説明

遺伝子改変生物における導入遺伝子の切除

植物中のDNAの領域を欠失させるための方法。いくつかの実施形態において、この方法は核酸分子で植物を形質転換することを含み、この核酸分子は、1つまたは複数の組織特異的プロモーター、例えば花粉特異的プロモーターと作動可能に連結した1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)をコードする。いくつかの方法は、植物中の天然遺伝子を切除することを含む。したがって、いくつかの実施形態において、固有植物遺伝子に隣接する配列を認識するZFNを操作する。さらなる実施形態において、例えば発生の比較的後期段階中に植物内で核酸配列が特異的に切除されるように、発生段階特異的プロモーターの制御下においてZFNを発現させる。開示する方法を実施するのに有用な核酸分子、およびこれらの方法によって作出される植物が含まれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
優先権の主張
本出願は、「Excision of Transgenes in Genetically Modified Organisms.」という表題の2010年1月22日に出願された米国仮特許出願第61/297,628号の利益を主張するものである。
【0002】
本発明は概して、トランスジェニック植物を作出するための組成物および方法に関する。特定の実施形態では、トランスジェニック植物は、1つまたは複数の対象の導入遺伝子(transgene of interest)を含む。特定の実施形態では、(1つまたは複数の)導入遺伝子の切除は、花粉および/または種子を対象とし、本発明のトランスジェニック植物によって作出される花粉および/または種子は(1つまたは複数の)導入遺伝子を実質的に含まない。いくつかの実施形態では、本発明のトランスジェニック植物は、例えばトランスジェニック植物における対象の(1つまたは複数の)導入遺伝子のバイオコンファインメントを得る際に有用である。他の実施形態では、導入遺伝子の切除は、選択マーカーなどの特定発現カセットを対象とし、その発現カセットのみがトランスジェニック植物および/またはトランスジェニック植物の子孫から除去される。
【背景技術】
【0003】
多くの植物は、望ましい形質を導入するため、例えば、栄養価の質の改善、収量の増大、病虫害抵抗性または疾患抵抗性の伝達、干ばつ耐性およびストレス耐性の増大、色素沈着および成長などの園芸的質の改善、および/または除草剤抵抗性の伝達によって農業的価値を改善するため他種由来の遺伝子で遺伝的に形質転換して、植物からの産業上有用な化合物および/または物質の生産を可能にし、および/または医薬品の生産を可能にする。植物細胞へのクローニング遺伝子の導入および安定した多産のトランスジェニック植物の回収を使用して、このような植物の変形を作製することができ、(例えば、作物改良のために)遺伝子操作によって植物に取り込まれる対象の望ましい形質または性質を可能にしている。これらの方法では、外来DNAは典型的には真核植物細胞の核またはプラスチドDNA中に導入され、次に細胞のDNA中に組み込まれた外来DNAを含有する細胞を単離して、安定的に形質転換された植物細胞を作出する。
【0004】
トランスジェニック植物の使用に関して生じる1つの欠点は、野生種および非形質転換種に導入遺伝子が漏出する(escape)可能性である。これらの形質は、隣接集団への導入遺伝子の異系交配、持続、および移入のリスクを高める可能性がある。遺伝子改変(GM)作物からの導入遺伝子の漏出は、通常は遺伝子流動(gene flow)を介して、主に異花受粉によって起こるが(Lu (2003) Eviron. Biosafety Res. 2:3-8)、遺伝子移入(introgression)を介して起こる可能性もある。Stewart Jr.et al.(2003) Nat. Reviews Gen. 4:806-17。作物から作物への遺伝子流動は非GM品種の汚染をもたらし、所与の農業システムにおけるトランスジェニックおよび非トランスジェニック作物品種の戦略展開に影響を与える。トランスジェニック物質による非GM作物の相当な汚染は、多くの国によるトランスジェニック産物の輸入に関する法的規制のため、国際貿易において難点を示す。作物から作物への遺伝子流動は、導入遺伝子が(例えば、除草剤、病虫害、および/または疾患に対する)多剤耐性を与える場合、おそらく雑集団になり得るハイブリッドで導入遺伝子のスタッキングを引き起こす可能性がある。さらに、作物から作物への遺伝子流動は、雑集団または関連野生種への導入遺伝子の漏出をもたらし、導入遺伝子が有性生殖および/または栄養繁殖によって雑/野生集団中で持続および確立する場合、重大な雑問題および他の生態学的リスクを提起し得る。漏出した遺伝子が雑/野生種の生態学的適合性を高めるときに、これは特に懸念される。作物導入遺伝子の遺伝子移入は、数回の連続したハイブリッド生成を含むステップで行う。遺伝子移入は、導入遺伝子がレシピエント種の遺伝的背景で固定されるまでに多くの年数および世代を要し得る動的プロセスであり、したがって検出およびモニタリングの難点を示す。しかしながら、淘汰が強いおよび/または集団の大きさが小さい場合、移入遺伝子の固定は急速に起こり得る。
【0005】
遺伝子改変植物内の特異的発現カセット、特に選択マーカー発現カセットの封じ込めは、とらえ所のない目標である。選択マーカー遺伝子は通常抗生物質抵抗性または除草剤耐性遺伝子であるが、レポーター遺伝子を含み得る(すなわち、β−グルクロニダーゼ(Graham et al. (1989) Plant Cell Tiss. Org. 20(1):35-39)。植物のゲノム中に同時に導入される選択マーカーは選択的利点を与え、安定的に形質転換されたトランスジェニック植物の同定を可能にする。植物の形質転換に使用することができる機能的選択マーカー遺伝子の利用能は、幾分限られている。トランスジェニック作物植物に関する公開済みの科学文献の総説は、最も広く使用されている抗生物質抵抗性の選択剤はカナマイシン(ネオマイシンホスホトランスフェラーゼII型遺伝子によってコードされる(Bevan et al. (1983) Nature 304:184-187))またはヒグロマイシン(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼ遺伝子によってコードされる(Waldron et al., Plant Mol. Biol. 5:103-108))であり、除草剤耐性はホスフィノトリシン抵抗性(pat(Wohlleben et al.(1988)Gene70:25-37)またはbar遺伝子(DeBlock et al. (1987), EMBO J. 6(9):2513-2518)によってコードされる)であることを明らかにしている。Sundar et al. (2008) J. Plant Physiol. 165:1698-1716を参照されたい。選択マーカー遺伝子の限られた数およびこれらの形質の部分集合の一般的利用を考慮すると、トランスジェニック植物内の選択マーカーの切除および再利用を可能にする解決策は、後の数ラウンドの同じ植物への遺伝子導入または遺伝子スタッキングにおける追加選択マーカーの必要性を除去し得る。さらに、選択マーカーを切除する能力は、マーカーの発現によって引き起こされる植物トランスクリプトームに対する偶然の変化を克服し得る(Abdeen et al. (2009) Plant Biotechnol. J. 7(3):211-218)。
【0006】
GM作物と他種および品種の間の遺伝子流動を予防または最小化する現在の戦略には、(1)トランスジェニック作物の物理的単離、(2)葉緑体導入遺伝子操作、(3)移動遺伝子と導入遺伝子の同時操作、(4)遺伝子利用制限技術(GURT)、(5)CRE/loxPおよびFLP/FRTリコンビナーゼ仲介遺伝子欠失、例えば、LeeおよびNatesan (2006) TRENDS Biotech. 24(3):109-14、Lu (2003)、上記、およびLuo et al. (2007), Plant Biotech. J. 5:263-74を参照、および(6)メガヌクレアーゼ仲介遺伝子欠失、例えば、米国特許出願第11/910,515号、および米国特許出願第12/600,902号を参照がある。
【0007】
CRE、FLP、およびRリコンビナーゼは、植物からの望ましくない遺伝物質の切除に利用されている。HareおよびChua (2002) Nat. Biotech. 20:575-80. Luo et al. (2007)、花粉および種子特異的「GM−遺伝子−欠失剤」系を報告し、そこでは、CREまたはFLPリコンビナーゼによる導入遺伝子の切除に関する認識部位としてのloxP-FRT融合配列の使用が、トランスジェニックタバコ植物の花粉から、または花粉と種子の両方からの導入遺伝子の欠失をもたらした。植物において機能することが示されている全てのこれらの部位特異的リコンビナーゼ系は、インテグラーゼファミリーのメンバーである。これらの系は、他のリコンビナーゼが補助タンパク質、および組換え効率に関する形態的制約を与える可能性があるより複雑な認識部位を必要とし得るという事実が少なくとも一部分が原因で、使用に選択されている。同文献。これらの系にはいくつかの重大な欠点がある。インテグラーゼ型リコンビナーゼは特異的標的配列から大きく分岐した可能性がある「偽配列」も認識し、したがって望ましくない非特異的DNA欠失をもたらす可能性があり、標的配列の切除は、リコンビナーゼへの後の曝露の際の染色体再配置、または活性遺伝子サイレンシング機構の部位であり得る残りの認識配列を残す。同文献。さらに、これらの系はさらに制約を受ける。機能的リコンビナーゼが親植物の1つに存在し発現しなければならず、その存在は花粉および/または種子内の追加的欠失戦略を必要とするからである。これらの制約にもかかわらず、CRE/loxP系は、植物における遺伝子欠失の最適化に最も適した戦略として認められている。同文献。
【0008】
注文設計のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、DNA中の標的部位特異的二本鎖破壊への送達、および切断末端の後の組換えのために設計されたタンパク質である。ZFNは、FokI制限エンドヌクレアーゼの非特異的切断ドメインと、ジンクフィンガーDNA結合タンパク質を組み合わせる。例えば、Huang et al. (1996) J. Protein Chem. 15:481-9、Kim et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:3616-20、Kim et al. (1996) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 93:1156-60、Kim et al. (1994) Proc Natl. Acad. Sci. USA 91:883-7、Kim et al. (1997b) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:12875-9、Kim et al. (1997c) Gene 203:43-9、Kim et al. (1998) Biol. Chem. 379:489-95、NahonおよびRaveh (1998) Nucleic Acids Res. 26:1233-9、Smith et al. (1999) Nucleic Acids Res. 27:674-81を参照されたい。個々のジンクフィンガーモチーフは、広範囲のDNA部位を標的としそれらと結合するように設計することができる。CysHisジンクフィンガータンパク質は、二重らせんの主溝にα−らせんを挿入することによりDNAと結合する。ジンクフィンガーによるDNAの認識はモジュラーであり、それぞれのフィンガーは標的中の主に3個の連続塩基対、およびタンパク質媒介認識中に数個の重要残基と接触する。FokI制限エンドヌクレアーゼは、DNAを切断し、二本鎖破壊を誘導するために、ヌクレアーゼドメインを介して二量体化しなければならないことが示されている。同様にZFNも、DNAを切断するためにヌクレアーゼドメインの二量体化を必要とする。Mani et al. (2005) Biochem. Biophys. Res. Commun. 334:1191-7、Smith et al. (2000) Nucleic Acids Res. 28:3361-9。ZFNの二量体化は、2つの隣接し反対を向く結合部位によって助長される。同文献。さらに、ジンクフィンガーヌクレアーゼによって引き起こされる二本鎖破壊は、非相同性末端結合(NHEJ)または相同性指向型修復(homology directed repair)(HDR)のいずれかを介した植物DNA修復機構によって解明され、これによって残りの認識配列を含まない植物をもたらす。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の一実施形態によれば、植物、DNAの領域を含むゲノムDNAを含有する生育能力のある植物中のDNAの領域を欠失させるための方法を提供し、認識配列においてゲノムDNAを切断するように操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼを、ゲノムDNAを含有する生育能力のある植物において発現させる、または導入し、それによって認識配列におけるゲノムDNAの切断をもたらし、ゲノムDNAの切除をもたらし、DNAの領域はゲノムDNAに存在しない。
【0010】
別の実施形態において、植物中のDNAの領域を欠失させるための方法は、DNAの領域と、DNAの領域の3’末端に隣接する第一の認識配列と、DNAの領域の5’末端に隣接する第二の認識配列とを含むゲノムDNAを含有する第一の生育能力のある植物を提供することを含む。認識配列においてゲノムDNAを切断するように操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするDNAを含むゲノムDNAを含有する第二の生育能力のある植物を提供する。第一の生育能力のある植物または第二の生育能力のある植物のいずれかにおいてF1種子が作出されるように、第一の生育能力のある植物と第二の生育能力のある植物を交配させる。そのDNAの領域がゲノムDNAに存在しない、ゲノムDNAを含有する生じたF1植物を成長させる。特定の実施形態において、第一の認識配列と第二の認識配列は同一であってよい。
【0011】
特定の実施形態において、単離核酸分子は、ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第一の核酸配列、対象の遺伝子、およびジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第二の核酸配列を含み、対象の遺伝子に、ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第一および第二の核酸配列が隣接する。別の実施形態において、第一の認識配列および第二の認識配列に、相同配列が隣接してもよい。さらに別の実施形態において、トランスジェニック植物を作出する方法は、単離核酸分子で植物細胞または植物組織を形質転換すること、および全植物(whole plant)を再生することを含む。
【0012】
