説明

遺伝子サイレンシングに有用な保存されたHBV及びHCV配列

【課題】少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子をインビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、インビボにて哺乳動物細胞中でC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための方法及び組成物を提供する。
【解決手段】哺乳動物細胞の中のウイルスの発現を阻害する上で有用である、既知のB型肝炎ウイルス菌株及び既知のC型肝炎ウイルス菌株由来の保存されたコンセンサス配列。これらの配列は、HBV及びHCVの遺伝子をサイレンシングし、かくしてヒトにおけるHBV及びHCVウイルス感染に対する治療上の有益性を提供するために有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、その全体が本明細書に参照により援用されている2003年6月12日出願の米国仮特許出願第60/478,076号の利益を主張するものである。
【0002】
技術分野
本発明は、翻訳後遺伝子サイレンシング(PTGS)及び転写遺伝子サイレンシング(TGS)を含む、2本鎖RNA媒介遺伝子サイレンシングを介して、哺乳動物細胞内のHBV及び/又はHCVの発現を変調させるべく、既知のB型肝炎ウイルス(HBV)菌株及び既知のC型肝炎ウイルス(HCV)菌株の保存された遺伝子配列を利用する方法及び組成物に関する。
【背景技術】
【0003】
ヒトC型肝炎(HCV)は、世界中で推定2億人が感染している重大な公衆衛生問題である。米国における一年あたりの新規感染者数は2001年で約25,000人と推定されている。この数は、献血者スクリーニングに起因して1980年代における年間推定240,000人の新規症例に比べて減少してきた。それでも、推定390万人(1.8%)のアメリカ人がHCVに感染してきており、そのうち270万人が慢性的に感染している。C型肝炎は、世界中の個体群の中で著しい遺伝子変異を示し、これはその突然変異頻度の高さ及び急速な進化の証拠である。HCVには基本的に6つの遺伝子型が存在し、15の記録された亜型があり、世界中の異なる領域全体にわたりその有病率は変動する。これらの主要な遺伝子型の各々は、その生物学的効果が著しく異なっている可能性があるが(複製、突然変異率、肝臓損傷のタイプ及び重症度及び検出及び治療オプションの点で)、これらの差異はなお明確に理解されていない。
【0004】
HCVに対するいかなるワクチンも現在のところ存在せず、リバビリン及びインターフェロンを含めて利用可能な薬物療法は、部分的にしか有効でない。感染者の75〜85%が慢性感染を発症することになると推定されており、慢性感染者の70%は、肝細胞癌腫を含めた慢性肝臓病を発生するものと予想される。慢性HCV関連肝臓病は、肝移植の主要な適応症である。
【0005】
ヒトB型肝炎ワクチンは1982年以降利用可能になっているものの、世界中で3億5000万人の人がHBVに慢性感染しているものと推定されている。米国における年間の新規感染者数は1980年代の平均260,000人から2001年の約78,000人まで減少してきたが、6ヵ月を超える期間にわたりB型肝炎表面抗原(HBsAg)陽性者として定義されたB型肝炎キャリヤは推定125万人存在している。このようなHBVキャリヤは、肝硬変、肝代償不全及び肝細胞癌腫を発症する高いリスクを有している。大部分のキャリヤは、慢性B型肝炎から肝臓合併症を発症することはないが、15%〜40%の人は、その寿命中に重大な続発症を発症することになり、慢性肝臓病による死は、慢性感染者数の15〜25%で発生している。
【0006】
合計すると世界中の肝臓病の全症例の75%を占めると推定されているHBV及び/又はHCV感染、特に慢性感染を患う患者において有効な改良型の治療剤に対するニーズが存在している。同様に、HCVに対して有効である予防方法及び作用物質に対する極めて強いニーズも存在している。
【0007】
核酸(例えばDNA、RNA、ハイブリッド、ヘテロ2本鎖及び修飾核酸)が、人間及び動物における疾病状態の予防及び/又は治療における療法の一部としてのそれらの使用を含め、有意でかつ多様な生物活性をもつ極めて価値ある作用物質として認識されるようになってきた。例えば、アンチセンス機序を通して作用するオリゴヌクレオチドは、標的mRNAに対しハイブリッド形成するように設計され、かくしてmRNAの活性を変調させる。治療剤としての核酸の利用に対するもう1つのアプローチは、例えばDNA標的からの転写の阻害といった所望の結果を生成するべく2本鎖DNA標的に結合するように1本鎖オリゴマ(例えばDNA又はRNA)が設計される、3重鎖又は3本鎖形成を利用するものとして設計されている。治療剤としての核酸の利用に対するさらにもう1つのアプローチは、例えばRNA又はDNA標的のターゲティングされた開裂といった所望の結果を生成しかくしてその発現を阻害するべくRNA又は2本鎖DNA標的に結合するように、構造化RNA又は修飾済みオリゴマーが設計される、リボザイムを利用するものとして設計されている。核酸は同様に、例えば、免疫応答を惹起する能力をもつタンパク質を発現する生体の組織又は細胞内にDNA分子を導入することによって、免疫化剤としても使用可能である。核酸を、アンチセンス、リボザイム又は3重鎖活性をもつRNAをコードするように、あるいは生物学的機能をもつタンパク質を産生するように翻訳されるRNAを産生するように、工学処理することもできる。
【0008】
より最近では、1つの細胞又は生体内の標的遺伝子の領域に相補的なdsRNAが標的遺伝子の発現を阻害する、RNAi又は2本鎖RNA(dsRNA)媒介遺伝子サイレンシングの現象が認識されてきている。(例えば1999年7月1日出願ファイア(Fire)らの特許文献1、及び特許文献2「2本鎖RNAによる遺伝子阻害(Genetic Inhibition by Double−Stranded RNA)」、特許文献3「ポリヌクレオチド配列の機能を阻害するための方法及び組成物(Methods and Compositions for Inhibiting the Function of Polynucleotide Sequences)」、パチュク(Pachuk)及びサティシュチャンドラン(Satishchandran)、及び2002年10月18日出願の特許文献4参照)。少なくとも部分的に2本鎖であるdsRNAを提供する組成物を利用するdsRNA媒介遺伝子サイレンシングは、慢性HBV及び/又はHCV感染という極めて困難な問題の場合を含め、HBV及び/又はHCVを含めたウイルス感染に対する極めて貴重な治療及び/又は予防的作用物質を提供するものと予想されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】国際公開第99/32619号パンフレット
【特許文献2】米国特許第6,506,559号明細書
【特許文献3】国際公開第00/63364号パンフレット
【特許文献4】米国特許出願公開第60/419,532号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0010】
出願人の発明は、UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子をインビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、インビボにて哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための方法を提供している。該方法の好ましい実施形態においては、2つ以上の配列番号の配列由来のエフェクタ配列を同じ細胞に投与することができかつ/又は同じ配列番号の配列内の2つ以上のエフェクタ配列を同じ細胞に投与することができる。
【0011】
出願人の方法はさらに、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子をインビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、インビボにて哺乳動物細胞中でC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための方法を提供している。該方法のこの態様の好ましい実施形態においては、配列番号11及び配列番号12の両方に由来するエフェクタ分子を同じ細胞に投与することができ、かつ/又は、同じ配列番号内の2つ以上のエフェクタ分子を同じ細胞に投与することができる。
【0012】
出願人の方法はさらに、UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の第1の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の第2の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を、インビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、インビボにて同じ哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列及びC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の両方の発現を阻害するための方法を提供している。本発明のこの態様の好ましい実施形態においては、配列番号1〜配列番号10のうちの2つ以上のものに由来するエフェクタ分子を、同じ細胞に投与することができ、かつ/又は配列番号11及び配列番号12の両方由来のエフェクタ分子を同じ細胞に投与することができ、かつ/又は同じ配列番号内の2つ以上のエフェクタ分子と同じ細胞に投与することができる。
【0013】
出願人の発明はさらに、UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、インビボにて哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物を提供している。該組成物の好ましい実施形態には、配列番号1〜配列番号10のうちの2つ以上のもの由来のエフェクタ分子が組成物中に存在する場合及び/又は同じ配列番号内の2つ以上のエフェクタ分子が組成物内に存在する場合が含まれる。
【0014】
出願人の発明はさらに、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む前記インビボにて哺乳動物細胞中でC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物を提供している。該組成物の好ましい実施形態には、配列番号11及び配列番号12内のエフェクタ分子が該組成物中に存在する場合及び/又は同じ配列番号内の2つ以上のエフェクタ分子が該組成物内に存在しうる場合が含まれる。
【0015】
出願人の発明はさらに、UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の第1の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の第2の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、インビボにて単一の哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列及びC型肝炎のポリヌクレオシド配列の両方の発現を阻害するための組成物を提供する。該組成物の好ましい実施形態には、配列番号1〜配列番号10のうちの2つ以上に由来するエフェクタ分子が該組成物中に存在する場合、及び/又は配列番号11〜配列番号12の両方に由来するエフェクタ分子が組成物中に存在する場合、及び/又は同じ配列番号内の2つ以上のエフェクタ分子が組成物中に存在し得る場合が含まれる。
【0016】
本発明の上述の方法及び組成物の特に好ましい実施形態においては、ポリヌクレオチド配列はRNAであり、哺乳動物細胞はヒト細胞である。
【0017】
さらに提供されているのは、哺乳動物細胞内でのB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列及び/又はC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物において、前記組成物が配列番号1〜配列番号12、配列番号1〜配列番号12の相補配列、及びこれらの配列の混合物内から選択された少なくとも19個の隣接のヌクレオチド配列を含む組成物である。本発明のこの実施形態においては、「少なくとも19個の隣接のヌクレオチド配列」は好ましくはDNAであり、哺乳動物細胞は好ましくはヒトである。同様に提供されているのは、上述の組成物のいずれかを含む発現構築物及び前記発現構築物を含む哺乳動物細胞である。
【0018】
本発明のもう1つの態様は、配列番号14〜配列番号26から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列を提供する。本発明のもう1つの態様は、配列番号14〜配列番号26から選択された配列のヌクレオチド1−19、1−20、1−21、2−20、2−21又は3−21を含むポリヌクレオチド配列を提供している。本発明のもう1つの態様は、配列番号27〜配列番号44から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列を提供している。
【0019】
本発明のもう1つの態様は、UがTに置換されている、配列番号27内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、哺乳動物細胞内のC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物を提供している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、ヘヤピンeiRNA配列の包含を示す、T7RNAポリメラーゼプロモータ及びT7RNAポリメラーゼの配置を例示するベクターを描いている。
【図2】図2は、表2中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図3】図3は、表3中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図4】図4は、表4中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図5】図5は、表5中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図6】図6は、表6中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図7】図7は、表7中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図8】図8は、表8中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図9】図9は、有効なHBV−AYW shRNAインサートを描いた図である。
【図10】図10は、表9中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図11】図11は、ノーザンブロット分析によるHBV RNAのダウンレギュレーションを示す棒グラフである。
【図12】図12は、表12中に見られるデータに対応するHBsAg阻害を示すグラフである。
【図13】図13は、実施例2の実験1の中でさらに詳細に記述されている、(左から右へ)0、9及び20ピコモルの同定されたsiRNAでのHCVNS5Aタンパク質のレベルを示すウェスタンブロットである。
【図14】図14は、実施例2の実験2でより詳細に記述されている通りの(左から右へ)0、9及び20ピコモルの同定されたsiRNA及び0、3及び9ピコモルの「コア」正の対照siRNAでのHCVNS5Aタンパク質のレベルを示すウェスタンブロットである。
【発明を実施するための形態】
【0021】
RNA干渉(RNAi)は、サイレンシングを受けた遺伝子と配列が相同である2本鎖RNA(dsRNA)によって開始される、動物及び植物における配列特異的転写後遺伝子サイレンシング又は転写遺伝子サイレンシングのプロセスである。RNA干渉は配列特異的に作用することから、薬物として使用されるRNAi分子はその標的に対し特異的であるにちがいない。ウイルスゲノムは、環境内の変化に対する耐性に対処するように可変的である。HBV及びHCVがRNAiのための望ましいウイルス標的であるものの、これらのウイルスは、その可変性及び突然変異可能性及びその高い転写速度のため、あらゆる治療的及び/又は予防的アプローチにとっての難しい標的となっている。RNAiを用いてウイルスゲノム複製をノックダウンするためには、ウイルスゲノム内の保存されたユニークな領域を同定する必要がある。それと同時に、遺伝子サイレンシングのために選ばれたあらゆる配列がヒトゲノムに存在しないことが、毒性を回避するために非常に重要である。
【0022】
ヒトB型肝炎ウイルス(HBV) B型肝炎ウイルスは、ヘパドナウイルス族に属する。HBVゲノムは、約3200塩基対の部分的に2本鎖の弛緩した環状DNAである。外被(プレ−S/S)、コア(プレコア/コア)、ポリメラーゼ及びXタンパク質をコードする4つの部分的に重複する読取り枠が存在する。プレ−S/S読取り枠は、大型(L)、中型(M)及び小型(S)表面糖タンパク質をコードする。プレコア/コア読取り枠は、可溶性タンパク質へと修飾されるプレコアポリペプチド、B型肝炎e抗原(HBeAg)及びB型肝炎コア抗原であるヌクレオカプシドタンパク質へと翻訳される。コアプロモータ及びプレコア領域内の突然変異は、HBeAg産生を低減又は廃止させることが示されてきた。ポリメラーゼタンパク質は、逆転写酵素ならびにDNAポリメラーゼとして機能する。Xタンパク質は強力な転写促進物質であり、肝癌誘発において1つの役割を果たす可能性がある。
【0023】
HBVの複製サイクルは、肝細胞に対するビリオンの付着で始まる。肝細胞核の内部で、プラス鎖HBVDNAの合成が完成され、ウイルスゲノムは共有結合により閉鎖された環状DNA(cccDNA)へと転換させられる。これまで調査されてきた大部分の抗ウイルス剤はcccDNAに対しほとんど又は全く効果が無く、このことは抗ウイルス療法の停止後の血清HBVDNAの急送な再出現を説明している。慢性B型肝炎治療の目的は、HBV複製及び/又はHBV抗原の発現の持続的抑圧及び肝臓病の回復を達成することにある。
【0024】
ジェンバンク(GenBank)バージョン132.0においては、4500を上回るHBV配列及び340のHBV完全ゲノム配列(317のヒト分離株、その他の霊長類からの22の分離株及び1つのウッドチャックHBV分離株)が存在する。この可変性は、RNAiといったような配列特異的薬学アプローチにとっては重大な課題である。RNAiの利用分野に適した保存した配列を同定するためには、クラスタルW(ClustalW)の修飾済みバージョンを用いて全ての完成ゲノムの間の比較が実施された。2つの多重整列スキームが得られた。すなわち、第1のスキームは全339個のHBV完全ゲノム配列を包含し、第2のスキームは、全てのヒトHBV分離株に制限されていた。多重整列結果は、解析され、HBVゲノム中の各位置における配列保存についての評点を含んだ表が生成された。長さが19ntより長い、最長の配列保存領域を同定するためのスライドウインドウ検索が新規作成された。3つの主要な保存領域が同定され、ヒトHBV分離株であるジェンバンク受入れ番号AF090840にマッピングされた。保存されたHBV配列はヒトゲノム及びcDNAライブラリ(ヒト染色体データベース)の両方のジェンバンク配列に対してスクリーニングされた。同定された保存ウイルス配列が21nt以上からユニークであることが発見された。ヒトの治療目的のためには、相同性ヒト配列が不注意にサイレンシングされないように保証することがRNAiのために保存ウイルス配列を選択することと同じ位重要である。
【0025】
ヒトC型肝炎ウイルス HCVは、フラビウイルス(Flaviviridae)族及びヘパシウイルス属の小型(直径40〜60ナノメートル)外皮、1本鎖RNAウイルスである。ゲノムは、およそ10,000ヌクレオチドで、3つの主要な構造的(C、E1及びE2)及び多数の非構造的タンパク質([NS]NS2〜NS5)を含め、10個のポリペプチドに転写後に開裂される約3000個のアミノ酸の単一ポリタンパク質をコードする。NSタンパク質は、タンパク質プロセシング(プロテアーゼ)及びウイルス複製(RNAポリメラーゼ)に必要な酵素を包含する。ウイルスは急速に突然変異することから、外皮タンパク質の変化は、それが免疫系から巧みに逃げるのを助ける可能性がある。少なくとも6つの主要な遺伝子型及び90を上回るHCV亜型が存在する。異なる遺伝子型は異なる地理的分布を有する。遺伝子型1a及び1bは、米国で最も一般的である(症例の約75%)。遺伝子型2a及び2b(約15%)及び3(約7%)はさほど一般的ではない。
【0026】
異なる遺伝子型に感染した患者の転帰又は疾病の重症度に差異はほとんどない。しかしながら、遺伝子型2及び3をもつ患者は、インターフェロン治療に応答する確率がさらに高い。肝臓内でウイルスは高い比率で複製し、顕著な配列不均一性を有する。慢性C型肝炎の主たる治療最終目的は、血液から検出可能なウイルスRNAを無くすることにある。療法を完了してから6ヵ月後に血液中に検出可能なC型肝炎ウイルスRNAが無くなることが、持続性応答として知られている。研究により、持続性応答が非常に有利な予後と同一視されること、そしてそれが治癒と等価であり得ることが示唆されている。持続性応答を達成しない患者において肝臓の瘢痕化(線維症)の進行を減速させるといったような、その他のよりわずかな治療上の利益も存在し得る。
【0027】
ジェンバンクバージョン134.0では、20,000を上回るHCV配列そして93のHCV完全ゲノム配列が存在する。全ての完全なゲノムの間の比較が、クラスタルWの修飾バージョンを用いて実施された。多重整列結果は、解析され、HCVゲノム中の各位置における配列保存についての評点を含んだ表が得られた。長さが19ntより長い最長の配列保存領域を同定するためのスライドウインドウ検索が新規作成された。3つの主要な保存領域が同定され、ジェンバンクRefSeq(基準配列)受入れ番号NC−004102にマッピングされた。(これはジェンバンク注釈付きHCV完全ゲノムである)。保存された配列はヒトゲノム及びcDNAライブラリ(ヒト染色体データベース)の両方のジェンバンク配列に対してスクリーニングされ、21nt以上からユニークであるこれらの配列が同定された。
【0028】
ヒト配列との非相同性
本発明に従ったサイレンシングのために、ターゲティングされた保存ウイルス配列が、天然に発生し、通常に機能する不可欠のあらゆるヒトポリヌクレオチド配列に対し実質的に相同でなく、かくして、dsRNA分子が、本発明の方法において使用された場合に不可欠の天然に発生するいずれの哺乳動物ポリヌクレオチド配列にも不利な影響を及ぼさないようにすることが同様に重要である。このような天然に発生する機能的哺乳動物ポリヌクレオチド配列としては、所望のタンパク質をコードする哺乳動物配列ならびに非コーディング配列であるものの健康な哺乳動物の体内では不可欠な調節配列を提供する哺乳動物配列が含まれる。基本的に、本発明において有用であるRNA分子は、本発明の方法のいずれかが実施された後その機能が妨害されないように意図されているあらゆる哺乳動物ポリヌクレオチド配列と充分に配列が異なっていなければならない。RNA分子ポリヌクレオチド配列と正常な哺乳動物配列の間の不可欠な相同性欠如を画定するために、コンピュータアルゴリズムを使用することができる。
【0029】
RISC(RNAにより誘導されたサイレンシング複合体)との会合及びその活性化の能力をもつ隣接dsRNA配列の長さは、一般に19〜27塩基対であると考えらえることから、同定された保存HBV及びHCV配列は、ヒトゲノムライブラリそして(恐らくはさらに一層重要であるが)ヒトcDNAライブラリと比較された。ヒトcDNAライブラリは、mRNA内に現われる発現された配列を表わすことから、かかるmRNA配列は、1つの細胞に提供された相同なdsRNA配列によるサイレンシングを特に受けやすくなる。
【0030】
従って、保存されたHBV及びHCV配列は、ヒトゲノム及びcDNA配列と比較された。HBV又はHCV保存配列に対する非ヒトcDNAライブラリ整合は全く同定されなかった(ただし、cDNAライブラリ内のHBV汚染として究極的に同定された整合がいくつか存在した)。ヒトゲノムライブラリ配列との比較により、21nts以上のあらゆる配列の整合が全く無いこと、20ヌクレオチドの整合が1つ、及び19ヌクレオチドの整合が1つあることが明らかになった。これらの整合は、非コーディング領域内にあり、cDNAライブラリ内には同族体が発見されなかったことからおそらくmRNA内には出現しないと思われる。従って、これらが安全上のリスクであるとみなされる可能性は低いが、望ましい場合には排除可能である。
