説明

遺伝子型HCVの同定方法

本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)の2型および3型の遺伝子型をHCV1型および4〜6型の遺伝子型と区別するためのプライマー特異的増幅方法に関する。本発明はHCVに感染した患者に対する、予後の決定、および治療レジメンの選択における適用を見出す。2型、3型および4型のHCVのそれぞれについての検出キットもまた開示している。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、C型肝炎ウイルス(HCV)のA群遺伝子型をHCVのB群遺伝子型と区別するための方法に関する。したがって、本発明は、HCVに感染した患者に対する予後の決定、および治療レジメンの選択における適用を見出す。
【背景技術】
【0002】
C型肝炎ウイルスは、6つの遺伝的に異なる遺伝子型で存在するプラス鎖RNAウイルスである。これらは、1型、2型、3型、4型、5型、および6型と呼ばれ、およびそれらの全長ゲノムが報告されている(Genbank/EMBLアクセッション番号1a型:AF011753;1b型:AF054250;2a型:D00944;2b型:D10988;2c型:D50409;3a型:AF046866;3b型:D49374;4a型:Y11604;5a型:AF064490;6型:D84262)。各遺伝子型のウイルスは、わずかな遺伝的相違を示す異なる「擬似種」として存在する。イギリスおよびアメリカでは、感染した個体の大多数は、遺伝子型1、2、または3のHCVに感染している。イギリスでは、遺伝子型4は幾つかの移民集団において低い普及率で同定されているが、中東およびアフリカでは一般的である。遺伝子型5および6は、イギリスではめったに見られないが、極東ではより一般的である。HCV感染は、イギリスにおける人口の約0.5%、アメリカにおける人口の1.8%および世界の人口の3%を冒している。感染した人々の85%超において、HCVは個体間で重症度が異なる慢性肝炎を特徴とする生涯にわたる感染を引き起こす。
【0003】
現在利用できる唯一の効果的な治療法は、ポリエチレングリコール(PEG)と結合した修飾された形で単独で使用される、またはリバビリンと一緒に使用される(「併用療法」)、インターフェロンα(IFN-α)である。ランダム化比較試験により、以前にインターフェロン単独による治療を受けた患者および以前にインターフェロンによる治療を受けたことがない患者におけるHCV感染の治療で、併用療法が非常に効果的であることが示されている(Davis et al, NEJM, (1998), 339 (21): 1493-99(非特許文献1); Poynard et al, Lancet (1998) 352 (9138): 1426-32(非特許文献2))。
【0004】
サブグループ解析により、予後および治療に対する反応の圧倒的に主要な決定要因はHCV遺伝子型であることが明らかにされている(Poynard et al, Lancet, 1998, 352 (9138): 1426-32(非特許文献2))。6か月間治療を受けた遺伝子型2または3の感染がある患者については、減らした用量のリバビリンによる6か月間の治療に対する反応率が、1年間治療を受けた遺伝子型1、4、5、または6の感染がある患者で見られる反応率を上回る。混合遺伝子型感染では、遺伝子型1、4、5、または6が優位を占める。
【0005】
HCV遺伝子型1、4、5、および6と比較した、HCV遺伝子型2および3に対する治療期間における相違を考慮して、これらの遺伝子型は以下の群に分類されている。
HCV遺伝子型A群−HCV遺伝子型1、4、5、および6
HCV遺伝子型B群−HCV遺伝子型2および3
【0006】
併用療法は高額である(イギリスでは、1年間の治療に約8,000ポンドかかる)。したがって、B群の感染がある患者の同定により、結果として生じる費用の節約を伴って、6か月後に治療を中止すること、およびさらなる治療と関連する薬物の不必要な副作用を回避することが可能になる。さらに、HCV感染の最も深刻な結果は肝細胞癌である。それゆえに、患者がどの遺伝子群のHCVに感染しているかを同定できることが望ましい。
【0007】
公知のHCV遺伝子型同定法は、制限エンドヌクレアーゼ消化したポリメラーゼ連鎖反応増幅産物(RFLP)のアガロースゲル電気泳動法、特異的抗体を用いたHCVの検出、直接シーケンシングによる配列解析、またはBayer Versant LiPAアッセイ法による配列解析を依拠している。酵素消化は、終了に達するのに比較的長い時間がかかる可能性があり、RFLP法を時間のかかるものにしている。それはまた、幾つかの異なる工程を伴い、それを自動化または迅速なスループットに馴染まないものにしている。さらに、不正確な遺伝子型同定が、(i)制限エンドヌクレアーゼは100%の効率では切断しないという事実、および(ii)擬似種における1塩基対の突然変異によりPCR産物の消化が失敗に終わる可能性があるという事実のために起こりうる。LiPAアッセイ法は、市販されているHCV遺伝子型同定用のキットであるが、労働集約的であり、時間がかかり、ハイスループットに馴染まず、かつ解釈するのが難しい可能性がある。シーケンシングは専門装置および熟練操作者に依存し、かつ時間もかかる。
【0008】
米国特許第5851759号(特許文献1)は、HCV RNAを単離し、かつこのRNAからcDNAを合成するHCVの遺伝子型同定の方法を開示している。その後、cDNAはHCVゲノムのE1領域に隣接するプライマーを用いるPCRに供する。PCRの産物は、ヘテロ2本鎖トラッキングアッセイ法(HTA)を用いて解析する。HCVゲノムの最も不均一な領域であると考えられるので、E1領域を解析用に選択した。したがって、この領域の増幅により、試料中の各HCV株に対して異なる産物が与えられる可能性が高い。その後、試料中に存在する株を示すために、これらの産物を解析することができる。
【0009】
国際公開公報第01/46469号(特許文献2)は、その配列を決定することができるように、標本中に存在する任意のHCVの5'非コード領域を増幅する非特異的プライマーの使用を開示している。
【0010】
Bukh J et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1992, 89: 4942-4946(非特許文献3)は、様々なHCV分離株の5'非コード領域の配列解析を開示している。結果は、検査した分離株間に不均一な領域があることを示している。著者らは、観察された不均一性が異なるサブグループ間にあるかどうかを述べることはできなかった。結果として、著者らは、HCVの5'非コード領域はHCVの同定に用いられるべき領域ではないという結論を下した。
【0011】
国際公開公報第03/057915号(特許文献3)は、HCV-1をHCV-2およびHCV-3と区別するための方法を開示している。しかしながら、その方法は、HCVが遺伝子型A群かB群かということに関する決定的な答えを与えない。
【0012】
HCV遺伝子型A群およびHCV遺伝子型B群を治療するための異なる治療期間を考慮すると、これらのHCV遺伝子型群を区別することができる必要性が存在する。
【0013】
【特許文献1】米国特許第5851759号
【特許文献2】国際公開公報第01/46469号
【特許文献3】国際公開公報第03/057915号
【非特許文献1】Davis et al, NEJM, (1998), 339 (21): 1493-99
【非特許文献2】Poynard et al, Lancet (1998) 352 (9138): 1426-32
【非特許文献3】Bukh J et al, Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 1992, 89: 4942-4946
【発明の開示】
【0014】
本発明の第1の局面によれば、試料中に存在するHCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定する方法であって、以下の工程を含み、
産物が工程(a1)または(a2)で検出される場合には、HCVはB群にあり、および産物が工程(a1)または(a2)で検出されない場合には、HCVはA群にある方法が提供される:
(a1)(i)HCV-2ゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第1の増幅反応に試料を供する工程;および
(ii)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第2の増幅反応に試料を供する工程;または
(a2)HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー、およびHCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(b)増幅反応の産物を検出する工程。
【0015】
本発明の第1の局面の方法において、HCV遺伝子型2または3が検出される場合には、HCV遺伝子型B群が存在する。対照的に、HCV遺伝子型2または3が検出されない場合には、HCV遺伝子型A群が存在する。
【0016】
第1の局面の方法は、以下の工程をさらに含み、
産物が工程(c)および/または(d)で検出される場合には、HCVはHCV A群にあり、ならびに産物が工程(c)および/または(d)で検出されない場合には、HCVはHCV B群にあってもよい:
(c)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに/または
(d)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(e)増幅反応の産物を検出する工程。
【0017】
産物が工程(c)で検出される場合には、HCVはHCV遺伝子型1、5、または6であり、および産物が工程(d)で検出される場合には、HCVはHCV遺伝子型4である。
【0018】
第2の局面において、本発明は、試料中に存在するHCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定する方法であって、以下の工程を含み、
産物が工程(a1)または工程(a2)で検出される場合には、HCVはA群にあり、および産物が工程(a1)または工程(a2)で検出されない場合には、HCVはB群にある方法を提供する:
(a1)(i)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第1の増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(ii)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第2の増幅反応に試料を供する工程;または
(a2)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー、ならびにHCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(b)増幅反応の産物を検出する工程。
【0019】