他の実施形態において、他の植物への対象の遺伝子の伝達を減らすための方法は、全植物と、ジンクフィンガーヌクレアーゼと作動可能に連結した花粉特異的プロモーターを含む単離核酸分子で形質転換した植物細胞または組織から再生した植物とを交配させることを含み、ここで、交配から生じた子孫の花粉中で対象の遺伝子が特異的に切除される。交配から生じた子孫を培養する。このような実施形態において、単離核酸分子はプロモーターおよびジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸配列を含み、プロモーターはジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸配列と作動可能に連結し、トランスジェニック植物を作出する方法は、単離核酸分子で植物細胞または植物組織を形質転換すること、および全植物を再生することを含む。
【0013】
一実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第一の核酸配列、選択マーカー遺伝子発現カセット、およびジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第二の核酸配列を含む核酸分子を含有する植物中のDNAの領域を欠失させるための方法が提供され、ここで、選択マーカーは、ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第一および第二の核酸配列に隣接する。別の実施形態において、第一の認識配列および第二の認識配列が相同配列に隣接する。さらに、認識配列においてゲノムDNAを切断するように操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼを生育能力のある植物細胞中で発現させる、または導入し、それによって認識配列におけるゲノムDNAの切断をもたらし、ゲノムDNAの切除をもたらし、選択マーカーはゲノムDNAに存在しない。
【0014】
別の実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼモノマーのそれぞれ半分が別々に発現され、互いに協働して対をなすとき機能的複合体を形成する。例えば、1つのジンクフィンガーヌクレアーゼモノマー(FokIエンドヌクレアーゼと作動可能に連結したジンクフィンガー結合モチーフからなる)を発現する植物転写ユニットを1つの親P1に安定的に組み込み、第二のモノマーを発現する植物転写ユニットは第二の親P2に安定的に組み込む。P1とP2の性的交配は、両方のジンクフィンガーモノマーを含有する子孫植物をもたらす。生成するジンクフィンガーヌクレアーゼダイマーはジンクフィンガー結合部位と結合し、切断活性を有する複合体を形成することができる。FokIエンドヌクレアーゼがダイマーとして活性があることを考慮すると(Bitinaite et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 95:10,570-10,575)、切断活性は両方の機能的発現モノマーを含有する子孫内のみに存在し得る。
【0015】
別の実施形態において、認識配列でのジンクフィンガーヌクレアーゼによる切除は、残りの認識配列を含まない切断結合部の形成をもたらす。その切断結合部は、(1つまたは複数の)原型ジンクフィンガーヌクレアーゼによって結合および切断することはできない。さらに切断結合部は、非相同性末端結合(NHEJ)の結果、または5’認識配列上流および3’認識配列下流に位置するDNAの2箇所の相同領域の間の相同性指向型修復の結果、または別の望ましくないDNA修復機構の結果である可能性がある。切断後に相同性対象修復が起こり得るように、相同配列は結合部位の外側に位置してよい。これは、切除を得るために使用された残存部位を常にあとに残すリコンビナーゼ系に対する改善点である。
【0016】
さらに別の実施形態において、植物中の対象の天然遺伝子を切除する方法は、対象の遺伝子を含む植物細胞または組織を、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸配列またはジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする単離タンパク質配列を含む単離核酸分子で形質転換することであって、ジンクフィンガーヌクレアーゼが対象の天然遺伝子に隣接する核酸配列を認識し、対象の天然遺伝子が特異的に切除されることを含む。次いで全植物が再生される。他の実施形態において、ジンクフィンガーヌクレアーゼを発現する植物と標的植物を交配させることによって、内在性遺伝子の切除を実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】プラスミドpDAS5380に関するプラスミドマップを示す図である。
【図2】プラスミドpDAS5381に関するプラスミドマップを示す図である。
【図3a】図3aは、T-DNA挿入の概略図および制限酵素切断地図である。図3bは、本発明の一実施形態によるプラスミドpDAS5380由来の完全長の完全PTUを含有したイベントを同定するために使用した、Tサザンブロット解析を示すいくつかの図を示す。pDAS5380イベントを消化するために制限酵素MfeIおよびNsiIを使用したTサザンブロット解析の画像は、GUSとPATの同時ハイブリダイゼーションによる完全なT-DNA挿入を示した。
【図3b】図3aは、T-DNA挿入の概略図および制限酵素切断地図である。図3bは、本発明の一実施形態によるプラスミドpDAS5380由来の完全長の完全PTUを含有したイベントを同定するために使用した、Tサザンブロット解析を示すいくつかの図を示す。pDAS5380イベントを消化するために制限酵素MfeIおよびNsiIを使用したTサザンブロット解析の画像は、GUSとPATの同時ハイブリダイゼーションによる完全なT-DNA挿入を示した。
【図4a】図4aは、T-DNA挿入の概略図および制限酵素切断地図である。図4bは、本発明の一実施形態によるプラスミドpDAS5381由来の完全長の完全PTUを含有したイベントを同定するために使用した、Tサザンブロット解析を示すいくつかの図を示す。pDAS5381イベントを消化するために制限酵素MfeIおよびNsiIを使用したTサザンブロット解析の画像は、HptIIのハイブリダイゼーションによる完全なT-DNA挿入を示した。
【図4b】図4aは、T-DNA挿入の概略図および制限酵素切断地図である。図4bは、本発明の一実施形態によるプラスミドpDAS5381由来の完全長の完全PTUを含有したイベントを同定するために使用した、Tサザンブロット解析を示すいくつかの図を示す。pDAS5381イベントを消化するために制限酵素MfeIおよびNsiIを使用したTサザンブロット解析の画像は、HptIIのハイブリダイゼーションによる完全なT-DNA挿入を示した。
【図5】本発明の一実施形態による大サンプルの代表的なイベントの選択群のサザンブロット解析を示す図である。これらのサンプルは、切除断片(すなわち、低分子量断片)、非切除断片(すなわち、高分子量断片)、および切除断片と非切除断片の両方を含有したキメライベントを例示するために選択した。さらに、野生型ゲノムDNAおよび100pgのpDAS5380プラスミドの対照を含めた。このデータはGUSの発現データと関連付けた。GUSに関する組織化学的染色により陽性染色されなかったイベントは、完全長の完全GUS PTU発現カセットを含有していなかった。
【図6】本発明の一実施形態によるサザンブロット実験中で使用した、ゲノムDNAサンプルのPCR増幅断片を含有するアガロースゲルの画像を示す図である。これらのPCRアンプリコンは、切除断片(すなわち、低分子量断片)、非切除断片(すなわち、高分子量断片)、および切除断片と非切除断片の両方を含有したキメライベントを例示する。さらに、野生型T植物の対照が含まれ、大きな完全GUS PTU発現カセットをこれらの反応中で増幅させた。PCR反応に野生型ゲノムDNAおよび無DNA(HO)を使用した陰性対照も含める。このデータは、GUSの発現データおよびサザンブロットのデータと関連付けた。
【図7a】図7aおよび7bは、本発明の一実施形態によるGUS発現カセットの欠失を示す、2.4kbバンドの配列アラインメントの分析を示す図である。太字配列は、AtアクチンプロモーターおよびMAR遺伝子エレメントを示す。CCR5結合部位は下線およびイタリックで確認される。イベント当たりで多数のアンプリコンが生成しそれらを配列決定したが、1つのアンプリコンのみを図中に一直線に並べた。
【図7a−1】図7aおよび7bは、本発明の一実施形態によるGUS発現カセットの欠失を示す、2.4kbバンドの配列アラインメントの分析を示す図である。太字配列は、AtアクチンプロモーターおよびMAR遺伝子エレメントを示す。CCR5結合部位は下線およびイタリックで確認される。イベント当たりで多数のアンプリコンが生成しそれらを配列決定したが、1つのアンプリコンのみを図中に一直線に並べた。
【図7b】図7aおよび7bは、本発明の一実施形態によるGUS発現カセットの欠失を示す、2.4kbバンドの配列アラインメントの分析を示す図である。太字配列は、AtアクチンプロモーターおよびMAR遺伝子エレメントを示す。CCR5結合部位は下線およびイタリックで確認される。イベント当たりで多数のアンプリコンが生成しそれらを配列決定したが、1つのアンプリコンのみを図中に一直線に並べた。
【図8】本発明の一実施形態による「完全」FハイブリッドのF子孫のPCR解析を示す図である。
【図9】本発明の一実施形態による、「完全」FハイブリッドのF子孫のサザンブロット解析を示す図である。
【図10】本発明の一実施形態による、「切除」FハイブリッドのF子孫のPCR解析を示す図である。
【図11】本発明の一実施形態による、「切除」FハイブリッドのF子孫のサザンブロット解析を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態による、「キメラ」FハイブリッドのF子孫のPCR解析を示す図である。
【図13】本発明の一実施形態による、「キメラ」FハイブリッドのF子孫のサザンブロット解析を示す図である。
【0018】
配列表
添付の配列表中に列挙する核酸配列は、ヌクレオチド塩基に関する標準的な文字略語を使用して示す。各核酸配列の一本の鎖のみを示すが、相補鎖は示した鎖に対する任意の参照によって含まれると理解される。添付の配列表中:
配列番号1はCCR5ZFN結合部位を示す。
配列番号2はCCR5ジンクフィンガーヌクレアーゼ遺伝子配列を示す。
配列番号3はTQPATSプライマーを示す。
配列番号4はTQPATAプライマーを示す。
配列番号5はTQPATFQプライマーを示す。
配列番号6はTQPALSプライマーを示す。
配列番号7はTQPALAプライマーを示す。
配列番号8はTQPALFQプライマーを示す。
配列番号9はHPT2Sプライマーを示す。
配列番号10はHPT2Aプライマーを示す。
配列番号11はHPTFQプライマーを示す。
配列番号12はFok1_UPL_Fプライマーを示す。
配列番号13はFok1_UPL_Rプライマーを示す。
配列番号14はBY2ACT89Sプライマーを示す。
配列番号15はBY2ACT89Aプライマーを示す。
配列番号16はPTU PCR解析用のフォワードPCRプライマーを示す。
配列番号17はPTU PCR解析用のリバースPCRプライマーを示す。
配列番号18はBYACTFQプライマーを示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
遺伝子改変生物において特異的植物組織から遺伝子を切除するための方法を本明細書で開示する。いくつかの実施形態において、非GM作物への遺伝子流動を低減する手段として1つまたは複数のZFN(ジンクフィンガーヌクレアーゼ)を使用して、特異的植物組織から導入遺伝子を除去する。いくつかの実施形態において、除去される導入遺伝子は選択マーカー遺伝子カセットである。特定の実施形態において、特異的植物組織は花粉である。
【0020】
いくつかの実施形態において、1つまたは複数のZFNを異なる組織特異的プロモーターと作動可能に連結させることが可能である。これらおよびさらなる実施形態において、組織特異的プロモーターと作動可能に連結した1つまたは複数のZFNの1つは1つの親植物系に形質転換することができ、異なる組織特異的プロモーターと作動可能に連結した1つまたは複数のZFNの他方は第二の親植物系に形質転換することができる。1つまたは複数のZFNの各々を含有する親系列間の交配は、認識配列でDNAを切断する機能性ZFNを含有するF系を作出する可能性がある。認識配列は植物のDNA中の導入遺伝子に隣接してもよい。
【0021】
組織特異的遺伝子切除は、ZFNと組織特異的植物プロモーターの作動可能な連結によって実施することができる。いくつかの実施形態において、1つまたは複数のZFNと組織特異的プロモーターの作動可能な連結は1つまたは複数のZFNの組織特異的発現をもたらし、それによってZFN、選択マーカー、および/または特異的組織中の認識配列間に位置する任意の遺伝子もしくは核酸配列を切除する。
【0022】
特定の実施形態において、1つまたは複数のZFNは同じ植物内で発現される。ZFNは、植物の後期発生段階中にZFNの発現を誘導するプロモーターと作動可能に連結させることが可能である。これらおよび他の実施形態において、1つまたは複数の機能性ZFNは1つまたは複数の導入遺伝子に隣接する特異的認識配列を切断することができ、それによって植物発生の後期段階中に植物組織から1つまたは複数の導入遺伝子を除去することができる。
【0023】
略語
GM 遺伝子改変
PTU 植物転写ユニット
ZF ジンクフィンガー
ZFN ジンクフィンガーヌクレアーゼ
ZFP ジンクフィンガータンパク質
【0024】
用語
遺伝子発現:それによって核酸転写ユニット(例えばゲノムDNAまたはcDNAを含む)のコード情報が、細胞の作動的、非作動的、または構造的な部分(タンパク質の合成を含むことが多い)に変換されるプロセスである。遺伝子発現は、外部シグナル、例えば、遺伝子発現を増大または低下させる物質への細胞、組織、または生物の曝露によって影響を受ける可能性がある。遺伝子の発現は、DNAからRNAそしてタンパク質への経路中の任意の場所で制御することもできる。遺伝子発現の制御は、例えば、転写、翻訳、RNA輸送およびプロセシング、mRNAなどの中間分子の分解に作用する調節によって、またはそれらが生成した後の特定タンパク質分子の活性化、不活性化、区画化、もしくは分解によって、またはこれらの組合せによって起こる。遺伝子発現は、ノーザンブロット、RT−PCR、ウエスタンブロット、またはin vitro、in situ、またはin vivoタンパク質活性アッセイ(1つまたは複数)を非制限的に含む当技術分野で知られている任意の方法により、RNAレベルまたはタンパク質レベルで測定することができる。
【0025】
ハイブリダイゼーション:オリゴヌクレオチドとそれらのアナログは水素結合によってハイブリダイズし、その水素結合には、相補的塩基間のワトソン−クリック型、フーグスティーン型または逆フーグスティーン型水素結合が含まれる。一般に、核酸分子は、ピリミジン(シトシン(C)、ウラシル(U)、およびチミン(T))またはプリン(アデニン(A)およびグアニン(G))のいずれかである窒素含有塩基からなる。これらの窒素含有塩基はピリミジンとプリンの間で水素結合を形成し、ピリミジンとプリンの結合は「塩基対形成」と呼ばれる。より具体的には、AはTまたはUと水素結合し、GはCと結合する。「相補的な」は、2つの異なる核酸配列または同じ核酸配列の2つの異なる領域間で起こる塩基対形成を指す。