【0031】
HBV及びHCVからの保存配列
HBV保存領域1
GAACATGGAGA[A(89%)/G(11%)]CA[T(76%)/C(24%)][C(78%)/A(20%)/T(2%)][A(78%)/G(21%)/T(1%)]CATCAGGA[T(65%)/c(35%)]TCCTAGGACCCCTGCTCGTGTTACAGGCGG[G(88%)/t(12%)]GT[T(89%)/G(11%)]TTTCT[T(94%)/C(6%)]GTTGACAA[G(64%)/A(36%)]AATCCTCACAATACC[A(56%)/G(43%)/T(1%)]CAGAGTCTAGACTCGTGGTGGACTTCTCTCAATTTTCTAGGGG[G(92%)/A(5%)/T(3%)]A[A(41%)/G(30%)/T(18%)/C(11%)][C(90%)/T(10%)]
HBV保存領域2
TGGATGTGTCT[G(99%)/A(1%)]CGGCGTTTTATCAT
HBV保存領域3
AAGGCCTTTCT[A(43%)/G(43%)/C(14%)][T(56%)/A(37%)/C(7%)]GT[A(87%)/C(13%)]AACA[A(57%)/G(43%)]TA[T(59%)/C(41%)][C(59%)/A(41%)]TG[A(92%)/C(8%)][A(93%)/C(7%)]CCTTTACCCCGTTGC[T(54%)/C(46%)][C(92%)/A(8%)]GGCAACGG[C(74%)/T(24%)]C[A(50%)/T(43%)/c(7%)]GG[T(87%)/C(13%)]CT[G(70%)/C(19%)/T(7%)/A(4%)]TGCCAAGTGTTTGCTGACGCAACCCCCACTGG[C(48%)/T(38%)/A(14%)]TGGGGCTTGG[C(84%)/T(16%)][C(84%)/T(12%)/G(4%)]AT[A(47%)/T(23%)/G(17%)/C(13%)]GGCCATC[A(83%)/G(17%)][G(92%)/C(8%)]CGCATGCGTGGAACCTTT[G(84%)/C(13%)/T(3%)][T(92%)/A(4%)/C(3%)/G(1%)]G[G(78%)/T(22%)]CTCCTCTGCCGATCCATACTGCGGAACTCCT[A(88%)/T(9%)/G(1%)/C(1%)]GC[C(57%)/A(35%)/T(6%)/G(2%)]GC[T(92%)/C(7%)/G(1%)]TGTTT[T(88%)/C(12%)]GCTCGCAGC[C(64%)/A(36%)]GGTCTGG[A(87%)/G(13%)]GC
HBV保存領域4
[C(62%)/T(38%)]ACTGTTCAAGCCTCAAGCTGTGCCTTGGGTGGCTTT[G(88%)/A(12%)]GG[G(92%)/A(8%)]CATGGACATTGAC[C(92%)/A(8%)]C[T(65%)/G(35%)]TATAAAGAATTTGGAGCT[A(65%)/T(35%)]CTGTGGAGTTACTCTC[G(62%)/T(35%)/A(3%)]TTTTTGCCTTC[T(92%)/C(8%)]GACTT[C(92%)/T(8%)]TTTCCTTC
HBV保存領域5
[C(69%)/del(31%)][G(69%)/del(31%)]A[G(85%)/T(11%)/C(4%)]GCAGGTCCCCTAGAAGAAGAACTCCCTCGCCTCGCAGACG[C(61%)/A(39%)]G[A(62%)/G(38%)]TCTCAATCG[C(88%)/A(12%)]CGCGTCGCAGAAGATCTCAAT[C(92%)/T(8%)]TCGGGAATCT[C(88%)/T(12%)]AATGTTAGTAT
HBV保存領域6
TTGG[C(84%)/t(16%)][C(84%)/t(12%)/g(4%)]AT[A(47%)/t(23%)/g(17%)/c(13%)]GGCCATC[A(83%)/g(17%)][G(92%)/c(8%)]CGCATGCGTGGAACCTTT[G(84%)/c(13%)/t(3%)][T(92%)/a(4%)/c(3%)/g(1%)]G[G(78%)/t(22%)]CTCCTCTGCCGATCCATACTGCGGAACTCCT[A(88%)/t(9%)/g(1%)/c(1%)]GC[C(57%)/a(35%)/t(6%)/g(2%)]GC[T(92%)/c(7%)/g(1%)]TGTTT[T(88%)/c(12%)]GCTCGCAGC[C(64%)/a(36%)]GGTCTGG[A(87%)/g(13%)]GC
HBV保存領域7
CTGCCAACTGGAT[C(86%)/T(10%)/A(4%)]CT[C(69%)/T(25%)/A(6%)]CGCGGGACGTCCTTTGT[T(75%)/C(25%)]TACGTCCCGTC[G(93%)/A(7%)]GCGCTGAATCC[C(86%)/T(7%)/A(7%)]GCGGACGACCC[C(52%)/G(25%)/T(19%)/A(4%)]
HCV保存領域1
[A(74%)/G(19%)/T(7%)][G(82%)/A(15%)/T(3%)]ATCACTCCCCTGTGAGGAACTACTGTCTTCACGCAGAAAGCGTCTAGCCATGGCGTTAGTATGAGTGT[C(92%)/T(7%)]GTGCAGC[C(89%)/T(10%)]TCCAGG[A(76%)/T(14%)/C(8%)/G(1%)]CCCCCCCTCCCGGGAGAGCCATAGTGGTCTGCGGAACCGGTGAGTACACCGGAATTGCC[A(90%)/G(9%)]GGA[C(78%)/T(16%)/A(5%)]GACCGGGTCCTTTCTTGGAT[G(78%)/T(11%)/A(10%)]AACCCGCTC[A(94%)/T(5%)]ATGCC[T(90%)/C(9%)]GGA[G(91%)/C(4%)/A(4%)]ATTTGGGCGTGCCCCCGC[G(85%)/A(14%)]AGAC[T(94%)/C(5%)]GCTAGCCGAGTAG[T(92%)/C(7%)]GTTGGGT[C(94%)/T(5%)]GCGAAAGGCCTTGTGGTACTGCCTGATAGGGTGCTTGCGAGTGCCCCGGGAGGTCTCGTAGACCGTGCA[C(62%)/T(30%)/A(8%)]CATGAGCAC[A(50%)/G(50%)][A(92%)/C(8%)][A(89%)/T(11%)]TCC[T(92%)/A(5%)/C(3%)]AAACC[T(84%)/C(14%)/A(2%)]CAAAGAAAAACCAAA[C(84%)/A(16%)]G[T(84%)/A(16%)]AACACCAACCG[C(77%)/T(23%)]CGCCCACAGGACGT[C(81%)/T(18%)/A(1%)]AAGTTCCCGGG[C(89%)/T(11%)]GG[T(80%)/C(20%)]GG[T(80%)/C(17%)/A(3%)]CAGATCGTTGG[T(91%)/C(8%)/G(1%)]GGAGT[T(87%)/A(11%)/C(2%)]TAC[C(74%)/T(20%)/G(6%)]TGTTGCCGCGCAGGGGCCC[C(87%)/T(8%)/A(4%)/G(1%)][A(92%)/C(8%)][G(92%)/A(5%)/C(2%)][G(87%)/A(12%)/T(1%)]TTGGGTGTGCGCGCGAC[T(78%)/G(13%)/A(7%)/C(2%)]AGGAAGACTTC[C(90%)/G(5%)/T(5%)]GA[G(90%)/A(10%)]CGGTC[G(79%)/C(12%)/A(8%)/T(1%)]CA[A(86%)/G(14%)]CC[T(88%)/A(6%)C(6%)]CG[T(82%)/C(9%)A(9%)]GG[A(87%)/T(8%)/G(3%)/C(2%)]AG
HCV保存領域2
ATGGC[T(76%)/A(12%)/C(10%)/G(2%)]TGGGATATGATGATGAACTGG[T(81%)/C(19%)]C
配列番号書式中に提示された保存コンセンサス配列
以下の配列は、37CFR1.821に基づいて提供されたコードを用いてWIPO規格ST.25(1998)によって要求されている書式で提示されている。配列番号1〜配列番号10はHBVゲノム配列番号11から誘導され、配列番号12はHCVゲノムから誘導される。
【0032】
配列番号1 HBV
GAACATGGAGArCAyhdCATCAGGAyTCCTAGGACCCCTGCTCGTGTTACAGGCGGkGTkTTTCTyGTTGACAArAATCCTCACAATACCdCAGAGTCTAGACTCGTGGTGGACTTCTCTCAATTTTCTAGGGGdAny
配列番号2 HBV
TGGATGTGTCTrCGGCGTTTTATCAT
配列番号3 HBV
AAGGCCTTTCTvhGTmAACArTAymTGmmCCTTTACCCCGTTGCymGGCAACGGyChGGyCTnTGCCAAGTGTTTGCTGACGCAACCCCCACTGGhTGGGGCTTGGybATnGGCCATCrsCGCATGCGTGGAACCTTTbnGkCTCCTCTGCCGATCCATACTGCGGAACTCCTnGCnGCbTGTTTyGCTCGCAGCmGGTCTGGrGC
配列番号4 HBV
yACTGTTCAAGCCTCAAGCTGTGCCTTGGGTGGCTTTrGGrCATGGACATTGACmCkTATAAAGAATTTGGAGCTwCTGTGGAGTTACTCTCdTTTTTGCCTTCyGACTTyTTTCCTTC
配列番号5 HBV
CGAbGCAGGTCCCCTAGAAGAAGAACTCCCTCGCCTCGCAGACGmGrTCTCAATCGmCGCGTCGCAGAAGATCTCAATyTCGGGAATCTyAATGTTAGTAT
配列番号6 HBV
AbGCAGGTCCCCTAGAAGAAGAACTCCCTCGCCTCGCAGACGmGrTCTCAATCGmCGCGTCGCAGAAGATCTCAATyTCGGGAATCTyAATGTTAGTAT
配列番号7 HBV
CAbGCAGGTCCCCTAGAAGAAGAACTCCCTCGCCTCGCAGACGmGrTCTCAATCGmCGCGTCGCAGAAGATCTCAATyTCGGGAATCTyAATGTTAGTAT
配列番号8 HBV
GAbGCAGGTCCCCTAGAAGAAGAACTCCCTCGCCTCGCAGACGmGrTCTCAATCGmCGCGTCGCAGAAGATCTCAATyTCGGGAATCTyAATGTTAGTAT
配列番号9 HBV
TTGGybATnGGCCATCrsCGCATGCGTGGAACCTTTbnGkCTCCTCTGCCGATCCATACTGCGGAACTCCTnGCnGCbTGTTTyGCTCGCAGCmGGTCTGGrGC
配列番号10 HBV
CTGCCAACTGGAThCThCGCGGGACGTCCTTTGTyTACGTCCCGTCrGCGCTGAATCChGCGGACGACCCn
配列番号11 HCV
DdATCACTCCCCTGTGAGGAACTACTGTCTTCACGCAGAAAGCGTCTAGCCATGGCGTTAGTATGAGTGTyGTGCAGCyTCCAGGnCCCCCCCTCCCGGGAGAGCCATAGTGGTCTGCGGAACCGGTGAGTACACCGGAATTGCCrGGAhGACCGGGTCCTTTCTTGGATdAACCCGCTCwATGCCyGGAvATTTGGGCGTGCCCCCGCrAGACyGCTAGCCGAGTAGyGTTGGGTyGCGAAAGGCCTTGTGGTACTGCCTGATAGGGTGCTTGCGAGTGCCCCGGGAGGTCTCGTAGACCGTGCAhCATGAGCACrmwTCChAAACChCAAAGAAAAACCAAAmGwAACACCAACCGyCGCCCACAGGACGThAAGTTCCCGGGyGGyGGhCAGATCGTTGGbGGAGThTACbTGTTGCCGCGCAGGGGCCCnmvdTTGGGTGTGCGCGCGACnAGGAAGACTTCbGArCGGTCnCArCChCGhGGnAG
配列番号12 HCV
ATGGCnTGGGATATGATGATGAACTGGyC
2本鎖RNA遺伝子サイレンシング/RNAi 「核酸組成物」又は「ヌクレオチド」組成物というのは、それ自体プリン(例えばアデニン)及びピリミジン(例えばチミン)から誘導された塩基と結合された、炭水化物(例えばペントース又はヘキソース)と1つ以上のリン酸分子が結合された任意の1つ以上の化合物を意味している。特に天然に発生する核酸分子としては、ゲノムデオキシリボ核酸(DNA)及び宿主リボ核酸(RNA)、ならびに後者のいくつかの異なる形態例えばメッセンジャRNA(mRNA)、トランスファRNA(tRNA)及びリボソームRNA(rRNA)が含まれる。同様に包含されているのは、異なるRNA分子と相補的な(cDNA)異なるDNA分子である。合成DNA又は天然に発生するDNAとのそのハイブリッド、ならびにDNA/RNAハイブリッド、及びペプチド核酸(PNA)分子(ガンバリ(Gambari)、最新薬学設計(Curr Pharm Des)2001年11月;7(17):1839−62)も同様に使用することができる。
【0033】
所望の核酸分子がRNAである場合、本書で提供された配列内のT(チミン)はU(ウラシル)で置換される。例えば、配列番号1〜配列番号44は、本書でDNA配列として開示されている。当業者にとっては、上述の配列番号のいずれかからの配列を含むRNAエフェクタ分子が、Uで置換されたTを有することになるということは明白であろう。
【0034】
核酸は標準的には、2つ以上の共有結合された天然に発生する又は修飾されたデオキシリボヌクレオチド又はリボヌクレオチドの配列を有する。修飾済み核酸には、例えば非天然塩基を伴うペプチド核酸及びヌクレオチドが含まれる。
【0035】
「dsRNA」というのは、2本鎖立体配座内にある2つ以上のヌクレオチドの1領域を含む核酸を意味する。本発明の保存ウイルス配列が、dsRNA媒介遺伝子サイレンシング又はRNAi機序を通して作用する当該技術分野において既知の又はその後開発された数多くの組成物のうちのいずれの中でも利用可能であるということが想定されている。さまざまな実施形態において、dsRNAは、例えば2000年4月19日出願国際公開第00/63364号パンフレット又は1999年4月21日出願米国特許出願公開第60/130,377号明細書内で開示されているRNA/DNAハイブリッドといったようなリボヌクレオチド及びデオキシヌクレオチドの混合物から成るか又は全体的にリボヌクレオチドから成る。dsRNAは、分子の1つのセグメント内のヌクレオチドがその分子のもう1つのセグメント内のヌクレオチドと塩基対合するような形で自己相補性領域を伴う単一の分子であり得る。さまざまな実施形態においては、単一分子から成るdsRNAは、完全にリボヌクレオチドから成るか又は、デオキシリボヌクレオチド領域に相補的であるリボヌクレオチド領域を含む。あるいはまた、dsRNAは、互いに対する相補性をもつ領域を有する2つの異なるストランドを含み得る。さまざまな実施形態において、両方のストランドは、完全にリボヌクレオチドから成るか、1本のストランドは完全にリボヌクレオチドから成り、1本のストランドは完全にデオキシリボヌクレオチドから成るか、あるいは、一方又は両方のストランドがリボヌクレオチドとデオキシリボヌクレオチドの混合物を含む。望ましくは、相補性領域は、少なくとも70、80、90、95、98又は100%相補的である。望ましくは、2本鎖立体配座内に存在するdsRNAの領域は、少なくとも19、20、21、22、23、24、30、50、75、100、200、500、1000、2000又は5000ヌクレオチドを含むか又は、dsRNAで表わされているcDNA内のヌクレオチドの全てを含む。一部の実施形態では、dsRNAは、1本鎖末端といったようないかなる1本鎖領域も含まず、あるいはdsRNAはヘヤピンである。その他の実施形態においては、dsRNAは1つ以上の1本鎖領域又はオーバーハングを有する。望ましいRNA/DNAハイブリッドは、アンチセンス鎖又は領域である(例えば、標的核酸に対する少なくとも70、80、90、95、98又は100%の相補性をもつ)DNA鎖又は領域及び、センス鎖又は領域である(例えば標的核酸に対し少なくとも70、80、90、95、98又は100%の同一性をもつ)RNA鎖又は領域を含む。さまざまな実施形態において、RNA/DNAハイブリッドは、本書で記述されているもの又は2000年4月19日出願国際公開第00/63364号パンフレット又は1999年4月21日出願米国特許出願公開第60/130,377号明細書内で記述されているものといったような酵素又は化学的合成方法を用いてインビトロで作られる。その他の実施形態においては、インビトロで合成されたDNA鎖は、細胞内へのDNA鎖の形質転換の前、後又はそれと同時にインビボ又はインビトロでRNA鎖と複合体形成される。さらにその他の実施形態においては、dsRNAは、センス及びアンチセンス領域を含む単一環状核酸であるか、そうでなければ、dsRNAは環状核酸及び第2の環状核酸又は線状核酸のいずれかを含む(例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット又は1999年4月21日出願の米国特許出願公開第60/130,377号明細書を参照のこと)。環状核酸の例としては、ヌクレオチドの遊離5’ホスホリル基がループバック式にもう1つのヌクレオチドの2’ヒドロキシル基に連結された状態となるラリアート構造が含まれる。
【0036】
その他の実施形態においては、dsRNAは、対応する2’位に水素又はヒドロキシル基が含まれている対応するdsRNAに比べて、インビトロ又はインビボでdsRNAの半減期を増大させる(メトキシ基などの)アルコキシ基又は(フッ素基といった)ハロゲンを糖内の2’位に含んでいる1つ以上の修飾済みヌクレオチドを含む。さらにもう1つの実施形態においてはdsRNAは、天然に発生するホスホジエステル連結以外の隣接するヌクレオチドの間の1つ以上の連結を含む。かかる連結の例としては、ホスホラミド、ホスホロチオアート、及びホスホロジチオアート連結が含まれる。dsRNAは同様に、米国特許第6,673,661号明細書内で教示されているように化学的に修飾された核酸分子でもあり得る。その他の実施形態においては、dsRNAは、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット又は1999年4月21日出願の米国特許出願公開第60/130,377号明細書により開示されているように1つ又は2つのキャップドストランドを含む。その他の実施形態においては、dsRNAは、調節配列(例えば転写因子結合部位、プロモータ又はmRNAの5’又は3’未翻訳領域(UTR)といったコーディング配列又は非コーディング配列を含む。さらに、dsRNAは、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット(例えば8〜22ページ参照)内で開示されている少なくとも部分的にdsRNAである分子のいずれか、ならびにその教示が本明細書に参照により援用されている2002年7月31日出願の米国仮特許出願第60/399,998号明細書及び2003年7月31日出願のPCT米国特許第2003/024028号明細書及び2002年10月18日出願米国仮特許出願第60/419,532号明細書及び2003年10月20日出願PCT米国特許第2003/033466号明細書の中で記述されているdsRNA分子のいずれかであり得る。dsRNAのいずれも、2000年4月19日付国際公開第00/63364号パンフレット(例えばp16〜22参照)の中で記述されているもののような標準的方法か又は本書で記述されている方法を用いてインビトロ又はインビボで発現可能である。
【0037】
dsRNA「ヘヤピン」構築物;逆方向反復配列を伴う1本鎖RNAはより効率よくdsRNAヘヤピン構造を形成することから、一部の利用分野では、単分子ヘヤピンdsRNAをコードする構築物が、2重鎖dsRNA(すなわちセンス領域を伴う1つのRNA分子とアンチセンス領域を伴う別のRNA分子で構成されたdsRNA)をコードする構築物よりもさらに望ましい。このさらに高い効率は、一部には、2本鎖dsRNAを生成する収束プロモータを含むベクター内で生じる転写干渉の出現に起因するものである。転写干渉は結果として各RNA鎖の不完全な合成をもたらし、かくして、互いに塩基対合して2重鎖を形成しうる完全センス及びアンチセンス鎖の数を低減させる。望まれる場合、(i)1つのベクターがセンスRNAをコードし第2のベクターがアンチセンスRNAをコードする2ベクター系、(ii)個々のストランドが同じプラスミドによって、ただし別々のシストロンの使用を通してコードされている2シストロンベクター、又は(iii)ヘヤピンdsRNAすなわちセンス及びアンチセンス配列が同じRNA分子内でコードされているRNAをコードする単一プロモータベクタの使用を通して、転写干渉を克服することができる。ヘヤピン発現ベクターは、2重鎖ベクターに比べていくつかの利点を有する。例えば、2重鎖RNAをコードするベクターにおいては、RNA鎖は転写の直後にその相補的対応物を見い出し、それと塩基対合することが必要である。このハイブリッド形成が起こらない場合、個々のRNA鎖は、転写鋳型から離れて拡散し、アンチセンス鎖に比べたセンス鎖の局所的集中は減少する。この効果は、細胞あたりの鋳型のレベルがさらに低いことに起因してインビトロで転写されたRNAに比べ細胞内で転写されるRNAについてさらに大きいものである。その上、RNAは、最近傍則によって折重なり、その結果、同時転写により折畳まれる(すなわち転写されるにつれて折畳まれる)RNA分子をもたらす。従って、完成したRNA転写物の何パーセントかは、これらの分子内の分子内塩基対合のため、相補的な第2のRNAとの塩基対合には利用不可能である。かかる利用不能な分子の百分率は、それらの転写後の時間と共に増加する。これらの分子は、すでに安定した形で折畳まれた構造であることから、決して2重鎖を形成し得ない。ヘヤピンRNA内では、RNA配列は、つねにその相補的RNAと物理的に近いところにある。RNA構造は静的でないことから、RNAが過渡的に展開するにつれてその相補的配列は直ちに利用可能であり、非常に近いことから塩基対合に参加できる。ひとたび形成された時点で、ヘヤピン構造は、もとのヘヤピン構造に比べさらに安定した状態となるものと予測されている。特に望ましいのは、例えば、2002年7月31日出願の米国特許出願公開第60/399,998P号明細書及び2003年7月31日出願のPCT米国特許第2003/024028号明細書「2本鎖RNA構造及び構築物、及びその生成及び使用方法(Double Stranded RNA Structures and Constructs and Methods for Generating and Using the Same)」内で教示されているような、dsRNAヘヤピンを形成するべくRNA依存性RNAポリメラーゼにより拡張され得る部分的ヘヤピンである「強制」ヘヤピン構築物;ならびに2002年10月18日出願の米国特許出願公開第60/419,532号明細書及び2003年10月20日出願のPCT米国特許第2003/033466号明細書「2本鎖RNA構造及び構築物、及びその生成及び使用方法(Double−Stranded RNA Structures and Constructs, and Methods for Generating and Using the Same)」内で教示されているようなマルチエピトープ構築物及びミス対合領域を伴うヘヤピンである「乳房」構造のヘヤピンである。
【0038】
「短dsRNA」というのは、2本鎖立体配座にある約50、45、40、35、30、27、25、23、21、20又は19個の隣接ヌクレオチドという長さをもつdsRNAを意味している。望ましくは、短dsRNAは、長さが少なくとも19個の塩基対である。望ましい実施形態においては、2本鎖領域の長さは、19〜50、19〜40、19〜30、19〜25、20〜25、21〜23、25〜30又は30〜40の隣接塩基対である。一部の実施形態においては、短dsRNAは、長さが30〜50、50〜100、100〜200、200〜300、400〜500、500〜700、700〜1000、1000〜2000又は2000〜5000個のヌクレオチドであり、38以上〜60個以下の隣接塩基対の長さをもつ2本鎖領域を有する。一実施形態においては、短dsRNAは完全に2本鎖である。一部の実施形態では、短dsRNAは、長さが11〜30ヌクレオチドであり、全dsRNAは、2本鎖である。その他の実施形態では、短dsRNAは、1つ又は2つの1本鎖領域を有する。特定の実施形態においては、短dsRNAは、dsRNA媒介型ストレス応答経路内でPKR又はもう1つのタンパク質に結合する。望ましくは、短dsRNAは、少なくとも20、40、60、80、90又は100%だけPKRの2量体化及び活性化を阻害する。一部の望ましい実施形態においては、短dsRNAは、少なくとも20、40、60、80、90又は100%だけdsRNA媒介型ストレス応答経路のPKR又はもう1つの構成要素に対する長dsRNAの結合を阻害する。RNA媒介型毒性を回避するためその他のdsRNAと併せた短dsRNAの利用に関しては、2003年4月28日出願の米国特許出願公開第10/425,006号号明細書「毒性を誘発することのない遺伝子サイレンシング方法(Methods of Silencing Genes Without Inducing Toxicity)」、パチャック(Pachuk)の教示も参照のこと。
