μsの分解能でパルス幅の制御を提供する。したがって、本発明は、パラメータ値の低い範囲により、刺激パラメータの高い粒度の制御を提供することを理解できよう。
【0035】
場合によっては、さらに低いレベルのエネルギを使用しても、本発明の刺激システムを用いて患者を正常に処置することができることを理解できよう。配置されるリード線が標的DRGに近ければ近いほど、標的DRGを選択的に刺激するのに必要となり得るエネルギのレベルが低い。したがって、信号パラメータ値は、制御の粒度が相応に高い本明細書に記載された信号パラメータ値よりも低いであろう。
【0036】
このようなエネルギの減少により、いくつか利点が得られるが、特に電極のサイズの縮小が可能となる。一部の実施形態では、平均電極表面積は、約1〜6mm、具体的には約2〜4mm、より具体的には3.93mmであり、従来の脊髄刺激装置は、典型的には、格段に広い平均電極表面積、例えば、ある種のリード線の場合は7.5mm、従来のパドル型リード線の場合は12.7mmの表面積を有する。同様に、一部の実施形態では、平均電極長さは、1.25mmであり、従来の脊髄刺激装置は、典型的には、3mmの平均電極長さを有する。このような電極サイズの縮小により、電極をDRGの近傍により近接して配置することが可能となり、標的神経組織、特にDRGの直接かつ選択的な刺激を提供するためにIPGが様々な制御および性能パラメータを有することが可能となる。加えて、一部の実施形態では、1つ以上の電極の全体寸法および電極の間隔は、刺激標的の全体寸法又は大きさに一致またはほぼ一致するように選択される。
【0037】
状態の有効な処置は、状態に関連した標的の解剖学的構造を直接刺激すると共に、他の解剖学的構造の望ましくない刺激を最小限にする、または排除することによって達成することができる。このような状態が、1つの真皮節に限定される、または主に1つの真皮節に影響を与える場合は、本発明により、1つの真皮節または真皮節内の部位の刺激が可能となる(真皮節下(subdermatomal)刺激とも呼ばれる)。
【0038】
本発明の一態様では、処置が1つの真皮節内で実質的に行われる、脊髄神経組織に関連した状態を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが硬膜外腔内の脊髄神経組織の近傍に位置するように配置するステップと、脊髄神経組織を刺激して1つの真皮節内に処置効果を与え、1つの真皮節外の体の部位が実質的に影響を受けないままであるように、少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む。一部の実施形態では、少なくとも1つの電極にエネルギを供給するステップが、脊髄神経組織を刺激して1つの真皮節内の特定の体の部位内に処置効果を与え、特定の体の部位外の体の部位が実質的に影響を受けないままであるように、少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給することを含む。典型的には、脊髄神経組織は後根神経節を含み、処置効果は錯感覚を含む。一部の実施形態では、特定の体の部位は足を含む。
【0039】
本発明の別の態様では、患者の状態が、後根神経節の一部に関連し、前記後根神経節の他の部分には実質的に関連しない、患者の状態を処置する方法が提供される。一部の実施形態では、この方法は、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが後根神経節の一部の近傍に位置するように配置するステップと、状態に影響を与えるが他の部分を実質的に刺激しないように後根神経節の一部を刺激するように、少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給するステップと、を含む。一部の実施形態では、この状態は痛みを含む。このような実施形態では、状態に影響を与えることが、知覚可能な運動応答を引き起こさずに痛みを緩和することを含む。
【0040】
一部の実施形態では、この状態は、真皮節内のある位置で患者によって感じられ、後根神経節の他の部分は、真皮節内の他の位置に関連する。刺激信号は、約4mA以下の電流振幅を有することができることを理解できよう。任意選択で、刺激信号は、1mA以下の電流振幅を有することができる。典型的には、リード線を配置するステップは、硬膜外アプローチを用いて、リード線を前進させることを含むが、これに限定されるものではない。
【0041】
本発明の別の態様では、真皮節下刺激を提供する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を、その少なくとも1つの電極の少なくとも1つが真皮節内の後根神経節の近傍に位置するように配置するステップと、真皮節の真皮節下部位の状態に影響を与えるように後根神経節を刺激するように少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給するステップと、を含む、方法が提供される。
【0042】
本発明の別の態様では、後根神経節の一部を刺激するためのシステムであって、後根神経節の一部が、真皮節内の特定の部位に関連している、システムが提供される。一部の実施形態では、このシステムは、少なくとも1つの電極を有するリード線であって、少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、後根神経節の一部を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、リード線に接続可能なパルス発生器であって、後根神経節の一部を刺激して真皮節の特定の部位内に影響を与える少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備えている。
【0043】
一部の実施形態では、少なくとも1つの電極の少なくとも1つと刺激信号の組み合わせが、後根神経節の一部の刺激を可能にする形状を有するが後根神経節の他の部分を実質的に含まない電場を生成する。一部の実施形態では、少なくとも1つの電極の少なくとも1つは、各電極のおおよその中心間が0.250インチ(6.35mm)離隔した2つの電極を備えている。一部の実施形態では、刺激信号は、約4mA以下の電流振幅を有する。任意選択で、刺激信号は、1mA以下の電流振幅を有することができる。一部の実施形態では、刺激信号は、約100nJ/パルス未満のエネルギを有する。
【0044】
本発明の別の態様では、患者の体内で真皮節下刺激を行うためのシステムにおいて、少なくとも1つの電極を有するリード線であって、その少なくとも1つの電極が、真皮節に関連した後根神経節の近傍に配置可能であるように構成されている、リード線と、このリード線に接続可能なパルス発生器と、を備える、システムが提供される。一部の実施形態では、パルス発生器は、後根神経節を刺激して真皮節の第1の体の部位内に第1の影響を与える第1の電場を生成するために、少なくとも1つの電極の少なくとも1つに第1の刺激信号を供給し、パルス発生器は、後根神経節を刺激して真皮節の第2の体の部位内に第2の影響を与える第2の電場を生成するために、少なくとも1つの電極の少なくとも1つに第2の刺激信号を供給する。場合によっては、第1の刺激信号と第2の刺激信号は、異なる刺激パラメータを有する。一部の実施形態では、第1の刺激信号を受け取る少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、第2の刺激信号を受け取る少なくとも1つの電極の少なくとも1つとは異なる。
【0045】
一部の実施形態では、第1の電場と第2の電場は、異なる形状を有する。同様に、第1の電場と第2の電場が異なる大きさを有することができる。一部の実施形態では、第1の影響は痛みの緩和を含む。一部の実施形態では、第1の体の部位は、患者の足に沿って延在し、第2の体の部位は、患者の背に沿って延在する。
【0046】
本発明のさらに別の実施形態では、患者の体内に真皮節下刺激を供給する方法であって、少なくとも1つの電極を有するリード線を真皮節に関連した後根神経節の近傍に配置するステップと、後根神経節を刺激して真皮節の第1の体の部位内に影響を与える少なくとも1つの電極に刺激信号を供給するステップと、刺激信号の少なくとも1つの電極への供給が、後根神経節が刺激されて真皮節の第2の体の部位内に第2の影響を与えるように、リード線を後根神経節に沿って再配置するステップと、を含む、方法が提供される。一部の実施形態では、第1の影響は、痛みの緩和を含む。一部の実施形態では、第1の体の部位は、患者の足に沿って延在し、第2の体の部位は、患者の背に沿って延在する。
【0047】
本発明の他の目的および利点は、添付の図面を参照しながら、以下の詳細な説明を読めば明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1A】従来技術を例示している。
【図1B】従来技術を例示している。
【図2】従来技術を例示している。
【図3】従来技術を例示している。
【図4】従来技術を例示している。
【図5】従来技術を例示している。
【図6】従来技術を例示している。
【図7】本発明の刺激システムの実施形態を例示している。
【図8】本発明の植え込み型パルス発生器の実施形態の斜視図である。
【図9】ハウジングの一部が除去されて内部の構成要素が示されている図8のIPGを例示している。
【図10】IPGの一実施形態の電子回路の一部であるプリント回路基板の簡易ブロック図である。
【図11】テレメトリを用いてIPGと通信する少なくとも1つの外部プログラミングデバイスを例示している。
【図12】変更することができる刺激信号の可能なパラメータの例を例示している。
【図13】IPGの電子回路の可能な構成要素を例示する簡易ブロック図である。
【図14】臨床プログラマなどの外部プログラマの可能な構成要素を例示する簡易ブロック図である。
【図15A】臨床プログラマの実施形態の拡大斜視図である。
【図15B】臨床プログラマのスクリーンショットの実施形態を例示している。
【図15C】臨床プログラマのスクリーンショットの実施形態を例示している。
【図16】患者プログラマなどの別の外部プログラマの可能な構成要素を例示する簡易ブロック図である。
【図17】患者の解剖学的構造内の図7の実施形態のリード線の配置の例を例示している。
【図18】標的DRGの近傍に配置された刺激システムのリード線を示す個々の脊髄レベルの断面図を例示している。
【図19A】本発明の刺激信号を表すトレースの実施形態を例示している。
【図19B】生体組織を刺激する複合インピーダンスに対する電圧応答を示す対応トレースの実施形態を例示している。
【図20A】従来の脊髄刺激装置の刺激信号の例を表すトレースの実施形態を例示している。
【図20B】生体組織を刺激する複合インピーダンスに対する電圧応答を示す対応トレースの実施形態を例示している。
【図21】DRGを選択的に標的にする刺激信号パラメータを示すデータを例示し、前根が刺激されるエネルギ閾値よりも低い、DRGが刺激されるエネルギ閾値が存在する。
【図22】真皮節の配置、または患者に沿った真皮節の「地図」を例示している。
【図23】個々のDRGの選択的な刺激によって影響を受け得る体の部位に関連した様々な脊髄レベルのDRGを模式的に例示している。
【図24A】下半身の真皮節を含む患者の後側を例示し、DRGの全体的な領域の略図である。
【図24B】下半身の真皮節を含む患者の前側を例示している。
【図25】本発明の態様によるDRGの選択的な刺激を模式的に例示している。
【図26A】真皮節内の特定の部位に影響を与えるためにDRGの一部を刺激するリード線の斜視図を例示している。
【図26B】真皮節内の特定の部位に影響を与えるためにDRGの一部を刺激するリード線の斜視図を例示している。
【図26C】真皮節内の特定の部位に影響を与えるためにDRGの一部を刺激するリード線の斜視図を例示している。
【図26D】真皮節内の特定の部位に影響を与えるためにDRGの一部を刺激するリード線の斜視図を例示している。
【図27】患者番号1からの臨床データの表である。
【図28】患者番号2からの臨床データの表である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
一部の実施形態では、標的DRGは、表面に少なくとも1つの電極を備えたリード線で刺激される。リード線は、少なくとも1つの電極が標的DRGの表面、近傍、または周囲に配置されるように患者の解剖学的構造を介して進められる。リード線は、電極(複数可)が他の解剖学的構造の望ましくない刺激を最小限にする、または排除することができる大きさおよび構造である。このような構造は、本明細書に記載される信号パラメータを含む様々なデザインの特徴を有することができる。
【0050】
図7は、本発明の植え込み型刺激システム100の実施形態を例示している。システム100は、植え込み型パルス発生器(IPG)102およびこのIPGに接続可能な少なくとも1つのリード線104を備えている。好ましい実施形態では、システム100は、図示されているように4本のリード線104を備えているが、1本、2本、3本、4本、5本、6本、7本、8本、最大58本、又はそれ以上を含む任意の数のリード線104を使用することができる。各リード線104は、少なくとも1つの電極106を備えている。好ましい実施形態では、各リード線104は、図示されているように4個の電極106を備えているが、1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、又はそれ以上を含む任意の数の電極106を備えることができる。各電極は、オフ、陽極、または陰極として構成することができる。一部の実施形態では、各リード線および電極は、たとえ個々に構成することができたとしても、どんな時でも、ソフトウエアは、常に1本のリード線だけが刺激されるようにする。他の実施形態では、一度に2本以上のリード線が刺激される、またはリード線による刺激が交互もしくは重複して行われる。