【0026】
「特異的にハイブリダイズ可能な」および「特異的に相補的な」は、安定的および特異的結合がオリゴヌクレオチドとDNAまたはRNA標的の間で起こるような十分な程度の相補性を示す用語である。オリゴヌクレオチドは、特異的にハイブリダイズ可能であるその標的配列と100%相補的である必要はない。オリゴヌクレオチドと標的DNAまたはRNA分子の結合が標的DNAまたはRNAの正常機能に干渉し、特異的結合が望ましい条件下、例えばin vivoアッセイまたは系の場合生理的条件下でのオリゴヌクレオチドと非標的配列の非特異的結合を回避するほど十分な程度の相補性が存在するとき、オリゴヌクレオチドは特異的にハイブリダイズ可能である。このような結合は特異的ハイブリダイゼーションと呼ばれる。
【0027】
特定の程度のストリンジェンシーをもたらすハイブリダイゼーション条件は、選択したハイブリダイゼーション法の性質ならびにハイブリダイズする核酸配列の組成および長さに応じて変わる。一般に、ハイブリダイゼーションの温度およびハイブリダイゼーションバッファーのイオン強度(特にNaおよび/またはMg2+濃度)はハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに貢献するが、洗浄時間もストリンジェンシーに影響を与える。特定の程度のストリンジェンシーを得るのに必要とされるハイブリダイゼーション条件に関する計算は、Sambrook et al. (ed.), Molecular Cloning: A Laboratory Manual, 2nd ed., vol. 1-3, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, 1989, chs. 9および11中で論じられている。
【0028】
本開示の目的で、「ストリンジェントな条件」は、ハイブリダイゼーション分子と標的配列の間に25%未満のミスマッチが存在する場合、その下でハイブリダイゼーションが起こる条件を包含する。「ストリンジェントな条件」は、特定のレベルのストリンジェンシーにさらに定義することができる。したがって、本明細書で使用する「適度なストリンジェンシー」条件は、その下で25%を超えるミスマッチを有する分子がハイブリダイズしない条件であり、「中間ストリンジェンシー」の条件は、その下で15%を超えるミスマッチを有する分子がハイブリダイズしない条件であり、「高ストリンジェンシー」の条件は、その下で10%を超えるミスマッチを有する配列がハイブリダイズしない条件である。「非常に高いストリンジェンシー」の条件は、その下で6%を超えるミスマッチを有する配列がハイブリダイズしない条件である。
【0029】
特定の実施形態において、ストリンジェントな条件は、65℃でのハイブリダイゼーション、次に40分間の0.1×SSC/0.1%SDSを用いた65℃での連続洗浄である。
【0030】
単離された:「単離された」生物学的構成成分(核酸またはタンパク質など)は、その構成成分が本来存在する生物の細胞内の他の生物学的構成成分、すなわち他の染色体および染色体外DNAおよびRNA、およびタンパク質から実質的に分離、生成、または精製されている。「単離された」状態である核酸分子およびタンパク質は、標準的な精製法によって精製された核酸分子およびタンパク質を含む。この用語は、宿主細胞中での組換え発現により調製された核酸およびタンパク質、および化学的に合成された核酸分子、タンパク質、およびペプチドも包含する。
【0031】
核酸分子:ヌクレオチドのポリマー形態であり、RNA、cDNA、ゲノムDNAのセンス鎖とアンチセンス鎖の両方、ならびに前述の合成形態および混合ポリマーを含み得る。ヌクレオチドは、リボヌクレオチド、デオキシヌクレオチド、またはいずれかの型のヌクレオチドの修飾型を指す。本明細書で使用する「核酸分子」は、「核酸」および「ポリヌクレオチド」と同義である。この用語は、一本鎖および二本鎖型のDNAを含む。核酸分子は、天然に存在するおよび/または非天然ヌクレオチド結合により1つに結合した、天然に存在するヌクレオチドと修飾ヌクレオチドの一方または両方を含み得る。
【0032】
当業者によって容易に理解されるように、核酸分子は化学的または生化学的に修飾することができ、または非天然または誘導体ヌクレオチド塩基を含有することができる。このような修飾には、例えば、標識、メチル化、1つまたは複数の天然に存在するヌクレオチドとアナログの置換、非荷電結合(例えば、メチルホスホネート、ホスホトリエステル、ホスホロアミデート、カルバメートなど)、荷電結合(例えば、ホスホロチオエート、ホスホロジチオエートなど)などのヌクレオチド間修飾、ペンダント成分(例えば、ペプチド)、インターカレーター(例えば、アクリジン、ソラレンなど)、キレート剤、アルキル化剤、および修飾結合(例えば、αアノマー核酸など)がある。用語「核酸分子」は、一本鎖、二本鎖、部分的デュプレックス、トリプレックス、ヘアピン、環状、およびパドロック形状を含めた任意の位相幾何学的形状も含む。
【0033】
作動可能に連結した:第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係があるとき、第一の核酸配列は第二の核酸配列と作動可能に連結している。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響を与えるとき、プロモーターはコード配列と作動可能に連結している。組換えにより生成するとき、および同一リーディングフレームで2つのタンパク質コード領域を接合することが必要である場合、作動可能に連結した核酸配列は一般に隣接している。しかしながら、エレメントは、作動可能に連結するように互いに隣接している必要はない。
【0034】
プロモーター:転写に必要とされる(遺伝子の5’領域に向かって)一般に上流に位置するDNAの領域。プロモーターは、それらが制御する遺伝子の正確な活性化または抑制を可能にする。プロモーターは、転写因子によって認識される特異的配列を含有する。これらの因子はプロモーターDNA配列と結合し、RNAポリメラーゼ(遺伝子のコード領域からRNAを合成する酵素)の動員をもたらす。いくつかの実施形態において、本発明の方法において、組織特異的プロモーター、例えば花粉特異的プロモーターを使用する。組織特異的プロモーターは、生物の他の組織と比較してプロモーターが特異的である組織中の、関連遺伝子の高レベルの転写を誘導するDNA配列である。組織特異的プロモーターの例には、タペート組織特異的プロモーター、葯特異的プロモーター、花粉特異的プロモーター(例えば、米国特許第7,141,424号、および国際PCT公開No.WO99/042587参照)、胚珠特異的プロモーター(例えば、米国特許出願No.2001/047525A1参照)、果実特異的プロモーター(例えば、米国特許第4,943,674号、および同第5,753,475号参照)、および種子特異的プロモーター(例えば、米国特許第5,420,034号、および同第5,608,152号参照)がある。いくつかの実施形態において、本発明の方法において、発生段階特異的プロモーター、例えば発生中の後期段階で活性があるプロモーターを使用する。
【0035】
形質転換:ウイルスまたはベクターは、それが細胞に核酸分子を移すとき、細胞を「形質転換」または「形質導入」する。細胞ゲノム中への核酸分子の取り込み、またはエピソーム複製のいずれかによって、核酸分子が細胞により安定的に複製された状態になるとき、細胞に形質導入された核酸分子によって細胞は「形質転換」される。本明細書で使用する用語「形質転換」は、それによって核酸分子をこのような細胞中に導入することができる全ての技法を包含する。例には、ウイルスベクターによるトランスフェクション、プラスミドベクターによる形質転換、エレクトロポレーション(Fromm et al. (1986) Nature 319:791-3)、リポフェクション(Felgner et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84:7413-7)、マイクロインジェクション(Mueller et al. (1978) Cell 15:579-85)、アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介導入(Fraley et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4803-7)、直接的なDNAの取り込み、およびマイクロプロジェクタイルボンバードメント(Klein et al. (1987) Nature 327:70)があるが、これらに限定されない。
【0036】
導入遺伝子:外来核酸配列。一例では、導入遺伝子は、遺伝子配列(例えば、除草剤耐性遺伝子)、産業上もしくは薬学上有用な化合物をコードする遺伝子、または望ましい農業的形質をコードする遺伝子である。さらに別の例では、導入遺伝子はアンチセンス核酸配列であり、アンチセンス核酸配列の発現は標的核酸配列の発現を阻害する。導入遺伝子は、導入遺伝子と作動可能に連結した制御配列(例えば、プロモーター)を含有することができる。
【0037】
ベクター:細胞中に導入し、それによって形質転換細胞を生成する核酸分子。ベクターは、複製起点などの、宿主細胞中でのその複製を可能にする核酸配列を含むことができる。例には、細胞中に外来DNAを運ぶ、プラスミド、コスミド、バクテリオファージ、またはウイルスがあるが、これらに限定されない。ベクターは、当技術分野で知られている、1つまたは複数の遺伝子、アンチセンス分子、および/または選択可能なマーカー遺伝子および他の遺伝子エレメントも含むことができる。ベクターは細胞に形質導入、形質転換、または感染し、それによってベクターによってコードされる核酸分子および/またはタンパク質を細胞に発現させることが可能である。ベクターは、細胞中への核酸分子の進入の実施を容易にする物質(例えば、リポソーム、コードタンパク質など)を場合によっては含む。
【0038】
ジンクフィンガーヌクレアーゼを介した植物からの導入遺伝子の切除
少ない導入遺伝子の漏出を有する植物を作出するための方法、およびこのような方法によって生じる植物、およびそれに由来する植物材料、例えば種子を本明細書で開示する。一実施形態において、方法は植物とベクターを接触させることを含み、ベクターは1つまたは複数の組織特異的プロモーター(例えば、花粉特異的プロモーター)と作動可能に連結した1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。このベクターの発現は、特異的組織中でその作動可能に連結したプロモーターが活性状態である(1つまたは複数の)ZFNの生成をもたらす。(1つまたは複数の)ZFNは、その切除が望ましい核酸配列に隣接する切断配列を認識するように設計または操作することができる。したがって、プロモーターが活性状態である特異的組織中での(1つまたは複数の)ZFNの生成は、(1つまたは複数の)ZFNによって認識される切断配列の間の核酸配列の切除をもたらし、それによって残りの認識配列を含まない切断結合部を含有する核酸配列を生成する。
【0039】
別の実施形態において、方法は植物とベクターを接触させることを含み、ベクターは組織特異的プロモーターと作動可能に連結した1つまたは複数のZFN、対象の遺伝子、場合によっては対象の遺伝子と作動可能に連結することができる1つまたは複数の制御エレメント、ならびに対象の遺伝子および1つまたは複数の制御エレメントに隣接する(1つまたは複数の)ZFNによって認識される1つまたは複数の切断配列を含む。このベクターの発現は、特異的組織中でその作動可能に連結したプロモーターが活性状態である(1つまたは複数の)ZFNの生成をもたらす。したがって、プロモーターが活性状態である特異的組織中での(1つまたは複数の)ZFNの生成は、対象の遺伝子、および場合によっては1つまたは複数の制御エレメントを含む(1つまたは複数の)ZFNによって認識される切断配列間の核酸配列の切除をもたらす。
【0040】
さらなる実施形態において、方法は植物とベクターを接触させることを含み、ベクターは、植物発生の特定時期に活性状態である1つまたは複数のプロモーター(例えば、発生の比較的後期段階で発現を誘導するプロモーター)と作動可能に連結した1つまたは複数のジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)を含む。このベクターの発現は、発生の特定段階中にその作動可能に連結したプロモーターが活性状態である(1つまたは複数の)ZFNの生成をもたらす。(1つまたは複数の)ZFNは、その切除が望ましい核酸配列に隣接する切断配列を認識するように設計または改変することができる。プロモーターが活性状態である発生段階での(1つまたは複数の)ZFNの生成は、(1つまたは複数の)ZFNによって認識される切断配列間の核酸配列の切除をもたらす。
【0041】
他の実施形態において、方法は植物とベクターを接触させることを含み、ベクターは、植物発生の特定時期に活性状態であるプロモーターと作動可能に連結した1つまたは複数のZFN、対象の遺伝子、場合によっては対象の遺伝子と作動可能に連結することができる1つまたは複数の制御エレメント、ならびに対象の遺伝子および1つまたは複数の制御エレメントに隣接する(1つまたは複数の)ZFNによって認識される1つまたは複数の切断配列を含む。このベクターの発現は、発生の特定段階中にその作動可能に連結したプロモーターが活性状態である(1つまたは複数の)ZFNの生成をもたらす。その作動可能に連結したプロモーターが活性状態である発生の特定時期中の(1つまたは複数の)ZFNの生成は、対象の遺伝子、および1つまたは複数の制御エレメントを含む(1つまたは複数の)ZFNによって認識される切断配列間の核酸配列の切除をもたらす。
【0042】
ZFNヌクレアーゼ
特定の実施形態において、形質転換植物中の核酸分子からZFNを発現させて、形質転換植物中の核酸配列の切除を誘導する。特定核酸配列(例えば、導入遺伝子、対象の遺伝子、または選択マーカー遺伝子)に隣接するように操作された認識配列をターゲティングするZFNを使用することができ、またはZFNは、切除される特定核酸配列と隣接する天然に存在する核酸配列をターゲティングするように設計することができる。ZFN系の優れた柔軟性および特異性は、知られているリコンビナーゼ仲介型の遺伝子切除戦略によって以前は得られなかった一定レベルの制御をもたらす。
【0043】
ZFNの認識特異性は実験により容易に操作することができる。Wu et al. (2007) Cell. Mol. Life Sci. 64:2933-44。ジンクフィンガー認識残基に関するコドンのランダム化は、任意選択したDNA配列に対して高い親和性を有する新たなフィンガーの選択を可能にする。さらに、ジンクフィンガーは天然DNA結合分子であり、操作されたジンクフィンガーは生きた細胞中のそれらの設計標的に作用することが示されている。したがって、ジンクフィンガーベースのヌクレアーゼは特異的であるが任意の認識部位をターゲティングすることができる。
【0044】