【0039】
「少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列」というのは、出発部位が少なくとも19個の塩基対のポリヌクレオチドを産生する能力をもつかぎり、開示された配列の1つの内部のいずれのヌクレオチドにおいてもヌクレオチド配列が開始できることを意味している。例えば、1つの少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列は、ヌクレオチド1からヌクレオチド19まで、ヌクレオチド2からヌクレオチド20まで、ヌクレオチド3からヌクレオチド21まで等々を含んで19量体を産生することができる。かくして、20量体は、ヌクレオチド1からヌクレオチド20まで、ヌクレオチド2からヌクレオチド21まで、ヌクレオチド3からヌクレオチド22まで等々を含むことができる。20隣接ヌクレオチドを超える類似の配列も想定されている。
【0040】
「発現ベクター」というのは、例えば、興味ある下流遺伝子またはコーデキング領域(例えば、タンパク質をコードするcDNAまたはゲノムDNAフラグメント、あるいはいずれかの興味あるRNA、例えばそれらは、コーディング領域の外側にある配列、アンチセンスRNAコーディング領域、dsRNAコーディング領域、またはコーディング領域の外側にあるRNA配列に作動可能に連結されていてもよい)に作動可能に連結されている少なくとも1つのプロモータを含む構築物といった、RNAを転写するように設計されたあらゆる2本鎖DNA又は2本鎖RNAを意味する。レシピエント細胞内への発現ベクターのトランスフェクション又は形質転換は、発現ベクターによってコードされるRNA又はタンパク質を細胞が発現できるようにする。発現ベクターは、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス又はヘルペスウイルスに由来する、遺伝子工学処理されたプラスミド、ウイルス又は人工染色体であり得る。
【0041】
「発現構築物」というのは、RNA、(例えば1つのタンパク質をコードするcDNA又はゲノムDNAフラグメント、又は問題のあるゆるRNAといった)例えば問題の下流遺伝子又はコーディング領域に作動可能に連結された少なくとも1つのプロモータを含む構築物といったような、RNAを転写するように設計されたあらゆる2本鎖DNA又は2本鎖RNAを意味する。レシピエント細胞内への発現構築物のトランスフェクション又は形質転換は、発現構築物によってコードされるRNA又はタンパク質を細胞が発現できるようにする。発現構築物は、例えばバクテリオファージ、アデノウイルス、レトロウイルス、ポックスウイルス又はヘルペスウイルスに由来する、遺伝子工学処理されたプラスミド、ウイルス又は人工染色体であり得る。発現構築物は、生きた細胞中で複製可能でなくてはならないが、合成により作ることもできる。
【0042】
「作動可能に連結された」という語は、核酸分子及び1つ以上の調節配列(例えばプロモータ)が、調節配列に適切な分子が結合させられた時点で、核酸分子の産物(すなわちポリペプチド)の発現及び/又は分泌を可能にするか又はmRNAの転写を可能にするような形で結びつけられていることを意味する。
【0043】
「プロモータ」というのは、共有結合により連結された核酸分子の転写を導くのに充分な核酸配列を意味する。同様にこの定義内に含まれるのは、プロモータ依存型遺伝子発現を細胞型特異的、組織型特異的又は時間特異的な形で制御可能なものにするのに充分であるか又は外部シグナル又は作用物質により誘発可能である転写制御要素(例えばエンハンサ)である。当業者にとって周知であるこのような要素は、遺伝子の5’又は3’領域内又はイントロン内に見い出すことができる。望ましくは、プロモータは、例えば、核酸配列の発現を可能にするような形で例えばcDNA又は遺伝子といった核酸配列に作動可能に連結される。
【0044】
本発明に従ったRNA分子は、例えばプロメガプロトコル及び利用分野案内(Promega Protocols and Applications Guide)(第3版、1996)、ドイル(Doyle)編、ISBN No.157といったテキストにより記述された従来の方法に従ってバクテリオファージT7、T3又はSP6RNAポリメラーゼを用いて従来の酵素合成方法によりインビトロで作られた、RNA分子又は部分的に2本鎖であるRNA配列又はRNA/DNAハイブリッドとしての組成物の形で、哺乳動物又は哺乳動物細胞内に存在する細胞外病原体まで送達可能である。あるいはまたこれらの分子はインビトロで化学的合成方法により作ることができる〔例えばQ.シュー(Xu)ら、核酸研究(Nucleic Acids Res.)、24(18):3643−4(1996年9月);N.ナリシュキン(Naryshkin)ら、生物有機化学(Bioorg.Khim)、22(9):691−8(1996年9月);J.A.グラスビー(Grasby)ら、核酸研究、21(19):4444−50(1993年9月);C.シェ(Chaix)ら、核酸研究、17:7381−93(1989年);S.H.シュー(Chou)ら、生物化学(Biochem)、28(6):2422−35(1989年3月);0.オダール(Odal)ら、核酸シンポジウム叢書(Nucleic Acids Symp.Ser.)、21:105−6(1989);N.A.ナリシュキンら、生物有機化学、22(9):691−8(1996年9月);S.サン(Sun)ら、RNA、3(11):1352−1363(1997年11月);X.チャン(Zhang)ら、核酸研究、25(20):3980−3(1997年10月);S.M.グルバズノフ(Grvaznov)ら、核酸研究、2−6(18):4160−7(1998年9月);M.カドクラ(Kadokura)ら、核酸シンポジウム叢書、37:77−8(1997);A.デビソン(Davison)ら、生物医学ペプチド、タンパク質及び核酸(Biorned.Pept.Proteins.Nucleic Acids)、2(l):1−6(1996年);及びA.V.マドラコフスカイア(Mudrakovskaia)ら、生物有機化学、17(6):819−22(1991年6月)を参照のこと〕。
【0045】
さらに別法として、本発明のRNA分子は、組換え型微生物、例えば細菌及び酵母中、又は組換え型宿主細胞中例えば哺乳動物細胞中で作り、従来の技術によりその培養から単離することができる。例えば、これらの技術を詳述する実験室マニュアルの模範であるサンブルック(Sambrook)ら、分子クローニング、実験室マニュアル(MOLECULAR CLONING、A LABORATORY MANUAL)、第2版;コールドスプリングハーバーラボラトリープレス(Cold Spring Harbor Laboratory Press)、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー(Cold Spring Harbor、New York)、1989年中で記述されている技術、及び本明細書に参照により援用されている米国特許第5,824,538号明細書;同第5,877,159号明細書及び同第5,643,771号明細書に記述された技術を参照のこと。
【0046】
インビトロで調製されるか又は合成されるこのようなRNA分子は、哺乳動物細胞に直接、又はインビトロで作られるにつれて哺乳動物に対し送達され得る。上述の参考文献は、当業者に対し、本書で提供されている教示をかんがみて、以下の特定の実施形態のいずれかを産生するのに必要な技術を提供する。従って、1つの実施形態においては、組成物の「作用物質」は2重鎖(すなわち2本のストランドで構成されている)、つまり、完全又は部分的のいずれかの2本鎖RNAである。
【0047】
もう1つの実施形態においては、作用物質は、1本鎖RNAセンス鎖である。もう1つの実施形態においては、組成物の作用物質は、1本鎖RNAアンチセンス鎖である。
【0048】
好ましくは、1本鎖RNAセンス又はアンチセンス鎖は一方又は両方の末端でヘヤピンを形成する。望ましくは、1本鎖RNAセンス又はアンチセンス鎖は、末端間のある中間部分でヘヤピンを形成する。このような1本鎖RNAセンス又はアンチセンス鎖は同様に、折り返えされてインビトロ又はインビボで部分的に2本鎖となるように設計されていてもよい。組成物中で使用される有効な作用物質としての現存のRNA分子のもう1つの実施形態は、任意には、非塩基対合型ポリヌクレオチド配列によって分離されているセンスポリヌクレオチド配列及びアンチセンスポリヌクレオチド配列の両方を含む1本鎖RNA配列である。好ましくは、この1本鎖RNA配列は、ひとたび細胞内に入った時点で又はその合成中にインビトロで2本鎖となる能力をもつ。
【0049】
本発明のさらにもう1つの実施形態は、上述の通りRNA/DNAハイブリッドである。
【0050】
合成RNA分子のさらにもう1つの実施形態は、ロッド構造を任意に形成する環状RNA分子〔例えばK−S.ワン(Wang)ら、ネイチャー(Nature)323:508−514(1986)参照〕であるか又は部分的に2本鎖となっており、全て本明細書に参照により援用されているS.ワング(S.Wang)ら、核酸研究、22(12):2326−33(1994年6月);Y.マツモト(Y.Matsumoto)ら、米国科学アカデミー紀要(Proc.Natl.Acad.Sci、USA)、87(19):7628−32(1990年10月);E.フォード(Ford)及びM.アーレス(Ares)、米国科学アカデミー紀要91(8):3117−21(1994年4月);M.ツアグリス(Tsagris)ら、核酸研究、19 7):1605−12(1991年4月);S.ブラウン(Braun)ら、核酸研究、24(21):4152−7(1996年11月);Z.パスマン(Pasman)ら、RNA、2(6):603−10(1996年6月);P.G.ザフィロポラス(Zaphiropoulos)、米国科学アカデミー紀要、93(13):6536−41(1996年6月);D.ボードリー(Beaudry)ら、核酸研究、23(15):3064−6(1995年8月)に記述されている技術に従って調製可能である。さらにもう1つの作用物質は、別々のストランド上で存在するか又は同じストランド上に散在するRNA及びDNAから成る2本鎖分子である。
【0051】
あるいはまた、RNA分子はインビボで形成され得、従って哺乳動物細胞又は哺乳動物に対する作用物質の送達後インビボでこのような部分的に2本鎖であるRNA分子を生成する「送達作用物質」によって送達され得る。かくして、本発明の組成物を形成する作用物質は、1つの実施形態において、上述のRNA分子の1つを「コードする」2本鎖DNA分子である。DNA作用物質は、2本鎖RNAとなるべく細胞内で転写されるヌクレオチド配列を提供する。もう1つの実施形態においては、DNA配列は、任意には一方又は両方の末端でヘヤピンを形成するか又は折り返えされて部分的に2本鎖となる上述の1本鎖RNAセンス又はアンチセンス鎖へと細胞の内部で転写されるデオキシリボヌクレオチド配列を提供する。組成物の送達作用物質であるDNA分子は、任意には非塩基対合型ポリヌクレオチドによって分離されているセンスポリヌクレオチド配列及びアンチポリヌクレオチド配列の両方を含み2本鎖となる能力をもつ1本鎖RNA配列を提供することができる。あるいはまた送達作用物質であるDNA分子は、任意にはインビボでロッド構造又は部分2本鎖を形成する上述の環状RNA分子の転写を提供する。DNA分子は同様に、上述のとおりのRNA/DNAハイブリッド又は1つのRNA鎖及び1つのDNA鎖を含む2重鎖のインビボにて産生を提供することもできる。これらのさまざまなDNA分子は、上述のサンブルック又は前述のプロメガの参考文献中で記述されているものといったような従来の技術を利用することによって設計することができる。
【0052】
上述のRNA分子のいずれかの哺乳動物細胞中での形成を可能にする本発明の後者の送達作用物質は、DNA1本鎖又は2本鎖プラスミド又はベクターであり得る。インビトロ又はインビボで本書で記述されているようにRNAを産生するように設計された発現ベクターは、ミトコンドリアRNAポリメラーゼ、RNApolI、RNApolII及びRNApo1III及びウイルスポリメラーゼを含めたあらゆるRNAポリメラーゼ及びT7及びSp6といったようなバクテリオファージポリメラーゼの制御下にある配列を含むことができる。これらのベクターは、本発明に従って細胞内で所望のRNA分子を転写するために使用することができる。ベクターは望ましくは、内因性ミトコンドリアRNAポリメラーゼ(例えばヒトミトコンドリアRNAポリメラーゼ;その場合、かかるベクターは対応するヒトミトコンドリアプロモータを利用することができる)を利用するように設計可能である。ミトコンドリアポリメラーゼは、インビボで、キャップド(キャッピング酵素の発現を通したもの)又はアンキャップドメッセージを生成するために使用可能である。RNApolI、RNApolII及びRNApolIII転写物、も同様にインビボで生成可能である。このようなRNAは、キャッピングされていてもいなくてもよく、望まれる場合、ワクシニアキャッピング酵素又はアルファウイルスキャッピング酵素といったようなキャッピング酵素の使用を含めたさまざまな手段により細胞質キャッピングが達成可能である。しかしながら、全てのpolII転写物がキャッピングされる。DNAベクターは、プロモータの1つ又は多数のプロモータの組合せ(ミトコンドリア、RNApolI、polII、又はpolIII、又はウイルス、細菌又はバクテリオファージプロモータならびに同族体ポリメラーゼ)を含有するように設計される。好ましくは、プロモータがRNApolIIである場合、RNA分子をコードする配列は約300ntsより大きい読取り枠を有し、核内のナンセンス媒介型分解を防ぐように設計の法則に従わなくてはならない。かかるプラスミド又はベクターは、細菌、ウイルス又はファージ由来のプラスミド配列を含むことができる。
【0053】
かかるベクターは、染色体ベクター、エピソームベクターおよびウイルス由来のベクター、例えば、細菌プラスミド、バクテリオファージ、酵母エピソーム、酵母染色体エレメントおよびウイルス、そしてそれらの組み合わせに由来するベクターを包含し、例えば、プラスミドおよびバクテリオファージ遺伝エレメント、コスミドおよびファージミドに由来するものを包含する。
【0054】
かくして、1つのベクター例は、1本鎖又は2本鎖ファージベクターである。もう1つのベクター例は、1本鎖又は2本鎖RNA又はDNAウイルスベクターである。かかるベクターは、DNA及びRNAを細胞内に導入するための周知の技術により、ポリヌクレオチド好ましくはDNAとして細胞内に導入され得る。ファージ及びウイルスベクターの場合、ベクターは、感染及び形質導入のための周知の技術によりパッケージング又は包膜されたウイルスとして細胞内にあってもよく好ましくはこのように細胞内に導入される。ウイルスベクターは、複製応答性ベクターであっても複製欠損性ベクターであってもよい。後者の場合、ウイルス伝播は一般に、相補する宿主細胞内でのみ発生する。
【0055】
もう1つの実施形態においては、送達作用物質は、2つ以上のDNA又はRNAプラスミド又はベクターを含む。1例としては、第1のDNAプラスミドは、上述のような1本鎖RNAセンスポリヌクレオチド配列を提供でき、第2のDNAプラスミドは上述のように、1本鎖RNAアンチセンスポリヌクレオチド配列を提供でき、ここで、センス及びアンチセンスRNA配列は塩基対合し2本鎖となる能力をもつ。このようなプラスミドは、例えばタンパク質の組換え型発現のためにプラスミド及びベクターを構築するのに用いられる周知の配列といったような例えば細菌配列といったその他の従来のプラスミド配列を含むことができる。ただし、タンパク質発現を可能にする配列例えばコザック(Kozak)領域などをこれらのプラスミド構造内に含み入れないことが望ましい。
【0056】
本発明のdsRNAを産生するように設計されたベクターは、望ましくは、標的配列に相補的で相同な一定数の異なるdsRNAを含め、2つ以上を生成するように設計され得る。このアプローチは、単一のベクターが、単一の転写単位由来の単一のdsRNA分子ではなく数多くの独立して作動的なdsRNAを産生することができ、かつ多数の異なるdsRNAを産生することにより最適な有効性を自己選択することが可能であるという点で、望ましいものである。無作為の及び/又は予め定められたスプライス部位を作り出すための開裂用の配列ならびに自己触媒配列を含め多様な手段を利用してこれを達成することが可能である。
【0057】
哺乳動物細胞内での上述の所望のRNA分子の形成のために必要な情報を提供するためのその他の送達作用物質としては、本発明の所要RNA分子のために必要な配列を含むように設計されている生きた、弱毒化された又は死んだ、不活性組換え型細菌が含まれる。このような組換え型細菌細胞、真菌細胞などは、本明細書に参照により援用されている米国特許第5,824,538号明細書;同第5,877,159号明細書;及び同第5,643,771号明細書の中で記述されているような従来の技術を用いることによって調製可能である。これらの送達作用物質を調製する上で有用である微生物としては、制限的な意味なくエシェリキア・コリ(Escherichia coli)、バシラス・サチリス(Bacillus subtilis)、サルモネラ・ティフィムリウム(Salmonella typhimurium)及びシュードモナス(Pseudomonas)、ストレプトマイセス(Streptomyces)及びスタフィロコッカス(Staphylococcus)の多様な種を含めた上述の参考文献中に列挙されたものがある。
【0058】
哺乳動物細胞内での所望の上述のRNA分子の形成のために必要な情報を提供するためのさらなるその他の送達作用物質としては、生きた、弱毒化した又は死んだ不活性ウイルス、特に、上述の所要RNAポリヌクレオチド配列を担持する組換え型ウイルスがある。かかるウイルスは、遺伝子療法などのために細胞に遺伝子を送達するのに現在使用されている組換え型ウイルスと類似の要領で設計され得るが、好ましくは、タンパク質又はタンパク質の機能的フラグメントを発現する能力を有していない。インビボで哺乳動物細胞に対し所要RNA分子を提供するために操作可能である有用なウイルス又はウイルス配列としては、制限的意味なくアルファウイルス、アデノウイルス、アデノ関連ウイルス、バキュロウイルス、デルタウイルス、ポックスウイルス、肝炎ウイルス、ヘルペスウイルス、パポバウイルス(例えばSV40)、ポリオウイルス、仮性狂犬病ウイルス、レトロウイルス、レンチウイルス、ワクシニアウイルス、プラス及びマイナス鎖RNAウイルス、ウイロイド、ウィルソイド又はそれらの一部分がある。これらのさまざまなウイルス送達作用物質は、本発明の教示と共になかでもM.ディ・ノコラ(Di Nocola)ら、癌の遺伝子治療(Cancer Gene Ther.)、5(6):350−6(1998年)の中に記述されているような従来の技術を適用することによって設計可能である。
【0059】
「インビボ」という語は、単細胞又は多細胞生体内で組織培養系を含め、細胞DNA又はRNA複製機序が無傷であるあらゆる系を包含するように意図されている。
【0060】
「多重セキトープ(sequitope)dsRNA」又は「マルチセキトープdsRNA」というのは、多重標的核酸から誘導されたセグメントを有するか又は、同じ標的核酸由来の非隣接セグメントを有するRNA分子を意味する。例えば、多重セキトープdsRNAは、(i)単一の生体の多数の遺伝子を表わす配列;(ii)多様な異なる生体からの1つ以上の遺伝子を表わす配列;及び/又は(iii)特定の遺伝子の異なる領域を表わす配列(例えばプロモータからの1つ以上の配列及びmRNAからの1つ以上の配列)に由来するセグメントを有し得る。望ましくは、各々のセグメントは、標的核酸の対応する領域に対し実質的な配列同一性を有する。さまざまな望ましい実施形態において、標的核酸に対する実質的な配列同一性をもつセグメントの長さは、少なくとも19、20、21、22、23、24、30、40、50、100、200、500、750以上の塩基対である。望ましい実施形態においては、多重エピトープdsRNAは、少なくとも2、4、6、8、10、15、20以上の標的遺伝子の発現を少なくとも20、40、60、80、90、95又は100%だけ阻害する。一部の実施形態においては、多重エピトープdsRNAは、セグメントの天然に発生する5’→3’順序であっても又はそうでなくてもよい同じ標的遺伝子からの非隣接セグメントを有しており、dsRNAは、セグメントのうちの1つのみを有するdsRNAに比べて少なくとも50、100、200、500又は1000%多く、核酸の発現を阻害する。
【0061】
「セキトープ」というのは、通常は19〜27の塩基対の間の隣接配列である、RISC(RNA誘発されたサイレンシング複合体)と会合しこれを活性化できる2本鎖ポリリボヌクレオチドの隣接配列を意味する。ここで同定された保存HBV及び/又はHCVヌクレオチド配列の1つ以上のものの中からの少なくとも1つのセキトープを含む配列は、本書で教示されているように、dsRNA媒介型遺伝子サイレンシングのために利用することができる。
【0062】
多重−エピトープdsRNA 2002年10月18日出願米国特許出願公開第60/419,532号明細書及び2003年10月20日出願PCT米国特許第2003/033466号明細書内で教示されている通りの多重−エピトープ又はマルチセキトープ2本鎖RNAアプローチの利点は、本発明の保存HBV及び/又はHCV配列の利用に応用可能である。dsRNAの特定の種は同時に数多くの標的遺伝子(例えば多数の病原体由来の遺伝子、単一の病原体由来の多数の遺伝子又は配列、又は多数の疾病と結びつけられる遺伝子)をサイレンシングできることから、同じ対象の体内の多くの異なる適応症のため又は1つの対象の体内の適応症サブセット及びもう1個の対象におけるもう1つの適応症サブセットのために、多重エピトープdsRNAを使用することができる。かかる利用分野のためには、dsRNAストレス応答を引き起こすことなく、長いdsRNA分子(例えば多重遺伝子からの配列を伴うdsRNA分子)を発現する能力がきわめて望ましい。例えば、かかる配列の合計長が選択されたプラスミドの最大容量(例えば長さ20キロベース)以内となるように各々例えば19−21ヌクレオチドといった短かいもの、望ましくは100〜600ヌクレオチド又容易に1、2、3、4、5キロベースまで、あるいはそれ以上の一連の配列を利用することによって、このような単一の薬学組成物が、例えばHBV、HCV、HIVなどといった多数の病原体及び/又は毒素に対する保護を比較的低いコスト及び低い毒性で提供することができる。
【0063】
HBV及び/又はHCVといったようなきわめて可変的又は急速に突然変異する病原体の多数の菌株及び/又は変異体由来の1つ以上の遺伝子から誘導された多数のエピトープの使用も又、非常に有利であり得る。例えば、HBV及び/又はHCVのさまざまな菌株/変異体のための汎用性のある治療又はワクチンとして、HBV及び/又はHCVの多数の菌株及び/又は変異体を認識しかつターゲティングするまれに見るdsRNA種を使用することができる。
【0064】
HBV及び/又はHCVといったような特定の病原体の多数の遺伝子をサイレンシングする能力は、この場合HBV及び/又はHCVの「エスケープ突然変異体」の選択を妨げる。これとは対照的に、1つの遺伝子又はタンパク質のみをターゲティングする標準的な小分子治療又はワクチン療法は、標的遺伝子又はタンパク質中に持続的突然変異を有する病原体の選択を結果としてもたらし、かくして、該病原体はその療法に対する耐性をもつことになる。本発明の多重エピトープアプローチを用いて病原体の広範な領域及び/又は病原体の多数の遺伝子又は配列を同時にターゲティングすることによって、かかる「エスケープ突然変異」の出現は有効に排除される。
【0065】
例えば、生存能力をもつエスケープ突然変異を生成するウイルスの能力を減少させる目的で単一のdsRNA構築物、複数の構築物の混和物の形でか又は患者に対するかかる構築物の同時投与を通して、HCV11及び配列番号12の両方からの配列すなわちHCV配列11からの1つ以上の配列ならびにHCV配列12からの1つ以上の配列の混合物を包含することが特に有効であるとみなされている。類似の要領で、一部のケースでは、本発明の保存されたHCV配列のうちの1つ以上のものと組合わせて、保存されたHBV配列の混合物を提供することが有利であると思われる。
【0066】