本発明の第2の局面の方法において、HCV遺伝子型1、4、5、または6が検出される場合には、HCV遺伝子型A群が存在する。対照的に、HCV遺伝子型1、4、5、または6が検出されない場合には、HCV遺伝子型B群が存在する。産物が工程(a1)(i)で検出される場合には、HCVはHCV遺伝子型1、5、または6であり、および産物が工程(a1)(ii)で検出される場合には、HCVはHCV遺伝子型4である。
【0020】
第2の局面の方法は、以下の工程をさらに含み、
産物が工程(c)および/または(d)で検出される場合には、HCVはHCV B群にあり、ならびに産物が工程(c)および/または(d)で検出されない場合には、HCVはHCV A群にあってもよい:
(c)HCV-2ゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および/または
(d)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(e)増幅反応の産物を検出する工程。
【0021】
産物が工程(c)で検出される場合には、HCVはHCV遺伝子型2であり、および産物が工程(d)で検出される場合には、HCVはHCV遺伝子型3である。
【0022】
第3の局面において、本発明は、試料中のHCV遺伝子型1、5、もしくは6(HCV-1、HCV-5、もしくはHCV-6)、HCV遺伝子型2(HCV-2)、HCV遺伝子型3(HCV-3)、またはHCV遺伝子型4(HCV-4)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
(a1)(i)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(ii)HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(iii)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(iv)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;または
(a2)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー、HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;ならびにHCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(c)増幅反応の産物を検出する工程。
【0023】
したがって、本発明の第1、第2および第3の局面の方法は、HCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定し、かつHCV遺伝子型1、5、6、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、およびHCV遺伝子型4を互いと区別することも可能にする。それゆえに、本発明の第1、第2および第3の局面の方法は、長期間の、高額で、かつ不必要な詳細にわたる遺伝子型同定およびサブタイピングを必要とせずに、HCV感染の遺伝子型によって決定されるような、どの治療レジメンに従うべきなのかということに関する判断をするための好適な情報を提供する。
【0024】
HCVゲノムは、1つの長いオープンリーディングフレーム(ORF)に隣接する5'および3'非コード(または非翻訳)領域(NCR)からなる。このORFはアミノ末端の3つの構造タンパク質およびカルボキシル末端の6つの非構造(NS)タンパク質をコードしている。構造タンパク質は、ヌクレオカプシド(コア;C)タンパク質ならびに2つの糖タンパク質、エンベロープ1(E1)およびエンベロープ2(E2)、から表される。非構造タンパク質は、NS2、P7、NS3、NS4a、NS4b、NS5a、NS5bと名付けられている。2つのエンベロープタンパク質(E1およびE2)の配列が異なるHCV分離株間で非常に変化に富んでいるのに対し、5'NCRはHCVゲノムの最も高度に保存されている部分である。本発明は、5'NCRの部分がHCV遺伝子型1、2、3、4、5、および6の各々について保存されているという驚くべき発見にある。したがって、それぞれのHCV遺伝子型について保存されている5'NCRの部分に特異的にアニーリングする増幅反応用のプライマーを設計することができる。
【0025】
増幅反応はPCRであってもよい(例えば、米国特許第4,683,195号および第4,683,202号、ならびにInnis et al, editors, PCR Protocols, (Academic Press, New York, 1989; Sambrook et al, Molecular Cloning, 第2版, (Cold Spring Harbour Laboratory, New York 1989) を参照されたい)。PCRは通常、HCV RNAを単離し、好ましくは逆転写によって、cDNAに変換する場合に使用されると思われる。好ましくは、Taq DNAポリメラーゼ、例えば、Amplitaq(商標)(Perkin-Elmer, Norwalk, Conn.)を用いて、PCRを実行する。Taqポリメラーゼは、MBI Fermentas、Perkin-Elmer、Boehringer MannheimおよびBeckman Instrumentsから入手することもできる。Tfl(好熱菌(Thermus flavus))ポリメラーゼ(Gut et al, Virol. Methods 77 (1): 37-46 (1999))などの、同等で、好ましくは耐熱性の、DNAポリメラーゼを、本発明の方法において使用してもよい。
【0026】
または、増幅反応はRT-PCRであってもよく(Yajima et al, Clin. Chem, 44 (12): 2441-2445 (1998); Martell et al, J. Clin. Microbiol., 37 (2): 327-332 (1999); Gut et al, Virol. Methods 77 (1): 37-46 (1999); Predhomme et al, Leukemia, 13 (6): 957-964 (1999))、これにおいて、HCV RNAが逆転写され、その後PCR増幅に供されるcDNAになる。
【0027】
HCV RNAのcDNAへの逆転写およびその後のPCR増幅反応を、1ステップで行なってもよい。このように、本発明の方法の増幅反応は以下の工程を含んでもよい:
a)HCV RNA、逆転写酵素、DNAポリメラーゼおよびプライマーを含む反応混合物の温度を上げて、逆転写酵素を活性化する工程;ならびに
b)さらに温度を上げて、逆転写酵素を不活性化し、かつDNAポリメラーゼを活性化する工程。
【0028】
このように、操作者の実務時間をあまり必要としないので、増幅反応工程はより効率的である。この結果として、試料の汚染のリスクが軽減される。
【0029】
緩衝液および酵素などの、その他の構成要素を、1ステップ増幅反応用の反応混合物に組み入れてもよい。例えば、Qiagen(QuantiTectプローブRT-PCRキット)からなどの、HCV RNAおよびプライマー以外の反応混合物の構成要素が市販されている。
【0030】
DNAポリメラーゼはTaq DNAポリメラーゼであってもよい。Taq DNAポリメラーゼは、「ホットスタート」Taq DNAポリメラーゼであってもよい。それは、HotStarTaq DNAポリメラーゼであってもよい。
【0031】
工程a)における温度を、約40℃〜約60℃の範囲内に収まる温度、および好ましくは、約45℃〜約55℃の範囲内に収まる温度まで上げてもよい。工程a)における温度を、約50℃まで上げてもよい。工程b)における温度を、約80℃〜約110℃の範囲内に収まる温度、および好ましくは、約90℃〜約100℃の範囲内に収まる温度まで上げてもよい。工程b)における温度を、約95℃まで上げてもよい。
【0032】
周知のように、PCRはDNA(またはRNA)の試料の(好ましくは熱による)抽出および変性を伴う。耐熱性であり得る、ポリメラーゼ、および増幅される配列を形成するためのdNTPと共に、モル過剰のオリゴヌクレオチドプライマーを加える。増幅されることが望ましい配列の反対の末端にハイブリダイズするように、オリゴヌクレオチドプライマーを設計する。第1の増幅ラウンドで、ポリメラーゼはDNAを複製し、それぞれのプライマーで始まる、2つの「長い産物」を生成する。次に、2つの長い産物および2つの最初の鎖を含む、全DNAを変性させ、(例えば、温度を下げることによって)第2ラウンドのポリメライゼーションを実行する。第2ラウンドの結果は、2つの最初の鎖、第1ラウンドからの2つの長い産物、(最初の鎖から生成された)2つの新たな長い産物、および長い産物から生成された2つの「短い産物」である。これらの短い産物は、各々の末端にプライマーが付いた標的配列(センスまたはアンチセンス)の配列を有する。各々のさらなる増幅ラウンドの間に、短い産物の数は指数関数的に増え、各々のラウンドが2つのさらなる長い産物ならびにそれまでのラウンドの終了時に残っている長い産物および短い産物の合計と等しい多数の短い産物を生成する。
【0033】
オリゴヌクレオチドプライマーを、例えば、Ozaki et al, Nuc. Acids Res. 20: 5205-5214 (1992); Agrawal et al, Nuc. Acids Res. 18: 5419-5423 (1990) またはそれらと同様のもの、などの多数のアプローチによって合成することができる。ホスホラミダイト化学反応(Beaucage and Iyer, Tetrahedron 48: 2223-2311 (1992), 米国特許第4980460号、同第4725677号、同第4415732号、同第4458066号および同第4973679号)などの標準的化学反応を用いて、例えば、Applied Biosystems社, Foster City, Californiaモデル392または394 DNA/RNA合成装置などの、自動DNA合成装置で、オリゴヌクレオチドプローブを適宜合成する。結果として生じるオリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーション効率が悪影響を受けない場合には、ホスホロチオアートおよびホスホラミデートなどの非天然の骨格基を含む、別の化学反応を用いてもよい。DNAプライマーの正確な長さおよび配列は、増幅される標的ポリヌクレオチドに依存すると思われる。好ましくは、DNAプライマーの長さは、10〜60ヌクレオチドの範囲内であり、およびより好ましくは15〜30ヌクレオチドまたは25ヌクレオチドの範囲内である。
【0034】
第1、第2、および第3の局面の方法はまた、全てのHCV遺伝子型の間で保存されている5'NCRの領域にアニーリングするプライマーを用いる、任意のHCV遺伝子型が試料中に存在するかどうかを検出するための予備的な増幅反応に試料を供する工程を含んでもよい。全てのHCV遺伝子型の間で保存されている5'NCRの領域にアニーリングするプライマーは、以下のものであってもよい(本明細書において核酸の位置に言及する場合、それらはFields' Virologyからのコンセンサス配列M67463由来のものである)。