キメラジンクフィンガーヌクレアーゼの切断ドメインの二量体化に関する要件は、高レベルの配列特異性をもたらす。3フィンガーの各組は9連続塩基対と結合するので、各ジンクフィンガードメインが完全な特異性を有する場合、2キメラヌクレアーゼは18bpの標的を効果的に必要とする。この長さの任意の所与の配列は、一ゲノム内に特有であると予想される(約10bpと仮定)。Bibikova et al. (2001) Mol. Cell. Biol. 21(1):289-97、Wu et al. (2007)、上記。さらに、他のフィンガーはより高い特異性をもたらすので、Beerli et al. (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA95:14628-33、KimおよびPabo (1998) Proc. Natl. Acad. Sci. USA95:2812-7、Liu et al. (1997) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 94:5525-30、したがって各DNA結合ドメイン中のジンクフィンガーの数を増大させてさらに高い特異性をもたらすことが可能である。例えば、24bpの配列を認識する一対の4フィンガーZFNを使用することによって、特異性をさらに増大することが可能である。Urnov et al. (2005) Nature 435:646-51。
【0045】
α−ヘリックスの開始部位と比較した位置−1、2、3、および6におけるZFN中の重要なアミノ酸は、ジンクフィンガーモチーフによる特異的相互作用の大部分に貢献する。PavletichおよびPabo (1991) Science 252:809-17、ShiおよびBerg (1995) Chem. Biol. 2:83-9。これらのアミノ酸を、共通の骨格として残りのアミノ酸を維持しながら変更して、異なるおよび/または新規の配列特異性を有するZFPを生成することができる。例えば、ChooおよびKlug (1994) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 91:11163-7、DesjarlaisおよびBerg (1992) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:7345-9、DesjarlaisおよびBerg (1993) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 90:2256-60、GreismanおよびPabo (1997) Science 275:657-61、Isalan et al. (1998) Biochemistry 37:12026-33、Jamieson et al. (1994) Biochemistry 33:5689-95、RebarおよびPabo (1994) Science 263:671-3、Segal et al. (1999) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 96:2758-63、Wolfe et al. (1999) J. Mol. Biol. 285:1917-34、Wu et al. (1995) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 92:344-8を参照されたい。さらに、それらが共同して切断をもたらすように、異なる配列特異性を有する少なくとも2つの3フィンガーZFNを設計することができる。Smith et al. (2000)、前出。
【0046】
本発明のZFNを構築するための設計および選択手法は、特異的核酸配列を認識するのに適した1つまたは複数のZFモチーフを決定することによって始めることができる。あるいは、特異的核酸配列を認識するZFNを使用して、特異的核酸配列(例えば、特異的核酸配列が対象の遺伝子に隣接する場合)および必要に応じて他のエレメントを含む核酸分子を構築することができる。ファージディスプレイ法を含めた、ZFNに関する設計および様々な選択手法が概説されている。Mani et al. (2005)、上記。Durai et al. (2005) Nucleic Acids Res. 33:5978-90、Isalan et al. (2001) Nat. Biotechnol. 19:656-60、Kandavelou et al. (2005) Nat. Biotechnol. 23:686-87、Pabo et al. (2001) Annu. Rev. Biochem. 70:313-40、Segal et al. (2003) Biochemistry 42:2137-48。当技術分野で知られている任意の設計および/または選択手法を使用して、本発明の実施形態中で使用するためのZFNに到達することができる。例えば、細菌のワンハイブリッドおよびツーハイブリッド系を使用する細胞ベースの選択戦略を使用して、高度に特異的なZFPを生成することができる。Durai et al. (2006) Comb. Chem. High Throughput Screen. 9:301-11、Hurt et al. (2003) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 100:12271-6、Joung et al. (2000) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 97:7382-7。高度に特異的なZFPは指定ドメインシャッフリングおよび細胞ベースの選択によって得ることもでき、マルチフィンガーZFPを最適化するための一般的手法をもたらす。Hurt et al. (2003)、上記。
【0047】
設計およびファージディスプレイ法に基づく多量のデータが5’GNN3’および5’ANN3’トリプレットを特異的に認識するZFモジュールに関して利用可能であり、低い程度で、5’CNN3’および5’TNN3’トリプレットに関するZFモチーフ優先性は知られている。例えば、Durai et al. (2005)、上記。Dreier et al. (2001) J. Biol. Chem. 276:29466-78、Dreier et al. (2005) J. Biol. Chem. 280:35588-97、Dreier et al. (2000) J. Mol. Biol. 303:489-502、Liu et al. (2002) J. Biol. Chem. 277:3850-6を参照されたい。現在、2つのウエブベースのZF設計ソフトウエアパッケージが利用可能である(例えば、zincfingertools.orgで)。前述のものによって、ゲノム中にコードされるほぼ全ての遺伝子がZFNを介した遺伝子ターゲティングの影響を受けやすくなる。KatadaおよびKomiyama (2009) Chembiochem. 10(8):1279-88。
【0048】
特定の実施形態において、HIVコレセプターCCR5と結合するZFNを使用する。Perez et al. (2008) Nat. Biotechnol. 26:808-16。このZFNは「CCR5ZFN」と呼ばれる。特定の実施形態において、CCR5ZFNコード領域は、オペーク−2核局在化配列(Maddaloni et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17(18):7532)、r162y11ジンクフィンガー結合ドメイン、FokIヌクレアーゼドメイン(Looney et al. (1989) Gene 80:193-208)、テソア・アシニア(Thesoa assigna)ウイルス由来のT2Aスタッター配列(Mattion et al. (1996) J. Virol. 70:8124-7)、第二のオペーク−2核局在化配列、168FAvEジンクフィンガー結合ドメイン、および第二のFokIヌクレアーゼドメインを含む。
【0049】
核酸分子
いくつかの実施形態において、方法は、(望ましい形質または表現型を与えることができる)1つまたは複数の対象の遺伝子、2つ以上の対象の遺伝子などを有する第一の植物と、第二の植物を交配させることを含む。第二の植物も、1つまたは複数の対象の遺伝子を有し得る。第一の植物はベクターを含むことができ、ベクターは1つまたは複数の対象の遺伝子と作動可能に連結したプロモーターを含む。プロモーターは構成性または誘導性プロモーターであってよい。(1つまたは複数の)対象の遺伝子をコードする核酸配列にZFN認識部位が隣接してよい。場合によっては、(1つまたは複数の)対象の遺伝子と作動可能に連結したプロモーター、および任意の他の核酸配列(例えば、制御配列)にZFN認識部位が隣接してもよい。第二の植物は別のベクターを含むことができ、これはZFNをコードする核酸配列と作動可能に連結した組織特異的または発生段階特異的プロモーターを含むことができる。ベクターは両植物のゲノムに安定的に組み込むことができる。第一の植物と第二の植物の交配後、組織特異的または発生段階特異的プロモーターは、このような交配の結果として生じた子孫においてZFNの発現を特異的に誘導する。これらの子孫におけるZFNの発現はZFN認識部位が隣接した核酸配列の切除をもたらし、それによって子孫の特異的組織および/または発生段階で対象の遺伝子、および場合によっては他の配列(選択マーカー遺伝子など)を低減または除去する。いくつかの実施形態において、ZFN認識部位に相同核酸配列をさらに隣接させて、相同的DNA組換えをさらに助長することが可能である。
【0050】
対象の遺伝子は、典型的には望ましい形質または表現型を与えるのに十分な量の遺伝子の発現を誘導する、1つまたは複数の植物プロモーター(1つまたは複数)と作動可能に連結される。この使用および他の使用に適したプロモーターは当技術分野でよく知られている。このようなプロモーターを記載する非制限的な例には、米国特許第6,437,217号(メイズRS81プロモーター)、同第5,641,876号(イネアクチンプロモーター)、同第6,426,446号(メイズRS324プロモーター)、同第6,429,362号(メイズPR−1プロモーター)、同第6,232,526号(メイズA3プロモーター)、同第6,177,611号(構成的メイズプロモーター)、同第5,322,938号、同第5,352,605号、同第5,359,142号、および同第5,530,196号(35Sプロモーター)、同第6,433,252号(メイズL3オレオシンプロモーター)、同第6,429,357号(イネアクチン2プロモーター、およびイネアクチン2イントロン)、同第5,837,848号(根特異的プロモーター)、同第6,294,714号(光誘導性プロモーター)、同第6,140,078号(塩誘導性プロモーター)、同第6,252,138号(病原体誘導性プロモーター)、同第6,175,060号(リン欠乏誘導性プロモーター)、同第6,388,170号(双方向性プロモーター)、同第6,635,806号(γ−コイキシンプロモーター)、および米国特許出願第09/757,089号(メイズ葉緑体アルドラーゼプロモーター)がある。他のプロモーターには、ノパリンシンターゼ(NOS)プロモーター(Ebert et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(16):5745-9)、オクトパインシンターゼ(OCS)プロモーター(これはアグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)の腫瘍誘発プラスミドで実施される)、カリフラワーモザイクウイルス(CaMV)19Sプロモーターなどのカリモウイルスプロモーター(Lawton et al. (1987) Plant Mol. Biol. 9:315-24)、CaMV35Sプロモーター(Odell et al. (1985) Nature 313:810-2、ゴマノハグサモザイクウイルス35S−プロモーター(Walker et al. (1987) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 84(19):6624-8)、スクロースシンターゼプロモーター(YangおよびRussell (1990) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 87:4144-8)、R遺伝子複合体プロモーター(Chandler et al. (1989) Plant Cell 1:1175-83)、クロロフィルa/b結合タンパク質遺伝子プロモーター、CaMV35S(米国特許第5,322,938号、同第5,352,605号、同第5,359,142号、および同第5,530,196号)、FMV35S(米国特許第6,051,753号、および同第5,378,619号)、PC1SVプロモーター(米国特許第5,850,019号)、SCP1プロモーター(米国特許第6,677,503号)およびAGRtu.nosプロモーター(GenBank受託番号V00087、Depicker et al. (1982) J. Mol. Appl. Genet. 1:561-73、Bevan et al. (1983) Nature 304:184-7)などがある。
【0051】
対象の遺伝子と場合によっては作動可能に連結されうる他の遺伝子エレメントには、輸送ペプチドをコードする配列がある。例えば、A.タリアナ(A.thaliana)のEPSPSCTP(Klee et al. (1987) Mol. Gen. Genet. 210:437-42)、およびペチュニアハイブリダ(Petunia hybrida)のEPSPSCTP(della-Cioppa et al. (1986) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 83:6873-7)などの適切な葉緑体輸送ペプチドの取り込みは、異種のEPSPSタンパク質配列をトランスジェニック植物中の葉緑体にターゲティングすることが示されている。国際PCT公開No.WO2008/105890中に記載されたように、ジカンバモノオキシゲナーゼ(DMO)も葉緑体にターゲティングすることができる。
【0052】
対象の遺伝子と場合によっては作動可能に連結することができる他の遺伝子エレメントは、翻訳リーダー配列として機能するプロモーター配列とコード配列の間に位置する5’UTRも含む。翻訳リーダー配列は、翻訳開始配列上流の完全にプロセシングされたmRNA中に存在する。翻訳リーダー配列は、mRNAへの一次転写産物のプロセシング、mRNAの安定性、および/または翻訳効率に影響を与えることができる。翻訳リーダー配列の例には、メイズおよびペチュニア熱ショックタンパク質リーダー(米国特許第5,362,865号)、植物ウイルスコートタンパク質リーダー、植物ルビスコリーダー、およびその他がある。例えば、TurnerおよびFoster (1995) Molecular Biotech. 3(3):225-36を参照。5’UTRの非制限的な例には、GmHsp(米国特許第5,659,122号)、PhDnaK(米国特許第5,362,865号)、AtAnt1;TEV(CarringtonおよびFreed (1990) J. Virol. 64:1590-7)、およびAGRtunos(GenBank受託番号V00087、およびBevan et al. (1983) Nature 304:184-7)がある。