類似の要領で、単一のdsRNA構築物、複数の構築物の混和物の形でか又は患者に対するかかる構築物の同時投与を通して、HBV配列番号1、配列番号2及び配列番号3のうちの2つ以上のものからの配列を使用することが望ましい可能性がある。配列番号1、配列番号2及び配列番号3はHBV表面抗原遺伝子に対しマッピングする。HBVmRNAがオーバーラップしていることから、表面Ag(sAg)mRNA、プレコア、コア及びポリメラーゼmRNAといったmRNAは、これらの配列のうちの1つ以上のものによりターゲティングされることになる。しかしながら、sAgmRNAが最も豊富であることから、遺伝子サイレンシング機序が飽和状態にある場合に、これらのmRNAがターゲティングされることになる確率はさらに高くなる。しかしながら、全ての列挙されたmRNAがターゲティングされることになる可能性もある。表面Agの低減が次のいくつかの理由から望まれる。すなわち、a)感染性ビリオンの組立てのために表面Agが必要とされる;b)感染中の表面Agの過剰発現が、慢性感染中に起こる免疫アネルギーに寄与すると考えられている;及びc)(ウイルスの不在下でさえ、すなわち宿主ゲノム内に組込まれたsAg配列に由来して)感染した個体の肝臓内のsAgの発現が肝炎を誘発する。従って、sAgの削減がウイルス力価を減少させ、免疫アネルギーを克服し肝炎を低減させ/予防する確率が高い。
【0067】
HBV配列番号4は、プレコア及びコアのユニーク領域にマッピングし、これらのmRNAを特異的にターゲティングすることになる。機能的なビリオンを作るには、コアタンパク質が必要とされ、従って、このmRNAのダウンレギュレーションがウイルス力価を減少させるものと予測されている。表面、ポリメラーゼ又はXmRNAについてのこれらのエフェクタRNAの競合は全くあってはならない。
【0068】
HBV配列5〜配列8がポリメラーゼ遺伝子にマッピングする。エフェクタRNAは、プレコア/コア及びポリメラーゼ転写物のみをターゲティングするものと予測されている。sAg又はXmRNAとの競合は全くあってはならない。ウイルスゲノムの合成のためにはポリメラーゼが必要とされ、従って、ポリメラーゼが減少した場合、ウイルス粒子力価は減少するものと予想される。
【0069】
HBV配列9はX遺伝子にマッピングする。全てのmRNAの末端冗長性のため、これらのエフェクタRNAは、全てのウイルスmRNAをターゲティングする潜在性を有する。Xタンパク質は、数多くの割当てられた(証明されていない)機能を有する。しかしながら、X遺伝子は、往々にして活性肝炎を患う個体の体内の組込まれたHBV配列の中に発見され、X遺伝子発現のダウンレギュレーションが疾病を改善するものと予測されている。
【0070】
一般的に、使用される異なる同定された配列由来の配列が多くなればなるほど(例えば、配列番号1、配列番号2及び/又は配列番号3由来、そしてこれに加えて配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10由来のからの配列)、生存可能なエスケープ突然変異をウイルスが生成できる確率は低くなる。同様に、ターゲティングされうるmRNAが異なれば異なるほど、ウイルス力価の低下及び疾病の改善はより有意なものとなる。
【0071】
マルチエピトープ構築物、構築物混和物又は異なるdsRNA構築物の同時投与のための望ましい組合せには、以下のものが含まれる。配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号5由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号6由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4及び配列番号5由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4及び配列番号6由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4及び配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4及び配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4及び配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号4及び配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号5及び配列番号6由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号5及び配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号5及び配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号5及び配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号5及び配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号6及び配列番号7由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号6及び配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号6及び配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号6及び配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号7及び配列番号8由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号7及び配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号7及び配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号8及び配列番号9由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号8及び配列番号10由来の配列;配列番号1、配列番号2又は配列番号3由来の配列プラス配列番号9及び配列番号10由来の配列;配列番号4及び配列番号5由来の配列;配列番号4及び配列番号6由来の配列;配列番号4及び配列番号7由来の配列;配列番号4及び配列番号8由来の配列;配列番号4及び配列番号9由来の配列;配列番号4及び配列番号10由来の配列;配列番号5及び配列番号6由来の配列;配列番号5及び配列番号7由来の配列;配列番号5及び配列番号8由来の配列;配列番号5及び配列番号9由来の配列;配列番号5及び配列番号10由来の配列;配列番号6及び配列番号7由来の配列;配列番号6及び配列番号8由来の配列;配列番号6及び配列番号9由来の配列;配列番号6及び配列番号10由来の配列;配列番号7及び配列番号8由来の配列;配列番号7及び配列番号9由来の配列;配列番号7及び配列番号10由来の配列;配列番号8及び配列番号9由来の配列;配列番号8及び配列番号10由来の配列;配列番号9及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;及び配列番号6由来の配列;配列番号4、配列番号5;及び配列番号7由来の配列;配列番号4、配列番号5;及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6;及び配列番号7由来の配列;配列番号4、配列番号6;及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号6;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号6;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号7;及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号7;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号7;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6;及び配列番号7由来の配列;配列番号5、配列番号6;及び配列番号8由来の配列;配列番号5、配列番号6;及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7;及び配列番号8由来の配列;配列番号5、配列番号7;及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号7;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7;及び配列番号8由来の配列;配列番号6、配列番号7;及び配列番号9由来の配列;配列番号6、配列番号7;及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号6、配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号7、配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号7、配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号7、配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号8、配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号6;及び配列番号7由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号6;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号7;及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号7;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号7;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5;配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6;配列番号7;及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号6;配列番号7;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号6;配列番号7;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号7;配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号7;配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号7;配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6;配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6;配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6;配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7;配列番号8;及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号7;配列番号8;及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7;配列番号9;及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号8由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び 配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号9由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号5、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号4、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列;ならびに配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9、及び配列番号10由来の配列。
【0072】
もう1つの実施形態においては、上述の配列(例えば配列番号1〜配列番号12)のいずれかの中からのセキトープ及びそれより長い配列の組合せを、単一のdsRNA構築物、複数の構築物の混和物の形か又は患者に対するかかる構築物の同時投与を通して、利用することができる。
【0073】
本書の他の箇所で論述されている通り、本発明の特に好ましい実施形態は、本発明のdsRNA、特に上述の多数の異なる配列の内因的送達を達成するために、dsRNA発現構築物又はベクターを利用する。これらのdsRNAは、例えば、プラスミドといったような発現構築物の同じシストロン上、発現構築物の異なるシストロン上、又は異なる発現構築物又はプラスミド例えばウイルスベクターを含む1つ以上のプラスミド及び/又は1つ以上のベクター上で提供され得る。かかる多数の異なる配列は、外因的に、1つ以上のdsRNA構造、2重鎖及び/又はヘヤピンの任意の異なる混合物の形で及び/又は1つ以上の内因的に発現されたdsRNA構造と組合わせた形で、提供することもできる。
【0074】
核酸の望ましい投与方法 本発明のDNA及び/又はRNA構築物は、いかなるトランスフェクション促進剤もなく薬学的ビヒクル内で処方された「裸の」DNA、RNA又はDNA/RNAとして、宿主細胞/組織/生体に対し投与可能である。RNA及び/又はDNA送達の当業者にとっては既知のものであるこのようなポリヌクレオチドトランスフェクション促進用作用物質などを用いて、DNA及びRNA送達の当業者にとって既知の通りに、より効率の良い送達を達成することができる。以下のものが作用物質の例である;ブピバカインといった局所麻酔薬を含むカチオン両親媒性物質、カチオン脂質、リポソーム又は脂質粒子、ポリカチオン例えばポリリジン、分枝3次元ポリカチオン例えばデンドリマー、炭水化物、洗浄剤又は塩化ベンズアルコニウムなどのベンジルアンモニウム界面活性剤を含む界面活性剤。本発明において有用であるかかる促進用作用物質又は補助作用物質の排他的でない例は、その教示が本明細書に参照により援用されている米国特許第5,593,972号明細書;同第5,703,055号明細書;同第5,739,118号明細書;同第5,837,533号明細書;同第5,962,482号明細書;同第6,127,170号明細書;同第6,379,965号明細書;及び同第6,482,804号明細書及びPCT米国特許第98/22841号明細書の中で記述されている。米国特許第5,824,538号明細書;同第5,643,771号明細書;及び同第5,877,159号明細書(本明細書に参照により援用)は、本発明のdsRNAコーディング組成物を含む細菌又はトランスフェクションを受けたドナー細胞などのポリヌクレオチド組成物以外の組成物の送達を教示している。
【0075】
一部の実施形態では、dsRNA又はdsRNA発現ベクターは、米国特許第4,897,355号明細書(1987年10月29日出願エプスタイン(Eppstein)ら)、米国特許第5,264,618号明細書(1991年4月16日出願、フェルグナー(Felgner)ら)又は米国特許第5,459,127号明細書(1993年9月16日出願、フェルグナーら)の中で開示されている組成物といったような1つ以上のカチオン脂質又はカチオン両親媒性物質と複合体形成する。その他の実施形態においては、dsRNA又はdsRNA発現ベクターを、カチオン脂質を含み任意には中性脂質といったようなもう1つの成分を含むリポソーム/リポソーム性組成物と複合体形成させることができる(例えば米国特許第5,279,833号明細書(ローズ(Rose))、米国特許第5,283,185号明細書(エパンド(Epand))及び米国特許第5,932,241号明細書を参照のこと)。
【0076】
肝細胞へのターゲット送達用のものを含めた、薬学的利用分野のための本発明のオリゴヌクレオチド組成物の送達用の特に望ましい方法及び組成物が、その教示が本明細書に参照により援用されている2003年5月6日出願のPCT米国特許第03/14288号明細書中で記述されている。
【0077】
研究及びその他の非治療目的用の細胞の形質転換/トランスフェクションは、リポフェクション、DEAEデキストラン媒介型トランスフェクション、マイクロインジェクション、リン酸カルシウム沈降、ウイルス又はレトロウイルス送達、電気穿孔法又はバイオリスティック形質転換を含めた(ただしこれらに制限されるわけではない)さまざまな手段を通して発生させることができる。RNA又はRNA発現ベクター(DNA)は、裸のRNA又はDNA又は局部麻酔薬複合体化RNA又はDNAでありうる(米国特許第6,217,900号明細書及び同第6,383,512号明細書、「胞状複合体及びその作製及び使用方法(Vesicular Complexes and Methods of Making and Using the Same)」、パチャク(Pachuk)ら、前掲書)を参照のこと)。
【0078】
薬学的利用分野のための本発明のdsRNA又はdsRNA発現構築物用のもう1つの望ましい送達技術は、インサート・テラプティクス(Insert Therapeutics、カリフォルニア州パサディナ(Pasadena))、から入手可能なシクロデキストリン含有ポリカチオンに基づくセルフアッセンブリー型サイクロサート(Cyclosert)(商標)2成分核酸送達系である(バイオコンジュゲート化学(Bioconjug Chem)2003年5月−6月;14(3):672−8;ポピラルスキー(Popielarski)ら;「遺伝子送達に対する炭水化物含有ポリカチオンの構造的効果、3.シクロデキストリンタイプ及び機能化(Structural effects of carbohydrate−containing polycations on gene delivery. 3. Cyclodextrin type and functionalization)」ならびにバイオコンジュゲート化学、2003年1月−2月;14(1):247−54及び255−61参照)。第1の成分は、DNAと混合した時点で核酸のリン酸塩「主鎖」に結合し、DNAを縮合させ、血清中のヌクレアーゼ分解からDNAを保護する均質のコロイドナノ粒子へとセルフアッセンブリーする、線状シクロデキストリン含有ポリカチオン重合体である。第2の成分は、シクロデキストリン重合体と組合せた時点で表面シクロデキストリンと包接複合体を形成し凝集を防ぎ、安定性を増強し全身的投与を可能にする末端アダマンチン−PEG分子を伴う表面変性剤である。さらに、細胞表面受容体に対するターゲティングリガンドを変性剤に付着させて問題の標的細胞に直接ターゲティングされたDNAの送達を提供することもできる。肝細胞は、HBV及びHCV感染に敏感であることから、肝臓細胞に対する本発明のdsRNA発現構築物の送達をターゲティングするためにこの方法を利用することは、特に有利であると考えられている。例えば、哺乳動物肝細胞上のアシアロ糖タンパク受容体(ASGP−R)は、ガラクトシル化重合体といったようなガラクトシル化又はラクトシル化残基と共に合成リガンドを使用することによってターゲティングされ得る。
【0079】
一般に、本発明のdsRNA構築物の選択的送達のための肝細胞に対するターゲティングが好ましい。肝細胞へのターゲティングは、肝細胞特異的受容体のためのリガンドに対するカップリングによって達成され得る。例えば、アシアロ−オロソムコイド、(ポリ)L−リジン−アシアロ−オロムコイド、又は肝臓アシアロ糖タンパク受容体のその他のあらゆるリガンドがある(スピエス(Spiess)、生化学(Biochemistry)29(43):10009−10018、1990;ウー(Wu)ら、生物化学ジャーナル(J.Biol.Chem.)267(18):12436−12439、1992;ウーら、生物学的療法(Biotherapy)3:87−95、1991)。同様にして、肝細胞特異的受容体に特異的に結合するモノクローナル抗体に抱合させることによって、オリゴヌクレオチドを肝細胞にターゲティングさせることができる。オリゴヌクレオチドは同様に、以下で記述されている通り、特異的ベクターを用いて肝細胞にターゲティングさせることもできる。
【0080】
本発明のdsRNA又はdsRNA発現構築物の送達のための特に好ましい組成物は、肝細胞のASG受容体に対するターゲティングのためのリガンドとしてトリラクトシルスペルミンを包含し得る2003年5月6日出願のPCT米国特許第03/14288号明細書中で記述されている通りの多機能性組成物である。本発明のオリゴヌクレオチドとのトリラクトシルコレステリルスペルミン共複合体は、インビボで肝細胞をトランスフェクトするべく記述された通りに調製し使用することができる。
【0081】
本発明のdsRNAオリゴヌクレオチドは、標的肝細胞に対し外因的に提供されうる。あるいはまた、dsRNAをコードする配列に作動可能に連結されたプロモータ配列を含む核酸分子の転写によって、標的細胞内でdsRNAを産生することもできる。この方法においては、核酸分子は、複製しない線状又は環状DNA又はRNA分子内に含まれているか、又は自己複製プラスミド又はウイルスベクター内に含まれているか、又は宿主ゲノム内に組込まれている。肝細胞をトランスフェクトできるあらゆるベクターを本発明の方法の中で使用することができる。好ましいベクターは、複製欠損肝炎ウイルス(例えばHBV及びHCV)、レトロウイルス(例えば、国際公開第89/07136号パンフレット;ローゼンバーグ(Rosenberg)ら、ニューイングランド医学ジャーナル(N.Eng.J.Med.)323(9):570−578、1990年を参照のこと)、アデノウイルス(例えば、モーシー(Morsey)ら、細胞生化学ジャーナル(J.Cell.Biochem)、増補17E、1993年;グラハム(Graham)ら、マリー(Murray)編、分子生物学方法:遺伝子トランスファと発現プロトコル(Methods in Molecular Biology:Gene Transfer and Expression Protocols)、第7巻、ニュージャージ州クリフトン(Clifton、N.J.):ザ・ヒューマン・プレス(the Human Press)、1991年:109−128を参照のこと)、アデノ関連ウイルス(コーチン(Kotin)ら、米国科学アカデミー紀要、87:2211−2215、1990年)、複製欠損型単純ヘルペスウイルス(HSV;リュー(Lu)ら、要約、66頁、遺伝子療法会議の抄録(Abstracts of the Meeting on Gene Therapy)、9月、22−26、1992年、コールドスプリングハーバーラボラトリー、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー)から誘導されたものを含めたウイルスベクター及びこれらのベクターのあらゆる修飾バージョンである。発現ベクターを構築するための方法は、当該技術分野において周知である(例えば、分子クローニング:実験室マニュアル、サンブルックら編、コールドスプリングハーバーラボラトリー、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989年を参照のこと)。
【0082】
例えば相同的組換え(グラハムら、総合ウイルス学ジャーナル(J.Gen.Virol.)36:59−72、1977年)又はその他の適切な方法(分子クローニング:実験室マニュアル、サンブルックら編、コールドスプリングハーバーラボラトリー、第2版、ニューヨーク州コールドスプリングハーバー、1989年)によって当業者にとって既知の方法を用いて本発明のベクター内に適切な調節配列を挿入することができる。
【0083】