【0051】
再び図7を参照すると、IPG102は、電子回路107、および充電式バッテリまたは非充電式バッテリなどのバッテリである電源110を備えているため、プログラムされて電源がオンにされると、IPG102が、外部ハードウエアと独立して動作することができる。一部の実施形態では、電子回路107は、プロセッサ109、およびメモリ108に保存されたプログラム可能な刺激情報を有する。
【0052】
図8は、本発明のIPG102の実施形態の斜視図である。この図では、電子回路107および電源110は、ハウジング105(「ケース」または「缶」とも呼ばれる)内に収容されている。別法では、誘導結合、RF、または光活性化などによって電力をIPG102に供給する外部装置内などのハウジング105の外部に電源を配置できることを理解できよう。一部の実施形態では、IPG102は、容積が約32cc以下、厚みが約1.2cm以下、または重量が約30g以下である。他の実施形態では、IPG102は、約0.2cc、5cc、10cc、15cc、20cc、30cc、40cc、50cc、60cc、または70cc以下の容積を有することを理解できよう。IPG102は、卵形、円形、角が丸い正方形、または角が丸い長方形を含む様々な形状を有することができる。一部の実施形態では、IPG102は、高さが約61mm、幅が約48mm、そして厚みが約11mmである。
【0053】
一部の実施形態では、IPG102のハウジング105は導電性である。このような実施形態では、ハウジング105は、詳細に後述されるように電極として機能することができる。少なくとも1つの電極106は、リード線104をIPG102のコネクタ111に接続することによって電子回路107に電気的に接続されている。この実施形態では、各リード線104は、各リード線104を電気的に接続するためにIPG102の別個のポート115に挿入可能である。
【0054】
図9は、図8のIPG102内の構成要素を例示している。この実施形態では、内部構成要素には、電源110、電子回路107、アンテナ132、およびリード線コネクタ111が含まれる。この実施形態では、電子回路107は、回路を狭い空間内に配置できるように3つのプリント回路基板を備えている。図10は、RF基板136、MCU基板138、および電極基板140を含むこれらの基板の簡易ブロック図である。MCU基板は、水晶発信器、タイマ、直列およびアナログI/Oなどのサポート機能と組み合わせられたCPUを含む単一集積回路上の小型コンピュータであるマイクロコントローラユニット(MCU)を備えている。NORフラッシュまたはOTP ROMの形態などのプログラムメモリは、チップおよびRAMに含めても良い。電子回路107は、他の構成および構成要素を含み得ることを理解できよう。
【0055】
図11を参照すると、IPG102は、経皮電磁リンク、RFリンク、または送信コイルなどのテレメトリを使用して、少なくとも1つの外部プログラミングデバイスから望ましい刺激パルスを生成するようにオン・オフされ、プログラムされている。一部の実施形態では、MICS規格に適合したRFリンクが使用される。この規格は、植え込み型医療デバイス用の402〜405MHzの周波数スペクトルを割り当てる。他の実施形態では、RFリンクは、400MHz以上の周波数を利用する。なお他の実施形態では、RFリンクは、2.45GHzの周波数を利用する。一部の実施形態では、テレメトリは、外部プログラマ内の磁石または外部プログラマに結合された磁石によって起動される。磁石は、植え込まれたものの真上または植え込まれたものの適切な範囲内の皮膚に配置されると、植え込まれたIPG102内の磁気センサを作動させる。加えて、一部の実施形態では、IPG102は、外部プログラマによって試みられるすべてのチャンネルの通信を傍受する。一部の実施形態では、このような傍受は、所定の間隔、例えば、10分ごとに行われ、このような間隔はプログラム可能とすることができる。これは、IPGが磁石の検出に失敗した時のバックアップ通信リンクである。IPGが外部プログラマの存在を検出すると、IPGは、典型的には、30秒以内、15秒以内、又はそれ以下以内にプログラマに応答する。
【0056】
一部の実施形態では、少なくとも1つの外部プログラミングデバイスは、臨床プログラマ200および患者プログラマ300を含む。臨床プログラマ200は、臨床医または検査者によって決定されるIPG102の刺激情報をプログラムするために使用される。刺激情報には、電圧、電流、パルス幅、繰り返し数、およびバースト率などの信号パラメータが含まれる。図12は、変動し得る刺激信号の可能なパラメータの例を例示している。本発明の実施形態を使用して、最適な治療効果をもたらす振幅、電流、パルス幅、および繰り返し数(周波数とも呼ばれる)を決定することができる。振幅が変動する一定の電流にしても良いし、電流が変動する一定の振幅にしても良いことを理解できよう。
【0057】
図11を再び参照すると、患者プログラマ300により、患者が、臨床医によってプリセットされた範囲内でIPG102の刺激設定を調節することができる。また、患者プログラマ300により、患者が、必要に応じて刺激をオフにすることもできる。臨床プログラマ200および患者プログラマ300は、電源コンセントに差し込むことができる、または内部バッテリから電力が供給される携帯型ハンドヘルドデバイスである。バッテリは、典型的には、電源および電源コンセントを使用して再充電可能である。一部の実施形態では、プログラマ200、300は、IPG102との通信を開始するために内部磁石を備えている。患者プログラマ300は、使いやすいようにデザインされ、刺激を制御するためにIPG102と双方向通信する。植え込み型刺激システム100、臨床プログラマ200、および患者プログラマ300がまとまって、詳細に後述されるように、各患者に対して専用の処置を行うように動作するシステム1000を形成する。
【0058】
図8〜図11の実施形態は、例示目的であり、構成要素を変更することができることを理解できよう。例えば、図13は、IPGの電子回路の可能な構成要素を例示する簡易ブロック図である。この実施形態では、電子回路418は、図示されているように、バッテリ430、パルス発生器432、制御装置434、スイッチング装置436、テレメトリ回路438、およびメモリ439を含むとして示されている。
【0059】
バッテリ430は、電子回路418の様々な他の構成要素に電力を供給するために使用することができる。さらに、バッテリ430は、刺激パルスを生成するために使用することができる。したがって、バッテリは、パルス発生器432、制御装置434、スイッチング装置436、テレメトリ回路438、およびメモリ439に接続することができる。電圧レギュレータ(不図示)が、電子回路418のこのような構成要素に電力を供給するのに有用な1つ以上の所定の電圧を生成するために、バッテリ430によって供給される電圧を段階的に上昇または低下させることができる。コンデンサ、抵抗、およびトランジスタなどの追加の電子回路素子を、当技術分野で周知のように、刺激パルスを生成するために使用することができる。
【0060】
パルス発生器432は、スイッチング装置436を介してリード線(複数可)104の電極106に結合することができる。パルス発生器432は、単一チャンネルまたは多チャンネルパルス発生器とすることができ、単一電極の組み合わせによって所定の時間に単一刺激パルスまたは複数の刺激パルスを送達する、または複数の電極の組み合わせによって所定の時間に複数の刺激パルスを送達することができる。一実施形態では、パルス発生器432およびスイッチング装置136は、刺激パルスを複数のチャンネルに時間インターリーブ方式(time-interleaved basis)で送達するように構成されており、この場合、スイッチング装置436は、異なる時間における異なる電極の組み合わせに渡ってパルス発生器432の出力を時分割多重化して、複数のプログラムまたはチャンネルの刺激エネルギを患者に送達する。
【0061】
制御装置434は、刺激パルスを生成するためにパルス発生器432を制御することができ、刺激エネルギを選択された電極に結合するためにスイッチング装置436を制御することができる。より具体的には、制御装置434は、メモリ439内に保存された1つ以上の刺激パラメータのセットによって指定されたパラメータに従って刺激エネルギを送達するためにパルス発生器432およびスイッチング装置436を制御することができる。指定され得る例示的なプログラム可能なパラメータには、刺激波形(刺激信号としても知られている)のパルス振幅、パルス幅、およびパルスレート(繰り返し数または周波数としても知られている)が含まれる。加えて、制御装置434は、パルス発生器432からの刺激エネルギの送達のための異なる電極構成を選択するためにスイッチング装置436を制御することができる。言い換えれば、指定され得る追加のプログラム可能なパラメータには、どのリード線(複数可)104のどの電極106が刺激エネルギ送達のために使用されるか、および選択された電極106の極性が含まれる。各電極106は、陽極(正の極性を有する)、陰極(負の極性を有する)、または中性電極(この場合、電極は刺激エネルギの送達に使用されない、すなわち非活動状態)として接続することができる。パラメータのセットは、患者に送達される刺激治療を規定するため、刺激パラメータのセットと呼ぶことができる。ある刺激パラメータのセットは、患者の体のある位置における状態を処置するのに有用であり得、第2の刺激パラメータのセットは、第2の位置における状態を処置するのに有用であり得る。個々のリード線上の各電極は、同じ信号パラメータを有する信号を供給することができ、または、リード線上の1つ以上の電極は、異なる信号パラメータを有する信号を供給することができることを理解できよう。同様に、個々の電極は、時間によって異なる信号パラメータを有する信号を供給することができる。
【0062】
制御装置434には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向き集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、状態遷移機械、または同様のディスクリートおよび/または集積論理回路が含まれ得る。スイッチング装置436には、スイッチングアレイ、スイッチングマトリックス、マルチプレクサ、および/または刺激エネルギを選択された電極に選択的に結合するのに適した任意の他の種類のスイッチング装置が含まれ得る。メモリ439には、限定されるものではないが、RAM、ROM、NVRAM、EEPROM、またはフラッシュメモリが含まれ得る。例が本明細書に記載されている様々なプログラムおよび/または刺激パラメータのセットは、メモリ439に保存することができる。
【0063】
望ましい刺激パラメータのセットが決定されると、IPG102を、最適なパラメータのセットでプログラムすることができる。次いで、リード線104上の適切な電極(複数可)106が、決定された刺激信号で神経組織を刺激する。
【0064】
図14は、臨床プログラマ200などの外部プログラマの可能な構成要素を例示する簡易ブロック図である。図14を参照すると、臨床プログラマ200は、電源440、ユーザインターフェイス442、制御装置444、入出力(I/O)回路446、テレメトリ回路448、およびメモリ449を含むとして示されている。
【0065】
バッテリを含み得る電源440は、外部プログラマの様々な他の構成要素に電力を供給するために使用することができる。したがって、電源440は、ユーザインターフェイス442、制御装置444、入出力(I/O)回路446、テレメトリ回路448、およびメモリ449に接続することができる。電圧レギュレータ(不図示)は、外部プログラマのこのような構成要素に電力を供給するのに有用な1つ以上の所定の電圧を生成するために、バッテリまたは外部電源から供給される電圧を段階的に上昇または低下させることができる。
【0066】
臨床医または他の操作者は、様々な機能を果たすために臨床プログラマ200を利用することができる。例えば、一部の実施形態では、臨床プログラマ200は、次のために使用することができる:
・すべての刺激をオフにする。
・最大4本のリード線の刺激をオンにし、リード線のインピーダンスを測定する。
・各リード線に対して体の部位、電極の構成、および刺激設定を割り当てる。
・患者およびリード線の識別情報、臨床医の氏名、診療所の名称、連絡先、および臨床医の注記を入力する。
・各リード線に対する患者の刺激応答を評価するためにリアルタイムで試験を行う。
・患者管理治療を可能にし、各リード線に対する患者管理治療設定を構成する。
・IPG102についての識別、診断、および履歴の情報を取得する。
・IPG102デバイスに、構成された治療設定ならびに患者および臨床医の情報をプログラムする。
【0067】