【0053】
対象の遺伝子と場合によっては作動可能に連結することができる他の遺伝子エレメントは、3’非翻訳配列、3’転写終結領域、またはポリアデニル化領域も含む。これらはポリヌクレオチド分子の下流に位置する遺伝子エレメントであり、ポリアデニル化シグナル、および/または転写、mRNAプロセシング、または遺伝子発現に影響を与えることができる他の制御シグナルを与えるポリヌクレオチドを含む。ポリアデニル化シグナルは植物中で機能して、mRNA前駆体の3’末端へのポリアデニレートヌクレオチドの付加を引き起こす。ポリアデニル化配列は、天然遺伝子、様々な植物遺伝子、またはT−DNA遺伝子に由来してよい。3’転写終結領域の非制限的な一例は、ノパリンシンターゼ3’領域である(nos3’、Fraley et al. (1983) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 80:4803-7)。異なる3’非翻訳領域の使用の一例はIngelbrecht et al., (1989) Plant Cell 1:671-80中に与えられる。ポリアデニル化シグナルの非制限的な例には、ピスム・サティブム(Pisum sativum)RbcS2遺伝子からのポリアデニル化シグナル(Ps.RbcS2-E9、Coruzzi et al. (1984) EMBO J. 3:1671-9)、およびAGRtu.nos(GenBank受託番号E01312)がある。
【0054】
植物の形質転換
植物に導入遺伝子を導入するための当技術分野で知られている任意の技法を使用して、本発明による形質転換植物を作出することができる。植物の形質転換に適した方法には、米国特許第5,384,253号中に例示されたエレクトロポレーションによる方法、米国特許第5,015,580号、同第5,550,318号、同第5,538,880号、同第6,160,208号、同第6,399,861号、および同第6,403,865号中に例示されたマイクロプロジェクタイルボンバードメントによる方法、米国特許第5,635,055号、同第5,824,877号、同第5,591,616号、同第5,981,840号、および同第6,384,301号中に例示されたアグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介形質転換による方法、および米国特許第5,508,184号中に述べられたプロトプラスト形質転換による方法などの、それによってDNAを細胞中に導入することができるほぼ任意の方法が含まれると考えられている。これらの技法などの技法の施用によって、ほぼ任意の植物種の細胞を安定的に形質転換することができ、当業者に知られている技法によって、これらの細胞をトランスジェニック植物に成長させることが可能である。綿花形質転換の状況で特に有用である可能性がある技法は米国特許第5,846,797号、同第5,159,135号、同第5,004,863号、および同第6,624,344号中に開示され、特にアブラナ属(Brassica)植物を形質転換するための技法は例えば米国特許第5,750,871号中に開示され、ダイズを形質転換するための技法は例えば米国特許第6,384,301号中に開示され、コーンを形質転換するための技法は例えば米国特許第7,060,876号、米国特許第5,591,616号、および国際PCT公開WO95/06722中に開示される。
【0055】
レシピエント細胞への外来DNAの送達の実施後、次のステップは一般に、さらなる培養および植物再生用の形質転換細胞の確認に関する。形質転換体を同定する能力を向上させるために、形質転換体を作製するために使用する、選択可能またはスクリーニング可能なマーカー遺伝子および形質転換用ベクターを利用することが所望されうる。この場合、おそらく形質転換された細胞集団は、1つまたは複数の選択剤に細胞を曝すことによりアッセイすることができ、または望ましいマーカー遺伝子形質に関して細胞をスクリーニングすることができる。
【0056】
選択剤への曝露に対して生存する細胞、またはスクリーニングアッセイ中で陽性と記録された細胞は、植物の再生を促進する培地中で培養することができる。いくつかの実施形態において、任意の適切な植物組織培養培地(例えば、MSおよびN6培地)は、成長調節物質などのさらなる物質を含めることによって改変することができる。植物再生作業を始めるのに十分な組織が得られるまで、または、反復した数ラウンドの手作業による選択後、組織の形態が再生に適した状態になり(例えば、少なくとも2週間)、次いで苗条形成を促進する培地に移すまで、成長調節物質を含む基本培地上に組織を維持することができる。十分な苗条形成が起こるまで、培養物は定期的に移動させる。苗条が形成された後、それらは苗条形成を促進する培地に移す。十分な根が形成された後、さらなる増殖および成熟のため植物を土壌に移すことができる。
【0057】
再生植物中の対象の遺伝子(例えば、導入遺伝子)の存在を確認するために、様々なアッセイを実施することができる。このようなアッセイには、例えば、サザンおよびノーザンブロッティングおよびPCRなどの分子生物学的アッセイ、例えば免疫学的手段(ELISAおよび/またはウエスタンブロット)または酵素機能による、タンパク質産物の存在の検出などの生化学的アッセイ、葉または根のアッセイなどの植物部分アッセイ、および再生植物全体の表現型の分析がある。
【0058】
トランスジェニック植物の栽培および使用
本発明により核酸切除を示す植物は、1つまたは複数の望ましい形質、2つ以上の望ましい形質などを有する可能性がある。このような形質は、例えば、昆虫および他の病虫害、および病原因子に対する抵抗性、除草剤に対する耐性、高い安定性、収率、または貯蔵寿命、環境耐性、医薬品生産、工業製品生産、および栄養価向上を含むことができる。望ましい形質は、植物中での(1つまたは複数の)ZFNの発現が、その基礎遺伝子の封じ込めによって、他の植物または次世代の植物への形質の伝達を低減または排除するように望ましい形質を示す植物中で発現される、(1つまたは複数の)ZFNにより認識される核酸配列が隣接する遺伝子によって与えられる可能性がある。したがって、一実施形態において、望ましい形質は、ZFN認識配列が隣接し得る植物中の(1つまたは複数の)導入遺伝子の存在に原因がある可能性がある。他の一実施形態において、望ましい形質は従来の品種改良によって得ることができ、その形質はZFN認識配列が隣接する1つまたは複数の遺伝子によって与えられる可能性がある。
【0059】
本発明による核酸切除を示す植物は、本発明の核酸分子で形質転換することができる任意の植物であってよい。したがって、植物は双子葉植物または単子葉植物であってよい。本発明の方法中で有用な双子葉植物の非制限的な例には、アルファルファ、マメ、ブロッコリ、キャベツ、ニンジン、カリフラワー、セロリ、ハクサイ、綿花、キュウリ、ナス、レタス、メロン、エンドウ、コショウ、ピーナッツ、ジャガイモ、パンプキン、ラディッシュ、ナタネ、ホウレンソウ、ダイズ、カボチャ、テンサイ、ヒマワリ、タバコ、トマト、およびスイカがある。本発明の方法中で有用な単子葉植物の非制限的な例には、コーン、タマネギ、イネ、モロコシ、コムギ、ライムギ、キビ、サトウキビ、オートムギ、ライコムギ、スイッチグラス、およびターフグラスがある。
【0060】
本発明による核酸切除を示す植物は任意の形式で使用または栽培することができ、他の植物への切除核酸配列の伝達は望ましくない。したがって、特に1つまたは複数の望ましい形質を有するように操作されたGM植物は、本発明による核酸分子で形質転換することができ、当業者に知られている任意の方法によって収穫および栽培することができる。
【実施例】
【0061】
以下の実施例は、本発明の実施形態を例証するために含まれる。実施例中に開示する技法は、本発明の実施において十分機能することが本発明者らにより発見された技法を表すことは、当業者によって理解される。しかしながら当業者は、本開示に照らして、開示する具体的な実施形態において多くの変形を作製することができ、本発明の範囲から逸脱せずに同様または類似の結果をさらに得ることができることを理解する。より具体的には、同様または類似の結果を得ながら、化学的かつ生理的に関係がある特定の作用物質を、本明細書に記載する作用物質に置換することができることは明らかである。当業者には明らかである全てのこのような類似の代替および変更形態は、添付の特許請求の範囲によって定義する本発明の範囲内にあると考えられる。
【実施例1】
【0062】
プラスミドの設計および構築。
ジンクフィンガー結合部位が隣接する標的レポーター遺伝子発現カセットを含有する標的構築物(pDAS5380)、およびジンクフィンガーヌクレアーゼ遺伝子発現カセットを含有する切除構築物(pDAS5381)を設計し構築した。タバコに別々に形質転換されるようにこれらの構築物を設計した。標的レポーター遺伝子の切除は2タバコ系の交配により実施し、機能性ジンクフィンガーヌクレアーゼは標的レポーター遺伝子カセットに隣接するジンクフィンガー結合部位を認識し、ゲノムDNAを切断した。標的レポーター遺伝子構築物を含有する植物系と、切除構築物を含有する植物系の交配は、植物ゲノムからのレポーター遺伝子の除去/欠失をもたらした。
【0063】
標的構築物pDAS5380の構築および設計。
pDAS5380(図1)はバイナリープラスミドベクターとして構築した。この構築物は、以下の植物転写ユニット(PTU)発現カセットおよび遺伝子エレメント、RB7MAR((マトリックス結合領域(Thompson et al. (1997) WO9727207))、CCR5結合部位反復4×(Perez et al. (2008) Nat. Biotechnol. 26:808-16)、AtuORF13’UTR(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(Agrobacterium tumefaciens)のオープンリーディングフレーム−1,3’非翻訳領域(Huang et al. (1990) J. Bacteriol. 172:1814-22))/GUS(β-D-グルクロニダーゼ(Jefferson (1989) Nature 342:837-8))/AtUbi10(シロイヌナズナ(Arabidopsis thaliana)のユビキチン−10プロモーター(Callis et al. (1990) J. Biol. Chem. 265:12486-93))、CCR5結合部位反復4×::AtAct2(A.タリアナ(A. thaliana)のアクチン−2プロモーター(An et al. (1996) Plant J. 10:107-21))/TurboGFP(turbo−緑色蛍光タンパク質(Evdokimov et al. (2006) EMBO Rep. 7(10):1006-12))/AtuORF23の3’UTR(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A. tumefaciens)のオープンリーディングフレーム−23,3’非翻訳領域(Gelvin et al. (1987) EP222493))、AtUbi10/PAT(ホスフィノトリシンアセチルトランスフェラーゼ(Wohlleben et al. (1988) Gene 70:25-37))/AtuORF1の3’UTRを含有する。GUS PTU発現カセットは、GFPおよびPAT PTU発現カセットとトランスで置いた。さらに、GUS PTU発現カセットにCCR5ジンクフィンガーヌクレアーゼ結合部位が隣接していた。この配列(配列番号1)は、GUS PTU発現カセットの上流および下流で直接4回反復した。ジンクフィンガー結合部位の位置は図1中で「CCR5結合部位」と確認した。これらの部位は認識され、切除構築物、pDAS5381によってコードされるジンクフィンガーヌクレアーゼタンパク質と結合する。このバイナリーベクターの構築は、標準的な分子生物学の技法を使用して実施した。最終プラスミドは、制限酵素の消化およびDNA配列決定によって確認した。
【0064】
切除構築物、pDAS5381の構築および設計。
CCR5結合部位と結合するように具体的に設計したジンクフィンガーヌクレアーゼ遺伝子を含有するバイナリープラスミド(配列番号2)は、Perez et al.,(2008)Nature Biotechnol. 26:808-16中に記載されたように設計および構築した。pDAS5381(図2)は、以下のPTU発現カセット、CsVMV(キャッサバ葉脈モザイクウイルス(Cassava Vein Mosaic virus)由来のプロモーター(Verdaguer et al. (1996) Plant Mol. Biol. 31:1129-39))/CCR5ジンクフィンガーヌクレアーゼコード領域(オペーク−2核局在化配列を含有(Maddaloni et al. (1989) Nucleic Acids Res. 17(18):7532)、r162y11ジンクフィンガー結合ドメイン、FokIヌクレアーゼドメイン(Looney et al. (1989) Gene 80:193-208)、テソア・アシニア(Thesoa assigna)ウイルス由来のT2Aスタッター配列(Mattion et al. (1996) J. Virol. 70:8124-7)、第二のオペーク−2核局在化配列、168GAvEジンクフィンガー結合ドメイン、および第二のFokIヌクレアーゼドメイン)/Atu ORF23の3’UTR、AtUbi3プロモーター(A.タリアナ(A.thaliana)のユビキチン−3プロモーター(Callis et al. (1995) Genetics 139(2):921-39))/HPTII(ヒグロマイシンホスホトランスフェラーゼII(Gritz et al. (1983) Gene 25(2-3):179-88))/Atu ORF24の3’UTR(アグロバクテリウム・ツメファシエンス(A. tumefaciens)のオープンリーディングフレーム−24,3’非翻訳領域(Gelvin et al. (1987) EP222493))を含有する。このバイナリーベクターの構築は、標準的な分子生物学の技法を使用して実施した。最終プラスミドは、制限酵素の消化およびDNA配列決定によって確認した。
【実施例2】
【0065】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介の植物形質転換。
pDAS5380およびpDAS5381によるアグロバクテリウム(Agrobacterium)の形質転換。
エレクトロコンピテントアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)(株LBA4404)細胞をInvitrogen(Carlsbad、CA)から得て、WeigelおよびGlazebrook (2002)「How to Transform Arabidopsis」、in Arabidopsis: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York, U.S.Aから改変したエレクトロポレーション法を使用して形質転換した。形質転換コロニーは、スペクチノマイシン(50μg/mL)およびストレプトマイシン(125μg/mL)を含有する酵母エキスペプトン培地(YEP)で得て、制限酵素の消化によって確認した。正確な制限酵素バンドパターンを示したクローンは、グリセロールストックとして−80℃で保存した。