プロモータ 標準的には(ただし不変的にではなく)dsRNAオリゴヌクレオチドをコードする核酸配列に対し5’のところで作動可能に連結されるような形で、プロモータをベクター内に挿入する。本発明内では、真核細胞内での転写の開始を導く能力をもつあらゆるプロモータを使用することができる。例えば、サイトメガロウイルス(デベルナルディ(DeBernardi)ら、米国科学アカデミー紀要88:9257−9261、1991年、及び同書中の参考文献)、マウスのメタロチオニンI遺伝子(ハマー(Hammer)ら、分子及び応用遺伝学ジャーナル(J.Mol.Appl.Gen.)1:273−288、1982年)、HSVチミジンキナーゼ(マックナイト(McKnight)、セル(Cell)31:355−365、1982年)、及びSV40の初期(ベノア(Benoist)ら、ネイチャー、290:304−310、1981年)プロモータといったような非組織特異的プロモータを使用することができる。ウイルス配列についての本発明のHBV及びHCVdsRNAの特異性のため、非組織特異的プロモータによって導かれる非肝臓細胞内のHBV及び/又はHCVdsRNAの発現が非肝臓細胞に対し無害であるはずであることから、非組織特異的プロモータを本発明内で使用することができる。しかしながら、本発明において使用するための好ましいプロモータは、肝細胞特異的プロモータであり、それを使用することによってRNAが主として肝細胞内で発現されることが保証される。好ましい肝細胞特異的プロモータには、アルブミン、アルファ−フェトプロテイン、アルファ−1−抗トリプシン、レチノール結合タンパク質、及びアシアロ糖タンパク受容体プロモータが含まれるがこれらに制限されるわけではない。本発明では、サイトメガロウイルス、単純ヘルペスウイルス(I型及びII型)、肝炎ウイルス(A、B及びC型)及びラウス肉腫ウイルス(RSV;ファン(Fang)ら、肝臓学(Hepatology)10:781−787、1989年)由来のものといったようなウイルスプロモータ及びエンハンサを使用することもできる。
【0084】
dsRNA発現ベクターは、HCMV、SCMV、MCMV、RSV、EF2a、TK及びその他のHSVプロモータ例えばICP6、ICP4及びICP0プロモータを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)RNAポリメラーゼI、RNAポリメラーゼIIのためのプロモータ、HBVプレゲノムプロモータ、U6及びtRNAプロモータを含む(ただしこれらに制限されるわけではない)RNA polIIIプロモータ、ミトコンドリア軽鎖及び重鎖プロモータを含み得る。望ましくは、dsRNA発現ベクターは、少なくとも1つのRNAポリメラーゼIIプロモータ、例えばヒトCMV、前初期プロモータ(HCMV−IE)又はサルCMV(SCMV)プロモータ、少なくとも1つのRNAポリメラーゼIプロモータ又は少なくとも1つのRNAポリメラーゼIIIプロモータを含む。プロモータは同様に、T7プロモータであり得、この場合、細胞はさらにT7RNAポリメラーゼを含む。あるいはまた、プロモータはSP6プロモータであり得、その場合、細胞はさらにSP6RNAポリメラーゼを含む。プロモータは同様に、1つの収束性T7プロモータ及び1つの収束性SP6RNAプロモータでもあり得る。細胞は、T7ポリメラーゼ又はSP6ポリメラーゼ発現プラスミドでそれぞれに細胞を形質転換することによってT7又はSP6ポリメラーゼを含むようにすることもできる。一部の実施形態では、T7プロモータ又はRNAポリメラーゼIIIプロモータは、短かいdsRNA(例えば長さが200、150、100、75、50又は25塩基対未満であるdsRNA)をコードする核酸に作動可能に連結されている。その他の実施形態では、プロモータは、ベクター内の核酸の細胞質転写を可能にするミトコンドリアプロモータである(例えば、2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット及び2001年1月9日出願のPCT米国特許第2002/00543号明細書内に記述されているミトコンドリアプロモータを参照のこと)。あるいはまた、プロモータは、lac(クロニン(Cronin)ら、遺伝子と開発(Genes & Development)15:1506−1517、2001年)、ara(クレブニコフ(Khlebnikov)ら、細菌学ジャーナル(J Bacteriol.)、2000年12月;182(24):7029−34)、ecdysone(レオジーン(Rheogene)ウェブサイト)、RU48(メフェプリストン)(コルチコステロイドアンタゴニスト)(ワン(Wang)XJ、リーファ(Liefer)KM、ツァイ(Tsai)S、オマリー(O’Malley)BW、ループ(Roop)DR、米国科学アカデミー紀要1999年7月20日;96(15):8483−8)、又はtetプロモータ(レンドル(Rendal)ら、ヒト遺伝子療法(Hum Gene Ther.)2002年;13(2):335−42及びラルナルチナ(Larnartina)ら、ヒト遺伝子療法2002年;13(2):199−210)といったプロモータ又は、又は2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレット中で開示されたプロモータといったような誘発性プロモータである。同様に本発明の方法及び組成物において有用であるのは、2003年4月22日出願の米国特許出願公開第60/464,434号明細書内で教示されている構造性及びキメラプロモータである。本発明の方法及び組成物において特に望ましいものとみなされるパチャック(Pachuk)C.及びサティスチャンドラン(Satishchandran)C.、「多区画真核生物発現系(Multiple−Compartment Eurkaryotic Expression Systems)」、2003年8月22日出願の米国仮特許出願第60/497,304号明細書の中で教示されているプロモータ系も参照のこと。
【0085】
本発明のdsRNA発現構築物において有用である肝臓特異的プロモータには、アルブミンプロモータ、アルファ−フェトプロテインプロモータ(特に肝癌細胞内の)、アルファ−1−抗トリプシンプロモータ、B型肝炎プロモータ例えば、コア、e−抗原、ポリメラーゼ及びXタンパク質を含めた抗原遺伝子のためのプロモータを含めたB型肝炎プロモータが含まれる。
【0086】
T7プロモータ/T7ポリメラーゼ発現系 本発明の望ましい方法では、脊椎動物細胞(例えば哺乳動物細胞)内のdsRNA(例えば長又は短dsRNA分子)の細胞質発現を達成するために、T7dsRNA発現系が利用される。T7発現系は、望ましいdsRNAを発現するためT7プロモータを利用する。転写は、第2のプラスミド又は同じプラスミド上に提供され得るT7RNAポリメラーゼによって駆動される。バクテリオファージT7RNAポリメラーゼ(T7Pol)は、その応答性プロモータ配列を特異的に認識し高い転写酵素活性を示すことのできるT7遺伝子1の産物である。プロモータ配列を含むバクテリオファージの異なる領域についての詳細な情報を伴うT7ゲノムの完全な配列はダン及びスタジア(Dunn & Studier)、1983年、分子生物学ジャーナル(J.Mol.Biol.)166(4)、477−535の中で開示されている(NCBI「ゲノム」データベース、受入れ番号第NC001604号も同じく参照のこと)。プロモータに対するストリンジェントな特異性を示すバクテリオファージT7のポリメラーゼ以外のその他のいかなるRNAポリメラーゼもT7プロモータを、利用することはできない(チェンバレン(Chamberlin)ら、1970、ネイチャー228:227−231)。例えばdsRNAを発現するためにT7発現系を利用する場合、収束性T7プロモータの制御下でセンス及びアンチセンス鎖の両方を発現する第1のプラスミド構築物及びRSVプロモータの制御下でT7RNAポリメラーゼを発現する第2のプラスミド構築物を使用することができる。dsRNA及びT7RNAポリメラーゼは両方共、特に、少なくとも部分的に2本鎖の領域を伴うステムループ又はヘヤピン構造をストランドがとることができるようにする自己相補性の逆方向反復又は領域を伴う単一のRNA鎖からdsRNAが形成されている場合に、単一の2シストロンプラスミド構築物から有利にも発現され得ると思われる。セルフアッセンブリーしてdsRNAを形成する個々のセンス及びアンチセンス鎖は、例えば転写されるべき選択された配列の相補鎖の5’及び3’末端にそれぞれに配置されたバクテリオファージT7プロモータといったような収束性プロモータを用いて、単一プラスミド構築物により合成され得る。例えば、T7dsRNA発現系に関する国際公開第0063364号パンフレットならびに2002年7月31日出願米国特許出願公開第60/399,998P号明細書及び2002年10月18日出願米国特許出願公開第60/419,532号明細書の教示も参照のこと。
【0087】
本発明の治療用組成物 本発明のdsRNA及びそれらをコードする核酸配列を含む組換え型ベクター、HCV及び/又はHBV感染を予防又は治療するための治療用組成物中で使用することができる。本発明の治療用組成物は、単独で又はその他の抗ウイルス剤を含めた1つ以上の材料との混和物の形で又は化学的組合せの形で使用することができる。現在、ラミブジン、アデフォビル・ジピヴィキシル及びインターフェロンアルファは、HBVの治療用として承認されており、本発明の組成物をこれらの薬物及びエムトリシタビン(FTC)及びエンテカビルを含めたHBVに対して活性であるその他の薬物と組合わせて使用することが可能であると見込まれている。HBV及び/又はHCVに対するdsRNAは新規の機序(dsRNA媒介型遺伝子サイレンシング/RNAi)を通して作用することから、本発明の作用物質とその他の抗ウイルス薬の組合せ療法は、例えば長期のラミブジン療法に伴う重要な問題であるラミブジン耐性の発生といった薬物耐性の発生を実質的に低減させながら、療法の効能を著しく増大させるものと予想されている。現在、インターフェロン及びリバビリンは、HCV治療用として免許を受けており、HBVに関しては、本発明の組成物をこれらの薬物及びHCVに対し活性であるその他の薬物と組合わせて使用できると見込まれている。かかる多数の作用物質を用いた療法が関与する特定の投薬計画は、臨床医学の当業者による日常的な実験を通して決定することができる。
【0088】
処方には望ましくは、オリゴヌクレオチド又は組換え型ベクターの生物学的安定性を増大する材料又は肝細胞内に選択的に浸透する治療的組成物の能力を増大させる材料が含まれる。本発明の治療的組成物は、投与様式及び経路ならびに標準的な薬学的実践方法に基づいて選択される薬学的に受容可能な担体(例えば生理食塩水)中で投与され得る。当業者であれば、オリゴヌクレオチド又は遺伝子構築物を含む薬学組成物を容易に処方することができる。一部のケースでは、等張処方が使用される。一般的には、等張性のための添加物には、塩化ナトリウム、デキストロース、マンニトール、ソルビトール及びラクトースが含まれる可能性がある。一部のケースでは、リン酸緩衝生理食塩水といったような等張溶液が好ましい。安定化剤には、ゼラチン及びアルブミンが含まれる。一部の実施形態においては、処方に対して血管収縮剤が加えられる。本発明に従った薬学調製物は、無菌で発熱物質を含まない状態で提供される。薬学的処方内で使用するための適切な薬学的担体ならびに薬学的必需品については、この分野での標準的参考文献であるレミントン(Remington):調剤の科学と実践(The Science and Practice of Pharmacy)(旧レミントンの調剤学(Remington’s Pharmaceutical Sciences))、マーク出版(Mack Publishing)株式会社及びUSP/NF中で記述されている。
【0089】
投与経路としては、筋内、腹腔内、皮内、皮下、静脈内、動脈内、眼内及び経口ならびに経皮又は吸入又は座薬が含まれるがこれらに制限されるわけではない。好ましい投与経路としては、静脈内、筋内、経口、腹腔内、皮内、動脈内及び皮下注射が含まれる。dsRNA又はdsRNA発現構築物は、従来の注射器、無針注射装置又は「マイクロプロジェクタイルボンバード遺伝子銃」を含む(ただしこれらに制限されるわけではない)手段によって投与することができる。あるいはまた、個体から取り出される細胞内にさまざまな手段によってdsRNA及び/又はdsRNA発現構築物を導入することができる。かかる手段としては、例えば、エクスビボトランスフェクション、電気穿孔法、マイクロインジェクション及びマイクロプロジェクタイルボンバードが含まれる。遺伝子構築物が細胞によって取り上げられた後、これらの細胞は個体に再移植される。中に遺伝子構築物を取込んでいるそうでなければ免疫原性でない細胞を、宿主細胞がもともと他の個体から取られたものである場合でさえ、その個体内に移植することが可能である。
【0090】
HBV感染個体内では、本発明のdsRNA組成物がウイルスに対する免疫性をブーストするように設計された治療用ワクチン接種プロトコルと併用した予備治療として有用であり得ると見込まれている。本発明のdsRNA組成物が、例えば消防士、救急隊員及び医療従事者などの職業上の又はその他の曝露可能性のためにHBV及び/又はHCVに対する曝露リスクの高い個体に対する定期的投与計画の中で予防のために有用でありうるということも見込まれている。かかる有効な予防的投与計画としては、臨床医学の当業者により日常的実験を通して判定され得る通り、例えば1週間、2週間、1ヶ月、2ヵ月に1回、3ヶ月毎、4ヶ月毎、半年毎又は一年に1回の割合での本発明のHBV及び/又はHCVdsRNAを提供する組成物の投与が含まれる可能性がある。数週から数カ月の範囲内にあると予想される比較的長い時間全体にわたり本発明のdsRNAを発現する、プラスミド又はウイルスベクターといったようなdsRNA発現ベクターの能力は、この利用分野及びその他の利用分野にとって有利なものであるとみなされている。
【0091】
dsRNAの投薬量 1つの動物に対するdsRNA(例えば毒性を阻害するための短かいdsRNA又は1つの遺伝子をサイレンシングするための短かい又は長いdsRNA)の投与のためには、(好適度の増加順で)90〜150ポンドの人又は動物に対して標準的に10mg〜100mg、1mg〜10mg、500μg〜1mg、又は5μg〜500μgのdsRNAが投与される。1つの動物に対するdsRNA(例えば毒性を阻害するための短かいdsRNA又は1つの遺伝子をサイレンシングするための短かい又は長いdsRNA)をコードするベクターの投与のためには、(好適度の増加順で)90〜150ポンドの人/動物に対して、標準的に100mg〜300mg、10mg〜100mg、1mg〜10mg、500μg〜1mg又50μg〜500μgのdsRNA発現ベクター又は構築物が投与される。該用量は、動物の体重に基づいて調整され得る。一部の実施形態では、約1〜10mg/kg又は約2〜2.5mg/kgが投与される。臨床医療の当業者による日常的実験を通して判定される通り、その他の用量を使用することもできる。
【0092】
無傷の動物における投与のためには、10ng〜50μg、50ng〜100ng又は100ng〜5μgのdsRNA又はdsRNAをコードするDNAが使用される。望ましい実施形態においては、動物に対し約10μgのDNA又は5μgのdsRNAが投与される。本発明の方法に関しては、細胞又は動物に対するdsRNA又はdsRNAをコードするDNAの投与を特定の投与様式、投薬量又は投薬頻度に制限するようには意図されていない。本発明は、遺伝子発現を阻害し、疾病を予防するか又は疾病を治療するのに適した用量を提供するのに充分な全ての投与様式を考慮するものである。
【0093】
望ましい場合には、そうでなければ細胞毒性を誘発するものと予想され得るdsRNA(例えば長い方のdsRNA)の外因的送達の前、間又は後に、短かいdsRNAが送達される。2003年4月28日出願米国特許出願公開第10/425,006号明細書「毒性の誘発の無い遺伝子サイレンシング方法(Methods of Silencing Genes Without Inducing Toxicity)」の教示を参照のこと。
【0094】
出願人らは、本開示内に引用された全ての参考文献の全内容を特定的に包含させている。さらに、量、濃度又はその他の値又はパラメータが1つの範囲、好ましい範囲又は上部好適値と下部好適値のリストとして示されている場合には、これは、範囲が別に開示されているか否かとは無関係に、任意の上部範囲限界値又は好適値及び任意の下部範囲限界値又は好適値の任意の対から成る全ての範囲を特定的に開示するものとして理解されるべきである。数値範囲が本書で列挙されている場合、相反する記述のないかぎり、該範囲はその終点及びその範囲内の全ての整数及び分数を包含するものとして意図される。1つの値範囲が定義されている場合であっても、本発明の範囲を列挙された特定の値に制限することは意図されていない。
【0095】
以下の実施例は、単に例示として示されるものである。本開示内に言及されている全ての参考文献は、その全体が特定的に本明細書に参照により援用されている。
【0096】
実施例1
複製応答能ある細胞培養モデルにおけるHBV複製及び発現のサイレンシング
細胞培養モデルの簡単な説明:Huh7細胞系列といったようなヒト肝臓由来の細胞系列を、ウイルスRNAの全てを転写し感染ウイルスを産生する能力をもつ末端冗長性ウイルスゲノムから成るHBVの感染性分子クローンでトランスフェクトする[1−3]。これらの研究中で用いられるレプリコンは、ジェンバンク受入れ番号V01460の中に見られるウイルス配列から誘導される。肝細胞内への内在化及び核局在化の後、複数のウイルスプロモータからの感染性のHBVプラスミドの転写が、HBV複製を映し出す事象カスケードを開始させることが示されてきた。これらの事象には、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子内へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写及び、ビリオン及びHBsAg(B型肝炎表面抗原)粒子の組立て及びトランスフェクションを受けた細胞の培地内への分泌が含まれる。このトランスフェクションモデルは、感染を受けた肝細胞内部のHBV複製の大部分の局面を再現し、従って、HBV発現及び複製のサイレンシングを調べるのに用いる優れた細胞培養モデルである。
【0097】
このモデルを用いて、HBVの感染性分子クローン及びさまざまなeiRNA構築物と細胞を同時トランスフェクトした。その後、以下で記述する通りにHBV発現及び複製の損失について、細胞を監視した。この実験において使用したコード済みRNA及びベクターについての詳細は、この実施例の最後に提供されている。
【0098】
実験1:
以下に記すのは、ジェンバンク受入れ番号V01460から誘導された配列をコードするeiRNAベクターを用いて実施された実験の一実施例である。これらの記述されているeiRNAベクター内のHBV配列は、同様にsiRNAとしての活性も示す、本書の他の箇所で記述された通りに同定されたきわめて保存度の高い配列であった(パシャクC.、「RNAi標的及びエフェクタ分子の評価のための方法及び構築物(Methods and Constructs for Evaluation of RNAi targets and Effector Molecules)」、2004年2月25日出願PCT米国特許第2004/005065号明細書を参照のこと)。この実験のために使用される特定のeiRNA主鎖ベクターは、コードされたRNAの発現を駆動するべくU6プロモータを含む独自に開発したベクターであった。各ベクターは、1つの短かいヘヤピンRNA(shRNA)のみをコードした。shRNAコーディング配列の後には、RNApolIII終端配列が続いていた。U6プロモータ、RNApolIII終端シグナル及びコードされたshRNAの配列は全て、該実施例の終りに示されている。U6プロモータ及びRNApolIII終端シグナルを含む類のベクターは、プロメガ社、ウィスコンシン州マディソン(Madison、Wis)製の「siLentGene+2クローニング系」ベクターなどのように商業的に入手可能である。当業者であれば、本書で示されている情報に従ってこれらを作り上げることもできる。その他の発現及びプロモータ系特にU6でないRNApolIIIプロモータ例えばH1プロモータ又は7SKプロモータを伴うベクターを用いて類似の結果を得ることもできるであろうと予想されている。
【0099】
実験手順:トランスフェクション
RPMI−1640培地の中で培養されたHuh7細胞を3×10細胞/ウェルの密度で6ウェル平板内に播種した。全てのトランスフェクションは、メーカーの指示に従ってリポフェクタミン(Lipofectamine)(商標)(インビトロェン(InVitrogen)、カリフォルニア州カールスバッド(Carlsbad、Cal))を用いた細胞播種の翌日に行なった。この実験においては、細胞を500ngの感染性HBVプラスミドayw亜型(「pHBV2」)(ジェンバンク受入れ番号V01460)及び500ng、300ng、250ng、120ng、100ng、50ng又は10ngのeiRNA構築物でのトランスフェクションに付した。トランスフェクション中の合計DNAを2.5μgにした量で不活性プラスミドDNA、pGL3−ベーシック(Basic)(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)を含み入れることにより、DNAを1日のトランスフェクションにつき2.5μgで一定に保持した。例えば、500ngのHBVDNA及び500ngのeiRNA構築物を受容するトランスフェクションにおいては、トランスフェクションに対し1.5μgのpGL3を添加した。トランスフェクションに先立って、培地を細胞から除去し、細胞をOpti−MEM(登録商標)(インビトロジェンライフテクノロジー(InVitrogen Life Technologies)、カリフォルニア州カールスバッド)で洗浄した。次に、各々の細胞ウェルに800μlのOpti−MEM(登録商標)を添加しその後トランスフェクション混合物を添加した。トランスフェクションから17〜19時間後に、トランスフェクション混合物及びOpti−MEM(登録商標)を細胞から除去し、1ウェルあたり2mLの培地と交換した。トランスフェクションから3、6及び10日後に、細胞から培地を除去し−70℃で保管した。3日目及び6日目に2mLの新鮮な培地で培地を交換した。全てのトランスフェクションはデュプリケートで実施した。2セットの対照トランスフェクションすなわち、HBVDNA単独(500ngのHBVDNAプラス2μgのpGL3)及び対照eiRNA構築物を伴うHBVDNA(500ngのHBVDNA、1μgの対照eiRNA構築物及び1.0μgのpGL3DNA)、も同様に実施した。
【0100】
HBV発現の喪失について細胞を監視
トランスフェクションに続いてHBsAg分泌を測定することによりHBV発現及び複製の喪失又は減少について細胞を監視した。トランスフェクションから3日、6日及び10日後に、トランスフェクションを受けた細胞の培地(及び培地対照)を検定することにより、細胞を監視した。アボット研究所(Abbott Labs)(イリノイ州アボットパーク(Abbott Park、III))から商業的に入手可能であるアラスザイム(Auszyme)(登録商標)ELISAを用いて、メーカーの指示事項に従って表面Ag(sAg)を検出した。表面Agがウイルス複製によってのみならず、インビボでの感染中に産生されたHBVcccDNAから及びトランスフェクションを受けた感染性HBVクローン内での表面AgシストロンのRNAポリメラーゼIIで開始された転写を用いても会合させられることから、sAgを測定した。表面Ag合成は、HBV複製の不在下での有害な効果を伴って続行し得ることから、ウイルス複製のみならずsAgの複製非依存性合成をもダウンレギュレートすることが重要である。
【0101】
結果:
この実施例の終りで記述されているHBV特異的eiRNA構築物でのトランスフェクションを受けた細胞は、全て、対照に比べsAgレベルの減少を誘発した。表2−8にみられるデータに対応する添付図2−8にレベル阻害が示されている。788〜808及び807〜827として同定された配列が、500ngの用量でそれぞれ30%及び50%だけ表面Agレベルを低下させたにすぎないという点に留意されたい。これらは、sAgmRNAをターゲティングしない2つだけのeiRNAである;代りにこれらは3.1KbのHBVmRNAをターゲティングし、従ってsAgレベルを間接的に減少させる。これらその他のHBV RNAがターゲティングされた場合に観察された30%〜50%のsAg減少は、これらのeiRNA構築物に効能があることを強く示すものとみなされる。
【0102】
この実験において使用されるHBV特異的eiRNA
eiRNAベクターは、表1で列挙されているHBV配列をコードする。ジェンバンク受入れ番号V01460について配列がそれらの地図座標と共に示されている。表の最も右側には、これらの配列が内部でマッピングする配列番号がある。コードされたRNAの配列は5’GGTCGAC(それ自体は重要でないものの使用された特定のベクターのポリリンカー配列から誘導されている配列)とそれに続く第1のセンス又はアンチセンスHBV配列とそれに続くループ配列(表1中下線あり)とそれに続く、第1のHBV配列に対する相補配列である第2のHBV配列である。ループ構造が固定された配列又は長さである必要はなく、我々は複数のループ配列を使用し、eiRNA構築物の機能にはいかなる有意な影響もなかったという点に留意されたい。第2のHBV配列には、RNApolIIIのための終結シグナルとして機能する例えば1、2、3又はそれ以上のTといった一連のT残基が後続している。
【表1】