臨床医は、様々な刺激パラメータのセットを試験するため、ユーザのフィードバックを入力するため、および好ましいまたは最適なプログラムを選択するためなどのためにユーザインターフェイス442を介して制御装置444と対話することができる。ユーザインターフェイス442には、ディスプレイ、キーパッド、タッチスクリーン、および1つ以上の周辺ポインティングデバイス(例えば、マウス、タッチパッド、ジョイスティック、トラックボールなど)などが含まれ得る。制御装置444は、臨床医との対話を容易にするためにユーザインターフェイス442によってグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)を提供することができる。制御装置444には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向き集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、状態遷移機械、または同様のディスクリートおよび/または集積論理回路が含まれ得る。入出力回路446には、無線通信用のトランシーバ、有線通信用および/または取り外し可能な電子メディアによる通信用のポート、および/または取り外し可能な磁気または光学メディアによる通信に適したドライブが含まれ得る。テレメトリ回路448は、上記したテレメトリ回路、または別個であるが同様のテレメトリ回路とすることができる。
【0068】
図15Aは、臨床プログラマ200の実施形態の拡大斜視図である。この実施形態では、臨床プログラマ200は、個人用デジタル補助装置(PDA)などのハンドヘルドコンピュータ202、アンテナ204、接地平面206、およびテレメトリコントローラ208または「基地局」(マイクロ)とRF基板を備えている。図示されているように、ハンドヘルドコンピュータ202は、タッチ・スクリーン・ユーザ・インターフェイス210および入出力(I/O)ポート212を備えている。この実施形態では、これらの構成要素は、図示されているように、クレードル214およびフェースプレート216を含むハウジング内に配置されている。
【0069】
再び図14を参照すると、制御装置444は、試験された電極のパラメータ(例えば、組み合わせ)および刺激信号のパラメータに関する情報を収集し、1つ以上の好ましい刺激パラメータのセットの識別を容易にするべく、臨床医または制御装置444が後で検索及び検討するためにメモリ449にこれらの情報を保存することができる。制御装置444は、様々な刺激パラメータのセットが試験されるようにテレメトリ回路448を介してIPG102に命令を送信することができる。例えば、制御装置444は、IPG102に対して制御装置444または臨床医によって作成された刺激パラメータのセットの試験を実施可能にすることができる。
【0070】
メモリ449は、制御装置444によって実行されると、プログラマ422に本明細書に記載された少なくとも一部の機能を果たさせるプログラム命令を含むことができる。例えば、制御装置444は、様々な刺激パラメータのセットを試験し、1つ以上の好ましい刺激パラメータのセットを選択するためのプロトコルを指定するプログラム命令を実行することができる。メモリ449は、患者の特定の状態を処置するために決定された1つ以上の刺激パラメータのセットを患者についての情報と共に保存することもできる。メモリ449には、あらゆる揮発性、不揮発性、固定、取り外し可能、磁気、光学、または電子メディア、例えば、RAM、ROM、CD−ROM、ハードディスク、取り外し可能な磁気ディスク、メモリカードまたはスティック、NVRAM、EEPROM、およびフラッシュメモリなどが含まれ得る。
【0071】
一部の実施形態では、臨床プログラマ200は、治療設定を見てプログラムするため、および診断情報を取得するために使用される「作業スペース」を備えている。プログラムされた設定および診断情報の記録は、各セッション後に作成される。一部の実施形態では、「患者」、「リード線」、「治療」、および「刺激装置」の4つの作業スペースが設けられている。図15Bは、臨床プログラマ200の例示的なスクリーンショット250を示している。4つの作業スペースは、スクリーンショット250の上部付近の作業スペースタブ252として示されている。
【0072】
一部の実施形態では、患者作業スペースは、患者の識別情報を入力するため;IPGデバイスの情報を入力するため;臨床医の氏名、診療所の名称、および連絡先を入力するため;および臨床医の注記を入力するために使用される。一部の実施形態では、患者作業スペースは、「患者情報」、「臨床医」、および「注記」の3つのタブに分割されている。患者情報タブでは、患者の氏名、生年月日、患者の住所、患者のID番号、刺激装置のシリアル番号、植え込みの日付、リード線のシリアル番号などの1つ以上の情報を入力することができる。臨床タブでは、臨床医の氏名、診療所の名称、診療所の住所、診療所の電話番号、診療所のEメールアドレスなどの1つ以上の情報を入力することができる。注記タブでは、自由に文書を入力できるテキストフィールドが設けられている。任意選択で、テキストフィールドに既に入力された以前のどの情報も、テキストフィールドが更新されると削除される。
【0073】
一部の実施形態では、リード線作業スペースは、最大4本のリード線を作動させる(オンにする)ため;電極の構成を調整するため;インピーダンスを測定するため;刺激を開始するために公称値を設定するため;トライアルマッピングを行うため;刺激されるべき特定の体の部位を確認し、指定するために使用される。各リード線に対して1つのリード線タブが存在し、各リード線タブは、刺激を受ける対応する体の部位の名前を付けることができる。それぞれの体の部位は、本明細書に記載されているように調整された刺激を有することができる。図15Bは、4つの体の部位のタブ254を例示し、それぞれのタブは、右足、左踝、左足、および腰を示している。上述したように、一部の実施形態では、各リード線は4つの電極を有する。電極のそれぞれを、正または負のパルスでプログラムするか、または中性(neutral)(オフ)としてプログラムすることができる。各リード線に対して、パルスパラメータもプログラム可能である。典型的には、パルスパラメータには、パルス振幅(μA)、パルス幅(μs)、パルス繰り返し数(Hz)、および許容インピーダンス範囲(Ω)が含まれる。許容インピーダンス範囲は、電圧と振幅の組み合わせに依存する。一部の実施形態では、各パルスパラメータは、ドロップ・ダウン・テーブルから選択される。パラメータの選択は、解剖学的標的を含む様々な因子によって決まり、以下のセクションに記載される。
【0074】
典型的には、各リード線は、最大許容電荷を有する。各リード線によって送られる最大許容電荷の計算値を、その関連するリード線タブに表示することができる。この値は、指定されたパルスパラメータの設定およびリード線の電極構成に基づいて計算される。したがって、振幅およびパルス幅の選択の組み合わせは、典型的には、最大許容電荷によって制限される。したがって、特定の振幅設定では、特定のパルス幅設定のみを選択可能とすることができる。同様に、特定のパルス幅設定では、特定の振幅設定のみを選択可能とすることができる。
【0075】
一部の実施形態では、インピーダンス測定ボタンが含まれる。インピーダンス測定ボタンは、リード線のインピーダンスを測定するために作動される。作動されると、インピーダンス値を表示することができる。
【0076】
一部の実施形態では、臨床プログラマ200は、トライアルマッピングに使用される。トライアルマッピングにより、臨床医は、各リード線の標的または体の部位に対する患者の刺激応答をリアルタイムで試験し、確認することができる。典型的には、トライアルマッピングは、比較的低い設定に設定された信号パラメータの使用で開始する。パラメータ設定は、「上向き」矢印ボタンを押すことによって増加し、「下向き」矢印ボタンを押すことによって減少する。図15Cは、パラメータ設定を変更するときの選択可能なステップ・サイズ・ボタン262を示すスクリーンショット260の実施形態を例示している。後のセクションで記載されるように、システム100のパラメータ値が従来の刺激システムよりも小さいため、制御の粒度またはステップサイズも小さい。したがって、症状の処置に適切な値の組み合わせを決定するべく、信号パラメータ値を循環するために、より細かい増分が必要である。しかし、臨床医は、パラメータ値の範囲を狭めるために様々なステップサイズを望むであろう。例えば、臨床医は、パラメータ値を大きく変化させるための大きいステップサイズ(>>>)で開始し、次いで小さいステップサイズ(>>)に移動し、望ましいパラメータ値に近づいたら、さらに小さいステップサイズ(>)に移動する。望ましい応答が達成されるまで、それぞれの使用可能なリード線のパルスパラメータ設定を調整する。選択可能なステップ・サイズ・ボタン262に一致する実際のステップサイズは、プログラマ200に事前にプログラムされている。臨床医が異なる範囲のパラメータ値をスクロールすると、ステップサイズが、その範囲に適した粒度に自動的に替わることを理解できよう。次いで、この設定が、IPGのプログラミングに備えてメモリに保存される。次いで、トライアルマッピング作業が、作動されたそれぞれの体の部位に対して繰り返される。
【0077】
一部の実施形態では、治療作業スペースは、各リード線の患者管理治療を可能または無効にするため;および患者が調整のためにアクセス可能な最大電流振幅を設定するために使用される。「ON」が選択されると、患者管理治療が可能となる。これにより、患者が、それらの患者プログラマを用いて治療設定を調整することができる。「OFF」が選択されると、患者の患者管理治療へのアクセスが無効となり妨げられる。最大刺激振幅設定を設定するときに、臨床医は、典型的には、患者が各リード線に対して設定することができる臨床設定振幅、例えば、最大4.0mAなどから最大刺激振幅を入力する。
【0078】
一部の実施形態では、刺激装置作業スペースは、IPGについての識別、診断、および履歴情報を取得するため;IPGを治療設定でプログラムするため;ならびに患者および臨床医の情報をプログラムするために使用される。一部の実施形態では、刺激装置作業スペースは、「情報」および「プログラム」の2つのタブを有する。「情報」タブが選択されると、表示されるスクリーンは、読み取り専用であり、神経刺激装置のシリアル番号(IPGのシリアル番号を表示する);NSファームウエアのバージョン(刺激装置ファームウエアのバージョンを表示する);リード線のシリアル番号(各リード線のシリアル番号を表示する);神経刺激装置クロック情報(IPGが特定の治療セッションについて最初に問い合わせられたときの時間を表示する);および植え込みバッテリの情報の1つ以上を表示することができる。
【0079】
「プログラム」タブは、リード線設定および患者管理治療設定を含む構成された設定でIPGをプログラムするために使用される。一部の実施形態では、患者および刺激装置の識別情報が、「プログラム」タブに表示される。このような情報には、患者の氏名、患者の生年月日、刺激装置のシリアル番号、および刺激装置治療の一覧表が含まれ得る。刺激治療の一覧表は、「刺激設定」とも呼ばれ、構成された刺激治療設定を表示する。一部の実施形態では、パラメータの名称を列記する第1の列;臨床プログラマに維持されている値を列記する第2の列;およびIPGにおけるプログラムされた値を列記する第3の列の3つの列が存在する。任意選択で、刺激治療パラメータは、最後の刺激治療がIPGにプログラムされているため、変更されたパラメータを示すために赤色の文字などで強調することができる。データは、患者、リード線、および治療の順で提示することができる。垂直スクロールバーを使用して、異なるパラメータを表示することができる。
【0080】
加えて、一部の実施形態では、「プログラム刺激装置」ボタンは、「プログラム」タブに設けられる。「プログラム刺激装置」ボタンは、プログラムされた値をIPGに転送するために使用される。「プログラム刺激装置」ボタンの下の表は、構成された刺激治療設定の一覧を表示する。IPGのプログラムを望むか否かを確認するために確認ウインドウを表示することができる。「Yes」ボタンが選択されると、表示された設定がプログラムされる。「No」ボタンが選択されると、IPGのプログラミングがキャンセルされる。
【0081】
典型的には、患者によって使用される患者プログラマ300は、患者が刺激設定を微調整できるようにするために患者のIPGに特異的に結合される。同様に、患者プログラマ300は、患者に2つ以上のIPGが植え込まれている場合は、患者の体内の複数のIPGに結合することができる。
【0082】
図16は、患者プログラマ300などの外部プログラマの可能な構成要素を例示する簡易ブロック図である。図16を参照すると、患者プログラマ300は、電源450、ユーザインターフェイス452、制御装置454、入出力(I/O)回路456、テレメトリ回路458、およびメモリ459を含むとして示されている。バッテリを含み得る電源450は、患者プログラマ300の様々な他の構成要素に電力を供給するために使用することができる。したがって、電源450は、ユーザインターフェイス452、制御装置454、入出力(I/O)回路456、テレメトリ回路458、およびメモリ459に接続することができる。電圧レギュレータ(不図示)は、患者プログラマ300のこのような構成要素に電力を供給するのに有用な1つ以上の所定の電圧を生成するために、バッテリまたは外部電源から供給される電圧を段階的に上昇または低下させることができる。