【0066】
アグロバクテリウム(Agrobacterium)媒介のタバコ(Nicotiana tabacum)の形質転換。
タバコ(ペティットハバナ(Petit Havana)種)のリーフディスクを、pDAS5381およびpDAS5380を含有するアグロバクテリウム・ツメファシエンス(A.tumefaciens)(株LBA4404)を使用して形質転換した。これらのプラスミドを含有するアグロバクテリウム(Agrobacterium)の単コロニーを、スペクチノマイシン(50μg/mL)およびストレプトマイシン(125μg/mL)を含有する4mLのYEPに接種し、190rpmでシェイカーにおいて、28℃において一晩インキュベートした。4mLの種培養液を後に使用して、スペクチノマイシン(50μg/mL)およびストレプトマイシン(125μg/mL)を含有するYEP培地の25mL培養液を接種し、125mLのバッフル付きエルレンマイヤーフラスコ中で増殖させた。この培養液は、それが約1.2のOD600に達するまで、190rpmで攪拌しながら28℃においてインキュベートした。10mLのアグロバクテリウム(Agrobacterium)縣濁物を滅菌60×20mmペトリ皿に置いた。
【0067】
30g/Lスクロースを含むMS培地(Phytotechnology Labs、Shawnee Mission、KS、#M524)上、PhytaTrays(商標)(Sigma、St.Louis、MO)中で無菌増殖した植物から切断した25の新たな切断リーフディスク(0.5cm)を数分間アグロバクテリウム(Agrobacterium)の10mL一晩培養液に浸し、滅菌濾過紙上で乾燥状態にし、次いで1mg/Lのインドール酢酸および1mg/Lのベンジアミノプリン(benzyamino purine)を加えた同じ培地上に置いた。48時間の同時培養後、pDAS5380含有アグロバクテリウム(Agrobacterium)と同時培養したリーフディスクを、5mg/LのBasta(登録商標)および250mg/Lのセフォタキシムを含む同じ培地に移した。pDAS5381含有アグロバクテリウム(Agrobacterium)と同時培養したリーフディスクは、10mg/Lのヒグロマイシンおよび250mg/Lのセフォタキシムを含む同じ培地に移した。3週間後、個々のT植物を、pDAS5380用の10mg/LのBasta(登録商標)および250mg/Lのセフォタキシムを含むMS培地、またはpDAS5381用の10mg/Lのヒグロマイシンおよび250mg/Lのセフォタキシムを含むMS培地のいずれかに移し、土壌への移植前にさらに3週間、温室に移した。
【0068】
植物のコピー数、完全長PTUおよび発現分析。
コピー数アッセイ
Invader(登録商標)および加水分解プローブアッセイを実施してBasta(登録商標)耐性植物のサンプルをスクリーニングし、pDAS5380およびpDAS5381中にT−DNAの単一コピー組み込みを含有するサンプルを同定した。遺伝子発現カセットに特異的なプライマーおよびプローブを使用して、詳細な分析を行った。他の分析用の単一コピーイベントを同定した。
【0069】
組織サンプルを96ウエルプレート中に回収し、2日間凍結乾燥させた。組織解離を、Kleco(商標)組織粉砕機およびタングステンビーズ(Visalia、CA)を用いて実施した。組織解離後、製造者の示したプロトコールに従いDNeasy96Plantキット(商標)(Qiagen、Germantown、MD)を使用して、ハイスループット形式でゲノムDNAを単離した。Quant-IT Pico Green DNAアッセイキット(商標)(Molecular Probes、Invitrogen、Carlsbad、CA)によって、ゲノムDNAを定量化した。定量化したゲノムDNAは、Biorobot3000(商標)自動液体ハンドラー(Qiagen、Germantown、MD)を使用して、Invader(登録商標)アッセイ用に9ng/μLに、または加水分解プローブアッセイ用に5ng/μLに調節した。
【0070】
Custom Invader(登録商標)アッセイは、Hologic(Madison、WI)によりタバコにおけるPAT遺伝子分析用に開発された。ゲノムDNAサンプル(9ng/μLで7.5μL)を、10分間95℃でのインキュベーションによって96ウエルプレート形式で最初に変性させ、次いで氷上で冷却した。次に、7.5μLのマスター混合物(patと内部参照遺伝子(フェニルアラニンアンモニウムリアーゼ(palA);GenBank ID:AB008199)の3μLプローブ混合物、3.5μLのCleavase(登録商標)XI FRET混合物、および1μLのCleavase(登録商標)XI酵素/MgCl溶液)をそれぞれのウエルに加え、サンプルには鉱油を塗った。プレートは密閉し、BioRad Tetrad(登録商標)サーモサイクラーにおいて1時間63℃でインキュベートした。蛍光プレートリーダーで読み取る前に、プレートは周囲温度に冷却した。全てのプレートは1コピー、2コピーおよび4コピー標準、ならびに野生型対照サンプルを含有し、ブランクウエルはサンプルを含有していなかった。FAM(λ485〜528nm)とRED(λ560〜620nm)チャンネル両方に関する読み取り値を回収し、これらから、各チャンネルに関するゼロ(すなわち、バックグラウンド)を超える倍数値は、鋳型なし未処理シグナルで割ったサンプルの未処理シグナルにより各サンプルに関して決定した。このデータから、標準曲線を構築し、線形回帰分析により最適性を決定した。この適性から確認したパラメーターを使用して、見かけのpatコピー数を次いで各サンプルに関して推定した。
【0071】
TaqMan(登録商標)アッセイと類似した加水分解プローブアッセイによる導入遺伝子コピー数の決定を、LightCycler480(登録商標)システム(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を使用してリアルタイムPCRにより実施した。アッセイは、LightCycler(登録商標)プローブ設計ソフトウエア2.0を使用して、HPTII、PATおよび内部標準遺伝子フェニルアラニンアンモニウムリアーゼ(palA)用に設計した。増幅用に、LightCycler(登録商標)480プローブマスター混合物(Roche Applied Science、Indianapolis、IN)を、0.4μMの各プライマーおよび0.2μMの各プローブを含有する10μL体積の多重反応混合物中に1×最終濃度に調製した(表1)。2ステップの増幅反応を38秒間58℃において延長部分で実施し蛍光を得た。全てのサンプルは三連で施用し、平均サイクル閾値(Ct)を各サンプルの分析用に使用した。リアルタイムPCRデータの分析は、相対定量モジュールを使用してLightCycler(登録商標)ソフトウエアリリース1.5を使用して実施し、ΔΔCt法に基づく。このため、シングルコピーカリブレーターからのゲノムDNAのサンプルおよび知られている2コピーチェックをそれぞれの施用に含めた(前述のInvader(登録商標)アッセイに使用したものと同一)。
【0072】
【表1】

【0073】
サザンブロット解析による完全長PTUアッセイ。
サザンブロット解析を使用して、挿入DNA断片の組み込みパターンを確定し、完全長PTUを含有したpDAS5380およびpDAS5381イベントを同定した。データを作成して、タバコゲノム中に挿入した導入遺伝子の組み込みおよび完全性を実証した。サザンブロットのデータを使用して、pDAS5380およびpDAS5381由来のT−DNAの完全コピーの単純な組み込みを確認した。詳細なサザンブロット解析は、遺伝子発現カセットに特異的なプローブを使用して実施した。これらのプローブと特異的制限酵素で消化したゲノムDNAのハイブリダイゼーションによって、そのパターンを分析してTに進行するイベントを同定することが可能である、いくつかの分子量のゲノムDNA断片を同定した。これらの解析は、プラスミド断片がPTUの再編成なしでタバコゲノムDNAに挿入されたことも示した。
【0074】
組織サンプルを50mLの円錐形チューブ(Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)中に回収し、2日間凍結乾燥させた。組織解離を、ペイントミキサー組織粉砕機およびタングステンビーズを用いて実施した。組織解離後、製造者の示したプロトコールに従いDNeasy(商標)Plant Maxiキット(Qiagen、Germantown、MD)を使用してゲノムDNAを単離した。精製したゲノムDNAを沈殿させ、500μLのTEバッファーに再縣濁した。ゲノムDNAは、Qiagen Genomic Tips(商標)キットを使用してさらに精製した。ゲノムDNAは、Quant−IT Pico Green(商標)DNAアッセイキット(Molecular Probes、Invitrogen、Carlsbad、CA)によって定量化した。定量化したゲノムDNAは一定体積で8μgに調整した。
【0075】
それぞれのサンプルに関して、8μgのゲノムDNAを、制限酵素MfeIおよびNsiI(New England Biolabs、Beverley、MA)で完全に消化した。サンプルは一晩37℃でインキュベートした。消化したDNAは、製造者の示したプロトコールに従いQuick Precipitation Solution(商標)(Edge Biosystems、Gaithersburg、MD)を用いた沈殿によって濃縮させた。次いでゲノムDNAは、1時間65℃で25μLの水に再縣濁した。再縣濁したサンプルは1×TAE中で調製した0.8%アガロースゲル上に載せ、1×TAEバッファーにおいて1.1V/cmで一晩電気泳動にかけた。ゲルには連続的に30分間の変性(0.2MのNaOH/0.6MのNaCl)、および30分間の中和(0.5Mのトリス−HCl(pH7.5)/1.5MのNaCl)を施した。
【0076】
DNA断片の移動は、クロマトグラフィー用ペーパーウィックおよびペーパータオルを使用することにより、処理済Immobilon(商標)NY+移動膜(Millipore、Billerica、MA)上のゲルを介して、一晩20×SSC溶液を受動的に運ぶことによって実施した。移動後、膜は2×SSCで軽く洗浄し、Stratalinker(商標)1800(Stratagene、LaJolla、CA)で架橋状態にし、3時間80℃で真空ベーク状態にした。
【0077】
モデル400ハイブリダイゼーションインキュベーター(Robbins Scientific、Sunnyvale、CA)を使用してガラス製ローラーボトルにおいて、65℃で1時間プレハイブリダイゼーション溶液(Perfect Hyb plus(商標)、Sigma、St.Louis、MO)とブロットをインキュベートした。プローブはコード配列全体を含有するPCR断片から調製した。PCRアンプリコンはQIAEX II(商標)ゲル抽出キットを使用して精製し、Random RT Prime IT(商標)標識キット(Stratagene、La Jolla、CA)によりα32P-dCTPで標識した。ブロットはハイブリダイゼーションバッファーに直接加えた変性プローブと65℃で一晩ハイブリダイズさせて、ブロット1mL当たり約2百万数にした。ハイブリダイゼーション後、ブロットは65℃において40分間0.1×SSC/0.1%SDSで連続的に洗浄した。最後に、ブロットは化学発光フィルム(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)において露光させ、Molecular Dynamics Storm860(商標)イメージングシステムを使用し画像化した。
【0078】
pDAS5380またはpDAS5381断片の知られている制限酵素部位に基づいた、特定消化酵素およびプローブでの予想および実測断片サイズは、図3および4中に示す。この試験で実施したサザンブロット解析を使用して、タバコゲノムに挿入したプラスミドpDAS5380またはpDAS5381由来の完全長の完全PTUを含有したイベントを同定した(それぞれ図3および4)。
【0079】
GUS発現アッセイ。
pDAS5380トランスジェニック植物が機能性GUS PTU発現カセットを含有したかどうか試験するために、葉サンプルを採取し、GUS発現に関して組織化学的に染色した。リーフディスク(約0.25cm)を切断し、250μLのGUSアッセイ溶液を含有する24ウエルトレイ中に置いた(ウエル当たり1リーフディスク)(Jefferson (1989) Nature 342:837-8)。24ウエル皿はNescofilm(登録商標)(Fisher Scientific、Pittsburgh、PA)で覆い、24時間37℃でインキュベートした。24時間後、GUSアッセイ溶液はそれぞれのウエルから除去し、250μLの100%エタノールと交換した。皿はNescofilm(登録商標)で覆い、2〜3時間室温でインキュベートした。このエタノールは除去し、新しいエタノールと交換した。次いでリーフディスクを解剖顕微鏡下で観察した。青色に染色されたリーフディスクは、機能性GUS PTU発現カセットを含有するとして記録した。
【0080】
GFP発現アッセイ。
タバコ葉サンプルを、ELISAを使用しGFP発現に関して分析した。プレートは、精製ウサギ抗GFP抗体を用いて4℃で一晩コーティングした。分析の日に、プレートを0.5%BSA、PBST中でブロッキングした。最大速度で3分間Kleco(商標)組織粉砕機において2つのステンレススチールビーズを用いた、ビーズによる凍結葉切片の破砕によって、二連の葉サンプルを抽出した。サンプルは10分間3000rcfで遠心分離し、上清は回収した。抽出サンプルは1:5および1:50希釈でELISAプレート上に載せた。大腸菌(E.coli)組換えGFPの標準曲線を、12.5ng/mL〜0.195ng/mLの濃度でそれぞれのプレートにおいて作成した。標準およびサンプルはELISAプレート上で1時間インキュベートした。プレートは洗浄し、ホースラディッシュペルオキシダーゼ結合ウサギ抗GFP抗体を加えた。1時間のインキュベーション後、プレートは洗浄し基質を加えた。HSOを用いて反応を停止させる前に色を発色させた。450nmおよび650nm参照フィルターでプレートリーダーにおいて吸光度を読み取った。二次標準曲線は、ODに対して大腸菌(E.coli)標準の濃度を適合させることによって作成した。未知のサンプルの濃度は線形回帰分析により決定した。
【0081】
標的T作出用のT植物の選択。
合計68のBasta(登録商標)耐性、GUS+/GFP+植物を再生し、PAT Invader(登録商標)アッセイに基づいて、38の植物が1〜2の導入遺伝子コピーを有することが分かった。サザンブロット解析によって14の単一コピーイベントを同定し、その8個が完全PAT、GUSおよびGFP PTUと一致するバンドを示した。単一コピー、完全長PTUを示し、GUSおよびGFPを発現する3個のpDAS5380イベント、pDAS5380−3、pDAS5380−18およびpDAS5380−46を自家受粉させてT種子を作出した。
【0082】
FokI発現アッセイ。