【0103】

転写されたRNA構造のダイヤグラムは、図9に示されている。
【0104】
配列番号13は、U6プロモータのヌクレオチド配列である。RNApolIIIターミネータのヌクレオチド配列:5’−TTTTT−3’。
【0105】
表とグラフ
以上で記述され、表2−8中のデータに対応する図2−8の中でプロットされているとおりに、HBsAgを測定した。eiRNA構築物の量は、eiRNA構築物の名前のカッコ内に示され、μg単位の量である。例えば2791(0.5)は、トランスフェクションにおいて、0.5μg又は500ngのeiRNA構築物2791−2811(表1参照)が使用されたことを意味している。対照に比べた阻害パーセントも同様に下表に示されており、これは、10日目の測定に特定的なものである。1299が500ngで評価されたこの実施例中の4番目のデータセットが、10日目で評価が実施されなかったために3日目及び6日目という2つの時点のみを有することに留意されたい。この実験についての阻害パーセントは、6日目のデータについて示された。データは、sAgを測定するのに使用されたアウスザイムELISA検定キットのメーカーが記述した通りに収集した粗ODデータとして示されている。示されていないのは2791−2811についての50ngデータ及び1907−1927についての10ngデータである。これらの用量は各々、対照に比べて約50%だけHBsAg発現を阻害した。
【表2】


【表3】


【表4】


【表5】


【表6】


【表7】


【表8】

【0106】

実験2:
背景:2つのeiRNA構築物を付加した相加効果を評価するために同じ細胞培養モデルを使用した。この実験においては、2791−2811及び2919−2939を評価した。これらを10ng及び25ngという2つの用量で別々に、そして10ng(5ngの2791−2811プラス5ngの2919−2939)及び25ng(12.5ngの2791−2811プラス12.5ngの2919−2939)で組合わせた形で評価した。例えば、25ngの2791−2811で見られた阻害の半分プラス25ngの2919−2939で見られた阻害の半分が25ngの組合せ用量で見られた阻害にほぼ等しい場合、相加効果が観察される。このことは、25ng用量での単一のeiRNA構築物の使用に比べて阻害を増してはいないかもしれないが、2つ以上のeiRNA配列の使用は、ウイルスエスケープ突然変異の生成を防止する上できわめて重要であることから、重要である。
【0107】
実験手順:トランスフェクション
Huh7細胞を3×10細胞/ウェルの密度で6ウェル平板内に播種した。全てのトランスフェクションは、メーカーの指示に従ってリポフェクタミン(商標)(インビトロェン))を用いた細胞播種の翌日に行なった。この実験においては、細胞を500ngの感染性HBVプラスミドayw亜型(ジェンバンク受入れ番号V01460)及び25ng又は10ngの2つの別々のeiRNA構築物又は合計25ng又は10ngでのこれらの2つのeiRNA構築物の組合せでのトランスフェクションに付した。トランスフェクション中の合計DNAを2.5μgにした量で不活性プラスミドDNA、pGL3を含み入れることにより、DNAを1日のトランスフェクションにつき2.5μgで一定に保持した。例えば、500ngのHBVDNA及び10ngのeiRNA構築物を受けるトランスフェクションにおいては、次にトランスフェクションに対し1.99μgのpLUCを添加した。トランスフェクションに先立って、培地を細胞から除去し、細胞をOpti−MEM(登録商標)(インビトロジェンライフテクノロジー)で洗浄した。次に、各々の細胞ウェルに800μlのOpti−MEM(登録商標)を添加しその後トランスフェクション混合物を添加した。トランスフェクションから17〜19時間後に、トランスフェクション混合物及びOpti−MEM(登録商標)を細胞から除去し、1ウェルあたり2mLの培地と交換した。トランスフェクションから4、8及び11日後に、細胞から培地を除去し−70℃で保管した。4日目及び8日目に2mLの新鮮な培地で培地を交換した。全てのトランスフェクションはデュプリケートで実施した。2セットの対照トランスフェクションすなわち、HBVDNA単独(500ngのHBVDNAプラス2μgのpGL3)及び対照eiRNA構築物を伴うHBVDNA(500ngのHBVDNA、500ngの対照eiRNA構築物及び1.5μgのpGL3DNA)、も同様に実施した。
【0108】
結果:
結果は、表9及び図10に見られる対応するグラフに示されている。2791−2811及び2919−2939を組合わせることで、2791−2811又は2919−2939単独の投与に少なくとも等しい効果が示された。同じ及び/又は異なるHBV遺伝子からの異なるHBV配列に導かれた2つ以上のdsRNAを組合わせることによって、類似の利点が見られることになると予想されている。
【表9】

【0109】

実験3及び4
マウスモデルにおけるHBVのサイレンシング
要約:確認実験1の中で記述されているeiRNAベクターのうちの2つを、マウスモデル内でHBVレプリコンをサイレンシングするそれらの能力について査定した。これらのベクターは、2791−2811及び1907−1927ベクターであった。両方のベクター共、マウスモデル内で、それらが細胞培養モデル内でサイレンシングしたのと同じ程度でHBVをサイレンシングすることがわかった。その他の療法によりマウス体内でこのHBVレプリコンをサイレンシングする能力は、ヒトでの効能の予測判断材料であることが実証されてきた[4]。
【0110】
動物モデル背景:
チンパンジーは、ヒトHBV感染力を研究すべき唯一の動物モデルである。しかしながらHBV発現及び複製が発生するマウスモデルも利用可能である。このモデルは、ウイルス複製に対してのみならず抗原のRT非依存性発現に対してもターゲティングされた抗−HBV治療剤の評価にとって価値のないものであった。このモデルでは、複製応答能あるHBVはエピソームHBVDNAから過渡的に発現されている。このモデルは、流体力学的送達によりマウスの肝臓内に複製応答能あるHBVDNAを導入することによって作り出される[1]。
【0111】
以下の実験の目的は、細胞培養とマウスモデルの間にHBV配列に関連する効率の差が存在すると予想されなかった場合でも、マウスモデル内での効能について実験1で評価されたHBV特異的配列をコードするベクターのうちの2つをテストすることにあった。この実験では、エフェクタHBV特異的eiRNA発現ベクターとともに複製応答能あるHBVaywプラスミド(実施例1、確認実験1)を同時送達するための1つの方法として流体力学的送達が利用された。流体力学的送達は、それが肝臓に対する核酸の効率の良い送達を結果としてもたらすため、これらの第1の研究にとって理想的である[5]。
【0112】
実験
流体力学的送達研究:実験3
全ての動物に7.5μgの感染性HBVaywプラスミド(確認実施例1に記述)を流体力学的に注入した。肝細胞内への内在化及び核局在化の後、複数のウイルスプロモータからのHBVaywの転写が、HBV複製を映し出す事象カスケードを開始させることが示されてきた[1]。これらの事象には、転写されたウイルスmRNAの翻訳、コア粒子内への転写されたプレゲノムRNAのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写、及びビリオン及びHBsAg粒子の組立て及び注射された動物の血清内への分泌が含まれる。実験動物には、10μgの2791−2811を同時注射した。対照動物の第2グループには10μgの無関係のeiRNA構築物を注射した。同様に、全ての動物に2.5μgのGFPレポータプラスミドを同時注射した(クローンテック(Clontech)、カリフォルニア州パロアルト(Palo Alto、Cal))。注射を受けたマウスの肝臓中のGFPmRNAの発現は、マウスモデルのトランスフェクション効率に対抗して結果を正規化するための対照として役立った。動物に注射した全DNA量は、不活性フィラーDNAであるpGL3(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)を含み入れることによってつねに20μgに保った。全てのDNAは、ヤング(Yang)ら[1]の中で記述された方法に従って処方し注射した。1グループあたりの動物数は5匹であった。動物1匹あたりの注射されたDNA及びその量は、表10に示されている。
【表10】

【0113】

分析の時点は、流体力学的送達の後のマウス体内のHBVaywプラスミド複製の動物を詳述するチサリ(Chisari)博士の研究所が公開している結果に基づいて選択した[1]。注射後1、2、3及び4日目にHBsAgの存在について血清を検定した。HBV複製の細胞培養モデルについて記述された通りに、検定を実施した。肝臓試料内のHBVRNAの存在を、チサリ博士の研究所で開発され[1]従来の技術を用いて内因性GAPDHRNAレベル及びGFPmRNAレベルに正規化された手順を用いる注射後2日目のノーザンブロット分析又は標準的技術を用いるsAgコーディング配列を含有するHBVRNAについての定量的RT−PCR検定により確認した。RT−PCRはノーザンブロット分析よりもさらに定量的であり、ノーザンブロット分析よりも広い動的ウインドウを有している。
【0114】
ノーザンブロット分析によるHBV RNA及びHBsAgの両方のダウンレギュレーションは、2791−2811の注射を受けたマウスにおいて見られた。図11参照。同じく図示されていないが、定量的RT−PCRは、対照マウスの肝臓内の867のHBV RNA分子の存在及び2791−2811で処理されたマウスにおける57のHBV RNA分子の存在つまり15倍のダウンレギュレーションを実証した。
【表11】


【表12】

【0115】

流体力学的送達研究:実験4
この実験は、2つのeiRNA構築物つまり2791−2811及び1907−1927が評価されたという点を除いて、実施例1の実験3と同様であった。この実験では、本書ですでに記述された検定を用いて1日目及び4日目にHBsAgを測定した。
【表13】

【0116】

実施例2
RNAiの治療的開発のためのC型肝炎配列
実験1
簡単な導入:
C型肝炎ウイルス(HCV)は、非A非B型輸血関連肝炎の主たる原因であり、世界中で2億人を超える肝炎症例を数えている。HCVゲノムは高度の配列可変性を有する。50を超える亜型を含む6つの主要な遺伝子型が存在し、擬種に代表される著しい異種性が患者間で見い出されている。組換え型ポリメラーゼ又は細胞ベースのサブゲノムレプリコン系を用いることによって、HCV複製を理解する上で大幅な進歩が見られた。レプリコン細胞系を用いることにより、HCV特異的siRNAは、HCVタンパク質発現及びRNA複製を抑圧できることが実証されてきた。5’NTR及び構造的及び非構造的の両方の遺伝子の配列がうまくターゲティングされてきた。3’NTR配列は、その非常に高度に保存された性質のため、siRNAをベースとする療法のためのきわめて魅力ある標的となっている。しかしながら、3’NTRを使用することの実現可能性を調べるために、いかなる研究もなされていない。ここでは、サブゲノムレプリコン系内でHCVタンパク質での発現を阻害できる複数のsiRNAの設計及び試験について報告する。外因的に合成されたHCV特異的siRNAをHCVレプリコン細胞系列内に以下で記述される通りにトランスフェクトした。
【0117】
細胞培養と培地
ヘパトーマHuh7細胞内のHCVレプリコンを、10%のウシ胎児血清(インビトロジェン)、1%のペニシリン−ストレプトマイシン、1%の非必須アミノ酸及び0.5mg/mLのジェネチシン(Geneticin)を含有するダルベッコ修正イーグル培地(「DMEM」)(インビトロジェン)内で培養した。細胞を、分裂に先立ち75%の集密度まで成長させた。
【0118】
ウェスタンブロット分析:
レプリコン細胞由来の合計細胞溶解物を1×LDS緩衝液(インビトロジェン)中でレプリコン細胞から収集した。10%のトリス−グリシンポリアクリルアミドゲル(インビトロジェン)上で電気泳動の前にベータ−メルカプトエタノールの存在下で5分間90℃で溶解物を加熱した。タンパク質をPVDF(インビトロジェン)膜に移した。トランスファの後、0.5%のTween−20(PBS−Tween)を含有するPBSで1回膜を洗浄し、5%の脱脂粉乳を含むPBS−Tween内で1時間遮断した。PBS−Tweenでの洗浄後、膜を室温で1時間、1:1500の希釈度で一次α−NS5A抗体(チェン・リウ(Chen Liu)博士より寄贈)と共にインキュベートした。1:5000で希釈したHRP抱合α−マウスIgG二次抗体(アマーシャム(Amersham)でのインキュベーションに先立ち、PBS−Tween20中でブロットを洗浄した。二次抗体インキュベーションの後、ブロットを再度洗浄し、メーカーのプロトコルに従ってECL(アマーシャム)で処理した。
【0119】
ノーザンブロット:
Rneasy(登録商標)キット(キアゲン(Qiagen))を用いて、全細胞RNAを抽出した。グオ(Guo)ら、のプロトコルに従ってノーザンブロット分析を行なった。簡単に言うと、5μgの全RNAを、2.2Mのホルムアルデヒドを含有する1.0%のアガロースゲルを通して電気泳動させ、ナイロン膜に移し、UV架橋(ストラタジーン(Stratagene))によって固定化した。58℃で16時間、50%の脱イオンホルムアミド、5×SSC(750mMの塩化ナトリウム、750mMのクエン酸ナトリウム)、デンハルト(Denhardt)の溶液、0.02Mのリン酸ナトリウム(pH6.8)、0.2%のドデシル硫酸ナトリウム(「SDS」)、100μgのせん断変性サケ精子DNA/ml及び100μgの酵母RNA/mlを含有する溶液中のα−[32P]CTP−標識されたネオマイシンRNAを用いて、ハイブリダイゼーションを実施した。室温で30分間2×SSC/0.1%SDS中で一度そして68℃で30分間0.1×SSC/0.1%SDS中で2度、膜を洗浄した。膜をX線フィルムに暴露した。
【0120】
レプリコン細胞中へのsiRNAのトランスフェクション:
レプリコン細胞中へのsiRNAのトランスフェクションのためには、ユーザーマニュアルに従って、リポフェクタミン(登録商標)2000試薬(インビトロジェン)を使用した。簡単に言うと、0.5mLのDMEM中の2×10個の細胞を、トランスフェクションの前日に24ウェル平板内に播種した。指示された量のsiRNAを50μLのOptiMEM中で希釈し、希釈したリポフェクタミン(登録商標)2000試薬(50μLのオプチメム(Optimem)中1μL)と混合した。混合物を室温で20分間インキュベートしてから、細胞単層上に適用した。トランスフェクションの48〜72時間後に、細胞をPBS中で洗浄し、100μLのSDSサンプル緩衝液中に溶解させた。
【表14】

【0121】

サイレンサーsiRNA構築キット、カタログ番号1620(アンビオン(Ambion)Inc、テキサス州オースチン(Austin、Tex.))を用いて、3’UTRをターゲティングする表14で同定されたHCV配列;HCVNS5B遺伝子をターゲティングするsiRNA#12(正の対照);同定されたHCVコアsiRNA(正の対照);及び同定されたラミンsiRNA(負の対照)を含むいくつかのsiRNAを合成した。IDT(アイオワ州コーラルビル(Coralville、Iowa))によりDNAオリゴヌクレオチドを合成した。
【0122】
対照siRNA:
1. HCVコア(正の対照):配列番号45
2. HCVNS5Bをターゲティングする表14に示された#12、同様に正の対照
3. ラミン配列(負の対照):配列番号46。
【0123】
対照として次の3つのsiRNAを使用した。負の対照として、細胞遺伝子ラミン(Lamin)をターゲティングするsiRNA;正の対照として、HCVコア配列をターゲティングするsiRNA;正の対照としてHCVNS5B遺伝子をターゲティングするsiRNA。各siRNAの2つの濃度(9及び20ピコモル)を使用し、結果を、無siRNAのトランスフェクションと比較した。
【0124】
従って、図13のウェスタンブロットは、0、9及び20ピコモルの同定されたsiRNAを表わしている。siRNA#22、32、42、62及び72は、HCVNS5Aタンパク質発現を抑制する上で著しく活性であった。推定上、コアについての正の対照siRNAで以前に得られた結果に基づいて、HCVRNAレベルも減少させられる。いくつかのsiRNAはテストされた濃度で最小の効果を有しており、より高い濃度で評価すべきである。これには#12(NS5Bをターゲティングする)、#102、#52及び#82が含まれている。
【0125】
実験2
トランスフェクションのために下表15に記されている配列(及びその相補配列)を含むsiRNAR1−R8が使用されたという点を除いて、RNAiの治療的開発のためのC型肝炎−配列の実験1で記述された通りに、実験2を実施した。ここで実施されたウェスタンブロット検定は実施例2、実験1に記述されている通りであった。正の対照として使用された対照HCVコアsiRNAは、前出のHCV実験1内で記述されたsiRNAである。全てのsiRNAは、0、3、9ピコモルのレベルでトランスフェクションを受けた対照「コア」siRNAを除き、濃度0、9及び20ピコモルの濃度でトランスフェクションを受けた。R1、R2、R3、R5、R7及びR8は全て、図14のウェスタンブロット内で見られたように、HCVの有意な阻害を示した。
【表15】