【0083】
患者は、刺激治療の送達を選択するため、変更するため、または他の方法で制御するために、ユーザインターフェイス452を介して制御装置454と対話することができる。例えば、患者は、メモリ459に保存されている様々な刺激パラメータのセットの中から選択することができる。加えて、または別法では、患者は、そのときに起きている症状に治療を合わせるために、振幅などの特定の刺激信号パラメータを増減することができる。ユーザインターフェイス442には、ディスプレイ、キーパッド、タッチスクリーン、および1つ以上の周辺ポインティングデバイス(例えば、マウス、タッチパッド、ジョイスティック、トラックボールなど)などが含まれ得る。制御装置454は、患者との対話を容易にするためにユーザインターフェイス452によってグラフィカル・ユーザ・インターフェイス(GUI)を提供することができる。制御装置454には、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、特定用途向き集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、状態遷移機械、または同様のディスクリートおよび/または集積論理回路が含まれ得る。入出力回路446には、無線通信用のトランシーバ、有線通信用および/または取り外し可能な電子メディアによる通信用のポート、および/または取り外し可能な磁気または光学メディアによる通信に適したドライブが含まれ得る。
【0084】
一部の実施形態では、メモリ459は、患者の体内に植え込まれたIPG102を用いた患者への刺激治療の送達のために患者によって選択される利用可能な刺激パラメータのセットに関連したデータを保存することができる。一部の実施形態では、制御装置454は、使用法情報を記録し、メモリ459に使用法情報を保存することができる。メモリ459は、制御装置454によって実行されると、患者プログラマ426に、患者プログラマ300に属する機能を果たさせるプログラム命令を含み得る。メモリ459には、あらゆる揮発性、不揮発性、固定、取り外し可能、磁気、光学、または電子メディア、例えば、RAM、ROM、CD−ROM、ハードディスク、取り外し可能な磁気ディスク、メモリカードまたはスティック、NVRAM、EEPROM、およびフラッシュメモリなどが含まれ得る。IPGのメモリは、例えば、インピーダンスデータ、電流、電圧、時刻、治療変更の時間、ビルトイン回路の試験、バッテリデータを記録することができる。外部プログラマに接続されると、プログラマは、IPGが記録したデータを記録することができる。次いで、このデータを、IPGを再プログラムするために使用することができる。
【0085】
テレメトリ回路458が、制御装置とIPG102との通信を可能にし、入出力回路456が、制御装置454と臨床医外部プログラマ200との通信を可能にすることができる。制御装置454は、ユーザインターフェイス452を介して患者によって作成された刺激パラメータセットに対する選択または調整を受け取ることができ、テレメトリ回路458を介してIPG102にこの選択および調整を送信することができる。患者プログラマ300が、メモリ459の刺激パラメータセットに関連したデータを保存する場合は、制御装置454が、臨床医または内科医によるプログラミング中に入出力回路456を介して臨床医プログラマ200からこのようなデータを受け取ることができる。さらに、患者プログラマ300は、テレメトリ回路458を介して刺激パラメータセットに関連したデータをIPG102に送信することができる。
【0086】
患者は、様々な機能を果たすために患者プログラマ300を利用することができる。例えば、一部の実施形態では、患者プログラマ300は、次のために使用することができる:
・所望に応じて、すべての刺激をオフにする。
・刺激されるそれぞれの体の部位に対する刺激をオンまたはオフにする。
・それぞれの体の部位に対する刺激の量を調整する。
・刺激装置のシリアル番号、各リード線のシリアル番号、およびIPGが最後にプログラムされたときの日付を含むIPGの識別情報を見る。
・患者の氏名(任意選択で、研究ID番号)を見る。
・リード線の配置の日付を見る。
・臨床医の氏名、診療所の名称、および連絡先を見る。
【0087】
典型的には、患者プログラマ300は、刺激設定の調整およびプログラマの設定の2つの主な機能を表示するメインメニューを備えている。刺激設定の調整により、使用者が、IPGとの通信を設定し、刺激設定を調整することができる。プログラマの設定により、患者が、患者プログラマの日付および時刻を設定し、IPGおよび患者プログラマの制御についての情報を見ることができる。メインメニューは、デバイスを識別するある種の基本情報を有する場合が多い。加えて、臨床医、診療所、および診療所の電話番号が、典型的には、プログラマのシリアル番号、ソフトウエアのバージョン、おおび基地局ファームウエアのバージョンと共に表示される。さらに、メインメニューは、IPGの接続状態、バッテリの充電レベル、および時間を含み得る。
【0088】
一部の実施形態では、患者は、IPGに、患者プログラマ300内の磁石または患者プログラマ300に結合された磁石を使用して患者プログラマ300からの通信をチェックさせることができる。患者は、一定時間、例えば、5秒以上の間、IPGの近傍、例えば、6フィート(約1.83m)以内に磁石を配置することができる。
【0089】
4本のリード線が植え込まれ、使用のために臨床医によってプログラムされている場合、患者は、最大4つの体の部位の刺激治療をオンまたはオフにすることができ、臨床プログラマによって許容される範囲でこれらのいずれかの部位が受け取る刺激の量を調整することができる。このような機能は、植え込まれて使用のためにプログラムされたあらゆる数のリード線にも適用されることを理解できよう。刺激治療をオンまたはオフにするために、患者プログラマ300が、刺激するためにリード線が配置されている1〜4の指定された体の部位の名称を表示することができ、患者が、各部位の刺激を個別にオンまたはオフする。
【0090】
一部の実施形態では、刺激がオンであるときに、患者が、体の部位への刺激の量を調整することができる。例えば、調整されるべき特定の体の部位の修正タブが選択されると、患者が、「Down」ボタンを押して刺激レベルを下げる、または「Up」ボタンを押して刺激レベルを上げることができる。一部の実施形態では、「Up」ボタンと「Down」ボタンとの間にある刺激レベルの表示は、患者が選択された体の部位の刺激レベルを変更すると上昇または低下する。さらに、刺激レベルの表示は、現在の刺激レベルを示すこともでき、この刺激レベルが、臨床医によって設定された最大値と比較される。次いで、調整を保存することができ、患者は、引き続いて他の特定の体の部位への刺激を調整することができる。
【0091】
上記の植え込み型刺激システム100は、患者の体内の様々な解剖学的位置を刺激するために使用することができる。好ましい実施形態では、システム100は、1つ以上の後根、特に1つ以上の後根神経節を刺激するために使用される。図17は、図7の実施形態のリード線104の患者の解剖学的構造内への配置を例示している。この例では、各リード線104は、脊柱S内を個々に順行方向に進められている。各リード線104は、標的DRGに向かって案内可能な遠位端部を有し、この遠位端部は、その電極106が標的DRGに近接するように配置可能である。特に、各リード線104は、その電極106が、後のセクションで詳細が後述される位置、電極の構成、電極の形状、電場の形状、刺激信号のパラメータ、またはこれらの組み合わせによってDRGを選択的に刺激できるように配置可能である。図17は、4つのDRGの刺激を例示し、各DRGは、1つのリード線104によって刺激される。これら4つのDRGは、3つのレベルに位置し、2つのDRGが同じレベルで刺激される。任意の数のDRGおよび任意の組み合わせのDRGを本発明の刺激システム100で刺激できることを理解できよう。また、1つのDRGを刺激するために2つ以上のリード線104を配置することができ、かつ2つ以上のDRGを刺激するために1つのリード線104を配置することができることを理解できよう。
【0092】
図18は、標的DRGの表面、近傍、または周囲に配置された刺激システム100のリード線104を示す1つの脊髄レベルの断面図の例を例示している。リード線104は、適切な脊髄レベルまで脊髄Sに沿って進められてから、標的DRGに向かって横方向に進められている。場合によっては、リード線104は、椎間孔を完全または部分的に通って進められる。電極106の少なくとも1つ、一部、またはすべてが、DRGの表面、周囲、または近傍に配置される。好ましい実施形態では、リード線104は、図18に例示されているように、電極106が前根VRの反対側のDRGの表面に沿って位置するように配置される。前根VRの反対側のDRGの表面は、前根VRの一部の正反対であり得るが、これに限定されるものではないこと理解できよう。このような表面は、前根VRから一定距離離隔したDRGの様々な部位に沿って存在し得る。
【0093】
場合によっては、このような電極106は、点線110によって示された刺激領域を形成することができ、DRGは、刺激領域内で刺激エネルギを受け取るが、前根VRは、刺激領域外であるため刺激エネルギを受け取らない。したがって、リード線104のこのような配置は、前根VRの刺激の可能性を距離によって低減するのに役立ち得る。しかし、電極106は、DRGに対して様々な位置に配置することができ、例えば、刺激プロフィールの形状および刺激信号のパラメータなどの距離以外の因子によって、または距離に加えてこれらの因子によってDRGを選択的に刺激することができることを理解できよう。また、標的DRGに、逆行性硬膜外アプローチなどの他の方法によって到達できることを理解できよう。リード線104を脊柱に向かって周辺方向から前進させ、任意選択で椎間孔を通し、または部分的に通し、少なくとも一部の電極106がDRGの表面、周囲、または近傍に配置されるように植え込んで、同様に、DRGに、脊柱の外部から到達することができる。
【0094】
リード線104をこのようにDRGに近接して配置するために、リード線104は、解剖学的構造内を案内するのに適した大きさおよび構造である。このような案内には、脊髄Sに沿ってDRGに向かって急カーブに通し、任意選択で椎間孔に通す非外傷性の硬膜外前進が含まれ、この場合、リード線104の遠位端部が、DRGなどの小さい標的に近接して配置されるように構成されている。結果として、リード線104は、従来の脊髄刺激装置リード線よりも著しく小さく、より容易に案内可能である。リード線をDRGなどの標的に送達するためのリード線および送達システムの例が、2009年1月14日出願のFred I.Linkerらによる「STIMULATION LEAD, DELIVERY SYSTEM AND METHOD OF USE」という名称の米国特許仮出願第61/144,690号に記載されており、この特許出願は、あらゆる点で、参照により本明細書に組み入れられる。
【0095】
加えて、電極106を標的組織に近接して配置することにより、刺激に必要なエネルギが減少する。このエネルギの減少により、いくつか利点が得られるが、特に電極のサイズの縮小が可能となる。一部の実施形態では、平均電極表面積は、約1〜6mm、具体的には約2〜4mm、より具体的には3.93mmであり、従来の脊髄刺激装置は、典型的には、格段に広い平均電極表面積、例えば、ある種のリード線の場合は7.5mm、従来のパドル型リード線の場合は12.7mmの表面積を有する。同様に、一部の実施形態では、平均電極長さは、1.25mmであり、従来の脊髄刺激装置は、典型的には、3mmの平均電極長さを有する。このような電極サイズの縮小により、電極をDRGの近傍により近接して配置することが可能となり、標的神経組織、特にDRGの直接かつ選択的な刺激を提供するためにIPGが様々な制御および性能パラメータを有することが可能となる。加えて、一部の実施形態では、1つ以上の電極の全体寸法および電極の間隔は、刺激標的の全体寸法又は大きさに一致またはほぼ一致するように選択される。標的神経組織が後根神経節の相当な部分である実施形態では、リード線に沿って整列される1つまたは複数の電極は、電極の大部分が後根神経節の全体寸法に沿って延在するような大きさおよび間隔である。例えば、約8mmの長さを有する後根神経節を刺激するために4つの電極がリード線に存在する場合は、リード線の電極部分の全長は、約6〜10mmとすべきである。図18は、リード線上の4つすべての電極が、図示されているようにDRGの横寸法の範囲内にある一例を例示している。電極の大きさおよび間隔は、他のDRGの寸法にも一致させることができる。特定の一態様では、電極の間隔は、標的後根神経節の近傍に配置されたときに、2つ以上の電極が治療エネルギを標的後根神経節に供給する位置にくるようにする。後根神経節の大きさが脊髄レベルおよび他の因子に依存するため、選択された後根神経節に電極部分を合わせるために多種多様な電極の大きさおよび間隔を使用することができる。また、一部の実施形態では、電極106は、直接かつ選択的な刺激を供給するために指向性であり、刺激に必要なエネルギをさらに低減することを理解できよう。
【0096】