配列中、I=デオキシイノシンである。
【0035】
本発明の第1、第2、および第3の局面の方法はまた、HCV物質を試料から単離するさらに予備的な工程を含んでもよい。この工程では、全てのHCV遺伝子型に共通なプライマーを用いる予備的な増幅反応に試料を供する。したがって、この工程により、本発明の方法を、HCV物質を含む試料に適用することが可能となる。これに好適なプライマーは以下のものである。

配列中、W=アデニンまたはチミンである。
【0036】
増幅の産物の検出を、アガロースゲル電気泳動法という周知の技術を用いて行なってもよい。HCV遺伝子型2もしくは3(HCV遺伝子型B群)またはHCV遺伝子型1、4、5、もしくは6(HCV遺伝子型A群)が試料中に存在する場合には、増幅反応はアガロースゲル上に検出することができる(既知サイズの)1つまたは複数の産物を生成する。
【0037】
本発明での使用に好適なHCV-1、5、および6に特異的なプライマーは以下のものであってもよい。

【0038】
本発明での使用に好適なHCV-2特異的プライマーは、5'ACTCT 3'という配列を含み、8〜30ヌクレオチド長で、かつ5'ACTCT 3'というわずか5ヌクレオチドの3'を有する、HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長であってもよい。HCV-2特異的プライマーは、以下のオリゴヌクレオチドであってもよい。

【0039】
本発明での使用に好適なHCV-3特異的プライマーは、5'TCA 3'という配列を含み、8〜30ヌクレオチド長で、かつ5'TCA 3'の3'の5ヌクレオチドを有する、HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長であってもよい。HCV-3特異的プライマーは、以下のオリゴヌクレオチドであってもよい。

【0040】
本発明での使用に好適なHCV-4特異的プライマーは、Wがアデニンまたはチミンである、5'TWTT 3'という配列を含み、8〜30ヌクレオチド長で、かつ5'TWTT 3'の3'のわずか5ヌクレオチドを有する、HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にハイブリダイズするオリゴヌクレオチドであってもよい。オリゴヌクレオチドは15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、または25ヌクレオチド長であってもよい。HCV-4特異的プライマーは、以下より選択されるオリゴヌクレオチドであってもよい。