【0126】

評価された全てのsiRNAは、HCVゲノムの3’UTRに対しマッピングし、HCV遺伝子型及び擬種の間で保存される。配列番号27は、時として「X」領域と呼ばれるHCV3’UTRのこの101nt配列を表わす。
【0127】
実施例3
複製応答能ある細胞培養モデルにおけるHBVの複製及び発現のサイレンシング
細胞培養モデルの簡単な説明
Huh7細胞系列といったようなヒト肝臓由来の細胞系列を、ウイルスRNAの全てを転写し感染ウイルスを産生する能力をもつ末端冗長性ウイルスゲノムから成るHBVの感染性分子クローンでトランスフェクトする[1−3]。これらの研究中で用いられるレプリコンは、ジェンバンク受入れ番号V01460及びJ02203の中に見られるウイルス配列から誘導される。肝細胞内への内在化及び核局在化の後、複数のウイルスプロモータからの感染性のHBVプラスミドの転写が、HBV複製を映し出す事象カスケードを開始させることが示されてきた。これらの事象には、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子内へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写及び、ビリオン及びHBsAg(B型肝炎表面抗原)粒子の組立て及びトランスフェクションを受けた細胞の培地内への分泌が含まれる。このトランスフェクションモデルは、感染を受けた肝細胞内部のHBV複製の大部分の局面を再現し、従って、HBV発現及び複製のサイレンシングを調べるのに用いる優れた細胞培養モデルである。
【0128】
このモデルにおいて、HBVの感染性分子クローン及び評価すべき個々のエフェクタRNA構築物と細胞を同時トランスフェクトする。その後、以下で記述する通りにHBV発現及び複製の損失について、細胞を監視する。
【0129】
以下に記すのは、配列番号1及び配列番号5から誘導された配列をコードするeiRNAベクターを用いた実験の一例である。この実験のための特定のeiRNAは、T7RNAポリメラーゼベースのものであり(T7dsRNA発現系に関する国際公開第0063364号パンフレットならびに2002年7月31日出願の米国特許出願公開第60/399,998P号明細書及び2002年10月18日出願の米国特許出願公開第60/419,532号明細書の教示を参照のこと)、ヘヤピンRNA構造(特に望ましいのは、例えば2002年7月31日出願の米国特許出願公開第60/399,998P号明細書及び2003年7月31日出願のPCT米国特許第2003/024028号明細書中で教示されている通りのdsRNAヘヤピンを形成するためRNA依存性RNAポリメラーゼにより拡張される能力をもつ部分的ヘヤピンである「強制」ヘヤピン構築物、ならびにミス対合した領域を伴うヘヤピンである「乳房様」構造化ヘヤピン(例えばマルチヘヤピン長dsRNAベクター及びマルチ短ヘヤピン構造)及び2002年10月18日出願の米国特許出願公開第60/419,532号明細書及び2003年10月20日出願のPCT米国特許第2003/033466号明細書中で教示されているマルチエピトープ構築物である)をコードする。例えば前述のとおりのその他の発現及びプロモータ系及び/又は代替的dsRNA構造(すなわち2重鎖)をコードするベクターを用いても類似の結果が得られることになると予想される。
【0130】
実験手順:トランスフェクション
トランスフェクションの時点で80〜90%の集密度となるように6ウェル平板内にHuh7細胞を播種する。全てのトランスフェクションは、メーカーの指示に従って、リポフェクタミン(商標)(インビトロジェン)を用いて実施される。この実験においては、50ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(以下のプラスミドの説明)、配列番号1(以下で記述)から誘導された配列から成るヘヤピンRNAをコードする600ngのeiRNAベクター及び配列番号5(以下で記述)に由来する配列から構成されるヘヤピンRNAをコードする600ngのeiRNAベクターを用いて細胞をトランスフェクトする。50ngのHBVプラスミド及び1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドで対照細胞をトランスフェクトする。不活性フィラーDNA、pGL3−ベーシック(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)を全てのトランスフェクションに付加してトランスフェクションあたりの全DNAを2.5μgDNAにする。
【0131】
HBV発現の喪失について細胞を監視
トランスフェクションの後、HBsAg分泌及びDNA含有ウイルス粒子分泌を測定することにより、HBV発現及び複製の喪失又は減少について細胞を監視する。dsRNAの投与後2日目に始めてその後隔日で3週間、トランスフェクションを受けた細胞の培地を検定することによって細胞を監視する。アボット研究所(Abbott Labs)(イリノイ州アボットパーク(Abbott Park、IL))から商業的に入手可能であるアウスザイムELISAを用いてB型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出する。HBsAgは、ウイルス複製のみならずトランスフェクションを受けた感染性HBVクローン内での表面抗原シストロンのRNAポリメラーゼIIで開始された転写とも結びつけられることから、HBsAgを測定する。HBsAg合成はHBV複製の不在下でも続行し得ることから、ウイルス複製のみならず、HBsAgの複製非依存性合成をもダウンレギュレートすることが重要である。包膜されたHBVゲノムDNAを含有するビリオン粒子の分泌も測定する。包膜DNAを含有するビリオン粒子の喪失は、HBV複製の喪失を表わす。ビリオン分泌の分析には、裸の未成熟コア粒子と外被感染性HBVビリオンの間を弁別する技術が関与する[6]。簡単に言うと、培養した細胞の培地由来のペレット化されたウイルス粒子をプロティナーゼK消化に付してコアタンパク質を分解させる。プロティナーゼKの不活性化の後、試料をRQ1DNアーゼ(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)と共にインキュベートして、コア粒子から遊離されたDNAを分解させる。SDSの存在下でプロティナーゼKを用いて試料を再消化させて、DNアーゼを不活性化しかつ感染性外被ビリオン粒子を分断させかつ分解させる。その後フェノール/クロロホルム抽出によりDNAを精製し、エタノールで沈降させる。HBV特異的DNAをゲル電気泳動とそれに続くサザンブロット分析で検出する。
【0132】
結果は、望ましくは、HBVプラスミド及びT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドのみでのトランスフェクションを受けた細胞と比べたHBVプラスミド、T7RNAポリメラーゼ発現プラスミド及びeiRNA構築物でのトランスフェクションを受けた細胞の培地中でのHBsAgとウイルス粒子の分泌の両方における70〜95%の減少を示すことになる。
【0133】
実験で使用されるベクター
T7RNAポリメラーゼ遺伝子の配列
配列番号47は、pCEP4(インビトロジェン、カリフォルニア州カールスバッド)といったような哺乳動物の発現ベクター内にクローニングされるT7のRNAポリメラーゼ遺伝子を表わす。クローニングは、当業者によって容易に行なうことができる。当業者であれば、コザック配列を伴うリーダー配列がT7RNAポリメラーゼ遺伝子から直ぐ上流側でクローニングされる必要があるということにも気づくことだろう。
【0134】
配列番号1から誘導されたRNAヘヤピンをコードするeiRNAベクター
該ベクターは、上述の通りT7ベースである。インサートは、ジェンバンク受入れ番号#SV01460及びJ02203の座標3004−2950(約55bp)からマッピングする配列から成る単分子ヘヤピンをコードする。ヘヤピンの1つの領域は、該配列のセンスバージョンをコードし、ヘヤピンの第2の領域はこの配列のアンチセンスバージョンをコードする。ヘヤピンは、当業者によって容易に設計され作製され得る。
【0135】
配列番号5から誘導されたRNAヘヤピンをコードするeiRNAベクター
該ベクターは、上述の通りT7ベースである。インサートは、ジェンバンク受入れ番号#SV01460及びJ02203の座標730−786からマッピングする配列から成る単分子ヘヤピンをコードする。該ヘヤピンは、配列番号1からの配列をコードするヘヤピンについて記述されたとおりに設計される。
【0136】
実験1
マウスモデルについての論理的根拠
チンパンジーは、ヒトHBV感染性を研究すべき唯一の動物モデルである。しかしながら、ヒトHBVの発現及び複製が起こるマウスモデルも利用可能である。これらのモデルは、抗HBV治療剤の評価用としては非常に貴重なものであり、ヒトにおけるこれらの作用物質の効能の予測判断材料であることが示されてきた[4]。これらのモデルのうちの最初のものは、内部でHBVゲノム又は選択されたHBV遺伝子が発現されるトランスジェニックマウスモデルである[7、8]。該マウスゲノム内にHBVが組込まれることから、これらの動物は、ウイルス複製についてのみならず抗原のRT非依存性発現についてもモデルとして役立つ。内部でエピソームHBVDNAから過渡的に複製応答能あるHBVが発現される類似のモデルが存在する。このモデルは、複製応答能あるHBVDNAを流体力学的送達によってマウスの肝臓内に導入することによって作り上げられる[1]。トランスジェニック動物とは異なり、これらのマウスはHBV抗原に対し免疫寛容性がなく、HBVのトランスフェクションを受けた肝細胞の免疫媒介型寛容性を研究することができる。
【0137】
それぞれウッドチャック肝炎(WHBV)及びアヒル肝炎(DHBV)の研究のためのウッドチャック及びアヒルモデルが存在するものの、我々は、いくつかの理由のため、これらのモデルを使用しないことを選択した。すなわち、1)これらのモデルでは、ヒトHBVを研究できない。我々はヒトHBVの発現をダウンレギュレートすることに究極的な関心があることから、これらのモデルを使用した場合、或る時点で、ヒトHBVに特異的なRNA及び/又はベクターの再設計及び評価が必要になるだろう。2)マウスは同系であり、従って、系内部での遺伝子変数に起因するノイズは発生しない。3)ヒトHBVとは異なり、そのそれぞれの動物モデルと並行して研究できる認証されたWHBV/DHBV細胞培養モデルは全く存在しない。
【0138】
以下で記述する実験は、さまざまなエフェクタdsRNA(eiRNA)発現ベクターと共に複製応答能あるHBVaywプラスミドを同時送達する方法として流体力学的送達を利用している。流体力学的送達は、それが肝臓に対する核酸の効果的な送達を結果としてもたらすことから、この実験にとって理想的である[5]。dsRNAエフェクタプラスミド及び複製応答能あるHBVプラスミドの同一処方内への組合せは、両方のプラスミドが同じ細胞により取上げられる確率を増大させる。発現されたエフェクタdsRNAは、複製するHBVプラスミドを担持する細胞の大部分の中に存在することから、観察された結果は、送達効率の差異ではなくむしろエフェクタプラスミドの性能のせいとすることができる。この実験はただ単に、特定のeiRNAが、感染した肝臓の中で効能を示すということだけを実証している。この実施例では処方及び送達は扱われていない。eiRNAベクターの処方、投薬及び送達は、トランスジェニックマウスが使用される実施例の中で有効化される。
【0139】
実験手順:
対照B10.D2マウスに対し、ウイルスRNAの全てを転写し感染性ウイルスを産生する能力をもつ末端冗長性ウイルスゲノムから成るHBV(ayw亜型)の感染性分子クローンを流体力学的に注射する[1、2、3]。肝細胞内への内在化及び核局在化の後、複数のウイルスプロモータからのHBVaywプラスミドの転写が、HBV複製を映し出す事象カスケードを開始させることが示されてきた[1]。これらの事象には、転写されたウイルスmRNAの翻訳、コア粒子内への転写されたプレゲノムRNAのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写及び、ビリオン及びHBsAg粒子の組立て及び注射された動物の血清内への分泌が含まれる。動物には、HBVレプリコンプラスミドの4つの用量(1μg、3μg、5μg及び10μg)を注射する。これらの用量が選択されたのは、それらが流体力学的送達の後レポータプラスミドの検出可能な発現を惹起する能力をもつ非飽和用量を表わすからである。動物には、各グループ内の動物が合計DNA用量が20μgとなるように特定のエフェクタ構築物を10〜19μg用量受けるような形で、エフェクタdsDNA発現ベクター(eiRNA)の同時注射を行なう。例えば、HBVレプリコンを3μg用量受けるマウスにおいては、合計20μgのDNAが注射されるように、17μgの選択されたeiRNAベクターを注射する。従って、この用量は、使用されたHBVプラスミドの用量に左右される。対照動物は、HBVレプリコンの注射を受けるがeiRNAベクターの注射は受けない。その代り、対照動物には、処方中の合計DNA量が20μgとなるような形で不活性フィラーDNA、pGL3−ベーシック(プロメガ、WI、マディソン)を同時注射する。この研究におけるeiRNAベクターは、U6ベースの発現プラスミド、例えばアンビオン株式会社(Ambion,Inc.)米国テキサス州オースティン(Austin、TX、USA))である。これらのベクターは、配列番号1及び配列番号4から誘導された短かいヘヤピンRNAをコードする。これらのベクターによりコードされる精確な配列が以下で記述されている。ベクターは等量(重量で)で同時注射される。本書の他の箇所で記述されているとおりのその他の発現及びプロモータ系及び/又は代替的構造(すなわち2重鎖)をコードするベクターを用いても類似の結果が得られることになると予想される。
【0140】
配列番号1由来の配列をコードするU6ベースのeiRNAベクターについての説明:ベクターは、受入れ番号V01460及びJ02203の座標2905−2929に対しマッピングする配列を含むヘヤピンをコードする(すなわち、ヘヤピンはTTCAAAAGAのループ構造により分離された、この配列のセンス及びアンチセンスバージョンを含有する)。U6ベースのベクター配列の説明は、リー(Lee)ら、で見ることができる[9]。この実験において使用される第2のeiRNAベクターは、配列番号4から誘導されたヘヤピンをコードし、受入れ番号V01460及びJ02203の座標1215−1239に対しマッピングする配列をコードする。
【0141】
注射後1日目に注射を受けた動物から肝臓試料を取出、HBVRNAの存在について分析する。この時点は、流体力学的送達の後のマウス体内でのHBVaywプラスミド複製の動態を詳述するチサリ博士の研究所からの公表された結果に基づいて選択されており、ピークRNA発現は流体力学的送達の翌日に肝臓内で起こるということを実証している[1]。肝臓試料中のHBVRNAの存在を、ノーザンブロット分析によって確認する。肝臓組織を、HBVRNA発現のダウンレギュレーションについて評価することになる。さらに、HBVsAg及びDNA含有ウイルス粒子の測定のため4日目のマウスから血清を収集することになる。検定は、細胞培養レプリコン実験(実施例3)について記述された通り及びヤン(Yang)ら、にある通りとなる[1]。各々のベクター及び対照グループは、各々1つの収集時点に対応する2つの動物セットから成る。各セットには5匹の動物がいる。
【0142】
結果:
HBVレプリコン及びeiRNA構築物を注射したマウスは、対照動物に比べてHBV特異的RNA及びHBsAg及びHBVウイルス粒子が減少しているはずである。個々の動物において、減少は約70%〜ほぼ100%の範囲となる。
【0143】
実験2
トランスジェニックマウス研究:背景
我々は、チサリ博士の研究所で開発されたHBVトランスジェニックマウスモデルを使用する予定である[8]。これらのマウスは、かなりの量のHBVDNAを複製し、ヒトの効能の予測判断材料である抗ウイルススクリーンとしてのその有用性を実証した[4]。これらの動物は、同様に、それらが抗原のHBV−成分媒介型発現のためのモデルでありかくしてウイルス複製のみならず抗原のRT非依存性発現についてもモデルとして役立ち得るという点で、理想的である。我々はウイルス複製のみならず、成分媒介型抗原発現をもターゲティングすることに関心があることから、これは重要である。
【0144】
これらの実験は、エフェクタプラスミドが、臨床的に関連ある核酸送達方法を用いて動物に投与されるという点において、流体力学的送達実験と異なっている。このモデルにおける有効性は、マウス肝細胞に対するエフェクタプラスミドの効率の良い送達を実証する。
【0145】
実験
参考文献[8]に記述されているマウスに、流体力学的送達例に記述されているeiRNAベクターを含有する処方を静脈内注射することになる。これらは、配列番号1及び配列番号4から誘導された配列を含有するヘヤピンをコードするU6ベースのeiRNAベクターである。
【0146】
注射すべきDNAの処方
DNAを、2003年5月6日出願のPCT米国特許第03/14288号明細書、「核酸送達方法(Methods for Delivery of Nucleic Acids)」サティシュチャンドラン(Satishchandran)の中で記述されている通りに、トリラクトシルスペルミン及びコレステリルスペルミンを用いて処方する。簡単に言うと、全て1.2の電荷比(正対負の電荷)を用いて、3つの処方を作製する。ただし、0.8〜1.2の間の電荷をもつ処方が全て効能を示すものと予想されている、ということを指摘しておくべきである。各プラスミドについてのDNA出発原液は、4mg/mlである。2つのプラスミド原液を、各プラスミドが2mg/mlとなるように等量で混合する。このプラスミド混合物を最終処方のために使用する。処方は、PCT米国特許第03/14288号明細書(前出)に記述されている通りである。すなわち処方A)35%のトリラクトシルスペルミン、65%のコレステリルスペルミン、処方B)50%のトリラクトシルスペルミン、50%のコレステリルスペルミン及び処方C)80%のトリラクトシルスペルミン、20%のコレステリルスペルミン。結果としての処方は全て、現在1mg/mlで各プラスミドを含有する。
【0147】
マウスには、100μlで処方されたDNAを静脈内注射する。1つのマウスグループは処方Aを受け、第2グループは処方Bを受け、第3グループは処方Cを受ける。3つの対照マウスグループに、対照DNA、pGL3ベーシック(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)を含有する処方つまり処方D、E及びFを類似の要領で注射する。注射は、連続4日間一日一回実施する。1〜3日だけの注射で有効であるが、より堅調な効能は4日注射プロトコルで見られる。
【0148】
投与の後、1回目の注射から5日及び9日目に、ウイルス粒子を含有するHBsAg及びDNA含有ウイルス粒子のHBVRNA及び血清レベルを定量化することになる。全ての分析は、流体力学的送達研究について記述された通りとなる。
【0149】
結果:
HBV特異的RNAレベル、HBsAg及びウイルス含有DNA粒子は、処方A、B及びCグループにおいて対照に比べ減少しているはずである。
【0150】
実施例4
複製応答能ある細胞培養モデルにおけるHBV複製及び発現のサイレンシング
細胞培養モデルの簡単な説明:
Huh7細胞系列といったようなヒト肝臓由来の細胞系列を、ウイルスRNAの全てを転写し感染ウイルスを産生する能力をもつ末端冗長性ウイルスゲノムから成るHBVの感染性分子クローンでトランスフェクトする[1−3]。これらの研究中で用いられるレプリコンは、ジェンバンク受入れ番号AF090840の中に見られるウイルス配列から誘導される。肝細胞内への内在化及び核局在化の後、複数のウイルスプロモータからの感染性のHBVプラスミドの転写が、HBV複製を映し出す事象カスケードを開始させることが示されてきた。これらの事象には、転写されたウイルスmRNAの翻訳、転写されたプレゲノムRNAのコア粒子内へのパッケージング、プレゲノムRNAの逆転写及び、ビリオン及びHBsAg粒子の組立て及びトランスフェクションを受けた細胞の培地内への分泌が含まれる。このトランスフェクションモデルは、感染を受けた肝細胞内部のHBV複製の大部分の局面を再現し、従って、HBV発現及び複製のサイレンシングを調べるのに用いる優れた細胞培養モデルである。
【0151】
このモデルにおいては、HBVの感染性分子クローン及びさまざまなeiRNA構築物と細胞を同時トランスフェクトした。その後、以下で記述する通りにHBV発現及び複製の損失について、細胞を監視した。
【0152】
以下に記すのは配列番号1及び配列番号2の両方から誘導された配列をコードするeiRNAベクターを用いて実施された実験の一実施例である。この実験に用いられる特定のeiRNAベクターは、T7RNAポリメラーゼベースのものであり、約650bpの2重鎖RNAをコードする(例えば2000年4月19日出願の国際公開第00/63364号パンフレットを参照のこと)。本書の他の箇所で記述されているようなその他の発現及びプロモータ系及び/又は代替的構造(すなわち2重鎖)をコードするベクターを用いても類似の結果が得られることになると予想される。
【0153】
実験手順:トランスフェクション
トランスフェクションの時点で80〜90%の集密度となるように6ウェル平板内にHuh7細胞を播種した。全てのトランスフェクションは、メーカーの指示に従って、リポフェクタミン(商標)(インビトロジェン)を用いて実施された。この実験においては、A)50ngの感染性HBVプラスミドadw亜型、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(実施例3中のプラスミドの説明)及び1.5μgのHBV特異的eiRNAベクター(以下で記述);B)50ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド及び1.5μgの無関係のdsRNA発現ベクター;C)125ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド及び1.4μgのHBV特異的eiRNAベクター;及びD)125ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド及び1.4μgの無関係のdsRNA発現ベクターで細胞をトランスフェクトした。全てのトランスフェクションはデュプリケートで実施した。この実験では、トランスフェクションB及びDは対照として役立った。トランスフェクションから4日後に、トランスフェクションした細胞から培地を取出し、HBsAgの存在について検定した(以下参照)。背景対照として、トランスフェクションを受けていない細胞からの培地も検定した。
【0154】
HBV発現の喪失について細胞を監視
トランスフェクションの後、HBsAg分泌を測定することにより、HBV発現及び複製の喪失又は減少について細胞を監視した。dsRNAの投与後4日目に、トランスフェクションを受けた細胞の培地(及び培地対照)を検定することによって細胞を監視した。アボット研究所(イリノイ州、アボットパーク)から商業的に入手可能であるアウスザイムELISAを用いてB型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出した。HBsAgはウイルス複製のみならずトランスフェクションを受けた感染性HBVクローン内での表面AgシストロンのRNAポリメラーゼIIで開始された転写とも結びつけられることから、これを測定した。HBsAg合成はHBV複製の不在下でも続行し得ることから、ウイルス複製のみならず、HBsAgの複製非依存性合成をもダウンレギュレートすることが重要である。
【0155】
結果:
HBV特異的eiRNA構築物でのトランスフェクションを受けた細胞は、対照トランスフェクションに比べ、4日の時点でHBsAgの82−93%の減少を示した。
【0156】
この実験において用いられたHBV特異的eiRNA
eiRNAベクターは、ジェンバンク受入れ番号AF090840の座標2027−2674に対しマッピングするdsRNAをコードする。従って、該配列は、配列番号1及び配列番号2の両方から誘導された配列を含む。より特定的には、該配列は、配列番号2の全て及び配列番号1から誘導された134bpを含む。
【0157】
実施例5
細胞培地レプリコンモデル内のHCVのダウンレギュレーション
簡単な説明
この実験においては、機能的HCVレプリコンを発現する細胞系列が作製される。該細胞系列の作製は、ローマン(Lohmann)ら、に詳述されている通りである[10]。この実施形態においては、Huh7細胞を親細胞系列として使用するが、理論的には、任意のヒト肝細胞由来の細胞系列を使用することができる。その後、細胞をHCV特異的eiRNAベクターでトランスフェクトする。HCV特異的RNAの存在をeiRNAのトランスフェクションから3〜7日目にローマンら[10]に記述されている通りノーザンブロット分析により確認する。
【0158】
実験手順:トランスフェクション
トランスフェクションの時点で80〜90%の集密度となるように6ウェル平板内にHCVレプリコンを発現するHch7細胞を播種する。全てのトランスフェクションは、メーカーの指示に従って、リポフェクタミン(商標)(インビトロジェン)を用いて実施される。この実験においては、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(実施例3に記述されたプラスミド)及び1.5μgの配列番号11から誘導された配列から成るヘヤピンRNAをコードするT7ベースのeiRNAベクター(実施例の終りに記述されているベクター)で細胞をトランスフェクトする。対照細胞は、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド及び1.5μgの実施例3で記述されたHBV特異的(配列番号1特異的)でT7ベースのeiRNAベクターでトランスフェクトする。トランスフェクションを受けていないレプリコン発現HuH7細胞を第2の対照として含み入れる。1つの混合物につき10回のトランスフェクションを実施してその結果合計20回のトランスフェクション(1混合物あたり10回)がもたらされ得るような形で、各々のトランスフェクション混合物を作る。3、4、5、6及び7日目に、各トランスフェクションにつき2つの細胞のウェルを溶解させ、標準的技術を用いてRNAを抽出する。試料を、ローマンら[10]に記述されている通りにHCV特異的RNAの存在についてノーザンブロット分析により同時に分析する。
【0159】
結果
HCV特異的eiRNAベクターでのトランスフェクションを受けた細胞は、分析された全ての時点で対照細胞に比べて減少したHCV特異的RNAレベルを示すことになる。
【0160】
HCV特異的eiRNAベクター
eiRNAベクターはT7ベースであり、ヘヤピンRNAをコードする。該ヘヤピンの一方の側は配列番号48を含む。
【0161】
この配列の後には9Tのループ構造が続いている。該ヘヤピンの第2の側は、該ヘヤピンの第1の側に相補的な配列を含んでいる。当業者であれば、ヘヤピン構築物を容易に設計し構築することができる。註:その他のプロモータによって駆動されその他のタイプのRNA構造をコードするその他のタイプのeiRNAも類似の効果を有することになると見込まれている。
【0162】
実施例6