一部の実施形態では、電極106は、リード線104の遠位端部に沿って5mm離隔している。他の実施形態では、電極106は、中心間が0.250インチ(6.35mm)、内縁と内縁とが0.200インチ(5.08mm)離隔している。殆どの患者では、DRGは、5〜10mmの大きさである。したがって、典型的な間隔では、2つの電極106が標的DRGと接触することが可能であり、残りの2つの電極は標的DRGの近傍である。場合によっては、DRGと接触している2つの電極106は、DRGを刺激するために使用され、残りの2つの電極106は、刺激エネルギを供給しない。別の場合、4つすべての電極106がDRGに刺激エネルギを供給するが、2つの電極は、他の2つの電極よりもDRGに近い距離からDRGにエネルギを供給する。電極106のどの組み合わせでも、刺激エネルギを供給することができ、各電極106は、異なるレベルまたは種類の刺激信号を供給することができることを理解できよう。結果として、様々な電場の形状を形成することができ、各形状は、異なる処置効果をもたらす可能性がある。多くの実施形態では、電場の形状は楕円形である。同様に、解剖学的構造に対する電場の位置は、異なる処置効果をもたらし得るように調整することもできる。このような効果は、詳細を後述する。また、電極106が供給する刺激エネルギは、時間と共に変化し得ることを理解できよう。例えば、リード線104が移動したら、電極106の異なる組み合わせを用いて、新しいリード線位置で標的DRGを刺激することができる。
【0097】
上述したように、本発明のリード線104の密接配置により、刺激システム100が、様々な追加の有利な特徴を有することが可能となる。例えば、リード線104の標的組織に対するこのような近接した配置により、より小さな刺激領域が可能となる。この結果、より小さな電極表面積が可能となり、エネルギの必要量が減少する。エネルギの必要量の減少により、より小さいバッテリサイズ、バッテリの長寿命化、およびバッテリ交換や充電の排除の実現が可能となる。典型的には、従来のシステムが植え込まれた患者は、バッテリが切れたときにIPGが外科的に交換される標準バッテリを備えたIPG、または2、3週間ごとに2、3時間に渡って外部デバイスによってバッテリが充電される充電式バッテリを備えたIPGを有する。対照的に、本発明のシステム100は、バッテリの寿命がデバイスの寿命に対して十分であるこのような低エネルギを実現する。したがって、患者は、バッテリを交換するために追加の外科手術を受ける必要がなく、このため外科合併症のあらゆるリスクが低下する。患者はまた、バッテリを充電する必要がないため、生活の質が改善され、より連続的な治療が得られる。いずれの場合も、少ない臨床経過観察で済ませることができ、コストが削減され、患者の満足度が向上する。しかし、充電式バッテリを使用してもよいことを理解できよう。
【0098】
本発明の刺激システム100に必要なエネルギが、特に従来の脊髄刺激システムと比較すると非常に低い。エネルギは、電位差(v)のある2点間の電荷(q)の移動で果たされる仕事である。(q)が電荷であるとすると、時間(t)と共に変化し、得られる電流が、i=dq/dtで表されることを想起されたい。電流の単位はアンペアである。電力は、仕事が行われる割合である。時間間隔(dt)で点Aから点Bに移動する電荷(dq)を考え、AとBとの間の電位差を(v)とする。次いで、電荷(dq)で行われる仕事は次の式で表される。
dw=v dq=v(i dt)
次いで、電力は次の式で表される。
p=dw/dt=vi
電力の単位はワットである。1ワットは、1ジュール/秒に等しい。上述したように、エネルギは、電位差のある2点間の電荷(q)の移動で果たされる仕事である。電力がエネルギの微分に等しいため、エネルギは、電力の積分に等しい。時間(t)で構成要素によって送達または受け取られるエネルギは、次の式で表される。
w(t)=∫p(t)dt
エネルギの単位はジュールである。2点間の電荷(q)の移動は、抵抗Rによって決まる。
R=v(t)/i(t)
抵抗の単位はオーム(Ω)である。したがって、1オームは1ボルト/アンペアに等しい。したがって、次の式で表される。
p(t)=R[i(t)]
したがって、時間(t)で構成要素によって送達または受け取られるエネルギは、抵抗に関連する。
【0099】
本発明の刺激システム100と従来の脊髄刺激システムとの間のエネルギの必要量の差を決定するために、それぞれの刺激信号を比較することができる。一実施形態では、本発明の刺激信号は、図19Aに示されているトレース120によって例示されているような長方形の波形を有しており、パルス幅は、約80μsであり、電流振幅は約200μAである。この曲線の積分(すなわち、この曲線の下の面積)は、エネルギに一致し、かつ組織のインピーダンスに関係する全電荷である。この例では、送られる電荷は、(200μA)×(80μs)=16nC/パルスである。図19Bは、生体組織を刺激する複合インピーダンスに対する電圧応答を示すトレース122の実施形態を例示している。したがって、使用される全エネルギは7nJであり、ワールブルグ(Warburg)抵抗は650オームであり、ワールブルグ静電容量は0.2μFであり、組織の抵抗は1000Ωである。
【0100】
図20Aは、従来の脊髄刺激装置の刺激信号の例を表すトレース124を例示している。ここでは、パルス幅は約200μsであり、電流振幅は、本発明の刺激システム100の電流振幅よりもほぼ一桁大きい約1.7mA(または1700μA)である。したがって、送られる電荷は、(200μs)×(1.7mA)=340nCである。図20Bは、生体組織を刺激する複合インピーダンスに対する電圧応答を表すトレース126の実施形態を例示している。したがって、使用される全エネルギは1294nJであり、ワールブルグ抵抗は200Ωであり、ワールブルグ静電容量は0.5μFであり、組織の抵抗は1000Ωである。この例では、本発明の刺激システム100によって供給されるエネルギは、従来の刺激システムによって供給されるエネルギの0.54%(7nJ/1294nJ)である。エネルギのこの著しい減少は、標的解剖学的構造、特にDRGの選択的な刺激に必要なエネルギが少ないことによるものである。典型的には、本発明の刺激システム100によって供給されるエネルギは、従来のシステムの10%未満、具体的には5%未満、より具体的には1%未満である。
【0101】
上の例は例示目的であることを理解できよう。図21は、DRGを選択的に標的にした刺激信号パラメータを示す追加のデータを例示している。図示されているように、前根が刺激されるエネルギ閾値よりも低い、DRGが刺激されるエネルギ閾値が存在する。前根閾値よりも低い刺激信号を供給することにより、患者の痛みの感覚を、前根刺激のマイナスの副作用なしに遮断することができる。
【0102】
例えば、患者の解剖学的構造、痛みのプロフィール、痛みの知覚、およびリード線の配置などのばらつきにより、信号パラメータの設定が、患者によって、および同じ患者の体内のリード線によって異なり得る。信号パラメータには、例えば、電圧、電流振幅、パルス幅、および繰り返し数などが含まれる。本発明の刺激システム100の一部の実施形態では、供給される電圧は、約0〜7Vの範囲である。一部の実施形態では、供給される電流振幅は、約4mA未満、具体的には約0.5〜2.0mAの範囲、より具体的には約0.5〜1.0mA、0.1〜1.0mA、または0.01〜1.0mAの範囲である。さらに、一部の実施形態では、供給されるパルス幅は、約2000μs未満、具体的には約1000μs未満、より具体的には約500μs未満、より具体的には10〜120μsである。そして、一部の実施形態では、繰り返し数は、約2〜120Hzの範囲であり、最大200Hzまたは最大1000Hzである。
【0103】
典型的には、刺激パラメータは、満足のいく臨床結果に至るまで調整される。したがって、患者ごとにどのDRGに近接して配置されるどのリード線に対するDRG刺激の閾値と前根刺激の閾値との間にも刺激パラメータ値の組み合わせの包絡線が存在する。患者を正常に処置するために使用できる特定の組み合わせまたは可能な組み合わせは、典型的には、生体内で術中に決定され、生体外で術後に決定され、様々な因子によって決まる。1つの因子は、リード線の配置である。望ましい電極がDRGに近ければ近いほど、DRGを刺激するのに必要なエネルギが少なくなる。他の因子には、例えば、電極の選択、患者の解剖学的構造、処置されている痛みのプロフィール、および患者による痛みの心理的な知覚などが含まれる。時間が経過すると、患者を処置するどのリード線のパラメータ値も、リード線の配置の変化、インピーダンスの変化、または他の身体的もしくは心理的な変化によって変動し得る。いずれの場合も、パラメータ値の包絡線は、患者の痛みの状態を処置するために少なくとも一桁大きいエネルギ供給を必要とする従来の刺激システムの包絡線よりも非常に低い。
【0104】
本発明のシステム100のパラメータ値が低い範囲であることから、制御の粒度が、従来の刺激システムと比較するとより小さい。例えば、従来の刺激システムの電流は、典型的には、0.1mAの増分で調整可能である。本発明の一部の実施形態では、この増分は、患者を処置するために使用できる電流振幅値の全範囲よりも大きい。したがって、信号パラメータ値を循環して状態を処置する適切な値の組み合わせを決定するために、より小さい増分が必要である。一部の実施形態では、本発明のシステム100は、特に、例えば、2mAの電流振幅が使用される場合は、約25μAの分解能での電流振幅の制御を実現するが、約10μA、5μA、または1μAなどのより小さい増分も使用できることを理解できよう。他の実施形態では、電流振幅の制御は、特に、例えば、2mA以上の電流振幅が使用される場合は、約50μAの分解能で提供される。このような分解能の変化は、1mAなどの他のレベルでも起こり得ることを理解できよう。同様に、従来の刺激システムの電圧は、典型的には100mVの増分で調整可能である。対照的に、本発明の一部の実施形態は、50mVの分解能で電圧の制御を提供する。同様に、本発明の一部の実施形態は、10μsの分解能でパルス幅の制御を提供する。したがって、本発明は、パラメータ値の低い範囲により、刺激パラメータの高い粒度の制御を提供することを理解できよう。
【0105】
場合によっては、さらに低いレベルのエネルギを使用しても、本発明の刺激システム100を用いて患者を正常に処置することができることを理解できよう。配置されるリード線が標的DRGに近ければ近いほど、標的DRGを選択的に刺激するのに必要となり得るエネルギのレベルが低い。したがって、信号パラメータ値は、制御の粒度が相応に高い本明細書に記載された信号パラメータ値よりも低いであろう。
【0106】
これらの信号パラメータ値を利用して、刺激プロフィールが、患者に対してカスタマイズされ、IPG102のメモリ108にプログラムされる。上述したように、IPG102は、典型的には、コンピュータ化プログラミングステーションまたはプログラミングシステムによってプログラムされる。このプログラミングシステムは、典型的には、内臓型ハードウエアおよび/またはソフトウエアシステムであるか、または一般的なパソコン(PC)上の動作するソフトウエアによって主に定義することができる。PCまたはカスタムハードウエアは、インプラントのプログラミングを可能にする送信コイル装置もしくはアンテナ、または外部ユニットをプログラムする他の装置を有することができる。患者は、一般に、臨床医プログラミングシステム(臨床プログラマ200)よりも範囲が限定されているハンドヘルドプログラマ(患者プログラマ300)が与えられ、このようなハンドヘルドプログラマは、患者に、選択されたパラメータに対する一定の制御を提供する。したがって、これにより、必要に応じて刺激プロフィールを時間と共に容易に変更することが可能となる。
【0107】
既に述べたように、状態の有効な処置は、状態に関連した標的の解剖学的構造を直接刺激すると共に、他の解剖学的構造の望ましくない刺激を最小限にする、または排除することによって達成することができる。このような状態が、1つの真皮節に限定される、または主に1つの真皮節に影響を与える場合は、本発明により、1つの真皮節または真皮節内の各部位の刺激が可能となる(真皮節下刺激とも呼ばれる)。真皮節は、1つの脊髄レベルによって神経支配される体の部位と見なされる。図22は、真皮節の配置、または患者Pに沿った真皮節の「地図」を例示している。真皮節は、躯幹の周りにバンドを形成するが、肢では、その構成は、胎生発育中に肢芽が形成されて肢に発達するため、真皮節が「引張られる」ことからより複雑である。各真皮節は、その関連する脊髄レベルによって名称が付けられている。上側の体の部位は、頚部の脊髄分節を走る神経によって神経支配され、神経支配パターンが後方に延びているため、真皮節を神経支配している頚部の脊髄分節も後方に延びている。したがって、体の中央の部位(胸など)は、胸髄分節によって神経支配され、下側の体の部位は、腰髄分節および仙髄分節によって神経支配されている。
【0108】