【0041】
上記のプライマーを任意の共通なHCVプライマーと一緒に使用してもよい。一例として以下のものがある。

【0042】
本発明はまた、単独で、およびUTR−R2などの、任意の普遍的なHCVプライマーと組み合わせて、Spec−1、Spec-2、Spec-3、Spec-4-Thy、およびSpec-4-Adを提供する。
【0043】
またさらなる局面において、本発明は、試料中のHCV遺伝子型2(HCV-2)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および
b)増幅反応の産物を検出する工程。
Spec-2は、この方法において有用な好適なHCV-2特異的プライマーである。
【0044】
またさらなる局面において、本発明は、試料中のHCV遺伝子型3(HCV-3)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および
b)増幅反応の産物を検出する工程。
Spec-3は、この方法において有用な好適なHCV-3特異的プライマーである。
【0045】
HCV遺伝子型4は中東およびアフリカで極めて普及しており、エジプトでは人口の25%を超えている。遺伝子型4は、遺伝子型2および3よりも遺伝子型1とより類似した方法での治療に反応し、したがって遺伝子型4のある患者は1年間の全用量のリバビリンを受けなくてはならないことが実験により示唆されている。しかしながら、遺伝子型4は遺伝子型1と遺伝子型2および3の中間の方法で反応する可能性があることが、新たに出てきた証拠により示唆されている。したがって、具体的に中間の治療レジメンを提供するための遺伝子型4の検出が有用であると思われる。これを考慮して、さらなる局面において、本発明は、試料中のHCV遺伝子型4(HCV-4)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法を提供する:
a)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および
b)増幅反応の産物を検出する工程。
Spec-4-ThyおよびSpec-4-Adは、この方法において有用な好適なHCV-4特異的プライマーである。
【0046】
本発明の方法の増幅反応を同時に行なってもよい。
【0047】
アガロースゲル電気泳動法に代わるものとして、その、または各々の、増幅反応の産物の検出を、代わりに蛍光分析を用いて行なってもよい。HCV遺伝子型が存在する場合には、増幅は起こり、および消光された蛍光標識プローブのハイブリダイゼーションによって、これを検出する。連続したラウンドの増幅によって、増加した量の蛍光プローブがPCR産物に取り込まれるようになり、かつクエンチャーが遊離し、結果的に増加した量の蛍光が反応容器で検出可能になる。そのような蛍光検出により、このアプローチが自動化およびハイスループット処理に理想的に好適なものとなっている。
【0048】
1つの周知の蛍光技術は、いわゆる「TaqMan」法である(Holland, et al, Proc. Nat. Acad. Sci, 88: 7276-80, (1985))。この方法は、標的ポリヌクレオチド、すなわちPCRプライマーによって境界が定められる配列の間の一部分に相補的なオリゴヌクレオチドプローブを使用し、そのプローブは2つの蛍光分子またはフルオロフォアで標識されている。十分に近傍にある場合、一方の分子の発光スペクトルが他方の分子の励起スペクトルと重なり、結果として、第1のフルオロフォア(「レポーター」)の発光は第2のフルオロフォア(「クエンチャー」)によって消光される。
【0049】
オリゴヌクレオチドプローブは、5'-3'エキソヌクレアーゼ活性を有するポリメラーゼ用のプライマーから下流にある標的ポリヌクレオチドにハイブリダイズする。ポリメラーゼがPCR反応の一部としてプライマーを伸長すると、オリゴヌクレオチドが消化され、「クエンチャー」分子および「レポーター」分子の一方が放出され、これらの分子間の距離は、蛍光の放出がもはやエネルギー移動によって消失されないようになる。したがって、蛍光シグナルが発生し、増幅のリアルタイムモニタリングが提供される。
【0050】
標的ポリヌクレオチドに対するハイブリダイゼーションが損なわれず、および/またはエキソヌクレアーゼの切断効率が悪影響を受けない場合には、オリゴヌクレオチドプローブを、上記のオリゴヌクレオチドプライマーと同じ方法で作製してもよく、および骨格などに同じ変化を有してもよい。好ましくは、オリゴヌクレオチドプローブの長さは、10〜60ヌクレオチドの範囲内であり、およびより好ましくは、18〜30ヌクレオチドである。オリゴヌクレオチドプローブの正確な長さおよび配列は、少なくとも一つにはそれが結合する標的ポリヌクレオチドの性質に依存し、およびある特定の標的ポリヌクレオチドにとっての適切なアニーリング特性および融解特性を獲得するように変更されると考えられる。さらに、標的ポリヌクレオチドの性質に応じて、プローブの結合部位を変更してもよい。
【0051】
この反応に好ましいプライマーは、上記のUTR-R2、およびSpec-1、Spec-2、Spec-3、Spec-4-Thy、またはSpec-4-Adである。好ましいプローブは、全てのHCV遺伝子型の間で保存されている5'NCRの領域にアニーリングする。1つのそのようなプローブは、以下の配列を有する。

配列中、F=6-FAM,3'-T+TAMRAである。
【0052】
HCV RNAのcDNAへの逆転写およびその後のPCR増幅反応が1ステップで行なわれる場合、TaqManプローブが反応混合物の中に含まれてもよい。したがって、温度を上げて、逆転写酵素を不活性化し、かつTaq DNAポリメラーゼを活性化する際に、TaqMan PCRが行われる。
【0053】
蛍光分析による検出は、試料中のHCV RNA濃度(ウイルス量)を決定する工程をさらに含んでもよい。蛍光分析による検出は、(i)蛍光の変化が検出閾値を越える増幅反応サイクルを検出する工程;および(ii)増幅反応サイクルの閾値を既知の値と比較することによってRNA濃度を決定する工程をさらに含んでもよい。
【0054】
最初の鋳型RNAの量は、逆転写酵素反応で生成されるcDNAの量を決定する。次に、試料中のcDNAの量は、TaqMan反応におけるPCR産物が検出閾値を越える時点を決定する。これが起こるPCRサイクルがサイクル閾値(CT)である。一連の既知の濃度の標準RNA試料でTaqMan PCRを行なうことによって、CTに対する試料中のml当たりのRNA鋳型の量をプロットすることにより、「標準曲線」を作成することが可能である。この曲線から、CTとの関係を決定することにより、試料中のRNAの濃度を概算することが可能である。
【0055】
増幅産物を検出するさらに別の方法は、1つまたは複数の分子ビーコンプローブを使用することである。これらは、蛍光標識およびクエンチャー分子の両方を含むヘアピンループ配列に接続した配列を含むPCRプライマーである。通常の状態ではプライマーが蛍光を発しないように、ヘアピンによって蛍光分子がクエンチャーの反対側に置かれる。PCRによってプローブ配列の複製が起こると、ヘアピンが開き、かつ蛍光ビーコンおよびクエンチャーが離れるようになる。結果として生じるPCR産物は蛍光を発する。
【0056】
好ましい態様において、以下のPCRプライマーを使用する。
フォワード:MBP-LR-1

(F=FAM; M=MeREDdUおよびU=ウラシル)
リバース:UTR-R2
【0057】
MBP-LR-1はHCV遺伝子型1、5、または6特異的なフォワードプライマーであり、および上記の通り、UTR-R2は共通なリバースプライマーである。任意の共通なHCVプライマーを、MBP-LR-1と一緒に使用することができる。
【0058】
試料中のその他のHCV遺伝子型の存在を検出することが望ましい場合には、全てのHCV遺伝子型に共通な少なくとも1つの分子ビーコンプローブを用いて、さらなる増幅を行なうことができる。この点で好適なプローブは、フォワードプライマーであり、かつ以下の配列を有するMBP-LR-ALLである。