HBV/HCV同時感染の治療
簡単な説明
この実施例では、HBV及びHCVレプリコンの両方を複製する細胞が、HBV及びHCV特異的eiRNAの両方をコードするeiRNAベクターでのトランスフェクションを受ける。
【0163】
実験プロトコル
HBV及びHCVレプリコンの両方を含む細胞系列の作製
HuH7細胞をまず処理して機能的HCVレプリコンを発現させる。細胞系列の作製はローマンら、[10]で詳述されている通りである。細胞系列の確立の後、細胞を実施例3及び以下の「細胞のトランスフェクション」の節で記述されている通りに感染性HBVレプリコンプラスミドでトランスフェクトさせる。この実施例においては、ジェンバンク受入れ番号V01460及びJ02203に見られるウイルス配列からレプリコンを誘導する。理論的には、まずはHBVレプリコンを安定した形で発現する細胞系列をまず作り上げ、次にこの細胞系列を用いて同じくHCVレプリコンを発現する細胞系列を作り上げることも同様に可能である。同様に、HBV及びHCVレプリコンの両方で同時に細胞をトランスフェクトし、HBV及びHCVレプリコンの両方を複製している細胞を選択し増殖させることも可能である。
【0164】
細胞のトランスフェクション
この実施例では、HBV及びHCVeiRNAが同じベクター内の別々のシストロンによってコードされる。ただし、eiRNAが同じシストロン内にコードされるか又は別々のベクターによって提供される場合でも、類似の結果が予想される。この実施例では、各々のシストロンからの転写はT7RNAポリメラーゼプロモータ及びT7RNAポリメラーゼによって駆動される。各プロモータの後にはヘヤピンeiRNAが続いており、このヘヤピンeiRNA自体にはT7ターミネータが後続している(図1)。この実施例中のシストロンは、収束性であるが、発散性シストロンを使用することも可能である。同様に、これらのRNAを産生するためにその他の発現系(ウイルス系を含む)を使用することもでき、さらに又例えば本書の他の箇所で記述されている通り著しく効能に影響を及ぼすことなくこれらのRNAの発現を駆動するべくその他のプロモータを使用することも可能である、ということも指摘しておくべきである。適切な発現系及びプロモータの選択は、当業者の技能範囲内に入る。同じく、例えば本書の他の箇所で記述されているような、及びこの分野の文献中に記述されているようなその他のeiRNA構造を発現することもできる。この実施例では、HBVeiRNAベクターは配列番号1から誘導された配列をコードし、HCVeiRNAベクターは配列番号11から誘導された配列をコードする。ベクターインサートの記述は、この実施例の最後に見られる。
【0165】
トランスフェクションの時点で80〜90%の集密度となるように6ウェル平板内にHuh7細胞を播種する。全てのトランスフェクションは、メーカーの指示に従って、リポフェクタミン(商標)(インビトロジェン)を用いて実施される。この実験においては、50ngの感染性HBVプラスミド、1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミド(プラスミドの説明は実施例3にある)、配列番号1(以下及び実施例3で記述)から誘導された配列から成るヘヤピンRNAをコードする600ngのeiRNAベクター及び配列番号11(以下で記述)から誘導された配列から成るヘヤピンRNAをコードする600ngのeiRNAベクターを用いて細胞をトランスフェクトする。必要な場合には50ngのHBVプラスミド及び1μgのT7RNAポリメラーゼ発現プラスミドで対照細胞をトランスフェクトする。必要な場合には、不活性フィラーDNA、pGL3−ベーシック(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)を全てのトランスフェクションに付加してトランスフェクションあたりの全DNAを2.5μgDNAにする。1混合物につき10回のトランスフェクションを実施し結果として合計20回のトランスフェクション(1混合物につき10回)がもたらされ得るような形で、各トランスフェクション混合物を作る。
【0166】
分析
トランスフェクションの後、HBsAg分泌及びDNA含有ウイルス粒子分泌を測定することにより、HBV発現及び複製の喪失又は減少について細胞を監視する。dsRNAの投与後2日目に始めてその後隔日で3週間、トランスフェクションを受けた細胞の培地を検定することによって細胞を監視する。アボット研究所(イリノイ州アボットパーク)から商業的に入手可能なアウスザイムELISAを用いてB型肝炎表面抗原(HBsAg)を検出する。HBsAgは、ウイルス複製のみならずトランスフェクションを受けた感染性HBVクローン内での表面AgシストロンのRNAポリメラーゼIIで開始された転写とも結びつけられることから、HBsAgを測定する。HBsAg合成はHBV複製の不在下でも続行し得ることから、ウイルス複製のみならず、HBsAgの複製非依存性合成をもダウンレギュレートすることが重要である。包膜されたHBVゲノムDNAを含有するビリオン粒子の分泌も測定する。包膜DNAを含有するビリオン粒子の喪失は、HBV複製の喪失を表わす。ビリオン分泌の分析には、裸の未成熟コア粒子と外被感染性HBVビリオンの間を弁別する技術が関与する[6]。簡単に言うと、培養した細胞の培地由来のペレット化されたウイルス粒子をプロティナーゼK消化に付してコアタンパク質を分解させる。プロティナーゼKの不活性化の後、試料をRQ1DNアーゼ(プロメガ、ウィスコンシン州マディソン)と共にインキュベートして、コア粒子から遊離されたDNAを分解させる。SDSの存在下でプロティナーゼKで再び試料を消化させて、DNアーゼを不活性化しかつ感染性外被ビリオン粒子を分断させかつ分解させる。その後フェノール/クロロホルム抽出によりDNAを精製し、沈降させる。HBV特異的DNAをゲル電気泳動とそれに続くサザンブロット分析で検出する。
【0167】
3、4、5、6及び7日目に各トランスフェクション(実験及び対照)につき2つの細胞ウェルを溶解させ、標準的技術を用いてRNAを抽出する。同様にローマンら[10]に記述されているように、HCV特異的RNAの存在について、ノーザンブロット分析により試料を分析する。
【0168】
結果
HBV−HCV特異的eiRNAベクターでのトランスフェクションを受けた細胞は、分析された全ての時点で対照細胞に比べHCV特異的RNAレベルの減少を示すことになる。さらに、HBsAg及びHBVウイルス粒子のレベルも同様に、対照トランスフェクションに比べ減少することになる。
【0169】
HCV特異的eiRNA配列
eiRNAベクターはT7ベースのものであり、ヘヤピンRNAをコードする。該ヘヤピンの一方の側は配列番号48を含む。
【0170】
この配列の後には9Tのループ構造が続いている。該ヘヤピンの第2の側は、該ヘヤピンの第1の側に相補的な配列を含んでいる。当業者であれば、ヘヤピン構築物を容易に設計し構築することができる。註:様々なヘヤピン構造を含め、その他のプロモータによって駆動されその他のタイプのRNA構造をコードするその他のタイプのeiRNAベクターも類似の効果を有することになると見込まれている。特に望ましいのは、例えば2002年7月31日出願の米国特許出願公開第60/399,998P号明細書及び2003年7月31日出願のPCT米国特許第2003/024028号明細書中で教示されている通りのdsRNAヘヤピンを形成するためRNA依存性RNAポリメラーゼにより拡張される能力をもつ部分的ヘヤピンである「強制」ヘヤピン構築物、ならびにミス対合した領域を伴うヘヤピンである「乳房様」構造化ヘヤピン(例えばマルチヘヤピン長dsRNAベクター及びマルチ短ヘヤピン構造)及び2002年10月18日出願の米国特許出願公開第60/419,532号明細書及び2003年10月20日出願のPCT米国特許第2003/033466号明細書中で教示されているマルチエピトープ構築物並びに当業者にとって既知のその他のdsRNA構造である。
【0171】
HBV特異的eiRNA−配列番号1
ベクターは上述のとおりのT7ベースのものである。インサートは、ジェンバンク受入れ番号V01460及びJ02203の座標3004−2950(約55bp)からマッピングする配列から成る単分子ヘヤピンをコードする。該ヘヤピンの1つの領域は、配列のセンスバージョンをコードし、該ヘヤピンの第2の領域は、この配列のアンチセンスバージョンをコードする。ヘヤピンは当業者により容易に設計、作製され得る。
【0172】
[参考文献]
1.ヤング(Yang)P.L.ら、ウイルスDNAの流体力学的注射;急性B型肝炎ウイルス感染のマウスモデル(Hydrodynamic injection of viral DNA: a mouse model of acute hepatitis B virus infection)、米国科学アカデミー紀要2002年、99(21):p.13825−30
2.グイドッティ(Guidotti)L.G.ら、急性HBV感染中の感染した細胞の破壊の無いウイルスクリアランス(Viral clearance without destruction of infected cells during acute HBV infection)、サイエンス(Science9、1999年、284(5415):p.825−9
3.シム(Thimme)、R.ら、CD8(+)T細胞が、急性B型肝炎ウイルス感染中のウイルスクリアランス及び疾病病原性を媒介する(CD8(+) T cells mediate viral clearance and disease pathogenesis during acute hepatitis B virus infection)、ウイルス学ジャーナル(J Virol)、 2003年、77(1):p.68−76
4.モーレイ(Morrey)J.D.ら、「B型肝炎感染についての化学療法モデルとしてのトランスジェニックマウス(Transgenic mice as a chemotherapeutic model for Hepatitis B infection)」「ウイルス性肝炎療法(Therapies for Viral Hepatitis)」、シナジ(Schinazi)R.F.、ソマドッシ(Sommadossi)、J−P.及びトーマス(Thomas)H.C.編中、インターナショナルメディカルプレス(International medical Press)、英国ロンドン、ホルボーン(Holborn、London)WC 1V6QA、UK、1998年
5.リュー(Liu)F.、Y.ソン(Song)及びD.リュー(Liu)、プラスミドDNAの全身投与による動物の体内の流体力学ベースのトランスフェクション(Hydrodynamics−based transfection in animals by systemic administration of plasmid DNA)、遺伝子療法(Gene Ther)、1999年、6(7):p.1258−66
6.ディレニー(Delaney)W.E.t及びH.C.アイソム(Isom)、B型肝炎ウイルス組換え型バキュロウイルスにより媒介されるヒトHepG2細胞中のB型肝炎ウイルス複製(Hepatitis B virus replication in human HepG2 cells mediated by hepatitis B virus recombinant baculovirus)、肝臓学(Hepatology)、1998年、28(4):p.1134−46
7.チサリ(Chisar)F.V.ら、慢性B型肝炎表面抗原担体状態のトランスジェニックマウスモデル(A transgenic mouse model of the chronic hepatitis B surface antigen carrier state)、サイエンス、1985年、230(4730):p.1157−60
8.グイドッティ L.G.ら、トランスジェニックマウス体内の高レベルB型肝炎ウイルス複製(High−level hepatitis B virus replication in transgenic mice)、ウイルス学ジャーナル(J Virol)、1995年、69(10):p.6158−69
9.リー(Lee)NS、ドージマ(Dohjima)T.、バウアー(Bauer)G.、リー(Li)H.リー(Li)M.J.、イーサニ(Ehsani)A.、サルバテーラ(Salvaterra)P.及びロッシ(Rossi)J.、ヒト細胞内のHIV−1rev転写物に対してターゲティングされた小型干渉RNAの発現(Expression of small interfering RNAs targeted against HIV−1 rev transcripts in human cells)、ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、2002年、p.500−505
10.ローマン(Lohmann)V.、コーナー(Korner)F.、コッホ(Koch)J.−O.、ヘリアン(Herian)U.、テイルマン(Theilmann)L.及びバルテンシュレーガー(Bartenschlager)R.、ヘパトーマ細胞系列におけるサブゲノムC型肝炎ウイルスRNAの複製(Replication of Subgenomic Hepatits C Virus RNAs in a Hepatoma Cell Line)、サイエンス、1999年、285:110−113
【配列表フリーテキスト】
【0173】
配列の簡単な説明
配列番号1〜配列番号10はB型肝炎ゲノムの保存された領域を表わす。
【0174】
配列番号11及び配列番号12は、C型肝炎ゲノムの保存された領域を表わす。
【0175】
配列番号13は、ヒトU6プロモータのヌクレオチド配列を表わす。
【0176】
配列番号14及び配列番号15は、配列番号5内にHBV配列マッピングを有するeiRNAを表わす。
【0177】
配列番号16及び配列番号17は、配列番号4内にHBV配列マッピングを有するeiRNAを表わす。
【0178】
配列番号18は、配列番号10内にHBV配列マッピングを有するeiRNAを表わす。
【0179】
配列番号19〜配列番号22は、配列番号3内にHBV配列マッピングを有するeiRNAを表わす。
【0180】
配列番号23及び配列番号24は、配列番号2内にHBV配列マッピングを有するeiRNAを表わす。
【0181】
配列番号25及び配列番号26は、配列番号1内にHBV配列マッピングを有するeiRNAを表わす。
【0182】
配列番号27は、HCV3’UTRの「X」領域を表わす。
【0183】
配列番号28〜配列番号36は、HCV3’UTRに対するsiRNAマッピングを表わす。
【0184】
配列番号37〜配列番号44は、HCV3’UTRの「X」領域に対するsiRNAマッピングを表わす。
【0185】
配列番号45は、HCVコアに対するsiRNAマッピングを表わす。
【0186】
配列番号46は、ラミンに対するsiRNAマッピングを表わす。
【0187】
配列番号47は、T7RNAポリメラーゼ遺伝子を表わす。
【0188】
配列番号48は、ヘヤピンRNAをコードするT7−ベースのeiRNAベクターを表わす。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子をインビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、インビボにて哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための方法。
【請求項2】
配列番号1〜配列番号10のうちの2つ以上の中から少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むエフェクタ分子が同じ細胞に投与されることをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記投与が、UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子の前記哺乳動物細胞での産生を可能にする能力をもつ発現構築物を含む1つ以上の発現ベクターを提供することによって達成される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の発現ベクターがさらに、T7ポリメラーゼプロモータ、SP6ポリメラーゼプロモータ及びRNAポリメラーゼIIIプロモータから選択されたプロモータを含み、前記プロモータが前記少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子をインビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、インビボにて哺乳動物細胞中でC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための方法。
【請求項6】
配列番号11及び配列番号12のうちの2つ以上の中から少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むエフェクタ分子が同じ細胞に投与されることをさらに含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記投与が、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子の前記哺乳動物細胞での産生を可能にする能力をもつ発現構築物を含む1つ以上の発現ベクターを提供することによって達成される、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記1つ以上の発現ベクターがさらに、T7ポリメラーゼプロモータ、SP6ポリメラーゼプロモータ及びRNAポリメラーゼIIIプロモータから選択されたプロモータを含み、前記プロモータが前記少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の第1の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子及び、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の第2の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を、インビボにて哺乳動物細胞に投与することを含む、同じインビボにて哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列及びC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の両方の発現を阻害するための方法。
【請求項10】
配列番号1〜配列番号12のうちの3つ以上の中から少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むエフェクタ分子が前記同じ細胞に投与されることをさらに含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記投与が、UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の第1の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子及び、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の第2の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子の、前記哺乳動物細胞での産生を可能にする能力をもつ発現構築物を含む1つ以上の発現ベクターを提供することによって達成される、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記1つ以上の発現ベクターがさらに、T7ポリメラーゼプロモータ、SP6ポリメラーゼプロモータ及びRNAポリメラーゼIIIプロモータから選択された第1のプロモータ(前記第1のプロモータは前記第1の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている)及び、T7ポリメラーゼプロモータ、SP6ポリメラーゼプロモータ及びRNAポリメラーゼIIIプロモータの中から選択された第2のプロモータ(前記第2のプロモータは前記第2の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列に作動可能に連結されている)を含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項1、5又は9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、インビボにて哺乳動物細胞中でB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物。
【請求項15】
配列番号1〜配列番号10のうちの2つ以上の中から少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むエフェクタ分子が前記組成物中に存在していることをさらに含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、インビボにて哺乳動物細胞中でC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物。
【請求項17】
配列番号11〜配列番号12のうちの2つ以上の中から少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むエフェクタ分子が存在していることをさらに含む、請求項16に記載の組成物。
【請求項18】
UがTに置換されている、配列番号1、配列番号2、配列番号3、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、配列番号9及び配列番号10から成る群から選択された配列内の第1の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子及び、UがTに置換されている、配列番号11及び配列番号12から成る群から選択された配列内の第2の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、単一の哺乳動物細胞中、インビボにてB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列及びC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の両方の発現を阻害するための組成物。
【請求項19】
配列番号1〜配列番号12のうちの3つ以上の配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むエフェクタ分子が前記組成物中に存在していることをさらに含む、請求項18に記載の組成物。
【請求項20】
前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項14、16又は18のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項21】
a)配列番号1、
b)配列番号2、
c)配列番号3、
d)配列番号4、
e)配列番号5、
f)配列番号6、
g)配列番号7、
h)配列番号8、
i)配列番号9、
j)配列番号10、
k)(a)〜(j)の相補配列、及び
l)(a)〜(k)の混合物、
から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む、哺乳動物細胞内のB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物。
【請求項22】
a)配列番号11、
b)配列番号12、
c)(a)又は(b)の相補配列、及び
d)(a)〜(c)の混合物、
から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む、哺乳動物細胞内のC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物。
【請求項23】
a)配列番号1、
b)配列番号2、
c)配列番号3、
d)配列番号4、
e)配列番号5、
f)配列番号6、
g)配列番号7、
h)配列番号8、
i)配列番号9、
j)配列番号10、
k)配列番号11、
l)配列番号12、
m)(a)〜(l)の配列の相補配列、及び
n)(a)〜(m)の混合物、
から成る群から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む、同じ哺乳動物細胞内のB型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列及びC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物であって、群(a)〜(j)からの少なくとも1つと群(k)及び(l)からの1つを含む組成物。
【請求項24】
前記少なくとも19個の隣接のヌクレオチド配列がDNAを含み、前記哺乳動物細胞がヒト細胞である、請求項21、22又は23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項25】
前記少なくとも19個の隣接のヌクレオチド配列がRNAを含み、前記哺乳動物細胞がヒト細胞であり、さらにUがTに置換されている、請求項21、22又は23のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項26】
配列番号14〜配列番号26から選択された配列を含むポリヌクレオチド配列。
【請求項27】
配列番号14〜配列番号26から選択された配列のヌクレオチド1〜19、1〜20、1〜21、2〜20、2〜21又は3〜21を含むポリヌクレオチド配列。
【請求項28】
配列番号27〜配列番号44から選択された配列内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含むポリヌクレオチド配列。
【請求項29】
UがTに置換されている、配列番号27内の少なくとも19個の隣接塩基対のヌクレオチド配列を含む2本鎖RNAエフェクタ分子を含む、哺乳動物細胞内のC型肝炎ウイルスのポリヌクレオチド配列の発現を阻害するための組成物。
【請求項30】
請求項14、16、18、21、22、23又は29のいずれか一項に記載の組成物を含む発現構築物。
【請求項31】
請求項30に記載の発現構築物を含む哺乳動物細胞。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2011−224013(P2011−224013A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−148461(P2011−148461)
【出願日】平成23年7月4日(2011.7.4)
【分割の表示】特願2006−533810(P2006−533810)の分割
【原出願日】平成16年6月10日(2004.6.10)
【出願人】(505369158)アルナイラム ファーマシューティカルズ, インコーポレイテッド (51)
【氏名又は名称原語表記】ALNYLAM PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】