真皮節を神経支配している神経は、関連する脊髄レベルのDRGを起源とする。各真皮節は、一対のDRGによって満たされているため、これらのDRGの一方または両方の刺激が、1つの真皮節に実質的に影響を与える。図17を再び参照すると、本発明は、周囲領域の他のDRGまたは神経組織から独立して、1つの脊髄レベルにおける1つのDRGまたは一対のDRGの刺激を提供する。これにより、1つの真皮節を刺激することができる。近接する真皮節間に神経支配の重複が存在することを理解できよう。しかし、ある脊髄レベルにおける1つ以上のDRGの刺激は、直接関連する真皮節に大きく影響を与えるが、近接する真皮節への影響は大幅に小さい。同様に、例えば、脊柱の右側における1つのDRGの刺激は、直接関連する真皮節内の体の右側に大きく影響を与える。したがって、1つのDRGの刺激は、1つの真皮節の一部を刺激することができる。これは、同時に複数の真皮節を刺激する従来の脊髄刺激システムには当てはまらない。設計上、このような従来のシステムは、処置のために1つの真皮節または真皮節の一部を分離することができないため、このような刺激は、2つ以上の真皮節に実質的に影響を与える。
【0109】
図23は、個々のDRGの選択的な刺激によって影響を受け得る体の部位に関連した様々な脊髄レベルにおけるDRGを模式的に例示している。例えば、L5の右側のDRG1の刺激は、患者の右側の足、下肢、および/または腰部に影響を与え得る。同様に、L4の右側のDRG2の刺激は、患者の右側の足および/または腰部に影響を与え得る。図24A〜図25Bは、患者Pの真皮節に沿ったこれらの体の部位を例示している。図24Aは、下半身の真皮節を含む後からの患者P、およびDRGの全般的な領域の略図を例示している。DRG1の刺激によって影響を受け得るL5真皮節の部位が、交差斜線で示されている。同様に、図24Bは、下半身の真皮節を含む前からの患者Pを例示している。同様に、DRG1の刺激によって影響を受け得るL5真皮節の部位が、交差斜線で示されている。この真皮節の部分は、右足の底部に沿って右足の上部、下肢に沿って腰部まで延びている。同様に、DRG2の刺激によって影響を受け得るL4真皮節の部位が、図24Aおよび図24Bの両方に斜線で示されている。この真皮節の部分は、主に、下肢の前側に沿って腰部まで延びている。したがって、これらの体の部位に痛みまたは別の状態を有する患者に対しては、DRG1およびDRG2を刺激してこのような状態を処置するが、他の体の部位に殆どまたはまったく影響を与えないように刺激することができる。
【0110】
再び図23を参照すると、従来の脊髄刺激システムの従来の配置(例えば、図5に例示されている)も例示されており、リード線14は、電極20が矢状正中線および傍矢状正中線に整合するように脊柱Sの正中線に沿って配置されている。このような配置では、電極20が、処置が望ましい状態とは無関係でこの状態による影響を受けていない体の部位を神経支配している多くの神経線維を刺激する。この例では、電極20による刺激は、患者の体の両側のT12、L1、L2、L3、L4、L5真皮節に影響を与えることができる。
【0111】
図25は、本発明の態様によるDRG1の選択的な刺激を模式的に例示している。図示されているように、リード線104は、少なくとも1つの電極106の少なくとも1つが標的DRG(DRG1)の表面、近傍、または周囲に位置するように配置されている。DRG1に関連した異なる体の部位(足、下肢、腰部)を、DRG1内の特定の感覚ニューロンにトレースすることができる。具体的には、各感覚ニューロンには、他の周囲のニューロンから独立して感覚ニューロンを刺激するために標的にすることができる細胞体または体細胞が含まれる。この例では、下肢は体細胞N1に関連し、腰部は体細胞N2に関連し、そして足は体細胞N3に関連する。様々な科学的研究により、解剖学的構造を区別する感覚機能を補助するDRG内にニューロン(および関連する体細胞)の特定の体性局在の向きが存在することが示唆された。
【0112】
体性局在地図は、感覚間統合の解剖学的に特定の向きである。感覚情報が中枢神経系に送られると、「体性局在」地図が脳の皮質で組織化されることは周知である。したがって、体性感覚皮質の特定の部位が、特定の解剖学的部位からの感覚処理に関与している。したがって、体性感覚皮質の様々な部位の特定の小部位の刺激が、特定の解剖学的部位からの感覚入力の知覚となる。加えて、研究により、体性局在地図が、中枢神経系内だけではなく、後根神経節などの脊髄神経構造にも存在することが示唆された。典型的には、このようなマッピングは、末梢の解剖学的構造にトレーサ化学種を注入し、次いでDRG内の標識細胞を見て、これらの標識細胞の相対的な分布を確認することによって動物実験で完了している。後根神経節は、特定の真皮節を神経支配しているニューロンの細胞体(体細胞)を含む特殊な神経構造である。後根神経節の体性局在地図の理解により、DRGの各部を標的にして、このDRGに関連した真皮節内の1つ以上の特定の部位を治療することが可能となる。したがって、真皮節下標的化により、非常に特殊な治療の適用が、痛みおよび他の状態の処置で可能となる。
【0113】
再び図25を参照すると、DRGの各部を選択的に刺激して、真皮節内の特定の部位に影響を与えることができる。この実施形態では、体細胞N1、体細胞N2、または体細胞N3を刺激して、異なる処置効果を与えることができる。同様に、体細胞N1、N2、N3の2つ以上を組み合わせて刺激して、さらなる処置効果を与えることができる。各体細胞は、1つ以上の次の特性:DRGに対する電極(複数可)106の位置、刺激のための電極の組み合わせの選択、ならびにパルス幅、振幅、および周波数などの刺激信号のパラメータのプログラミングの操作によって選択的に刺激することができる。このような操作により、望ましい電場を生成し、DRGに対して配置して、3次元空間におけるDRGの特定の部分を刺激する。この特定部分には、典型的には、望ましい処置効果を与えるために標的にされる1つ以上の体細胞が含まれる。
【0114】
図26A〜図26Dは、真皮節内の特定の部位に影響を与えるためにDRG1の一部を刺激するリード線104の斜視図を例示している。図26Aを参照すると、DRG1は、体細胞N1、体細胞N2、および体細胞N3を含むとして示されている。リード線104は、本発明の方法によってDRG1の表面、近傍、または周囲に配置される。この例では、2つの電極106a、106bが刺激のために選択され、残りの2つの電極106c、106dは中性である。電場500は、体細胞N1および体細胞N2を殆どまたはまったく刺激しないで体細胞N3を刺激するように選択された刺激信号パラメータによって2つの電極106a、106bによって生成されている。この実施形態では、体細胞N3は体の部位の足に関連し、体細胞N1は腰部に関連し、体細胞N2は下肢に関連する。したがって、患者は、同じ真皮内の腰部および下肢に処置効果がなく、足に標的処置効果を有する。図26Bは、図26Aの図が回転されたものであり、3次元電場500と、3次元電場500が体細胞N3を含むが体細胞N1および体細胞N2を含まないことを例示している。同様に図26Cは、端面斜視図を示すために図26Aの図が回転されたものであり、同様に3次元電場500は、体細胞N3を含み、体細胞N1および体細胞N2を含まないとして示されている。さらに、図25Dは、図25Aが回転されたものであり、電場500が体細胞N3を刺激するが体細胞N1および体細胞N2を含まないようにDRG1に近接したリード線104の底面斜視図である。
【0115】
リード線104をDRG1に対して物理的に移動させることによって異なる体細胞を選択的に刺激することができる。例えば、リード線104をDRG1の表面に沿って移動させることにより、電場500を移動させて、体細胞N2、N3を含まずに体細胞N1などの異なる体細胞を選択することができる。または、リード線104をDRG1に対して固定したままにすることができ、異なる電極106を刺激のために利用して電場500を移動させることができる。同様に、電場500の形状を、電極の組み合わせの変更および/または刺激信号のパラメータの変更により変化させることができる。例えば、電場500は、刺激信号のパラメータの変更、例えば、振幅を増大させることによって大きくすることができる。または、電場500の大きさは、電極の組み合わせの変更、例えば、刺激のために追加の電極を利用することによって大きくすることができる。この例では、電場500の大きさは、体細胞N2は実質的に含まないが体細胞N3および体細胞N1の両方を含むように大きくすることができる。こうすることにより、患者が、同じ真皮節内の下肢に処置効果がなく、足および腰部に標的処置効果を有することができる。同様に、電場500の大きさは、体細胞N1、N2、N3を含むように大きくすることができる。こうすることにより、患者は、同じ真皮節内の足、腰部、および下肢に標的処置効果を有することができる。
【0116】
図27および図28は、電極の組み合わせおよび/または信号パラメータの変更と影響を受けた体の部位の得られた変化との間の相関性を例示する臨床データを示している。この臨床データは、患者対象が本発明によって1つ以上のリード線104が植え込まれた臨床試験中に収集された。各リード線104は、図17および図18に例示されているように、1つ以上の電極106の少なくとも1つがDRGの表面、近傍、または周囲に位置するように配置された。
【0117】
図27は、1つのリード線(リード線番号2)がレベルL5のDRGを刺激するように植え込まれた患者番号1からの臨床データの表を示している。表の1行目に示されているように、リード線に沿った各電極または接点に番号(1、2、3、4)が付されており、4つの電極が存在した。接点1および接点2は、オフまたは中立(N)として構成された。そして、接点3は、陽極(+)として構成され、接点4は、陰極(−)として構成された。信号パラメータは、振幅=800μA、パルス幅=60μs、周波数=70Hzと設定された。この臨床データは、関連するDRGの各部分の刺激によって影響を受けた体の部位の地図の作成中に収集されたことを理解できよう。したがって、パラメータの設定は、必ずしも処置に望ましい範囲ではなかった。これらの信号パラメータの設定では、患者の足裏が刺激によって影響を受けた。表の2行目に示されているように、すべての他の変数が維持されたまま、振幅が1.8mAに増大された。この結果、患者の足およびふくらはぎの両方が、刺激によって影響を受けた。したがって、接点3および接点4によって生成される電場が拡大され、これにより追加の感覚ニューロンが刺激された。さらに、表の3行目は、振幅が2.25mAに増大されたときに、影響を受けた体の部位が膝裏を含むまで拡大されたことを示している。同様に、表の4行目は、振幅が2.75mAに増大されたときに、影響を受けた体の部位が腰を含むまで拡大されたことを示し、表の5行目は、振幅が3.0mAに増大されたときに、影響を受けた体の部位が臀部を含むまで拡大されたことを示している。したがって、接点3および接点4によって生成される電場の形状が変化すると、追加の感覚ニューロンが刺激され、これにより真皮節の追加の体の部位が影響を受けた。これは、真皮節下刺激が、電場および信号パラメータの操作によって達成できることを例示している。
【0118】
図28は、1つのリード線(リード線番号1)が、レベルL4のDRGを刺激するように植え込まれた別の患者、患者番号2の臨床データの表を示している。表の1行目に示されているように、リード線に沿った各電極または接点に番号(1、2、3、4)が付されており、4つの電極が存在した。接点1および接点2は、オフまたは中立(N)として構成された。そして、接点3は、陽極(+)として構成され、接点4は、陰極(−)として構成された。信号パラメータは、振幅=325μA、パルス幅=120μs、周波数=60Hzと設定された。同様に、この臨床データは、関連するDRGの各部分の刺激によって影響を受けた体の部位の地図の作成中に収集されたことを理解できよう。したがって、パラメータの設定は、必ずしも処置に望ましい範囲ではなかった。これらの信号パラメータの設定では、患者のふくらはぎが刺激によって影響を受けた。表の2行目に示されているように、すべての他の変数が維持されたまま、振幅が350μAに増大された。この結果、患者のふくらはぎおよび膝の両方が、刺激によって影響を受けた。したがって、接点3および接点4によって生成される電場が拡大され、これにより追加の感覚ニューロンが刺激された。さらに、表の3行目は、振幅が425μAに増大されたときに、影響を受けた体の部位が腰を含むまで拡大されたことを示している。したがって、接点3および接点4によって生成される電場が拡大されると、追加の感覚ニューロンが刺激され、これにより真皮節の追加の体の部位が影響を受けた。
【0119】
図28の表の4行目は、電極の構成の変更を示している。ここでは、接点1はオフまたは中立(N)であり、接点2は陰極(−)として構成され、接点3は陽極(+)として構成され、接点4は陰極(−)として構成された。信号パラメータは、振幅=275μA、パルス幅=120μs、周波数=60Hzと設定された。この結果、これらの信号パラメータの設定では、患者のふくらはぎから踝が刺激により影響を受けた。したがって、1行目と比較すると、振幅は小さくなったが、新しい電極の構成によって生成される電場の形状の変化により、追加の感覚ニューロンを刺激することができた。
【0120】