(F=FAM; M=MeREDdUおよびU=ウラシル)
【0059】
MBP-LR-ALLを、任意の共通なリバースプライマーと一緒に使用することができ;1つの好適な例はUTR-R2である。
【0060】
さらに、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、またはHCV遺伝子型4に特異的なフォワードプライマーである分子ビーコンプローブを設計することができる。そのような分子ビーコンプローブを、UTR-R2などの、任意の共通なリバースプライマーと共に使用することができる。
【0061】
異なるプライマーで増幅された産物を同じ反応容器中で区別することができるように、違う波長で光を発する蛍光色素を異なるプライマーに取り込むことができる。ビーコンプローブ上の代わりのヘアピン配列が、当業者によって容易に設計され得る。
【0062】
または、配列特異的プローブ上のセイヨウワサビペルオキシダーゼおよび適切な基質を用いるような、DNAハイブリダイゼーションを用いる酵素結合法を用いて、増幅産物を検出することができる。
【0063】
本発明のさらなる局面によれば、試料中に存在するHCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定するためのキットであって、以下を含むキットが提供される:
(a)HCV遺伝子型2(HCV-2)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;および
(b)HCV遺伝子型3(HCV-3)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【0064】
本キットは以下をさらに含んでもよい:
(c)HCV遺伝子型4(HCV-4)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;ならびに
(d)HCV遺伝子型1、5、および6(HCV-1、HCV-5、およびHCV-6)のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【0065】
本発明のさらなる局面は、試料中に存在するHCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定するためのキットであって、以下を含むキットを提供する:
(a)HCV遺伝子型1、5、および6(HCV-1、HCV-5、およびHCV-6)のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;ならびに
(b)HCV遺伝子型4(HCV-4)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【0066】
本発明のさらなる局面は、試料中のHCV遺伝子型2(HCV-2)を検出するためのキットであって、以下を含むキットを提供する:
(a)HCV遺伝子型2(HCV-2)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【0067】
本発明のさらなる局面は、試料中のHCV遺伝子型3(HCV-3)を検出するためのキットであって、以下を含むキットを提供する:
(a)HCV遺伝子型3(HCV-3)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【0068】
本発明のさらなる局面は、試料中のHCV遺伝子型4(HCV-4)を検出するためのキットであって、以下を含むキットを提供する:
(a)HCV遺伝子型4(HCV-4)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【0069】
本発明のキットは、ポリメラーゼおよび適切なプライマーまたはプライマーセットをさらに含んでもよい。さらに、それは、逆転写酵素、dNTP混合物、緩衝液、分子量スタンダード、ワックスビーズ、およびそれらと同様のものなどの、本発明を実行するために必要であるさらなる試薬を含んでもよい。本方法の実行を簡単にするために、試薬を予め測定した量で提供してもよい。典型的には、本キットはまた、方法を実行するための詳細な取扱説明書を含んでもよい。
【0070】
それらの活性、すなわち、本発明の方法においてプライマーおよびプローブとして働くそれらの能力に影響を及ぼすことなく、上記のプライマーおよびプローブの配列を改変することができるということが、当業者によって正しく理解されると思われる。上記のプローブとの実質的同一性を有する場合には、そのような改変されたプローブおよびプライマーは本発明に含まれる。
【0071】
相同性または同一性の程度を決定するという目的で核酸配列を比較する場合、(両方ともWisconsin Genetics Computer Group (GCG) ソフトウェアパッケージ由来の)BESTFITおよびGAPなどのプログラムを使用することができる。例えば、BESTFITは、2つの配列を比較し、および最も相似な部分の最適なアラインメントを作製する。GAPは、配列をそれらの全長に沿って整列化することを可能にし、および必要に応じてどちらかの配列にスペースを挿入することによって、最適なアラインメントを見つける。好適には、本発明の文脈において、核酸配列の同一性を議論する場合、それらの全長に沿った配列のアラインメントによって、比較を行なう。
【0072】
好ましくは、実質的同一性を有する配列は、該配列との少なくとも75%の配列同一性を有し、およびより好ましくは、少なくとも90%のまたは少なくとも95%の配列同一性を有する。ある場合には、配列同一性は99%またはそれを越えてもよい。
【0073】
望ましくは、「実質的同一性」という用語は、該配列が先行技術の核酸配列とよりも、本明細書において記載される任意の配列とより大きい程度の同一性を有することを表す。
【0074】
本発明の各々の局面の好ましい特徴は、必要に応じて変更を加えた、その他の局面の各々に関するものである。本明細書において記載される先行技術の文献は、法律で認められる最大限まで組み入れられる。本明細書において使用されるヌクレオチドの略語は、特に指示がない限り、標準的なものである。
【0075】
本発明者らは、HCV遺伝子型A群およびHCV遺伝子型B群を区別することを可能にするポリメラーゼ連鎖反応増幅(PCR)を基にした検査を発明した。本検査はまた、HCV遺伝子型1、5、6、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、およびHCV遺伝子型4の検出を可能にする。
【0076】
これから本発明を以下の実施例でさらに記載する。添付の図面について言及する。
【0077】
実施例
実施例1
以下の配列のプライマー(位置は図1に記載)を用いて既知のHCV遺伝子型の試料に対する遺伝子型同定アッセイ法を行なった。

(配列中、I=デオキシイノシン、F=6-FAMおよび3'T=TAMRA-3'-リン酸である。)
【0078】
以下では、http://www.genosys.co.uk/technical/frameset.htmlを用いてTmを算出した。
【0079】
プライマー Spec-2およびSpec-3は以下の特徴を有している。

【0080】
Spec-4-Thyに関しては、HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングするプライマーを選び、および以下の通り、様々な長さで作製した。

【0081】
上記のプライマーの各々におけるTは、HCV遺伝子型4に特有であるということに留意すべきである。
【0082】
4型のプライマー 4a、4b、および4cを用いた初期の仕事により、その他のHCV遺伝子型(1、3)に対する非特異的な結合が示された。特異性を高めるために、プライマーに3'末端から3塩基までのミスマッチを導入した。これにより、プライマーの結合の親和性は低下するが、遺伝子型4は特異的な(かつ特有の)末端Tを有するので、プライマーがこの配列に結合する能力を維持すると期待された。
【0083】
これが以下のリバースプライマーに最も近似するTmを有するので、全てのプライマーは22mer(4c)前後の塩基である。

イノシン(I)で置換した。この塩基は、任意の4つの一般的な塩基に結合することができるが、親和性の低下を伴う。これでもまだ、非特異的結合を与える可能性がある。
【0084】

チミン(T)で置換した。チミンは、相補鎖上のシトシン残基とはいかなる親和性でも結合しないと考えられる。このミスマッチは非特異的結合を強く妨げると考えられるが、4型の配列への結合にも影響を与える可能性がある。
【0085】