定量リアルタイムPCR(qRT−PCR)を使用して、pDAS5381で形質転換したTタバコ植物におけるジンクフィンガーヌクレアーゼのmRNA発現を定量化した。インプットmRNAからのmRNA発現に対してこれらのレベルを標準化することによって、タバコの葉のサンプルからの相対的FokI mRNA発現を定量化するために、このアッセイを開発した。総mRNAに対するFokI mRNAの標準化は異なるサンプル間のFokI発現の比較を可能にし、これを使用して高度に発現する可能性があるイベントを同定することができる。相対的なZFNの発現を表1.1に列挙する。
【0083】
【表2】

【0084】
pDAS5381で形質転換したTタバコ植物由来の葉材料を回収し、氷上に置いた。QiagenのRNeasy(登録商標)Plant Miniキット(Qiagen、Germantown、MD)を使用して全RNAを単離した。全mRNAを製造者の勧めに従いRNaseを含まないDNaseで処理して、定量RT−PCR中に増幅する可能性がある任意の汚染DNAを除去した。第一鎖合成はSuperscript III(商標)逆転写酵素(Invitrogen、Carlsbad、CA)の製造者の説明書に従い設定し、ランダムヘキサマーを使用してプライマー処理した。合成したcDNA鎖は1:10および1:50の比で水に希釈した。それぞれのアリコートは−20℃で保存した。
【0085】
qRT-PCR反応は以下のように実施した。15μLの反応液中フォワードプライマーFok1_UPL_F(配列番号12)、リバースプライマーFok1_UPL_R(配列番号13)、プローブUPL番号130(カタログ番号04693663001、Roche、Indianapolis、IN)、1×LC480プローブマスターバッファー(Roche Diagnostic、Indianapolis、IN)、および1.5μLの合成cDNA。合成cDNAの段階希釈を行い反復してアッセイした。LightCycler(登録商標)480プローブマスターキット番号04707494001(Roche Diagnostics、Indianapolis、IN)を使用して、カクテルを増幅した。96ウエルマイクロプレートを境界線確定および標識し、13.5μLのマスター混合物をウエル毎に加えた。密封ホイルをマイクロプレートに軽く取り付けた。Qiagenマイクロプレート遠心分離機において3,000rpmで1分間、プレートを遠心分離した。密封ホイルを除去し、1.5μLの解凍、希釈合成cDNA鎖を加えた。密封ホイルをプレートに確実に固定し、前に記載したように遠心分離した。PCRプログラムは以下のように実施した。i)95℃で5分間活性化、ii)95℃で10秒間変性(4.8℃/秒)、iii)60℃で25秒間アニーリング/延長(2.5℃/秒)、iv)72℃で1秒間取り込み(4.8℃/秒)。ステップii〜ivはさらに45回反復した、vi)38℃で5秒間冷却。
【0086】
内部参照遺伝子のmRNA発現を定量化するためのqRT-PCRアッセイを別の方法として実施して、ジンクフィンガーヌクレアーゼのmRNA発現を標準化した。アクチンqRT-PCR反応は以下のように実施した。10μLの反応液中、フォワードプライマーBY2ACT89S(配列番号14)、リバースプライマーBY2ACT89A(配列番号15)、プローブBYACTFQ(配列番号18)、1×LC480プローブマスターバッファー、および2.0μLの合成cDNA。合成cDNAの段階希釈を行い反復してアッセイした。さらに、2μLのプラスミドDNAコピー数標準を最小濃度から最高濃度の希釈系で別々のウエルに加え、これらの標準を(全mRNAから合成した)アクチンcDNAと比較してコピー数を標準化した。アクチンDNAコピー数標準系を、コピー数を定量化するために、標的アンプリコンをpCR2.1プラスミド(Invitrogen、Carlsbad、CA)にクローニングすること、および希釈バッファー(10mMのトリス−HCl[pH8.0]、100μg/mLの酵母tRNA)において調製した希釈系を作製することによって作製した。LightCycler(登録商標)480プローブマスターキット番号04707494001(Roche Diagnostics、USA)を使用して、カクテルを増幅した。96ウエルマイクロプレートを境界線確定および標識し、8.0μLのマスター混合物をウエル毎に加えた。密封ホイルをマイクロプレートに軽く取り付けた。Qiagenマイクロプレート遠心分離機において3,000rpmで1分間、プレートを遠心分離した。密封ホイルを除去し、2.0μLの解凍、希釈合成cDNA鎖またはプラスミドDNAを加えた。密封ホイルをプレートに確実に固定し、前に記載したように遠心分離した。PCRプログラムは以下のように実施した。i)95℃で10分間活性化、ii)95℃で10秒間変性(4.8℃/秒)、iii)56℃で40秒間アニーリング/延長(2.5℃/秒)、iv)72℃で1秒間取り込み(4.8℃/秒)。ステップii〜ivはさらに45回反復した、vi)38℃で5秒間冷却。
【0087】
切除T作出用のT植物の選択。
合計54のヒグロマイシン耐性植物を再生し、加水分解プローブアッセイに基づいて、34の植物が1〜2の導入遺伝子コピーを有することが分かった。サザンブロット解析によって12の単一コピーイベントを同定し、その7個が完全HPTおよびZFN PTUと一致するバンドを示した。単一コピー導入遺伝子、完全長PTUを示し、Fok1を発現するTpDAS5381イベント、pDAS5381−18、pDAS5381−49およびpDAS5381−56を自家受粉させてT種子を作出した。
【実施例3】
【0088】
植物の作製および選択。
同型接合体T植物を作出するためのT植物の自家受粉。
以下のT植物イベント、pDAS5380−3、pDAS5380−18、pDAS5380−46、pDAS5381−18、pDAS5381−49およびpDAS5381-56を成熟状態まで成長させ、自花受精させてT種子を作出した。発芽後、pDAS5380およびpDAS5381構築物の同型接合体であったT植物は導入遺伝子欠失に使用した。メンデルの遺伝の法則に従うと、pDAS5381同型接合体単一コピーT植物とpDAS5380同型接合体単一コピーT植物の交配は、pDAS5381構築物とpDAS5380構築物の両方の異型接合体単一コピーを含有するF集団をもたらす。この交配の子孫は、GUSレポーター遺伝子の1コピーを含有すると予想した。このように、GUSを発現しないF植物は、GUS PTU発現カセットが切除されていることを示す。
【0089】
16:8時間の光周期下、日中および夜間温度22〜24℃で、T植物を成長させた。一次花茎が伸長し花芽を形成し始めたとき、植物全体を自花受粉バッグで覆い、異系交配を予防した。自家受粉由来の種子は移植後約8週間で採取した。自花受精植物由来の種子を回収し土壌にまいた。生成したT集団は、前に記載した条件下において温室中で成長させた。
【0090】
植物の分子学的スクリーニング。
接合生殖性アッセイ。
植物の接合生殖性を定量化するためのアッセイを、前に記載した加水分解プローブ法(コピー数アッセイ)を使用して実施した。リアルタイムPCRデータの分析を実施し、T植物中に含有された導入遺伝子コピーの数はコピー数対照との比較によって決定した。このため、単一コピーキャリブレーターを含有することが事前に示された親T植物由来のゲノムDNAのサンプルを含めた。同型接合体pDAS5380およびpDAS5381T植物を同定した。
【0091】
GUS発現アッセイ。
交配実験に進むために発現イベントを同定することが重要であった。pDAS5380T植物を、前に記載したプロトコールを使用してアッセイした(GUS発現アッセイ)。上記の接合生殖性アッセイからpDAS5380構築物の同型接合体として選択した、pDAS5380植物を試験した。全ての植物が青色に染色された。
【0092】
GFP発現アッセイ。
pDAS5380T植物を、前に記載したプロトコールを使用してアッセイした(GFP発現アッセイ)。上記の接合生殖性アッセイからpDAS5380構築物の同型接合体として選択した、pDAS5380植物を試験した。試験した全ての植物がGFP発現に関して陽性であった。
【0093】
FokI発現アッセイ。
定量リアルタイムPCR(qRT−PCR)を使用して、pDAS5381で形質転換した同型接合体pDAS5381Tタバコ植物におけるジンクフィンガーヌクレアーゼのmRNA発現を定量化した。前に記載したプロトコール(FokI発現アッセイ)をT植物のスクリーニングに使用して、ジンクフィンガーヌクレアーゼが発現されていたことを確認し、GUS PTU発現カセットを切除する多量のジンクフィンガーヌクレアーゼを生成し得るイベントを同定した。
【0094】
植物の選択。
pDAS5380イベントをGUSおよびGFPの接合生殖性および発現に関してスクリーニングした。TpDAS5381イベントはFoklの接合生殖性および発現に関してスクリーニングした。これらの結果に基づいて、Tイベントを交配用に選択した。これらのイベントが最適であると確認した。それらが同型接合体、単一コピー、完全長、導入遺伝子発現イベントであったからである。さらに、無同胞種pDAS5381植物は対照として使用するために保持した。これらのイベントは、ジンクフィンガーヌクレアーゼPTU発現カセットを含有しない。導入遺伝子分離の結果として、導入遺伝子はこれらのT植物によって遺伝しなかった。選択したイベントは成熟状態まで成長させ、交配させてF植物を生成し、ジンクフィンガーヌクレアーゼによる導入遺伝子切除を試験した。交配戦略は以下に述べる。
【0095】
を作出するための同型接合体T植物の交配。
選択したpDAS5380植物は選択pDAS5381植物と交配させた。さらに、両親が雄と雌の両方であるように逆交配を行った(表2)。植物は手作業によって交配させた。成熟した雄親植物の葯由来の花粉を成熟した雌親植物の柱頭に導入した。交配の準備ができた植物は他の植物から除去して、目的外の花粉が雌のタバコ植物に受粉する可能性を減らした。雄花による受粉前に約15〜30分間ピンセットを使用して、雌植物を去勢した(裂開前に葯を除去した)。葯および花の色を観察することによって、去勢用の花を選択した。新たに開いた花は縁の周りが鮮やかなピンク色であり、葯は依然閉じていた。開放または部分的に開放していた葯を含有する花は使用しなかった。タバコ植物の茎由来の多数の花を去勢し受粉させた。茎上の他の花(例えば、すでに受粉した莢、後期の花、非常に初期の芽など)はピンセットで除去して、枝を形成する莢のみが制御交配に由来することを確実にした。実施した交配、何回交配を実施したか、および受粉日を示す受粉タグを枝に貼った。雄親由来の葯は、ピンセットを使用して雄植物から完全に除去し、去勢した雌に受粉するためにこれらを使用した。柱頭が花粉で覆われるまで、裂開した雄葯を粘着性がある受け手側の雌柱頭にこすりつけた。柱頭は数回覆い、任意の目的外の花粉が受粉のため雌柱頭に近づく可能性を減らした。受粉した植物由来の種子を回収し、土壌にまいた。生成したF子孫植物は、前に記載した条件下において温室中で成長させた。
【0096】
【表3】

【実施例4】
【0097】
ZFNを介した導入遺伝子欠失に関するF植物の分析。
GUSアッセイ。
葉材料を組織化学的に染色することによって、GUS発現に関してF植物を試験した。GUSスクリーニングは、ZFNを介した導入遺伝子欠失を経たイベントを同定するための予備試験であった。GUSスクリーニングの結果は決定的であることを意味するものではなく、しかしながらさらなる分子分析用の植物を同定した指標であった。F植物は前に記載したプロトコールを使用してアッセイした(GUS発現アッセイ)。結果は表3中に列挙する。
【0098】
【表4】

【0099】
サザンブロット解析。
サザンブロット解析を使用して、ジンクフィンガーヌクレアーゼによるGUS PTU発現カセットの切除の分子学的特性を得た。このデータは、イベントの部分集合中のGUS PTU発現カセットの切除、イベントの別の部分集合中のGUS PTU発現カセットの非切除、および切除と非切除GUS PTU発現カセットの両方を含有したキメライベントの部分集合を実証した。詳細なサザンブロット解析は、GFP PTU発現カセットに特異的なプローブを使用して実施した。このプローブと特異的制限酵素で消化したゲノムDNAのハイブリダイゼーションによって、特定分子量のDNA断片を同定した。これらのパターンを分析して、切除GUS PTU発現カセットを含有した、完全GUS PTU発現カセットを含有した、またはキメラであった、および切除と完全GUS PTU発現カセットの両方を含有した、イベントを同定することが可能である。
【0100】
10倍を超える消化で350μLの最終体積において、1×バッファー4および100単位のNdeI(New England BioLabs、Ipswich、MA)中の10μgの各サンプルに制限酵素による消化を実施した。サンプルは一晩37℃でインキュベートした。消化したDNAは、製造者の示したプロトコールに従いQuick Precipitation Solution(商標)(Edge Biosystems、Gaithersburg、MD)を用いた再沈殿によって濃縮させた。回収した消化産物は30μLの1×ローディングバッファー中に再縣濁し、30分間65℃でインキュベートした。再縣濁したサンプルは1×TAE(0.8Mトリス−酢酸[pH8.0]/0.04mMのEDTA)中で調製した0.8%アガロースゲル上に載せ、1×TAEバッファーにおいて1.1V/cmで一晩電気泳動にかけた。ゲルには連続的に30分間の変性(0.2MのNaOH/0.6MのNaCl)、および30分間の中和(0.5Mのトリス−HCl(pH7.5)/1.5MのNaCl)を施した。DNA断片の移動は、クロマトグラフィー用ペーパーウィックおよびペーパータオルを使用することにより、処理済Immobilon(商標)NY+(Millipore、Billerica、MA)上のゲルを介して、一晩20×SSC溶液を受動的に運ぶことによって実施した。移動後、膜は2×SSCで軽く洗浄し、Stratalinker(商標)1800(Stratagene、LaJolla、CA)で架橋状態にし、3時間80℃で真空ベーク状態にした。ハイブリダイゼーションインキュベーターを使用してガラス製ローラーボトルにおいて、65℃で1時間プレハイブリダイゼーション溶液とブロットをインキュベートした。Qiagenゲル抽出キットを使用して精製し標識キットを使用して50μCiのα32P-dCTPで標識したgfpコード配列を含有するPCR断片からプローブを調製した。ブロットはハイブリダイゼーションバッファーに直接加えた変性プローブと65℃で一晩ハイブリダイズさせて、ブロット1mL当たり約2百万数にした。ハイブリダイゼーション後、ブロットは65℃において40分間0.1×SSC/0.1%SDSで連続的に洗浄した。ブロットはホスファーイメージャースクリーン(phosphor imager screen)を使用して露光させ、Molecular Dynamics Storm860(商標)イメージングシステムを使用して画像化した。ブロットの結果は図5中に示す。
【0101】
植物転写ユニットのPCR分析。
PCR反応を実施してGUS PTU発現カセットの切除を特徴付けした。MAR配列およびORF23の3’UTR配列(GFP PTU発現カセットに関する3’UTR)と結合するプライマーを設計した。このPCRアンプリコンは、切除が予想されるGUS PTU発現カセット領域に広がる。このように、これらのPCRプライマーの使用によって、その中でGUS PTU発現カセットが切除されたイベント、その中で切除が起こらなかったイベント、およびその中でイベント内のGUS PTU発現カセットが均一に除去されなかったキメライベントを検出することができる。6.7kb断片の増幅は切除がないことを示し、一方2.4kb断片の増幅はGUS PTU発現カセットが切除されたことを示唆する。両サイズの断片を含有するアンプリコンは、GUS PTU発現カセットが完全に除去されたわけではないことを示す。