5行目と6行目の比較は、他の変数が同じままでの電極の構成の変更による影響を例示している。表の5行目に示されているように、接点1はオフまたは中立(N)であり、接点2は陰極(−)として構成され、接点3は陽極(+)として構成され、接点4は陰極(−)として構成された。信号パラメータは、振幅=625μA、パルス幅=120μs、周波数=60Hzと設定された。これらの信号パラメータの設定では、影響を受けた体の部位は、膝の上から大腿の側までであった。同じ信号パラメータの設定を維持したまま、電極の構成を、表の行6に示されているように、接点1がオフまたは中立(N)であり、接点2が陽極(+)として構成され、接点3が陰極(−)として構成され、接点4が陽極(+)として構成されるように変更された。この電場の変更により、影響を受けた体の部位がふくらはぎの前側に変化した。7行目に示されているように振幅が大きくなると、影響を受けた体の部位が膝を含むまで増加した。8行目は、真皮節内に異なる影響を生成する、振幅とパルス幅の両方の変更を示している。そして同様に、振幅が大きくなると、9行目に示されているように、影響を受けた体の部位が増加した。これは、真皮節下刺激が、電場および信号パラメータを操作して、特定の体の部位に影響を与え、他の体の部位が実質的に影響を受けないようにすることによって達成できることをさらに例示している。
【0121】
一部の実施形態では、真皮節下刺激が、DRGの体性局在マッピング以外の因子、またはDRGの体性局在マッピングに加えた他の因子によって達成されることを理解できよう。これらの実施形態では、患者が処置される状態の焦点領域と考えられる体の部位が、刺激によって優先的に影響を受けた。例えば、処置される状態が痛みである場合は、患者が痛むと見なす体の部位が、刺激によって優先的に影響を受ける。これは、DRG刺激治療が、痛みの部位に特有の痛みの状態に関与する神経要素を優先的に神経調節することを示唆している。これは、痛みの神経信号変換および他の体性感覚信号に関与するDRGに存在する小径体細胞および大径ニューロンの両方が、細胞膜の生物物理学に影響を与える生理学的変化を受けることを示唆する基本的な神経生理学的データを裏付ける。これは、ニューロンが、恐らく、特にイオンチャネルにおける膜貫通内在性膜タンパク質の機能の変更によって、過剰興奮になることを示唆している。痛みの情報の処理に関与する細胞のこの生物物理学的な機能の変更が、電場で細胞機能を神経調節する能力の向上の基礎となり得る。そして、これは、選択された解剖学的に痛む部位における痛みの緩和および錯感覚を優先的に生成する能力の根拠となり得る。
【0122】
様々な痛みに関連した状態が、本発明のシステム、方法、およびデバイスで処置可能である。特に、次の状態を処置することができる:
(1)腰椎術後疼痛症候群
(2)次の原因による慢性難治性腰痛:
(A)原因不明
(B)診断ブロック(複数可)によって明らかになる腰椎椎間関節疾患
(C)診断ブロック(複数可)によって明らかになる仙腸関節疾患
(D)脊椎管狭窄症
(E)神経根インピンジメント−外科手術の対象ではない
(F)椎間板に起因する痛み−椎間板造影法に基づく、または基づいていない
(4)複合性局所疼痛症候群
(5)ヘルペス後神経痛
(6)糖尿病性神経障害による痛み
(7)難治性有痛性末梢血管疾患
(8)レイノー現象
(9)幻肢痛
(10)全身性求心路遮断痛(generalized deaffrentation pain conditions)
(11)慢性難治性口峡炎
(12)頚椎性頭痛
(13)様々な内臓痛(膵炎など)
(14)乳房切除後痛
(15)外陰部痛(vuvlodynia)
(16)オーコジニア(orchodynia)
(17)有痛性自己免疫異常
(18)痛みの分布が限定された発作後痛
(19)反復局所性鎌状赤血球発症
(20)腰椎神経根障害
(21)胸椎神経根障害
(22)頚椎神経根障害
(23)頚軸性頚痛(cervical axial neck pain)、「むち打ち」
(24)痛みの分布が限定された多発性硬化症
上に列記した状態のそれぞれは、典型的には1つ以上のDRGに関連し、関連するDRGの刺激は、状態の処置または管理となる。
【0123】
同様に、次に示す痛みのない徴候または状態も、本発明のシステム、方法、およびデバイスで処置可能である:
(1)パーキンソン病
(2)多発性硬化症
(3)脱髄性運動障害
(4)理学/作業療法支援神経刺激
(5)脊髄障害−神経再生支援治療
(6)喘息
(7)慢性心不全
(8)肥満
(9)発作−急性虚血など
同様に、上に列記した状態のそれぞれは、典型的には1つ以上のDRGに関連し、関連するDRGの刺激は、処置または治療となる。場合によっては、脊髄障害の神経再生支援治療は、脊柱の刺激も含む。
【0124】
本発明のシステム、デバイス、および方法は、神経節または神経組織を刺激するために別法として、または追加的に使用できることを理解できよう。このような場合、処置される状態が、神経節または神経組織に関連しているため、このような刺激が有効な治療となる。以下は、状態または徴候とその関連する神経節または神経組織のリストである:
(1)3叉神経痛(3叉神経節)
(2)高血圧(頚動脈洞神経/舌咽神経(glossopharangyl nerve)
(3)顔面痛(ガッセル神経節)
(4)腕痛(星状神経節)
(5)交感神経関連機能(交感神経鎖神経節)
(6)頭痛(翼口蓋神経節/翼口蓋神経節)
【0125】
また、本発明のシステムおよびデバイスを、例えば、抹消神経系、体神経系、自律神経系、交感神経系、および副交感神経系の神経組織を含む様々な他の神経組織を刺激するためにも使用できることを理解できよう。本発明の様々な特徴は、これらの神経系の一部の刺激に特に適しているであろう。さらに、本発明のシステムおよびデバイスを、器官、皮膚、筋肉などの他の組織を刺激するためにも使用できることを理解できよう。
【0126】
本明細書では、リード線は、その少なくとも1つの電極が標的の解剖学的構造の表面、近傍、または周囲に位置するように配置可能であると記載されているが、少なくとも1つの電極の少なくとも1つを、任意選択で標的の解剖学的構造内に配置できることを理解できよう。
【0127】
前述の発明は、理解をしやすくするために、例示および例としてある程度詳細に記載されているが、様々な代替形態、変更形態、および均等物を使用することができ、上記記載を、添付の特許請求の範囲によって規定される本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではないことは明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、前記リード線がそのように配置されたときに前記標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギを有する刺激信号を前記リード線に供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項2】
前記標的後根の少なくとも一部が、後根神経節を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記刺激信号が、約4mA以下の電流振幅を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項4】
前記電流振幅が、約800μA以下である、請求項2に記載のシステム。
【請求項5】
前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、約6mm以下の平均電極表面積を有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項6】
前記平均電極表面積が、約4mm2以下である、請求項5に記載のシステム。
【請求項7】
少なくとも1つの電極を有する第2のリード線をさらに備え、前記第2のリード線が、その電極の少なくとも1つが第2の標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されており、前記第2のリード線が、刺激信号を前記第2のリード線に供給する前記植え込み型パルス発生器に接続可能であり、前記第2のリード線に対する前記刺激信号が、前記第2のリード線がそのように配置されたときに前記第2の標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギを有する、請求項1に記載のシステム。
【請求項8】
前記標的後根と前記第2の標的後根が、異なる脊髄レベルにある、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記リード線に対する前記刺激信号と前記第2のリード線に対する前記刺激信号が異なる、請求項7に記載のシステム。
【請求項10】
中枢神経系の標的神経組織を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記標的神経組織を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、100μA未満の電流振幅を有する刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項11】
前記標的脊髄神経組織が、後根神経節を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項12】
標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、刺激信号が供給されときに前記標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、約100nJ/パルス未満のエネルギを有する刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項13】
前記刺激信号が、約50nJ/パルス未満のエネルギを有する、請求項12に記載のシステム。
【請求項14】
前記刺激信号が、約10nJ/パルス未満のエネルギを有する、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
前記標的後根の少なくとも一部が、後根神経節を含む、請求項12に記載のシステム。
【請求項16】
標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、刺激信号が供給されたときに前記標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、4mA未満の電流振幅を有する刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項17】
標的後根の少なくとも一部を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に配置可能であるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、少なくとも1つの信号パラメータにより前記標的後根の少なくとも一部を選択的に刺激する前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項18】
前記少なくとも1つの信号パラメータが、電流振幅を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項19】
前記電流振幅が、約4mA以下である、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの信号パラメータがパルス幅を含み、前記パルス幅が500μs未満である、請求項17に記載のシステム。
【請求項21】
前記標的後根の少なくとも一部が、後根神経節を含む、請求項17に記載のシステム。
【請求項22】
標的後根神経節を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記標的後根神経節の表面または近傍に配置可能であるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、前記標的後根神経節への近接により前記標的後根神経節を選択的に刺激する前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項23】
中枢神経系の標的神経組織を刺激するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記標的神経組織を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能な植え込み型パルス発生器であって、50μA以下の増分で調整可能な電流振幅を有する刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項24】
前記電流振幅が、25μA以下の増分で調整可能である、請求項20に記載のシステム。
【請求項25】
標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に位置するように配置するステップと、
前記リード線がそのように配置されたときに前記標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギレベルで前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項26】
前記エネルギを供給するステップが、約4mA以下の電流振幅を有する刺激信号を供給することを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
前記電流振幅が、約1.0mA以下である、請求項26に記載の方法。
【請求項28】
前記リード線を配置するステップが、硬膜外アプローチを用いて前記リード線を前進させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項29】