チミンの代わりにアデニン(A)で置換した。アデニンは、シトシン残基と小さい親和性で結合すると考えられる。これにより、HCV-4に対する特異性が保持されると同時に、より良いプライマー結合特性がもたらされる。
【0086】
これらのプライマーの結合の特異性を検討し、最初はSpec-4-Thyの性能がSpec-4-Adの性能よりも高いと考えた。4 Inoは、その他のHCV遺伝子型に非特異的に結合し、およびTaqManシグナルを与えることが観察された。さらなる検討によって、より低いウイルス量(約103 IU/ml血清)では、4-Ad(Spec-4-Ad)プライマーが、4-Thy(Spec-4-Thy)プライマーよりもうまく機能することが示された。
【0087】
既知のHCV遺伝子型を有するメンバーからなる3つのパネルを上記のアッセイ法で検査した。
【0088】
以下の通り、試料からRNAを単離し、cDNAを生成した。製造元の取扱説明書通り、(QIAgen社, Crawley, West Sussexからなどの)mRNA抽出キットを用いて、200μl(または500μl)の血清試料から、HCV RNAを抽出した。上で抽出したような11.5μlのRNA溶液を、1.5μlのエッピンドルフテストチューブ中の0.5μlのランダムプライマー(Promega UK社、Southampton)に加え、加熱ブロックにて、5分間、90℃でインキュベートし、その後、氷上で急冷した。
【0089】
その後、以下の反応混合物を用いる逆転写により、cDNAを調製した。5μlの5×SuperScript緩衝液(Life Technologies (GIBCO BRL) Paisley, Scotland);2.5μlの100mM DTT;2.5μgの1mg/ml アセチル化ウシ血清アルブミン(10mg/ml)(Promega UK社、Southampton);1.25μlの10mM dNTP溶液(Amersham Pharmacia, Buckinghamshire);1.25μl Superscriptモロニーマウス白血病ウイルス逆転写酵素(Life Technologies (GIBCO BRL) Paisley, Scotland);0.5μlのRNAsinリボヌクレアーゼ阻害剤(Promega UK社、Southampton)。
【0090】
13μlのこの溶液をRNA/ランダムプライマーを含む各チューブに加えた。混合物を42℃で60分間インキュベートした。5分間、95℃まで加熱することにより、反応を停止させた。その後、cDNAを−20℃で保存した。
【0091】
その後、アッセイ法を以下の通り行なった。1μlのcDNAを20μlの第1ラウンドの反応混合物に懸濁した。この混合物は、1.5mM MgCl2、0.2mMデオキシヌクレオチド3リン酸(グアニン、アデノシン、スレオニン、およびシトシン)(Amersham Pharmacia, Amersham, UK)、0.1μlのTaqポリメラーゼ(Promega UK社、Southampton)、各3μMのプライマー UTR-L2およびUTR-R2、ならびに1つまたは複数のプライマー Spec-1、Spec-2、Spec-3、Spec-4-Thy、ならびにプローブ L1を含む。PCR反応条件は以下の通りであった:94℃、1分を1サイクル;94℃、30秒;60℃、20秒;72℃、20秒を50サイクル。または、50℃、2分;95℃、10分;95℃、15秒および62℃、1分を40〜50サイクルという、PCR反応条件が可能である。
【0092】
i. 分子診断用品質管理(QCMD)のパネル
以下からなる8人のパネル:
・HCV-1a
・HCV-1b
・2×HCV-2b
・HCV-3a
・2×HCV-4
・HCV陰性
【0093】
プライマー Spec-1、Spec-2、Spec-3、Spec-4-Thy、およびさらにSpec-4-Adを用いて、アッセイ法を行なった。本アッセイ法により、8人のうちの8人が正確に同定された。
【0094】
ii. Boston Biomedia社のパネル
以下からなる10人のパネル:
・HCV-1a
・HCV-1b
・HCV-2b
・HCV-3a
・HCV-4h
・HCV-4
・HCV-5a
・HCV-6a
・HCV検出されず
【0095】
上記と同じプライマー。本アッセイ法により、このパネルの全員が正確に同定された。
【0096】
iii. Teragenixのパネル
25人のパネル。以下からなる14人の「非HCV-1」のパネル:
・5×HCV-2b
・4×HCV-3a
・3×HCV-4a
・HCV-5a
・HCV-6a
【0097】
上記と同じプライマーだが、Spec-4-Adは含まない。本アッセイ法により、このパネル内の全員が正確に特定された。
【0098】
要約すると、検査した総数の試料(32(検出されず/陰性という2つのHCVを含む))の中で、30のHCV陽性遺伝子型のうちの30が特定された。これは100%の成功率に等しい。
【0099】
本アッセイ法の正確さを以下の表に示す。

*プライマー Spec-1を用いて、HCV-1、5、および6を同定した。このプライマーは、HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムにアニーリングする]
【0100】
偽陽性の結果は生じなかった。全般に、本アッセイ法によって、32の試料のうちの32が正確に同定できた。したがって、正確さは100%であった。
【0101】
実施例2
臨床試料を用いて、上記のアッセイ法を既存のアッセイ法(Versant LiPA HCV遺伝子型同定アッセイ法)と比較した。LiPA技術はより多くの量の操作者の実務時間および全般により長い手続きがかかるものの、LiPAアッセイ法は、治療目的またはハイスループット用の単なる読み出しではなく、特定の遺伝子型および亜型を与える。
【0102】
合計43の試料を、上で示したSpec-1、Spec-2、Spec-3、およびSpec-4-Thyプライマーで検査した。これらの試料のうち、40を両アッセイ法で検出し、および40の試料全ての遺伝子型を両アッセイ法で特定した。
【0103】
本アッセイ法の正確さを以下の表で示す。

*プライマー Spec-1を用いて、HCV-1を同定した。このプライマーは、HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムにアニーリングする]
【0104】
さらに、両アッセイ法によりHCV-2およびHCV-4の共感染を同定し、ならびに両アッセイ法によりHCV-1およびHCV-2の共感染を同定した。PCRで正しいアンプリコンが生成されているかどうかを検査した。アッセイ反応後、12μlの混合物を2.5%アガロースゲル上で走らせ、以下に示すような、期待されるサイズのアンプリコンの生成を確認した。
Catch-All (UTR-L2): 219bp
Spec-4-Thy: 213bp
Spec-1: 91bp
Spec-2: 103bp
Spec-3: 63bp
【0105】
全てのアンプリコンは正しいサイズであることが示された。
【0106】
実施例3
HCV遺伝子型2/3の組み合わせアッセイ法を評価するために、特異的フォワードプライマーと同じ濃度(3μM)のSpec-2およびSpec-3で、TaqMan反応を組み立てた。実施例1と同様に、全8人のQCMDパネルを使用した。TaqManの結果はプライマーの組み合わせに対する特異性を示し、HCV遺伝子型2/3由来の試料を正確に同定している。
【0107】
相応する遺伝子型が検出されたことを確認するために、これらの反応で生成されるアンプリコンの断片サイズをアガロースゲル上で調べた。アンプリコンは正しいサイズであることが示された。
【0108】
実施例4
1反応で遺伝子型1、4、5、および6を検出するために、QCMDパネルの遺伝子型(上記の実施例1i参照)に対して、プライマー Spec-1およびSpec-4-Adを組み合わせて使用した。
【0109】
実施例5
UTR-L2に対するもう一つのCatch-Allプライマーを設計した。このCatch-AllプライマーはC-A-2と名付けられ、かつ以下の配列を含む。