【0102】
ゲノムDNAはDNeasy(商標)Plant Maxiキットを使用してタバコ葉組織から単離し、前に記載したようにQuant-IT(商標)Pico Green DNAアッセイキットを使用して定量化した。植物転写ユニットのPCR(PTUのPCR)は、Tetrad2(商標)サーモサイクラー(BioRad、Hercules、CA)を使用して実施した。VectorNTI(商標)ソフトウエアを使用してPTUを増幅するためのオリゴヌクレオチドプライマーを設計した。増幅用に、Ex Taqポリメラーゼ(商標)(TaKara、Otsu、Shiga、Japan)を、4ngのgDNA鋳型を使用して、1.2μMの各プライマー(配列番号16および17)、0.2mMのdNTP、2%のDMSO、1.25単位のTAQを含有する25μL体積のシングルプレックス反応混合物において1×最終濃度で調製した。3ステップの増幅反応を以下のように実施した。94℃で3分間の初期変性、および94℃の30秒間、65.5℃の6分間、72℃の30秒間の33サイクル、および72℃で10分間の最終延長。PCR産物のアリコートは、1Kb+マーカー(Invitrogen、Carlsbad、CA)を使用して臭化エチジウムを含む1%ゲルに施して、産物の大きさを決定した。PTUのPCR反応の結果は図6中に示す。
【0103】
PTUのPCR産物の配列決定。
PTUのPCR反応由来の2.4kbバンドをゲルから切除し、Qiagen Qiaex II(商標)ゲル抽出キット(Qiagen、Germantown、MD)を使用してDNAを精製した。精製した断片は、pCR2.1TOPO-TA(商標)クローニングベクター(Invitrogen、Carlsbad、CA)に連結させた。制限酵素による消化によって、pCR2.1ベクター内のクローニングPCRアンプリコンの存在を確認した。増幅バンドを含有するクローンを配列決定した。GUS PTU発現カセットの除去から生じた結合部の配列は、図7aおよび7b中に列挙する。PTU発現カセット全体を除去した。残存した唯一の配列は、GUS PTU発現カセットに隣接した再編成ジンクフィンガー結合部位である。さらに、いくつのPCRアンプリコンは、GFP PTU発現カセットのアクチン2プロモーターに延長した欠失を含有していた。
【0104】
6.7kbバンドの制限酵素による分析。
大きな6.7kbバンドのPCRアンプリコンを制限酵素による消化によって分析した。これらの断片は、EcoRI、およびNcoI/SacI制限酵素(New England Biolabs、Ipswich、MA)で消化した。生成したバンドの大きさを分析して、増幅断片が非切除pDAS5380導入遺伝子ゲノム挿入体に広がっていたことを確認した。
【0105】
子孫を作出するためのF植物の自花受精。
前に記載した代表群のF植物を自花受精させF子孫を作出した。表5は、選択した植物ならびにそれらのF表現型および遺伝子型を列挙する。16:8時間の光周期下、日中および夜間温度22〜24℃で、温室内において選択したF植物を成長させた。一次花茎が伸長し花芽を形成し始めたとき、植物全体を自花受粉バッグで覆い、異系交配を予防した。自家受粉由来の種子は移植後約8週間で採取した。自花受精植物由来の種子を回収し土壌にまいた。生成したF集団は、前に記載した条件下において温室中で成長させた。F植物は、F植物内で特徴的であったさらなる導入遺伝子欠失および欠失の遺伝性に関して分析した。
【実施例5】
【0106】
植物の作製および選択。
導入遺伝子および欠失の遺伝性に関するF子孫の分析。
GUS分析。
葉材料を組織化学的に染色することによって、GUS発現に関してF植物を試験した。植物は前に記載したプロトコールを使用してアッセイした(GUS発現アッセイ)。結果は表5中に列挙する。F植物からのGUS発現データは予想通りであった。組織化学染色により確認して、切除GUS PTU発現カセットを含有すると確認したF植物は、100%GUS陰性であったF植物を作出した。これらのF植物内でのGUS発現の不在によって、ジンクフィンガーヌクレアーゼを介した導入遺伝子欠失によってGUS PTU発現カセットが切除されたことを示唆するFデータを確認する。さらに、このデータは、次世代への欠失導入遺伝子の遺伝性を例証する。
【0107】
世代の約75%において、無同胞種対照植物はGUSを発現した。組織化学染色によりGUSを検出しなかった残りの植物(約25%)は予想した。GUS PTU発現カセットは予想3:1比でF集団内において分離すると予想される。Fにおいて切除と非切除GUS PTU発現カセットの両方を含有したキメライベントはF内で分離した。大部分の植物がGUSを発現した。
【0108】
【表5】

【0109】
緑色蛍光タンパク質のELISA分析。
選択したF植物は、前に記載したプロトコールを使用しELISAによってGFP発現に関して試験した(GFP発現アッセイ)。F植物からのGFP発現データは予想通りであった。F世代の約75%においてF植物はGFPを発現した。ELISAによりGFPを検出しなかった残りの植物(約25%)は予想した。GFP PTU発現カセットは予想3:1比でF集団内において分離すると予想される。Fにおいて切除と非切除GFP PTU発現カセットの両方を含有したキメライベントはF内で分離した。大部分の植物がGFPを発現した。
【0110】
子孫のPCR、サザンブロット、およびGFP分析。
(切除、完全、およびキメラ子孫を表す)表5中に列挙した3交配由来の16の植物をさらなる分子分析用に保存した。これらの16の植物は、無同胞種対照およびキメラ植物に関してGUS陽性であった8の植物とGUS陰性であった8の植物からなっていた。前に記載したプロトコール(サザンブロット解析、および植物転写ユニットのPCR分析)を、F植物由来のゲノムDNAで反復した。選択したF植物は、前に記載したプロトコールを使用しELISAによってGFP発現に関して試験した(GFP発現アッセイ)。分子データによって、GUSを発現しなかった植物は完全GUS PTU発現カセットを含有しないことを確認する。GFP発現カセットは予想通り分離した。結果は図8〜13中に要約する。
【0111】
いくつかの例示的な態様および実施形態を前で論じてきたが、当業者は、これらの特定の修正、変更、追加および部分的組合せを理解している。したがって、以下の添付の特許請求の範囲および後に組み込まれた特許請求の範囲は、それらの真の精神および範囲内にある全てのこのような修正、変更、追加および部分的組合せを含むと解釈されると考えられる。
【0112】
本明細書で論じた参照文献は、単に本出願の出願日より前のそれらの開示に関して提供する。本明細書中のいかなる事項も、本発明者らが先行発明によるこのような開示に先立つ資格がないことを認めるものとして解釈すべきではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物中のDNAの領域を欠失させるための方法であって、
前記DNAの領域を含むゲノムDNAを含有する生育能力のある植物を提供する工程、および
認識配列において前記ゲノムDNAを切断するように操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼを、前記ゲノムDNAを含有する生育能力のある植物において導入する、または発現させる工程
を含み、認識配列における前記ゲノムDNAの切断および前記ゲノムDNAの切除をもたらし、前記DNAの領域が前記ゲノムDNAに存在しない方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法によって作出されるトランスジェニック植物。
【請求項3】
植物中のDNAの領域を欠失させるための方法であって、
前記DNAの領域と、前記DNAの領域の3’末端に隣接する第一の認識配列と、前記DNAの領域の5’末端に隣接する第二の認識配列とを含むゲノムDNAを含有する第一の生育能力のある植物を提供する工程、
前記認識配列において前記ゲノムDNAを切断するように操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼをコードするDNAを含むゲノムDNAを含有する第二の生育能力のある植物を提供するゲノムDNAを含有する第二の生育能力のある植物を提供する工程、
前記第一の生育能力のある植物または第二の生育能力のある植物のいずれかにおいてF1種子が作出されるように、前記第一の生育能力のある植物と第二の生育能力のある植物を交配させる工程、および
前記DNAの領域が前記ゲノムDNAに存在しない、ゲノムDNAを含有する生じたF1植物を成長させる工程
を含む方法。
【請求項4】
前記第一の認識配列と第二の認識配列が同一である、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
請求項3に記載の方法によって作出されるトランスジェニック植物。
【請求項6】
ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第一の核酸配列
対象の遺伝子、および
ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第二の核酸配列
を含み、前記対象の遺伝子にジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される前記第一および第二の核酸配列が隣接する、単離核酸分子。
【請求項7】
前記対象の遺伝子と作動可能に連結したプロモーターをさらに含む、請求項6に記載の単離核酸分子。
【請求項8】
前記第一の核酸配列および前記第二の核酸配列に相同配列が隣接する、請求項6に記載の単離核酸分子。
【請求項9】
トランスジェニック植物を作出するための方法であって、
請求項1に記載の単離核酸分子で植物細胞または植物組織を形質転換する工程、および
全植物を再生する工程
を含む方法。
【請求項10】
請求項9に記載の方法によって作出されるトランスジェニック植物。
【請求項11】
プロモーター、および
ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸配列
を含み、前記プロモーターが前記ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸配列と作動可能に連結し、前記核酸配列にジンクフィンガーヌクレアーゼ切断部位が隣接する、単離核酸分子。
【請求項12】
トランスジェニック植物を作出するための方法であって、
請求項11に記載の単離核酸分子で植物細胞または植物組織を形質転換する工程、および
全植物を再生する工程
を含む方法。
【請求項13】
前記プロモーターが花粉特異的プロモーター、種子特異的プロモーター、および発生段階特異的プロモーターからなる群から選択される、請求項11に記載の単離核酸分子。
【請求項14】
植物中の対象の遺伝子を切除する方法であって、
請求項9に記載の植物と請求項11に記載の植物を交配させる工程を含み、前記交配から生じた子孫がジンクフィンガーヌクレアーゼを介した前記対象の遺伝子の切除を示す方法。
【請求項15】
他の植物への対象の遺伝子の伝達を減らすための方法であって、
請求項9に記載の植物と、ジンクフィンガーヌクレアーゼと作動可能に連結した花粉特異的プロモーターを含む単離核酸分子で形質転換した植物細胞または組織から再生した植物とを交配させる工程であって、前記交配から生じた子孫の花粉中の前記対象の遺伝子を特異的に切除し、対象の天然遺伝子を切除する工程、および
前記交配から生じた子孫を培養する工程を含む方法。
【請求項16】
植物中の対象の天然遺伝子を切除する方法であって、
対象の遺伝子を含む植物細胞または組織を、ジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする核酸配列またはジンクフィンガーヌクレアーゼをコードする単離タンパク質配列を含む単離核酸分子で形質転換する工程であって、前記ジンクフィンガーヌクレアーゼが前記対象の天然遺伝子に隣接する核酸配列を認識する工程、および
全植物を再生する工程を含む方法。
【請求項17】
核酸分子を含有する植物中のDNAの領域を欠失させるための方法であって、
ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第一の核酸配列を提供する工程、
選択マーカー遺伝子発現カセットを提供する工程、および
ジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される第二の核酸配列を提供する工程
を含み、前記選択マーカーにジンクフィンガーヌクレアーゼによって認識される前記第一および第二の核酸配列が隣接する方法。
【請求項18】
前記第一の核酸配列および前記第二の核酸配列に相同配列が隣接する、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
認識配列においてゲノムDNAを切断するように操作されたジンクフィンガーヌクレアーゼを生育能力のある植物細胞中で発現させる、または導入し、それによって認識配列における前記ゲノムDNAの切断をもたらし、前記ゲノムDNAの切除をもたらし、前記選択マーカーが前記ゲノムDNAに存在しない、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
ジンクフィンガーヌクレアーゼモノマーのそれぞれ半分が別々に発現され、互いに協働して対をなすとき機能的複合体を形成する、請求項17に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5】
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【図6】
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【図7a】
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【図7a−1】
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【図7b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公表番号】特表2013−517774(P2013−517774A)
【公表日】平成25年5月20日(2013.5.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−550172(P2012−550172)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【国際出願番号】PCT/US2011/022135
【国際公開番号】WO2011/091311
【国際公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【出願人】(501035309)ダウ アグロサイエンシィズ エルエルシー (197)
【Fターム(参考)】