前記リード線を配置するステップが、順行性アプローチを用いて前記リード線を前進させることを含む、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記リード線を配置するステップが、脊柱の外側から経椎間孔アプローチを用いて前記リード線を前進させることを含む、請求項25に記載の方法。
【請求項31】
前記標的後根の少なくとも一部が、後根神経節を含む、請求項25に記載の方法。
【請求項32】
平均電極表面積が、約4mm以下である、請求項25に記載の方法。
【請求項33】
少なくとも1つの電極を有する第2のリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、第2の標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に位置するように配置するステップと、
前記第2のリード線がそのように配置されたときに前記第2の標的後根に関連した前根を刺激するためのエネルギ閾値よりも低いエネルギレベルで前記第2のリード線の前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、をさらに含む、請求項25に記載の方法。
【請求項34】
前記標的後根と前記第2の標的後根が異なる脊髄レベルにある、請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記リード線のエネルギレベルと前記第2のリード線のエネルギレベルが異なる、請求項33に記載の方法。
【請求項36】
硬膜外腔内の標的脊髄神経組織を刺激する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが前記標的脊髄神経組織を刺激できるように配置するステップと、
100μA未満である電流振幅を有する刺激信号で前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項37】
標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが前記標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置するステップと、
約100nJ/パルス未満のエネルギを有する刺激信号で前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項38】
標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが前記標的後根の少なくとも一部を刺激できるように配置するステップと、
4mA未満の電流振幅を有する刺激信号で前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項39】
標的後根の少なくとも一部を刺激する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが前記標的後根の少なくとも一部の表面または近傍に位置するように配置するステップと、
少なくとも1つの信号パラメータにより前記標的後根の少なくとも一部を選択的に刺激する刺激信号で前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項40】
中枢神経系の標的神経組織を刺激する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが前記標的神経組織を刺激できるように配置するステップと、
50μA以下の増分で調整可能な電流振幅を有する刺激信号で前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項41】
処置が1つの真皮節内で実質的に行われる、脊髄神経組織に関連した状態を処置する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが硬膜外腔内の前記脊髄神経組織に近接するように配置するステップと、
前記脊髄神経組織を刺激して前記1つの真皮節内に処置効果を与え、前記1つの真皮節外の体の部位が実質的に影響を受けないままであるように、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給するステップと、を含む、方法。
【請求項42】
前記少なくとも1つの電極にエネルギを供給するステップが、前記脊髄神経組織を刺激して前記1つの真皮節内の特定の体の部位内に処置効果を与え、前記特定の体の部位外の体の部位が実質的に影響を受けないままであるように、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つにエネルギを供給することを含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記脊髄神経組織が後根神経節を含み、前記処置効果が錯感覚を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記特定の体の部位が足を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
患者の状態が、後根神経節の一部に関連し、前記後根神経節の他の部分には実質的に関連しない、前記患者の状態を処置する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが前記後根神経節の一部の近傍に位置するように配置するステップと、
前記状態に影響を与えるが前記他の部分を実質的に刺激しないように前記後根神経節の一部を刺激するように、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給するステップと、を含む、方法。
【請求項46】
前記状態が痛みを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項47】
前記状態に影響を与えることが、知覚可能な運動応答を引き起こさずに痛みを緩和することを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項48】
前記状態が、真皮節内のある位置で患者によって感じられ、前記後根神経節の他の部分が、前記真皮節内の他の位置に関連する、請求項45に記載の方法。
【請求項49】
前記刺激信号が、約4mA以下の電流振幅を有する、請求項45に記載の方法。
【請求項50】
前記刺激信号が、1mA以下の電流振幅を有する、請求項49に記載の方法。
【請求項51】
前記リード線を配置するステップが、硬膜外アプローチを用いて前記リード線を前進させることを含む、請求項45に記載の方法。
【請求項52】
真皮節下刺激を提供する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが真皮節内の後根神経節の近傍に位置するように配置するステップと、
前記真皮節の真皮節下部位の状態に影響を与えるように前記後根神経節を刺激するように前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給するステップと、を含む、方法。
【請求項53】
後根神経節の一部を刺激するためのシステムであって、前記後根神経節の一部が、真皮節内の特定の部位に関連し、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記後根神経節の一部を刺激できるように配置されるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能なパルス発生器であって、前記後根神経節の一部を刺激して前記真皮節の前記特定の部位内に影響を与える前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つに刺激信号を供給する、パルス発生器と、を備える、システム。
【請求項54】
前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つと前記刺激信号の組み合わせが、前記後根神経節の一部の刺激を可能にする形状を有するが前記後根神経節の他の部分を実質的に含まない電場を生成する、請求項53に記載のシステム。
【請求項55】
前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、各電極のおおよその中心間が0.250インチ離隔した2つの電極を備える、請求項54に記載のシステム。
【請求項56】
前記刺激信号が、約4mA以下の電流振幅を有する、請求項54に記載のシステム。
【請求項57】
前記刺激信号が、1mA以下の電流振幅を有する、請求項56に記載のシステム。
【請求項58】
前記刺激信号が、約100nJ/パルス未満のエネルギを有する、請求項54に記載のシステム。
【請求項59】
患者の体内で真皮節下刺激を提供するためのシステムであって、
少なくとも1つの電極を有するリード線であって、前記少なくとも1つの電極が、真皮節に関連した後根神経節に近接して配置可能であるように構成されている、リード線と、
前記リード線に接続可能なパルス発生器と、を備え、
前記パルス発生器が、前記後根神経節を刺激して前記真皮節の第1の体の部位内に第1の影響を与える第1の電場を生成するために、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つに第1の刺激信号を供給し、
前記パルス発生器が、前記後根神経節を刺激して前記真皮節の第2の体の部位内に第2の影響を与える第2の電場を生成するために、前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つに第2の刺激信号を供給する、システム。
【請求項60】
前記第1の刺激信号と前記第2の刺激信号が、異なる刺激パラメータを有する、請求項59に記載のシステム。
【請求項61】
前記第1の刺激信号を受け取る前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つが、前記第2の刺激信号を受け取る前記少なくとも1つの電極の少なくとも1つとは異なる、請求項59に記載のシステム。
【請求項62】
前記第1の電場と前記第2の電場が異なる形状を有する、請求項59に記載のシステム。
【請求項63】
前記第1の電場と前記第2の電場が異なる大きさを有する、請求項59に記載のシステム。
【請求項64】
前記第1の影響が痛みの緩和を含む、請求項59に記載のシステム。
【請求項65】
前記第1の体の部位が、前記患者の足に沿って延在し、前記第2の体の部位が、前記患者の背に沿って延在する、請求項59に記載のシステム。
【請求項66】
患者の体内に真皮節下刺激を提供する方法であって、
少なくとも1つの電極を有するリード線を真皮節に関連した後根神経節の近傍に配置するステップと、
前記後根神経節を刺激して前記真皮節の第1の体の部位内に影響を与える前記少なくとも1つの電極に刺激信号を供給するステップと、
前記刺激信号の前記少なくとも1つの電極への供給が、前記後根神経節が刺激されて前記真皮節の第2の体の部位内に第2の影響を与えるように、前記リード線を前記後根神経節に沿って再配置するステップと、を含む、方法。
【請求項67】
前記第1の影響が、痛みの緩和を含む、請求項66に記載の方法。
【請求項68】
前記第1の体の部位が、前記患者の足に沿って延在し、前記第2の体の部位が、前記患者の背に沿って延在する、請求項66に記載の方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15A】
image rotate

【図15B】
image rotate

【図15C】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19A】
image rotate

【図19B】
image rotate

【図20A】
image rotate

【図20B】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate

【図24A】
image rotate

【図24B】
image rotate

【図25】
image rotate

【図26A】
image rotate

【図26B】
image rotate

【図26C】
image rotate

【図26D】
image rotate

【図27】
image rotate

【図28】
image rotate


【公表番号】特表2012−506759(P2012−506759A)
【公表日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−534687(P2011−534687)
【出願日】平成21年10月27日(2009.10.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/062259
【国際公開番号】WO2010/062622
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(507075624)スパイナル・モデュレーション・インコーポレイテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】SPINAL MODULATION INC.
【Fターム(参考)】