【0110】
このプライマーは60℃の融解温度を有する。共通HCVプライマーと共にこのプライマーを用いるPCRによって、約172bpのアンプリコンサイズが生成されると考えられる。これは、UTR-L2(実施例2を参照−UTR-L2 アンプリコンサイズ=219bp)を用いて得られると考えられるアンプリコンサイズよりも小さいアンプリコンサイズである。したがって、C-A-2 Catch-Allプライマーを用いて、反応の効率が増すはずである。
【0111】
このプライマーの位置を図1に示す。
【0112】
本発明のアッセイ法におけるC-A-2 Catch-Allプライマーの使用を以下の通りにバリデートした。
【0113】
RNA抽出
Qiagen QIAamp(登録商標)DSPウイルスキット(IVD-D 98/79/EC承認手順)などの、市販されている一般的なキットを用いて、感染した血清からHCV RNAを抽出した。HCV遺伝子型1、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、およびHCV遺伝子型4用の臨床試料由来の500μlの血清をこの過程に使用し、および製造元のプロトコルには改変を加えなかった。RNAを20または60μl(好ましくは60μl)の緩衝液中で溶出した。その後、それを逆転写してcDNAを作製し(下を参照)、または−80℃で保存した。
【0114】
逆転写
上記の実施例1のこれまでの方法で記載されたように、9〜11.5μlのRNA(好ましくは11.5μl)を用いて、標準的な逆転写酵素の手順を進めた。しかしながら、SuperScriptおよび緩衝液はInvitrogenからのものであり、およびdNTPはSigma-Aldrichからのものであった。
【0115】
TaqMan混合物の構成要素
TaqMan反応混合物を、2.5μlの上で作製したcDNA、300nMプライマー(UTR-R2、ならびに1つまたは2つのフォワードプライマー C-A-2、Spec-1、Spec-2、Spec-3、およびSpec-4-Ad)、600nM L1プローブ、ならびに4mM MgCl2、0.2mM dUTP、0.1mM dATP、dCTP、およびdTTP(全て最終濃度)、0.25μl UNGならびに0.125μl AmpliTaq Goldを用いて、総量25μlで調製した。全ての反応混合物の構成要素をApplied Biosystemsから入手した。
【0116】
Applied Biosystems 7700および7500のプログラムを用いたPCRの反応条件は以下の通りであった。
50℃−2分;
95℃−10分;
以下を40〜50サイクル:
95℃−15秒
62℃−1分
【0117】
結果
HCV遺伝子型1、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、およびHCV遺伝子型4用の臨床試料から生成した対照RNAを用いた(ΔRn 対 サイクルの)リアルタイム増幅プロットを、それぞれ図2、3、4、および5に示す。
【0118】
リアルタイム増幅プロットの解析により、対応するHCV遺伝子型に対する各々の特異的プライマー型が生み出したシグナルが示された。
【0119】
HCV-1試料についての図2では、C-A-2による2曲線およびSpec-1による2曲線がされた。本アッセイ法は、Spec-2、Spec-3、およびSpec−4−Adについては陰性であった。HCV-2試料についての図3では、C-A-2による2曲線およびSpec-2による2曲線が作成された。本アッセイ法は、Spec-1、Spec-3、およびSpec−4−Adについては陰性であった。HCV-3試料についての図4では、C-A-2による2曲線およびSpec-3による2曲線が作成された。本アッセイ法は、Spec-1、Spec-2、およびSpec−4−Adについては陰性であった。HCV-4試料についての図5では、C-A-2による2曲線およびSpec-4による2曲線が作成された。本アッセイ法は、Spec-1、Spec-2、およびSpec−3については陰性であった。
【0120】
これらのプロットは、C-A-2 Catch-Allプライマーを用いるアッセイ法が、HCV遺伝子型1、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、およびHCV遺伝子型4の検出に成功していることをはっきりと示している。
【0121】
実施例6
両反応を1台のPCR機器で行なうように逆転写およびPCR用の試薬を1本のチューブの中に提供する1ステップ増幅反応を設計した。
【0122】
最初のバリデーションのために、市販されている1ステップRT-PCRキットをQiagenから入手した(QuantiTectプローブRT-PCRキット)。任意の好適な逆転写酵素およびTaq DNAポリメラーゼの組み合わせもまた、増幅反応での使用のために適切であると考えられ、ならびにその他の供給元から入手可能である。
【0123】
QuantiTectプローブRT-PCRキットには2つの逆転写酵素の混合物が含まれる;Omniscript(>50ngの、大量のRNAの逆転写用に設計されている)およびSensiscript(<50ngの、少量のRNAの転写用に最適化されている)。
【0124】
本キットに存在するTaq DNAポリメラーゼは、大腸菌(E. coli)内にクローンニングされたHotStartTaq DNA ポリメラーゼと呼ばれる、リコンビナント型で、改変型のTaqである。
【0125】
手順の最初に、上記の酵素全てを、最適化された緩衝液中の精製ウイルスHCV RNAに加えた。
【0126】
全ての反応には、以下のうちの1つに加えて、L1プローブおよびUTR-R2リバースプライマーが含まれる。
・Catch-All UTR-L2
・再設計したCatch-All:C-A-2(実施例5参照)
・Spec-1(HCV遺伝子型1)
・Spec-2(HCV遺伝子型2)
・Spec-3(HCV遺伝子型3)
・Spec-4-Ad(HCV遺伝子型4)
【0127】
反応混合物は以下の通りであった。

【0128】
全ての構成要素を加えた後、反応混合物を、以下の熱サイクルプログラムを有するPCR機器(Applied Biosystems 7500および7700 両方の配列検出システムを使用した)に設置した。

【0129】
結果
HCV遺伝子型1、HCV遺伝子型2、HCV遺伝子型3、およびHCV遺伝子型4用に臨床試料から生成した対照RNAを用いた(ΔRn 対 サイクルの)リアルタイム増幅プロットを、それぞれ図6、7、8、および9に示した。
【0130】
リアルタイム増幅プロットの解析により、対応するHCV遺伝子型に対する各々の特異的プライマー型が生み出したシグナルが示された。
【0131】
反応混合物中のRNAの量を増やすことにより、または生成されるcDNAの量を増やすことにより、シグナル強度に対する非特異的結合の影響を減らすことができる可能性がある。
【0132】
1ステップ法はHCV遺伝子型同定アッセイ法の変法として機能し、ならびに操作者の実務時間および結果までの全体的な時間の両方を減らす。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【図1】本発明のある態様において使用する様々なプライマーおよびプローブのHCVゲノムの5'NCR内での位置を表す。
【図2】HCV遺伝子型1用に臨床試料から生成した対照RNAを用いたC-A-2 Catch-Allプライマーによる実施例5のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図3】HCV遺伝子型2用に臨床試料から生成した対照RNAを用いたC-A-2 Catch-Allプライマーによる実施例5のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図4】HCV遺伝子型3用に臨床試料から生成した対照RNAを用いたC-A-2 Catch-Allプライマーによる実施例5のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図5】HCV遺伝子型4用に臨床試料から生成した対照RNAを用いたC-A-2 Catch-Allプライマーによる実施例5のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図6】HCV遺伝子型1用に臨床試料から生成した対照RNAを用いた実施例6のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図7】HCV遺伝子型2用に臨床試料から生成した対照RNAを用いた実施例6のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図8】HCV遺伝子型3用に臨床試料から生成した対照RNAを用いた実施例6のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。
【図9】HCV遺伝子型4用に臨床試料から生成した対照RNAを用いた実施例6のリアルタイム増幅プロット(ΔRn 対 サイクル)を表す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料中に存在するHCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定する方法であって、以下の工程を含み、
産物が工程(a1)または(a2)で検出される場合には、HCVがB群にあり、および産物が工程(a1)または(a2)で検出されない場合には、HCVがA群にある方法:
(a1)(i)HCV-2ゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第1の増幅反応に試料を供する工程;および
(ii)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第2の増幅反応に試料を供する工程;または
(a2)HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー、およびHCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(b)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項2】
以下の工程をさらに含み、
産物が工程(c)および/または(d)で検出される場合には、HCVがHCV A群にあり、ならびに産物が工程(c)および/または(d)で検出されない場合には、HCVがHCV B群にある、請求項1記載の方法:
(c)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに/または
(d)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(e)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項3】
試料中に存在するHCVがHCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定するための方法であって、以下の工程を含み、
産物が工程(a1)または工程(a2)で検出される場合には、HCVがA群にあり、および産物が工程(a1)または工程(a2)で検出されない場合には、HCVがB群にある方法:
(a1)(i)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第1の増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(ii)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる第2の増幅反応に試料を供する工程;または
(a2)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー、ならびにHCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(b)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項4】
以下の工程をさらに含み、
産物が工程(c)および/または(d)で検出される場合には、HCVがHCV B群にあり、ならびに産物が工程(c)および/または(d)で検出されない場合には、HCVがHCV A群にある、請求項3記載の方法:
(c)HCV-2ゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および/または
(d)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(e)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項5】
試料中のHCV遺伝子型1、5、もしくは6(HCV-1、HCV-5、もしくはHCV-6)、HCV遺伝子型2(HCV-2)、HCV遺伝子型3(HCV-3)、またはHCV遺伝子型4(HCV-4)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
(a1)(i)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'非コード領域(5'NCR)に特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(ii)HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(iii)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(iv)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;または
(a2)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー、HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;ならびにHCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;ならびに
(c)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項6】
全てのHCV遺伝子型の間で保存されている5'NCRの領域にアニーリングするプライマーを用いる、任意のHCV遺伝子型が試料中に存在するかどうかを検出するための予備的な増幅反応に試料を供する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項7】
全てのHCV遺伝子型の間で保存されている5'NCRの領域にアニーリングするプライマーが以下の配列を有する、請求項6記載の方法:


【請求項8】
全てのHCV遺伝子型に共通なプライマーを用いる、HCV物質を単離するためのさらに予備的な増幅反応に試料を供する工程をさらに含む、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項9】
全てのHCV遺伝子型に共通なプライマーが以下の配列を含む、請求項8記載の方法:


【請求項10】
HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーが以下の配列を含む、請求項2、3、もしくは5のいずれか一項記載の方法、または請求項2、3、もしくは5に依存する場合、請求項4、6〜9のいずれか一項記載の方法:


【請求項11】
HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーが以下の配列を含む、請求項1、2、4、もしくは5のいずれか一項記載の方法、または請求項1、2、4、もしくは5に依存する場合、請求項6〜10のいずれか一項記載の方法:


【請求項12】
HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーが以下の配列を含む、請求項1、2、4、もしくは5のいずれか一項記載の方法、または請求項1、2、4、もしくは5に依存する場合の請求項6〜11のいずれか一項記載の方法:


【請求項13】
HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーが以下から選択される配列を含む、請求項2、3、もしくは5のいずれか一項記載の方法、または請求項2、3、もしくは5に依存する場合、請求項4、6〜12のいずれか一項記載の方法:


【請求項14】
HCV-1、HCV-5、もしくはHCV-6、HCV-2、HCV-3、またはHCV-4それぞれのゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーがフォワードプライマーであり、かつリバースプライマーが以下の配列を含む、請求項10〜13のいずれか一項記載の方法:


【請求項15】
試料中のHCV遺伝子型2(HCV-2)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)HCV-2ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および
b)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項16】
試料中のHCV遺伝子型3(HCV-3)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)HCV-3ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および
b)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項17】
試料中のHCV遺伝子型4(HCV-4)を検出する方法であって、以下の工程を含む方法:
a)HCV-4ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマーを用いる増幅反応に試料を供する工程;および
b)増幅反応の産物を検出する工程。
【請求項18】
増幅反応がポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)である、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項19】
増幅反応が以下の工程を含む、請求項18記載の方法:
a)HCV RNA、逆転写酵素、DNAポリメラーゼおよびプライマーを含む反応混合物の温度を上げて、逆転写酵素を活性化する工程;ならびに
b)さらに温度を上げて、逆転写酵素を不活性化し、かつDNAポリメラーゼを活性化する工程。
【請求項20】
その、または各々の、増幅反応の産物の検出がアガロースゲル電気泳動法によるものである、前記請求項のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
その、または各々の、増幅反応の産物の検出が、HCV特異的核酸の増幅によってプローブの蛍光が生じる蛍光分析によるものである、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項22】
プローブが以下の配列を含む、請求項21記載の方法:

配列中、F=6-FAM,3'-T+TAMRAである。
【請求項23】
その、または各々の、増幅反応の産物の検出が、1つまたは複数の分子ビーコンプライマーによる、請求項1〜19のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
分子ビーコンプライマーが以下の配列を含む、請求項23記載の方法:

(F=FAM;M=MeREDdUおよびU=ウラシル)(MBP-LR-1)。
【請求項25】
分子ビーコンプライマーがフォワードプライマーであり、かつリバースプライマーが以下の配列を含む、請求項24記載の方法:


【請求項26】
全てのHCV遺伝子型に共通である少なくとも1つの分子ビーコンプライマーを用いてさらなる増幅を行なう、請求項23、24、または25のいずれか一項記載の方法。
【請求項27】
分子ビーコンプライマーが以下の配列を含む、請求項26記載の方法:

(F=FAM;M=MeREDdUおよびU=ウラシル)MBP-LR-ALL。
【請求項28】
分子ビーコンプライマーがフォワードプライマーであり、かつリバースプライマーが以下の配列を含む、請求項27記載の方法:


【請求項29】
試料中に存在するHCVが、HCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定するためのキットであって、以下を含むキット:
(a)HCV遺伝子型2(HCV-2)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;および
(b)HCV遺伝子型3(HCV-3)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【請求項30】
以下をさらに含む、請求項29記載のキット:
(c)HCV遺伝子型4(HCV-4)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;ならびに
(d)HCV-1、HCV-5、およびHCV-6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【請求項31】
試料中に存在するHCVが、HCV遺伝子型A群に属するか、またはHCV遺伝子型B群に属するかを決定するためのキットであって、以下を含むキット:
(a)HCV遺伝子型1、5、および6のゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー;ならびに
(b)HCV遺伝子型4(HCV-4)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【請求項32】
試料中のHCV遺伝子型2(HCV-2)を検出するためのキットであって、以下を含むキット:
(a)HCV遺伝子型2(HCV-2)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【請求項33】
試料中のHCV遺伝子型3(HCV-3)を検出するためのキットであって、以下を含むキット:
(a)HCV遺伝子型3(HCV-3)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【請求項34】
試料中のHCV遺伝子型4(HCV-4)を検出するためのキットであって、以下を含むキット:
(a)HCV遺伝子型4(HCV-4)ゲノムの5'NCRに特異的にアニーリングする少なくとも1つのプライマー。
【請求項35】
請求項6〜28のいずれか一項記載の特徴によって改変された、請求項29〜34のいずれか一項記載のキット。
【請求項36】
以下の配列のうちの1つを含む増幅反応での使用に好適なヌクレオチド分子:


【請求項37】
以下の配列を有するヌクレオチド分子を含む1対のプライマー:



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2008−517594(P2008−517594A)
【公表日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−537393(P2007−537393)
【出願日】平成17年10月21日(2005.10.21)
【国際出願番号】PCT/GB2005/004097
【国際公開番号】WO2006/043100
【国際公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【出願人】(507134389)アイキューユーアール リミテッド (1)
【Fターム(参考)】